説明

未病判定指標および未病判定方法

【課題】未病の有無を容易に判定し得る未病判定方法を提供する。
【解決手段】未病受診者による申告自覚症状の関与係数から不足する栄養素を抽出し、申告自覚症状及び全ての自覚病状における関与係数の合計比率により栄養充足度を求め、疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数に基づき第1位の疾病傾向潜在率を求め、申告自覚症状及び全ての自覚症状における生理作用の全項目数とそれに対応する全関与係数の合計比率により疲労度を求め、上記栄養充足度を、第1位疾病傾向潜在率を疲労度で除算して得られる値で除算して栄養活性度を求め、未病受診者の血液検査で得られるLDL、HDL及びアディポネクチンの検査値から得られる酸化指数に上記栄養活性度を乗算してストレス酸化度を求め、このストレス酸化度及び第1位の疾病傾向潜在率を用いて潜在疾病の有無を判定する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未病判定指標およびこの未病判定指標を用いた未病判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、未病人口が増加するとともに、未病から既病に移行するスピードが速くなっていると思われ、その対策も急務になって来ている。
これに伴い、未病に対する研究も行われており、例えば人の健康状態・食物摂取状態・既往症などのあらゆるデータを取得しておき、このデータと受診する人の各種データとを比較するとともに、その人の自覚症状に基づき、各種のデータを算出することにより、その自覚症状の原因を推定する未病のカウンセリングシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3194666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のカウンセリングシステムによると、各種データ、つまり膨大なデータを用いて種々の数値を計算にて求めるとともに、この計算結果に基づき自覚症状の原因を推定するようにしているが、そのデータが膨大であり、そのため自覚症状の原因および未病であるか否かを容易に判断し得ないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、自覚症状とともに臨床的数値である血液検査データを用いて、未病の有無を容易に判定し得る未病判定指標および未病判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の未病判定指標は、予め求められた疾病傾向毎に関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを示す疾病関与係数のデータベースを用いるとともに、未病受診者の自覚症状に基づき上記データベースから抽出される不足栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データから求められて未病の有無を判定する指標であって、
下記(a)式で求められる酸化指数に栄養活性度を乗算することにより求められ、
且つ上記栄養活性度は栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算した値で除算することにより求められ、
上記栄養充足度は、未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素の関与係数の合計値Sを全ての自覚病状に対応する生理作用に関与する栄養素の関与係数の合計値Sで除算した値(S/S)を1から減算して得られる値(1−S/S)とされ、
上記第1位の疾病傾向潜在率は、疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより求められる疾病傾向潜在率(Y/X)の中で最も大きい値とされ、
上記疲労度は、未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して求められる値とされ、
さらに上記不足栄養素は、未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素毎にその関与係数の合計値を求め、この合計値が大きいものから順に所定個数抽出されるものである。
【0007】
酸化指数=(LDL÷HDL)÷アディポネクチン ・・・(a)
また、本発明の未病判定方法は、複数の自覚症状にそれぞれ対応付けされた複数の生理作用毎に、それぞれ関与するビタミン・ミネラルなどの栄養素および当該栄養素の関与する度合いを示す自覚関与係数、並びに自律神経失調系、消化器系、循環器系などの疾病傾向毎に、関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを表す疾病関与係数を予め得るとともに、未病受診者の自覚症状から得られる栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データを用いて潜在疾病の有無を判定する未病判定方法であって、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素毎に関与係数の合計値を求めた後、この合計値が大きいものから順に所定個数の関与係数を抽出してこれら関与係数に係る不足する栄養素を抽出する工程と、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用における栄養素の関与係数の合計値Sを全ての自覚病状に対応する生理作用における関与係数の合計値Sで除算した値(S/S)を1から減算して得られる栄養充足度(1−S/S)を求める工程と、
疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより、疾病傾向の潜在割合いを表す疾病傾向潜在率(Y/X)を疾病傾向毎に求めるとともに、最も大きい第1位の疾病傾向を求める工程と、
未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して疲労度を求める工程と、
上記求められた栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算して得られる値で除算することにより栄養活性度を求める工程と、
未病受診者の血液検査で得られるLDL、HDLおよびアディポネクチンの検査値を下記(b)式に適用して得られる酸化指数に上記栄養活性度を乗算してストレス酸化度を求める工程とを具備し、
上記ストレス酸化度および第1位の疾病傾向潜在率を用いて潜在疾病の有無を判定する判定方法である。
【0008】
酸化指数=(LDL÷HDL)÷アディポネクチン ・・・(b)
また、上記未病判定方法において、ストレス酸化度を用いて潜在疾病の有無を判断する際に、第1位の疾病傾向潜在率の代わりに、疲労度、栄養充足度、栄養活性度または肥満度を用いる判定方法である。
【発明の効果】
【0009】
上記未病判定方法によると、未病受診者の自覚症状に基づく生理作用に関与する栄養素の度合いを示す関与係数に基づき疾病傾向潜在率を各疾病傾向毎に求めるとともに、疾病傾向潜在率により第1位の疾病傾向を認識し、さらに臨床データである血液検査データを用いてストレス酸化度を求め、そして第1位の疾病傾向潜在率およびストレス酸化度がそれぞれ所定値以上である場合に、未病であると判定することができる。すなわち、未病の有無をストレス酸化度を用いて容易に判定することができる。
【0010】
また、上記未病判定指標によると、予め求められた疾病傾向毎に関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを示す疾病関与係数のデータベースを用いるとともに、未病受診者の自覚症状に基づき上記データベースから取得される不足栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データに基づき、未病の有無を判定することができる。すなわち、ストレス酸化度を未病マーカーとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る未病判定方法に用いられる自覚症状のチェック項目一覧を示す図表である。
【図2】同未病判定方法に用いられる自覚症状の個別内容を示す図表である。
【図3】同未病判定方法を説明する疾病傾向の個別内容を示す図表である。
【図4】同未病判定方法による疾病傾向潜在率とストレス酸化度との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る未病判定指標およびこの未病判定指標を用いた未病判定方法を図面に基づき説明する。
なお、未病判定方法は未病判定指標を用いて行うものであるため、未病判定指標については未病判定方法の中で説明する。
【0013】
まず、未病判定方法に用いられるデータについて説明する。
この未病判定方法では、多数(複数)の精神的自覚症状および多数(複数)の肉体的自覚症状の各項目毎にそれぞれ対応付けされた複数の生理作用毎に、それぞれ関与するビタミン・ミネラルなどの栄養素および当該栄養素の関与する度合いを示す自覚関与係数を表す自覚症状データ、並びに自律神経失調系、消化器系、循環器系などの疾病傾向毎に、関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを示す疾病関与係数を表す疾病傾向データが、予め作成される。すなわち、データベースが具備されている。また、未病の検診を受ける、つまり受診する未病受診者(未病検診者または未病被判定者とも言える)の血液検査データ、具体的には、少なくとも、LDL(悪玉コレステロール)、HDL(善玉コレステロール)およびアディポネクチンの検査値が用いられる。なお、これらの血液検査データは、未病の受診時に測定される。
【0014】
上記自覚症状データは、図1の図表に示すように、病気の前兆となる精神的自覚症状および身体的自覚症状の項目(場合によっては、精神的自覚症状または身体的自覚症状のいずれでもよい)をそれぞれ多数抽出し、チェック項目の一覧表としたものである。なお、図1の図表には、60項目の内、NO.1〜10,NO.51〜60の計20項目が示されている。
【0015】
例えば、NO.1〜10については精神的自覚症状を示しており、NO.51〜60については身体的自覚症状を示している。したがって、未病受診者が、自分に該当する自覚症状がある場合には、この欄の左端のチェック欄に印を入れることになる。
【0016】
上記疾病傾向データは、図2の図表に示すように、自覚症状毎にその原因となる生理作用が多数抽出され、これら各生理作用に関与するビタミン・ミネラルなどの栄養素とこの栄養素の生理作用に対する関与の度合いを示す自覚関与係数とにより構成される。
【0017】
例えば、図2の図表には、精神的自覚症状として「イライラする事が多い」場合と、身体的自覚症状として「動悸や息切れが起きやすい」場合における、「生理作用」および「栄養素」の種類、並びに自覚関与係数(値)が記載されている。
【0018】
次に、上記各データに基づく未病判定指標を用いて、未病であるか否かを判定する未病判定方法について説明する。
まず、未病受診者に問診を行い、自覚症状データを示すチェック項目の一覧表にて、該当する自覚症状を申告する。
【0019】
ここでは、図1の図表に示すように、NO.3の「イライラする事が多い」およびNO.52の「動悸や息切れが起きやすい」に印が入れられており、2つの自覚症状が申告されている場合について説明する。
[栄養充足度の説明]
次に、図2の図表に基づき、自覚症状毎に対応付けされた生理作用に関与する栄養素およびその関与の度合いを示す自覚関与係数を求め、そして自覚症状への関与する度合が大きい栄養素を所定個数、例えば5個抽出する。ここでは、図2の図表に記載したように、ビタミンB1(8)、ビタミンB5(7)、カルシウム(6)、ビタミンB12(4)、マグネシウム(4)である(括弧内の数値は関与係数の合計値、言い換えれば関与度を示す)。上述したような自覚症状があるということは、少なくとも、上記5つの栄養素が不足していることを意味している。
【0020】
次に、上記5つの不足栄養素の影響を除くことにより得られる栄養充足度(J)が下記(1)式により求められる。
J=(1−S/S)×100 ・・・(1)
上記(1)式中、Sは未病受診者により申告(選択)された申告自覚症状における生理作用毎の栄養素の関与係数の小合計値を加算した大合計値を示し、Sは全ての自覚症状における生理作用毎の栄養素の関与係数を加算した総合計値を示す。なお、100を掛けているのは、百分率で表すためであり、必ずしも、必要とするものではない。
【0021】
図2の図表に基づき具体的な数値を当てはめると、Sは54(=24+30)、Sは1239(60項目における全ての生理作用に関与する栄養素の関与係数の総合計値)であり、これらの数値を(1)式に代入すると以下のようになる。
【0022】
J=(1−54/1239)×100
≒95%となる。
[疾病傾向潜在率の説明]
次に、疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより、疾病傾向の潜在度合いを表す疾病傾向潜在率Z(=Y/X)を疾病傾向毎に求めるとともに、最も大きい潜在率、すなわち第1位の疾病傾向潜在率を求める。
【0023】
例えば、図3の図表に示すように、各疾病傾向に対応する栄養素と関与係数とを示したデータ群(ここでは、5つの疾病傾向を示している)に対して、不足栄養素の関与係数の合計値Y、各疾病傾向毎の関与係数の合計値X、および疾病傾向潜在率Zが求められ、そしてこれら求められた疾病傾向潜在率Zのうち、最も大きい値のものが第1位の疾病傾向であると判断される。
【0024】
図3の図表に基づき具体的に説明すると、「甲状腺機能障害」の欄にて示すように、不足栄養素の関与係数の合計値である7を、全ての栄養素の合計値である17で除算すると、41.2%の疾病傾向潜在率Zが求まる。同様に、動脈硬化の場合には37.5%、自律神経インバランスの場合には31%、疲労過多症の場合には29%、消化器系の場合には11%が求まる。したがって、「甲状腺機能障害」が第1位の疾病傾向潜在率であると判断される。なお、これらの疾病傾向潜在率を、予め求められている全国平均と比較することにより、容易に、未病受診者の疾病傾向を知ることができる。
[疲労度の説明]
次に、未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら全ての生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら全ての生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して疲労度を求める。なお、生理作用の項目数と生理作用に関与する栄養素の関与係数との合計値を用いたのは、全自覚症状に対する申告した自覚症状の関わり度合いを考慮するためである。
【0025】
具体的に説明すると、この疲労度には、精神疲労度および身体疲労度、並びにこれらを考慮した全身疲労度がある。各疲労度は下記式にてそれぞれ表される。
精神疲労度=[(A+B)/(E+F)]×100
身体疲労度=[(C+D)/(G+H)]×100
全身疲労度=[(A+B+C+D)/(E+F+G+H)]×100
但し、上記式中、AおよびCは申告自覚症状における生理作用に関与する栄養素の関与係数の小合計値で、BおよびDは申告自覚症状における生理作用の項目の小合計値である。また、栄養充足度と同様に、100を掛けているのは百分率で表すためであり、必ずしも、必要とするものでもない。
【0026】
図2の図表に基づき具体的な数値を入れると以下のようになる。なお、図2の図表には、A〜Dだけを示しているが、E〜Hについては示されていないが、それぞれ360,177,879,399とする。
【0027】
精神疲労度=[(24+14)/(360+177)]×100≒7.1%
身体疲労度=[(30+16)/(879+399)]×100≒3.6%
全身疲労度=[(24+30+14+16)/(360+177+879+399)]×100
≒4.6%
[栄養活性度の説明]
次に、上記求められた栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算して得られる値で除算することにより栄養活性度K(下記(2)式にて示す)を求める。
【0028】
K=栄養充足度÷(第1位の疾病傾向潜在率÷疲労度) ・・・(2)
[ストレス酸化度の説明]
次に、未病受診者の血液検査で得られるLDL、HDLおよびアディポネクチンの検査値を用いて下記(3)式にて求められる酸化指数に、下記(4)式にて示すように、上記栄養活性度を乗算して、未病判定指標としてのストレス酸化度を求める。
【0029】
酸化指数=(LDL÷HDL)÷アディポネクチン ・・・(3)
ストレス酸化度=(酸化指数×栄養活性度) ・・・(4)
そして、上記ストレス酸化度および上記第1位の疾病傾向潜在率を用いて潜在疾病の有無を判定する。すなわち、ストレス酸化度が所定値以上で且つ第1位の疾病傾向潜在率が所定値以上である場合に受診者が未病であると判定される。これを、図表で表すと図4のようになり、4つのエリア(a〜d)のうち、疾病傾向潜在率およびストレス酸化度がそれぞれ予め求められた所定値(閾値で、ここでは、疾病傾向潜在率が35以上、ストレス酸化度は20以上とされる。この閾値つまり境界値は、実際の受診によるデータから統計的に求められる。)であるエリアはcである。このcエリアに入っている人は、未病であると判定することができる。上述した事例の場合には、受診者の未病が「甲状腺機能障害」である、つまり予備軍であると判定される。
【0030】
例えば、他の指標として体内活力指数という値を用いて検証を行うと、未病であると判断された人と全く同一人物が未病であることが判明した。なお、体内活力指数とは、疾病傾向潜在率、栄養活性度、栄養充足度、疲労度および肥満度(所謂、BMIである)を考慮した数値である。
【0031】
この結果から、ストレス酸化度という臨床的数値を用いることにより未病の有無を明確に且つ容易に判定し得るということが分かった。すなわち、ストレス酸化度を未病判定指標、つまり未病マーカーとして利用し得ることが分かった。
【0032】
上述した未病判定方法によると、未病受診者の自覚症状に基づく生理作用に関与する栄養素の度合いを示す関与係数に基づき疾病傾向潜在率を各疾病傾向毎に求めるとともに、疾病傾向潜在率により第1位の疾病傾向を認識し、さらに臨床データである血液検査データを用いてストレス酸化度を求め、そしてこれら第1位の疾病傾向潜在率およびストレス酸化度がそれぞれ所定値以上である場合に、未病であると判定することができる。すなわち、未病の有無をストレス酸化度を用いることにより容易に判定することができる。
【0033】
また、上述した未病判定指標によると、予め求められた疾病傾向毎に関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを示す疾病関与係数のデータベースを用いるとともに、未病受診者の申告自覚症状に基づき上記データベースから取得される不足栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データに基づき、未病の有無を判定することができる。すなわち、ストレス酸化度を未病マーカーとして利用することができる。
【0034】
なお、上記未病判定方法を実施する場合には、例えばコンピュータシステムが用いられる。
例えば、この未病判定方法を実施するシステム(装置)は、各データを入力するためのキーボードなどのデータ入力部と、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素毎に関与係数の合計値を求めた後、この合計値が大きいものから順に所定個数の関与係数を抽出してこれら関与係数に係る不足する栄養素を抽出する栄養素抽出部と、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用における栄養素の関与係数の合計値Sを全ての自覚病状に対応する生理作用における関与係数の合計値Sで除算した値(S/S)を1から減算して得られる栄養充足度(1−S/S)を求める栄養素充足度演算部と、
疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより、疾病傾向の潜在割合いを表す疾病傾向潜在率(Y/X)を疾病傾向毎に求めるとともに、最も大きい第1位の疾病傾向を求める疾病傾向潜在率演算部と、
未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して疲労度を求める疲労度演算部と、
上記求められた栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算して得られる値で除算することにより栄養活性度を求める栄養活性度演算部と、
未病受診者の血液検査で得られるLDL、HDLおよびアディポネクチンの検査値を上述した(3)式から得られる酸化指数に上記栄養活性度を乗算してストレス酸化度を求めるストレス酸化度演算部とを具備し、
上記ストレス酸化度および第1位の疾病傾向潜在率を用いて潜在疾病の有無を判定する未病判定部と、
上記判定結果などの必要なデータを表示し得る表示機器および/またはプリンタなどの出力装置と、
上記各種のデータを記憶するデータ記憶部とから構成される。
【0035】
勿論、上記抽出部、各演算部および判定部は、電子回路により、またはプログラムにより具体化されるものである。
ところで、上記未病判定方法において、各数値を順番に求めるものとして説明したが、適宜、その順番を変更することができる。
【0036】
そこで、順番を考慮しない未病判定方法を工程で表すと以下のようになる。
すなわち、この未病判定方法は、複数の精神的自覚症状および/または複数の肉体的自覚症状毎にそれぞれ対応付けされた複数の生理作用毎に、それぞれ関与するビタミン・ミネラルなどの栄養素および当該栄養素の関与する度合いを示す自覚関与係数、並びに自律神経失調系、消化器系、循環器系などの疾病傾向毎に、関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを表す疾病関与係数を予め得るとともに、未病受診者の自覚症状から得られる栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データを用いて潜在疾病の有無を判定する未病判定方法であって、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素毎に関与係数の合計値を求めた後、この合計値が大きいものから順に所定個数の関与係数を抽出してこれら関与係数に係る不足する栄養素を抽出する工程と、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用における栄養素の関与係数の合計値Sを全ての自覚病状に対応する生理作用における関与係数の合計値Sで除算した値(S/S)を1から減算して得られる栄養充足度(1−S/S)を求める工程と、
疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより、疾病傾向の潜在割合いを表す疾病傾向潜在率(Y/X)を疾病傾向毎に求めるとともに、最も大きい第1位の疾病傾向を求める工程と、
未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して疲労度を求める工程と、
上記求められた栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算して得られる値で除算することにより栄養活性度を求める工程と、
未病受診者の血液検査で得られるLDL、HDLおよびアディポネクチンの検査値を下記(c)式に適用して得られる酸化指数に上記栄養活性度を乗算してストレス酸化度を求める工程とを具備し、
上記ストレス酸化度および第1位の疾病傾向潜在率を用いて潜在疾病の有無を判定する判定方法である。
【0037】
酸化指数=(LDL÷HDL)÷アディポネクチン ・・・(c)
また、上記未病判定指標を簡単に説明すると、以下のようになる。
すなわち、この未病判定指標は、予め求められた疾病傾向毎に関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを示す疾病関与係数のデータベースを用いるとともに、未病受診者の自覚症状に基づき上記データベースから抽出される不足栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データから求められて未病の有無を判定する指標であって、
下記(d)式で求められる酸化指数に栄養活性度を乗算することにより求められ、
且つ上記栄養活性度は栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算した値で除算することにより求められ、
上記栄養充足度は、未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素の関与係数の合計値Sを全ての自覚病状に対応する生理作用に関与する栄養素の関与係数の合計値Sで除算した値(S/S)を1から減算して得られる値(1−S/S)とされ、
上記第1位の疾病傾向潜在率は、疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより求められる疾病傾向潜在率(Y/X)の中で最も大きい値とされ、
上記疲労度は、未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して求められる値とされ、
さらに上記不足栄養素は、未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素毎にその関与係数の合計値を求め、この合計値が大きいものから順に所定個数抽出されるものである。
【0038】
酸化指数=(LDL÷HDL)÷アディポネクチン ・・・(d)
ところで、上記実施の形態においては、未病の有無を判定する指標として、ストレス酸化度と疾病傾向潜在率とを用いたが、例えば、ストレス酸化度と栄養活性度、ストレス酸化度と栄養充足度、ストレス酸化度と疲労度、ストレス酸化度と肥満度(BMI)とを用いても、同様に、未病の有無を判定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め求められた疾病傾向毎に関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを示す疾病関与係数のデータベースを用いるとともに、未病受診者の自覚症状に基づき上記データベースから抽出される不足栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データから求められて未病の有無を判定する指標であって、
下記(a)式で求められる酸化指数に栄養活性度を乗算することにより求められ、
且つ上記栄養活性度は栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算した値で除算することにより求められ、
上記栄養充足度は、未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素の関与係数の合計値Sを全ての自覚病状に対応する生理作用に関与する栄養素の関与係数の合計値Sで除算した値(S/S)を1から減算して得られる値(1−S/S)とされ、
上記第1位の疾病傾向潜在率は、疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより求められる疾病傾向潜在率(Y/X)の中で最も大きい値とされ、
上記疲労度は、未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれら生理作用に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して求められる値とされ、
さらに上記不足栄養素は、未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素毎にその関与係数の合計値を求め、この合計値が大きいものから順に所定個数抽出されるものであることを特徴とする未病判定指標。
酸化指数=(LDL÷HDL)÷アディポネクチン ・・・(a)
【請求項2】
複数の自覚症状にそれぞれ対応付けされた複数の生理作用毎に、それぞれ関与するビタミン・ミネラルなどの栄養素および当該栄養素の関与する度合いを示す自覚関与係数、並びに自律神経失調系、消化器系、循環器系などの疾病傾向毎に、関与する栄養素および当該栄養素がその疾病傾向に関与する度合いを表す疾病関与係数を予め得るとともに、未病受診者の自覚症状から得られる栄養素の関与係数および未病受診者の血液検査データを用いて潜在疾病の有無を判定する未病判定方法であって、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用に関与する栄養素毎に関与係数の合計値を求めた後、この合計値が大きいものから順に所定個数の関与係数を抽出してこれら関与係数に係る不足する栄養素を抽出する工程と、
未病受診者により申告された申告自覚症状に対応する生理作用における栄養素の関与係数の合計値Sを全ての自覚病状に対応する生理作用における関与係数の合計値Sで除算した値(S/S)を1から減算して得られる栄養充足度(1−S/S)を求める工程と、
疾病傾向毎に抽出された不足栄養素の関与係数の合計値Yを、疾病傾向毎に関与する全ての栄養素の関与係数の合計値Xで除算することにより、疾病傾向の潜在割合いを表す疾病傾向潜在率(Y/X)を疾病傾向毎に求めるとともに、最も大きい第1位の疾病傾向を求める工程と、
未病受診者により申告された全ての申告自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した申告合計値を求めるとともに、この申告合計値を、予め得られている全ての自覚症状に対応する生理作用の全項目数とこれらの生理作用に対応する全ての栄養素の関与係数の合計値とを加算した総合計値で除算して疲労度を求める工程と、
上記求められた栄養充足度を、第1位の疾病傾向潜在率を疲労度で除算して得られる値で除算することにより栄養活性度を求める工程と、
未病受診者の血液検査で得られるLDL、HDLおよびアディポネクチンの検査値を下記(b)式に適用して得られる酸化指数に上記栄養活性度を乗算してストレス酸化度を求める工程とを具備し、
上記ストレス酸化度および第1位の疾病傾向潜在率を用いて潜在疾病の有無を判定することを特徴とする未病判定方法。
酸化指数=(LDL÷HDL)÷アディポネクチン ・・・(b)
【請求項3】
ストレス酸化度を用いて潜在疾病の有無を判断する際に、第1位の疾病傾向潜在率の代わりに、疲労度、栄養充足度、栄養活性度または肥満度を用いることを特徴とする請求項2に記載の未病判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−133501(P2012−133501A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283907(P2010−283907)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(394025083)
【Fターム(参考)】