説明

木質材料への樹脂含浸装置

【課題】連続処理できる木質材料への樹脂含浸装置1を得る。
【解決手段】樹脂含浸装置1は、樹脂を含浸すべき木質材料Wが僅かな隙間を残して通過することのできる木質材料入口11と木質材料出口12を備えた真空チャンバー10と、真空チャンバー10内を減圧する真空ポンプ14と、木質材料入口11から上流側に延出する木質材料導入路16と、木質材料出口12から下流側に延出する木質材料導出路17と、樹脂液タンク18と、樹脂液タンク10内の樹脂を木質材料導入路16および木質材料導出路17に送り出すための送液ポンプ19を備えた送液路20と、真空チャンバー10内に滞留する樹脂を樹脂液タンク18に戻すための帰液路23と、を備える。
木質材料Wを装置10内に投入して移動する過程で、真空ポンプ14で真空チャンバー10内を減圧する。それにより、木質材料W内の空気が連続的に脱気され、脱気と同時に、そこに樹脂が含浸される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性、強度、耐熱性などを付与する目的で、木質材料に樹脂を含浸するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような目的で木質材料に樹脂を含浸することは知られている。例えば、樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、樹脂を含浸した木質材料は、加熱処理のような樹脂硬化処理に付され、含浸した樹脂が硬化することにより、木質材料の物性が改善する。木質材料に樹脂を含浸させる場合、はけ、ロールなどによる塗布含浸、または含浸させる樹脂液中に木質材料をどぶ漬けする浸漬含浸などによる方法があるが、木質材料の種類、含浸させる樹脂の種類などによっては、十分に含浸できない場合がある。必要十分な量の樹脂を均一に含浸させる方法として、真空釜を利用した減圧含浸法が知られているが、処理する木質材料より大きな寸法形状、また高い真空度に耐えうる気密性の高い大がかりな装置を必要とするばかりでなく、含浸処理がバッチ式となり生産コストが嵩み、効率が悪いものとなっている。
【0003】
木質材料へ効率よく樹脂含浸処理を行うために、木質材料を移送しながら含浸処理を行う方法および装置が提案されている。特許文献1には、減圧下で木質材料の内部空気を除く脱気処理を行い、脱気処理終了直後に熱硬化性樹脂の含浸処理(減圧含浸)を行う方法および装置が記載されている。また、特許文献2には、中密度繊維板(MDF)の上面側から熱硬化性樹脂を散布すると共に、その下面側から真空度50〜760mmHg程度の負圧で、同時に吸引する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2004−330738号公報
【特許文献2】特開平10−323809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものは、木質材料を移動させながら、脱気と樹脂含浸とを一連の工程で行うことができ、真空釜を利用した減圧含浸法と比較して、装置も簡素化でき、また生産性も向上する。しかし、脱気と樹脂含浸とを別個の工程で行うようにしており、脱気工程から含浸工程に移る過程で、木質材料内に空気が再び入り込むのを避けられない。また、減圧含浸により樹脂の含浸は良好になるが、脱気室とは別に樹脂含浸のためのスプレーを備えた減圧室を用意する必要があり、装置が煩雑となる。
【0005】
特許文献2に記載の方法は、下面側からの吸引と上面側から熱硬化性樹脂の散布とを同時に行うようにしており、処理工程的には好ましい方法といえる。しかし、この方法は、基本的に、上面側に散布した樹脂を下面側から吸引して、木質材内部に樹脂を浸入させていく方法であり、均一な含浸を得ること、高い樹脂含浸率を確保することは容易でない。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、従来のものよりも、より効率的かつより均一に樹脂を含浸した木質材料を得ることのできる樹脂含浸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による木質材料への樹脂含浸装置は、樹脂を含浸すべき木質材料が僅かな隙間を残して通過することのできる木質材料入口と木質材料出口を備えた真空チャンバーと、真空チャンバー内を減圧する真空ポンプと、真空チャンバーの木質材料入口から上流側に延出する木質材料導入路と、真空チャンバーの木質材料出口から下流側に延出する木質材料導出路と、樹脂液タンクと、樹脂液タンク内の樹脂を木質材料導入路および木質材料導出路に送り出すための送液ポンプを備えた送液路と、真空チャンバー内に滞留する樹脂を樹脂液タンクに戻すための帰液路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の装置では、樹脂液タンク内の樹脂は、送液ポンプにより送り出され、送液路を通って木質材料導入路および木質材料導出路に入り、真空チャンバーを経て、帰液路から樹脂液タンクに戻る循環経路を取る。その間、真空チャンバー内は真空ポンプにより減圧されている。
【0009】
木質材料を木質材料導入路から送り込むと、木質材料は周面が樹脂液体に覆われた状態で木質材料入口から真空チャンバー内に入り込み、真空チャンバー内を通過して木質材料出口から木質材料導出路に送り出される。木質材料導出路を通過するときにも木質材料は周面が樹脂液体に覆われた状態となる。
【0010】
その間に、真空ポンプを操作して真空チャンバー内を減圧する。真空チャンバーに形成した木質材料入口と木質材料出口の寸法は、木質材料が僅かな隙間を残して通過することのできる寸法であり、木質材料が通過するとき、この隙間は木質材料表面を覆っている樹脂液体により封印された状態となるので、真空チャンバー内は気密性が確保される。なお、前記「僅かな隙間」とは、木質材料表面を覆っている樹脂液体によりその隙間が封印される大きさの隙間であり、含浸しようとする樹脂の物性値および減圧含浸処理時に真空チャンバー内に確立すべき減圧度を考慮して、計算によりまた実験的に、隙間の大きさは設定される。
【0011】
木質材料が真空チャンバー内を通過すると、真空チャンバー内は所要に減圧されているので、木質材料の内部空気は負圧吸引されて、木質材料内部から脱気される。負圧吸引は、木質材料導入路および木質材料導出路内に位置する木質材料の部分にまで作用し、その部分での脱気も進行する。すなわち、本発明の装置を用いることにより、移送される木質材料の内部空気が負圧により吸引されると同時に、空気が存在していた部分に木質材料の周囲の樹脂が直ちに入り込む。内部空気の脱気と樹脂液の含浸とが、同時進行的に行われるため、樹脂の含浸処理時間は短縮し、かつ均一な含浸が進行する。
【0012】
この脱気と樹脂の含浸は、木質材料が木質材料導入路および木質材料導出路さらには真空チャンバー内を移動する過程で連続的に進行する。そのために、十分な樹脂含浸処理を短時間で木質材料に与えることができる。次の木質材料を連続して投入することにより、真空ポンプの作動を停止することなく、連続した樹脂の減圧含浸処理が可能となる。
【0013】
本発明において、処理の対象となる木質材料は、負圧吸引処理により内部空隙に存在する空気が脱気されるものであればよく、無垢材、集成材、合板、あるいはPB、OSB、MDF、HDFのような木質繊維板など、任意の木質材料が含まれる。高い減圧到達度が得られることから、無垢材のように板目面が表裏面となる木質材料に対しても、連続的な樹脂含浸処理が可能となる。
【0014】
本発明において、含浸に用いる樹脂は、従来、木質材料の物性を安定化させるのに用いられてきた樹脂材料をすべて含んでおり、ユリア系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを挙げることかできる。また、硬化性樹脂を用いる場合には、熱、紫外線などにより硬化する任意の樹脂を用いることができる。さらに、樹脂は、水系、溶剤系、無溶剤系のいずれでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による木質材料への樹脂含浸装置を用いることにより、無垢材を含む木質材料に対して、連続的にまた均一に樹脂を減圧含浸することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。図1は本発明による木質材料への樹脂含浸装置を示し、図2はその装置が木質材料に対して樹脂含浸処理を行っている状態を示している。
【0017】
装置1は、真空チャンバー10を有し、該真空チャンバー10の対向する側壁には、同じ形状である木質材料入口11と木質材料出口12がそれぞれ形成されている。真空チャンバー10の天面には真空ポンプ14(図2)に接続する排気口13が形成されており、真空ポンプ14の作用により、真空チャンバー10内は減圧される。また、真空チャンバー10の下方部は樹脂液溜まり15とされる。
【0018】
該真空チャンバー10の前記木質材料入口11には、処理すべき木質材料W(図2)の移動方向上流側に延出する木質材料導入路16が取り付けてあり、木質材料出口12には、処理すべき木質材料Wの移動方向下流側に延出する木質材料導出路17が取り付けてある。
【0019】
装置1は、木質材料に含浸する樹脂液体R(図2)を収容する樹脂液タンク18を備える。樹脂液タンク18は送液ポンプ19を介して送液路20に接続している。送液路20は、2つの分岐路21と22を有し、一方の分岐路21はさらに2つに分岐して、木質材料導入路16に接続している。他方の分岐路22も同様に2つに分岐して、木質材料導出路17に接続している。さらに、真空チャンバー10の前記した樹脂液溜まり15は、帰液路23を介して、樹脂液タンク18に接続している。図示しないが、必要な場合には、帰液路23に帰液用のポンプを取り付ける。
【0020】
上記の構成であり、真空ポンプ14を作動した状態で送液ポンプ19を駆動すると、樹脂液タンク18内に収容されている樹脂液体Rは、送液ポンプ19により送液路20に送り出される。送り出された樹脂液体Rは、2つの分岐路21と22内に分流し、分岐路21内を流れる樹脂液体Rは木質材料導入路16内に流入し、分岐路22内を流れる樹脂液体は木質材料導出路17内に流入する。流入した樹脂液体Rは真空チャンバー10内に流れ込み、樹脂液溜まり15から帰液路23を通って樹脂液タンク18に戻される。
【0021】
木質材料Wに樹脂を含浸させるには、上記のように樹脂液体Rが循環している装置1内に木質材料Wを投入する。なお、処理すべき木質材料Wの断面形状は、真空チャンバー10の対向する側壁に形成した木質材料入口11と木質材料出口12と同じ形状であることが必要であり、かつ木質材料Wが通過するときに木質材料入口11と木質材料出口12との間に僅かな隙間が形成され、その隙間が供給される樹脂液体Rによって封印される寸法であることが必要である。処理条件にもよるが、隙間は0.1mm〜3.0mm程度である。
【0022】
適宜の移送手段で図2で左から右に送られる木質材料Wは、図示されるように、木質材料導入路16および木質材料導出路17の双方において、そこを循環している樹脂液体Rによって周面が覆われる。なお、樹脂液体Rによる周面の被覆が完全に行われるように、木質材料導入路16および木質材料導出路17の周壁と木質材料Wの間に隙間のない状態で樹脂液体Rが充填されるよう送液ポンプ19の送り量を調整する。この状態で、前記した真空チャンバー10の対向する側壁に形成した木質材料入口11と木質材料出口12と木質材料Wとの間に形成される僅かな隙間は、木質材料Wの表面を濡らす(覆う)樹脂液体Rで封止されるので、真空チャンバー10内は気密に保持される。
【0023】
真空ポンプ14を作動して、真空チャンバー10内を減圧する。それにより、木質材料Wにおける真空チャンバー10内に位置する領域部分からの脱気が進行し、その脱気現象は、木質材料Wが木質材料導入路16および木質材料導出路17内において樹脂液体Rで覆われている領域部分にまで進行する。この脱気により木質材料Wの内部には負圧が生じることとなり、脱気と同時に、周囲の樹脂溶液Rは木質材料内に含浸する。その含浸により、木質材料W内の脱気した空間は直ちに樹脂により埋め込まれ、内部空気と樹脂との置換が完了する。真空チャンバー10内の樹脂液溜まり15に滞留する樹脂液体Rに木質材料Wが接している場合には、そこからも樹脂は含浸する。含浸した樹脂量に相当する量の樹脂液体Rが、送液ポンプ19により、樹脂液タンク18から木質材料導入路16および木質材料導出路17内に補給される。
【0024】
上記の状態で、装置1内を木質材料Wが移動することにより、当該木質材料Wには所望量の樹脂が減圧含浸される。この処理は、木質材料Wの移動と共に継続して進行するので、端面同士を接した状態で複数枚の木質材料W・・送り込むことにより、多数枚の木質材料に対して連続して減圧含浸処理を施すことが可能となる。そのために、生産効率が大きく向上する。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を説明する。
[実施例1]
図1に示す装置1を用い、木質材料Wとして、スギ板材を試料として用いて、樹脂含浸処理を行った。試料寸法は、厚さ12mm、幅945mm、長さ1840mmであり、真空チャンバー10に形成した木質材料入口11と木質材料出口12の寸法は、高さ15mm、幅950mmとした。含浸する樹脂には、樹脂溶液濃度60%のアクリル系樹脂水溶液を用いた。
【0026】
試料の送り速度は5m/分、真空ポンプ14による到達減圧度は5kPa以下となるように真空ポンプ14の吸引度を制御した。それにより、樹脂含浸率が平均値で40%〜50%の樹脂含浸スギ板材が得られた。なお、樹脂含浸率は次式により求めた。
樹脂含浸率(%)=[含浸後試料重量(g)−含浸前試料重量(g)]/含浸前試料重量(g)×100
【0027】
[実施例2]
図1に示す装置1を用い、木質材料Wとして、ラジアタパイン合板を試料として用いて、樹脂含浸処理を行った。試料寸法は、厚さ12mm、幅945mm、長さ1840mmであり、真空チャンバー10に形成した木質材料入口11と木質材料出口12の寸法は、高さ15mm、幅950mmとした。含浸する樹脂には、樹脂溶液濃度30%のフェノール樹脂水溶液を用いた。
【0028】
試料の送り速度は5m/分、真空ポンプ14による到達減圧度は5kPa以下となるように真空ポンプ14の吸引度を制御した。それにより、樹脂含浸率が平均値で30%〜40%の樹脂含浸ラジアタパイン合板が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による木質材料への樹脂含浸装置の一例を示す図。
【図2】図1に示す装置により、木質材料への樹脂減圧含浸処理を行っている状態を示す図。
【符号の説明】
【0030】
1…木質材料への樹脂含浸装置、10…真空チャンバー、11…木質材料入口、12…木質材料出口、13…排気口、14…真空ポンプ、15…樹脂液溜まり、16…木質材料導入路、17…木質材料導出路、18…樹脂液タンク、19…送液ポンプ、20…送液路、21,22…送液路の分岐路、23…帰液路、R樹脂液体、W…木質材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含浸すべき木質材料が僅かな隙間を残して通過することのできる木質材料入口と木質材料出口を備えた真空チャンバーと、
真空チャンバー内を減圧する真空ポンプと、
真空チャンバーの木質材料入口から上流側に延出する木質材料導入路と、
真空チャンバーの木質材料出口から下流側に延出する木質材料導出路と、
樹脂液タンクと、
樹脂液タンク内の樹脂を木質材料導入路および木質材料導出路に送り出すための送液ポンプを備えた送液路と、
真空チャンバー内に滞留する樹脂を樹脂液タンクに戻すための帰液路と、
を備えることを特徴とする木質材料への樹脂含浸装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−223214(P2007−223214A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48806(P2006−48806)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】