説明

杭の圧入装置

【課題】迅速で簡単に支持杭の新設を行うことができる装置を提供する。
【解決手段】車輪13付きの台車1と、台車1の最上部に設置したジャッキ架台2と、ジャッキ架台2に設置した、鉛直方向に伸縮する圧入ジャッキ21と、ジャッキ架台2を上下方向に移動する架台昇降スクリュー15と、台車1の位置を固定する固定スクリュー16とより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の圧入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設の建築物のアンダーピーニング、沈下修復、あるいは支持杭の構築として各種の工法が採用されている。その例を挙げると図7のようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−328716号公報
【特許文献2】特開2009−203672号公報
【特許文献3】特開平7−3784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の杭の圧入装置にあっては、次のような問題点がある。
<1> いずれの工法も基礎よりも深い縦穴を掘削し、その穴の内部で基礎にジャッキを取り付け、基礎を反力としてジャッキで鋼管を地中に圧入するような方法を採用している。
<2> したがって縦穴一か所ごとで、ジャッキの設置作業と圧入後のジャッキの撤去作業を行う必要があり、それに多大な時間と労力を要する。
<3> しかも重量の大きいジャッキを持ち上げて基礎に下方から取り付ける、という危険な作業が必要である。
<4> ジャッキで圧入する位置ごとに、基礎の下面にいたる足場を組み立て、圧入後には足場を解体して運搬する、という手数を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決する本発明の杭の圧入装置は、車輪付きの台車と、台車の最上部に設置したジャッキ架台と、ジャッキ架台に設置した、鉛直方向に伸縮する圧入ジャッキと、ジャッキ架台を上下方向に移動する架台上下動スクリューと、台車の位置を固定する固定スクリューとより構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題を改善するものであり、次のような効果を達成できる。
<1> 基礎の下面から反力を取るジャッキの設置、撤去が簡単であり、多数本の鋼管を連続して効率よく圧入することができる。
<2> 重量の大きいジャッキを架台に乗せて運搬し、そのまま基礎の下面に取り付けができるから、作業員による危険な作業が不要である。
<3> 従来のように、圧入位置ごとに足場を組み立て、圧入後に足場を解体し、次の圧入場所まで運搬する、という手数が不要であってきわめて迅速に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の杭の圧入装置の実施例の説明図
【図2】地下の作業空間の構築状態の説明図
【図3】圧入装置の移動中の説明図
【図4】装置を固定した状態の説明図
【図5】新設鋼管を取り込む状態の説明図
【図6】新設鋼管を圧入する状態の説明図
【図7】従来の圧入方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の圧入装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1> 車輪付きの台車
本願発明の圧入装置Aは、四方に立てた鋼製の支柱11の間を天井梁12で連結して矩形に組み立てた台車1と台車1に搭載したジャッキ架台2より構成する。
台車1の下部には移動が可能なように車輪13を取り付ける。
台車1床梁14の一部は切断しておけば、その切断部から圧入予定の鋼管Pの吊りこみを行うことができる。
台車1は、ジャッキ架台2を運搬できる程度の強度があれば足り、台車1自体にはジャッキ21による鋼管P加圧時の外力は作用しない。
したがって台車1は特別に強固な構造である必要はなく、簡易な鋼材で組み立てることができ、軽量であって人力によって移動することが可能である。
【0010】
<2>ジャッキ架台
台車1の最上部には、ジャッキ架台2を搭載する。
ジャッキ架台2は、2枚の板である、ジャッキ搭載板22と昇降板23を平行に配置し、両者の間を鉛直ボルト24で連結したものである。
そして両者の板で、台車1の支柱11の上部の天井梁12を挟む状態で設置する。
ジャッキ搭載板22は、ジャッキ21を鉛直方向に伸縮できる姿勢で保持するための板であり、搭載板22に開口した貫通孔からジャッキ21のシリンダ21aだけが下向きに出入りする。
ジャッキ21は1本でも複数本でもよい。
天井梁12を挟んで、搭載板22よりも上に平行に位置する昇降板23は、ジャッキ21の上端に位置する水平の板である。
鉛直ボルト24の定着位置に余裕を残してあることから、ジャッキ21の伸長に伴って、建築物の基礎スラブCや地中梁Bの下面に向けて上昇させることができる。
昇降板23の上面にはゴム板などの弾性マット23aを取り付けて、地中梁Bの下面の多少の凹凸を吸収できるように構成する。
ジャッキ架台2は台車1の最上部の天井梁12に取り付けてあるので、この天井梁12を昇降すればジャッキ架台2の全体を昇降することができ、昇降板23と地中梁Bの下面との距離を調整することができる。
そのために、各支柱11の上端には昇降スクリュー15を取り付け、このスクリュー15で天井梁12を支持して、その回転によって天井梁12を昇降する。
【0011】
<3>固定スクリュー
天井梁12の上には、鉛直方向に伸縮が可能な固定スクリュー16を取り付け、その上端には支持板17を取り付ける。
この固定スクリュー16の伸長によって支持板17を基礎スラブCや地中梁Bの下面に押し付ければ、台車1全体の位置を固定することができる。
【0012】
<4>使用方法
次に本発明の圧入装置Aの使用方法を説明する。
【0013】
<5>地下空間の構築(図2)
既設の大型の建築物の地中梁Bは、すでに地中に打設した基礎杭Eによって支持されている。
本発明の圧入装置Aは、そのような基礎杭Eの強度に問題がある場合に、その基礎杭Eの周囲に新設杭Pを圧入して基礎杭Eの補強をする場合に使用する装置である。
そのために建築物の基礎スラブC、地中梁Bの下面を広く掘削して地下空間Dを構築し、これを補強作業のための作業域とする。
したがってこの地下空間Dは、基礎スラブCや地中梁Bの下面を天井面とし、この天井面と、掘削した空間の床面との間には複数本の基礎杭Eだけが林立した、広い体育館のような空間となる。
【0014】
<6>圧入装置の移動(図3)
本発明の圧入装置Aを作業員が押して、あるいは簡易な装置で引いて、作業床面を移動させて、新設杭Pを圧入する位置に位置させる。
前記したように圧入装置A自体は杭Pの圧入時の反力を取る構造ではないから、簡易な骨組みで構成することができ、軽量なので人力によって移動させることができ経済的である。
移動の際には、ジャッキ21を短縮して昇降板23を下降させ、基礎スラブCや地中梁Bの下面と一定の間隔を作っておく。
【0015】
<7>装置の位置決め(図4)
新設杭Pの圧入位置に到着したら、支柱11の最上部で鉛直方向に伸縮する固定スクリュー16を伸長して、その先端の支持板17を地中梁Bや基礎スラブC、特に強度上から地中梁Bの下面に押し付ける。
すると車輪13と支持板17とによって台車1の自由な移動が阻止される。
【0016】
<8>昇降板の押し上げ
つぎに昇降スクリュー15を伸長してジャッキ架台2の全体を押し上げ、昇降板23の上面を地中梁Bの下面に押し当てる。
昇降板23の上面には弾性マット23aを位置しているから、地中梁Bの下面に多少の凹凸があっても吸収することができる。
この押し上げに際しては加圧状態で押し上げる必要はなく、単に弾性マット23aが地中梁Bの下面に接している状態であればよい。
【0017】
<9>新設鋼管の取り込み(図5)
台車1の内部、すなわちジャッキ21の直下に、新設杭Pを構成する鋼管を取り込む。
この取り込みは人力により、あるいはフォークリフトの先端に簡易な把持具を取り付けるような方法で行うことができる。
台車1の下側の床梁14の一部を切断しておけば、その間隔からの取り込みが容易となる。
取り込む新設杭Pである鋼管は、その長さが、短縮した状態のジャッキ21のシリンダ下面から、作業床面の間隔よりも多少短い寸法に形成したものである。
【0018】
<10>鋼管の圧入(図6)
その状態で圧入ジャッキ21を伸長する。
すると圧入ジャッキ21のシリンダ21a部分が、ジャッキ架台2のジャッキ搭載板22の貫通孔から下向きに露出してくる。
このジャッキ21の伸長によって、新設杭Pである鋼管を徐々に地中に圧入することができる。
その際に、ジャッキ架台2の上に位置する昇降板23の上面が、地中梁Bに接しているので、新設杭P圧入の反力は地中梁Bから取ることができ、台車1には圧入のための力はまったく作用しない。
【0019】
<11>鋼管の接続
ジャッキ21の伸長長さは、1本の鋼管Pを長さより短いので、鋼管Pの上部とジャッキ21のシリンダ下面との間に、例えば単筒状のスペーサーを複数個介在させ、そのスペーサーを順次盛りかえて加圧する。
1本の鋼管Pの長さだけ圧入したら、スペーサーを除去し、次の鋼管Pの下端を、圧入した鋼管Pの上端に溶接して上記と同様の作業を繰り返す。
このようにスペーサーを介在させて圧入する方法は公知である。
【0020】
<12>装置の移動
所定の位置での圧入が終わったら、ジャッキ21を短縮して昇降板23を地中梁Bの下面から離し、台車1を次の圧入位置まで移動する。
そのように、1か所での作業の開始時にも終了時にも、足場の設置や解体作業、ジャッキ21の取り付けや取り外し作業というものが一切発生しないので、きわめて効率のよく作業を継続することができる。
【符号の説明】
【0021】
A:圧入装置
B:地中梁
C:基礎杭
D:地下空間
P:新設杭(鋼管)
1:台車
11:支柱
12:天井梁
13:床梁
2:ジャッキ架台
21:圧入ジャッキ
22:ジャッキ搭載板
23:昇降板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪付きの台車と、
台車の最上部に設置したジャッキ架台と、
ジャッキ架台に設置した、鉛直方向に伸縮する圧入ジャッキと、ジャッキ架台を上下方向に移動する架台上下動スクリューと、
台車の位置を固定する固定スクリューとより構成したことを特徴とした、
杭の圧入装置。
【請求項2】
ジャッキ架台は、
台車の支柱の上部の天井梁を挟む状態で、
天井梁の上に位置するジャッキ搭載板と、
天井梁の下に位置する昇降板とよりなり、
両者を鉛直ボルトで連結して構成し、
ジャッキ搭載板は、搭載板に開口した貫通孔からジャッキのシリンダだけが下向きに出入りする板体である、
請求項1記載の杭の圧入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−197657(P2012−197657A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64201(P2011−64201)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(502143319)株式会社あけぼの産業 (2)
【Fターム(参考)】