説明

末端部材同士のシール結合用装置

本発明は流体ラインシステムの末端部材(24)同士のシール結合用の装置に関し、ケーシング部材(1)と内側部材(13)とからなる。かかる内側部材(13)はケーシング部材(1)内に軸方向に移動自在に予め組み込まれており、末端部材(25)がケーシング部材(1)内に導入領域(3)を経て挿入されて内側部材(13)に接触するまで内側部材(13)に取外し自在に結合したシールユニット(21)を固定する役割を担っている。末端部材(25)が挿入された際、内側部材(13)はケーシング部材(1)から軸方向に放出され、一方シールユニット(21)の軸方向の動きは当接部(12)によって抑制されてケーシング部材(1)内に留まる。末端部材同士がシール状に結合され得るものであって、シールユニット(21)の別途取扱いを要することなく内側部材(13)に接触する末端部材(25)の相対的位置を示す装置を本発明は提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体ラインシステムにおいて末端部材同士をシール結合する装置に関する。該装置は末端部材が挿入されるケーシング部材と、第1導入領域を介してケーシング部材内に導入される内側部材と、ケーシング部材によって囲繞されるシールユニットとを有し、末端部材同士の間をシールすべく組み立てられる。
【背景技術】
【0002】
かかる装置は欧州特許第0,806,597A1号によって公知である。流体ラインシステムにおける末端部材同士を結合すべく提供されている既知の装置はケーシング部材を有し、かかるケーシング部材内にシールユニットの役割を担う内側部材及び固定されていないシールリングが装着されている。末端にシールフランジを備えた第1末端部材が第1導入領域を介して挿入されると、ケーシング部材の縦方向舌状部が外方向に押圧され、固定されていないシールリングがシールフランジと内側部材の表面との間に納まり、よってシールフランジはケーシング部材の内側を向く内側ビード(bead)と内側部材の外側を向く環状カラー(collar)との間に設置される。第1末端部材がこのように設置されることによって内側部材が固定され、固定リングは第1導入領域の縦方向舌状部の周りで滑動するので、これにより第1末端部材が誤って滑り出るのが防止される。
【0003】
内側部材は2つの弾性アーム部を備えており、該アーム部は外側に突出した突起部を有している。環状ビードが形成された第2末端部材が第2導入領域に挿入された際に該突起部は環状ビードに係合する。ケーシング部材には保持フィンガ部が形成されており、環状ビードが形成された末端部材に対して適切に配置されることにより、環状ビードの背部と係合して第2末端部材を固定する。この位置において、突起部はケーシング部材の外側から突出し、これによって第2末端部材が適切に設置されていることが示される。従来の装置においては、突起部を設置することによって第2末端部材が適切に設置されているか否かを容易に判断することが出来たが、末端部材の結合は依然として比較的面倒であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のタイプの装置において示唆されている課題を解決することを企図しており、末端部材の結合が比較的簡易であり且つ信頼性を有している点を特徴としており、シールユニットを欠くことは危険であり不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のタイプの装置のかかる課題は、本発明において以下の如く解決された。すなわち、内側部材はケーシング部材内に軸方向に移動自在に支持され、且つ第1導入領域を経て放出され、ケーシング部材の第2導入領域の内側においてシールユニットは内側部材から取外し自在に固定され、内側部材には保持構造が形成されており、ケーシング部材の内側には第1導入領域と第2導入領域との間に当接部が形成されており、内側部材と共に固定されている配置状態から始まって第2導入領域から第1導入領域に向かう軸方向の内側部材の移動によってシールユニットは当接部に係合し、内側部材は接触表面を備え、接触表面は末端部材が第2導入領域内に導入された際に末端部材に係合し、よって内側部材はシールユニットを開放すべく第1導入領域に向けて移動してケーシング部材から取り除かれる。
【0006】
かかる発明の装置においては内側部材が提供されており、かかる内側部材によって、第1に、末端部材が挿入されるまでシールユニットは保持され、第2に、末端部材が挿入された後で且つシールユニットが開放された後、当接部と係合することによって、内側部材に係合する末端部材が適切に挿入されていることを表示する。発明の装置によって、極めて少ない取扱い操作でも末端部材同士を互いに信頼性を確保しながら結合せしめることが可能となり、特に、シールユニットの固定されていない部品、例えばシールリングを更に取り扱うことが不必要となる。
【0007】
本発明の更なる有益な成果や利点は、従属請求項の目的や参照図面を含んだ以下の本発明の実施例の詳細な説明に記載されている。
【実施例】
【0008】
図1は本発明の装置の実施例の部分切取斜視図を示しており、実質的に円筒形に形成されているケーシング部材1はその軸方向に関して互いに反対側に配置されている第1導入領域2及び第2導入領域3を有している。
【0009】
第1導入領域2においては、図1の実施例は環状の固定バネ4を備えており、該固定バネ4は好適にはケーシング部材1の凹部に適合して設置されている。固定バネ4は自由加圧領域5を有しており、内側向きに手動によって加えられた押圧力が作用すると、自由加圧領域5を介してケーシング部材1内の固定突出部6が移動してケーシング部材1内に形成されている凹部内に戻る。
【0010】
本実施例の第2導入領域3においては、少なくとも2つの弾性バネ状突起7がケーシング部材1に形成されており、該弾性バネ状突起7は軸に実質的に平行に延びる平行部8と内側に傾斜した係止部9とを備えている。係止部9と固定リング4に内側で当接する内側ショルダ部10との間に係止溝11が形成されている。内側ショルダ部10及び係止溝11の領域に、ケーシング部材1は多くの内側リング部12を有しており、該内側リング部12は当接する役割を担って環状に周部に延びており、内側ショルダ部10及び係止溝11のラジアル方向内側に距離をおいて配置されている。変形例においては、図示しないが、それは比較的小さな内径を有して特に形成され、ラジアル状に並んだ係止部が備わっている。
【0011】
更に、図1の実施例は内側部材13を有しており、該内側部材13は図1に示されるようにケーシング部材1の内側に配置されている。図示されている実施例においては、内側部材13は前面プレート14と、該前面プレート14に隣接し、前面プレート14の直径より小さな直径を有するネック部15と、前面プレート14の反対側であってネック部15側に位置している離間プレート16とを有している。ネック部15の反対側であって離間プレート16側の内側に形成されているのは円筒型の内側スリーブ17であり、その外径は内側リング部12の内径よりも小さい。更に、内側部材13は少なくとも2つの弾性を有する外側クランプ部18を有しており、そのどちらにも末端突起部19が形成されており、該外側クランプ部18は離間プレート16に接続している内側端部と、前方接触表面20と共に保持構造として内側を向く外側端部とを有している。図1に示す実施例の場合においては、内側スリーブ17は軸方向において接触表面20を越えて突出している。
【0012】
最後に、本発明の装置はシールユニット21を有しており、図1の実施例においては、内側にあって環状であり離間プレート16に隣接している第1シールリング22と、外側にあって環状であり内側部材13の自由端部に対向している第2シールリング23と、第1シールリング22と第2シールリング23との間に配置されている環状中間リング24と、を備えている。シールリング22、23は弾性材料によって形成されており、略円形の断面を有している。一方、中間リング24は硬質材料で形成されており、長方形の断面を有している。中間リング24のラジアル方向の長さはシールリング22、23の直径よりもやや小さい。
【0013】
図1の構成においては、シールリング22、23及び中間リング24は内側リング部12の第2導入領域3に対向する側に配置されおり、内側にある内側スリーブ17に沿って並んでいる。一方、それらの外側は外側クランプ部18によって囲まれている。図1から判るように、末端突起部19は内側スリーブ17と外側クランプ部18との間の自由空間をやや狭めており、よってシールリング22、23及び中間リング24は、内側スリーブ17と外側クランプ部18との間に配置された際に内側部材13によって取外し自在に固定される。
【0014】
図1に示す実施例は、適用の準備が出来ている構造である。かかる構造は通常は製造業者によって提供され、ここにおいて離間プレート16がケーシング部材1の内側リング部12に並ぶまで内側部材13は第1導入領域2に挿入されている。内側スリーブ17が内側リング部12の内側を通って案内され、外側クランプ部18が内側リング部12の間に形成された凹部を通って案内されることによって挿入される。更に、この位置においては、前面プレート14は好適にはケーシング部材1の第1導入領域2における面か、若しくはかかる面より奥を終点としている。
【0015】
更に、この位置において、第1シールリング22と中間リング24と第2シールリング23とがケーシング部材1の第2導入領域3を介し、更に内側スリーブ17と末端突起部19との間の狭い場所を経て内側スリーブ17と外側クランプ部18との間に導入される。ここにおいて内側リング部12は再度シールユニット21用のストッパとなる。本発明の装置は、これによって製造が完了して使用の準備が整い、よって全ての個別部品、すなわち、ケーシング部材1と、内側部材13とシールユニット21とが互いに取外し自在に結合され、特に、シールユニット21が紛失しないように保護される。
【0016】
図2は図1の実施例の部分切取斜視図を示しており、流体ラインシステムの末端部材25が導入されてケーシング部材1の第2導入領域3に部分的に挿入されている。例えば、末端部材25はタンクの固定フィッティングの一部分であり、そこにはパイプラインが接続される。末端部材25はその自由端部に円筒部26を有しており、その前方末端にラジアル方向外側に突出した円周リングフランジ27が形成されている。リングフランジ27から離間した位置において、末端部材25にはその内側にほぼラジアル状に配列した環状の受容面28が備わっており、該受容面28の表面の形状は第2シールリング23の外側表面にほぼ一致している。更にリングフランジ27から離間した位置において、末端部材25には円筒型案内面29が形成されており、その外径はケーシング部材1の平行部8の領域の内径に実質的に一致している。
【0017】
図2の構成は、末端部材25のケーシング部材1との結合の際の中間位置を示すものであって、末端部材25は既に所定位置まで挿入されている。その位置において、外側クランプ部18の接触表面20に対して並んでいる末端部材25の面が、内側部材13を第1導入領域2の方向に所定位置まで移動せしめている。この位置において、本実施例における当接を構成すべく内側リング部12に第1シールリング22が並べられた後の第2シールリング23は完全に内側部材13から開放されており、かつ中間リング24は既に末端突起部19における狭い場所を通過している。しかし、かかる位置においても中間リング24は依然内側スリーブ17の周りに位置している。前面プレート14がケーシング部材1の第1導入領域2に位置する面を越えて突出することが、本実施例の挿入操作において末端部材25の位置がケーシング部材1に関連していることを示している。
【0018】
図3は図1及び図2の実施例の部分切取斜視図を示しており、末端部材25は完全にケーシング部材1に挿入されてその終点に到達している。図3から判るように、かかる末端部材25の配置においては、リングフランジ27が係止溝11の内側に配置されており、係止部9がリングフランジ27の後方で係合しており、案内面29が平行部8の領域に配置されている。よって末端部材25はケーシング部材1に実質的に遊びなしの状態で固定されている。シールユニット21のシールリング22、23及び中間リング24は、ケーシング部材1の内側リング部12と末端部材25の受容面28との間において軸方向のわずかな遊びを有して配置されている。内側部材13は既にケーシング部材1から第1導入領域2を経て放出されており、これは、例えば、ネック部15をつかむことによって行われ、よって末端部材25がケーシング部材1に固定された後、離間プレート16は第1導入領域2に配置されるケーシング部材1の面とほぼ同一面に並び、よって末端部材25の末端位置がケーシング部材1に関して適切な条件にあることが示される。
【0019】
ここで、内側部材13がケーシング部材1から取り除かれた後、図示されていない更なる追加末端部材、例えば可撓性流体ラインが当業者に公知の方法によってケーシング部材1の第1導入領域2内で内側リング部12を通るシールユニット21内であって、固定バネ4の固定突出部6が追加末端部材の末端に形成されている円周状の固定突出部の後部に係合するまで挿入され、よって追加末端部材は取外し自在にケーシング部材1に固定される。この構成によって、追加末端部材の円筒シール部はシールリング22、23に対して内側に配置され、よって末端部材25と追加末端部材とが互いにシールされながら結合する。
【0020】
更なる実施例は、図示しないが、図1の発明装置の実施例に関する変形例であって、内側部材13は前面プレート14を有しており、該前面プレート14に内側スリーブ17及び外側クランプ部18が直接設置されている。この変形実施例においては、ケーシング部材1及び内側部材13の軸方向の長さは、末端部材25 がケーシング部材1に固定されるまで前面プレート14がケーシング部材1の第1導入領域2の領域における面を越えて突出しないようになっている。この場合は、挿入操作が完全に終了するまで内側部材13を完全に取り除くべくつかむことが出来ない。
【0021】
他の追加実施例は、図示しないが、図1の実施例についての変形例であって、ネック部15の長さは、末端部材25がケーシング部材1に固定されるまで前面プレート14がケーシング部材1の第1導入領域2の領域における面を越えて突出しないようになっている。この場合も、挿入操作が完全に終了するまで内側部材13を完全に取り除くべくつかむことが出来ない。
【0022】
上述した実施例においては、前面プレート14がケーシング部材1の第1導入領域2における断面を完全に覆うという利点がある。
【0023】
図1における実施例の他の変形例においては、ネック部15の長さ及び前面プレート14の直径は前面プレート14がケーシング部材 1の第1導入領域2における面に対して並ぶように形成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】発明の装置の実施例の部分切取斜視図であり、ケーシング部材の内部にシールユニットを固定する内側部材が配置されている。
【図2】図1の実施例の部分切取斜視図であり、流体ラインシステムの末端部材がケーシング部材に平行に挿入されている。
【図3】図1及び図2の実施例の部分切取斜視図であり、流体ラインシステムの末端部材がケーシング部材に完全に挿入されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ラインシステムの末端部材同士をシール結合する装置であって、前記末端部材が挿入され得るケーシング部材と、前記ケーシング部材に第1導入領域を介して挿入され得る内側部材と、前記ケーシング部材に包囲され前記末端部材同士を相互にシールするシールユニットと、を有し、前記内側部材(13)は前記ケーシング部材(1)内に軸方向に移動自在に支持され且つ前記第1導入領域(2)を介して放出されることが可能であり、前記ケーシング部材(1)の第2導入領域(3)の内側において前記シールユニット(21)は前記内側部材(13)から取外し自在に固定されることが可能であり、前記内側部材(13)には保持構造(19)が形成されており、前記ケーシング部材(1)内には前記第1導入領域(2)と前記第2導入領域(3)との間に当接部(12)が形成されており、前記内側部材(13)と共に固定されている配置状態から始まって前記第2導入領域(3)から前記第1導入領域(2)に向かう軸方向の前記内側部材(13)の移動によって前記シールユニット(21)は前記当接部(12)に係合し、前記内側部材(13)は接触表面(20)を備え、前記接触表面(20)は末端部材(25)が前記第2導入領域(3)内に導入された際に前記末端部材(25)に係合し、よって前記内側部材(13)は前記シールユニット(21)を開放すべく前記第1導入領域(2)に向けて移動して前記ケーシング部材(1)から取り除かれることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記シールユニット(21)は少なくとも1つの円形シールリング(22、23)を備えていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記内側部材(13)は前記保持構造(19)の領域に円筒内側セクション(17)を備え、前記円筒内側セクション(17)は前記シールユニット(21)を支持すべく前記シールユニット(21)の前記シールリング(22、23)各々を介して導かれ、前記円筒内側セクション(17)は前記シールリング(22、23)各々に対して固定されることなく配置されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記内側部材(13)は、前記シールユニット(21)を固定すべく前記シールユニット(21)の前記シールリング(22、23)各々を囲む少なくとも2つの外側クランプ部(18)を備えていることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記保持構造は前記内側部材(13)の前記内側セクション(17)及び/又は前記外側クランプ部(18)に形成される突出部(19)を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記内側セクション(17)は前記外側クランプ部(18)を越えていることを特徴とする請求項3乃至4のうちいずれか1に記載の装置。
【請求項7】
前記当接部は環状周部に配置されているリング部(12)を備え、前記リング部(12)の直径は前記リング部(12)に隣接する前記シールリング(22)の直径に該当することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1に記載の装置。
【請求項8】
前記内側部材(13)が前記ケーシング部材(1)内に配置された際、前記外側クランプ部(18)は前記リング部(12)の間に形成されている凹部の間に係合することを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記内側部材(13)は前記ケーシング部材(1)内に配置される前面プレート(14)を備え、前記内側部材(13)は前記シールユニット(21)を固定すべく配置されることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1に記載の装置。
【請求項10】
前記末端部材(25)が前記第2導入領域(3)内に押し込まれた際、前記前面プレート(14)は前記第1導入領域(2)内に位置する前記ケーシング部材(1)の面を越えて突出することを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記末端部材(25)がその終点に到達して前記他の末端部材に結合するまで、前記前面プレート(14)は前記第1導入領域(2)内に位置する前記ケーシング部材(1)の面の奥に配置されており、前記終点に達した時に前記面を越えて突出することを特徴とする請求項9記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−513889(P2009−513889A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518186(P2006−518186)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【特許番号】特許第4213748号(P4213748)
【特許公報発行日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011152
【国際公開番号】WO2005/061942
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(505003193)
【Fターム(参考)】