木酢含有液及びその製造方法及び木酢含有液を配合した配合飼料
【課題】木酢液の本来の特性を損なうことなく増量した木酢含有液及びその製造方法及び木酢含有液を配合した配合飼料を提供する。
【解決手段】木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5として木酢含有液とする。しかも、所定量の前記木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5として木酢含有液をさらに増量する。曝気処理は、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、曝気処理に用いる空気流量は、混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分とする。このようにして製造した木酢含有液を配合して配合飼料とする。
【解決手段】木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5として木酢含有液とする。しかも、所定量の前記木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5として木酢含有液をさらに増量する。曝気処理は、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、曝気処理に用いる空気流量は、混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分とする。このようにして製造した木酢含有液を配合して配合飼料とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を乾留して得られる木酢液を配合した木酢含有液、及びその製造方法、及び木酢含有液を配合した配合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木酢液は、次のようにして製造されている。
第一工程:原料となる木材を蒸焼き釜に入れて蒸焼き釜を加熱することにより木材を蒸焼きする。
第二工程:蒸焼きにともなって発生させたガスを冷却して液分を回収する。
第三工程:回収した液分を所要の容器に入れて静置することにより比重分離させる。比重分離にともなって、下層側から木タール層と、木酢液層と、油層の3層に分離する。
第四工程:木酢液層部分を抽出し、蒸留処理などの適宜の精製作業によって夾雑物を除去して最終的な木酢液とする。
【0003】
以上の工程によって高品質の木酢液が製造されている。
【0004】
このようにして製造された木酢液は多種多様な用途に用いられており、特に、木酢液の植物成長促進効果、病害虫防除効果、微生物に対する活性効果などを利用した液肥添加剤や(たとえば特許文献1参照)、家畜の肉質向上を目的とした飼料添加剤として利用されている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−053385号公報
【特許文献2】特開平06−292515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように木酢液の有効性が着目されるにつれて、木酢液の需要が急速に高まっている一方で、木酢液は蒸焼きした木材から放出されたガスを回収・精製することによって得られるために十分な量の供給が困難であり、しかも大量の木酢液の製造には大量の木材を必要とすることにより森林破壊を招くおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明者は、このような現状に鑑み、木酢液の本来の特性を損なうことなく増量する方法を開発すべく研究を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5とした木酢含有液を提供するものである。
【0008】
また、本発明の木酢含有液の製造方法では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液の製造方法を提供するものである。
【0009】
さらに、所定量の前記木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5として木酢含有液を増量することにも特徴を有し、曝気処理は、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、前記曝気処理に用いる空気流量は、前記混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分であることにも特徴を有するものである。
【0010】
また、本発明の配合飼料では、木材を乾留して得られる木酢液、またはこの木酢液を黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理することにより生成した木酢含有液を、黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液を配合したものである。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1記載の発明では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5とした木酢含有液としたことによって、木酢液が有する効果・効能を損なうことなく増量した木酢含有液を提供できる。したがって、木酢液採取のための大量の森林伐採を行う必要がなく、森林保護にも役立つものである。
【0012】
(2)請求項2記載の発明では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とする木酢含有液の製造方法としたことによって、木酢液が有する効果・効能を損なうことなく増量した木酢含有液を容易に製造できる。
【0013】
(3)請求項3記載の発明では、請求項2記載の木酢含有液の製造方法で製造された木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とする木酢含有液の製造方法としたことによって、一旦製造された木酢含有液を基にして木酢含有液を増量することができ、真の木酢液は木酢含有液の製造当初に所定量だけあればよく、木酢液を追加的に加えることなく木酢含有液を再生産できる。
【0014】
(4)請求項4記載の発明では、曝気処理を、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、曝気処理に用いる空気流量を、混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分としたことによって、木酢含有液の酸性化を効率よく促進させて短期間でpHを3〜5に調整できる。
【0015】
(5)請求項5記載の発明では、木材を乾留して得られる木酢液、またはこの木酢液を黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理することにより生成した木酢含有液を、黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液を配合した配合飼料としたことによって、この配合飼料を与えた家畜の肉質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の木酢含有液及びその製造方法では、木酢液の効果・効能を低減させることなく増量した木酢含有液を提供可能としているものであって、木酢液を増量可能とすることによってより広く木酢含有液を提供可能とするとともに、木酢液の採取を抑制して森林破壊を防止可能としているものである。
【0017】
特に、木酢含有液は、木酢液を増量して製造されるだけでなく、木酢含有液自身を増量して新たな木酢含有液とすることができ、自己増量を可能としているものである。
【0018】
そして、自己増量可能な木酢含有液を用いて配合飼料を製造することによって、配合飼料の安定的かつ大量の生産を可能とすることができ、しかも、木酢含有液が配合された配合飼料では、家畜の肉質の向上を図ることができる。
【0019】
木酢液または木酢含有液の増量の具体的な方法は、木材を乾留して得られた木酢液または木酢含有液に、黒糖及び/または糖蜜と、水を投入・混合して混合液を生成し、この混合液を曝気処理することによりpHを3〜5に調整して木酢含有液としているものである。好適には、pHは3.5〜4.0程度が望ましい。
【0020】
木酢液または木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水の配合比としては、木酢液または木酢含有液を5〜15重量%、黒糖及び/または糖蜜を10〜30重量%、水を55〜85重量%が望ましい。
【0021】
ここで、木酢液は、木材を乾留して得たものであれば良いが、防腐剤等を含む建築廃材や、クス、アセビ等の人畜に有害な物質を含む木材は除外することが好ましい。これらを除くことで、人や動植物に対しての木酢含有液の使用で生じる悪影響を防ぐと共に、木酢含有液の増量化に寄与する後述の微生物の成育を良好に保つことができる。
【0022】
また、混合液に使用する水は、飲用可能な程度に清浄な水であれば良く、好ましくは、微生物が少ない水道水等が望ましく、特に水道水の場合には、一旦加熱して塩素成分を除去していることが望ましい。
【0023】
木酢液または木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して生成した混合液は弱酸性状態となっており、この混合液を空気により曝気することによって空気中に浮遊する酵母菌などの多種の微生物を混合液中に混入して、かつ黒糖及び/または糖蜜を炭素源としてそれらの微生物の増殖を促し、微生物の増殖にともなって生成されるクエン酸を主とした多種の有機酸により木酢液と同様の効果・効能を示す木酢含有液へと熟成化されているものと推察される。
【0024】
特に、曝気によって混合液中に混入された微生物のうち、木酢液が存在する条件下で成育可能な微生物だけが生き残り、それ以外の微生物は淘汰されることにより、木酢含有液の製造に適した微生物が選択されているものと推察される。
【0025】
混合液が所望の木酢含有液にまで熟成されたかどうかは混合液のpHで確認可能であって、pHが3〜5となったところで木酢液と同等の効果・効能を有する木酢含有液となっているものと判定している。
【0026】
このように混合液のpHによって曝気処理の終了タイミングを決定していることにより、製造された木酢含有液の均質化を図ることができ、常に一定品質とした木酢液を製造できる。
【0027】
混合液の曝気処理は、常時曝気ではなく断続曝気であって、所定時間毎に10〜30分間連続して曝気を行うものであって、曝気処理に用いる空気流量は、混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分としている。なお、曝気処理は常温条件下で行っている。
【0028】
このように断続曝気としていることにより、上記した木酢液による微生物の選別を行うとともに、木酢含有液の熟成に寄与する微生物への酸素供給とをバランスさせることができ、木酢含有液の熟成期間を短縮化することができる。
【0029】
以下において、木酢含有液の製造の具体例、及び製造した木酢含有液を添加した配合飼料の製造について説明する。
【0030】
まず、木酢含有液は、タンク容量を約20m3とした本タンクに、木酢液を10重量%と、黒糖及び/または糖蜜を20重量%と、水を70重量%として投入し、曝気用ポンプを用いて本タンクに0.2m3/分の曝気を4時間毎に15分ずつ行って、本タンク内の木酢含有液を熟成させて製造したものである。なお、木酢液の代わりに熟成された木酢含有液を用いてもよい。
【0031】
本タンクによる木酢含有液の熟成期間は約6ヶ月であって、本タンク内の木酢液の酸性度がpH=5.0よりも高くなったところで終了するようにしている。望ましくは、pH=4.0となるまで熟成させた方がよい。
【0032】
このように熟成させた木酢含有液は予備タンクに入れて保管し、所定量ずつ配合飼料の製造に用いている。配合飼料の製造にあたっては、木酢含有液をあらかじめ噴霧装置の噴霧用タンクに投入し、配合飼料1トン当たりに2〜4Lの木酢含有液を噴霧しながら配合飼料を攪拌して製造している。
【0033】
木酢含有液の配合量は、配合飼料100重量%に対して0.01〜1.0重量%程度とすることが望ましい。0.01重量%よりも少なくすると、木酢含有液の添加による顕著な効果が見られなくなる場合がある。一方、1.0重量%よりも大きくすると、家畜の配合飼料の摂取量の低下が見られる場合がある。多分、酸性の木酢含有液の添加量が増えることによって、配合飼料の味が低下しているものと思われる。
【0034】
このように製造した配合飼料の効果について簡単に説明する。ここでは、第1例として配合飼料を豚に与えた場合と、第2例として配合飼料を鶏に与えた場合について説明する。
【0035】
(第1例)
まず、生体重約30kgの子豚を30頭用意し、無添加区の15頭と、試験区の15頭とに分け、それぞれに自動給餌器で配合飼料を自然飲食給餌させながら飼育した。
【0036】
このとき、無添加区の豚には木酢含有液を添加していない配合飼料を与え、試験区の豚には、生体重が70kgとなるまでは木酢含有液を0.2重量%添加した配合飼料を与え、生体重が70kg以上となったところで木酢含有液を0.4重量%添加した配合飼料を与えた。下表の表1は、それぞれの豚に与えた配合飼料の配合割合を示したものである。
【0037】
【表1】
【0038】
そして、それぞれ105日間飼育した豚の状態を下表の表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
これらの豚をそれぞれ屠殺して、豚肉の外観項目と、食味項目に分けて比較試験を行った。評価は、食肉処理工場の従業員4名と、飼育農家3名とで行った。評価結果は、下表の表3に示すようになった。
【0041】
【表3】
【0042】
上記の結果をまとめると、試験区の豚に対しては以下のように評価できる。
(1)肉色はピンク色を呈している。
(2)脂肪がしまってシャキシャキ肉である。
(3)ドリップが出にくい。
(4)日持ちがよい。
(5)獣特有の生臭さがない。
(6)本来の肉の風味(甘さとコク)がある。
(7)料理する際、獣特有のアクが出ない。
(8)6〜12ヶ月の長期間の冷凍保存を行っても味の変化がない。
【0043】
(第2例)
まず、体重約40gの初生ビナを200羽用意し、対照区の100羽と、試験区の100羽とに分け、それぞれに自動給餌で配合飼料を自然飲食給餌させながら飼育した。
【0044】
このとき、対照区の鶏には他社製品の添加剤を添加した配合飼料を与え、試験区の鶏には木酢含有液を添加した配合飼料を与えた。下表の表4は、それぞれの鶏に与えた配合飼料の配合割合を示したものである。
【0045】
【表4】
【0046】
そして、それぞれ49日令まで飼育した鶏の状態を下表の表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
これらの鶏の肉の外観項目と、食味項目に分けて比較試験を行ったところ、以下の評価を得た。
【0049】
(1)処理工場において脱毛、中抜工程を経たト体の皮膚の色合いを観察したが、試験区鶏群では表面がピンク色を呈し、瑞々しく滑らかで光沢があり、対照区鶏群に対して明確な相違を見せた。また、試験区鶏群では、肉質は締まり気味であって、体組織や腹腔内脂肪も減少していた。
【0050】
(2)鶏特有のコクシ被病については、両鶏群ともその経過を辿ったことは腸管が示していたが、試験区鶏群は腸管が厚く、比較的軽症で殆ど健康状態で生育していたことを示していた。
【0051】
(3)肉質、風味などを吟味するため、処理工場で当日処理された対照区鶏群から雄雌各1羽、試験区鶏群から雄雌各1羽を抽出し、比較試験した。調味料・塩・しょう油は一切排除して、第1の調理法として、平たい鍋にサラダ油をひいて3〜5センチサイズとした生肉を油炒めし、第2の調理法として、水の分量・肉量を計算して水炊きした。評価は、飼料工場の従業員4名と、飼育農家4名とで行った。
【0052】
試験区鶏群の正肉炒めは、対照区鶏群の正肉炒めより火の通りが早く、柔らかく仕上がった。対照区鶏群の生肉の方が肉組織内の水分、体脂肪が少ないことが原因であると考えられる。さらに、炒め肉の芳香には両群間で歴然とした差があり、対照区鶏群の正肉には鶏独特の臭みがあった。
【0053】
水炊きの場合も、試験区鶏群の水炊き肉からはアクのしみだしが対照区鶏群の水炊き肉からよりも少なく、対照区鶏群の水炊き肉からは鶏油が多く出た。対照区鶏群では筋肉組織内に脂肪が多く存在していることに起因していると思われる。水炊きスープの色彩は、試験区鶏群のものは透明に近かったが、対照区鶏群のものは表面に黄色い油が浮遊していた。食感としては、試験区鶏群のものは率直な鶏肉エキスの風味が感じられたが、対照区鶏群のものは鶏独特の臭みが感知されると同時に口腔内壁に油が付着するのが感じられた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を乾留して得られる木酢液を配合した木酢含有液、及びその製造方法、及び木酢含有液を配合した配合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木酢液は、次のようにして製造されている。
第一工程:原料となる木材を蒸焼き釜に入れて蒸焼き釜を加熱することにより木材を蒸焼きする。
第二工程:蒸焼きにともなって発生させたガスを冷却して液分を回収する。
第三工程:回収した液分を所要の容器に入れて静置することにより比重分離させる。比重分離にともなって、下層側から木タール層と、木酢液層と、油層の3層に分離する。
第四工程:木酢液層部分を抽出し、蒸留処理などの適宜の精製作業によって夾雑物を除去して最終的な木酢液とする。
【0003】
以上の工程によって高品質の木酢液が製造されている。
【0004】
このようにして製造された木酢液は多種多様な用途に用いられており、特に、木酢液の植物成長促進効果、病害虫防除効果、微生物に対する活性効果などを利用した液肥添加剤や(たとえば特許文献1参照)、家畜の肉質向上を目的とした飼料添加剤として利用されている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−053385号公報
【特許文献2】特開平06−292515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように木酢液の有効性が着目されるにつれて、木酢液の需要が急速に高まっている一方で、木酢液は蒸焼きした木材から放出されたガスを回収・精製することによって得られるために十分な量の供給が困難であり、しかも大量の木酢液の製造には大量の木材を必要とすることにより森林破壊を招くおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明者は、このような現状に鑑み、木酢液の本来の特性を損なうことなく増量する方法を開発すべく研究を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5とした木酢含有液を提供するものである。
【0008】
また、本発明の木酢含有液の製造方法では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液の製造方法を提供するものである。
【0009】
さらに、所定量の前記木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5として木酢含有液を増量することにも特徴を有し、曝気処理は、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、前記曝気処理に用いる空気流量は、前記混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分であることにも特徴を有するものである。
【0010】
また、本発明の配合飼料では、木材を乾留して得られる木酢液、またはこの木酢液を黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理することにより生成した木酢含有液を、黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液を配合したものである。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1記載の発明では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5とした木酢含有液としたことによって、木酢液が有する効果・効能を損なうことなく増量した木酢含有液を提供できる。したがって、木酢液採取のための大量の森林伐採を行う必要がなく、森林保護にも役立つものである。
【0012】
(2)請求項2記載の発明では、木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とする木酢含有液の製造方法としたことによって、木酢液が有する効果・効能を損なうことなく増量した木酢含有液を容易に製造できる。
【0013】
(3)請求項3記載の発明では、請求項2記載の木酢含有液の製造方法で製造された木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とする木酢含有液の製造方法としたことによって、一旦製造された木酢含有液を基にして木酢含有液を増量することができ、真の木酢液は木酢含有液の製造当初に所定量だけあればよく、木酢液を追加的に加えることなく木酢含有液を再生産できる。
【0014】
(4)請求項4記載の発明では、曝気処理を、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、曝気処理に用いる空気流量を、混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分としたことによって、木酢含有液の酸性化を効率よく促進させて短期間でpHを3〜5に調整できる。
【0015】
(5)請求項5記載の発明では、木材を乾留して得られる木酢液、またはこの木酢液を黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理することにより生成した木酢含有液を、黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液を配合した配合飼料としたことによって、この配合飼料を与えた家畜の肉質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の木酢含有液及びその製造方法では、木酢液の効果・効能を低減させることなく増量した木酢含有液を提供可能としているものであって、木酢液を増量可能とすることによってより広く木酢含有液を提供可能とするとともに、木酢液の採取を抑制して森林破壊を防止可能としているものである。
【0017】
特に、木酢含有液は、木酢液を増量して製造されるだけでなく、木酢含有液自身を増量して新たな木酢含有液とすることができ、自己増量を可能としているものである。
【0018】
そして、自己増量可能な木酢含有液を用いて配合飼料を製造することによって、配合飼料の安定的かつ大量の生産を可能とすることができ、しかも、木酢含有液が配合された配合飼料では、家畜の肉質の向上を図ることができる。
【0019】
木酢液または木酢含有液の増量の具体的な方法は、木材を乾留して得られた木酢液または木酢含有液に、黒糖及び/または糖蜜と、水を投入・混合して混合液を生成し、この混合液を曝気処理することによりpHを3〜5に調整して木酢含有液としているものである。好適には、pHは3.5〜4.0程度が望ましい。
【0020】
木酢液または木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水の配合比としては、木酢液または木酢含有液を5〜15重量%、黒糖及び/または糖蜜を10〜30重量%、水を55〜85重量%が望ましい。
【0021】
ここで、木酢液は、木材を乾留して得たものであれば良いが、防腐剤等を含む建築廃材や、クス、アセビ等の人畜に有害な物質を含む木材は除外することが好ましい。これらを除くことで、人や動植物に対しての木酢含有液の使用で生じる悪影響を防ぐと共に、木酢含有液の増量化に寄与する後述の微生物の成育を良好に保つことができる。
【0022】
また、混合液に使用する水は、飲用可能な程度に清浄な水であれば良く、好ましくは、微生物が少ない水道水等が望ましく、特に水道水の場合には、一旦加熱して塩素成分を除去していることが望ましい。
【0023】
木酢液または木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して生成した混合液は弱酸性状態となっており、この混合液を空気により曝気することによって空気中に浮遊する酵母菌などの多種の微生物を混合液中に混入して、かつ黒糖及び/または糖蜜を炭素源としてそれらの微生物の増殖を促し、微生物の増殖にともなって生成されるクエン酸を主とした多種の有機酸により木酢液と同様の効果・効能を示す木酢含有液へと熟成化されているものと推察される。
【0024】
特に、曝気によって混合液中に混入された微生物のうち、木酢液が存在する条件下で成育可能な微生物だけが生き残り、それ以外の微生物は淘汰されることにより、木酢含有液の製造に適した微生物が選択されているものと推察される。
【0025】
混合液が所望の木酢含有液にまで熟成されたかどうかは混合液のpHで確認可能であって、pHが3〜5となったところで木酢液と同等の効果・効能を有する木酢含有液となっているものと判定している。
【0026】
このように混合液のpHによって曝気処理の終了タイミングを決定していることにより、製造された木酢含有液の均質化を図ることができ、常に一定品質とした木酢液を製造できる。
【0027】
混合液の曝気処理は、常時曝気ではなく断続曝気であって、所定時間毎に10〜30分間連続して曝気を行うものであって、曝気処理に用いる空気流量は、混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分としている。なお、曝気処理は常温条件下で行っている。
【0028】
このように断続曝気としていることにより、上記した木酢液による微生物の選別を行うとともに、木酢含有液の熟成に寄与する微生物への酸素供給とをバランスさせることができ、木酢含有液の熟成期間を短縮化することができる。
【0029】
以下において、木酢含有液の製造の具体例、及び製造した木酢含有液を添加した配合飼料の製造について説明する。
【0030】
まず、木酢含有液は、タンク容量を約20m3とした本タンクに、木酢液を10重量%と、黒糖及び/または糖蜜を20重量%と、水を70重量%として投入し、曝気用ポンプを用いて本タンクに0.2m3/分の曝気を4時間毎に15分ずつ行って、本タンク内の木酢含有液を熟成させて製造したものである。なお、木酢液の代わりに熟成された木酢含有液を用いてもよい。
【0031】
本タンクによる木酢含有液の熟成期間は約6ヶ月であって、本タンク内の木酢液の酸性度がpH=5.0よりも高くなったところで終了するようにしている。望ましくは、pH=4.0となるまで熟成させた方がよい。
【0032】
このように熟成させた木酢含有液は予備タンクに入れて保管し、所定量ずつ配合飼料の製造に用いている。配合飼料の製造にあたっては、木酢含有液をあらかじめ噴霧装置の噴霧用タンクに投入し、配合飼料1トン当たりに2〜4Lの木酢含有液を噴霧しながら配合飼料を攪拌して製造している。
【0033】
木酢含有液の配合量は、配合飼料100重量%に対して0.01〜1.0重量%程度とすることが望ましい。0.01重量%よりも少なくすると、木酢含有液の添加による顕著な効果が見られなくなる場合がある。一方、1.0重量%よりも大きくすると、家畜の配合飼料の摂取量の低下が見られる場合がある。多分、酸性の木酢含有液の添加量が増えることによって、配合飼料の味が低下しているものと思われる。
【0034】
このように製造した配合飼料の効果について簡単に説明する。ここでは、第1例として配合飼料を豚に与えた場合と、第2例として配合飼料を鶏に与えた場合について説明する。
【0035】
(第1例)
まず、生体重約30kgの子豚を30頭用意し、無添加区の15頭と、試験区の15頭とに分け、それぞれに自動給餌器で配合飼料を自然飲食給餌させながら飼育した。
【0036】
このとき、無添加区の豚には木酢含有液を添加していない配合飼料を与え、試験区の豚には、生体重が70kgとなるまでは木酢含有液を0.2重量%添加した配合飼料を与え、生体重が70kg以上となったところで木酢含有液を0.4重量%添加した配合飼料を与えた。下表の表1は、それぞれの豚に与えた配合飼料の配合割合を示したものである。
【0037】
【表1】
【0038】
そして、それぞれ105日間飼育した豚の状態を下表の表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
これらの豚をそれぞれ屠殺して、豚肉の外観項目と、食味項目に分けて比較試験を行った。評価は、食肉処理工場の従業員4名と、飼育農家3名とで行った。評価結果は、下表の表3に示すようになった。
【0041】
【表3】
【0042】
上記の結果をまとめると、試験区の豚に対しては以下のように評価できる。
(1)肉色はピンク色を呈している。
(2)脂肪がしまってシャキシャキ肉である。
(3)ドリップが出にくい。
(4)日持ちがよい。
(5)獣特有の生臭さがない。
(6)本来の肉の風味(甘さとコク)がある。
(7)料理する際、獣特有のアクが出ない。
(8)6〜12ヶ月の長期間の冷凍保存を行っても味の変化がない。
【0043】
(第2例)
まず、体重約40gの初生ビナを200羽用意し、対照区の100羽と、試験区の100羽とに分け、それぞれに自動給餌で配合飼料を自然飲食給餌させながら飼育した。
【0044】
このとき、対照区の鶏には他社製品の添加剤を添加した配合飼料を与え、試験区の鶏には木酢含有液を添加した配合飼料を与えた。下表の表4は、それぞれの鶏に与えた配合飼料の配合割合を示したものである。
【0045】
【表4】
【0046】
そして、それぞれ49日令まで飼育した鶏の状態を下表の表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
これらの鶏の肉の外観項目と、食味項目に分けて比較試験を行ったところ、以下の評価を得た。
【0049】
(1)処理工場において脱毛、中抜工程を経たト体の皮膚の色合いを観察したが、試験区鶏群では表面がピンク色を呈し、瑞々しく滑らかで光沢があり、対照区鶏群に対して明確な相違を見せた。また、試験区鶏群では、肉質は締まり気味であって、体組織や腹腔内脂肪も減少していた。
【0050】
(2)鶏特有のコクシ被病については、両鶏群ともその経過を辿ったことは腸管が示していたが、試験区鶏群は腸管が厚く、比較的軽症で殆ど健康状態で生育していたことを示していた。
【0051】
(3)肉質、風味などを吟味するため、処理工場で当日処理された対照区鶏群から雄雌各1羽、試験区鶏群から雄雌各1羽を抽出し、比較試験した。調味料・塩・しょう油は一切排除して、第1の調理法として、平たい鍋にサラダ油をひいて3〜5センチサイズとした生肉を油炒めし、第2の調理法として、水の分量・肉量を計算して水炊きした。評価は、飼料工場の従業員4名と、飼育農家4名とで行った。
【0052】
試験区鶏群の正肉炒めは、対照区鶏群の正肉炒めより火の通りが早く、柔らかく仕上がった。対照区鶏群の生肉の方が肉組織内の水分、体脂肪が少ないことが原因であると考えられる。さらに、炒め肉の芳香には両群間で歴然とした差があり、対照区鶏群の正肉には鶏独特の臭みがあった。
【0053】
水炊きの場合も、試験区鶏群の水炊き肉からはアクのしみだしが対照区鶏群の水炊き肉からよりも少なく、対照区鶏群の水炊き肉からは鶏油が多く出た。対照区鶏群では筋肉組織内に脂肪が多く存在していることに起因していると思われる。水炊きスープの色彩は、試験区鶏群のものは透明に近かったが、対照区鶏群のものは表面に黄色い油が浮遊していた。食感としては、試験区鶏群のものは率直な鶏肉エキスの風味が感じられたが、対照区鶏群のものは鶏独特の臭みが感知されると同時に口腔内壁に油が付着するのが感じられた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5とした木酢含有液。
【請求項2】
木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とする木酢含有液の製造方法。
【請求項3】
所定量の前記木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とすることを特徴とする請求項2記載の木酢含有液の製造方法。
【請求項4】
前記曝気処理は、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、前記曝気処理に用いる空気流量は、前記混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の木酢含有液の製造方法。
【請求項5】
木材を乾留して得られる木酢液、またはこの木酢液を黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理することにより生成した木酢含有液を、黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液を配合した配合飼料。
【請求項1】
木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合して曝気処理することにより、pHを3〜5とした木酢含有液。
【請求項2】
木材を乾留して得られる木酢液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とする木酢含有液の製造方法。
【請求項3】
所定量の前記木酢含有液と、黒糖及び/または糖蜜と、水とを混合し、その混合液を曝気処理してpHを3〜5とすることを特徴とする請求項2記載の木酢含有液の製造方法。
【請求項4】
前記曝気処理は、常温条件下で所定時間毎に10〜30分間行うと共に、前記曝気処理に用いる空気流量は、前記混合液1m3に対して0.005〜0.05m3/分であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の木酢含有液の製造方法。
【請求項5】
木材を乾留して得られる木酢液、またはこの木酢液を黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理することにより生成した木酢含有液を、黒糖及び/または糖蜜とともに水に混合した後に曝気処理してpHを3〜5とした木酢含有液を配合した配合飼料。
【公開番号】特開2006−213824(P2006−213824A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28240(P2005−28240)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505044587)株式会社アーク都市建築事務所 (1)
【出願人】(505043591)株式会社サンリッツ (1)
【出願人】(595001789)
【出願人】(505046385)
【出願人】(505044738)
【出願人】(505043616)
【出願人】(505043627)
【出願人】(505044819)
【出願人】(505044820)
【出願人】(505043638)
【出願人】(505044831)
【出願人】(505044842)
【出願人】(505043650)
【出願人】(505044853)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505044587)株式会社アーク都市建築事務所 (1)
【出願人】(505043591)株式会社サンリッツ (1)
【出願人】(595001789)
【出願人】(505046385)
【出願人】(505044738)
【出願人】(505043616)
【出願人】(505043627)
【出願人】(505044819)
【出願人】(505044820)
【出願人】(505043638)
【出願人】(505044831)
【出願人】(505044842)
【出願人】(505043650)
【出願人】(505044853)
【Fターム(参考)】
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