説明

材料試験機の軸芯調整装置

【課題】 軸芯調整を迅速かつ正確に実行することが可能な材料試験機の軸芯調整装置を提供する
【解決手段】 クロスヘッド23と上つかみ具11とを連結する連結軸31と、連結軸31に固定された支持部37と連結軸31を囲う枠部36とを有する枠部材39と、上つかみ具11に固定された位置調整用カラー部材35と、位置調整用カラー部材35に形成された第1のネジ孔と螺合する第1ネジ部材51と、この第1ネジ部材51の両端部を第1ネジ部材51の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支する一対の第1案内部材と、位置調整用カラー部材35に第1のネジ孔と直交する方向に形成された第2のネジ孔と螺合する第2ネジ部材と、この第2ネジ部材の両端部を第2ネジ部材の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支する一対の第2案内部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試験片を把持するつかみ具の軸芯を調整するための材料試験機の軸芯調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような材料試験機は、上つかみ具および下つかみ具によりその両端を把持した試験片に対して負荷を与えながら、ロードセルと変位検出器によりそのときの試験力と変位とを測定することにより、試験片の試験力−変位特性や、S−N線図を求める構成となっている。このような材料試験機においては、上つかみ具と下つかみ具との軸芯が整合していないと、正確な材料試験を実行することができない。このため、このような材料試験機においては、上つかみ具と下つかみ具との軸芯を調整するための軸芯調整装置が配設されている。
【0003】
図7は、このような従来の軸芯調整装置113の概要図である。
【0004】
この軸芯調整装置113は、クロスヘッド23と上つかみ具11との間に介在されるものであり、クロスヘッド23と上つかみ具11とを連結する連結軸131と、この連結軸131の中央部に固定された枠部材139と、枠部材139の内部で連結軸131の外周部に配設され、クロスヘッド23に固定された角度調整用カラー部材134と、枠部材139の内部で連結軸131の外周部に配設され、上つかみ具11に固定された位置調整用カラー部材135とを備える。
【0005】
連結軸131は、角度調整用カラー部材134、枠部材139および位置調整用カラー部材135を貫通するとともに、連結軸131の上端部は取付板132と螺合しており、連結軸131の下端部は上つかみ具11と螺合している。また、取付板132は、一対のジャッキボルト133を介してクロスヘッド23と連結されている。このため、一対のジャッキボルト133を利用して取付板132をクロスヘッド23に対して上方に移動させることにより、上つかみ具11を所定の力でクロスヘッド23に対して締結することができる。
【0006】
枠部材139は、連結軸131に螺合して固定された支持部137と、連結軸131の周囲を囲う矩形状の枠部136とから構成される。支持部137の上面には、半球状の凸部138が形成されており、角度調整用カラー部材134の下面にはこの凸部138と対応する形状を有する半球状の凹部が形成されている。また、支持部137の下面は平面状となっており、平面状の位置調整用カラー部材135の上面と当接している。
【0007】
図8は、従来の軸芯調整装置113における角度調整用カラー部材134付近の平面概要図である。
【0008】
この角度調整用カラー部材134は、平面視において矩形状の形状を有し、その外周面は、枠部材139における枠部136と螺合する4本のネジ141、142、143、144の先端部と当接している。このため、4本のネジ141、142、143、144を調整することにより、枠部材139を連結軸131とともに傾斜させて上つかみ具11の角度を調整することが可能となる。すなわち、4本のネジ141、142、143、144のうち、互いに対向する2本のネジの一方を緩め一方を締めた状態で、枠部材139の半球状の凸部138を角度調整用カラー部材134の半球状の凹部に沿って移動させることにより、枠部材139を連結軸131とともに傾斜させることが可能となる。そして、この連結軸131の傾斜に伴って、上つかみ具11が傾斜する。
【0009】
図9は、従来の軸芯調整装置113における位置調整用カラー部材135付近の平面概要図である。
【0010】
この位置調整用カラー部材135は、平面視において矩形状の形状を有し、その外周面は、枠部材139における枠部136と螺合する4本のネジ151、152、153、154の先端部と当接している。このため、4本のネジ151、152、153、154を調整することにより、枠部材139を連結軸131とともに移動させて上つかみ具11の位置を調整することが可能となる。すなわち、4本のネジ151、152、153、154のうち、互いに対向する2本のネジの一方を緩め一方を締めた状態で、枠部材139を位置調整用カラー部材135の上面に沿って移動させることにより、枠部材139を連結軸131とともに位置調整用カラー部材135に対して相対的に移動させることが可能となる。そして、この連結軸131の相対的な移動に伴って、上つかみ具11が移動する。
【0011】
この従来の軸芯調整装置113においては、枠部材139における支持部137の上面に半球状の凸部138を形成するとともに、支持部137の下面を平面状としているが、半球状の凸部138を形成するには製作コストが高額となることを考慮し、枠部材139の上下両面に円筒状曲面から成る凹部を形成するとともに、その上下に円筒状曲面から成る凸部を形成した一対のカラー部材を配設した軸芯調整装置も提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された軸芯調整装置においても、上述した4本のネジ141、142、143、144および4本のネジ151、152、153、154に相当するネジを調整することにより、連結軸の位置および角度が調整可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−171366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した従来の軸芯調整装置においては、いずれも、連結軸131の位置を調整するために4本のネジ151、152、153、154を調整するとき、各ネジ151、152、153、154により連結軸131を押圧するときの応力の作用線が位置調整用カラー部材135の重心を通っていない場合には、位置調整用カラー部材135にモーメントが働き、この位置調整用カラー部材135が回転する。このため、例えば、X方向のネジ151または152を回転させて上つかみ具11をX方向に移動させようとしても、Y方向への意図しない移動が生ずることになる。このため、軸芯調整に時間がかかり、また、正確な軸芯調整がおこなえないという問題が生ずる。
【0014】
さらに、上述した従来の軸芯調整装置においては、いずれも、各ネジ151、152、153、154のいずれかを回転させて位置調整をおこなうときには、それらのネジ151、152、153、154と対向する位置に配置されたネジを予め緩めておく必要があることから、作業性が悪いという問題も生ずる。
【0015】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、軸芯調整を迅速かつ正確に実行することが可能な材料試験機の軸芯調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、試験片を把持するつかみ具の軸芯を調整するための材料試験機の軸芯調整装置であって、装置本体側の第1部材と、つかみ具側の第2部材とを連結する連結軸と、前記連結軸に固定された支持部と、前記連結軸を囲う枠部とを有する枠部材と、前記枠部材における枠部の内部で、かつ、前記連結軸の外周部に配設されるとともに、前記第1部材または前記第2部材のいずれか一方に固定された位置調整用カラー部材と、前記位置調整用カラー部材に形成された第1のネジ孔と螺合する第1ネジ部材と、前記枠部に配設され、前記第1ネジ部材の両端部を、当該第1ネジ部材の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支する一対の第1案内部材と、前記位置調整用カラー部材に前記第1のネジ孔と直交する方向に形成された第2のネジ孔と螺合する第2ネジ部材と、前記枠部に配設され、前記第2ネジ部材の両端部を、当該第2ネジ部材の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支する一対の第2案内部材とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記位置調整用カラー部材を前記第1ネジ部材の軸芯方向に向けて付勢する第1付勢手段と、前記位置調整用カラー部材を前記第2ネジ部材の軸芯方向に向けて付勢する第2付勢手段とをさらに備えている。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1付勢手段は、前記位置調整用カラー部材と前記枠部との間の位置において、前記第1ネジ部材の外周部に配設された第1コイルバネであり、前記第2付勢手段は、前記位置調整用カラー部材と前記枠部との間の位置において、前記第2ネジ部材の外周部に配設された第2コイルバネである。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記連結軸に対して前記第1ネジ部材と逆側の位置に前記第1ネジ部材と平行に配設され、前記位置調整用カラー部材を前記第1ネジ部材の軸芯方向に案内する第1案内軸と、前記連結軸に対して前記第2ネジ部材と逆側の位置に前記第2ネジ部材と平行に配設され、前記位置調整用カラー部材を前記第2ネジ部材の軸芯方向に案内する第2案内軸とをさらに備える。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記枠部材における支持部の前記位置調整用カラー部材とは逆側の面には、半球状の凸部が形成されるとともに、前記支持部における前記位置調整用カラー部材とは逆側の位置に配設され、前記半球状の凸部と対応する半球状の凹部が形成されるとともに、前記第1部材または前記第2部材のうち、前記位置調整用カラー部材が固定されていない側に固定された角度調整用カラー部材と、前記角度調整用カラー部材の前記枠部に対する相対的な位置を変更するための複数のネジとをさらに備える。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発明において、前記第1部材はクロスヘッドであり、前記第2部材はつかみ具である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、位置調整用カラー部材を第1ネジ部材および第2ネジ部材の作用で互いに直交する方向に移動させることにより、軸芯調整の作業性と精度とを向上させることができる。このため、軸芯調整を迅速かつ正確に実行することが可能となる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、第1ネジ部材または第2ネジ部材を回転させない状態において、位置調整用カラー部材の移動を制限することができ、位置調整用カラー部材をその位置において固定することが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、第1、第2ネジ部材の外周部に配設された第1、第2コイルバネの作用により、簡易な構成でありながら位置調整用カラー部材を確実に固定することが可能となる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、第1、第2案内軸の作用により、位置調整用カラー部材をよりスムースに案内することが可能となる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、角度調整用カラー部材の作用により、第2部材の角度位置をも調整して軸芯調整をより好適に実行することが可能となる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、クロスヘッドに対する上つかみ具の位置調整を迅速かつ正確に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係る軸芯調整装置を適用した材料試験機の概要図である。
【図2】この発明に係る軸芯調整装置13の概要図である。
【図3】この発明に係る軸芯調整装置13における角度調整用カラー部材34付近の平面概要図である。
【図4】この発明に係る軸芯調整装置13における位置調整用カラー部材35付近の平面概要図である。
【図5】軸芯調整用のテスト用試験片10aを示す正面図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る軸芯調整装置における位置調整用カラー部材35付近の平面概要図である。
【図7】従来の軸芯調整装置113の概要図である。
【図8】従来の軸芯調整装置113における角度調整用カラー部材134付近の平面概要図である。
【図9】従来の軸芯調整装置113における位置調整用カラー部材135付近の平面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。最初に、この発明に係る軸芯調整装置を使用する材料試験機について説明する。図1は、この発明に係る軸芯調整装置を適用した材料試験機の概要図である。
【0030】
この材料試験機は、基台16と、この基台16上に立設された左右一対のねじ棹17と、前記左右一対のねじ棹17と螺合するナット部を備え、ねじ棹17に対して昇降するクロスヘッド23とを備える。クロスヘッド23には、上つかみ具11が、この発明に係る軸芯調整装置13を介して付設されている。また、基台16には下つかみ具12が、ロードセル15を介して付設されている。試験片10は、その両端をこれらの上つかみ具11および下つかみ具12により把持される。
【0031】
一対のねじ棹17の下端部には、各々、同期ベルト22と係合する同期プーリー21が配設されている。また、この同期ベルト22は、モータ18の駆動により回転する同期プーリー19とも係合している。このため、一対のねじ棹17は、モータ18の駆動により同期して回転する。そして、一対のねじ棹17が同期して回転することにより、クロスヘッド23は、一対のねじ棹17の軸芯方向に昇降する。
【0032】
試験片10に負荷される試験力は、ロードセル15により検出される。また、試験片10の上下の標点間の変位量は、変位計14により検出される。ロードセル15および変位計14からの信号は図示しない制御回路に入力される。この制御回路は、ロードセル15および変位計14からの信号に基づいて、モータ18の駆動制御信号を作成する。これにより、モータ18の回転が制御され、引張や圧縮等の各種材料試験が行われる。
【0033】
次に、この発明に係る軸芯調整装置の構成について説明する。図2は、この発明に係る軸芯調整装置13の概要図である。
【0034】
この軸芯調整装置13は、上述した従来の軸芯調整装置113と同様、クロスヘッド23と上つかみ具11との間に介在されるものであり、クロスヘッド23と上つかみ具11とを連結する連結軸31と、この連結軸31の中央部に固定された枠部材39と、枠部材39の内部で連結軸31の外周部に配設され、クロスヘッド23に固定された角度調整用カラー部材34と、枠部材39の内部で連結軸31の外周部に配設され、上つかみ具11に固定された位置調整用カラー部材35とを備える。
【0035】
連結軸31は、角度調整用カラー部材34、枠部材39および位置調整用カラー部材35を貫通するとともに、連結軸31の上端部は取付板32と螺合しており、連結軸31の下端部は上つかみ具11と螺合している。また、取付板32は、一対のジャッキボルト33を介してクロスヘッド23と連結されている。このため、一対のジャッキボルト33を利用して取付板32をクロスヘッド23に対して上方に移動させることにより、上つかみ具11を所定の力でクロスヘッド23に対して締結することができる。
【0036】
枠部材39は、連結軸31に螺合して固定された支持部37と、連結軸31の周囲を囲う矩形状の枠部36とから構成される。支持部37の上面には、半球状の凸部38が形成されており、角度調整用カラー部材34の下面にはこの凸部38と対応する形状を有する半球状の凹部が形成されている。また、支持部37の下面は平面状となっており、平面状の位置調整用カラー部材35の上面と当接している。
【0037】
図3は、この発明に係る軸芯調整装置13における角度調整用カラー部材34付近の平面概要図である。
【0038】
この角度調整用カラー部材34は、平面視において矩形状の形状を有し、その外周面は、枠部材39における枠部36と螺合する4本のネジ41、42、43、44の先端部と当接している。このため、4本のネジ41、42、43、44を調整することにより、枠部材39を連結軸31とともに傾斜させて上つかみ具11の角度を調整することが可能となる。すなわち、4本のネジ41、42、43、44のうち、互いに対向する2本のネジの一方を緩め一方を締めた状態で、枠部材39の半球状の凸部38を角度調整用カラー部材34の半球状の凹部に沿って移動させることにより、枠部材39を連結軸31とともに傾斜させることが可能となる。そして、この連結軸31の傾斜に伴って、上つかみ具11が傾斜する。
【0039】
図4は、この発明に係る軸芯調整装置13における位置調整用カラー部材35付近の平面概要図である。
【0040】
この位置調整用カラー部材35は、平面視において矩形状の形状を有し、上述したように、枠部材39における枠部36の内部で、かつ、連結軸31の外周部に配設され、上つかみ具11に固定されている。
【0041】
この位置調整用カラー部材35には、第1のネジ孔が形成されており、この第1のネジ孔には、第1ネジ部材51が螺合している。この第1ネジ部材51の両端部は、一対の軸受53により回転可能に支持されている。これらの一対の軸受53は、枠部材39の枠部36に第1ネジ部材51の軸芯と直交する方向に形成された凹部57内において、この凹部57に沿って移動可能な一対の第1案内部材54により支持されている。このため、第1ネジ部材51の両端部は、この第1ネジ部材51の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支されていることになる。
【0042】
また、この位置調整用カラー部材35には、第1のネジ孔と直交する方向を向く第2のネジ孔が形成されており、この第2のネジ孔には、第2ネジ部材52が螺合している。この第2ネジ部材52の両端部は、一対の軸受55により回転可能に支持されている。これらの一対の軸受55は、枠部材39の枠部36に第2ネジ部材52の軸芯と直交する方向(第1ネジ部材51の軸芯方向)に形成された凹部58内において、この凹部58に沿って移動可能な一対の第2案内部材56により支持されている。このため、第2ネジ部材52の両端部は、この第2ネジ部材52の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支されていることになる。
【0043】
位置調整用カラー部材35と枠部材39における枠部36との間の位置における第1ネジ部材51の外周部には、位置調整用カラー部材35を枠部36から離隔する方向に向けて第1ネジ部材51の軸芯方向に付勢する第1コイルバネ71が配設されている。また、位置調整用カラー部材35と枠部材39における枠部36との間の位置における第2ネジ部材52の外周部には、位置調整用カラー部材35を枠部36から離隔する方向に向けて第2ネジ部材52の軸芯方向に付勢する第2コイルバネ72が配設されている。
【0044】
このような構成を有する軸芯調整装置13においては、第1ネジ部材51を調整することにより、枠部材39を位置調整用カラー部材35の上面に沿って、位置調整用カラー部材35に対して相対的にX方向に移動させることができ、また、第2ネジ部材52を調整することにより、枠部材39を位置調整用カラー部材35の上面に沿って、位置調整用カラー部材35に対して相対的にY方向に移動させることができる。このため、第1ネジ部材51および第2ネジ部材52を調整することにより、枠部材39を位置調整用カラー部材35の上面に沿ってX、Y方向に移動させることにより、枠部材39を連結軸31とともに、位置調整用カラー部材35に対して相対的にX、Y方向に移動させることが可能となる。そして、この連結軸31のX、Y方向の移動に伴って、上つかみ具11がX、Y方向に移動する。
【0045】
第1ネジ部材51および第2ネジ部材52を回転させない状態においては、第1、第2コイルバネ71、72の作用により、位置調整用カラー部材35が第1ネジ部材51および第2ネジ部材52の軸芯方向に付勢されていることから、位置調整用カラー部材35の移動を制限することができ、位置調整用カラー部材35をその位置において固定することが可能となる。
【0046】
以上のように、この発明に係る軸芯調整装置13においては、第1ネジ部材51および第2ネジ部材52を調整することにより、枠部材39を連結軸31とともに、位置調整用カラー部材35に対して相対的にX、Y方向に移動させることができ、X、Y方向の軸芯調整を容易に実行することが可能となる。このとき、従来のように、X方向の軸芯調整時にY方向への意図しない移動が生ずることもなく、また、互いに対向するネジを予め緩めておく必要もないことから、軸芯調整の作業性と精度とを向上させることができ、軸芯調整を迅速かつ正確に実行することが可能となる。
【0047】
図5は、軸芯調整用のテスト用試験片10aを示す正面図である。
【0048】
以上のような軸芯調整装置13を使用して軸芯調整を行う場合には、図5に示すように、その側面に複数の歪みゲージ69を多数付設したテスト用試験片10aを用いて評価試験を行う。すなわち、テスト用試験片10aの両端を上つかみ具11および下つかみ具12で把持し、引っ張り負荷を与えたときの歪みゲージ69の歪みがゼロになるように軸芯調整装置13を調整する。この場合には、例えば、調整角度が0.1度以下、X方向およびY方向のずれ量が1mm以下となるように調整する。このような軸芯調整は、材料試験機の出荷時や、上つかみ具11または下つかみ具12の交換時に実行される。
【0049】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図6は、この発明の第2実施形態に係る軸芯調整装置における位置調整用カラー部材35付近の平面概要図である。なお、上述した第1実施形態に係る軸芯調整装置13と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
この第2実施形態に係る軸芯調整装置は、上述した第1実施形態に係る軸芯調整装置13に対して、第1案内軸61および第2案内軸62を付加することにより、第1ネジ部材51および第2ネジ部材52が位置調整用カラー部材35の中心にない場合においても、よりスムースに軸芯調整を実行することを可能としたものである。
【0051】
この第2実施形態に係る軸芯調整装置は、連結軸31に対して第1ネジ部材51と逆側の位置にこの第1ネジ部材51と平行に配設され、位置調整用カラー部材35を第1ネジ部材61の軸芯方向に案内する第1案内軸61と、同じく連結軸31に対して第2ネジ部材52と逆側の位置にこの第2ネジ部材52と平行に配設され、位置調整用カラー部材35を第2ネジ部材52の軸芯方向に案内する第2案内軸62とを備える。
【0052】
第1案内軸61は、位置調整用カラー部材35に配設された軸受63により軸支されている。この第1案内軸61の両端部は、枠部材39の枠部36に第1ネジ部材51の軸芯と直交する方向に形成された凹部67内において、この凹部67に沿って移動可能な一対の案内部材64により支持されている。このため、第1案内軸61の両端部は、第1ネジ部材51の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支されていることになる。
【0053】
同様に、第2案内軸62は、位置調整用カラー部材35に配設された軸受65により軸支されている。この第2案内軸62の両端部は、枠部材39の枠部36に第2ネジ部材52の軸芯と直交する方向に形成された凹部68内において、この凹部68に沿って移動可能な一対の案内部材66により支持されている。このため、第2案内軸62の両端部は、第2ネジ部材52の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支されていることになる。
【0054】
このような構成を有する軸芯調整装置においては、第1、第2ネジ部材51、52と、第1、第2案内軸61、62とにより、位置調整用カラー部材35を案内する構成であることから、よりスムースに位置調整用カラー部材35を案内することができ、軸芯調整をより容易に実行することが可能となる。
【0055】
なお、第1ネジ部材51および第2ネジ部材52が位置調整用カラー部材35の中心にない場合においても、軸芯調整をスムースに行うためには、上述した第1、第2案内軸61、62を使用するかわりに、連結軸31に第1、第2ネジ部材51、52用の貫通孔を形成し、第1、第2ネジ部材51、52をこの貫通孔を貫通する位置に配設するようにしてもよい。
【0056】
上述した実施形態においては、この発明に係る軸芯調整装置を、装置本体側の第1部材としてのクロスヘッド23と、つかみ具側の第2部材としての上つかみ具11との間に配設しているが、この軸芯調整装置は、例えば、下つかみ具12とロードセル15の間等の、その他の場所に配設してもよい。この軸芯調整装置は、要するに、装置本体側の何らかの部材と、上つかみ具11または下つかみ具12側の何らかの部材の間に配設されればよい。
【符号の説明】
【0057】
10 試験片
10a テスト用試験片
11 上つかみ具
12 下つかみ具
13 軸芯調整装置
14 変位計
15 ロードセル
17 ねじ棹
18 モータ
23 クロスヘッド
31 連結軸
32 取付板
33 ジャッキボルト
34 角度調整用カラー部材
35 位置調整用カラー部材
36 枠部
37 支持部
38 凸部
39 枠部材
41 ネジ
42 ネジ
43 ネジ
44 ネジ
51 第1ネジ部材
52 第2ネジ部材
53 軸受
54 第1案内部材
55 軸受
56 第2案内部材
57 凹部
58 凹部
61 第1案内軸
62 第2案内軸
69 歪みゲージ
71 第1コイルバネ
72 第2コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片を把持するつかみ具の軸芯を調整するための材料試験機の軸芯調整装置であって、
装置本体側の第1部材と、つかみ具側の第2部材とを連結する連結軸と、
前記連結軸に固定された支持部と、前記連結軸を囲う枠部とを有する枠部材と、
前記枠部材における枠部の内部で、かつ、前記連結軸の外周部に配設されるとともに、前記第1部材または前記第2部材のいずれか一方に固定された位置調整用カラー部材と、
前記位置調整用カラー部材に形成された第1のネジ孔と螺合する第1ネジ部材と、
前記枠部に配設され、前記第1ネジ部材の両端部を、当該第1ネジ部材の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支する一対の第1案内部材と、
前記位置調整用カラー部材に前記第1のネジ孔と直交する方向に形成された第2のネジ孔と螺合する第2ネジ部材と、
前記枠部に配設され、前記第2ネジ部材の両端部を、当該第2ネジ部材の軸芯と直交する方向にのみ移動可能な状態で軸支する一対の第2案内部材と、
を備えたことを特徴とする材料試験機の軸芯調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の材料試験機の軸芯調整装置において、
前記位置調整用カラー部材を前記第1ネジ部材の軸芯方向に向けて付勢する第1付勢手段と、
前記位置調整用カラー部材を前記第2ネジ部材の軸芯方向に向けて付勢する第2付勢手段と、
をさらに備える材料試験機の軸芯調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の材料試験機の軸芯調整装置において、
前記第1付勢手段は、前記位置調整用カラー部材と前記枠部との間の位置において、前記第1ネジ部材の外周部に配設された第1コイルバネであり、
前記第2付勢手段は、前記位置調整用カラー部材と前記枠部との間の位置において、前記第2ネジ部材の外周部に配設された第2コイルバネである、材料試験機の軸芯調整装置。
【請求項4】
請求項3に記載の材料試験機の軸芯調整装置において、
前記連結軸に対して前記第1ネジ部材と逆側の位置に前記第1ネジ部材と平行に配設され、前記位置調整用カラー部材を前記第1ネジ部材の軸芯方向に案内する第1案内軸と、
前記連結軸に対して前記第2ネジ部材と逆側の位置に前記第2ネジ部材と平行に配設され、前記位置調整用カラー部材を前記第2ネジ部材の軸芯方向に案内する第2案内軸と、
をさらに備える材料試験機の軸芯調整装置。
【請求項5】
請求項3に記載の材料試験機の軸芯調整装置において、
前記枠部材における支持部の前記位置調整用カラー部材とは逆側の面には、半球状の凸部が形成されるとともに、
前記支持部における前記位置調整用カラー部材とは逆側の位置に配設され、前記半球状の凸部と対応する半球状の凹部が形成されるとともに、前記第1部材または前記第2部材のうち、前記位置調整用カラー部材が固定されていない側に固定された角度調整用カラー部材と、
前記角度調整用カラー部材の前記枠部に対する相対的な位置を変更するための複数のネジと、
をさらに備える材料試験機の軸芯調整装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の材料試験機の軸芯調整装置において、
前記第1部材はクロスヘッドであり、前記第2部材はつかみ具である材料試験機の軸芯調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149788(P2011−149788A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10642(P2010−10642)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】