説明

杭の継手金具

【課題】 無溶接継手であって、安価に、締付ジャッキ等を必要とせずに容易に取付けることができる継手金具を提供する。
【解決手段】 上下杭の端板に係着する凹溝を内周に備え、円周を複数に分割した円筒形の継手リング10(10a,10b)の肉厚内に切線方向に設けたねじボルト15で連結する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、杭の継手金具に関し、直径250〜2000mmに及ぶコンクリート杭又は鋼管杭の上下杭を無溶接で結合する杭の継手金具に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明者らは現場における杭の接合に当り、無溶接で接合する継手構造を開発し提供している。これらは例えば、特開平7−189245号公報などに開示されているもので、図5にその構造を示した。上杭1aの下端に端板2aを設け、下杭1bの上端に端板2bを設け、その外周の肩部に円錐斜面を設け、この円錐斜面に側壁が当接する内径凹溝を有する円周複数分割された内リング3を前記端板に外嵌し、この内リングの外周の円錐テーパに外嵌する内面テーパを有する外リング4を杭軸方向に押圧外嵌して上下の杭を一体化するものである。
【0003】このような杭の継手構造は現場溶接を不要とし、熟練溶接工を必要とせず、施工時の天候にも支配されないばかりでなく、剛性に富み、信頼性の高い継手であるなどの多くの利点を有するもので、賞用されている。これらの無溶接継手構造は、耐力性も大きく優れているが、やや高級であり、コスト面でも高価であり、また現場施工に当って締付ジャッキを必要とするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上の観点から杭の継手金物を内リングと外リングの2重にするのではなく、1重のリングで結合することが考えられる。このとき1重リングの円周を複数に分割し、その分割部に耳を取付け、この耳をボルトナットで綴じる形式がもっとも簡単である。しかし、このような構造は、杭の外径より耳が外方に突出するので、杭打ちの際打込み抵抗が高くなるばかりでなく、地中壁面を大きく削りとるので、杭外面の摩擦力の回復が遅れ、また摩擦力が低下し支持力が低下する問題がある。
【0005】本発明は、このような実情に鑑み、基本的には無溶接継手であって、継手部の精度や強度を余り要求しない場合に、杭の継手を余り高級な継手ではなく、安価に、かつ締付ジャッキ等を必要とせずに容易に取付けることができる継手金具を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような観点から開発されたもので、無溶接継手リングを1重にし、かつその肉厚内に接続具を組み込んだ継手金物を提供する。その技術手段は、上下杭の接合端部外周に設けた環状突条又は環状凹溝に係合する内周凹溝又は内周突条を有する円筒形リングであって、円周を複数に分割し、分割部を連結するねじボルトを円筒形リングの肉厚内に切線方向に設けたことを特徴とする杭の継手金具である。
【0007】
【発明の実施の形態】図5に、本発明者らが既に開示している無溶接継手構造の一例を示した。上記従来の無溶接継手構造は内リング3と外リング4とから形成されており、内リング3は上下の杭1a、1bの端部の端板に円周凹溝又は円周突条が係止して上下杭1a、1bを連結し、外リング4がこの内リング3を締めつけて保持するようになっている。この内リング3と外リング4の締付一体化は両リングの内外面の円錐テーパによるもので内外リング3、4を杭軸方向に相対的に移動させて締め上げる。そのためジャッキ装置を必要とする。
【0008】これに対して本発明は上記従来技術における内リングに相当する円筒形リング金物を直接締めつけるものである。この場合、この円錐形リング金物に外方に突出した耳を形成してこの耳をボルト等で締めつければ締め付けは簡単であるが、耳が杭の外方に突出し、杭打ちに悪影響を与えるので好ましくない。そこで本発明では、このリングの肉厚内に連結用ボルトが収まるように形成した。なお、このボルトはリングの肉厚寸法内に納まるのであれば、リングの杭軸方向に突出部を設けてこの突出部を綴じる構造を排除するものではない。
【0009】
【実施例】次に本発明の実施例を図面に基いて説明する。図1〜4は本発明の実施例を示すもので、図1は円筒形リング金物のボルト結合部の部分横断面図(図2のA−A矢視図)、図2は側面図、図3は図2のB−B矢視図、図4は杭との係合を示す杭の部分断面図である。
【0010】図1に示すように、円筒形リング金物10を形成するセグメント10a,10bは切線方向締付ボルト15によって締めつけられる。セグメント10aにはこのボルト15が螺入する雌ねじ11が設けられており、セグメント10bにはボルト挿通孔14及びボルト頭を収納する座ぐり12が設けられている。ボルト15はこの例では4本であるが杭の大きさ、円筒形リング金物の寸法、締付力、その他に応じて適正な数量とする。図示の例は、杭径450mmφに対応するもので、杭の端部端板外径450mmφ、端板厚16mmで、円筒形リング金物10(10a、10b)は2つの割りで外径494mm,肉厚22mm、リング幅100mm、ボルト10mmφ×4本である。
【0011】
【発明の効果】本発明によれば、杭の接続部の構造として溶接を用いることなく、また、突起となる耳やフランジを設けることなく、さらにジャッキ等を必要とすることなく、容易に杭を連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の円筒リング金物の部分横断面図である。
【図2】実施例の円筒リング金物の部分側面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】実施例の継手構造の使用状態を示す縦断面図である。
【図5】従来の無溶接継手構造の縦断面図である。
【符号の説明】
1a、1b 杭
2a、2b 端板
3 内リング
4 外リング
10 円筒形リング
10a、10b セグメント
11 雌ねじ
12 座ぐり
14 挿通孔
15 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上下杭の接合端部外周に設けた環状突条又は環状凹溝に係合する内周凹溝又は内周突条を有する円筒形リングであって、円周を複数に分割し、該分割部を連結するねじボルトを該円筒形リングの肉厚内に切線方向に設けたことを特徴とする杭の継手金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平9−143987
【公開日】平成9年(1997)6月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−308779
【出願日】平成7年(1995)11月28日
【出願人】(591082362)シントク工業株式会社 (14)
【出願人】(000207355)大同コンクリート工業株式会社 (7)
【出願人】(591197699)日本高圧コンクリート株式会社 (20)
【出願人】(000201504)前田製管株式会社 (35)