説明

未加工コットンリンターから製造された水分保持剤を用いたセメントシステム

硬練りセメントモルタル組成物で用いられる、未加工コットンリンターから製造されたセルロースエーテルと少なくとも1種の添加剤との混合物の組成物であって、本タイル硬練りセメントモルタル組成物中のセルロースエーテルの量は、有意に低減されている。この硬練りセメントモルタル組成物を水と混合し、基材に塗布すると、この軟練りモルタルの保水性、増粘の挙動および/または垂れ下り抵抗は、従来の類似のセルロースエーテルを用いた場合と同等であるか、または、それに比べて改善されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月27日付けで出願された米国仮出願番号60/565,643の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、建物の壁やその他の物体のためのモルタルとしての、硬練りセメントモルタル組成物において有用な混合組成物に関する。より具体的には、本発明は、未加工(raw)コットンリンターから製造されたセルロースエーテルの改善された水分保持剤を用いた、薄い目地モルタルおよびレンガ用モルタルに使用するための硬練りセメントモルタルに関する。
【0003】
発明の背景
従来のセメントモルタル、例えば従来のレンガ用モルタルは、セメントと砂の簡単な混合物であることが多い。この乾燥混合物を水と混合し、モルタルを形成することができる。これらの従来のモルタルそのものは、低い流動性またはこて塗適性しか有さない。その結果として、モルタルから水分が急速に蒸発または除去され、セメントの劣った、または低い作業性、ならびに不十分な水和を引き起こすために、これらのモルタルの塗布は、特に夏季、暑中条件下で、大きな労働力を要する。
【0004】
従来の硬化モルタルの物理特性は、その水和プロセス、従って凝結工程中のそれらからの水分の除去速度の影響を強く受ける。凝結反応の開始時の水分の除去速度の上昇によって、または、モルタル中の水の濃度の減少によって、これらのパラメーターに影響を与えるあらゆる作用が、モルタルの物理特性の劣化を引き起こす可能性がある。多くの基材、例えば石灰砂岩、シンダーブロック、木材または発泡モルタルの石材は、多孔質であり、モルタルから相当量の水を除去する可能性があるため、上述の難点が起こる。
【0005】
上述の水分が失われる問題を克服する、または最小化するために、従来技術は、この問題を軽減するためのセルロースエーテルの水分保持剤としての使用を開示している。この従来技術の例は、米国特許第4,501,617号であり、こて塗適性、または、モルタルの流動性を改善するための保水性の補助剤として、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HPHEC)の使用を開示している。硬練りモルタル用途におけるセルロースエーテルの使用が、従来技術の特許、例えばDE3046585、EP54175、DE3909070、DE3913518、CA2456793、EP773198で開示されている。
【0006】
ドイツ国公報第4,034,709号A1は、水硬性セメントモルタルまたはコンクリート組成物への添加剤としての、セルロースエーテルを製造するための未加工コットンリンターの使用を開示している。
【0007】
セルロースエーテル(CE)は、商業的に重要な水溶性ポリマーの重要なクラスの代表である。これらのCEは、水性媒体の粘度を高めることができる。このCEの粘性化する能力は、主として、その分子量、それに結合した化学置換基およびポリマー鎖の構造的な特徴によって制御される。CEは、構築、塗料、食品、パーソナルケア、医薬、接着剤、界面活性剤/洗剤、油田、製紙産業、セラミック、重合プロセス、皮革産業および織物のような多くの用途で用いられる。
【0008】
建築産業では、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)が、単独で、または組み合わせのいずれかで、硬練りモルタル配合物に最も広く用いられている。硬練りモルタル配合物は、無機性の結合剤としての石膏、セメントおよび/または石灰のブレンドを意味し、これらは、単独で、または、骨材(例えばシリカおよび/または炭酸塩砂/粉末)および添加剤と組み合わせて、のいずれかで用いられる。
【0009】
それらを使用するために、これらの硬練りモルタルは、水と混合して軟練り材料として塗布される。目的とする塗布のために、水に溶解すると高粘性を付与する水溶性ポリマーが必要である。MC、MHEC、MHPC、EHEC、HECもしくはHMHEC、またはそれらの組み合わせを用いることによって、高い保水性(すなわちその結果として、含水量の規定された制御)のような望ましい硬練りモルタル(すなわち、レンガ用モルタル、および、薄い目地モルタル)特性が達成される。加えて、得られた材料の改善された作業性と十分な付着を観察することができる。CE溶液の粘度の増加により、改善された保水能力および付着が得られるため、より効率的に、かつ費用効率よく作用するように高分子量のCEが望ましい。溶液の高い粘度を達成するために、開始時のセルロースエーテルは、慎重に選択する必要がある。現在のところ、精製コットンリンターまたは高粘度の木材パルプを用いることによって、達成可能な最大2重量%の水溶液の粘度は、約70,000〜80,000mPaである(ブルックフィールドRVT粘度計を用いて、20℃および20rpmで、スピンドル番号7を用いて)。
【0010】
硬練りセメントモルタル産業において、それでもなお、セメントプラスターの塗布および性能特性を改善するために、費用効率が高い様式で用いることができる水分保持剤を持つことが必要である。この結果の達成を補助するために、増粘剤および/または水分保持剤として使用するための、好ましくは約80,000mPaより大きい2重量%濃度での水溶液のブルックフィールド粘度を付与し、それでもなお費用効率が高い水分保持剤を提供することが好ましいであろう。
【0011】
発明の要約
本発明は、20〜99.9重量%の量の、未加工コットンリンターから製造されたアルキルヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース、および、それらの混合物であるセルロースエーテル、および、0.1〜80重量%の量の、有機性または無機性の増粘剤、垂れ防止剤、空気連行剤、湿潤剤、消泡剤、流動化剤、分散剤、カルシウム錯化剤、遅延剤、促進剤、撥水剤、再分散性粉末、バイオポリマーおよび繊維の少なくとも1種の添加剤の、硬練りセメントモルタル組成物に使用するための混合組成物に関し;本混合組成物は、硬練りセメントモルタル組成物に用いて、十分な量の水と混合すると、基材に塗布できるモルタルを生成し、ここで、モルタル組成物中の混合組成物の量は有意に低減されており、同時に、得られた軟練りモルタルの保水性および増粘の挙動は、従来の類似のセルロースエーテルを用いた場合と比べて改善されているか、またはそれと同等である。
【0012】
本発明はまた、水硬性セメント、細骨材原料、および、未加工コットンリンターから製造された少なくとも1種のセルロースエーテルである水分保持剤の、硬練りセメントモルタル組成物にも向けられる。
【0013】
本硬練りセメントモルタル組成物を十分な量の水と混合すると、該組成物はモルタルを生成し、ここで、セルロースエーテルの量は有意に低減されており、同時に、該軟練りモルタルの保水性、増粘および/または垂れ下り抵抗は、従来の類似のセルロースエーテルを用いた場合と比べて改善されているか、またはそれと同等である。
【0014】
図面の簡単な説明
図1は、下記の実施例3に記載の実験データのグラフ表示である。
【0015】
図2は、下記の実施例4に記載の実験データのグラフ表示である。
【0016】
図3は、下記の実施例6に記載の実験データのグラフ表示である。
【0017】
発明の詳細な説明
所定のセルロースエーテル、特に未加工コットンリンター(RCL)から製造されたアルキルヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースは、従来の精製コットンリンターまたは高粘度の木材パルプから製造された市販のセルロースエーテルの粘度に比べて、極めて高い溶液の粘度を有することが発見された。セメントモルタル組成物でこれらのセルロースエーテルを用いることによって、これまで従来のセルロースエーテルを用いて達成することが不可能であった数種の利点(すなわち、使用におけるより低いコスト、および、より優れた塗布特性)、および、改善された性能特性が提供される。
【0018】
欧州規格EN998−2によれば、レンガ用モルタルは、レンガユニットを敷きこむために用いられる、1種またはそれ以上の無機性の結合剤、骨材、添加剤および/または混和材料の混合物と定義される。これは、「厚い」層でもよいし、または、「薄い」層でもよい。
【0019】
薄い目地モルタルは、発泡性のコンクリート製レンガまたは石灰砂岩のユニットを用いて壁またはその他の物体を建造するための一種の接着剤として用いられる。
【0020】
本発明によれば、アルキルヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースのセルロースエーテルは、切断された、または、切断されていない未加工コットンリンターから製造される。アルキルヒドロキシアルキルセルロースのアルキル基は、1〜24個の炭素原子を有し、ヒドロキシアルキル基は、2〜4個の炭素原子を有する。また、ヒドロキシアルキルセルロースのヒドロキシアルキル基は、2〜4個の炭素原子を有する。これらのセルロースエーテルは、予想外の驚くべき利点をセメントモルタルに提供する。RCL系のCEの粘性は極めて高いために、レンガ用モルタルおよび薄い目地モルタルにおいて効率的な塗布性能を観察することができる。現在のところ用いられる市販の高粘度CEより低いRCL系のCEの使用量でも、水に関して同様の、または、改善された塗布性能が達成される。また、ことも、RCLから製造されたアルキルヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース、例えばメチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、および、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロースは、モルタルにかなりの粘度を付与することが実証された。
【0021】
本発明によれば、本混合組成物は、20〜99.9重量%の量、好ましくは70〜99.0重量%の量のセルロースエーテルを含む。
【0022】
本発明のRCL系の水溶性の非イオン性CEとしては、(一次CEとして)、特に、未加工コットンリンター(RCL)から製造されたアルキルヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースが挙げられる。このような誘導体の例としては、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水化修飾したエチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、および、それらの混合物が挙げられる。疎水性置換基は、1〜25個の炭素原子を有していてもよい。それらの化学組成に応じて、それらは、適用可能であれば、無水グルコース単位あたり、0.5〜2.5のメチルまたはエチル置換度(DS)、約0.01〜6のヒドロキシアルキルのモル置換度(HA−MS)、および、約0.01〜0.5の疎水性置換基のモル置換度(HS−MS)を有していてもよい。より具体的には、本発明は、これらの水溶性の非イオン性CEの、レンガ用モルタルおよび薄い目地モルタルにおいて効率的な増粘剤および/または水分保持剤としての使用に関する。
【0023】
本発明の実施する際に、精製コットンリンター、および、木材パルプ(二次CE)から製造された従来のCEを、RCL系のCEと併用することができる。精製セルロースからの様々なタイプのCEの製造は、当業界既知である。これらの二次CEは、本発明を実施するために、一次RCL−CEと併用することができる。これらの二次CEの多くは、市販品であるか、または、市場および/または文献で既知であるため、これらは本願において、従来のCEと称するものとする。
【0024】
二次CEの例は、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、疎水化修飾したエチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロース(SEMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロース(SEMHPC)、および、スルホエチルヒドロキシエチルセルロース(SEHEC)である。
【0025】
本発明によれば、好ましい一実施形態は、ブルックフィールドRVT粘度計で、20℃および20rpmで、2重量%の濃度で、スピンドル番号7を用いて測定した場合、80,000mPaより大きい、好ましくは90,000mPaより大きい水溶液のブルックフィールド粘度を有するMHECおよびMHPCを利用する。
【0026】
本発明によれば、その他の好ましい実施形態は、ブルックフィールドLVF回転式粘度計で、25℃、30rpmおよび2重量%の濃度で、スピンドル番号4を用いて測定した場合、15,000mPaより大きい水溶液のブルックフィールド粘度を有する疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロースを利用する。
【0027】
本発明によれば、本混合組成物は、0.1〜80重量%の量、好ましくは0.5〜30重量%の量の少なくとも1種の添加剤を含む。添加剤の例は、有機性または無機性の増粘剤、および/または、第二の水分保持剤、垂れ防止剤、空気連行剤、湿潤剤、消泡剤、流動化剤、分散剤、カルシウム錯化剤、遅延剤、促進剤、撥水剤、再分散性粉末、バイオポリマーおよび繊維である。有機性の増粘剤の例は、多糖類である。添加剤のその他の例は、カルシウムキレート剤、フルーツ酸、および、表面活性物質である。
【0028】
添加剤のより具体的な例は、アクリルアミドのホモまたはコポリマーである。このようなポリマーの例は、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリルアミド−コ−ナトリウムアクリラート)、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド−コ−ナトリウム−アクリルアミドメチルプロパンスルホナート)、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、ポリ(アクリルアミド−コ−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド−コ−(アクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド−コ−(アクリロイル)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、および、それらの混合物である。
【0029】
多糖類の添加剤の例は、スターチエーテル、スターチ、グアール、グアール誘導体、デキストラン、キチン、キトサン、キシラン、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、マンナン、ガラクタン、グルカン、アラビノキシラン、アルギナート、および、セルロース繊維である。
【0030】
添加剤のその他の具体的な例は、ゼラチン、ポリエチレングリコール、カゼイン、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合体、スルホン化ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合体、ポリアクリル酸塩、ポリカルボキシレートエーテル、ポリスチレンスルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、1〜4個の炭素原子を有する有機酸のカルシウム塩、アルカノアートの塩、硫酸アルミニウム、金属アルミニウム、ベントナイト、モンモリロナイト、海泡石、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール、および、酢酸ビニル系のホモ、コまたはターポリマー、マレイン酸エステル、エチレン、スチレン、ブタジエン、ビニルバーサテート、および、アクリル単量体である。
【0031】
本発明の混合組成物は、従来技術において既知の多種多様の技術で製造することができる。例としては、簡単な乾式混合、溶液の噴霧、または、乾燥材料上での溶融、共押出し、または、共粉砕が挙げられる。
【0032】
本発明によれば、本混合組成物を硬練りセメントモルタル配合物に用いて、十分な量の水と混合すると、該組成物はモルタルを生成し、この混合物の量、すなわちセルロースエーテルの量は有意に低減されている。この混合物またはセルロースエーテルの低減された量は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%である。CEをこのように少なくして用いたとしても、軟練りプラスターモルタルの保水性および増粘および/または垂れ下り抵抗は、従来の類似のセルロースエーテルを用いた場合と同等であるか、または、それに比べて改善されている。
【0033】
本発明の混合組成物は、このような混合物を、製造施設で直接用いることができるセメントモルタルの製造元に直接的または間接的に販売することができる。本混合組成物はまた、様々な製造元にとって好ましい必要条件に応じて受注ブレンドしてもよい。
【0034】
本発明のセメントのモルタル組成物は、約0.001〜1.0重量%の量のCEを含む。少なくとも1種の添加剤の量は、約0.0001〜10重量%である。これらの重量パーセンテージは、硬練りセメントモルタル組成物の全成分の総乾燥重量に基づく。
【0035】
本発明によれば、硬練りセメントモルタル組成物は、10〜95重量%の量、好ましくは30〜80重量%の量で存在する骨材の材料を含む。骨材の材料の例は、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、軽量骨材(例えば、発泡ポリスチレン、中空ガラス球状体、パーライト、コルク、膨張バーミキュライト)、ゴム粉末(車のタイヤからリサイクルされた))、および、フライアッシュである。「細(fine)」は、骨材の材料が、2.0mmまで、好ましくは1.0mmまでの粒度を有することを意味する。
【0036】
本発明によれば、水硬性セメントの成分は、4〜60重量%の量で存在し、好ましくは10〜40重量%の量の量で存在する。水硬性セメントの例は、ポルトランドセメント、ポルトランドスラグセメント、ポルトランドシリカフュームセメント、ポルトランドポゾランセメント、ポルトランドバーントシェールセメント、ポルトランド石灰石セメント、ポルトランド複合セメント、高炉セメント、ポゾランセメント、複合セメント、および、アルミン酸カルシウムセメントである。
【0037】
本発明によれば、硬練りセメントモルタル組成物は、4〜60重量%、好ましくは10〜40重量%の量の少なくとも1種の鉱物性の結合剤を含む。少なくとも1種の鉱物性の結合剤の例は、セメント、ポゾラン、高炉スラグ、消石灰、石膏、および、水硬性石灰である。
【0038】
本発明に係る好ましい実施形態によれば、セルロースエーテルは、2004年4月13日付けで出願された米国特許出願番号10/822,926(これは、参照により本発明に含まれる)に従って製造される。本発明の出発原料は、少なくとも8グラム/100mlのかさ密度を有する未精製の未加工コットンリンター繊維の集合体である。この集合体中の繊維の少なくとも50重量%は、US篩の篩サイズ番号10(2mmの目開き)を通過する平均長さを有する。この未精製の未加工コットンリンターの集合体は、AOCS公定法Bb3−47で測定した場合、少なくとも60%のセルロースを含む、一次切断、二次切断、三次切断および/または未選別の未精製の天然の未加工コットンリンター、または、それらの混合物からなる疎な集合体を得ること、および、該疎な集合体を、少なくとも50重量%の繊維が米国標準の篩サイズ番号10を通過する長さに粉砕することによって製造される。このようなセルロースエーテル誘導体は、出発原料として、上述の、未加工コットンリンター繊維の粉砕した集合体を用いて製造される。切断された未加工コットンリンターの集合体は、スラリー法またはハイソリッド法で、9重量%より高いセルロース濃度で、塩基で処理され、活性セルローススラリーを形成する。次に、この活性セルローススラリーを、エーテル化剤と十分な時間、十分な温度で反応させ、セルロースエーテル誘導体を形成し、続いてこれを回収する。上記の様々な本発明のCEの製造方法の改変は、当業界周知である。
【0039】
本発明のCEはまた、製造元からの一次、二次、三次切断および/または未選別のいずれかのRCLの梱で得られる切断されていない未加工コットンリンターから製造することもできる。
【0040】
未加工コットンリンターの機械的な洗浄により得られた、未加工コットンリンターを含む組成物は、非セルロース系の異物(例えば田畑の塵、くず、種の外殻など)を実質的に含まず、これもまた、本発明のセルロースエーテルを製造するために用いることができる。未加工コットンリンターの機械的洗浄技術としては、打綿、スクリーニングおよび空気分離技術に関するものが挙げられ、これらは当業者周知である。機械的な打綿技術、および、空気分離技術の組み合わせを用いて、繊維とくずとの密度差を利用してくずから繊維を分離する。また、機械的に洗浄した未加工コットンリンターと、「そのままの」未加工コットンリンターとの混合物も、セルロースエーテルを製造するのに用いることができる。
【0041】
従来のセルロースエーテルで製造されたレンガ用モルタルおよび薄い目地モルタルと比較した場合、本発明のモルタルは、これらのセメントモルタルを特徴付けるために当業界で広く用いられる重要なパラメーターである増粘の挙動、および/または、垂れ下り抵抗および保水性において、それらと同等であるか、または、改善されている。
【0042】
欧州規格EN1015−8によれば、保水性(water retentionおよび/またはwater retentivity)は、「基材の吸い込みに晒された場合の、新しい水硬性モルタルのそれらに混合された水を保持する能力」である。欧州規格EN18555に従って、測定可能である。
【0043】
レンガ用モルタルに関する欧州規格EN1015−3では、コンシステンシーは、新しいモルタルの流動性と定義される。
【0044】
典型的なレンガ用モルタルおよび薄い目地モルタル材料は、以下の成分のうちいくつか、または全部を含んでいる可能性もある:
【0045】
【数1】

【0046】
以下の実施例で、本発明を説明する。部およびパーセンテージは、特に他の規定がない限り重量に基づく。
【0047】
実施例1
実施例1および2は、類似の市販のポリマーと比較した、本発明のポリマーの化学特性および物理特性のいくつかを示す。
【0048】
置換度の測定
セルロースエーテルを、150℃でヨウ化水素酸を用いたツァイゼル(Zeisel)の改変法によるエーテル切断で処理した。得られた揮発性の反応生成物を、ガスクロマトグラフで定量的に測定した。
【0049】
粘度の測定
セルロースエーテル水溶液の粘度を、1重量%および2重量%の濃度を有する溶液で測定した。セルロースエーテル溶液の粘度を確認する場合、それに対応するメチルヒドロキシアルキルセルロースを乾燥基準で用いた(すなわち水分の割合を、量をさらに多くすることで補正した)。精製コットンリンターまたは高粘度の木材パルプ系の、現在入手可能な市販のメチルヒドロキシアルキルセルロースの粘度は、最大2重量%の水溶液において、約70,000〜80,000mPaの粘度を有する(ブルックフィールドRVTを用いて、20℃および20rpmで測定した)。
【0050】
粘度を測定するために、ブルックフィールドRVT回転式粘度計を用いた。2重量%水溶液での全ての測定は、20℃および20rpmで、スピンドル番号7を用いてなされた。
【0051】
塩化ナトリウム含量
塩化ナトリウム含量をモール方法によって測定した。0.5gの生成物を化学天秤で計量し、150mlの蒸留水に溶解した。続いて、30分間撹拌した後に、1mlの15%HNOを添加した。その後、この溶液を、市販の装置を用いて標準化した硝酸銀(AgNO)溶液で滴定した。
【0052】
水分の測定
水分を、市販の水分計を105℃で用いて測定した。含水量は、重量の減少分と開始時の重量から得られた比率であり、パーセントで表示した。
【0053】
表面張力の測定
セルロースエーテル水溶液の表面張力を、クルス(Kruss)のデジタル張力計K10を用いて、20℃および0.1重量%の濃度で測定した。表面張力の測定のために、いわゆる「ヴィルヘルミーのプレート法」が用いられ、これは、薄いプレートを液体の表面まで下げて、プレートに向けられる下向きの力を測定するものである。
【0054】
【表1】

【0055】
表1は、RCLから誘導されたメチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースの分析データを示す。この結果から、明らかに、これらの生成物は、現在市販されている高粘度のタイプより有意に高い粘度を有することが示される。2重量%の濃度で、約100,000mPaの粘度が検出された。その値は極めて高いために、1重量%水溶液の粘度を測定することは、信頼性が一層高く、簡単であった。この濃度で、市販の高粘度のメチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースは、7300〜約9000mPaの範囲粘度を示した(表1を参照)。未加工コットンリンター系生成物に関する測定値は、市販の材料より有意に高かった。その上、表1から、明らかに、未加工コットンリンター系のセルロースエーテルは、コントロールサンプルより低い表面張力を有することが示された。
【0056】
実施例2
置換度の測定
セルロースエーテルを、150℃でヨウ化水素酸を用いたツァイゼル(Zeisel)の改変法によるエーテル切断で処理した。得られた揮発性の反応生成物を、ガスクロマトグラフで定量的に測定した。
【0057】
粘度の測定
セルロースエーテル水溶液の粘度を、1または2重量%の濃度を有する溶液で測定した。セルロースエーテル溶液の粘度を確認する場合、それに対応する疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロースを乾燥基準で用いた(すなわち水分の割合を、量をさらに多くすることで補正した)。
【0058】
粘度を測定するために、ブルックフィールドLVF回転式粘度計を用いた。全ての測定は、25℃および30rpmで、それぞれスピンドル番号3および4を用いてなされた。
【0059】
精製コットンリンター、及び未加工コットンリンターから製造された疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)を、ハーキュリーズ(Hercules)のパイロットプラントの反応装置で製造した。表2で示したように、両方のサンプルは、ほぼ同じ置換パラメーターを有する。しかしながら、得られたRCL系のHMHECの粘度は、それより有意に高い。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例3
全ての試験を、10.00重量%のポルトランドセメント CEM I42.5R、50重量%のケイ砂(0.1〜0.4mm)、および、40重量%のケイ砂(0.5〜1.0mm)を含むレンガ用モルタルの基本混合物で行った。
【0062】
保水性
保水性を、DIN EN18555、または、内部のハーキュリーズ/アクアロン(Aqualon)の作業手順のいずれかに従って測定した。
【0063】
ハーキュリーズ/アクアロン(Aqualon)の作業手順
5秒以内に、300gの硬練りモルタルを、それに対応する量の水に添加した(20℃で)。このサンプルを台所用ハンドミキサーを用いて25秒間混合した後、モルタルを、プラスチックリングに充填し、これをろ紙片の上に置いた。ろ紙とプラスチックリングとの間に薄いフリース繊維を置き、同時に、ろ紙をプラスチックプレートの上に置いた。この装置の重量を、モルタルを充填した前後に測定した。それにより、軟練りモルタルのの重量を計算した。さらに、ろ紙の重量は既知であった。ろ紙を3分間浸した後、ろ紙の重量を再度測定した。ここで、保水性[%]を以下の式を用いて計算した:
【0064】
【数2】

式中、
WU=ろ紙の水の吸収量[g]
WF=水分因子
WP=プラスターの重量[g]
* 水分因子: 用いられた硬練りモルタルの量で割った、用いられた水の量であり、例えば100gの硬練りモルタルに対する20gの水により、水分因子0.2が得られる。
【0065】
モルタルのフロー、密度および空気量
得られたモルタルのフロー、密度および空気量を、DIN EN18555に従って測定した。
【0066】
RCLから製造されたメチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)を、レンガ用モルタルの基本混合物で、市販の高粘度MHEC(ハーキュリーズ製)と比べて試験した。表3に結果を示す。
【0067】
【表3】

【0068】
表3によれば、RCL−MHECは、同じ添加レベルで添加すると、コントロールサンプルに比べて優れた保水性を提供することが示された:いずれの適用量0.02および0.015%でも、保水性は明らかにより高かった。フロー値は、よりわずかに低かったが、それでもなお従来の市販のMHEC75000サンプルのフロー値と同等であった。
【0069】
その他の試験において、一連のレンガ用モルタルの保水性を、CE添加レベルに基づいて測定した。再度、RCL系のMHECを、コントロールMHEC75000サンプルと比較した。図1は、明らかに、RCL系のMHECは、保水能力に関して、現在のところ用いられる極めて高い粘性のMHECに比べて優れた塗布性能を有することを実証している。特に、より低いCE適用量で、RCL系の材料の明確な利点が観察された。ここで、同じ添加レベルで、より高い保水性が達成され、すなわち有意に低い適用量で同じ保水性に達した。
【0070】
従って、表3および図1によれば、明らかに、RCL系のMHECは、同じ添加レベルで改善された塗布性能を示すことが示される。
【0071】
実施例4
全ての試験を、10.0重量%のポルトランドセメントCEM I42.5R、50.0重量%のケイ砂(粒度0.1〜0.4mmを有する)、および、40重量%のケイ砂(0.5〜1.0mm)を含むレンガ用モルタルの基本混合物で行った。
【0072】
保水性、モルタルのフロー、密度および空気量
軟練りモルタルの保水性、フロー、密度および空気量を、実施例3で説明されているようにして測定した。
【0073】
RCLから製造されたメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)を、レンガ用モルタルの基本混合物で、コントロールとして市販の高粘性MHPC65000サンプル(ハーキュリーズ製)と比べて試験した。全ての基本混合物に、空気連行剤(AEA)として、アルキル基中に12〜18個の炭素原子を有し、20〜60個の脂肪族アルコールの酸化エチレン単位を有するエトキシ化脂肪族アルコールを添加した。表4に結果を示す。
【0074】
【表4】

【0075】
0.02%の同じ添加レベルで、コントロール及びRCL−MHPCは、まったく同様の挙動を示した。RCL−MHPCを含むレンガ用モルタルでは、改善された保水性が測定された。
【0076】
その他の一連の試験において、レンガ用モルタルの保水性を、CE添加レベルに基づいて測定した。再度、RCL系MHPCを、コントロールMHPC65000と比較した。図2は、RCL−MHPCを含むモルタルに関して改善された保水性の挙動を示す。
【0077】
実施例5
全ての試験を、10.0重量%のポルトランドセメントCEM I42.5R、50.0重量%のケイ砂(0.1〜0.4mmの粒度を有する)、および、40.0重量%のケイ砂(0.5〜1.0mm)で構成されるレンガ用モルタルの基本混合物で行った。
【0078】
保水性、モルタルのフロー、密度および空気量
軟練りモルタルの保水性、フロー、密度および空気量を、実施例3で説明されているようにして測定した。
【0079】
RCLから製造されたメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)を、ポリアクリルアミド(PAA)(分子量: 8〜15,000,000g/モル;密度: 825±50g/dm;アニオン電荷: 15〜50重量%)とブレンドし、このブレンドを、レンガ用モルタルの基本混合物で試験した。このブレンドの性能を、市販の高粘性MHPC60000サンプルと同じPAAとのブレンドの性能と比較した。
表5に結果を示す。
【0080】
【表5】

【0081】
表5に記載のデータは、明らかに、PAAで修飾したRCL−MHPCのより高い効率を示す。RCL−MHPCを、コントロールサンプル(修飾されたMHPC65000)と同じ適用量で用いた場合、得られたレンガ用モルタルでより高い保水性が測定された。その上、より強力な増粘作用を記録し、これはより低いフロー値を反映している。新しいモルタルの密度および空気量は、と同等であった。
【0082】
実施例6
全ての試験を、10.0重量%のポルトランドセメントCEM I42.5R、50.0重量%のケイ砂(0.1〜0.4mmの粒度を有する)、および、40.0重量%のケイ砂(0.5〜1.0mmの粒度を有する)で構成されるレンガ用モルタルの基本混合物で行った。
【0083】
モルタルの保水性、フロー、密度および空気量
軟練りモルタルの保水性、フロー、密度および空気量を、実施例3で説明されているようにして測定した。
【0084】
ハーキュリーズのパイロットプラントで、RCLから製造された疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)を、レンガ用モルタルの基本混合物で、精製した未加工コットンリンターから製造したパイロットプラントHMHECと比べて、同じプロセス条件下で試験した。全ての試験において、空気連行剤(AEA,実施例4を参照)を添加した。表6に結果を示す。
【0085】
【表6】

【0086】
表6によれば、RCL−MHECは、同じ添加レベルで添加した場合、コントロールサンプル(HMHEC精製リンター)より優れた保水性を提供することが示される。フロー値、ならびに新しいモルタルの密度および空気量では、わずかな差が示される。
【0087】
RCL-HMHECの適用量をコントロールサンプルと比べて25%減少させたにもかかわらず、得られたモルタルの保水性はそれでもなお優れており、一方、その他の軟練りモルタル特性は類似していた。
【0088】
その他の一連の試験において、レンガ用モルタルの保水性を、CE添加レベルに基づいて測定した。再度、RCL系のHMHECを、精製した未加工コットンリンターベースのHMHECと比較した。図3は、明らかに、RCL系のHMHECは、保水性に関して優れた塗布性能を有することを実証している。同じ添加レベルで、より高い保水性が達成され、すなわち有意に低い適用量で同じ保水性に達した。
【0089】
従って、表6および図3によれば、明らかに、RCL−HMHECは、コントロールサンプルに比べて少ない添加レベルでも類似の塗布性能を示すことが示される。
【0090】
実施例7
全ての試験を、40.00重量%のポルトランドセメントCEM I42.5R(白色)、49.25重量%のケイ砂(0.1〜0.3mmの粒度を有する)、10.00重量%の石灰石(粒度<0.15mm)、0.5重量%の噴霧乾燥させた樹脂、および、0.25重量%のセルロースエーテルで構成される薄い目地モルタルの基本混合物で行った。
【0091】
モルタルのフロー/塗り広げ
得られたモルタルのフローを、DIN EN18555に従って測定した。
【0092】
モルタルの密度
モルタルの密度を、DIN EN1015に従って測定した。湿潤密度を計算するために、新たに製造したモルタルを1dmの容器に正確に充填し、はかりに載せた。
【0093】
可使時間
モルタルの可使時間を、DIN EN1015に従って測定した。可使時間を測定するために、石灰石のレンガ(5×11.5×24cm)を、基材として用いた。この基材上に、モルタル厚さ2〜3mmのモルタル層を塗布した。3分ごとに、それより小さい石灰石レンガ(サイズ:5×5cm)を、所定重量を充填することによってモルタル層に埋め込んだ。この重量は、モルタルの密度(密度<1kg/l=>重量0.5kg/密度>1kg/l=>重量1.2kg/l)に依存する。より小さい石灰石のレンガの50%未満がモルタルで被覆されたら、可使時間を終了とした。
【0094】
凝結の挙動
調査された薄い目地モルタルの凝結の挙動を、DIN EN196−3に従って、ビカー針装置を用いて調査した。新たに製造したモルタルをリングに充填し、針を落とし、可塑性が許容する限りモルタルに貫通させた。モルタルの凝結/硬化の間、貫通は減少した。貫通の開始と終了は、所定のミリメートルの貫通に従って、時間と分で定義された。
【0095】
RCLから製造されたメチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、および、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)を、上述の薄い目地モルタル組成物で、コントロールとしての市販の高粘度MHECおよびMHPC(ハーキュリーズ製)と比べて試験した。表7に結果を示す。
【0096】
【表7】

【0097】
表7で示されるように、両方のRCL系の製品を、コントロールの高粘性タイプより12%低い添加レベルで試験した。全ての試験において、得られたモルタルのコンシステンシーを、約160mmの塗り広げ値に調節した。低い適用量にもかかわらず、RCL−CEを含む薄い目地モルタルの水に対する需要は、コントロールメチルヒドロキシアルキルセルロースの需要より高く、すなわちRCLサンプルは、コントロールよりも強力な増粘作用を有していた。
【0098】
MHPC65000、および、MHEC75000を少ない適用量で試験したところ、得られた薄い目地モルタルは、可使時間に関して、RCL−CEを含むモルタルよりも劣った塗布挙動を示した。
【0099】
実施例8
全ての試験を、40.00重量%のポルトランドセメントCEM I42.5R(白色)、49.25重量%のケイ砂(0.1〜0.3mmの粒度を有する)、10.00重量%の石灰石(<0.15mm)、0.5重量%の噴霧乾燥させた樹脂、および、0.25重量%のセルロースエーテルで構成される薄い目地モルタルの基本混合物で行った。
【0100】
モルタルのフロー/塗り広げ、モルタルの密度、可使時間および凝結の挙動
モルタルのフロー/塗り広げ、モルタルの密度、可使時間、および、凝結の挙動を、実施例7で説明されているようにして測定した。
【0101】
RCLから製造されたメチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、および、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)を、ポリアクリルアミド(PAA;PAAの詳細については、実施例5を参照)とブレンドし、薄い目地モルタルの基本混合物で、それぞれコントロールの適宜修飾された高粘度MHECおよびMHPCと比べて試験した。表8に結果を示す。
【0102】
【表8】

【0103】
再度、得られたモルタルのコンシステンシーを、約160mmの塗り広げ値に調節した。表8によれば、両方のRCL系の製品は、コントロールサンプルよりもかなり強力な、得られたモルタルにおける増粘作用を有することが示される。少ない適用量でも、水の要求量は高く増加した。その上、得られたモルタルは、それに対応するコントロールで「典型的な」(0.25重量%)添加レベルで測定された可使時間と同等の(RCL−MHPCについて)、または、それよりもさらに長い(RCL−MHECについて)可使時間を有する。RCL−CEを含むモルタルの密度は、それよりわずかに低かったが、それに対して、2および4時間後の塗り広げ値及び凝結時間は同等であった。
【0104】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明したが、当然ながら、特許請求された発明の本質と範囲を逸脱することなく、それらの形態および詳細における変化形および改変を作製することができる。このような変化形および改変は、本明細書に添付された請求項の権利および範囲内であるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例3に記載の実験データのグラフ表示である。
【図2】実施例4に記載の実験データのグラフ表示である。
【図3】実施例6に記載の実験データのグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬練りセメントモルタルに使用するための混合組成物であって、
a)20〜99.9重量%の量の、未加工コットンリンターから製造されたアルキルヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、および、それらの混合物からなる群より選択されるセルロースエーテル、および、
b)0.1〜80重量%の量の、有機性または無機性の増粘剤、垂れ防止剤、空気連行剤、湿潤剤、消泡剤、流動化剤、分散剤、カルシウム錯化剤、遅延剤、促進剤、撥水剤、再分散性粉末、バイオポリマーおよび繊維からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤、
を含み、ここで、該混合組成物をレンガ用セメントモルタル配合物に用いて、十分な量の水と混合すると、該配合物は、基材に塗布することができるレンガ用モルタルまたは薄い目地モルタルを生成し、ここで、該モルタル中の混合物の量は有意に低減されており、同時に、該軟練りモルタルの保水性、増粘の挙動および/または垂れ下り抵抗は、従来の類似のセルロースエーテルを用いた場合と比べて改善されているか、またはそれと同等である、上記混合組成物。
【請求項2】
前記アルキルヒドロキシアルキルセルロースのアルキル基は、1〜24個の炭素原子を有し、ヒドロキシアルキル基は、2〜4個の炭素原子を有する、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項3】
前記セルロースエーテルは、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、疎水化修飾したエチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項4】
前記混合物は、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、疎水化修飾したエチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロース(SEMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロース(SEMHPC)、および、スルホエチルヒドロキシエチルセルロース(SEHEC)からなる群より選択される1種またはそれ以上の従来のセルロースエーテルをさらに含む、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項5】
前記セルロースエーテルの量は、70〜99重量%である、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の添加剤の量は、0.5〜30重量%である、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の添加剤は、多糖類からなる群より選択される有機性の増粘剤である、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項8】
前記多糖類は、スターチエーテル、スターチ、グアール/グアール誘導体、デキストラン、キチン、キトサン、キシラン、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、マンナン、ガラクタン、グルカン、アラビノキシラン、アルギナート、および、セルロース繊維からなる群より選択される、請求項7に記載の混合組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の添加剤は、アクリルアミドのホモまたはコポリマー、ゼラチン、ポリエチレングリコール、カゼイン、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合体、スルホン化ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合体、ポリアクリル酸塩、ポリカルボキシレート エーテル、ポリスチレンスルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、1〜4個の炭素原子を有する有機酸のカルシウム塩、アルカノアートの塩、硫酸アルミニウム、金属アルミニウム、ベントナイト、モンモリロナイト、海泡石、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール、および、酢酸ビニル系のホモ、コまたはターポリマー、マレイン酸エステル、エチレン、スチレン、ブタジエン、ビニルバーサテート、および、アクリル単量体からなる群より選択される、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の添加剤は、カルシウムキレート剤、フルーツ酸、および、表面活性物質からなる群より選択される、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項11】
前記モルタルで用いられる混合物の有意に低減された量は、少なくとも5%の低減である、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項12】
前記モルタルで用いられる混合物の有意に低減された量は、少なくとも10%の低減である、請求項1に記載の混合組成物。
【請求項13】
前記混合組成物は、MHECまたはMHPC、ならびに、アクリルアミドのホモまたはコポリマー、スターチエーテル、流動化剤およびそれらの混合物からなる群より選択される添加剤で構成される、請求項4に記載の混合組成物。
【請求項14】
前記コポリアクリルアミドは、ポリ(アクリルアミド−コ−ナトリウム−アクリラート)、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド−コ−ナトリウム−アクリルアミドメチルプロパンスルホナート)、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、ポリ(アクリルアミド−コ−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド−コ−(アクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド−コ−(アクリロイル)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項13に記載の混合組成物。
【請求項15】
前記スターチエーテルは、ヒドロキシアルキルスターチ(ここで、該アルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する)、カルボキシメチル化したスターチエーテル、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項13に記載の混合組成物。
【請求項16】
前記流動化剤は、カゼイン、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合体、スルホン化ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合体、ポリアクリル酸塩、ポリカルボキシレートエーテル、ポリスチレンスルホン酸塩、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項13に記載の混合組成物。
【請求項17】
HMHEC、および、ポリアクリルアミド、スターチエーテル、流動化剤、および、それらの混合物からなる群より選択される添加剤で構成される、請求項4に記載の混合組成物。
【請求項18】
硬練りセメントモルタル組成物であって、水硬性セメント、細骨材原料、および、未加工コットンリンターから製造された少なくとも1種のセルロースエーテルである水分保持剤を含み、ここで、該硬練りセメントモルタル組成物を十分な量の水と混合すると、該硬練りモルタル組成物は、基材に塗布できる軟練りレンガ用モルタルまたは薄い目地モルタルを生成し、ここで、該レンガ用モルタルまたは薄い目地モルタル中のセルロースエーテルの量は有意に低減されており、同時に、該軟練りモルタルの保水性、増粘の挙動および/または垂れ下り抵抗は、従来の類似のセルロースエーテルを用いた場合と同等であるか、または、それに比べて改善されている、上記組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種のセルロースエーテルは、未加工コットンリンターから製造されたアルキルヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項20】
前記アルキルヒドロキシアルキルセルロースのアルキル基は、1〜24個の炭素原子を有し、ヒドロキシアルキル基は、2〜4個の炭素原子を有する、請求項19に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項21】
前記セルロースエーテルは、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水化修飾したエチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項22】
前記セルロースエーテルは、適用可能であれば、無水グルコース単位あたり、0.5〜2.5のメチルまたはエチル置換度、0.01〜6のヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルのモル置換度(MS)、および、0.01〜0.5の疎水性置換基のモル置換度(MS)を有する、請求項21に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項23】
前記混合物は、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水化修飾したヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、疎水化修飾したエチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロース(SEMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロース(SEMHPC)、および、スルホエチルヒドロキシエチルセルロース(SEHEC)からなる群より選択される1種またはそれ以上の従来のセルロースエーテルをさらに含む、請求項18に記載の混合組成物。
【請求項24】
前記セルロースエーテルの量は、0.001〜1.0重量%である、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項25】
有機性または無機性の増粘剤、垂れ防止剤、空気連行剤、湿潤剤、消泡剤、分散剤、カルシウム錯化剤、遅延剤、促進剤、撥水剤、再分散性粉末、バイオポリマーおよび繊維からなる群より選択される1種またはそれ以上の添加剤と組み合わせた、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項26】
前記1種またはそれ以上の添加剤は、多糖類からなる群より選択される有機性の増粘剤である、請求項25に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項27】
前記多糖類は、スターチエーテル、スターチ、グアール、グアール誘導体、デキストラン、キチン、キトサン、キシラン、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、マンナン、ガラクタン、グルカン、アラビノキシラン、アルギナート、および、セルロース繊維からなる群より選択される、請求項26に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項28】
前記1種またはそれ以上の添加剤は、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ポリエチレングリコール、カゼイン、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合体、スルホン化ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合体、ポリアクリル酸塩、ポリカルボキシレートエーテル、ポリスチレンスルホン酸塩、フルーツ酸、リン酸塩、ホスホン酸塩、1〜4個の炭素原子を有する有機酸のカルシウム塩、アルカノアートの塩、硫酸アルミニウム、金属アルミニウム、ベントナイト、モンモリロナイト、海泡石、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール、および、酢酸ビニルベースのホモ、コまたはターポリマー、マレイン酸エステル、エチレン、スチレン、ブタジエン、ビニルバーサテート、および、アクリル単量体からなる群より選択される、請求項25に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項29】
前記1種またはそれ以上の添加剤の量は、0.0001〜20重量%である、請求項25に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項30】
前記細骨材原料は、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、軽量骨材、ゴム粉末、および、フライアッシュからなる群より選択される、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項31】
前記軽量骨材は、パーライト、発泡ポリスチレン、コルク、膨張バーミキュライト、および、中空ガラス球状体からなる群より選択される、請求項30に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項32】
前記細骨材原料は、10〜95重量%の量で存在する、請求項30に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項33】
前記細骨材原料は、40〜90重量%の量で存在する、請求項30に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項34】
前記水硬性セメントは、ポルトランドセメント、ポルトランドスラグセメント、ポルトランドシリカフュームセメント、ポルトランドポゾランセメント、ポルトランドバーントシェールセメント、ポルトランド石灰石セメント、ポルトランド複合セメント、高炉セメント、ポゾランセメント、複合セメント、および、アルミン酸カルシウムセメントからなる群より選択される、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項35】
前記水硬性セメントは、4〜60重量%の量で存在する、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項36】
前記水硬性セメントは、10〜40重量%の量で存在する、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項37】
消石灰、石膏、ポゾラン、高炉スラグおよび水硬性石灰からなる群より選択される少なくとも1種のその他の鉱物性の結合剤と組み合わせた、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項38】
前記少なくとも1種の鉱物性の結合剤は、0.1〜30重量%の量で存在する、請求項37に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項39】
前記硬練りセメントモルタル組成物で用いられるセルロースエーテルの有意に低減された量は、少なくとも5%の低減である、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項40】
前記硬練りセメントモルタル組成物で用いられるセルロースエーテルの有意に低減された量は、少なくとも10%の低減である、請求項18に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項41】
前記セルロースエーテルは、MHECまたはMHPCであり、さらに、ブルックフィールドRVT粘度計で、2重量%、20℃および20rpmで、スピンドル番号7を用いて測定した場合、80,000mPaより大きい水溶液のブルックフィールド粘度を有する、請求項21に記載の硬練りセメントモルタル組成物。
【請求項42】
前記セルロースエーテルは、MHECまたはMHPCであり、さらに、ブルックフィールドRVT粘度計で、2重量%、20℃および20rpmで、スピンドル番号7を用いて測定した場合、90,000mPaより大きい水溶液のブルックフィールド粘度を有する、請求項21に記載の硬練りセメントモルタル組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−534608(P2007−534608A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510899(P2007−510899)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/014320
【国際公開番号】WO2005/105702
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】