材料の光学非線形性プロファイルを決定するための方法
方法は材料の非線形性プロファイルを決定する。この方法は、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを与えることを含む。この方法は、さらに、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を与えることを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換を生成するために大きさと推定位相項とを乗算することを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
この出願は、2003年11月25日に出願された米国仮出願番号第60/524,792号および2004年5月15日に出願された米国仮出願番号第60/571,659号の利益を主張し、これら両方は引用によって本明細書に全文が援用される。
【0002】
発明の背景
発明の分野
この発明は概して、材料の光学非線形性プロファイルを決定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
シリカの熱ポーリングの際に、シリカウェーハは(たとえば、約270℃まで)加熱され、外部電圧(たとえば、約5キロボルト)がウェーハに印加される。このプロセスはアノード電極下に二次非線形領域を引起し、この非線形領域は、ウェーハを室温に冷却し、印加された電圧を除去するときに減衰しない。この引起された非線形領域の深さプロファイルは不均一であることが多く、さまざまな関数形式を有し得る。深さプロファイルは、ポーリングの理論を理解するため、引起された非線形領域の強度および/または幅を向上させるため、ならびにポーリングされた電気光学装置の設計のための重要なパラメータである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)第8巻pp.21−22(1962)の「散乱の効果および光高調波の発生への注目(Effects of dispersion and focusing on the production of optical harmonics)」にP.D.メーカー(Maker)らによって記載されたメーカーフリンジ(Maker fringe)技術は、材料の非線形性プロファイルに関する情報を得るための方法である。この技術は、レーザビームを材料(たとえば、光学的非線形ウェーハ)に集束させることと、生成された第二次高調波(SH)電力をレーザの入射角(θ)の関数として測定することとを伴う。SH電力のθへの依存は、メーカーフリンジ(MF)カーブとして公知であり、非線形性プロファイルd(z)のフーリエ変換の大きさの二乗に比例する。研究中の薄いフィルムの場合、zは薄いフィルムに垂直な方向にある。その結果、原理上は、d(z)はこのフーリエ変換を反転させることによって検索可能である。しかしながら、d(z)はこのフーリエ変換の位相の知識がなければ検索されることができず、MFカーブの測定によって与えられない。これまで、この制約は、d(z)が所与の形状(たとえば、ガウス形)を有すると仮定し、フィッティングプロセスを使用することによって緩和されてきたが、このアプローチは実際の非線形性プロファイルd(z)を与えることができない。
【0005】
最近、この問題は逆フーリエ変換(IFT)技術の新しい族を導入することによって解決され、この逆フーリエ変換技術は2つの光学的非線形サンプルを嵌め合わせることによって形成されるサンドイッチ構造のMFカーブを測定することを伴う。サンプル間の干渉の結果として、これらのMFカーブは非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相を含み、プロファイルは一意的に回復されることができる。これらのIFT技術の例は、2003年1月31日に出願された米国特許出願番号第10/357,275号、2003年3月3日に出願された米国特許出願番号第10/378,591号、および2003年8月21日に出願された米国特許出願番号第10/645,331号に記載される。これらの
IFT技術はさらに、アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)第82巻pp.1362−1364(2003)[オズカンI]の「二次光学非線形性空間プロファイルを決定するための逆フーリエ変換技術(Inverse Fourier Transform technique to determine second-order optical nonlinearity spatial profiles)」にA.オズカン(Ozcan)、M.J.F.ディゴネット(Digonnet)およびG.S.キノ(Kino)によって記載され、アプライド・フィジックス・レターズ第83巻p.1679(2003)[オズカンII]の「誤植:二次光学非線形性空間プロファイルを決定するための逆フーリエ変換技術(Erratum: Inverse Fourier Transform technique to determine second-order optical nonlinearity spatial profiles)」にA.オズカン、M.J.F.ディゴネットおよびG.S.キノによって記載され、アプライド・フィジックス・レターズ第84巻No.5pp.681−683(2004年2月2日)[オズカンIII]の「2つの異なるサンプルを使用して二次光学非線形性プロファイルを決定するための改良された技術(Improved technique to determine second-order optical nonlinearity profiles using two different samples)」にA.オズカン、M.J.F.ディゴネットおよびG.S.キノによって記載され、エレクトロニクス・レターズ(Electronics Letters)第40巻No.9pp.551−552(2004年4月29日)[オズカンIV]の「参照サンプルを使用して光学非線形性プロファイルを測定するための単純化された逆フーリエ変換技術(Simplified inverse Fourier transform technique to measure optical nonlinearity profiles using a reference sample)」にA.オズカン、M.J.F.ディゴネットおよびG.S.キノによって記載される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
特定の実施例では、方法は材料の非線形性プロファイルを決定する。この方法は、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを与えることを含む。この方法は、さらに、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を与えることを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換を生成するために大きさと推定位相項とを乗算することを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。
【0007】
特定の実施例では、方法は材料の測定非線形性プロファイルの精度を向上させる。この方法は、動作(a)において、材料の測定非線形性プロファイルを与えることを含む。この方法は、さらに、動作(b)において、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを計算することを含む。この方法は、さらに、動作(c)において、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を与えることを含む。この方法は、さらに、動作(d)において、推定フーリエ変換を生成するために大きさと推定位相項とを乗算することを含む。この方法は、さらに、動作(e)において、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(f)において、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(g)において、推定非線形性プロファイルのフーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(h)において、推定非線形性プロファイルのフーリエ変換の計算位相項を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(i)において、動作(h)の計算位相項を動作(d)の推定位相項として使用することを含む。この方法は、さらに、推定非線形性プロファイルが収束に達するまで反復して動作(d)−(i)を繰返すことを含む。
【0008】
特定の実施例では、コンピュータ可読媒体は媒体に格納された命令を有し、この命令は汎用コンピュータに材料の非線形性プロファイルを決定する方法を実行させる。この方法は、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定す
ることを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換を生成するために、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさと推定位相項とを乗算することを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。
【0009】
特定の実施例では、コンピュータシステムは、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定するための手段を含む。コンピュータシステムは、さらに、推定フーリエ変換を生成するために、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさと推定位相項とを乗算するための手段を含む。コンピュータシステムは、さらに、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算するための手段を含む。コンピュータシステムは、さらに、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算するための手段を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好ましい実施例の詳細な説明
基本的なメーカーフリンジ(MF)技術に固有の制約(たとえば、フーリエ変換スペクトル全体、またはレーザビームの有限の発散によって導入されるエラーを測定できないこと)のために、回復された非線形性プロファイルはある一定の量のエラーを示す。本明細書に記載されるように、これらのエラーのうちのいくつかを訂正し、プロファイルの精度を向上させるために、単純で高速の後処理技術が、回復された非線形性プロファイルに適用されることができる。この技術は、材料の非線形性プロファイルを検索し得るいかなるフーリエ変換技術にも広く適用可能である。
【0011】
本明細書に記載される特定の実施例は、光学的非線形サンプルの測定されたMFカーブを処理して、サンプルの二次非線形性空間プロファイルd(z)を検索するために有利に使用される。特定の実施例では、二次非線形性プロファイルd(z)は薄いフィルム材料または表面からなるプロファイルであり、空間寸法zは薄いフィルム材料または表面に概して垂直である。特定の実施例は、1つまたは2つの優勢なピークを示す二次非線形性プロファイルを検索するときに特に正確である。本明細書に記載される方法の特定の実施例が有用である材料の例は、結晶質材料または有機材料からなる光学的非線形フィルム(たとえば、数百ミクロンの厚さ)およびポーリングされたシリカを含むが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書に記載される方法の特定の実施例は、オプティクス・レターズ(Optics Letters)第3巻27−29(1978)の「フーリエ変換の係数(modulus)からの物体の再現(Reconstruction of an object from the modulus of its Fourier transform)」にJ.R.フィナップ(Fienup)によって記載されるアルゴリズムを利用する。このアルゴリズム(本明細書において「フィナップアルゴリズム」と称される)は、未知の関数g(t)の公知の(たとえば、測定された)フーリエ変換の大きさをこの関数(たとえば、実関数または因果関数である)の公知の特性とともに使用してg(t)の初期の推測を訂正することを伴うエラー低減アルゴリズムである。特定の実施例では、この訂正は反復してなされる。
【0013】
本明細書に記載される特定の実施例は、コンピュータによって実行される、材料の非線形性プロファイルの分析に有用である。この目的のために使用される汎用コンピュータは、ネットワークサーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータなどを含む幅広い種類の形態を取り得る。分析を実行するようにコンピュータを構成するコードは、典型的には、CD−ROMなどのコンピュータ可読媒体上でユーザに与えられる。コードは、さらに、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはイン
ターネットなどの広域ネットワーク(WAN)の一部であるネットワークサーバからユーザによってダウンロードされてもよい。
【0014】
ソフトウェアを実行する汎用コンピュータは典型的には、マウス、トラックボール、タッチパッドおよび/またはキーボードなどの1つ以上の入力装置、ディスプレイ、ならびにランダムアクセスメモリ(RAM)集積回路およびハードディスクドライブなどのコンピュータ可読記憶媒体を含むことになる。コードの1つ以上の部分またはすべてはユーザから離れていてもよく、たとえばLANサーバ、インターネットサーバ、ネットワーク記憶装置などのネットワークリソースに常駐してもよいことが理解される。典型的な実施例では、ソフトウェアは材料に関するさまざまな情報(たとえば、構造情報、寸法、以前に測定された非線形性プロファイル、以前に測定されたメーカーフリンジスペクトル)を入力として受取る。
【0015】
図1は、材料の光学非線形性プロファイルを決定する方法100の例示的な実施例のフローチャートである。方法100は、動作ブロック110において、材料から測定される非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与えることを含む。本明細書において使用されるように、関数変数として使用されるときには、zは空間寸法を指し、fは空間周波数を指す。方法100は、さらに、動作ブロック120において、測定非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の推定位相項exp[jφE(f)]を与えることを含む。方法100は、さらに、動作ブロック130において、推定フーリエ変換D′(f)を生成するために大きさ|DM(f)|と推定位相項exp[jφE(f)]とを乗算することを含む。方法100は、さらに、動作ブロック140において、推定フーリエ変換D′(f)の逆フーリエ変換を計算することを含む。方法100は、さらに、動作ブロック150において、推定非線形性プロファイルd′(z)を生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。
【0016】
特定の実施例では、動作ブロック110においてフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与えることは、サンプルのMFスペクトルを測定することを含む。たとえば、特定のこのような実施例では、単一のMFスペクトルは材料から測定され、測定されたMFスペクトルは次いで測定非線形性プロファイルdM(z)の大きさ|DM(f)|を与える。他の実施例では、以前に測定されたMFスペクトルが与えられ、それによって大きさ|DM(f)|を与える。
【0017】
他の実施例では、図2のフローチャートによって示されるように、動作ブロック112において、測定光学非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与える動作は、非線形性プロファイルdM(z)を測定することを含む。特定の実施例では、測定非線形性プロファイルdM(z)は、米国特許出願番号第10/357,275号、第10/378,591号、または第10/645,331号によって記載されるIFT技術のうちの1つによって測定される。特定のこのようなIFT技術は、材料の測定非線形性プロファイルを導き出すために材料を含むサンドイッチ構造から測定される複数のMFカーブを利用する。測定非線形性プロファイルdM(z)を測定するための他の技術が他の実施例において使用される。動作ブロック114において、測定非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|が計算される。
【0018】
特定の実施例では、単一のサンプルのMFカーブの測定がフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与えるが、MFカーブの測定はフーリエ変換DM(f)の位相項exp[jφ(f)]を与えることはない。特定の実施例では、動作ブロック120において、フーリエ変換DM(f)の推定位相項exp[jφE(f)]が与えられる。方法100が反復して使用される特定の実施例では、初期推定位相項exp[jφE(f)]の選択
はこの方法の収束に強く影響しない。したがって、特定のこのような実施例では、初期推定位相項はexp[jφE(f)]=1であるように選択される。フーリエ変換DM(f)の測定位相項exp[jφM(f)]を与えるIFT技術を利用する特定の他の実施例では、推定位相項は測定位相項exp[jφM(f)]であるように選択される。
【0019】
動作ブロック130において、推定フーリエ変換を生成するために、大きさ|DM(f)|と推定位相項exp[jφE(f)]とがともに乗算される。特定の実施例では、推定フーリエ変換|DM(f)|exp[jφE(f)]は数値的に計算される複素数である。
【0020】
動作ブロック140において、推定フーリエ変換|DM(f)|exp[jφE(f)]の逆フーリエ変換が計算される。特定の実施例では、動作ブロック150において、推定非線形性プロファイルd′(z)を生成するために推定フーリエ変換の逆フーリエ変換の実数成分が計算される。たとえば、特定の実施例では、ポーリングされたシリカサンプルの非線形性プロファイルを決定するときには、推定非線形性プロファイルd′(z)は実数および因果関数である。特定のこのような実施例では、逆フーリエ変換の実数成分はz<0の場合にd′(z)=0を設定することによって計算され、ここでz=0はポーリングされたシリカサンプルの端縁を規定し、領域z≧0における逆フーリエ変換の実数部分は推定非線形性プロファイルd′(z)として使用される。
【0021】
図3は、本明細書に記載される実施例に従って材料のための光学非線形性プロファイルを決定する方法200の別の例示的な実施例のフローチャートである。方法200は、本明細書に記載される動作ブロック110、120、130、140および150を含む。方法200は、さらに、動作ブロック210において、推定非線形性プロファイルd′(z)のフーリエ変換D′(f)を計算することを含む。方法200は、さらに、動作ブロック220において、推定非線形性プロファイルd′(z)のフーリエ変換D′(f)の位相項exp[jφC(f)]を計算することを含む。
【0022】
特定の実施例では、推定非線形性プロファイルd′(z)のフーリエ変換D′(f)は、動作ブロック210において数値的に計算される。特定の実施例では、推定非線形性プロファイルd′(z)のこのフーリエ変換D′(f)の計算位相項exp[jφC(f)]は、動作ブロック220において数値的に計算される。
【0023】
図4は、本明細書に記載される実施例に従って材料の光学非線形性プロファイルを決定する方法300の別の例示的な実施例のフローチャートである。方法300は、本明細書に記載される動作ブロック110、120、130、140、150、210および220を含む。方法300は、さらに、動作ブロック130において、計算位相項exp[jφC(f)]を推定位相項exp[jφE(f)]として使用することと、動作ブロック130、140、150、210および220を繰返すこととを含む。この繰返し動作は、図4に矢印310によって示される。特定のこのような実施例では、計算位相項exp[jφC(f)]は、材料の非線形性プロファイルの欠落している位相項に新しい推定値を与える。結果として生じる動作ブロック130の推定フーリエ変換は、材料のフーリエ変換の測定された大きさ|DM(f)|および計算された推定位相項exp[jφC(f)]の積である。動作ブロック130、140、150、210および220を繰返すことによって、第2の推定非線形性プロファイルおよび第2の推定位相項が生成される。
【0024】
特定の実施例では、図4に示される動作ブロック130、140、150、210、220は何度か反復して繰返される。特定のこのような実施例では、この反復は、結果として生じる推定非線形性プロファイルが収束するまで実行される。二度の連続する反復の後に得られる推定非線形性プロファイルの間の平均的な差が予め定められた値(たとえば、
反復の推定非線形性プロファイルの1%)未満であるとき、特定の実施例において収束が達せられる。他の実施例では、反復は、連続する反復の間の差を求めるのではなく、予め定められた回数(たとえば、100回)実行される。何度かの反復の後、特定の実施例は推定位相項をもたらし、この推定位相項は初期推定位相項よりも材料の実際の非線形性プロファイルのフーリエ変換の実際の位相項のより正確な推定値である。さらに、何度かの反復の後、特定の実施例は推定非線形性プロファイルd′(z)をもたらし、この推定非線形性プロファイルd′(z)は、元々測定された非線形性プロファイルdM(z)よりも材料の実際の非線形性プロファイルのより正確な推定値である。
【0025】
方法300の収束は厳密に証明されてきたわけではないが、広範囲のプロファイルの形状に関して正確な解に収束することが実験的にわかってきた。図5は、いくつかの例示的な標準的非線形性プロファイルの形状(たとえば、埋込まれたガウス形(buried Gaussian)410、長方形のプロファイル420、指数関数430など)のグラフを示す。これらの非線形性プロファイルの形状は、本明細書に記載される実施例に従う方法によってうまく検索されてきた。これらの非線形性プロファイルの形状の各々で、方法300は十分に機能し、元の非線形性プロファイルに近い非線形性プロファイルを回復する。現に、図5の非線形性プロファイルの形状の場合、検索される非線形性プロファイルは元の非線形性プロファイルと区別がつかない。特定の実施例では、回復された非線形性プロファイルと元の非線形性プロファイルとの間の平均的なエラーは約0.004%未満である。他の実施例では(たとえば、長方形の非線形性プロファイル420の場合)、回復された非線形性プロファイルと元の非線形性プロファイルとの間の平均的なエラーは約0.008%未満である。このような精度は約100回の反復の後に達成され、この反復に要した時間は500−MHzのコンピュータで数秒であった。図5の例示的な非線形性プロファイルは概して、さまざまな理論モデルによって測定または予測される、ガラス、ポリマーおよび結晶からなる光学的に非線形の薄いフィルムの光学非線形性プロファイルに対応する。特に、長方形の光学非線形性プロファイルは、LiNbO3などの光学的非線形結晶質フィルムおよび光学的非線形有機材料において一般的に発生する。
【0026】
材料のMFカーブの知識のみから材料の光学非線形性プロファイルを検索する問題は、そのフーリエ変換の大きさのみから一次元の実関数を回復することに類似している。概して、フーリエ変換の大きさは関数を回復するのに十分ではないが、関数の特定の族においては、フーリエ変換の位相項はフーリエ変換の大きさのみから回復されることができ、その逆もまたしかりである。「最小位相関数」(MPF)の例示的な族においては、各々の関数は単位円上または単位円の内側にすべての極および0を備えるz変換を有することによって特徴付けられる。この特性の結果として、フーリエ変換の位相およびMPFのフーリエ変換の大きさの対数は、互いのヒルベルト変換である。その結果、MPFのフーリエ変換の位相は、フーリエ変換の大きさから回復されることができ、そのためにMPFはそのフーリエ変換の大きさのみから再現されることができる。この再現は、フーリエ変換の位相を得るためにフーリエ変換の大きさの対数のヒルベルト変換を取り入れ、次いで、MPFを生成するために完全な(複素)フーリエ変換を反転させることによって実行されることができる。しかしながら、特定の状況では、このような直接的なアプローチは、その実現の際の難題のために(たとえば、IEEEトランス・アコースト・音声・信号処理(IEEE Trans. Acoust., Speech, Signal Processing)第29巻pp.1187−1193(1981)の「位相または大きさからの最小位相信号再現のための反復技術(Iterative techniques for minimum phase signal reconstruction from phase or magnitude)」にT.F.クアティエリ・ジュニア(Quatieri, Jr.)およびA.V.オッペンハイム(Oppenheim)によって記載される位相接続法のために)好ましくない。
【0027】
本明細書に記載される特定の実施例に従う反復法は、測定されたフーリエ変換の大きさ|DM(f)|に等しいフーリエ変換の大きさを有するMPFに有利に収束する。MPF
と本明細書に記載される反復法との間のこの二重性は、検索される非線形性プロファイルと図5の対応する元の非線形性プロファイルとの間の一致の理由である。長方形の非線形性プロファイルを除いて、図5におけるすべての非線形性プロファイルはMPFである。測定されたフーリエ変換の大きさに関連付けられ得るであろうフーリエ変換位相関数の無限の族のうち、本明細書に記載される特定の実施例は、最小の位相を有するフーリエ変換位相関数、つまりMPFに有利に収束する。この解は一意的である。したがって、再現されることになる非線形性プロファイルがMPFであることが推測的に分かれば、本明細書に記載される特定の実施例によって与えられる回復された非線形性プロファイルは確実に正確な非線形性プロファイルになるだろう。逆に、非線形性プロファイルがMPFでない場合、特定の実施例の収束は正確な非線形性プロファイルを与えないかもしれない。概して非線形性プロファイルがMPFであるかどうかが推測的に分からないので、回復された非線形性プロファイルが正確であることが確実ではない。
【0028】
しかしながら、この明らかな制約にもかかわらず、本明細書に記載される特定の実施例のコンピュータシミュレーションは広範囲のプロファイルの形状に関して正確な非線形性プロファイルに近く収束するように観察される。特定の実施例では、この近い収束は、少なくとも一つには、多数の非線形性プロファイルがMPFであるか、またはMPFの近似値であるという事実によるものである。
【0029】
なぜ物理関数がMPFになる可能性が高いかという説明は、MPFをdmin(n)によって表すことによって始まり、ここで、nは関数変数(たとえば、光学非線形性プロファイルを分析させる材料への距離z)の標本値に対応する整数である。物理的MPFが因果関係を示す(すべての因果関数がMPFではないが)ので、dmin(n)は空間変動の少なくとも半分において0に等しい(たとえば、光学非線形性プロファイルの場合のように、n<0の場合)。MPFのエネルギは、関数dmin(n)のmサンプルに対して以下のように規定される。
【0030】
【数1】
【0031】
m>0のすべての起こり得る値に対しては、以下の不等式を満たす。
【0032】
【数2】
【0033】
式(1)において、d(n)はdmin(n)と同じフーリエ変換の大きさを有する関数のいずれかを表わす。この特性は、dmin(n)のエネルギの大半がn=0の前後に集中されることを示唆する。別の言い方をすれば、単一のピークまたは優勢のピークのいずれかを有するプロファイルはMPFであるか、またはMPFに近くなり、本明細書に記載される反復の実施例を用いて十分に機能することになる。
【0034】
優勢のピークを持たない関数もMPFになり得るが、最も一般的なプロファイルを含む多数の光学非線形性プロファイルが優勢のピークを有するので、優勢のピークを有するMPFのこの部分集合は調査に値する。たとえば、優勢のピークを有する基準は、長方形のプロファイルを除いてすべてMPFである、図5にグラフ化された関数の各々によって満たされる。長方形のプロファイルは正確にはMPFではないが、長方形のプロファイルは
単一のピークを有するのでMPFに近いことが予想される。このような長方形のプロファイルは、そのz変換の極および0のほとんどすべてが単位円上または単位円の内側にあり、残りのいくつかが単位円のすぐ外側にあるので、実際にはMPFであることに近い。したがって、本明細書に記載される反復法の特定の実施例は、長方形の光学非線形性プロファイルを検索することに成功する(たとえば、平均的なエラーは約0.008%である)。
【0035】
特定の実施例では、2つのピークの光学非線形性プロファイルは優勢のピークおよび二次ピークを有する。図5に示されるように、2つのピークの光学非線形性プロファイル440は、優勢のピークおよび優勢のピークよりも小さな二次ピーク(たとえば、二次ピークは優勢のピークの約3分の1の大きさである)を有する。このような2つのピークの光学非線形性プロファイル440はMPFであることが予想される。したがって、特定の実施例では、検索された光学非線形性プロファイルにおける平均的なエラーは極めて低い(たとえば、約10-5%未満)。サンプルのアノード面のすぐ下に急な優勢のピークを典型的に示す、ポーリングされたシリカからなる光学非線形性プロファイルもMPFの基準を満たし、それによって、本明細書に記載される反復法の実施例がポーリングされたシリカの場合に十分に機能することを示唆する。
【0036】
本明細書に記載される特定の実施例のロバスト性は、MPF以外のいくつかの関数のための反復法の精度を調べることによって示される。第1の一連のシミュレーションのために、均一なランダムノイズ(たとえば、約14%のピークトゥピーク)が図5の光学非線形性プロファイルに加えられた。このような光学非線形性プロファイルはもはやMPFではない。図4の反復法300は、次いで、初期推定位相項がexp[jφE(f)]=1であると仮定して、各々のノイズのあるプロファイルに適用された。いずれの場合においても、100回の反復の後に回復された非線形性プロファイルは、元のノイズのある非線形性プロファイルと極めてよく一致し、平均的なエラーは約1.4%未満であった。図6は、本明細書に記載される実施例に従う反復法の適用例からのこのような結果に対応するグラフを示す。図6は、左軸の目盛りを基準にして、約14%のピークトゥピークの均一なランダムノイズを有する例示的なノイズのある埋込まれたガウス形の非線形性プロファイル510を示す。図6は、さらに、右軸の目盛りを基準にして、元のノイズのある非線形性プロファイル510と100回の反復の後に回復された非線形性プロファイルとの間の差520を示す。このような結果は、本明細書に記載される特定の実施例がノイズが存在する状態でも十分に機能することを示す。
【0037】
同等の大きさのいくつかのピークを有する非線形性プロファイルに関して反復法を調査するために、第2の一連のシミュレーションが使用された。このような非線形性プロファイルのピークはどれも他のピークよりも優勢ではないので、このような非線形性プロファイルは式(1)を満たさず、MPFではない。同等の大きさの2つのピークを有する元の非線形性プロファイルの場合、本明細書に記載される特定の実施例を使用して検索される非線形性プロファイルはわずかに劣化されるのみであり、概して許容できる。たとえば、図5の2つのピークの非線形性プロファイル440におけるピークが同等の高さを与えられるとき、回復された非線形性プロファイルは依然として元の非線形性プロファイルと本質的には区別がつかず、元の非線形性プロファイルと回復された非線形性プロファイルとの間の平均的な差は約0.1%である。
【0038】
図7は、同等の大きさの3つのピークを有する例示的な非線形性プロファイル610(実線)のグラフ、および本明細書に記載される実施例に従って異なる状況下で反復法を使用して回復される2つの対応する計算された非線形性プロファイル(一点鎖線620、点線630)のグラフを示す。図7にグラフ化される同等の大きさの3つのピークを有して、100回の反復の後に回復された非線形性プロファイル620(一点鎖線によって示さ
れる)は、図5および図6の以前の例における正確さからは程遠いが、元の非線形性プロファイル610(実線によって示される)の使用可能な推定値を依然として与える。このようなシミュレーションは、本明細書に記載される特定の実施例が、MPFを含むがMPFに限定されない広範囲の非線形性プロファイルにうまく適用され得ることを示す。
【0039】
特定の実施例では、原点d(z=0)における非線形性強度が残りの非線形性プロファイルよりもはるかに大きな値(たとえば、d(z=0)=5・max{d(z)})に増加されると、収束は精度および速度の両方の点で大幅に向上する。この態様で原点における非線形性強度を増加させることが式(1)を満たし、たとえ式(1)がこの増加の前に満たされなかったとしても非線形性プロファイルがMPFになるので、このような向上が予想される。たとえば、図7の3つのピークの非線形性プロファイル610の場合、d(z=0)がd(z=0)=10・max{d(z)}に増加されると、新しく回復された非線形性プロファイル630(点線によって示される)は、増加の前に回復された非線形性プロファイル620(一点鎖線によって示される)よりも元の非線形性プロファイル610(実線によって示される)に大幅に近い。特定の実施例では、原点において非線形性強度を増加させることは、より強く非常に薄い光学的非線形材料(たとえば、LiNbO3)に材料を配することによっていかなる非線形性プロファイルも回復させる可能性を開く。光学的非線形材料の薄さは収束に影響を与えないが、材料を配することおよび材料のMFカーブを測定することをより容易にする。
【0040】
本明細書に記載される特定の実施例の反復法に対する2つの小さな制約が存在する。第1の制約は、材料内の非線形性プロファイルの厳密な位置(たとえば、d(z)がいかに深く表面下に埋込まれるか)が回復可能でないことである。第2の制約は、非線形性プロファイルの符号が明確に決定されないことである。その結果、d(z)が本明細書に記載される反復法によって所与の光学的非線形サンプルに与えられる解である場合、すべての±d(z−z0)関数も解である。しかしながら、特定の実施例では、これらの制約はそれほど重要ではない。なぜなら、非線形性プロファイルの符号または厳密な位置を決定することよりも非線形性プロファイルの形状を決定することの方が非常に重要であるためである。さらに、非線形性プロファイルの符号および厳密な位置は、他の方法によって(たとえば、参照サンプルIFT技術を使用することによって)決定されることができる。
【0041】
本明細書に記載される実施例の適用可能性を示すために、反復法が光学的非線形材料、つまり、ポーリングされたシリカからなるウェーハに適用された。溶融シリカ(インフラシル(Infrasil))からなる25x25x0.15ミリメートルのウェーハは約270℃で空気中で熱ポーリングされ、15分間4.8キロボルトの電圧を印加された。MFスペクトル(非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさに比例する)がウェーハから測定され、図8に開き円としてグラフ化される。初期位相項がexp[jφE(f)]=1であると仮定し、測定されたMFスペクトルを非線形性プロファイルの測定されたフーリエ変換の大きさとして使用して、第1の非線形性プロファイルを回復するために図4の反復法300が使用された。同一のウェーハは、さらに、2つのサンプルのIFT技術によって特徴付けられて、第2の絶対的な非線形性プロファイルを与えた。
【0042】
図9は、反復法から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフ710、および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフ720を示す。図10は、exp[jφE(f)]=1の初期推定位相項を使用して反復後処理法から得られる非線形性プロファイル(点線)のグラフ810、および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイル(実線)のグラフ820を示す。図10の2つの非線形性プロファイルは極めてよく一致し、両方の非線形性プロファイルは、大きさがウェーハの表面のすぐ下で約d33=−1ピコメートル/ボルト(pm/V)であり、約12ミクロンの深さで符号が逆転し、約45ミクロンの深さに
まで延在するより広いプラスの非線形領域を有する急な非線形性係数のピークを示す。これらの観察は、同様にポーリングされたサンプルにおいて他のIFT技術によって得られる他の非線形性プロファイルに一致している。図9に示されるように、これら2つの技術によって回復されるフーリエ変換の位相スペクトルは、さらに、互いに非常によく一致する。これら2つの非常に異なる技術の結果の間の一致は、反復処理法および2つのサンプルのIFT技術の両方を支持する。
【0043】
初期位相項exp[jφE(f)]≠1を使用する効果を調査するために、2つのサンプルのIFT技術のフーリエ変換の位相を、位相のためのよりよい初期の推測として使用する反復法が実行された。このような動作は、IFT技術によって回復されるフーリエ変換の位相を後処理するために反復法を使用することと等価であり、はるかに正確な非線形性プロファイルを得るという目標を有する。図10は、2つのサンプルのIFT技術からの初期位相項を有する反復法の100回の反復の後に得られる非線形性プロファイル830(一点鎖線)を示す。2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイル820(実線)との比較は、後処理がプロファイルの形状全体を修正することはなかったが、IFT技術によって導入される人為的な振動を大幅にならしたことを示す。exp[jφE(f)]=1の初期位相項を使用する反復法から得られる非線形性プロファイル(点線810)、および2つのサンプルのIFT技術からの初期位相項を使用する反復法から得られる非線形性プロファイル(一点鎖線830)の2つは、互いに非常に近い。これら2つの非線形性プロファイルの間の平均的な差は約0.14%であり、これは両方のアプローチの有効性を示す。後処理の前および後処理の後の2つの非線形性プロファイルの間の類似性は、IFT技術が実際の非線形性プロファイルを回復することに非常に近づくことを裏付ける。類似性は、さらに、IFT技術によって得られる非線形性プロファイルを後処理する適用例において反復法が有用であることを示す。この後処理技術の有用性を示すために、図8は、後処理された非線形性プロファイルから数値的に導き出されるMFスペクトル(実線)を示し、この後処理された非線形性プロファイルは、測定されたMFスペクトル(開き円)と非常によく一致する。
【0044】
図11Aは、約270℃で熱ポーリングされ、15分間5kVの電圧を印加された溶融シリカウェーハ(インフラシル、25x25x1ミリメートル)から測定される初期の非線形性プロファイルのグラフ(実線)を示す。測定されたMFスペクトルは、シリカウェーハの裏面で全内部反射を回避するために2つの半円筒を利用するシリンダを使用した技術を使用して得られた。このシリンダを使用した技術は、エレクトロニクス・レターズ第39巻pp.1834−1836(2003)の「シリンダを使用したメーカーフリンジ技術(Cylinder-Assisted Maker-Fringe Technique)」にA.オズカンらによってより十分に開示される。このポーリングされたサンプルの測定されたMFカーブは、図11Bに閉じ円として示される。米国特許出願番号第10/357,275号、第10/378,591号、および第10/645,331号によって記載されるIFT技術は、図11Aに示される初期の非線形性プロファイルを検索するために使用された。初期の非線形性プロファイルに対応する計算されたMFカーブは、図11Bに破線として示される。本明細書に記載される実施例に従う後処理法の100回の反復の後(213データポイントに約1分しかかからなかった)、訂正された非線形性プロファイル(図11Aに破線として示される)が得られる。IFT技術における実用上の制約が原因の、初期の非線形性プロファイルにおける人為的な振動は、後処理法によって大幅にならされている。さらに、この訂正された非線形性プロファイルの計算されたMFカーブ(図11Bの実線)は、後処理法を適用する前の計算されたMFカーブ(図11Bの破線)よりも、測定されたMFカーブ(図11Bの閉じ円)とより近く一致する。この一致は、この単純な技術を用いて得られることができる大幅な精度の向上の目安をもたらす。
【0045】
本明細書に記載される反復後処理技術の特定の実施例は、他のIFT技術で後処理技術
を検査することによって示されるように、非線形性プロファイルにおける人為的な振動の大幅な減衰を有利にもたらす。したがって、反復後処理技術の特定の実施例は、IFT技術によって回復される非線形性プロファイルの精度を向上させるための威力のある道具である。このような後処理の特定の実施例は、さらに、有利に高速である。たとえば、100回の反復に要する時間は典型的には、IFT技術のデータ処理に約5〜10分であるのと比較して、500−MHzのコンピュータではわずか約10秒である。さらに、材料の光学的非線形領域の厚さWが分かっていれば、反復法ははるかに速く収束する。一旦この厚さWが分かると、d(z)の値はz<0の空間でおよびz>Wの空間で0に設定されることができ、それによって、d(z)が未知のz値の範囲を制限する。特定のこのような実施例はd(z)の多くの離散値として回復する必要がなく、そのため収束はより迅速に達成される。
【0046】
特定の実施例では、本明細書に記載される反復法は、非線形性プロファイルのフーリエ変換の欠落している位相情報および非線形性プロファイル自体の正確な回復を有利に可能にする。特定の実施例では、本明細書に記載される方法は、先行技術のIFT技術よりも大幅な向上を有利にもたらす。なぜなら、測定およびこの方法を実行するコンピュータコードの両方が単純であるためである。特定の実施例では、本明細書に記載される方法は、先行技術のIFT技術よりも速いデータ処理の速度を有利にもたらす。特定の実施例では、本明細書に記載される方法は、先行技術のIFT技術からのプロファイルと比較して低減されたエラーを有する非線形性プロファイルを有利にもたらす。本明細書に記載される方法の特定の実施例は、ポーリングされたシリカサンプルに適用されるとき、より完全なIFT技術を使用して得られる非線形性プロファイルと極めてよく一致する非線形性プロファイルに繋がる。さらに、特定の実施例では、本明細書に記載される反復後処理法は、IFT技術を使用して得られる非線形性プロファイルの精度を向上させるために有利に使用される。
【0047】
この発明のさまざまな実施例が上に記載されてきた。この発明はこれらの具体的な実施例を参照して記載されてきたが、記載はこの発明を例示するように意図され、限定するように意図されるものではない。さまざまな修正例および適用例が、特許請求の範囲に規定されるこの発明の真の精神および範囲から逸脱することなく当業者に想起され得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】材料の非線形性プロファイルを決定する方法の例示的な実施例のフローチャートである。
【図2】本明細書に記載される特定の実施例に従う、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを与えるプロセスのフローチャートである。
【図3】材料の非線形性プロファイルを決定する方法の別の例示的な実施例のフローチャートである。
【図4】材料の非線形性プロファイルを決定する反復法の別の例示的な実施例のフローチャートである。
【図5】いくつかの例示的な標準的非線形性プロファイルの形状のグラフを示す。
【図6】本明細書に記載される実施例に従う反復法を、埋込まれたガウス形の非線形性プロファイルに適用することによる結果のグラフを示す。
【図7】同等の大きさの3つのピークを有する例示的な非線形性プロファイルのグラフ、および本明細書に記載される実施例に従う反復法を使用して回復される対応する計算された非線形性プロファイルのグラフを示す。
【図8】ポーリングされたシリカウェーハから測定されるメーカーフリンジスペクトルのグラフ、および非線形性プロファイルの後処理の後に計算されるメーカーフリンジスペクトルのグラフを示す。
【図9】反復法から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフ、および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフを示す。
【図10】反復法および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイルのグラフを示す。
【図11A】反復法を適用する前のポーリングされたシリカウェーハの非線形性プロファイルのプロット(実線)、および反復法を適用した後の非線形性プロファイルのプロット(破線)を示す。
【図11B】ポーリングされたシリカウェーハの測定されたメーカーフリンジスペクトルのプロット(閉じ円)、反復法を適用する前の理論的なメーカーフリンジスペクトルのプロット(破線)、および反復法を適用した後に計算されるメーカーフリンジスペクトルのプロット(実線)を示す。
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
この出願は、2003年11月25日に出願された米国仮出願番号第60/524,792号および2004年5月15日に出願された米国仮出願番号第60/571,659号の利益を主張し、これら両方は引用によって本明細書に全文が援用される。
【0002】
発明の背景
発明の分野
この発明は概して、材料の光学非線形性プロファイルを決定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
シリカの熱ポーリングの際に、シリカウェーハは(たとえば、約270℃まで)加熱され、外部電圧(たとえば、約5キロボルト)がウェーハに印加される。このプロセスはアノード電極下に二次非線形領域を引起し、この非線形領域は、ウェーハを室温に冷却し、印加された電圧を除去するときに減衰しない。この引起された非線形領域の深さプロファイルは不均一であることが多く、さまざまな関数形式を有し得る。深さプロファイルは、ポーリングの理論を理解するため、引起された非線形領域の強度および/または幅を向上させるため、ならびにポーリングされた電気光学装置の設計のための重要なパラメータである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)第8巻pp.21−22(1962)の「散乱の効果および光高調波の発生への注目(Effects of dispersion and focusing on the production of optical harmonics)」にP.D.メーカー(Maker)らによって記載されたメーカーフリンジ(Maker fringe)技術は、材料の非線形性プロファイルに関する情報を得るための方法である。この技術は、レーザビームを材料(たとえば、光学的非線形ウェーハ)に集束させることと、生成された第二次高調波(SH)電力をレーザの入射角(θ)の関数として測定することとを伴う。SH電力のθへの依存は、メーカーフリンジ(MF)カーブとして公知であり、非線形性プロファイルd(z)のフーリエ変換の大きさの二乗に比例する。研究中の薄いフィルムの場合、zは薄いフィルムに垂直な方向にある。その結果、原理上は、d(z)はこのフーリエ変換を反転させることによって検索可能である。しかしながら、d(z)はこのフーリエ変換の位相の知識がなければ検索されることができず、MFカーブの測定によって与えられない。これまで、この制約は、d(z)が所与の形状(たとえば、ガウス形)を有すると仮定し、フィッティングプロセスを使用することによって緩和されてきたが、このアプローチは実際の非線形性プロファイルd(z)を与えることができない。
【0005】
最近、この問題は逆フーリエ変換(IFT)技術の新しい族を導入することによって解決され、この逆フーリエ変換技術は2つの光学的非線形サンプルを嵌め合わせることによって形成されるサンドイッチ構造のMFカーブを測定することを伴う。サンプル間の干渉の結果として、これらのMFカーブは非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相を含み、プロファイルは一意的に回復されることができる。これらのIFT技術の例は、2003年1月31日に出願された米国特許出願番号第10/357,275号、2003年3月3日に出願された米国特許出願番号第10/378,591号、および2003年8月21日に出願された米国特許出願番号第10/645,331号に記載される。これらの
IFT技術はさらに、アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)第82巻pp.1362−1364(2003)[オズカンI]の「二次光学非線形性空間プロファイルを決定するための逆フーリエ変換技術(Inverse Fourier Transform technique to determine second-order optical nonlinearity spatial profiles)」にA.オズカン(Ozcan)、M.J.F.ディゴネット(Digonnet)およびG.S.キノ(Kino)によって記載され、アプライド・フィジックス・レターズ第83巻p.1679(2003)[オズカンII]の「誤植:二次光学非線形性空間プロファイルを決定するための逆フーリエ変換技術(Erratum: Inverse Fourier Transform technique to determine second-order optical nonlinearity spatial profiles)」にA.オズカン、M.J.F.ディゴネットおよびG.S.キノによって記載され、アプライド・フィジックス・レターズ第84巻No.5pp.681−683(2004年2月2日)[オズカンIII]の「2つの異なるサンプルを使用して二次光学非線形性プロファイルを決定するための改良された技術(Improved technique to determine second-order optical nonlinearity profiles using two different samples)」にA.オズカン、M.J.F.ディゴネットおよびG.S.キノによって記載され、エレクトロニクス・レターズ(Electronics Letters)第40巻No.9pp.551−552(2004年4月29日)[オズカンIV]の「参照サンプルを使用して光学非線形性プロファイルを測定するための単純化された逆フーリエ変換技術(Simplified inverse Fourier transform technique to measure optical nonlinearity profiles using a reference sample)」にA.オズカン、M.J.F.ディゴネットおよびG.S.キノによって記載される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
特定の実施例では、方法は材料の非線形性プロファイルを決定する。この方法は、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを与えることを含む。この方法は、さらに、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を与えることを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換を生成するために大きさと推定位相項とを乗算することを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。
【0007】
特定の実施例では、方法は材料の測定非線形性プロファイルの精度を向上させる。この方法は、動作(a)において、材料の測定非線形性プロファイルを与えることを含む。この方法は、さらに、動作(b)において、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを計算することを含む。この方法は、さらに、動作(c)において、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を与えることを含む。この方法は、さらに、動作(d)において、推定フーリエ変換を生成するために大きさと推定位相項とを乗算することを含む。この方法は、さらに、動作(e)において、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(f)において、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(g)において、推定非線形性プロファイルのフーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(h)において、推定非線形性プロファイルのフーリエ変換の計算位相項を計算することを含む。この方法は、さらに、動作(i)において、動作(h)の計算位相項を動作(d)の推定位相項として使用することを含む。この方法は、さらに、推定非線形性プロファイルが収束に達するまで反復して動作(d)−(i)を繰返すことを含む。
【0008】
特定の実施例では、コンピュータ可読媒体は媒体に格納された命令を有し、この命令は汎用コンピュータに材料の非線形性プロファイルを決定する方法を実行させる。この方法は、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定す
ることを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換を生成するために、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさと推定位相項とを乗算することを含む。この方法は、さらに、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することを含む。この方法は、さらに、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。
【0009】
特定の実施例では、コンピュータシステムは、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定するための手段を含む。コンピュータシステムは、さらに、推定フーリエ変換を生成するために、材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさと推定位相項とを乗算するための手段を含む。コンピュータシステムは、さらに、推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算するための手段を含む。コンピュータシステムは、さらに、推定非線形性プロファイルを生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算するための手段を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好ましい実施例の詳細な説明
基本的なメーカーフリンジ(MF)技術に固有の制約(たとえば、フーリエ変換スペクトル全体、またはレーザビームの有限の発散によって導入されるエラーを測定できないこと)のために、回復された非線形性プロファイルはある一定の量のエラーを示す。本明細書に記載されるように、これらのエラーのうちのいくつかを訂正し、プロファイルの精度を向上させるために、単純で高速の後処理技術が、回復された非線形性プロファイルに適用されることができる。この技術は、材料の非線形性プロファイルを検索し得るいかなるフーリエ変換技術にも広く適用可能である。
【0011】
本明細書に記載される特定の実施例は、光学的非線形サンプルの測定されたMFカーブを処理して、サンプルの二次非線形性空間プロファイルd(z)を検索するために有利に使用される。特定の実施例では、二次非線形性プロファイルd(z)は薄いフィルム材料または表面からなるプロファイルであり、空間寸法zは薄いフィルム材料または表面に概して垂直である。特定の実施例は、1つまたは2つの優勢なピークを示す二次非線形性プロファイルを検索するときに特に正確である。本明細書に記載される方法の特定の実施例が有用である材料の例は、結晶質材料または有機材料からなる光学的非線形フィルム(たとえば、数百ミクロンの厚さ)およびポーリングされたシリカを含むが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書に記載される方法の特定の実施例は、オプティクス・レターズ(Optics Letters)第3巻27−29(1978)の「フーリエ変換の係数(modulus)からの物体の再現(Reconstruction of an object from the modulus of its Fourier transform)」にJ.R.フィナップ(Fienup)によって記載されるアルゴリズムを利用する。このアルゴリズム(本明細書において「フィナップアルゴリズム」と称される)は、未知の関数g(t)の公知の(たとえば、測定された)フーリエ変換の大きさをこの関数(たとえば、実関数または因果関数である)の公知の特性とともに使用してg(t)の初期の推測を訂正することを伴うエラー低減アルゴリズムである。特定の実施例では、この訂正は反復してなされる。
【0013】
本明細書に記載される特定の実施例は、コンピュータによって実行される、材料の非線形性プロファイルの分析に有用である。この目的のために使用される汎用コンピュータは、ネットワークサーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータなどを含む幅広い種類の形態を取り得る。分析を実行するようにコンピュータを構成するコードは、典型的には、CD−ROMなどのコンピュータ可読媒体上でユーザに与えられる。コードは、さらに、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはイン
ターネットなどの広域ネットワーク(WAN)の一部であるネットワークサーバからユーザによってダウンロードされてもよい。
【0014】
ソフトウェアを実行する汎用コンピュータは典型的には、マウス、トラックボール、タッチパッドおよび/またはキーボードなどの1つ以上の入力装置、ディスプレイ、ならびにランダムアクセスメモリ(RAM)集積回路およびハードディスクドライブなどのコンピュータ可読記憶媒体を含むことになる。コードの1つ以上の部分またはすべてはユーザから離れていてもよく、たとえばLANサーバ、インターネットサーバ、ネットワーク記憶装置などのネットワークリソースに常駐してもよいことが理解される。典型的な実施例では、ソフトウェアは材料に関するさまざまな情報(たとえば、構造情報、寸法、以前に測定された非線形性プロファイル、以前に測定されたメーカーフリンジスペクトル)を入力として受取る。
【0015】
図1は、材料の光学非線形性プロファイルを決定する方法100の例示的な実施例のフローチャートである。方法100は、動作ブロック110において、材料から測定される非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与えることを含む。本明細書において使用されるように、関数変数として使用されるときには、zは空間寸法を指し、fは空間周波数を指す。方法100は、さらに、動作ブロック120において、測定非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の推定位相項exp[jφE(f)]を与えることを含む。方法100は、さらに、動作ブロック130において、推定フーリエ変換D′(f)を生成するために大きさ|DM(f)|と推定位相項exp[jφE(f)]とを乗算することを含む。方法100は、さらに、動作ブロック140において、推定フーリエ変換D′(f)の逆フーリエ変換を計算することを含む。方法100は、さらに、動作ブロック150において、推定非線形性プロファイルd′(z)を生成するために逆フーリエ変換の実数成分を計算することを含む。
【0016】
特定の実施例では、動作ブロック110においてフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与えることは、サンプルのMFスペクトルを測定することを含む。たとえば、特定のこのような実施例では、単一のMFスペクトルは材料から測定され、測定されたMFスペクトルは次いで測定非線形性プロファイルdM(z)の大きさ|DM(f)|を与える。他の実施例では、以前に測定されたMFスペクトルが与えられ、それによって大きさ|DM(f)|を与える。
【0017】
他の実施例では、図2のフローチャートによって示されるように、動作ブロック112において、測定光学非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与える動作は、非線形性プロファイルdM(z)を測定することを含む。特定の実施例では、測定非線形性プロファイルdM(z)は、米国特許出願番号第10/357,275号、第10/378,591号、または第10/645,331号によって記載されるIFT技術のうちの1つによって測定される。特定のこのようなIFT技術は、材料の測定非線形性プロファイルを導き出すために材料を含むサンドイッチ構造から測定される複数のMFカーブを利用する。測定非線形性プロファイルdM(z)を測定するための他の技術が他の実施例において使用される。動作ブロック114において、測定非線形性プロファイルdM(z)のフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|が計算される。
【0018】
特定の実施例では、単一のサンプルのMFカーブの測定がフーリエ変換DM(f)の大きさ|DM(f)|を与えるが、MFカーブの測定はフーリエ変換DM(f)の位相項exp[jφ(f)]を与えることはない。特定の実施例では、動作ブロック120において、フーリエ変換DM(f)の推定位相項exp[jφE(f)]が与えられる。方法100が反復して使用される特定の実施例では、初期推定位相項exp[jφE(f)]の選択
はこの方法の収束に強く影響しない。したがって、特定のこのような実施例では、初期推定位相項はexp[jφE(f)]=1であるように選択される。フーリエ変換DM(f)の測定位相項exp[jφM(f)]を与えるIFT技術を利用する特定の他の実施例では、推定位相項は測定位相項exp[jφM(f)]であるように選択される。
【0019】
動作ブロック130において、推定フーリエ変換を生成するために、大きさ|DM(f)|と推定位相項exp[jφE(f)]とがともに乗算される。特定の実施例では、推定フーリエ変換|DM(f)|exp[jφE(f)]は数値的に計算される複素数である。
【0020】
動作ブロック140において、推定フーリエ変換|DM(f)|exp[jφE(f)]の逆フーリエ変換が計算される。特定の実施例では、動作ブロック150において、推定非線形性プロファイルd′(z)を生成するために推定フーリエ変換の逆フーリエ変換の実数成分が計算される。たとえば、特定の実施例では、ポーリングされたシリカサンプルの非線形性プロファイルを決定するときには、推定非線形性プロファイルd′(z)は実数および因果関数である。特定のこのような実施例では、逆フーリエ変換の実数成分はz<0の場合にd′(z)=0を設定することによって計算され、ここでz=0はポーリングされたシリカサンプルの端縁を規定し、領域z≧0における逆フーリエ変換の実数部分は推定非線形性プロファイルd′(z)として使用される。
【0021】
図3は、本明細書に記載される実施例に従って材料のための光学非線形性プロファイルを決定する方法200の別の例示的な実施例のフローチャートである。方法200は、本明細書に記載される動作ブロック110、120、130、140および150を含む。方法200は、さらに、動作ブロック210において、推定非線形性プロファイルd′(z)のフーリエ変換D′(f)を計算することを含む。方法200は、さらに、動作ブロック220において、推定非線形性プロファイルd′(z)のフーリエ変換D′(f)の位相項exp[jφC(f)]を計算することを含む。
【0022】
特定の実施例では、推定非線形性プロファイルd′(z)のフーリエ変換D′(f)は、動作ブロック210において数値的に計算される。特定の実施例では、推定非線形性プロファイルd′(z)のこのフーリエ変換D′(f)の計算位相項exp[jφC(f)]は、動作ブロック220において数値的に計算される。
【0023】
図4は、本明細書に記載される実施例に従って材料の光学非線形性プロファイルを決定する方法300の別の例示的な実施例のフローチャートである。方法300は、本明細書に記載される動作ブロック110、120、130、140、150、210および220を含む。方法300は、さらに、動作ブロック130において、計算位相項exp[jφC(f)]を推定位相項exp[jφE(f)]として使用することと、動作ブロック130、140、150、210および220を繰返すこととを含む。この繰返し動作は、図4に矢印310によって示される。特定のこのような実施例では、計算位相項exp[jφC(f)]は、材料の非線形性プロファイルの欠落している位相項に新しい推定値を与える。結果として生じる動作ブロック130の推定フーリエ変換は、材料のフーリエ変換の測定された大きさ|DM(f)|および計算された推定位相項exp[jφC(f)]の積である。動作ブロック130、140、150、210および220を繰返すことによって、第2の推定非線形性プロファイルおよび第2の推定位相項が生成される。
【0024】
特定の実施例では、図4に示される動作ブロック130、140、150、210、220は何度か反復して繰返される。特定のこのような実施例では、この反復は、結果として生じる推定非線形性プロファイルが収束するまで実行される。二度の連続する反復の後に得られる推定非線形性プロファイルの間の平均的な差が予め定められた値(たとえば、
反復の推定非線形性プロファイルの1%)未満であるとき、特定の実施例において収束が達せられる。他の実施例では、反復は、連続する反復の間の差を求めるのではなく、予め定められた回数(たとえば、100回)実行される。何度かの反復の後、特定の実施例は推定位相項をもたらし、この推定位相項は初期推定位相項よりも材料の実際の非線形性プロファイルのフーリエ変換の実際の位相項のより正確な推定値である。さらに、何度かの反復の後、特定の実施例は推定非線形性プロファイルd′(z)をもたらし、この推定非線形性プロファイルd′(z)は、元々測定された非線形性プロファイルdM(z)よりも材料の実際の非線形性プロファイルのより正確な推定値である。
【0025】
方法300の収束は厳密に証明されてきたわけではないが、広範囲のプロファイルの形状に関して正確な解に収束することが実験的にわかってきた。図5は、いくつかの例示的な標準的非線形性プロファイルの形状(たとえば、埋込まれたガウス形(buried Gaussian)410、長方形のプロファイル420、指数関数430など)のグラフを示す。これらの非線形性プロファイルの形状は、本明細書に記載される実施例に従う方法によってうまく検索されてきた。これらの非線形性プロファイルの形状の各々で、方法300は十分に機能し、元の非線形性プロファイルに近い非線形性プロファイルを回復する。現に、図5の非線形性プロファイルの形状の場合、検索される非線形性プロファイルは元の非線形性プロファイルと区別がつかない。特定の実施例では、回復された非線形性プロファイルと元の非線形性プロファイルとの間の平均的なエラーは約0.004%未満である。他の実施例では(たとえば、長方形の非線形性プロファイル420の場合)、回復された非線形性プロファイルと元の非線形性プロファイルとの間の平均的なエラーは約0.008%未満である。このような精度は約100回の反復の後に達成され、この反復に要した時間は500−MHzのコンピュータで数秒であった。図5の例示的な非線形性プロファイルは概して、さまざまな理論モデルによって測定または予測される、ガラス、ポリマーおよび結晶からなる光学的に非線形の薄いフィルムの光学非線形性プロファイルに対応する。特に、長方形の光学非線形性プロファイルは、LiNbO3などの光学的非線形結晶質フィルムおよび光学的非線形有機材料において一般的に発生する。
【0026】
材料のMFカーブの知識のみから材料の光学非線形性プロファイルを検索する問題は、そのフーリエ変換の大きさのみから一次元の実関数を回復することに類似している。概して、フーリエ変換の大きさは関数を回復するのに十分ではないが、関数の特定の族においては、フーリエ変換の位相項はフーリエ変換の大きさのみから回復されることができ、その逆もまたしかりである。「最小位相関数」(MPF)の例示的な族においては、各々の関数は単位円上または単位円の内側にすべての極および0を備えるz変換を有することによって特徴付けられる。この特性の結果として、フーリエ変換の位相およびMPFのフーリエ変換の大きさの対数は、互いのヒルベルト変換である。その結果、MPFのフーリエ変換の位相は、フーリエ変換の大きさから回復されることができ、そのためにMPFはそのフーリエ変換の大きさのみから再現されることができる。この再現は、フーリエ変換の位相を得るためにフーリエ変換の大きさの対数のヒルベルト変換を取り入れ、次いで、MPFを生成するために完全な(複素)フーリエ変換を反転させることによって実行されることができる。しかしながら、特定の状況では、このような直接的なアプローチは、その実現の際の難題のために(たとえば、IEEEトランス・アコースト・音声・信号処理(IEEE Trans. Acoust., Speech, Signal Processing)第29巻pp.1187−1193(1981)の「位相または大きさからの最小位相信号再現のための反復技術(Iterative techniques for minimum phase signal reconstruction from phase or magnitude)」にT.F.クアティエリ・ジュニア(Quatieri, Jr.)およびA.V.オッペンハイム(Oppenheim)によって記載される位相接続法のために)好ましくない。
【0027】
本明細書に記載される特定の実施例に従う反復法は、測定されたフーリエ変換の大きさ|DM(f)|に等しいフーリエ変換の大きさを有するMPFに有利に収束する。MPF
と本明細書に記載される反復法との間のこの二重性は、検索される非線形性プロファイルと図5の対応する元の非線形性プロファイルとの間の一致の理由である。長方形の非線形性プロファイルを除いて、図5におけるすべての非線形性プロファイルはMPFである。測定されたフーリエ変換の大きさに関連付けられ得るであろうフーリエ変換位相関数の無限の族のうち、本明細書に記載される特定の実施例は、最小の位相を有するフーリエ変換位相関数、つまりMPFに有利に収束する。この解は一意的である。したがって、再現されることになる非線形性プロファイルがMPFであることが推測的に分かれば、本明細書に記載される特定の実施例によって与えられる回復された非線形性プロファイルは確実に正確な非線形性プロファイルになるだろう。逆に、非線形性プロファイルがMPFでない場合、特定の実施例の収束は正確な非線形性プロファイルを与えないかもしれない。概して非線形性プロファイルがMPFであるかどうかが推測的に分からないので、回復された非線形性プロファイルが正確であることが確実ではない。
【0028】
しかしながら、この明らかな制約にもかかわらず、本明細書に記載される特定の実施例のコンピュータシミュレーションは広範囲のプロファイルの形状に関して正確な非線形性プロファイルに近く収束するように観察される。特定の実施例では、この近い収束は、少なくとも一つには、多数の非線形性プロファイルがMPFであるか、またはMPFの近似値であるという事実によるものである。
【0029】
なぜ物理関数がMPFになる可能性が高いかという説明は、MPFをdmin(n)によって表すことによって始まり、ここで、nは関数変数(たとえば、光学非線形性プロファイルを分析させる材料への距離z)の標本値に対応する整数である。物理的MPFが因果関係を示す(すべての因果関数がMPFではないが)ので、dmin(n)は空間変動の少なくとも半分において0に等しい(たとえば、光学非線形性プロファイルの場合のように、n<0の場合)。MPFのエネルギは、関数dmin(n)のmサンプルに対して以下のように規定される。
【0030】
【数1】
【0031】
m>0のすべての起こり得る値に対しては、以下の不等式を満たす。
【0032】
【数2】
【0033】
式(1)において、d(n)はdmin(n)と同じフーリエ変換の大きさを有する関数のいずれかを表わす。この特性は、dmin(n)のエネルギの大半がn=0の前後に集中されることを示唆する。別の言い方をすれば、単一のピークまたは優勢のピークのいずれかを有するプロファイルはMPFであるか、またはMPFに近くなり、本明細書に記載される反復の実施例を用いて十分に機能することになる。
【0034】
優勢のピークを持たない関数もMPFになり得るが、最も一般的なプロファイルを含む多数の光学非線形性プロファイルが優勢のピークを有するので、優勢のピークを有するMPFのこの部分集合は調査に値する。たとえば、優勢のピークを有する基準は、長方形のプロファイルを除いてすべてMPFである、図5にグラフ化された関数の各々によって満たされる。長方形のプロファイルは正確にはMPFではないが、長方形のプロファイルは
単一のピークを有するのでMPFに近いことが予想される。このような長方形のプロファイルは、そのz変換の極および0のほとんどすべてが単位円上または単位円の内側にあり、残りのいくつかが単位円のすぐ外側にあるので、実際にはMPFであることに近い。したがって、本明細書に記載される反復法の特定の実施例は、長方形の光学非線形性プロファイルを検索することに成功する(たとえば、平均的なエラーは約0.008%である)。
【0035】
特定の実施例では、2つのピークの光学非線形性プロファイルは優勢のピークおよび二次ピークを有する。図5に示されるように、2つのピークの光学非線形性プロファイル440は、優勢のピークおよび優勢のピークよりも小さな二次ピーク(たとえば、二次ピークは優勢のピークの約3分の1の大きさである)を有する。このような2つのピークの光学非線形性プロファイル440はMPFであることが予想される。したがって、特定の実施例では、検索された光学非線形性プロファイルにおける平均的なエラーは極めて低い(たとえば、約10-5%未満)。サンプルのアノード面のすぐ下に急な優勢のピークを典型的に示す、ポーリングされたシリカからなる光学非線形性プロファイルもMPFの基準を満たし、それによって、本明細書に記載される反復法の実施例がポーリングされたシリカの場合に十分に機能することを示唆する。
【0036】
本明細書に記載される特定の実施例のロバスト性は、MPF以外のいくつかの関数のための反復法の精度を調べることによって示される。第1の一連のシミュレーションのために、均一なランダムノイズ(たとえば、約14%のピークトゥピーク)が図5の光学非線形性プロファイルに加えられた。このような光学非線形性プロファイルはもはやMPFではない。図4の反復法300は、次いで、初期推定位相項がexp[jφE(f)]=1であると仮定して、各々のノイズのあるプロファイルに適用された。いずれの場合においても、100回の反復の後に回復された非線形性プロファイルは、元のノイズのある非線形性プロファイルと極めてよく一致し、平均的なエラーは約1.4%未満であった。図6は、本明細書に記載される実施例に従う反復法の適用例からのこのような結果に対応するグラフを示す。図6は、左軸の目盛りを基準にして、約14%のピークトゥピークの均一なランダムノイズを有する例示的なノイズのある埋込まれたガウス形の非線形性プロファイル510を示す。図6は、さらに、右軸の目盛りを基準にして、元のノイズのある非線形性プロファイル510と100回の反復の後に回復された非線形性プロファイルとの間の差520を示す。このような結果は、本明細書に記載される特定の実施例がノイズが存在する状態でも十分に機能することを示す。
【0037】
同等の大きさのいくつかのピークを有する非線形性プロファイルに関して反復法を調査するために、第2の一連のシミュレーションが使用された。このような非線形性プロファイルのピークはどれも他のピークよりも優勢ではないので、このような非線形性プロファイルは式(1)を満たさず、MPFではない。同等の大きさの2つのピークを有する元の非線形性プロファイルの場合、本明細書に記載される特定の実施例を使用して検索される非線形性プロファイルはわずかに劣化されるのみであり、概して許容できる。たとえば、図5の2つのピークの非線形性プロファイル440におけるピークが同等の高さを与えられるとき、回復された非線形性プロファイルは依然として元の非線形性プロファイルと本質的には区別がつかず、元の非線形性プロファイルと回復された非線形性プロファイルとの間の平均的な差は約0.1%である。
【0038】
図7は、同等の大きさの3つのピークを有する例示的な非線形性プロファイル610(実線)のグラフ、および本明細書に記載される実施例に従って異なる状況下で反復法を使用して回復される2つの対応する計算された非線形性プロファイル(一点鎖線620、点線630)のグラフを示す。図7にグラフ化される同等の大きさの3つのピークを有して、100回の反復の後に回復された非線形性プロファイル620(一点鎖線によって示さ
れる)は、図5および図6の以前の例における正確さからは程遠いが、元の非線形性プロファイル610(実線によって示される)の使用可能な推定値を依然として与える。このようなシミュレーションは、本明細書に記載される特定の実施例が、MPFを含むがMPFに限定されない広範囲の非線形性プロファイルにうまく適用され得ることを示す。
【0039】
特定の実施例では、原点d(z=0)における非線形性強度が残りの非線形性プロファイルよりもはるかに大きな値(たとえば、d(z=0)=5・max{d(z)})に増加されると、収束は精度および速度の両方の点で大幅に向上する。この態様で原点における非線形性強度を増加させることが式(1)を満たし、たとえ式(1)がこの増加の前に満たされなかったとしても非線形性プロファイルがMPFになるので、このような向上が予想される。たとえば、図7の3つのピークの非線形性プロファイル610の場合、d(z=0)がd(z=0)=10・max{d(z)}に増加されると、新しく回復された非線形性プロファイル630(点線によって示される)は、増加の前に回復された非線形性プロファイル620(一点鎖線によって示される)よりも元の非線形性プロファイル610(実線によって示される)に大幅に近い。特定の実施例では、原点において非線形性強度を増加させることは、より強く非常に薄い光学的非線形材料(たとえば、LiNbO3)に材料を配することによっていかなる非線形性プロファイルも回復させる可能性を開く。光学的非線形材料の薄さは収束に影響を与えないが、材料を配することおよび材料のMFカーブを測定することをより容易にする。
【0040】
本明細書に記載される特定の実施例の反復法に対する2つの小さな制約が存在する。第1の制約は、材料内の非線形性プロファイルの厳密な位置(たとえば、d(z)がいかに深く表面下に埋込まれるか)が回復可能でないことである。第2の制約は、非線形性プロファイルの符号が明確に決定されないことである。その結果、d(z)が本明細書に記載される反復法によって所与の光学的非線形サンプルに与えられる解である場合、すべての±d(z−z0)関数も解である。しかしながら、特定の実施例では、これらの制約はそれほど重要ではない。なぜなら、非線形性プロファイルの符号または厳密な位置を決定することよりも非線形性プロファイルの形状を決定することの方が非常に重要であるためである。さらに、非線形性プロファイルの符号および厳密な位置は、他の方法によって(たとえば、参照サンプルIFT技術を使用することによって)決定されることができる。
【0041】
本明細書に記載される実施例の適用可能性を示すために、反復法が光学的非線形材料、つまり、ポーリングされたシリカからなるウェーハに適用された。溶融シリカ(インフラシル(Infrasil))からなる25x25x0.15ミリメートルのウェーハは約270℃で空気中で熱ポーリングされ、15分間4.8キロボルトの電圧を印加された。MFスペクトル(非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさに比例する)がウェーハから測定され、図8に開き円としてグラフ化される。初期位相項がexp[jφE(f)]=1であると仮定し、測定されたMFスペクトルを非線形性プロファイルの測定されたフーリエ変換の大きさとして使用して、第1の非線形性プロファイルを回復するために図4の反復法300が使用された。同一のウェーハは、さらに、2つのサンプルのIFT技術によって特徴付けられて、第2の絶対的な非線形性プロファイルを与えた。
【0042】
図9は、反復法から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフ710、および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフ720を示す。図10は、exp[jφE(f)]=1の初期推定位相項を使用して反復後処理法から得られる非線形性プロファイル(点線)のグラフ810、および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイル(実線)のグラフ820を示す。図10の2つの非線形性プロファイルは極めてよく一致し、両方の非線形性プロファイルは、大きさがウェーハの表面のすぐ下で約d33=−1ピコメートル/ボルト(pm/V)であり、約12ミクロンの深さで符号が逆転し、約45ミクロンの深さに
まで延在するより広いプラスの非線形領域を有する急な非線形性係数のピークを示す。これらの観察は、同様にポーリングされたサンプルにおいて他のIFT技術によって得られる他の非線形性プロファイルに一致している。図9に示されるように、これら2つの技術によって回復されるフーリエ変換の位相スペクトルは、さらに、互いに非常によく一致する。これら2つの非常に異なる技術の結果の間の一致は、反復処理法および2つのサンプルのIFT技術の両方を支持する。
【0043】
初期位相項exp[jφE(f)]≠1を使用する効果を調査するために、2つのサンプルのIFT技術のフーリエ変換の位相を、位相のためのよりよい初期の推測として使用する反復法が実行された。このような動作は、IFT技術によって回復されるフーリエ変換の位相を後処理するために反復法を使用することと等価であり、はるかに正確な非線形性プロファイルを得るという目標を有する。図10は、2つのサンプルのIFT技術からの初期位相項を有する反復法の100回の反復の後に得られる非線形性プロファイル830(一点鎖線)を示す。2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイル820(実線)との比較は、後処理がプロファイルの形状全体を修正することはなかったが、IFT技術によって導入される人為的な振動を大幅にならしたことを示す。exp[jφE(f)]=1の初期位相項を使用する反復法から得られる非線形性プロファイル(点線810)、および2つのサンプルのIFT技術からの初期位相項を使用する反復法から得られる非線形性プロファイル(一点鎖線830)の2つは、互いに非常に近い。これら2つの非線形性プロファイルの間の平均的な差は約0.14%であり、これは両方のアプローチの有効性を示す。後処理の前および後処理の後の2つの非線形性プロファイルの間の類似性は、IFT技術が実際の非線形性プロファイルを回復することに非常に近づくことを裏付ける。類似性は、さらに、IFT技術によって得られる非線形性プロファイルを後処理する適用例において反復法が有用であることを示す。この後処理技術の有用性を示すために、図8は、後処理された非線形性プロファイルから数値的に導き出されるMFスペクトル(実線)を示し、この後処理された非線形性プロファイルは、測定されたMFスペクトル(開き円)と非常によく一致する。
【0044】
図11Aは、約270℃で熱ポーリングされ、15分間5kVの電圧を印加された溶融シリカウェーハ(インフラシル、25x25x1ミリメートル)から測定される初期の非線形性プロファイルのグラフ(実線)を示す。測定されたMFスペクトルは、シリカウェーハの裏面で全内部反射を回避するために2つの半円筒を利用するシリンダを使用した技術を使用して得られた。このシリンダを使用した技術は、エレクトロニクス・レターズ第39巻pp.1834−1836(2003)の「シリンダを使用したメーカーフリンジ技術(Cylinder-Assisted Maker-Fringe Technique)」にA.オズカンらによってより十分に開示される。このポーリングされたサンプルの測定されたMFカーブは、図11Bに閉じ円として示される。米国特許出願番号第10/357,275号、第10/378,591号、および第10/645,331号によって記載されるIFT技術は、図11Aに示される初期の非線形性プロファイルを検索するために使用された。初期の非線形性プロファイルに対応する計算されたMFカーブは、図11Bに破線として示される。本明細書に記載される実施例に従う後処理法の100回の反復の後(213データポイントに約1分しかかからなかった)、訂正された非線形性プロファイル(図11Aに破線として示される)が得られる。IFT技術における実用上の制約が原因の、初期の非線形性プロファイルにおける人為的な振動は、後処理法によって大幅にならされている。さらに、この訂正された非線形性プロファイルの計算されたMFカーブ(図11Bの実線)は、後処理法を適用する前の計算されたMFカーブ(図11Bの破線)よりも、測定されたMFカーブ(図11Bの閉じ円)とより近く一致する。この一致は、この単純な技術を用いて得られることができる大幅な精度の向上の目安をもたらす。
【0045】
本明細書に記載される反復後処理技術の特定の実施例は、他のIFT技術で後処理技術
を検査することによって示されるように、非線形性プロファイルにおける人為的な振動の大幅な減衰を有利にもたらす。したがって、反復後処理技術の特定の実施例は、IFT技術によって回復される非線形性プロファイルの精度を向上させるための威力のある道具である。このような後処理の特定の実施例は、さらに、有利に高速である。たとえば、100回の反復に要する時間は典型的には、IFT技術のデータ処理に約5〜10分であるのと比較して、500−MHzのコンピュータではわずか約10秒である。さらに、材料の光学的非線形領域の厚さWが分かっていれば、反復法ははるかに速く収束する。一旦この厚さWが分かると、d(z)の値はz<0の空間でおよびz>Wの空間で0に設定されることができ、それによって、d(z)が未知のz値の範囲を制限する。特定のこのような実施例はd(z)の多くの離散値として回復する必要がなく、そのため収束はより迅速に達成される。
【0046】
特定の実施例では、本明細書に記載される反復法は、非線形性プロファイルのフーリエ変換の欠落している位相情報および非線形性プロファイル自体の正確な回復を有利に可能にする。特定の実施例では、本明細書に記載される方法は、先行技術のIFT技術よりも大幅な向上を有利にもたらす。なぜなら、測定およびこの方法を実行するコンピュータコードの両方が単純であるためである。特定の実施例では、本明細書に記載される方法は、先行技術のIFT技術よりも速いデータ処理の速度を有利にもたらす。特定の実施例では、本明細書に記載される方法は、先行技術のIFT技術からのプロファイルと比較して低減されたエラーを有する非線形性プロファイルを有利にもたらす。本明細書に記載される方法の特定の実施例は、ポーリングされたシリカサンプルに適用されるとき、より完全なIFT技術を使用して得られる非線形性プロファイルと極めてよく一致する非線形性プロファイルに繋がる。さらに、特定の実施例では、本明細書に記載される反復後処理法は、IFT技術を使用して得られる非線形性プロファイルの精度を向上させるために有利に使用される。
【0047】
この発明のさまざまな実施例が上に記載されてきた。この発明はこれらの具体的な実施例を参照して記載されてきたが、記載はこの発明を例示するように意図され、限定するように意図されるものではない。さまざまな修正例および適用例が、特許請求の範囲に規定されるこの発明の真の精神および範囲から逸脱することなく当業者に想起され得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】材料の非線形性プロファイルを決定する方法の例示的な実施例のフローチャートである。
【図2】本明細書に記載される特定の実施例に従う、測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを与えるプロセスのフローチャートである。
【図3】材料の非線形性プロファイルを決定する方法の別の例示的な実施例のフローチャートである。
【図4】材料の非線形性プロファイルを決定する反復法の別の例示的な実施例のフローチャートである。
【図5】いくつかの例示的な標準的非線形性プロファイルの形状のグラフを示す。
【図6】本明細書に記載される実施例に従う反復法を、埋込まれたガウス形の非線形性プロファイルに適用することによる結果のグラフを示す。
【図7】同等の大きさの3つのピークを有する例示的な非線形性プロファイルのグラフ、および本明細書に記載される実施例に従う反復法を使用して回復される対応する計算された非線形性プロファイルのグラフを示す。
【図8】ポーリングされたシリカウェーハから測定されるメーカーフリンジスペクトルのグラフ、および非線形性プロファイルの後処理の後に計算されるメーカーフリンジスペクトルのグラフを示す。
【図9】反復法から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフ、および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイルのフーリエ変換の位相のグラフを示す。
【図10】反復法および2つのサンプルのIFT技術から得られる非線形性プロファイルのグラフを示す。
【図11A】反復法を適用する前のポーリングされたシリカウェーハの非線形性プロファイルのプロット(実線)、および反復法を適用した後の非線形性プロファイルのプロット(破線)を示す。
【図11B】ポーリングされたシリカウェーハの測定されたメーカーフリンジスペクトルのプロット(閉じ円)、反復法を適用する前の理論的なメーカーフリンジスペクトルのプロット(破線)、および反復法を適用した後に計算されるメーカーフリンジスペクトルのプロット(実線)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の非線形性プロファイルを決定する方法であって、
(a) 前記材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを与えることと、
(b) 前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の推定位相項を与えることと、
(c) 推定フーリエ変換を生成するために前記大きさと前記推定位相項とを乗算することと、
(d) 前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することと、
(e) 推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算することとを含む、方法。
【請求項2】
(f) 前記推定非線形性プロファイルのフーリエ変換を計算することと、
(g) 前記推定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の計算位相項を計算することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(h) (g)の前記計算位相項を(c)の前記推定位相項として使用し、(c)−(e)を繰返すことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(c)−(h)は、前記推定非線形性プロファイルが収束に達するまで反復して繰返される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2つの連続する反復の後に得られる推定非線形性プロファイルの間の平均的な差が予め定められた値未満であるとき収束が達せられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予め定められた値は、反復の前記推定非線形性プロファイルの1%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(c)−(h)は、予め定められた回数反復して繰返される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを与えることは、前記材料のメーカーフリンジスペクトルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを与えることは、前記材料の以前に測定されたメーカーフリンジスペクトルを与えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを与えることは、
前記材料の前記非線形性プロファイルを測定することと、
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを計算することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記推定位相項を与えることは、1に等しい初期推定位相項を与えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記推定位相項を与えることは、前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の測定位相項に等しい初期推定位相項を与えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記推定非線形性プロファイルは実数および因果関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記非線形性プロファイルは最小位相関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記材料は薄いフィルムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記材料はポーリングされたシリカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
材料の測定非線形性プロファイルの精度を向上させる方法であって、
(a) 前記材料の前記測定非線形性プロファイルを与えることと、
(b) 前記測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを計算することと、
(c) 前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の推定位相項を与えることと、
(d) 推定フーリエ変換を生成するために前記大きさと前記推定位相項とを乗算することと、
(e) 前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することと、
(f) 推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算することと、
(g) 前記推定非線形性プロファイルのフーリエ変換を計算することと、
(h) 前記推定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の計算位相項を計算することと、
(i) (h)の前記計算位相項を(d)の前記推定位相項として使用することと、
(j) 前記推定非線形性プロファイルが収束に達するまで(d)−(i)を反復して繰返すこととを含む、方法。
【請求項18】
汎用コンピュータに材料の非線形性プロファイルを決定する方法を実行させる、媒体に格納された命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
前記材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定することと、
推定フーリエ変換を生成するために、前記材料から測定される測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の大きさと前記推定位相項とを乗算することと、
前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することと、
推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算することとを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
コンピュータシステムであって、
材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定するための手段と、
推定フーリエ変換を生成するために、前記材料から測定される測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の大きさと前記推定位相項とを乗算するための手段と、
前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算するための手段と、
推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算するための手段とを含む、コンピュータシステム。
【請求項1】
材料の非線形性プロファイルを決定する方法であって、
(a) 前記材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを与えることと、
(b) 前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の推定位相項を与えることと、
(c) 推定フーリエ変換を生成するために前記大きさと前記推定位相項とを乗算することと、
(d) 前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することと、
(e) 推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算することとを含む、方法。
【請求項2】
(f) 前記推定非線形性プロファイルのフーリエ変換を計算することと、
(g) 前記推定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の計算位相項を計算することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(h) (g)の前記計算位相項を(c)の前記推定位相項として使用し、(c)−(e)を繰返すことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(c)−(h)は、前記推定非線形性プロファイルが収束に達するまで反復して繰返される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2つの連続する反復の後に得られる推定非線形性プロファイルの間の平均的な差が予め定められた値未満であるとき収束が達せられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予め定められた値は、反復の前記推定非線形性プロファイルの1%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(c)−(h)は、予め定められた回数反復して繰返される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを与えることは、前記材料のメーカーフリンジスペクトルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを与えることは、前記材料の以前に測定されたメーカーフリンジスペクトルを与えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを与えることは、
前記材料の前記非線形性プロファイルを測定することと、
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記大きさを計算することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記推定位相項を与えることは、1に等しい初期推定位相項を与えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の前記推定位相項を与えることは、前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の測定位相項に等しい初期推定位相項を与えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記推定非線形性プロファイルは実数および因果関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記非線形性プロファイルは最小位相関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記材料は薄いフィルムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記材料はポーリングされたシリカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
材料の測定非線形性プロファイルの精度を向上させる方法であって、
(a) 前記材料の前記測定非線形性プロファイルを与えることと、
(b) 前記測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の大きさを計算することと、
(c) 前記測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の推定位相項を与えることと、
(d) 推定フーリエ変換を生成するために前記大きさと前記推定位相項とを乗算することと、
(e) 前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することと、
(f) 推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算することと、
(g) 前記推定非線形性プロファイルのフーリエ変換を計算することと、
(h) 前記推定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の計算位相項を計算することと、
(i) (h)の前記計算位相項を(d)の前記推定位相項として使用することと、
(j) 前記推定非線形性プロファイルが収束に達するまで(d)−(i)を反復して繰返すこととを含む、方法。
【請求項18】
汎用コンピュータに材料の非線形性プロファイルを決定する方法を実行させる、媒体に格納された命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
前記材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定することと、
推定フーリエ変換を生成するために、前記材料から測定される測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の大きさと前記推定位相項とを乗算することと、
前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算することと、
推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算することとを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
コンピュータシステムであって、
材料から測定される測定非線形性プロファイルのフーリエ変換の推定位相項を推定するための手段と、
推定フーリエ変換を生成するために、前記材料から測定される測定非線形性プロファイルの前記フーリエ変換の大きさと前記推定位相項とを乗算するための手段と、
前記推定フーリエ変換の逆フーリエ変換を計算するための手段と、
推定非線形性プロファイルを生成するために前記逆フーリエ変換の実数成分を計算するための手段とを含む、コンピュータシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2007−512539(P2007−512539A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541655(P2006−541655)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039320
【国際公開番号】WO2005/054829
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599108976)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・レランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ (61)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE LELAND STANFORD JUNIOR UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039320
【国際公開番号】WO2005/054829
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599108976)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・レランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ (61)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE LELAND STANFORD JUNIOR UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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