説明

未加硫ゴム組成物および加硫ゴムの製造方法

【課題】耐疲労性および耐熱性を両立した加硫ゴムを提供し得る未加硫ゴム組成物、および該加硫ゴムの製造方法を提供すること。
【解決手段】ゴム成分の全量を100重量部としたとき、クロロプレンゴムを50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する未加硫ゴム組成物であって、以下の式(1)および(2)を満たす熱養生条件にて熱養生されたものであることを特徴とする未加硫ゴム組成物。
40≦(X)≦80 (1)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.2≦(B)/(A)≦1.8 (2)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴムを主成分とする未加硫ゴム組成物および該未加硫ゴム組成物の加硫ゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気ばねに代表される耐オゾン性や耐候性が要求される防振ゴムにおいては、ゴム成分としてクロロプレンゴムが多く使用されている。一般に、クロロプレンゴムは他のゴム種に比べて結晶化速度が速い傾向があるため、ゴム成分としてクロロプレンゴムを含有するゴム組成物は、他のゴム種に比べて配合剤添加時のゴムの混練温度などにより、未加硫ゴム組成物の物性、特にゴムの貯蔵安定性(スコーチタイム)や耐疲労性が大きく影響を受ける傾向にある。従って、ゴム成分としてクロロプレンゴムを含有する未加硫ゴム組成物の場合、混練時の温度上昇を適切に抑制することが重要であることに加え、かかる未加硫ゴム組成物を保存する際にも、適切な温度管理(特に、高温下での保存防止)が重要である。
【0003】
下記特許文献1では、耐疲労性と耐熱性とを向上することを目的として開発された防振ゴム用クロロプレンゴム組成物が記載されている。しかしながら、かかる文献では、加硫温度および加硫時間に関する記載はあるが、その加硫前の保存温度条件などについては記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−71491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐疲労性および耐熱性を両立した加硫ゴムを提供し得る未加硫ゴム組成物、および該加硫ゴムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、貯蔵安定性を保持しながらも、一般的に冷所保存されるクロロプレン含有未加硫ゴム組成物に対し、熱負荷をあえて付与することで、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、上記の検討の結果なされたものであり、下記の如き構成により上述の目的を達成するものである。
【0007】
すなわち、本発明に係る未加硫ゴム組成物は、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、クロロプレンゴムを50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する未加硫ゴム組成物であって、以下の式(1)および(2)を満たす熱養生条件にて熱養生されたものであることを特徴とする。
40≦(X)≦80 (1)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.2≦(B)/(A)≦1.8 (2)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)。
【0008】
上記未加硫ゴム組成物は、上述した熱養生条件にて熱養生することにより、その加硫ゴムの耐疲労性および耐熱性が向上する。クロロプレンゴムを主成分とする未加硫ゴム組成物をかかる熱養生条件にて熱養生することにより、その加硫ゴムの耐疲労性および耐熱性が向上する原因については明らかではないが、以下の理由の如く推定される。
【0009】
一般に、通常の加硫条件(たとえば、加硫温度130〜170℃)では、環状のSを主成分とする硫黄が種々の結合長さ(モノ・ジ・あるいはポリスルフィド)に分断されつつ架橋鎖を形成する傾向がある。このため、通常の加硫条件にて加硫された加硫ゴムでは、その架橋鎖の結合長さが不均一となり、耐疲労性および耐熱性に劣る傾向がある。ところが、上述した熱養生条件にて、加硫剤および加硫促進剤を含有するクロロプレンゴム含有未加硫ゴム組成物を熱養生した場合、熱養生時および架橋時に環状のSが一部分ではあるが略均一な長さで分断され、均一な結合長さを有する架橋鎖を形成するため、加硫ゴム中の架橋鎖の結合長さも一部分ではあるが略均一なものとなる。その結果、本発明に係る未加硫ゴム組成物の加硫ゴムの耐疲労性および耐熱性が向上するものと推定される。
【0010】
上記未加硫ゴム組成物において、熱養生時間(h)を(Y)としたとき、前記熱養生温度(X)と前記熱養生時間(Y)とが、以下の式(3):
735≦(X)×(Y)≦1435 (3)
を満たすことが好ましい(ただし、(h)は時間)。上記の式(3)を満たす熱養生条件にて熱養生された未加硫ゴム組成物を加硫することにより、耐疲労性および耐熱性がより優れた加硫ゴムとすることができる。
【0011】
上記未加硫ゴム組成物において、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、前記加硫剤の含有量が0.5〜5重量部、前記加硫促進剤が0.5〜5重量部であることが好ましい。かかる未加硫ゴム組成物の加硫ゴムでは、耐疲労性および耐熱性がさらに優れたものとなる。
【0012】
本発明に係る加硫ゴムの製造方法は、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、クロロプレンゴムを50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する未加硫ゴム組成物の加硫ゴムの製造方法であって、以下の式(1)および(2)を満たす熱養生条件にて、前記未加硫ゴム組成物を熱養生する熱養生工程と、
40≦(X)≦80 (1)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.2≦(B)/(A)≦1.8 (2)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)、加硫温度130〜170(℃)、加硫時間5〜120分にて、熱養生した前記未加硫ゴム組成物を加硫する加硫工程と、を有することを特徴とする。かかる製造方法によれば、耐疲労性および耐熱性が優れた加硫ゴムを製造することができる。
【0013】
上記加硫ゴムの製造方法において、熱養生時間(h)を(Y)としたとき、前記熱養生温度(X)と前記熱養生時間(Y)とが、以下の式(3):
735≦(X)×(Y)≦1435 (3)
を満たすことが好ましい。かかる製造方法によれば、耐疲労性および耐熱性がより優れた加硫ゴムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る未加硫ゴム組成物は、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、クロロプレンゴム(以下、「CR」とも言う)を50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する。
【0015】
CRとしては、硫黄変性タイプ、非硫黄変性タイプ、耐結晶化タイプなどを特に限定なく使用することができる。
【0016】
本発明に係る未加硫ゴム組成物おいては、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、CRを少なくとも50重量部以上含有する。ただし、特に耐熱性が要求される用途などでは、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、CRを70重量部以上含有することが好ましく、90重量部以上含有することがより好ましく、CR単独(略100重量部)とすることがさらに好ましい。
【0017】
未加硫ゴム組成物中、CR以外のゴム成分を含有する場合、当業者に公知のジエン系ゴムを含有しても良い。かかるジエン系ゴムの例としては、天然ゴムまたはジエン系合成ゴムのいずれでも良い。ジエン系合成ゴムをブレンドする場合、ジエン系合成ゴムとしては、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。かかるジエン系合成ゴムの重合方法やミクロ構造は限定されず、これらのうちの1種または2種以上をブレンドして使用することができる。
【0018】
加硫剤としては、通常のゴム用硫黄が例示され、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫後の耐疲労性および耐熱性、あるいは他のゴム物性などを考慮した場合、ゴム成分100重量部に対する加硫剤の配合量は、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部であることがより好ましい。
【0019】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100重量部に対する加硫促進剤の配合量は、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部であることがより好ましい。
【0020】
本発明に係る未加硫ゴム組成物は、上述したゴム成分、加硫剤および加硫促進剤に加えて、カーボンブラック、シリカなどの充填剤、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0021】
本発明で用いられるカーボンブラックとしては特に限定されるものではないが、加硫後のゴムの硬度、補強性などを考慮した場合、HAF、FEF、GPF、SRFおよびFTが好ましい。また、シリカとしては通常のゴム工業で使用されるものを適宜使用可能である。さらに、本発明においては、カーボンブラックおよびシリカ以外の無機白色充填剤なども適量配合しても良い。
【0022】
上述した充填剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して5〜120重量部であることが好ましく、20〜80重量部であることがより好ましく、30〜70重量部であることがさらに好ましい。
【0023】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。ゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100重量部に対する老化防止剤の配合量は、2〜5重量部が好ましい。
【0024】
つぎに、本発明に係る未加硫ゴム組成物の熱養生条件について以下に説明する。本発明においては、クロロプレンゴムを50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する未加硫ゴム組成物を、以下の式(1)および(2)を満たす熱養生条件にて熱養生する。
40≦(X)≦80 (1)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.2≦(B)/(A)≦1.8 (2)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)。
【0025】
なお、上記(1)に示す熱養生温度にて熱養生時間を調節することにより、上記(2)を満たす未加硫ゴム組成物を得ることができる。
【0026】
上述した熱養生条件にて熱養生した未加硫ゴム組成物の加硫ゴムは、耐疲労性および耐熱性に優れる。加硫ゴムの耐疲労性および耐熱性をより向上するためには、以下の式(1’)および/または(2’)を満たすことがより好ましい。
60≦(X)≦80 (1’)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.4≦(B)/(A)≦1.7 (2’)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)。
【0027】
特に、熱養生時間(h)を(Y)としたとき、熱養生温度(X)と熱養生時間(Y)とが、以下の式(3’):
1000≦(X)×(Y)≦1400 (3’)
を満たす熱養生条件にて熱養生した未加硫ゴム組成物では、その加硫ゴムの耐疲労性および耐熱性がさらに向上するため好ましい。
【0028】
本発明に係る加硫ゴムの製造方法は、ゴム成分の全量を100重量部としたとき、クロロプレンゴムを50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する未加硫ゴム組成物の加硫ゴムの製造方法であって、以下の式(1)および(2)を満たす熱養生条件にて、未加硫ゴム組成物を熱養生する熱養生工程と、
40≦(X)≦80 (1)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.2≦(B)/(A)≦1.8 (2)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)、加硫温度130〜170(℃)、加硫時間5〜120分にて、熱養生した前記未加硫ゴム組成物を加硫する加硫工程と、を有することを特徴とする。
【0029】
特に、熱養生時間(h)を(Y)としたとき、熱養生温度(X)と熱養生時間(Y)とが、以下の式(3):
735≦(X)×(Y)≦1435 (3)
を満たすことが好ましい。
【0030】
上記製造方法において、加硫ゴムの耐疲労性および耐熱性をより向上するためには、以下の式(1’)、(2’)および/または(3’)を満たすことがより好ましい。
60≦(X)≦80 (1’)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.4≦(B)/(A)≦1.7 (2’)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)
1000≦(X)×(Y)≦1400 (3’)
(ただし、(Y)は熱養生時間(h))
また、加硫条件としては、加硫温度150〜160(℃)、加硫時間15〜45分とすることがより好ましい。
【0031】
本発明に係る未加硫ゴム組成物は、上述したゴム成分、加硫剤および加硫促進剤に加えて、カーボンブラック、シリカなどの充填剤、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0032】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、ゴム成分およびカーボンブラックのみを予め混練マスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでも良い。
【0033】
本発明に係る未加硫ゴム組成物の加硫ゴムは、耐熱性および耐疲労性に特に優れる。このため、特に防振ゴム、空気ばね、またはホース用ゴムとして有用である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0035】
(ゴム組成物の調製)
ゴム成分100重量部に対して、表1の配合処方に従い、実施例1〜2および比較例1〜3のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表1に記載の各配合剤を以下に示す。
a)ゴム成分 クロロプレンゴム 「デンカクロロプレンDCR−36」、(電気化学工業社製)
b)硫黄 (「5%オイル処理硫黄」、細井化学工業社製)
c)加硫促進剤
(A)ETU(エチレンチオウレア)(「アクセル22−S」、川口化学工業社製)
(B)DM(ジベンゾチアジルジサルファイド)(「サンセラーDM−G」、三新化学工業社製
d)カーボンブラック GPF(「シーストV」、東海カーボン社製)
e)老化防止剤 N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)
f)酸化亜鉛 (「亜鉛華3号」、三井金属鉱業社製)
g)ステアリン酸 (「工業用ステアリン酸」、花王社製)
h)アロマオイル (「プロセスX−140」、ジャパンエナジー社製)
【0036】
各ゴム組成物については、それぞれの加硫ゴムを作製して特性評価を行った。
(評価)
評価は、各ゴムを所定の金型を使用して150℃にて30分加熱、加硫して得られたゴムについて行った。
【0037】
<スコーチタイム>
JIS−K6300−1に準拠して、125℃でのスコーチタイム(Sco(t5))を測定した。
【0038】
<耐熱性>
JIS−K 6253に準拠し、タイプAデュロメーターにてゴム硬度を測定した、さらに、JIS3号ダンベルを使用して作製したサンプルをJIS−K 6251に準拠して、100%伸張モジュラス(M100(MPa))、300%伸張モジュラス(M300(MPa))、引張強さ(T(MPa))および伸び(E(%))を測定した(熱老化前)。一方、タイプAデュロメーター用サンプル、およびJIS3号ダンベルを使用して作製したサンプルを、100℃のオーブン中に72時間放置し、取り出して室温に冷却後、ゴム硬度、M100(MPa)、M300(MPa)、T(MPa)およびE(%)を測定した(熱老化後)。かかる熱老化により、ゴム硬度、M100(MPa)、M300(MPa)、T(MPa)及びE(%)の変化が小さいものは、耐熱性が良いといえる。熱老化前におけるゴム硬度、M100(MPa)、M300(MPa)、T(MPa)およびE(%)の測定結果、さらにはゴム硬度の変化度合い、ならびにM100(MPa)、M300(MPa)、T(MPa)およびE(%)の熱老化前に対する熱老化後の変化率(%)を表1に示す。
【0039】
<耐疲労性>
デマッチャ疲労試験機を使用し、JIS−K 6260に準拠して、5.3試験片項に記載されたサンプルに対し、予め2mmの亀裂(初期亀裂)を設け、表1に記載の所定の屈曲疲労回数(5000回、10000回、20000回)後に成長した屈曲亀裂成長(mm)の大きさを測定した。屈曲亀裂成長の大きさが小さいほど、加硫ゴムの耐疲労性が良いといえる。評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果から、比較例1に係る未加硫ゴム組成物の加硫ゴムに対して、実施例1および実施例2に係る未加硫ゴム組成物の加硫ゴムは、耐熱性および耐疲労性に優れることがわかる。一方、比較例2に係る未加硫ゴム組成物は、(B)/(A)が大きすぎるため、その加硫ゴムは、実施例1および実施例2に係る加硫ゴムに比べて耐熱性および耐疲労性が悪化することがわかる。また、比較例3に係る未加硫ゴム組成物は、(X)が高すぎるとともに、(B)/(A)が大きすぎるため、その加硫ゴムも、実施例1および実施例2に係る加硫ゴムに比べて耐熱性および耐疲労性が悪化することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分の全量を100重量部としたとき、クロロプレンゴムを50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する未加硫ゴム組成物であって、
以下の式(1)および(2)を満たす熱養生条件にて熱養生されたものであることを特徴とする未加硫ゴム組成物。
40≦(X)≦80 (1)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.2≦(B)/(A)≦1.8 (2)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)。
【請求項2】
熱養生時間(h)を(Y)としたとき、前記熱養生温度(X)と前記熱養生時間(Y)とが、以下の式(3):
735≦(X)×(Y)≦1435 (3)
を満たす請求項1に記載の未加硫ゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分の全量を100重量部としたとき、前記加硫剤の含有量が0.5〜5重量部、前記加硫促進剤が0.5〜5重量部である請求項1または2に記載の未加硫ゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分の全量を100重量部としたとき、クロロプレンゴムを50重量部以上含有し、かつ加硫剤および加硫促進剤を含有する未加硫ゴム組成物の加硫ゴムの製造方法であって、
以下の式(1)および(2)を満たす熱養生条件にて、前記未加硫ゴム組成物を熱養生する熱養生工程と、
40≦(X)≦80 (1)
(ただし、(X)は熱養生温度(℃))、
1.2≦(B)/(A)≦1.8 (2)
(ただし、(A)は熱養生前の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度、(B)は熱養生後の125℃における前記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度)、
加硫温度130〜170(℃)、加硫時間5〜120(分)にて、熱養生した前記未加硫ゴム組成物を加硫する加硫工程と、を有することを特徴とする加硫ゴムの製造方法。
【請求項5】
熱養生時間(h)を(Y)としたとき、前記熱養生温度(X)と前記熱養生時間(Y)とが、以下の式(3):
735≦(X)×(Y)≦1435 (3)
を満たす請求項4に記載の加硫ゴムの製造方法。

【公開番号】特開2012−122037(P2012−122037A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276108(P2010−276108)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】