説明

末梢血管疾患を治療するためのエクスビボ培養された造血細胞の使用

エクスビボ培養された造血細胞の局所投与による、末梢血管疾患の細胞療法のための方法が提供される。この造血細胞は、(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、(b)前記造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、その治療の必要性のある対象の虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすことによるエクスビボでの拡大培養によって拡大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は米国仮特許出願第60/857787号(2006年11月9日出願)の優先権の利益を主張する(その内容は、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、そのいくつかの実施形態において、末梢血管疾患の細胞療法に関連し、より具体的には、限定されないが、エクスビボ培養された造血細胞、および、末梢血管疾患を治療するためのその使用に関連する。
【背景技術】
【0003】
末梢動脈閉塞疾患(PAOD、これはまた末梢血管疾患またはPVDとして知られている)は、アテローム性動脈硬化、狭窄症につながる炎症性プロセス、塞栓または血栓の形成から生じ得る、大きな末梢動脈の閉塞によって引き起こされるすべての疾患をまとめて示すものである。末梢動脈閉塞疾患は急性虚血または慢性虚血のどちらかを引き起こす。PVDは心臓および脳の外部における血管の疾患を示し、多くの場合、血液を、脚、腕、胃または腎臓に運ぶ血管が狭くなることである。推定では1千万人を超えるアメリカ人が、末梢動脈疾患(PAD)に関連する循環障害(一般には脚における循環障害)に罹患する。末梢動脈疾患(PAD)は、動脈硬化症、すなわち、心臓発作を引き起こし得る動脈の閉塞および硬化によって引き起こされる。PAD患者の約半数は症状を経験することがほとんどないか、または全くないが、他のPAD患者は、脚および足の感覚異常(しびれ感)および潰瘍形成を含めて様々なレベルの痛みおよび他の症状を報告する。初期の治療は、心臓病の危険性を低下させることに向けられる生活スタイルの変化に類似する(例えば、食事療法、禁煙、体重減少、および、適するならば、コレステロール低下薬物など)。PADが進行するならば、患者は、閉塞した血管を広げるための動脈バイパス移植手法または血管形成術手法を必要とする場合がある。しかしながら、PAD患者の12パーセントもの多くが手術の候補者ではなく、また、米国では毎年、30000人〜50000人もの多くの人々が、PADのために切断を受けることを余儀なくされる。これらの重篤なPAD患者の多くについては、その生活の質が不可逆的に損なわれる。
【0004】
現在、PVDは保存的に治療され、最初に選ばれる治療選択肢には、疼痛の薬物療法(緩和的)、「血栓予防」薬物および「血栓予防」治療が含まれる。しかしながら、重症の症状および/または進行性症状の場合には、外科的介入、例えば、血管形成術、バイパス手術、粥腫切除術、および、切断までもが必要となる場合がある。これらの分野における大きな進歩にもかかわらず、PVDは依然として臨床的課題が残っており、そのため、多くの場合、進行した段階の疾患を有する治療された患者における結果は満足すべきものではない。従って、側副血管の形成を刺激すること、血管分布を増大させること、および、骨格筋機能を改善することを目指す新規な治療選択肢を求める臨床要求がますます大きくなっている。
【0005】
幹細胞移植による治療的血管形成の誘導は治療的利益をもたらすことができ、PVD患者における傷の治癒および患肢救済に役立つ場合がある。血管形成(側副血管の形成)を、増殖因子の投与によって、または、増殖因子タンパク質をコードする遺伝子の発現によって達成することができる。近年の研究では、骨髄造血幹細胞および血液造血幹細胞が多くの器官系において非造血系組織の修復に寄与し得ることが示唆されている。動物モデルにおいて、また、より近年では、限定されたヒト試験において、造血幹細胞が血管新生に寄与することが報告されている(Bone Marrow Transplant、2003(Aug)、32 Suppl 1:S29〜31;Asaharaら、Gene Therapy、2000、9:451〜57;Yla Herttualaら、Nature Medicine、2003、9:694〜701;Tateishiら、Lancet、2002、360:427〜35;Higashiら、Circulation、2004、109:1215〜1218;総説については、Perinら、Circulation、2003、107:935参照)。
【0006】
造血細胞集団の拡大:
造血細胞集団の増殖を刺激するための多くの方法が開示されているが[例えば、Czyzら、Biol Chem、2003、384:1391〜409;Krausら(米国特許第6338942号、2002年1月15日発行);Rodgersら(米国特許第6335195号、2002年1月1日発行);Emersonら(Emersonら、米国特許第6326198号、2001年12月4日発行)およびHuら(国際特許出願公開WO00/73421、2000年12月7日公開)ならびにHaririら(米国特許出願公開第20030235909号)参照]、培養における造血細胞の成長とともに当然のこととして生じる付随した分化を伴わない確実な、長期に及ぶ拡大を提供する方法はほとんどない。
【0007】
造血細胞の分化
1種類のHSCが、すべてのタイプの造血細胞を生じさせることができ、主として骨髄において見出される数は非常に少ない(だが、様々なHSCがまた、臍帯血(UBC)および他の組織において見出される)。様々な研究により、ヒトHSCが、高いレベルの表面糖タンパク質CD34を発現し(CD34)、より成熟した前駆体集団であることを意味するマーカー(例えば、CD33、CD38、thy−1およびCD71)の低いレベルまたは検出されないレベルを発現する小さい静止細胞として特徴づけられる。CD34+CD38−の細胞(これは、限定されたCD34+細胞集団の10%未満を表す)は、リンパ系細胞および骨髄系細胞の両方をインビトロで生じさせることができ、免疫低下マウスに大きな程度に生着することができ、また、自家血液細胞移植を受けている患者の造血回復にとって非常に重要であるようであり得る。エクスビボ拡大の現在使用されている方法のすべてにおいて、中間期および後期の前駆体集団の著しい蓄積が達成され、一方で、CD34+CD38−の亜集団の拡大は限定的であり、このことが、培養された初期造血細胞を細胞療法および遺伝子療法において利用することの何らかの将来性に対する大きな障害となっている。
【0008】
最近まで、前駆体細胞サブセットの限定された拡大が、幹細胞を線維芽細胞のフィーダー層の上で成長させることによって、または、細胞を初期作用サイトカインのトロンボポイエチン(TPO)、インターロイキン−6(IL−6)、FLT−3リガンドおよび幹細胞因子(SCF)の存在下で成長させることによって達成されている(Madlambayan GJら(2001)、J Hematother Stem Cell Res、10:481;Punzel Mら(1999)、Leukemia、13:92;および、Lange Wら(1996)、Leukemia、10:943)。しかしながら、近年では、造血細胞をエクスビボで拡大するための他の方法が開示されている。PCT IL99/00444(Peledら、1999年8月17日出願)(これは、全体が本明細書中に参考として示されるかのように参考として組み込まれる)では、エクスビボ培養された造血細胞の分化を、細胞を遷移金属のキレーターにより処理することによって制限する方法が開示されている。この発明を実施に移しているとき、Peledらは、銅に対する高い親和性を有する重金属キレーター(例えば、テトラエチルペンタミン(TEPA)など)が、フィーダー層を用いることなく成長させた臍帯血由来造血細胞、骨髄由来造血細胞および末梢血由来造血細胞におけるCD34細胞の割合およびその長期クローン性を大きく高めたことを発見した。分化を阻害する一方で、増殖を促進させることもまた、TEPAにより処理された赤球前駆細胞、培養されたマウス赤白血病細胞、胚性幹細胞、および、初代肝細胞培養における肝細胞において観測された。
【0009】
PCT IL03/00062(これもまたPeledらによる。2003年1月23日出願)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、TEPA−CuキレートをキレーターのTEPAと同様に使用して、分化を阻害しながら、長期のエクスビボでの造血細胞増殖を同様に効果的に促進させることを開示する。驚くべきことに、TEPAおよびTEPA−キレートのこの作用はまた、選択されていない末梢単核画分を開始集団として使用することが明らかになった。それに記載された結果は、造血細胞が、CD34細胞を前もって精製することなく、混合された(単核画分の)血液細胞の培養において、少なくとも12週間の期間にわたって連続的にエクスビボで実質的に拡大され得ることを明瞭に示す。
【0010】
PCT IL03/00064(これもまたPeledらによる。2003年1月26日出願)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、造血細胞集団のエクスビボ拡大を誘導するために、CD38の発現および/または活性、ならびに/あるいは、細胞内の銅含有量を妨げる条件および様々な分子を使用する造血細胞のエクスビボ拡大および阻害を教示する。そのような小分子および方法には、線状ポリアミンキレーターおよびそのキレート、ニコチンアミド、ニコチンアミドアナログ、ニコチンアミドまたはニコチンアミドアナログの誘導体、あるいは、ニコチンアミドまたはニコチンアミドアナログの代謝産物、PI 3−キナーゼ阻害剤、レチノイン酸、レチノイドおよび/またはビタミンDに応答することにおいて造血細胞の能力を低下させるための条件、ならびに、PI 3−キナーゼを伴うシグナル伝達経路に応答することにおいて細胞の能力を低下させるための条件が含まれる。
【0011】
PCT IL2003/00681(これもまたPeledらによる。2003年8月17日出願)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、小さい割合としてでさえ、造血細胞に存在する造血細胞の集団を、最初に細胞を富化することなく、また、同時に造血細胞の分化を実質的に阻害しながら、エクスビボ拡大する方法を開示する。そのようにして拡大された細胞は、造血細胞移植のために好適な細胞について、細胞の遺伝子療法のための遺伝子操作のために好適な細胞について、養子免疫療法、インビボでの分化転換のための幹細胞の移植、同様にまた、シス分化およびトランス分化におけるエクスビボ組織工学のために好適な細胞について造血単核細胞を前もって富化することなく、造血細胞のエクスビボ培養された集団を効率的に提供するために使用することができる。
【0012】
PCT IL2004/000215(これもまたPeledらによる。2004年3月4日出願)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)では、PI 3−キナーゼの低分子量阻害剤にさらし、細胞のPI 3−Kシグナル伝達経路を中断させることによって造血系起源の細胞および非造血系起源の細胞における拡大および分化阻害をもたらす、幹細胞/初期前駆体細胞の自己複製がさらに明らかにされた。
【0013】
PCT IL2004/000644(これもまたPeledらによる。2004年7月15日出願)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、内胚葉系器官の移植および生着のための内胚葉由来細胞および非内胚葉由来細胞の拡大を開示する。
【0014】
PCT IL2005/00994(これもまたPeledらによる。2005年9月15日出願)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、間葉系細胞と同時培養することによる幹細胞の拡大および分化阻害、自己複製することができる未分化細胞の拡大された集団の単離、ならびに、幹細胞移植、細胞遺伝子療法のための遺伝子操作、養子免疫療法および組織工学などのためのそのような細胞および細胞集団の使用を開示する。
【0015】
PCT IL2005/00753(これもまたPeledらによる。2005年7月14日出願)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、エクスビボおよび/またはインビトロにおいて幹細胞の集団を拡大し、かつ、幹細胞の集団における分化を実質的に阻害する方法、再生可能な未分化幹細胞の拡大された大きい集団、ならびに、造血細胞移植、遺伝子操作および細胞の遺伝子療法、養子免疫療法、多数の疾患(例えば、β−異常ヘモグロビン症など)のための治療、エクスビボ組織工学などのためのその治療的使用を開示する。
【0016】
従って、様々な方法が、造血細胞移植および他の細胞移植、細胞の遺伝子療法のための遺伝子操作、養子免疫療法、インビボおよびエクスビボでのシス分化およびトランス分化、臓器生着などのために好適な、自己複製によって特徴づけられる細胞の集団をもたらす造血細胞の拡大および分化阻害のために利用可能である。しかしながら、細胞療法はこれまで、PVDのための従来の薬物治療および外科的治療において固有的な問題に対する有効な解決策を提供することには成功していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施に移しているとき、本発明の方法を使用して培養および拡大された造血細胞が、末梢血管疾患を患う対象に移植されたときに治療的であることが示された。従って、いくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、本発明の方法は、その必要性のある対象に施すことによって末梢血管疾患の治療および予防のために使用することができる。別の実施形態によれば、製造物は、本発明の方法による培養された造血細胞の集団と、包装材と、造血細胞集団が、末梢血管疾患を対象において治療するためのものであることを示すラベルまたは添付文書とを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、末梢血管疾患をその必要性のある対象において治療する方法が提供され、この場合、この方法は、治療量のエクスビボ拡大された造血細胞を前記対象の虚血組織に投与し、それにより、前記末梢血管疾患を治療することを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、造血細胞は、(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、(b)その造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、その必要性のある対象の虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすことによるエクスビボでの拡大培養によって拡大される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、虚血性疾患または虚血状態をその必要性のある対象において治療する方法が提供され、この場合、この方法は、(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、(b)その造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、その必要性のある対象の虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすことによってエクスビボで拡大培養された造血細胞の治療量をその必要性のある対象に投与すること、ならびに、(c)拡大された造血細胞の治療量を対象に投与し、それにより、対象における虚血性疾患を治療および/または予防することを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法はさらに、拡大された造血細胞を、対象に投与する前に造血幹細胞について富化することを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与することが、静脈内投与および直接注入からなる群から選択される方法によって行われる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象が造血細胞投与前および/または造血細胞投与後において免疫抑制治療により治療される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与することが対象への細胞の少なくとも2回の投与を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡大された造血細胞が、末梢血管疾患のためのさらなる治療と併せて同時投与される。さらなる治療は、免疫抑制治療、抗高血圧治療および抗血小板治療からなる群から選択することができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、灌流の高まりを、ドップラー超音波、血管造影およびMRIからなる群から選択されるパラメーターに従って求める。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、灌流の高まりを、組織の壊死、組織の潰瘍形成、指切断および肢切断からなる群から選択される臨床パラメーターに従って求める。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、造血細胞を、虚血性疾患または虚血状態に苦しむ対象への投与のために調製する方法が提供され、この場合、この方法は、(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、(b)その造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、その必要性のある対象の虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすことを含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、虚血性疾患または虚血状態は末梢血管疾患である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、包装材と、エクスビボ培養された造血細胞集団とを含む、末梢血管疾患を治療するための製造物が提供され、この場合、造血細胞集団は、(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、(b)その造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすことによってエクスビボで拡大培養され、また、包装材は、造血細胞集団が、末梢血管疾患をその必要性のある対象において治療するためのものであることを示すラベル、説明書または添付文書を含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、造血細胞は、骨髄、末梢血および新生児臍帯血からなる群から選択される供給源に由来する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法はさらに、造血細胞を培養の前に造血幹細胞について富化することを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法はさらに、拡大された造血細胞を培養の前に造血幹細胞について富化することを含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、虚血性疾患または虚血状態は末梢血管疾患である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドの量が約0.1mM〜約20mMである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドの量が約0.25mM〜約15mMである。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドの量が約0.5mM〜約10mMである。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドの量が約1.0mM〜約10mMである。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドの量が約5.0mMである。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、培養期間が約6日〜約6週間である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、培養期間が約10日〜約5週間である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、培養期間が約2週間〜約4週間である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、培養期間が約3週間である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドの量が5.0mM/Lであり、培養期間が約3週間である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、増殖のための条件が、サイトカインを与えることを含む。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、サイトカインは初期作用サイトカインである。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、初期作用サイトカインが、幹細胞因子、FLT3リガンド、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−6、インターロイキン−10、インターロイキン−12、腫瘍壊死因子−αおよびトロンボポイエチンからなる群から選択される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法はさらに、後期作用サイトカインを与えることを含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、後期作用サイトカインが、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポイエチン、FGF、EGF、NGF、VEGF、LIF、肝細胞増殖因子およびマクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される。
【0050】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0051】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例において使用される末梢血管疾患(PVD)の後肢虚血モデルのグラフィック表示である。矢印は大腿動脈の結紮位置を示す。細胞が肢の結紮部分の遠位側に筋肉内投与されたことに留意すること。
【図2】免疫適格BalbCマウスの後肢虚血モデルにおける結果(切断)に対する、増大する用量(5×10細胞/マウス、5×10細胞/マウスおよび2.5×10細胞/マウス)の培養および拡大された造血細胞の影響を示すヒストグラムである。低用量による虚血影響の著しい防止(40%超)、および、高用量群における虚血影響のほぼ完全な逆戻りに留意すること。
【図3】結紮後7日目(図3a)および結紮後14日目(図3b)で測定された免疫適格BalbCマウスの後肢虚血モデルにおける結果(灌流)に対する、増大する用量(5×10細胞/マウス、5×10細胞/マウスおよび2.5×10細胞/マウス)の注入された、培養および拡大された造血細胞の影響を示すヒストグラムである。非処置群と比較して、すべての投薬群における処置された肢の迅速な、著しく優れた回復に留意すること。結果が灌流における変化パーセントとして表される(灌流の変化=灌流7日目−灌流0日目)。それぞれの時点において、パーセント灌流が反対側の非虚血肢に対して計算される。
【図4】結紮後の肢の灌流に対する、拡大された造血細胞の注入の影響を示す一連のレーザードップラー血流画像である。マウスのレーザードップラー走査を、シクロスポリン(図4a)、または、シクロスポリンおよび5×10個の培養細胞(図4b)が注入されたマウスにおいて、左後肢の腸骨動脈結紮の後7日で行った。それぞれの群の代表的なマウスが示される。赤色の色調により、最大灌流の領域が示される;黄色の色調により、中間的な灌流が示される(値が黄色で示される);最も低い灌流の値が青色として表される。
【図5】結紮後の肢の灌流に対する、拡大された造血細胞の注入の影響を示す一連のレーザードップラー血流画像である。マウスのレーザードップラー走査を、緩衝液(図5a)または5×10個の細胞(図5b)が注入されたマウスにおいて、左後肢の腸骨動脈結紮の後7日で行った。代表的なマウスが示される。赤色の色調により、最大灌流の領域が示される;黄色の色調により、中間的な灌流が示される(値が黄色で示される);最も低い灌流の値が青色として表される。
【図6】結紮後12日で測定されたヌードマウスでの後肢虚血モデルにおける結果(灌流)に対する、注入された新鮮な造血細胞、または、注入された、培養および拡大された造血細胞の治療効果を示すヒストグラムである。ニコチンアミドとともに培養された細胞により処置されたマウスの虚血肢の血流の優れた回復に留意すること。この実験の結果により、ニコチンアミドの非存在下で培養された細胞の類似した数の活性、または、培養前の細胞(非培養細胞)の類似した数の活性を上回る、ニコチンアミドとともに培養された細胞の優れた活性が明らかにされる。従って、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞は、培養細胞または新鮮な非培養細胞を上回る増大した治療的可能性を明瞭に示す。
【図7】結紮後12日で測定されたヌードマウスの後肢虚血モデルにおける指および/または肢の切断に対する、注入された新鮮な(非培養細胞)造血幹細胞、または、注入された、培養および拡大された造血幹細胞(1×10個/マウス)の影響を示すヒストグラムである。ニコチンアミドとともに培養された造血細胞によってもたらされる、後肢虚血の影響からの完全な保護に留意すること。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、末梢血管疾患の細胞療法に関連し、より具体的には、限定されないが、エクスビボ培養された造血細胞、および、末梢血管疾患を治療するためのその使用に関連する。
【0054】
本発明の原理および操作は、付随する説明および実施例を参照してより良く理解されることができる。
【0055】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の記載に示されるか、または実施例の節において例示される構成要素の組み立ておよび構成の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられている表現法および用語法は説明目的のためであり、限定であるとして見なすべきでないことを理解しなければならない。
【0056】
末梢血管疾患(PVD、これはまた末梢動脈閉塞疾患(PAOD)として知られている)は、より多くの若年者および高齢者の間での高まる懸念を生じさせている、複雑で、潜在的には消耗性で、多くの場合には治療不能な状態である。関与する血管傷害の慢性的で、ほとんどの場合には不可逆的な性質のために、血管新生がこれまで、PVDのための多くの近年に提案された解決策の目標であった。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を実施に移しているとき、本発明の方法を使用して培養された造血細胞が、末梢血管疾患に苦しむ対象に移植されたとき、灌流を高めること、および、四肢の切断を低下させることにおいて効果的であったことが示された。
【0058】
従って、本発明の1つの局面によれば、末梢血管疾患をその必要性のある対象において治療する方法が提供され、この場合、この方法は、治療量のエクスビボ拡大された造血細胞を対象の虚血組織に投与し、それにより、末梢血管疾患を治療することを含む。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「末梢血管疾患(PVD、これはまた末梢閉塞性動脈疾患(POAD)として知られている)」は、例えば、疾患または傷害の結果として、例えば、炎症、糖尿病、冠状動脈疾患、心筋梗塞(MI)、心房細動、一過性虚血性発作、脳卒中、肢虚血および腎臓疾患などの結果として、末梢循環(すなわち、心臓および脳の血管の外側での血管)の障害から生じる状態を含む。具体的には、末梢血管疾患は、頸動脈または大腿動脈における閉塞、腸骨動脈における閉塞、あるいは、大腿動脈または頸動脈の遠位側にある動脈(例えば、下肢における脛骨動脈およびその分枝、ならびに、上肢における上腕動脈およびその分枝)における閉塞を伴う血管障害である。より小さい血管(例えば、閉塞部の遠位側にある組織の毛細血管床など)もまた冒される。末梢動脈における閉塞は、痛みおよび制限された動き、罹患組織の活力喪失および無酸素症を引き起こし、また、壊死および二次的感染をもたらす場合がある。閉塞性末梢血管疾患に関連する具体的な障害の1つが、多くの場合には足の切断を生じさせる、糖尿病患者を冒す糖尿病性足である。
【0060】
本明細書中で使用される用語「虚血」は、組織への血流の部分的中断または完全な中断を示す。
【0061】
本明細書中で使用される表現「その必要性のある対象」は、明白な症状を有しようとも、もしくは、見かけ上は症状を有しないとしても、末梢血管疾患と診断されている個体、および/または、末梢血管疾患の症状を発症する危険性がある個体を示す。
【0062】
本明細書中で使用される表現「造血幹細胞」は、適切な成長条件が与えられたならば、造血幹細胞が得られた生物に存在する任意の血液細胞系譜に発達することができる多能性細胞を示す。この表現は、本明細書中で使用される場合、血液組織を生じさせることに関わる最も初期の再生可能な細胞集団と、幾分かより分化した、それにもかかわらず、決定づけられておらず、最も初期の再生可能な細胞集団の一部になるために容易に逆戻りすることができる非常に初期の骨髄系およびリンパ系の前駆体細胞との両方を示す。造血幹細胞および造血前駆体細胞は一般には、CD34およびCD133などのマーカーの存在、ならびに、他の分化マーカー(例えば、CD38など)および様々な系譜(Lin)マーカーの非存在に従って特定される。組織起原が異なる幹細胞をエクスビボ培養する様々な方法が細胞培養の技術分野では広く知られている。この趣旨で、例えば、教本「Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique」(Freshney、Wiley−Liss、N.Y.(1994)、第3版)を参照のこと(その教示は本明細書により参考として組み込まれる)。
【0063】
表現「細胞拡大」は、細胞分化を実質的に欠いている細胞増殖のプロセスを表すために本明細書中では使用される。本発明のいくつかの実施形態において、細胞を細胞分化の阻害剤とともに培養することにより、拡大のために採取された最初の細胞集団の特定の未分化な部分集団(例えば、PVDの細胞療法のために好都合であり、また、望ましいと見なされる、CD34+、CD133+、CD34+/CD38−、CD34+/Lin−の各細胞タイプなど)の拡大がもたらされる。そのような造血幹細胞および/または造血前駆体細胞の拡大は、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、適切な細胞マーカーの検出によって培養期間を通してモニターすることができる。
【0064】
本明細書中で使用される用語「エクスビボ」は、細胞が、生存している生物から取り出され、その生物の体外において(例えば、試験管、培養バッグ、バイオリアクターにおいて)増殖させられるプロセスを示す。しかしながら、本明細書中で使用される用語「エクスビボ」は、インビトロのみで増殖することが知られている細胞(例えば、様々な細胞株(例えば、HL−60、MEL、HeLaなど))が培養されるプロセスを示さない。すなわち、本発明のいくつかの実施形態に従ってエクスビボ培養される細胞は、その細胞が最終的には分化を受けるという点で、細胞株に形質転換しない。エクスビボで成長させられた細胞にエクスビボでの細胞増殖のための条件を与えることには、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、細胞に栄養分を与えること、好ましくは、細胞に1つまたは複数のサイトカインを与えることが含まれる。
【0065】
本明細書中で使用される用語「分化」は、発達期間中の比較的一般化された変化または特殊化された変化を示す。様々な系譜の細胞分化は、十分に立証されたプロセスであり、さらなる説明を本明細書中では必要としない。本明細書中で使用される場合、分化の用語は成熟化および老化とは異なり、ときには細胞分裂を伴うが、特定の細胞タイプが成熟化して機能を果たし、その後、例えば、プログラム化された細胞死によって死に至るプロセスである。
【0066】
本明細書中で使用される用語「治療する」には、疾患または状態の進行を無効にするか、または、実質的に阻害するか、または遅くするか、または逆転させること、あるいは、疾患または状態の臨床的症状または美学的症状を実質的に改善すること、あるいは、疾患または状態の臨床的症状、機能的症状または美学的症状の出現を実質的に予防することが含まれる。
【0067】
分化を実質的に阻害する条件のもとでの造血細胞のエクスビボ拡大が記載されており、また、ポリアミンの銅キレーターであるTEPAとともに培養することによって、または、PI 3−キナーゼ阻害剤とともに培養することによって造血細胞を拡大するための様々なプロトコル(これらは参考として本明細書中に組み込まれる)がさらには下記において記載される。例えば、PCT IL03/00064(Peledら)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、細胞におけるCD38の発現および/または活性を低下させる方法、細胞においてCD38を伴うシグナル伝達経路に応答することにおける細胞の能力を低下させる方法、細胞においてレチノイン酸、レチノイドおよび/またはビタミンDに応答することにおける細胞の能力を低下させる方法、細胞においてレチノイン酸受容体、レチノイドX受容体および/またはビタミンD受容体を伴うシグナル伝達経路に応答することにおける細胞の能力を低下させる方法、PI 3−キナーゼを伴うシグナル伝達経路に応答することにおける細胞の能力を低下させる方法、細胞が、ニコチンアミド、ニコチンアミドアナログ、ニコンチンアミドまたはニコチンアミドアナログの誘導体、あるいは、ニコンチンアミドまたはニコチンアミドアナログの代謝産物の存在下で培養される条件、ならびに、細胞がPI 3−キナーゼ阻害剤の存在下で培養される条件を教示する。
【0068】
本発明のこの局面の現在知られている実施形態によれば、ニコチンアミドが、効果的なCD38阻害剤として使用される。従って、1つの実施形態において、本発明のこの局面による方法は、細胞にニコチンアミドそのものを与えることによって、そうでなければ、細胞に、ニコチンアミドアナログ、ニコンチンアミドまたはニコチンアミドアナログの誘導体、あるいは、ニコンチンアミドまたはニコチンアミドアナログの代謝産物を与えることによって行われる。
【0069】
本明細書中で使用される表現「ニコチンアミドアナログ」は、ニコチンアミドと同様に作用することが知られている任意の分子を示す。ニコチンアミドアナログの代表的な例には、限定されないが、ベンズアミド、ニコチンチオアミド(ニコチンアミドのチオールアナログ)、ニコチン酸およびα−アミノ−3−インドールプロピオン酸が含まれる。
【0070】
表現「ニコンチンアミドまたはニコチンアミドアナログの誘導体」は、ニコチンアミドそのものの任意の構造的誘導体、または、ニコチンアミドのアナログの任意の構造的誘導体を示す。そのような誘導体の例には、限定されないが、置換されたベンズアミド、置換されたニコチンアミドおよびニコチンチオアミド、ならびに、N置換されたニコチンアミドおよびニコチンチオアミドが含まれる。
【0071】
表現「ニコンチンアミドまたはニコチンアミドアナログの代謝産物」は、ニコチンに由来する産物、または、そのアナログに由来する産物を示し、例えば、NAD、NADHおよびNADPHなどを示す。
【0072】
造血細胞を、様々な条件を使用して培養において拡大することができる。末梢血管疾患を治療するための移植のための造血細胞のエクスビボ拡大および調製が、末梢血管閉塞および/または末梢血管疾患に関連する虚血組織における灌流を高める能力がより大きい拡大された造血細胞をもたらすパラメーターを含むプロトコルに従って行われる。加えて、本明細書中に記載されるようにエクスビボ拡大された造血細胞は、末梢血管疾患に限定されないさらなる虚血性疾患または虚血状態を治療するために使用することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、造血細胞は、最終的濃度がミリモル濃度の範囲にある所定量のニコチンアミド、あるいは、そのアナログ、誘導体または代謝産物の存在下で培養される。例えば、ニコチンアミド濃度は、約0.075mM、約0.1mM、約0.125mM、約0.15mM、約0.2mM、約0.25mM、約0.3mM、約0.35mM、約0.4mM、約0.45mM、約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1.0mM、約1.25mM、約1.5mM、約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM、約4.5mM、約5.0mM、約6.0mM、約7.0mM、約8.0mM、約9.0mM、約10.0mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mMまたはそれ以上、あるいは、約0.1mM〜約20mMの範囲内、約0.25mM〜約15mMの範囲内、約0.5mM〜約10mMの範囲内、1.0mM〜約10mMの範囲内、1.0mM〜約5mMの範囲内が可能である。本明細書中で使用される用語「約」は、示された値の±10%を示す。1つの例示的な実施形態において、ニコチンアミド濃度は約5mM/Lである。
【0074】
いくつかの実施形態において、ニコチンアミド、あるいは、そのアナログ、誘導体または代謝産物は、数日から数週間までの間の培養期間にわたって、例えば、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週間、15日、16日、17日、18日、19日、20日、3週間、22日、23日、24日、25日、26日、27日、4週間、29日、30日、31日、32日、33日、34日、5週間、38日、40日、6週間、45日、7週間またはそれ以上にわたって、あるいは、約6日〜約5週間の範囲内、約10日〜約4週間の範囲内、約2週間〜約3週間の範囲内で与えられる。1つの例示的な実施形態において、培養期間は約3週間である。
【0075】
さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、造血細胞のエクスビボ拡大は、細胞に、エクスビボ細胞増殖のための条件(例えば、栄養分など)およびサイトカインを与えることを含む。そのようなサイトカインは初期作用サイトカインが可能であり、例えば、幹細胞因子、FLT3リガンド、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−6、インターロイキン−10、インターロイキン−12、腫瘍壊死因子−αおよびトロンボポイエチンなどが可能であるが、これらに限定されない。1つの例示的な実施形態において、造血細胞は、幹細胞因子(SCF)、トロンボポイエチン(TPO)、IL−6およびFLT3リガンドの組合せの存在下で培養される。
【0076】
後期作用サイトカインもまた使用することができる。これらには、例えば、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポイエチン、FGF、EGF、NGF、VEGF、LIF、肝細胞増殖因子およびマクロファージコロニー刺激因子が含まれる。
【0077】
新規なサイトカインが引き続き発見され、それらのいくつかは、本発明の細胞拡大方法における使用が見出され得ることが、これに関連して理解される。
【0078】
本発明において使用される造血細胞は様々な起原のものが可能である。本発明の1つの例示的な実施形態によれば、造血細胞は、造血細胞、臍帯血細胞、動員された末梢血細胞、骨髄細胞からなる群から選択される供給源に由来し、同様に、主に非造血性の組織からも由来し、例えば、肝細胞、膵臓細胞、神経細胞、乏突起神経膠細胞、皮膚細胞、胚性幹細胞、筋細胞、骨細胞、間葉細胞、軟骨細胞および間質細胞などからも由来する。造血幹細胞を様々な供給源から調製する様々な方法がこの技術分野では広く知られており、これらの方法では、一般に、1つまたは複数の造血細胞マーカー(例えば、CD34、CD133など)を発現するか、または、分化した細胞のマーカーを有しない細胞が選択される。選択は、通常、FACSまたは免疫磁石分離によって行われるが、PCRなどの核酸法によることもまた可能である(本明細書中下記における材料および実験方法を参照のこと)。胚性造血細胞およびその回収方法がこの技術分野では広く知られており、例えば、Trounson AO(Reprod Fertil Dev(2001)、13:523)、Roach ML(Methods Mol Biol(2002)、185:1)およびSmith AG(Annu Rev Cell Dev Biol(2001)、17:435)に記載される。成体造血細胞を成体の組織から得ることができ、成体造血細胞もまたこの技術分野では広く知られている。成体細胞を単離する方法、または、成体細胞について富化する方法が、例えば、Miraglia,S.ら(1997)、Blood、90:5013;Uchida,N.ら(2000)、Proc Natl Acad Sci USA、97:14720;Simmons,P.J.ら(1991)、Blood、78:55;Prockop DJ(Cytotherapy(2001)、3:393)、Bohmer RM(Fetal Diagn Ther(2002)、17:83)およびRowley SDら(Bone Marrow Transplant(1998)、21:1253)、Srem Cell Biology(Daniel R.Marshak(編者)、Richard L.Gardner(編者)、発行者:Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001))、および、Hematopoietic Stem Cell Transplantation(Anthony D.Ho(編者)、Richard Champlin(編者)、発行者:Marcel Dekker(2000))に記載される。
【0079】
PCT IL03/00681(Peledら)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、細胞の供給源が単核血液細胞の画分全体(すなわち、富化されていない細胞)を含むとき、造血幹細胞の分化を抑制することができ、かつ、その増殖を刺激し、延ばすことができる分子の拡大での使用を開示する。従って、本発明の1つの実施形態において、造血細胞を含む細胞の集団は、選択されていない単核細胞である。
【0080】
表現「選択されていない造血単核細胞」は、白血球画分の任意の部分を表すために本明細書中では使用され、この場合、細胞の大部分が造血系の決定づけられた細胞であり、一方で、細胞の少数が造血幹細胞および造血前駆体細胞である(これらの用語は本明細書中下記においてさらに定義される)。健康なヒトにおいて、白血球は、例えば、系譜決定された前駆体細胞であるCD34CD33(骨髄系の決定づけられた細胞)、CD34CD3(リンパ系の決定づけられた細胞)、CD34CD41(巨核球性の決定づけられた細胞)、および、分化した細胞、すなわち、CD34CD33(骨髄系、例えば、顆粒球および単球など)、CD34CD3、CD34CD19(それぞれ、T細胞およびB細胞)、CD34CD41(巨核球)を含む、造血系の系譜決定された細胞および分化した細胞(典型的には、単核細胞の99%超が、系譜決定された細胞である)と、造血幹細胞および造血系の初期前駆体細胞(例えば、CD34Lineage陰性(Lin)、CD34−Lineage陰性CD34CD38など)(典型的には1%未満)との混合物を含む。
【0081】
造血単核細胞は典型的には、血液サンプルをFicoll−Hypaque層の上に載せ、密度クッションでの遠心分離の後、Ficoll−Hypaqueと、血清との間に存在する境界層を集めることによって血液サンプルから得られ、この場合、そのような境界層は、血液サンプルに存在する白血球から本質的になる。
【0082】
造血幹細胞および造血前駆体細胞を、上記のような示差的密度遠心分離により得られる造血単核細胞のさらなる選択または富化によって得ることができる。このさらなる富化プロセスは典型的には、免疫分離によって、例えば、免疫磁石分離またはFACSなどによって行われ、造血細胞について富化される細胞画分をもたらす(造血細胞の富化の詳細な説明については、実施例の節における材料および実験手順を参照)。
【0083】
上記マーカーに従う選択による富化を、造血細胞の拡大の前に、または、培養している期間の期間中に、または、拡大した後、細胞をレシピエントに投与する前に行うことができる。別の実施形態において、選択されていない造血単核細胞を、造血細胞の拡大された集団を得るための直接の供給源として使用することができ、これにより、幹細胞を拡大の前に富化する必要性が回避され、従って、プロセスが効率および費用の両方に関して実質的に簡略化される。
【0084】
治療のためのプロトコルの確立は、様々なパラメーター(例えば、ニコチンアミド濃度、培養期間の継続期間、1回の服用あたり投与される細胞の量、および、服用回数など)を調整することを伴い得ることが理解される。そのようなパラメーターの影響を、日常的な実験によって、例えば、下記の実施例の節において記載されるモデルなどによって評価することができる。結果の尺度(例えば、灌流および生存など)、ならびに、組織学的および機能的な判断基準を、末梢血管疾患を治療することにおいて最大の治療的価値を有する細胞の数での最適な効率に近づけるために、これらの種々のパラメーターを変化させることの効力を評価するために用いることができる。罹患組織における灌流を決定するために定量化することができる、この技術分野で知られているさらなるパラメーターが、血管造影およびMRI、ならびに、臨床的パラメーター、例えば、罹患領域における組織壊死の程度、虚血領域における組織の潰瘍形成、ならびに、指および/または肢の切断などである。
【0085】
これらの動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を定める際に使用することができる。例えば、末梢血管疾患の治療のために好適である治療効果的な用量を、これらの疾患の動物モデルを用いた実験から決定することができる。
【0086】
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。的確な配合、投与経路および投薬量を、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第1章、1頁参照)。
【0087】
投薬量および投薬間隔を、調節効果を維持するために十分である数の造血細胞を提供するために個々に調節することができる。1つの実施形態において、対象は造血細胞の1回の服用により治療される。別の実施形態において、造血細胞を投与することには、対象への細胞の少なくとも2回の投与またはそれ以上の投与が含まれる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態によれば、拡大された造血細胞は対象への埋め込みによって投与される。細胞療法の様々な方法、すなわち、造血細胞をレシピエントに移植する様々な方法がこの技術分野では広く知られている(例えば、本明細書中上記の背景の節における数多くの参考文献を参照)。移植の好適な方法を、埋め込まれた細胞の所望される組織へのホーミング、所望される組織特異的な遺伝子またはマーカーの発現、および、レシピエントにおける移植組織の機能をモニターすることによって決定することができる。いくつかの実施形態において、拡大された造血細胞は、組織への直接の注入によって、末梢血管疾患の虚血プロセスにより冒された領域、器官、組織または肢に局所投与される。そのような局所投与は、例えば、限定されないが、筋肉内投与のための皮下ニードルまたはカテーテルを使用して、あるいは、罹患領域への血管内投与によって行うことができる。
【0089】
本発明の方法に従って投与される造血細胞は、移植のための好適な培地において調製される。そのような培地は、医薬的に許容され得るビヒクルを含むことができ、例えば、生理学的な緩衝剤溶液(例えば、PBSまたはリンゲル溶液など)などを含むことができ、あるいは、培地には、投与医師または個体によって決定されるように、さらなる因子(例えば、栄養分、ビタミン、電解質など)を補充することができる。
【0090】
拡大された造血細胞のドナーおよびレシピエントは1人の個体または異なる個体(例えば、同種の個体)であり得る。同種移植が実施されるとき、この技術分野では広く知られているように、移植物の拒絶および/または移植片対宿主病を低下させるための治療措置を試みなければならない。そのような治療措置は現在、ヒトの治療で実施されている。最も進んだ治療措置が、Slavin S.ら(例えば、J.Clin Immunol(2002)、22:64、および、J Hematother Stem Cell Res(2002)、11:265);Gur H.ら(Blood(2002)、99:4174)、および、Martelli M Fら(Semin Hematol(2002)、39:48)による刊行物に開示される(これらは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0091】
処置されている虚血組織に対するさらなる治療的価値を提供するために、本発明の拡大された造血細胞は、PVDにおける虚血損傷と闘うことにおいて効果的である因子(1つまたは複数)を発現するように、すなわち、遺伝子療法において効果的である因子(1つまたは複数)を発現するように遺伝子改変することができる。本明細書中で使用されるような遺伝子療法は、遺伝的または後天的な疾患または状態または表現型を治療または予防するための宿主内への目的とする遺伝物質(例えば、DNAまたはRNA)の移入を示す。目的とする遺伝物質は、インビボでのその産生が所望される産物(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、機能的RNA、アンチセンス)をコードする。例えば、目的とする遺伝物質は、治療的価値を有するホルモン、受容体、酵素、ポリペプチドまたはペプチドをコードすることができる。総説については、一般には、教本「Gene Therapy」(Advanced in Pharmacology 40、Academic Press、1997)を参照。
【0092】
細胞はエクスビボで遺伝子改変することができ、あるいは、遺伝子改変された組織または宿主に由来することができる。エクスビボ遺伝子療法において、細胞が患者から取り出され、培養されながら、インビトロで処置される。一般には、機能的な置換遺伝子が、必要に応じて、適切な遺伝子送達ビヒクル/方法(トランスフェクション、形質導入、相同的組換えなど)および発現システムによって細胞内に導入され、その後、改変された細胞が培養で拡大され、宿主/患者に戻される。これらの遺伝的に再び埋め込まれた細胞は、トランスフェクションされた遺伝物質をその場で発現することが示されている。
【0093】
従って、さらに、本発明の1つの局面によれば、拡大された造血細胞は、遺伝子改変された細胞である。拡大された造血細胞を導入遺伝子により形質導入するための様々な方法がこの技術分野では知られている(例えば、PCT IL2004/000215(Peled)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)参照)。簡単に記載すると、核酸分子が、核酸によってコードされる遺伝子産物の細胞における発現のために好適な形態で造血細胞に導入される。従って、核酸分子には、コード配列、および、遺伝子(またはその一部)の転写のために要求される調節配列、ならびに、遺伝子産物がタンパク質またはペプチドであるときには、核酸分子の翻訳のために要求される調節配列が含まれ、そのような調節配列には、プロモーター、エンハンサーおよびポリアデニル化シグナル、ならびに、コードされたタンパク質またはペプチドの輸送のために必要な配列、例えば、細胞の表面へのタンパク質またはペプチドの輸送のための、あるいは、分泌のためのN末端のシグナル配列が含まれる。
【0094】
本発明の方法とともに方法するために好適な遺伝子産物には、限定されないが、前血管形成因子(例えば、VEGF、PDGF、FGF、D114、MMP、Ang1、Ang2など)、抗炎症性因子(例えば、抗炎症性サイトカインのIL−4、IL−6、IL−10、IL−11、IL−13など)およびその他が含まれ得る。そのような因子を拡大された造血細胞の移植によって提供することは、損傷を受けた組織における血管新生を強化するために、また、PVDに関連した虚血からの回復を早めるために役立ち得る。
【0095】
本発明の方法は、末梢血管疾患のための他の治療法(例えば、補助療法など)と一緒に、または、同時投与で施すことができる。従って、1つの実施形態において、拡大された造血細胞は、末梢血管疾患に影響を及ぼすさらなる治療と併せて、例えば、抗炎症治療、敗血症予防治療および抗生物質治療、ホルモン補充(例えば、インスリン、エストロゲンなど)、緩和治療(例えば、抗侵害受容治療など)、スタチン類、ならびに、抗凝固治療および血栓溶解治療(例えば、ヘパリンおよびクマジンなど)などと併せて同時投与される。同時投与は、拡大された造血細胞と同時にさらなる治療を実際に施すことによって、あるいは、より可能性があるが、拡大された造血細胞の投与に近い期間にわたって、または、拡大された造血細胞の投与の期間中に、または、拡大された造血細胞の投与の直後にさらなる治療を施すことによって行うことができる。
【0096】
本明細書中で使用される用語「血管の再生」、用語「血管形成」、用語「血管新生」、用語「脈管再生」および用語「側副循環増大」(または、そのような趣旨の言葉)は同義的であると見なされる。用語「医薬的に許容され得る」は、天然物質または合成物質を示すとき、その物質が、そのはるかにより大きい有益な作用を考慮して、許容され得る毒性作用を有することを意味し、一方で、関連する用語「生理学的に許容され得る」は、その物質が比較的低い毒性を有することを意味する。用語「同時投与される」は、2つ以上の薬物が、ほぼ同時に、または、接近した順で患者に与えられ、その結果、それらの作用がほぼ同時に働くか、または、実質的に重なることを意味する。この用語は、同時だけでなく、逐次的な薬物投与を包含する。
【0097】
本明細書中上記で述べられたように、他の方法が培養での造血細胞の拡大のために利用可能であり、例えば、PI 3−キナーゼの活性または発現の阻害剤などがある。PCT IL2004/000215(Peledら)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、幹細胞および/または前駆体細胞を、その分化を阻害しながらエクスビボ拡大するための、PI 3−Kの活性または発現の阻害剤の使用を開示する。
【0098】
従って、本発明のこの局面のさらに別の具体的な実施形態において、幹細胞および/または前駆体細胞を、細胞増殖を可能にし、かつ、同時に、分化を阻害する条件のもとでのエクスビボで培養することが、細胞を、PI 3−キナーゼを伴うシグナル伝達経路に応答することにおける細胞の能力を低下させる条件で培養することによって、または、細胞がPI 3−キナーゼ阻害剤の存在下で培養される条件で培養することによって行われる。
【0099】
いくつかの実施形態において、PI 3−キナーゼ活性の阻害を、知られているPI 3−キナーゼ阻害剤によって、例えば、ワートマニンおよびLY294002、ならびに、例えば、米国特許第5378725号(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に記載される阻害剤などによって行うことができる。
【0100】
これらのアンタゴニストの最終的濃度は、具体的な適用に依存して、マイクロモル濃度またはミリモル濃度の範囲であり得る。例えば、約0.1μM〜約100mMの範囲内、好ましくは約4μM〜約50mMの範囲内、より好ましくは約5μM〜約40mMの範囲内であり得る。
【0101】
本発明のこの局面のさらに別の具体的な実施形態において、造血細胞を、細胞増殖を可能にし、かつ、同時に、分化を阻害する条件のもとでのエクスビボで培養することが、細胞を銅キレーターの存在下で培養することによって行われる。造血細胞を、その分化を本発明において実質的に阻害しながら効率的にエクスビボ拡大するために好適な、銅に対する大きい親和性を有する遷移金属キレーターの詳細な説明が、PCT IL99/00444、PCT IL03/00064、PCT IL03/00681、PCT IL2004/000215およびPCT IL2005/00994(Peledら)に見出され得る(これらは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)。
【0102】
本発明のこの局面のさらに別の具体的な実施形態において、造血細胞を、細胞増殖を可能にし、かつ、同時に、分化を阻害する条件のもとでのエクスビボで培養することが、細胞を銅キレート(キレーター−銅錯体)の存在下で培養することによって行われる。PCT IL03/00062(Peledら)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は、造血細胞を、その分化を実質的に阻害しながら効率的にエクスビボ拡大するための、銅キレート(銅と、銅に対する大きい親和性を有する重金属キレーターとの錯体)の使用を開示する。
【0103】
キレーターの最終的濃度は、具体的な適用に依存して、マイクロモル濃度またはミリモル濃度の範囲であり得る。例えば、約0.1μM〜約100mMの範囲内、好ましくは約4μM〜約50mMの範囲内、より好ましくは約5μM〜約40mMの範囲内であり得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、銅キレーターには、ポリアミンに存在する2つ以上のアミン基により銅イオンとの環状の錯体を形成することができるポリアミン分子が含まれる。ポリアミンキレーターは、線状ポリアミン、環状ポリアミンまたはそれらの組合せが可能である。
【0105】
本発明の拡大された造血細胞集団は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックのような、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる。パックまたはディスペンサーデバイスには、末梢血管疾患の治療のための投与についての説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。医薬的に適合し得るキャリアに配合された本発明の拡大された造血細胞を含む組成物もまた、上でさらに詳述されたように、適応される状態を処置または予防するために、または末梢血管疾患に関連する望ましい事象の誘導のために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。ラベル上の好適な表示は、末梢血管疾患の治療および/または予防を含むことができる。
【0106】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0107】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の実施形態のいずれかにおいて適切なように提供することもできる。各種の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素無しで実行できない場合を除いて、それらの実施形態の必須の特徴と見なされることはない。
【0108】
上記の本発明および以下の特許請求の範囲に記載の各々の種々の実施形態および態様は、以下の実験により支持される。
【実施例】
【0109】
ここでは、上記説明と共に以下の実施例を参照して、非限定的様式で本発明のいくつかの実施形態を例示する。
【0110】
材料および実験方法
拡大および注入のための細胞および細胞処理:
細胞源:造血細胞は、骨髄(BM)、G−CSF動員末梢血(MPB)または臍帯血(UCB)のいずれかに由来する造血幹細胞(HSC)または前駆体細胞(HPC)のいずれかであった。
【0111】
ヒト造血細胞の細胞培養:ヒト臍帯血細胞を、(インフォームドコンセントが得られた)正常な満期出産の後の臍帯血から得た。MPBまたはBMを、(インフォームドコンセントが得られた)提供者から得た。サンプルは新鮮なまま使用されたか、そうでなければ、採取され、その後、UCBについては、分娩後24時間以内に、広く知られている臍帯血冷凍保存プロトコル(Rubinsteinら、1995)に従って、または、MPBおよびBMに関しては、一般的な実施に従って凍結された。冷凍保存する前に、血液をHESPANデンプン(ヒドロキシエチルデンプン)で30分間沈降させて、ほとんどのRBCを除いた。それらを使用する前に、細胞を、2.5%のヒト血清アルブミン(HSA)(Bayer Corp.、Elkhart、IN、米国)を含有するデキストラン緩衝液(Sigma、St.Louis、MO、米国)において解凍し、本明細書中下記において記載されるように処理した。解凍後、示される場合には、白血球富化画分を集め、Ficoll−Hypaqueグラジエント(1.077g/mL;Sigma Inc.、St.Louis、MO、米国)に重層し、400Xgで30分間遠心分離した。その後、境界層における単核細胞画分を採取し、3回洗浄し、0.5%のヒト血清アルブミン(HSA)(Bayer Corp.、Elkhart、IN、米国)を含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)(Biological Industries、Bet HaEmek、イスラエル)に再懸濁した。CD34細胞を、「MiniMACS CD34前駆体細胞単離キット」(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を製造者の推奨法に従って使用する免疫磁石分離によって単離および精製した。得られたCD34細胞の純度は、フローサイトメトリー評価に基づいて95%〜98%の間であった。CD133細胞画分を下記のように精製した:単核細胞画分を、「MiniMACS CD133幹細胞単離キット」(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を使用する2回の免疫磁石分離に供したか、または、未分画の調節物を、CD133CliniMACS(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)試薬を使用して、それに従って、すなわち、製造者の推奨法に従ってCliniMACSデバイスで単離した(後者では、Ficoll−Hypaqueグラジエントの段階が省略された)。このようにして得られたCD133集団の純度は、フローサイトメトリーによって評価されたとき、80%〜95%であった。
【0112】
造血細胞のエクスビボ拡大
末梢血、骨髄または臍帯血に由来する造血細胞または精製された造血幹細胞/前駆体細胞(CD34+またはCD133+)を、培養期間の示された継続期間にわたって、サイトカイン、および、示された濃度でのPI 3K酵素活性阻害剤(LY294002)またはニコチンアミドのいずれかとともに培養した。培養をこれらの分化阻害剤とともに行った後、得られた細胞集団は、サイトカインだけの存在下で培養された細胞と比較して、幹細胞/初期前駆体細胞(例えば、CD34+CD38−細胞およびCD34+Lin−細胞など)により富化されていることが明らかにされた。
【0113】
マウス後肢虚血モデル
体重が26g〜30gの間である12週齢のBalb/Cマウスまたは「ヌード」マウスを末梢血管疾患のこのモデルのために使用した。短時間の麻酔のもとで、左大腿動脈を露出させ、解剖して遊離させ、切除した(Madeddu,Emanueliら、2004)(Couffinhal,Silverら、1998;Babiak,Schummら、2004)。
【0114】
細胞注入
治療的血管新生に対する培養細胞の投与の影響を後肢虚血のマウスモデルにおいて調べた(Kalka,Masudaら、2000;Madeddu,Emanueliら、2004)。一方の大腿動脈を手術により切除した1日後、マウスは、上記で記載されるように拡大された細胞の1〜2000×10個の筋肉内注射を受ける。コントロール群には、同じ数の拡大されていない細胞またはPBSが注入された(Madeddu,Emanueliら、2004)。
【0115】
インビボ灌流の測定
灌流の分析を、大腿動脈結紮後、細胞移植前、および、細胞移植後7日〜14日で行った(Babiak,Schummら、2004)。レーザードップラー灌流画像化(Moor Instrument、Wilmington、DE)を使用して、連続血流測定を手術後14日の経過にわたって記録した。これらのデジタル着色画像において、赤色の色調により、最大灌流の領域を示される;中程度の灌流の値が黄色で示される;最も低い灌流の値が青色として表される。個体間の差、ならびに、試験者に依存する偏りを排除するために、結紮肢と非結紮肢との間での比率を標準化された様式で測定した。
【0116】
実験結果
実施例I:PI 3キナーゼ阻害剤とともに拡大された造血細胞はBalb/Cマウスの虚血肢における切断を防止する
臍帯血由来CD133+細胞がサイトカイン(SCF、TPO、IL−6およびFLT3)とともに培養され、PI 3K特異的阻害剤のLY294002が5マイクロモル/Lの最終的濃度で補充された。培養で3週間後、得られた細胞集団を計数し、特徴づけし、示されるような異なる用量(5×10細胞/被験体、5×10細胞/被験体および2.5×10細胞/被験体)で免疫適格Balb/Cマウスの虚血肢に筋肉内注入した。コントロールマウスには、緩衝液が注入された。マウスを、肢虚血誘導の前日から開始してその後もシクロスポリンで処置した。肢切断率を細胞注入後7日で評価した(切断が7日目以降は生じなかった)。図2は、造血細胞を受けているマウスにおける肢切断の用量依存的な防止を示す。
【0117】
実施例II:PI 3キナーゼ阻害剤とともに拡大された造血細胞はBalb/Cマウスの虚血肢における灌流を高める
臍帯血由来CD133+がサイトカイン(SCF、TPO、IL−6およびFLT3)とともに培養され、PI−3K特異的阻害剤のLY294002が5マイクロモル/Lの最終的濃度で補充された。培養で3週間後、得られた細胞集団を計数し、特徴づけし、示されるような異なる用量(5×10細胞/被験体、5×10細胞/被験体および2.5×10細胞/被験体)で免疫適格Balb/Cマウスの虚血肢に筋肉内注入した。コントロールマウスには、緩衝液が注入された。マウスを、肢虚血誘導の前日から開始してその後もシクロスポリンで処置した。肢の灌流を、0日目(虚血誘導後)、7日目および14日目で評価した。結果が非虚血肢に対するパーセント灌流として示される。図3aは、造血細胞注入後7日での肢の灌流における劇的な用量依存的改善を示す。造血細胞注入後14日において(図3b)、大きく改善された灌流が観測された。すべての投薬群における処置された肢の迅速な、著しく優れた回復に留意すること。
【0118】
まとめると、これらの結果により、造血細胞は、PI 3−キナーゼの阻害剤とともに拡大された場合、5×10細胞/被験体の低い用量でさえ、免疫適格宿主の肢における末梢血管動脈閉塞において、灌流を迅速に増大させて、かつ、切断率を低下させて、結果を著しく改善することができることが示される。
【0119】
実施例III:ニコチンアミドとともに拡大された造血細胞はBalb/Cマウスの虚血肢における灌流を高める
臍帯血由来CD133+がサイトカイン(SCF、TPO、IL−6およびFLT3)とともに培養され、5mM/Lの最終的濃度のニコチンアミドが補充された。培養で3週間後、得られた細胞集団を計数し、特徴づけし、5×10細胞/被験体を、示されるような異なる用量で虚血肢に筋肉内注入した。コントロールマウスには、緩衝液が注入された。肢の灌流を7日目にドップラー超音波によって評価した。赤色の色調により、最大灌流の領域を示される;黄色の色調により、中間的な灌流が示される(値が黄色で示される);最も低い灌流の値が青色として表される。
【0120】
図4aおよび図4bは、細胞注入当日およびその後のさらに2日、シクロスポリンで処置されたマウスにおいて虚血肢での灌流における改善を示す。図5aおよび図5bは、シクロスポリンを受けていないマウスにおいて虚血肢での灌流における改善を示す。
【0121】
実施例IV:ニコチンアミドとともに拡大された造血細胞はヌードマウスの虚血肢における灌流を高める
臍帯血由来CD133+がサイトカイン(SCF、TPO、IL−6およびFLT3)とともに培養され、5mM/Lの最終的濃度のニコチンアミドが補充された。培養で3週間後、得られた細胞集団を計数し、特徴づけし、1×10細胞/被験体を、示されるような異なる用量でヌード(無胸腺)マウスの虚血肢に筋肉内注入した。シクロスポリンが投与されなかった。コントロールマウスには、示されるように、非培養細胞または緩衝液が注入された。肢の灌流を7日目にドップラー超音波によって評価し、それぞれの場合において反対側の結紮されていない健全な肢に対するパーセント灌流として表した。
【0122】
図6に例示されるように、結紮後12日において、非培養の細胞を受けている肢は、非処置(緩衝液)の結紮肢の灌流と類似する損なわれた灌流を示した一方で、ニコチンアミドとともに拡大された細胞を受けている虚血肢は血流の著しくより大きい回復を示した。この実験の結果は、ニコチンアミドの非存在下で培養された細胞の類似する数の活性、または、培養前の細胞(非培養細胞)の類似する数の活性を上回る、ニコチンアミドとともに培養された細胞の優れた活性を明らかにする。従って、ニコチンアミドの存在下で培養された細胞は、培養細胞または新鮮な非培養細胞を上回る、末梢血管疾患に関連する虚血組織における灌流を高めることについての増大した可能性を明瞭に示す。
【0123】
実施例V:ニコチンアミドとともに拡大された造血細胞はBalb/Cマウスの虚血肢における指および肢の生存を高める
臍帯血由来CD133+がサイトカイン(SCF、TPO、IL−6およびFLT3)とともに培養され、5mM/Lの最終的濃度のニコチンアミドが補充された。培養で3週間後、得られた細胞集団を計数し、特徴づけし、1×10細胞/被験体を、示されるような異なる用量でヌード(無胸腺)マウスの虚血肢に筋肉内注入した。コントロールマウスには、示されるように、同じ量の非培養細胞または緩衝液が注入された。肢切断率を細胞注入後12日で評価した(切断が12日目以降は生じなかった)。
【0124】
図7に示される結果によって立証されるように、ニコチンアミドとともに拡大された細胞の筋肉内注入は虚血肢の切断の完全な防止をもたらし、一方で、新鮮な非培養細胞を受けている肢は、処置されていない虚血肢に類似する切断率を示した。
【0125】
まとめると、上記で示された結果は、ニコチンアミドを伴う培養で拡大された造血細胞は、末梢血管閉塞に関連する虚血組織における灌流を高め、かつ、冒された肢における臨床的結果(例えば、肢および指の生存)を著しく改善する優れた能力を有することを示している。ニコチンアミドとともに拡大された造血細胞の輸液の効果は、シクロスポリン処置を伴う免疫適格宿主およびシクロスポリン処置を伴わない免疫適格宿主(Balb/Cマウス)において、また、免疫低下している(無胸腺)ヌードマウスにおいて、それらの両方で著しいことが認められる。
【0126】
本発明を特定の実施形態と共に記載しているが、多数の変更形態、修正形態、および変形形態が当業者に明らかであることが明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれるこのような全ての変更形態、修正形態、および変形形態が含まれることが意図される。
【0127】
全ての刊行物、本明細書中に記載した特許および特許出願は、その全体が、それぞれの刊行物、本明細書中に記載した特許および特許出願があたかも特別または個別に本明細書中で参考として援用されるように示されるような範囲に本明細書中で参考として援用される。さらに、本出願における任意の引例の引用または識別により、このような引例が先行技術として本発明で利用可能であることを承認すべきではない。節の見出しが使用されている範囲まで、それらは必ずしも限定として見なされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢血管疾患をその治療の必要性のある対象において治療する方法であって、治療量のエクスビボ拡大された造血細胞を前記対象の虚血組織に投与し、それにより、前記末梢血管疾患を治療することを含む、方法。
【請求項2】
前記造血細胞は、
(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、
(b)前記造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、前記治療の必要性のある対象の虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすこと
によるエクスビボでの拡大培養によって拡大される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記造血細胞は、骨髄、末梢血および新生児臍帯血からなる群から選択される供給源に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法はさらに、前記造血細胞を前記培養の前に造血幹細胞について富化することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記拡大された造血細胞を前記対象への前記投与の前に造血幹細胞について富化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニコチンアミドの量が約0.1mM〜約20mMである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ニコチンアミドの量が約0.25mM〜約15mMである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ニコチンアミドの量が約0.5mM〜約10mMである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ニコチンアミドの量が約1.0mM〜約10mMである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ニコチンアミドの量が約5.0mMである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記培養期間が約6日〜約6週間である、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記培養期間が約10日〜約5週間である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記培養期間が約2週間〜約4週間である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記培養期間が約3週間である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記投与することが、静脈内投与および直接注入からなる群から選択される方法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、前記造血細胞の前記投与の前に免疫抑制治療により治療される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、前記造血細胞の前記投与の後に免疫抑制治療により治療される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記投与することが前記対象への前記細胞の少なくとも2回の投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記拡大された造血細胞が、末梢血管疾患のためのさらなる治療と併せて同時投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記さらなる治療は、免疫抑制治療、抗高血圧治療および抗血小板治療からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記灌流の高まりは、ドップラー超音波、血管造影およびMRIからなる群から選択されるパラメーターに従って決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記灌流の高まりは、組織の壊死、組織の潰瘍形成、指切断および肢切断からなる群から選択される臨床パラメーターに従って決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記増殖のための条件が、サイトカインを与えることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記サイトカインは初期作用サイトカインである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記初期作用サイトカインが、幹細胞因子、FLT3リガンド、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−6、インターロイキン−10、インターロイキン−12、腫瘍壊死因子−αおよびトロンボポイエチンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
後期作用サイトカインを与えることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記後期作用サイトカインが、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポイエチン、FGF、EGF、NGF、VEGF、LIF、肝細胞増殖因子およびマクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
虚血性疾患または虚血状態をその治療の必要性のある対象において治療する方法であって、
(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、
(b)前記造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、前記治療の必要性のある対象の虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすこと
によってエクスビボで拡大培養された造血細胞の治療量をその必要性のある対象に投与すること、ならびに、
(c)前記拡大された造血細胞の治療量を前記対象に投与し、それにより、前記対象における前記虚血性疾患を治療および/または予防すること
を含む、方法。
【請求項29】
前記造血細胞は、骨髄、末梢血および新生児臍帯血からなる群から選択される供給源に由来する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記造血細胞を前記培養の前に造血幹細胞について富化することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記拡大された造血細胞を前記対象への前記投与の前に造血幹細胞について富化することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記虚血性疾患または虚血状態は末梢血管疾患である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記ニコチンアミドの量が約0.1mM〜約20mMである、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記ニコチンアミドの量が約0.25mM〜約15mMである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記ニコチンアミドの量が約0.5mM〜約10mMである、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記ニコチンアミドの量が約1.0mM〜約10mMである、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記ニコチンアミドの量が約5.0mMである、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記培養期間が約6日〜約6週間である、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記培養期間が約10日〜約5週間である、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記培養期間が約2週間〜約4週間である、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
前記培養期間が約3週間である、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
前記培養期間が約3週間であり、前記ニコチンアミドの量が約5mM/Lである、請求項28に記載の方法。
【請求項43】
造血細胞を、虚血性疾患または虚血状態に苦しむ対象への投与のために調製する方法であって、
(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、
(b)前記造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、その必要性のある対象の虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすこと
を含む、方法。
【請求項44】
前記培養期間が約3週間であり、前記ニコチンアミドの量が約5mM/Lである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記虚血性疾患または虚血状態は末梢血管疾患である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
包装材と、エクスビボ培養された造血細胞集団とを含む、末梢血管疾患を治療するための製造物であって、前記造血細胞集団は、
(a)造血細胞を、細胞増殖を可能にする条件のもとで培養すること、および、
(b)前記造血細胞を、所定の培養期間にわたって所定量のニコチンアミドの存在下で培養し、虚血組織における灌流を高めることができる未分化造血細胞の拡大された集団をもたらすこと
によってエクスビボで拡大培養され、また、
前記包装材は、前記造血細胞集団が、末梢血管疾患をその治療の必要性のある対象において治療するためのものであることを示すラベル、説明書または添付文書を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−509316(P2010−509316A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535881(P2009−535881)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001381
【国際公開番号】WO2008/056368
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(501127637)ガミダ セル リミテッド (6)
【Fターム(参考)】