説明

材料試験機

【課題】 試験準備期間中に、レバー式変位計測装置のレバーが標点からずれることを防止する。
【解決手段】
支持装置110は、昇降ビーム760によって弾性支持部240を昇降可能に支持し、昇降ビーム760には、スクリューロッド740が螺合され、スクリューロッド740はモータ700によって駆動される。モータ700によってスクリューロッド740を駆動すると、昇降ビーム760は上下動し、これにともなって弾性支持部240が昇降する。
これによって、レバー式変位計測装置200は、広範囲に渡って上下位置調節可能となり、試験準備期間中の熱膨張に起因した標点移動に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温試験に好適なレバー式変位計測装置を備えた材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、高温試験のための、従来の材料試験機1000は、上下のつかみ具1200、1220によって把持される試験片TPを、加熱炉1500によって所定温度まで加熱して負荷し、試験片TPに生じる変位をレバー式変位計測装置1100によって計測する。
【0003】
レバー式変位計測装置1100は上下1対のレバー1120を有し、レバー1120を、常温における所定の標点間距離Doで、試験片TPの面に当接する。さらに、レバー式変位計測装置1100は、レバー1120とともに試験片TPを挟み込んで試験片TPを保持する上下1対の保持棒1130を有する。これによって、試験片TPは抱き込み力をもって抱き込み保持されることになる。
【0004】
加熱炉1500の温度は、熱電対1510を備えた温度調節器1520によって調節され、試験片TPの雰囲気が所定試験温度(たとえば摂氏800度)に達したときに、油圧シリンダ1400によって試験片TPに負荷を与えつつ、ロードセル1300によってその負荷を計測する。このときの変位はレバー1120の間隔の広がり(開動量)としてセンサ1110によって検出される。
【0005】
従来のレバー式変位計測装置1100は、バネケース1144を内部のバネ1142によって支持した弾性支持部1140によって上下動可能に支持されており、試験片TPの変位にともなう両標点の下方移動に追従する(図中、想像線で示す。)ようになっている。また、弾性支持部1140は、高さ調節ネジ1146によって吊り具1150に取り付けられ、吊り具1150は固定部1160に固定されている。
【0006】
なお、特許文献1には、治具をあらかじめ加熱し得る高温試験が開示され、特許文献2には、高温試験に際して、標点の下方移動に追従して雰囲気装置(加熱炉)を移動する材料試験機が開示され、特許文献3には、レバー式変位計測装置をX軸スライダによって保持して、精密にレバー間隔設定を行い得る材料試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−149898号公報
【特許文献2】特開平11−326168号公報
【特許文献3】特開2004−347375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8のレバー式変位計測装置1100は、弾性支持部1140によって支持されているため、標点移動に追従する際に弾性反力が生じ、常温から試験温度までの大幅な温度上昇時(試験準備期間中)に、移動量が限界を超えることがあり、レバー1120が標点からずれ、さらには試験片TPから外れるという問題があった。
【0009】
このずれを防止するために、レバー1120の試験片に対する当接力(抱き込み力)を大きくすることも考えられるが、抱き込み力が過大になると、試験片TPに亀裂が生じることもある。
【0010】
さらに、バネ1142の特性を試験片TPの熱膨張に応じて選択することも可能であるが、バネの選定、交換は煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)請求項1による材料試験機は、試験片に負荷を与える負荷アクチュエータと、前記試験片を所定試験温度に加熱する加熱手段と、前記試験片に先端部が当接されるレバー、および試験片の変形量に応じて生じる前記レバーの開動量を検出するセンサを備えたレバー式変位計測装置と、前記レバー式変位計測装置を前記試験片に対して所定位置に弾性的に保持する支持手段と、前記試験片が前記所定試験温度に達する以前の試験準備期間中に、前記試験片の熱膨張により前記レバーの先端部に変位が生じたときに、前記変位に追従するように前記レバー式変位計測装置を移動させる追従手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の材料試験機において、前記追従手段は、前記試験片の熱膨張を検出する熱膨張検出手段と、前記熱膨張による熱応力を解消するように、前記負荷アクチュエータを駆動するアクチュエータ移動手段と、前記負荷アクチュエータの移動量に基づいて前記追従手段を動作させる追従制御手段とを含むことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1または2に記載の材料試験機において、前記試験準備期間中であるか否かを判定する準備期間判定手段をさらに備え、前記追従制御手段は、前記試験準備期間中であると判断されたときにのみ、前記追従手段を動作させることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の材料試験機において、前記追従制御手段は、前記負荷アクチュエータの移動量の略1/2の移動量だけ、前記レバー式変位計測装置を移動させるように前記追従手段を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試験準備期間中にレバー式変位計測装置のレバーが標点からずれることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る材料試験機の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1の材料試験機におけるレバー式変位計測装置を示す平面図(図1のII−II矢視線沿う断面を含む)。
【図3】図2のレバー式変位計測装置における先端部を示す斜視図。
【図4】図1の材料試験機における試験制御装置の処理を示すフローチャート。
【図5】図1の材料試験機における変位計保持具移動装置の処理を示すフローチャート。
【図6】本発明に係る材料試験機の第2の実施の形態を示す正面図。
【図7】本発明に係る材料試験機の第3の実施形態を示す正面図。
【図8】従来の材料試験機を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図4を参照して本発明による材料試験機の第1の実施の形態について説明する。
図1〜図3に示すように、材料試験機100は、試験片TPに負荷を与える負荷アクチュエータ、ここでは油圧シリンダ油圧シリンダ500と、試験片TPを所定温度に加熱する加熱炉600と、試験片TPの変形量を検出するレバー式変位計測装置200と、レバー式変位計測装置200を、試験片TPに対して所定位置に保持する支持装置110と、材料試験機100の全体を制御する制御部840とを有する。
【0015】
材料試験機100には、加熱炉600内で試験片TPの上下をつかむつかみ具300、320が設けられ、油圧シリンダ500は、下方のつかみ具320を駆動することにより、試験片TPに負荷を与える。このときの負荷はロードセル400によって検出される。油圧シリンダ500には、油圧シリンダ500のピストン変位を検出するピストン位置検出器520が取り付けられている。
【0016】
図2および図3を参照してレバー式変位計測装置200を詳細に説明する。レバー式変位計測装置200は、先端部224の尖端228が試験片TPに当接される上下一対のレバー220と、試験片TPの変形量に応じてレバー220に開動が生じたとき、その開動量を検出するセンサ210が設けられている。
【0017】
上下一対のレバー220は、試験片TPの面にレバー尖端228が常温における所定の標点間距離Doで当接し、レバー尖端228と保持棒230との協働によって、試験片TPを抱き込み保持する。
【0018】
保持棒230は、レバー220に沿って延びる一対のビーム270の先端部に固定され、レバー220およびビーム270の基端部は保持力調節部250に連結されている。保持力調節部250は、レバー220に連結された引張コイルバネ252と、引張コイルバネ252に張力を与える調節ネジ254とを有し、ビーム270はレバー220によってガイドされつつ水平移動し得る。保持力調節部250はさらに、レバー220に固定された支持部材256を有し、調節ネジ254は支持部材256に挿通されている。支持部材256は板バネによって構成され、レバー220およびビーム270を弾性支持している。調節ネジ254によって引張コイルバネ252の張力を高めることにより、抱き込み力は高まる。
【0019】
支持装置110は、昇降ビーム760によって弾性支持部240を昇降可能に支持し、昇降ビーム760はガイドロッド780によって上下方向にガイドされている。昇降ビーム760には、スクリューロッド740が螺合され、スクリューロッド740はモータ700によって駆動される。モータ700によってスクリューロッド740を駆動すると、昇降ビーム760は上下動し、これにともなって弾性支持部240が昇降する。モータ700にはロータリーエンコーダ720が接続され、モータ700の回転数を検出し得る。
【0020】
弾性支持部240は、昇降ビーム760によって支持されつつ下方に延びる支軸246と、支軸246によって下端が支持された圧縮コイルバネ242とを有し、圧縮コイルバネ242はバネケース244内部に収納されている。圧縮コイルバネ242は、バネケース244内部上端面に接し、バネケース244は上下動可能に弾性支持されている。バネケース244は、レバー式変位計測装置200に連結され、レバー式変位計測装置200全体を弾性支持する。これによって、従来例と同様に、試験準備期間中のある程度の標点移動に対して、レバー220は追従する。
【0021】
なお、図2を参照して説明したとおり、レバー220およびビーム270は支持部材256により弾性支持されているので、試験片TPの標点移動に対するレバー220の追従性に寄与する。
【0022】
さらに、モータ700によって昇降ビーム760を昇降することにより、レバー式変位計測装置200は、広範囲に渡って上下位置が調節され、試験準備期間中の熱膨張に起因した、いかなる標点移動にも対応することができる。
【0023】
制御部840は、試験制御装置800および変位計保持具移動装置820を含み、モータ700は、変位計保持具移動装置820からのモータ駆動信号MSによって駆動制御される。変位計保持具移動装置820にはロータリーエンコーダ720のエンコーダ信号ESがフィードバックされている。これによって、変位計保持具移動装置820は、モータ700を制御して昇降ビーム760に適正な移動量を与えることができる。
【0024】
加熱炉600内の所定位置には、温度調節器620の熱電対610が配置され、試験片TPの温度を代表する炉内温度が検出される。温度調節器620は、炉内温度が所定の試験温度に到達したときに、温度到達信号TSを試験制御装置800に入力する。
【0025】
変位計保持具移動装置820と試験制御装置800とは互いに種々の信号を授受するように構成されている。試験制御装置800には、ロードセル400によって検出された負荷を示す信号(ロードセル信号)LSと、ピストン位置検出器520で検出されたピストン位置を示す信号(ピストン位置信号)PSとが入力されている。さらに、試験制御装置800は、油圧シリンダ500に付設されている図示しないサーボ弁に駆動信号PDを出力する。
【0026】
温度調節器620は、昇温開始操作が行われたときに、試験制御装置800および変位計保持具移動装置820に対して昇温開始信号FSを出力する。これによって試験準備期間の処理が開始される。
【0027】
試験制御装置800は、試験準備期間中において、試験片TPの熱膨張を計測し、その熱膨張に対応した標点位置移動量だけ、レバー式変位計測装置200を下方に移動させる。試験片TPが熱膨張するとロードセル500から負荷信号LSが出力されるので、試験制御装置800は、その負荷信号がゼロとなるように油圧シリンダ500を駆動し、油圧シリンダ500によってつかみ具320を下降させる。その下降量はピストン位置信号PSとして試験制御装置800に入力される。なお、熱膨張による標点位置の移動は、試験片TPの熱膨張の影響だけでなく、試験片TPの両端を把持しているつかみ具300と320の熱膨張によっても起りうる。上述の制御はつかみ具の影響やその他の部材の影響も含めた制御である。
【0028】
標点位置は、通常、試験片TPの長さ方向中央に設定され、標点位置の移動量は、熱膨張の1/2と見積ることができる。そこで、試験制御装置800は、ピストン位置信号PSからピストン位置変位Pdを算出し、これを熱膨張による伸びとみなす。さらにピストン位置変位Pdの1/2を変位計位置修正量Emとして算出する。
【0029】
試験制御装置800はこのように算出した変位計位置修正量Emを、移動量信号DSとして変位計保持具移動装置820に入力する。変位計保持具移動装置820は、移動量信号DSに基づいてモータ駆動信号MSをモータ700に出力して、モータ700を所定回転数だけ回転させて、標点位置移動量だけレバー式変位計測装置200を下降させる。試験制御装置800は、エンコーダ信号ESに基づいて、このときの下降量を、標点位置移動量Edとして算出する。
【0030】
図4および図5に示すように、材料試験機100は、制御部840によって、以下のステップを実行することによって材料試験を行う。具体的には、試験片の熱膨張による熱応力緩和処理は試験制御装置800によりピストン500を移動して行い、ピストン500の移動に伴う変位計保治具110の脱落防止処理は変位計保持具移動装置820によって行われる。
【0031】
図4は、試験制御装置800で行われる応力緩和処理手順を示すフローチャートである。
ステップS401において、スイッチ、キーボード等の所定の入力インターフェースからのゼロリセット信号の入力を待つ。ゼロリセット信号が入力されたときにはステップS402に進む。ステップS402では、試験制御装置800によってピストン位置信号PSをゼロリセットしステップS403に進む。ステップS403では、温度調節器620からの昇温開始信号FSの出力を待つ。昇温開始信号FSが出力されたときは、ステップS404に進む。
【0032】
ステップS404において、ロードセル信号LSが試験片負荷ゼロを示すか否かを判断する。試験片負荷ゼロでないときはステップS405に進む。試験片負荷ゼロのときはステップS406に進む。
【0033】
ステップS405では、ピストン500を所定量収縮して下つかみ具320を微少量降下させ、ステップS404に戻る。ステップS404、S405の処理により、ロードセル信号LSが試験片負荷ゼロを示すように油圧シリンダ500が駆動される。これによって、試験片TPの負荷が解放され、高温無負荷状態で試験片TPを負荷することが可能になる。なお、降下量は、フィードバック回路によってロードセル信号LSの変化量に応じてピストンが移動する。
【0034】
ステップS406では、温度調節器620から温度到達信号TSが入力された否かを判断する。温度到達信号TSが入力されたときはステップS407に進み、スイッチ、キーボード等の所定の入力インターフェースからの試験開始信号TBの入力を待つ。試験開始信号TBが入力されたときは、ステップS408へ進む。ステップS408において、所定の試験時の処理を実行する。試験時においては、試験制御装置800は油圧シリンダのピストン500によって試験片TPに負荷を与え、そのときの変位と試験力を計測する等の処理を実行する。
【0035】
図5は、変位計保持具移動装置820で行われる脱落防止処理手順を示すフローチャートである。
ステップS501において、まずスイッチ、キーボード等の所定の入力インターフェースからのゼロリセット信号の入力を待つ。ゼロリセット信号が入力されたときにはステップS502に進む。ステップS502では、ピストン位置信号PSとエンコダ信号ESをゼロリセットしステップS503に進む。
【0036】
ステップS503では、温度調節器620からの昇温開始信号FSの入力を待つ。昇温開始信号FSが入力されたときは、ステップS504に進み、ピストン位置信号PSとエンコダ信号ESを読み込み、ステップS505に進む。
【0037】
ステップS505では、ピストン位置信号PSに基づいてピストン位置変位Pdを算出するとともに、変位計位置修正量Em=Pd/2を算出する。また、エンコーダ信号ESに基づいて標点位置移動量Edを算出するとともに、標点位置移動量Edに対応した移動量信号DSを算出する。
【0038】
ステップS506では、変位計位置修正量Emと標点位置移動量Edとの差(Em−Ed)の絶対値を算出する。そして、この差の絶対値が所定値Δdよりも小であるか否かを判断する。差の絶対値が所定値Δd以上のときはステップS507に進み、モータ駆動信号MSをモータ700に出力する。差の絶対値が所定値Δdより小のときは、図5の処理を終了する。
【0039】
第1の実施の形態による材料試験機は以下の作用効果を奏する。
(1)試験片TPが所定試験温度に達する以前の試験準備期間中、すなわち試験温度に昇温する期間中に、試験片TPの熱膨張による歪みにより変位計のレバーの先端部が移動したとき、この移動量に追従するようにレバー式変位計測装置を移動させる追従機構を設けた。したがって、試験準備期間中に、レバー式変位計測装置のレバーが標点からずれることを防止することができる。
(2)試験片TPの熱膨張を試験片TPに作用する負荷をゼロにする時のピストン移動量(伸縮量)として検出するようにしたので、新たな検出センサを用いることなく、レバー式変位計測装置を試験片の熱膨張に追従させることができる。
(3)試験準備期間中であると判断されたときにのみ、追従機構を動作させるようにしたので、本試験中に試験片の負荷によって追従機構が誤って動作することを確実に防止できる。
(4)レバー式変位計測装置を弾性支持した上で、熱膨張による試験片TPの歪量の略1/2をレバー式変位計測装置の追従量とした。したがって、レバー式変位計測装置の移動量が試験片TP中央の移動量に正確に合致しなくても、レバーが試験片TPから脱落することを確実に防止できる。
−第2の実施の形態−
【0040】
図6を参照して本発明による材料試験機の第2の実施形態について説明する。図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0041】
第2の実施形態は、モータ700を弾性支持部240内部に設けたものである。
【0042】
図6において、支持装置110は、従来と同様、固定部860に固定された吊り具850によって高さ調節ネジ846を支持し、高さ調節ネジ846によって弾性支持部240を支持している。
【0043】
弾性支持部240は、高さ調節ネジ846によって下端が支持された圧縮コイルバネ242を有し、圧縮コイルバネ242はバネケース244内部に収納されている。圧縮コイルバネ242は、バネケース244の内部上端面に接し、バネケース244は上下動可能に弾性支持されている。
【0044】
バネケース244下部にはモータ700が固定され、モータ700には下方に突出するスクリューロッド740が設けられている。スクリューロッド740はバネケース244を下方に貫通して、レバー式変位計測装置200に連結されている。レバー式変位計測装置200には、支持ブロック222が設けられ、スクリューロッド740は支持ブロック222に螺合している。さらに、バネケース244の下面には、支持ブロック222に向かって突出するガイドロッド848が設けられ、ガイドロッド848は支持ブロック222に挿通されている。ガイドロッド848は支持ブロック222の回転を阻止しつつ、上下動可能にガイドしている。
【0045】
スクリューロッド740はモータ700によって回転駆動され、支持ブロック222を上下動させる。このとき、支持ブロック222はガイドロッド848によって回転が阻止されているので、支持ブロック222が回転して、上下動が阻害されることはない。
【0046】
モータ700にはロータリーエンコーダ720が接続され、モータ700の回転数が検出される。
【0047】
弾性支持部240は、圧縮コイルバネ242によって、レバー式変位計測装置200全体を弾性支持しているので、試験準備期間中のある程度の標点移動に対して自動的に追従できる。さらに、モータ700の回転による支持ブロック222上下動によって、レバー式変位計測装置200を広範囲に渡って上下位置調節し得るので、試験準備期間中の熱膨張に起因した、いかなる標点移動にも追従することができる。
【0048】
以上の第2の実施形態による材料試験機によれば、試験準備期間中に、レバー式変位計測装置のレバーが標点からずれることを防止するという作用効果を奏することができる。
−第3の実施形態−
【0049】
図7を参照して本発明による材料試験機の第3の実施形態について説明する。図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0050】
第3の実施形態は、第1の実施の形態のモータ700に替えて流体圧シリンダ900を採用したものである。
【0051】
図7において、支持装置110は、昇降ビーム760によって弾性支持部240を昇降可能に支持し、昇降ビーム760はガイドロッド780によって上下方向にガイドされている。昇降ビーム760には、ピストンロッド920が連結され、ピストンロッド920は流体圧シリンダ900によって上下駆動される。流体圧シリンダ900は、固定ビーム940によって固定支持されている。流体圧シリンダ900によってピストンロッド920を駆動すると、昇降ビーム760は上下動し、これにともなって弾性支持部240が昇降する。
昇降ビーム760にはリニアエンコーダ960が取り付けられ、昇降ビーム760の移動量を検出し得る。弾性支持部240は、レバー式変位計測装置200を上下動可能に弾性支持する。
【0052】
流体圧シリンダ900は、変位計保持具移動装置820からのシリンダ駆動信号SSによって駆動制御され、リニアエンコーダ960のエンコーダ信号ESが変位計保持具移動装置820にフィードバックされる。これによって、昇降ビーム760の上下移動量が適正化される。
【0053】
以上の第3の実施形態による材料試験機によれば、試験準備期間中に、レバー式変位計測装置のレバーが標点からずれることを防止するという作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0054】
TP 試験片 100 材料試験機
200 レバー式変位計測装置 210 センサ
220 レバー 224 先端部
240 弾性支持部 400 ロードセル
500 油圧シリンダ 600 加熱炉
620 温度調節器 700 モータ
720 ロータリーエンコーダ 740 スクリューロッド
780 ガイドロッド 800 試験制御装置
820 変位計保持具移動装置 900 流体圧シリンダ
960 リニアエンコーダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片に負荷を与える負荷アクチュエータと、
前記試験片を所定試験温度に加熱する加熱手段と、
前記試験片に先端部が当接されるレバー、および試験片の変形量に応じて生じる前記レバーの開動量を検出するセンサを備えたレバー式変位計測装置と、
前記レバー式変位計測装置を前記試験片に対して所定位置に弾性的に保持する支持手段と、
前記試験片が前記所定試験温度に達する以前の試験準備期間中に、前記試験片の熱膨張により前記レバーの先端部に変位が生じたときに、前記変位に追従するように前記レバー式変位計測装置を移動させる追従手段とを備えることを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
請求項1に記載の材料試験機において、
前記追従手段は、
前記試験片の熱膨張を検出する熱膨張検出手段と、
前記熱膨張による熱応力を解消するように、前記負荷アクチュエータを駆動するアクチュエータ移動手段と、
前記負荷アクチュエータの移動量に基づいて前記追従手段を動作させる追従制御手段とを含むことを特徴とする材料試験機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の材料試験機において、
前記試験準備期間中であるか否かを判定する準備期間判定手段をさらに備え、
前記追従制御手段は、前記試験準備期間中であると判断されたときにのみ、前記追従手段を動作させることを特徴とする材料試験機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の材料試験機において、
前記追従制御手段は、前記負荷アクチュエータの移動量の略1/2の移動量だけ、前記レバー式変位計測装置を移動させるように前記追従手段を動作させることを特徴とする材料試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−271271(P2010−271271A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125352(P2009−125352)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】