説明

木造住宅のコンクリート基礎補強方法

【課題】 既存木造住宅のコンクリート基礎部の補強する際に、土台からの応力が直接伝達される既存基礎自体の強度を確実に上げ、施工性にも優れた基礎補強方法を提供する。
【解決手段】 基礎12の片側の表面モルタルをはつり取り、コンクリート基礎12の上下5〜10cmの位置に1〜2cm角の切り込みをサンダー等を用いて入れる。その切り込み口にエポキシ系接着剤を塗布し、アラミド繊維ロッド14を入れる。また必要な場合においてはアラミド繊維シート19を表面にエポキシ系接着剤を用いて貼付け、コンクリート表面はモルタルで仕上げる。これを既存木造住宅の基礎部全周にわたり施工することにより、既存基礎自体を施工性にも優れた補強することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は既築木造住宅の基礎を補強する基礎補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造住宅の構造は通常、コンクリート基礎の上に土台を設置しその上に建物部分が構築されている。この木造住宅は木材の特性及び大工の技術により高強度の建物を造ることができる。しかし、近年の建築基準法に基づいて建てられた家屋はある程度の強度が規定されているため問題ないと考えられるが、耐震性基準の低い時期に建てられた木造住宅には多くの問題点が指摘されている。その一つは家屋部分の耐震性である。大地震の発生が危惧されている今、壁量不足等による家屋倒壊の危険性が重要視されてきている。そしてもう一つはその家屋を支えている基礎の強度に関する問題である。現在は鉄筋量やコンクリート強度の規定があるが、規定される前の木造住宅のコンクリート基礎は各建物によって強度・安全性が統一されていない。ほとんどの基礎が無筋コンクリートで大地震発生の際、コンクリート基礎が破壊され柱の引抜等が生じ家屋が倒壊する危険性がある。よって木造住宅の補強に関しては基礎の補強は最も重要といえる。このコンクリート基礎の補強方法として従来行われている方法は、非特許文献に記載されている鉄筋コンクリート基礎増し打ち工法である。この工法は、既存コンクリート基礎の外側に鉄筋コンクリート布基礎を打設し、ケミカルアンカーで既存コンクリート基礎と一体化させる工法であり、最も多く施工実績がある。また、特許文献1に記載されている鋼板で補強するものが知られている。この工法は、L字型鋼板でコンクリートを内外両側被覆し、ボルト・ナットで固定する方法ある。
【0003】
【非特許文献1】木造住宅の耐震診断と補強方法(財団法人日本建築防災協会)
【特許文献1】特開2003−293382号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄筋コンクリート基礎増打ち工法は既存コンクリート基礎にケミカルアンカーで接合させる工法であるため直接土台からの応力の伝達が少ないと考えられることから、十分な強度が出にくい。また、特開2003−293382号公報に記載されている鋼板で補強する方法は、鋼板をコンクリート基礎内外両側に被覆する方法であるため、建物内部の床組等も解体して施工することから施工性に優れているとは言いがたい。
【0005】
本発明は、これらの課題を解決するもので、直接土台からの応力が伝達される既存コンクリート基礎の強度を上げることを目的とする。また、コンクリート基礎の片側施工の為施工性に優れたものにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の木造住宅の基礎補強方法は、コンクリート基礎の外側にアラミド繊維ロッドを埋め込みエポキシ系接着剤で固定後、表面モルタルで仕上げることにより前記補強用ロッド及びコンクリート基礎を一体化させることを特徴とする。請求項2記載の本発明は、請求項1記載の木造住宅の基礎補強方法において、アラミド繊維シートを被覆しコンクリート基礎全体を一体化させることを特徴とする。請求項3記載の本発明は、請求項1及び請求項2に記載の木造住宅の基礎補強方法において、木造住宅の周囲におけるコンクリート基礎の全周及び高倍率耐力壁直下のコンクリート基礎に配置することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態による木造住宅の基礎補強方法は、コンクリート基礎の外側にアラミド繊維ロッドを埋め込みエポキシ系接着剤で固定後、表面モルタルで仕上げることにより前記補強用ロッド及びコンクリート基礎を一体化させるため、補強後の基礎部の強度を確保することができる。
【0008】
本発明第2の実施の形態は、第1の実施の形態による木造住宅の基礎補強方法において、アラミド繊維シートを被覆しコンクリート基礎全体を一体化させるため、補強後の基礎部においてより高い強度を確保することができる。
【0009】
本発明第3の実施の形態は、第1及び第2の実施の形態による木造住宅の基礎補強方法において、木造住宅の周囲におけるコンクリート基礎の全周及び高倍率耐力壁直下のコンクリート基礎に配置するため、既存木造住宅の耐震性を高める基礎補強をすることができる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)図1は本発明による基礎補強方法を実施した木造住宅の基礎部分を示す断面図である。地盤11は必要に応じて地盤改良を行う。既存コンクリート基礎12は逆T字型に形成されていることを想定しているが、I型になっている場合も同様にこの補強方法を用いることとする。コンクリート基礎12の片側の表面モルタルをはつり取り、コンクリート基礎12の上下5〜10cmの位置に1〜2cm角の切り込みをサンダー等を用いて入れる。その切り込み口にエポキシ系接着剤を塗布し、アラミド繊維ロッド14を入れる。請求項2においてはアラミド繊維シート19を表面にエポキシ系接着剤を用いて貼付ける。請求項1、請求項2いずれも外側はモルタルで仕上げる。高倍率の壁の柱は引抜き防止の為ホールダウン17で補強する。既存コンクリート基礎12に固定するためにアンカー15を用いる。
【0012】
図2は、補強用アラミド繊維ロッド14の一例を示す姿図である。補強用アラミド繊維ロッド14の直径は7.5mmで長さは2mのものを使用する。ただ、在来木造住宅は910モジュールが基本
(3)
となっていることが多いため、必要に応じて補強用アラミド繊維ロッド14のつなぎ目が柱直下にならないよう切断して調整する。
【0013】
図3は、基礎補強を実施した木造住宅の基礎部分を示す斜視図である。コンクリート基礎12の片側の表面モルタルをはつり取り、コンクリート基礎12の上下5〜10cmの位置に1〜2cm角の切り込みをサンダー等を用いて入れる。その切り込み口にエポキシ系接着剤を塗布し、アラミド繊維ロッド14を入れる。請求項2においてはアラミド繊維シート19を表面にエポキシ系接着剤を用いて貼付ける。請求項1、請求項2いずれも外側はモルタルで仕上げる。
高倍率の壁の柱は引抜き防止の為ホールダウン17で補強する。請求項1においてはアラミド繊維シート19がないものになる為、補強用アラミド繊維ロッド14を設置後表面モルタル13で仕上げる。
【0014】
図4は、基礎補強を実施した木造住宅の基礎部分を示す立面図である。これは補強用アラミド繊維ロッド14の設置の際に生じるつなぎ目の配置調整を表す。柱直下に補強用アラミド繊維ロッド14のつなぎ目がこないように配置する。補強用アラミド繊維ロッドは切断が容易であるため調整が簡単にできる特徴を持つ。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明による基礎補強方法によれば、既存木造住宅のコンクリート基礎補強をするにあたり、土台からの応力が最もかかると考えられる既存コンクリート基礎自体を補強することができる。また、コンクリート打設がないため、床組みを解体することなく施工が可能なので工期短縮が可能で安価な基礎補強ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による基礎補強方法を実施した木造住宅の基礎部分を示す断面図
【図2】本発明による基礎補強方法に使用される補強用アラミド繊維ロッドの一例を示す姿図
【図3】本発明による基礎補強方法における補強用アラミド繊維ロッド、補強用アラミド繊維シートの施工の一例を示す既存木造住宅のコンクリート基礎部分の斜視図
【図4】本発明による基礎補強方法における補強用アラミド繊維ロッドの施工位置の一例を示す既存木造住宅のコンクリート基礎部分の立面図
【符号の説明】
【0017】
11 地盤
12 コンクリート基礎
13 表面モルタル
14 補強用アラミド繊維ロッド
15 アンカー
16 ボルト
17 ホールダウン金物
18 土台
19 補強用アラミド繊維シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基礎の外側にアラミド繊維ロッドを埋め込みエポキシ系接着剤で固定後、表面モルタルで仕上げることにより前記補強用ロッド及びコンクリート基礎を一体化させることを特徴とする木造住宅の基礎補強方法。
【請求項2】
アラミド繊維シートをコンクリート基礎外側に被覆しコンクリート基礎全体を一体化させることを特徴とする請求項1に記載の木造住宅の基礎補強方法。
【請求項3】
前記補強用ロッド及び補強用シートを、木造住宅の周囲におけるコンクリート基礎の全周及び高倍率耐力壁直下のコンクリート基礎に配置することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれかに記載の木造住宅の基礎補強方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate