説明

杭打機の安定度測定装置及び方法

【課題】実際の作業状態の杭打機を使用して正確な安定度を容易に求めることができる杭打機の安定度測定装置及び方法を提供する。
【解決手段】フロントジャッキ及びリアジャッキを作動させて杭打機を第1の傾斜角度で浮かせたときに各ジャッキに加わる第1の荷重と、前記フロントジャッキ及びリアジャッキを作動させて杭打機を第2の傾斜角度で浮かせたときに各ジャッキに加わる第2の荷重とを求め、前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度と、前記第1の荷重及び前記第2の荷重とに基づいて杭打機の重心位置を算出し、算出した重心位置と下部走行体の寸法とから杭打機の安定度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機の安定度測定装置及び方法に関し、特に、重心位置が高い大型杭打機の安定度を実際の杭打機を使用して測定することができる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機は、法令によって安定度が5度を満足することが義務づけられているが、全高が30mを超える大型の杭打機では、転倒角を実測するのは危険であるから、計算で求めることが認められている。
【0003】
一方、各種建設機械の姿勢安定度を算出する装置として、例えば油圧ショベルの場合、アームやバケットを含むフロント機構を作動させる油圧シリンダのボトム圧力及び油圧シリンダの角度をそれぞれ検出するとともに、フロント機構の総重量、下部走行体の重量及び重心位置、上部旋回体の重量及び重心位置、転倒支点位置などの各種情報から姿勢安定度を算出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−105155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような油圧ショベルや油圧クレーンの場合は、これらの装置全体がメーカーで製作された状態で使用されるため、前述の重量や重心位置が変化することはほとんどなく、姿勢安定度を正確に計算することは可能であるが、杭打機の場合は、施工条件や施工方法によってリーダ長、掘削装置、発電機架台などの杭打機に装着する装置が異なるため、施工条件などに応じて杭打機の重量や重心位置も当然に異なってくる。
【0006】
このため、油圧ショベルや油圧クレーンのようにして安定度を簡単に算出することはできず、施工条件や施工方法が変わるたびに、そのときの条件で杭打機に装着する各種装置の重量及び重心位置を含めた状態でメーカーが安定度を計算する必要があり、メーカーにとって大きな負担となっていた。
【0007】
そこで本発明は、実際の作業状態の杭打機を使用して正確な安定度を容易に測定することができる杭打機の安定度測定装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機の安定度測定装置は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に搭載し、該上部旋回体の前部にリーダを起伏可能に設けるとともに、前記上部旋回体の前方に一対のフロントジャッキを、後方に一対のリアジャッキをそれぞれ備えた杭打機の安定度測定装置であって、前記杭打機の傾斜角度を検出する角度計と、前記フロントジャッキ及び前記リアジャッキを作動させて杭打機を浮かせたときに各ジャッキに加わる荷重をそれぞれ検出する荷重検出手段と、前記角度計で検出した杭打機の角度及び前記荷重検出手段で検出した各ジャッキに加わる荷重から杭打機の重心位置を算出する演算手段とを備え、該演算手段は、前記杭打機を第1の傾斜角度で浮かせたときの各ジャッキに加わる第1の荷重と、前記杭打機を第2の傾斜角度で浮かせたときの各ジャッキに加わる第2の荷重と、前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度との関係から前記重心位置を算出し、算出した重心位置と前記下部走行体の寸法とから前記杭打機の安定度を算出する演算部を有していることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の杭打機の安定度測定装置は、前記演算手段が、前記フロントジャッキ及び前記リアジャッキを伸縮させる油圧回路に設けられた各ジャッキに対応する制御弁を操作して各ジャッキを作動させるジャッキ制御部と、前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度があらかじめ設定された傾斜角度設定部と、前記荷重検出手段で検出した前記第1の荷重及び前記第2の荷重を記憶するデータ記憶部とを備え、前記各ジャッキを作動させて杭打機を浮かせたときに、前記ジャッキ制御部は、各ジャッキを作動させて前記角度計で検出した杭打機の角度をあらかじめ設定された前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度とし、前記データ記憶部は、角度計で検出した杭打機の角度が第1の傾斜角度となったときに各ジャッキに加わる前記第1の荷重を記憶するとともに、前記角度計で検出した杭打機の角度が第2の傾斜角度となったときに各ジャッキに加わる前記第2の荷重を記憶し、前記演算部は、前記データ記憶部が記憶した前記第1の荷重及び前記第2の荷重と前記傾斜角度設定部に設定された前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度とから前記重心位置を算出することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の杭打機の安定度測定方法は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に搭載し、該上部旋回体の前部にリーダを起伏可能に設けるとともに、前記上部旋回体の前方に一対のフロントジャッキを、後方に一対のリアジャッキをそれぞれ備えた杭打機の安定度を検出する方法であって、前記フロントジャッキ及びリアジャッキを作動させて杭打機を第1の傾斜角度で浮かせたときに各ジャッキに加わる第1の荷重と、前記フロントジャッキ及びリアジャッキを作動させて杭打機を第2の傾斜角度で浮かせたときに各ジャッキに加わる第2の荷重とを求め、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度との角度差と、前記第1の荷重と前記第2の荷重との荷重差とから前記杭打機の重心位置を算出し、算出した重心位置と前記下部走行体の寸法とから前記杭打機の安定度を算出することを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の杭打機の安定度測定方法は、前記荷重を前記ジャッキに作用する油圧を検出して求めること、前記第1の傾斜角度が前記杭打機を水平に浮かせた状態であること、前記第2の傾斜角度が水平面に対して前記杭打機の前方を高く傾斜させた状態であることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の杭打機の安定度測定方法は、前記杭打機を水平に浮かせた状態で各ジャッキに加わる第1の荷重に基づいて杭打機の重量を算出する第1段階と、算出した前記重量と、両フロントジャッキに加わる第1の荷重の合計と、杭打機中心からフロントジャッキまでの距離と、杭打機中心からリアジャッキまでの距離とから、杭打機を水平状態で浮かせたときの杭打機前後方向における第1の重心線位置を算出する第2段階と、水平面に対して前記杭打機の前方を高く傾斜させた状態で両フロントジャッキに加わる第2の荷重の合計と、フロントジャッキとリアジャッキとの距離と、前記算出した前記重量とから、杭打機の前方を高く傾斜させて浮かせたときの杭打機前後方向における第2の重心線位置を算出する第3段階と、前記第2段階で算出した第1の重心線位置と前記第3段階で算出した第2の重心線位置との交点の位置を算出し、該交点の位置を前記重心位置とする第4段階とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各種装置を装着した実際の作業状態の杭打機を使用して、その杭打機の正確な安定度を容易に求めることができる。したがって、作業現場によって施工条件や施工方法が変化し、杭打機に装着する装置が異なっても、作業現場で各ジャッキの荷重と傾斜角度とを検出するだけで、その杭打機の安定度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】杭打機の安定度を説明するための杭打機の側面図である。
【図2】杭打機の安定度を説明するための杭打機の正面図である。
【図3】杭打機を水平に浮かせた状態を示す側面図である。
【図4】杭打機を水平に浮かせた状態を示す正面図である。
【図5】杭打機の前方を高く傾斜させて浮かせた状態を示す側面図である。
【図6】杭打機の重心位置を算出する説明図である。
【図7】安定度測定装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
杭打機11は、クローラ12を備えた下部走行体13と、該下部走行体13の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体14と、該上部旋回体14の前部に設けられたフロントブラケット14aに起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を上部旋回体14の後部から起伏可能に支持する左右一対のバックステー16と、前記上部旋回体14の前方左右に設けられた一対のフロントジャッキ17と、上部旋回体14の後方左右に設けられた一対のリアジャッキ18とを備えるもので、前記リーダ15には、各種作業装置、例えばオーガ19aを駆動するオーガ駆動装置19がリーダ15に沿って昇降可能に設けられ、リーダ15の頂部にはワイヤーロープ20aが掛け回されるトップシーブブロック20が設けられている。
【0016】
このような杭打機11は、前後方向中心より前方に配置されるリーダ15やオーガ駆動装置19などの重量の関係から、杭打機11の重心Gの水平方向の位置は、杭打機前後方向中心線Oから杭打機前方に向かって水平距離Lの位置にあり、鉛直方向の位置は、上部旋回体14より上方の位置にある。また、杭打機左右方向の重心位置は、一般的に杭打機左右方向中心付近にある。したがって、杭打機11の前方への転倒角度θ1は、前方転倒支点となるクローラ12の接地部前端12aと重心Gとを結ぶ直線K1と重心Gを通る鉛直線である重心線GLとの交差角度となり、杭打機11の後方への転倒角度θ2は、後方転倒支点となるクローラ12の接地部後端12bと重心Gとを結ぶ直線K2と前記重心線GLとの交差角度となる。同様に、杭打機11の側方への転倒角度θ3は、側方転倒支点となるクローラ12の接地部中心12cと重心Gとを結ぶ直線K3と前記重心線GLとの交差角度となる。
【0017】
これらの転倒角度θ1,θ2,θ3のすべてが5度以上であれば法令で規定された安定度を満足することになる。通常は、杭打機11の前方への転倒角度θ1が最も小さな角度となるため、前方への転倒角度θ1が5度未満であれば、安定度が不足していると判定できる。
【0018】
前記安定度を計算によって求める際には、オーガ駆動装置19などの各種装置を装着した状態の杭打機11における重心Gの位置(前後方向及び高さ)を求める必要がある。以下、図3乃至図7を参照しながら重心Gの位置を算出する手順の一例を説明する。
【0019】
まず、本形態例に示す杭打機11に設けられた安定度測定装置には、図7に示すように、杭打機11の傾斜角度を検出する角度計21と、各ジャッキ17,18に加わる荷重をそれぞれ検出する荷重検出手段と、前記角度計21で検出した杭打機の角度と、前記荷重検出手段で検出した各荷重とから杭打機11の重心位置を算出して安定度を測定するための演算手段22とが設けられている。
【0020】
荷重検出手段としては、前記フロントジャッキ17及び前記リアジャッキ18を作動させて杭打機11を浮かせたときに、各ジャッキ17,18に加わる荷重をそれぞれ検出するため、各ジャッキシリンダ17a,18aの伸び側に、前方左側の圧力センサ17L,前方右側の圧力センサ17R,後方左側の圧力センサ18L,後方右側の圧力センサ18Rをそれぞれ設けている。
【0021】
前記演算手段22は、演算部、ジャッキ制御部、傾斜角度設定部及び記憶部を備えており、ジャッキ制御部は、各ジャッキ17,18を伸縮作動させる油圧回路に設けられた各制御弁(ソレノイドバルブ)23FL,23FR,23RL,23RRを信号回路24を介してそれぞれ制御し、傾斜角度設定部にあらかじめ設定された角度あるいは傾斜角度設定部にその都度入力されて設定された角度に杭打機11を保持する。
【0022】
また、記憶部には、検出した荷重データや、安定度を測定するために必要な各種データを記憶するデータ記憶部が設けられている。各種データとしては、例えば、下部走行体13の寸法(各転倒支点の位置)、杭打機11の寸法上の中心位置(杭打機中心O)や、杭打機11における各ジャッキ17,18の位置として、杭打機中心Oからフロントジャッキまでの距離D、杭打機中心Oからリアジャッキまでの距離Eなどが記憶されている。
【0023】
そして、演算部では、設定した角度及び検出した荷重と、前記データ記憶部から読み込んだ各種データとに基づいて演算処理を行い、測定対象となった杭打機11の安定度を測定する。以下、杭打機における安定度を算出する手順を説明する。
【0024】
まず、図3及び図4に示すように、施工条件などに応じて各種装置を装着した状態の杭打機11を水平かつ堅固な設置面Jに設置し、また、昇降する機器は重心位置が最も高くなる位置に上昇させた状態で、演算手段22から信号回路24に各ジャッキ17,18を伸長させる信号を出力し、各ソレノイドバルブ23FL,23FR,23RL,23RRを伸長側に切り替えて各ジャッキ17,18を伸長させ、杭打機11をあらかじめ設定した浮かせ距離Fだけ浮かせた状態とする。このとき、角度計21からの信号に応じて各ソレノイドバルブ23FL,23FR,23RL,23RRを制御することにより、杭打機11を第1の傾斜角度である水平(傾斜角度=0度)に保持する。
【0025】
このときの各圧力センサ17L,17R,18L,18Rからの信号を荷重(反力)にそれぞれ換算し、得られた各荷重R1(前方左荷重),R2(前方右側荷重),R3(後方左側荷重),R4(後方右側荷重)を合計することにより、第1の荷重として杭打機11の重量、すなわち、施工条件などに応じて各種装置を装着した杭打機全体の重量Wを求めることができる(第1段階)。
【0026】
W = R1+R2+R3+R4
【0027】
また、得られた重量Wと、前方に位置する両ジャッキ17のそれぞれの荷重R1,R2の合計と、杭打機中心Oから前後各ジャッキ17,18までの距離D,Eとから、次式により、水平時の重心線GL1の位置、この場合は、杭打機中心Oを通る鉛直線から重心線GL1までの水平距離Lを求めることができる(第2段階)。基準となる鉛直線は、重心線GL1の前後方向の位置を特定できれば、前述の杭打機中心Oを通る鉛直線の他、任意の鉛直線を基準とすることができる。
【0028】
L = (R1+R2)×(D+E)/W−E
【0029】
次に、図5に示すように、前方に位置する両ジャッキ17を伸長させることにより、設置面Jに対して杭打機11の前方を高く傾斜させ、前記第1の傾斜角度とは異なる第2の傾斜角度(傾斜角度=θ)の状態とする。この第2の傾斜角度θは、杭打機11が後方に転倒しない範囲に任意に設定することができ、傾斜角度θが大きくなるほど安定度の算出精度は向上するが、予期せぬ転倒の危険を排除するため、後方への転倒角度θ2の予想角度より小さい角度、例えば、2〜7度、通常は5度程度に設定することが好ましい。杭打機11の傾斜状態は、前記角度計21からの信号に応じて各ソレノイドバルブ23FL,23FR,23RL,23RRを制御することにより、設定した傾斜角度θに容易かつ確実に設定して保持することができる。
【0030】
この傾斜状態で、各ジャッキ17,18に加わる荷重(第2の荷重)のうち、両フロントジャッキに加わる荷重R1a,R2aの合計と、前述の杭打機11の重量Wと、杭打機中心Oから前後各ジャッキ17,18までの距離D,Eとから、次式により、傾斜時の重心線GL2の位置、この場合は、杭打機11の後傾支点(リアジャッキ18の接地点)を通る鉛直線から重心線GL2までの水平距離Sを求めることができる(第3段階)。フロントジャッキに加わる荷重R1a,R2aに代えて、リアジャッキに加わる荷重を用いても前記水平距離Sを求めることが可能であり、基準となる鉛直線は、前記同様に、重心線GL2の前後方向の位置を特定できれば任意の鉛直線を基準とすることが可能である。
【0031】
S = (R1a+R2a)×(D+E)/W
【0032】
このようにして求めた2本の重心線GL1,GL2は、いずれも杭打機11の重心Gを通る直線であるから、図6に示すように、水平時において杭打機中心Oを通る鉛直線から水平距離Lの位置にある水平時の重心線GL1と、傾斜時において杭打機11の後傾支点を通る鉛直線から水平距離Sの位置にある傾斜時の重心線GL2との交点が杭打機11の重心Gの位置となる。この重心Gの高さHは、次式にて求めた浮き上がり時における重心高さTから前記浮かせ距離Fを差し引いた値となる。
【0033】
T = (L+E−S/cosθ)/tanθ
H = T−F
【0034】
重心Gの水平方向の位置は水平時の重心線GL1上の点であることから、このようにした高さHを算出することにより、杭打機11における重心Wの位置を正確に求めることができる。そして、求めた重心Wの位置と、前述の前方転倒支点となるクローラ12の接地部前端12a、後方転倒支点となるクローラ12の接地部後端12b、側方転倒支点となるクローラ12の接地部中心12cのそれぞれとを結ぶ各直線K1,K2,K3を求め、求めた各直線K1,K2,K3と、重心Wを通る鉛直線である重心線GLとの交差角度を次式によりそれぞれ算出して転倒角度θ1,θ2,θ3をそれぞれ求め、転倒角度θ1,θ2,θ3のすべてが5度以上であれば法令で規定された安定度を満足することになる。
【0035】
θ1 = tan−1((A−L)/H)
θ2 = tan−1((B+L)/H)
θ3 = tan−1(C/H)
【0036】
このように、必要な装置をすべて装着した状態で前後の各ジャッキ17,18を操作し、傾斜角度が異なる二つの状態で各圧力センサ17L,17R,18L,18Rでそれぞれ測定した各ジャッキ17,18の荷重と、角度計21で測定した杭打機11の角度とから、各装置を装着した状態での杭打機11の重心位置を計算で求めることができ、算出した重心位置と下部走行体13におけるクローラ12の接地部の寸法とから杭打機11の各方向の転倒角度、すなわち安定度を自動的に算出することができるので、実機における安定度を正確かつ短時間で判定することができる。
【0037】
また、上部旋回体14を任意の角度に旋回させた状態の安定度や、リーダ15を任意の角度に傾斜させた状態の安定度も前記同様にして測定することができる。さらに、本形態例で示すように、演算手段22に、角度計21及び各圧力センサ17L,17R,18L,18Rの検出信号を入力する信号回路を設けるとともに、各ソレノイドバルブ23FL,23FR,23RL,23RRをそれぞれ制御する信号回路24をあらかじめ設けておくことにより、各ジャッキ17,18の伸縮操作、角度及び荷重の読み込み、安定度の測定及び判定を連続して自動的に行うことができる。さらに、杭打機の角度を異なる3つ以上の角度に設定して安定度を測定することもでき、演算時には、必要に応じて適当な補正を行うこともできる。
【0038】
したがって、杭打機11の安定度を判定する際の作業性の向上や測定時間の短縮を図ることができ、杭打機11の使用者が各種装置を杭打機11に装着した時点で容易に安定度を確認することができ、さらに、安定度が不足した場合の対処も確実に行うことができるので、杭打ち作業の安全性をより確実に確保することができる。
【0039】
また、従来は、杭打機11に装着するオーガ駆動装置などの各装置の重量や重心位置をデータとして保存し、計算時にこれらのデータを読み込んで演算する必要があったが、各装置を装着した実際の杭打機11で安定度を測定することができるので、前記データの保存や管理も必要がなくなり、安定度の測定に必要な業務を大幅に低減することができる。
【0040】
なお、角度計、荷重検出手段及び演算手段は、前記形態例に限るものではなく、例えば角度計は杭打機と別体のものを杭打機の適宜な位置に設置して使用することもできる。荷重検出手段は、各ジャッキシリンダの伸び側と縮み側とに圧力センサをそれぞれ設けて差圧を検出するようにしたものであってもよく、各ジャッキの接地面と杭打機の設置面との間に設けたロードセルであってもよい。
【0041】
また、演算手段は、杭打機に組み込まれたものであってもよく、測定時に適宜なパソコンなどを演算手段として接続するようにしてもよい。さらに、各ジャッキの伸縮操作や角度計、圧力センサの検出値の読み込みをオペレーターが行い、適当な第1の角度及び第2の角度としたときに角度計で検出した角度や荷重検出手段荷重を演算手段に手入力して安定度を測定することもできる。さらに、各装置を装着した状態の全重量を測定することから、許容重量を超えているかどうかのチェックも可能であり、また、水平重心と全重量とから使用時の接地圧(平均及び局部)も算出することができる。
【符号の説明】
【0042】
11…杭打機、12…クローラ、12a…接地部前端、12b…接地部後端、12c…接地部中心、13…下部走行体、14…上部旋回体、14a…フロントブラケット、15…リーダ、16…バックステー、17…フロントジャッキ、17a…ジャッキシリンダ、17L,17R…圧力センサ、18…リアジャッキ、18a…ジャッキシリンダ、18L,18R…圧力センサ、19…オーガ駆動装置、19a…オーガ、20…トップシーブブロック、20a…ワイヤーロープ、21…角度計、22…演算手段、23FL,23FR,23RL,23RR…ソレノイドバルブ、24…信号回路、G…重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に搭載し、該上部旋回体の前部にリーダを起伏可能に設けるとともに、前記上部旋回体の前方に一対のフロントジャッキを、後方に一対のリアジャッキをそれぞれ備えた杭打機の安定度測定装置であって、前記杭打機の傾斜角度を検出する角度計と、前記フロントジャッキ及び前記リアジャッキを作動させて杭打機を浮かせたときに各ジャッキに加わる荷重をそれぞれ検出する荷重検出手段と、前記角度計で検出した杭打機の角度及び前記荷重検出手段で検出した各ジャッキに加わる荷重から杭打機の重心位置を算出する演算手段とを備え、該演算手段は、前記杭打機を第1の傾斜角度で浮かせたときの各ジャッキに加わる第1の荷重と、前記杭打機を第2の傾斜角度で浮かせたときの各ジャッキに加わる第2の荷重と、前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度との関係から前記重心位置を算出し、算出した重心位置と前記下部走行体の寸法とから前記杭打機の安定度を算出する演算部を有していることを特徴とする杭打機の安定度測定装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記フロントジャッキ及び前記リアジャッキを伸縮させる油圧回路に設けられた各ジャッキに対応する制御弁を操作して各ジャッキを作動させるジャッキ制御部と、前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度があらかじめ設定された傾斜角度設定部と、前記荷重検出手段で検出した前記第1の荷重及び前記第2の荷重を記憶するデータ記憶部とを備え、前記各ジャッキを作動させて杭打機を浮かせたときに、前記ジャッキ制御部は、各ジャッキを作動させて前記角度計で検出した杭打機の角度をあらかじめ設定された前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度とし、前記データ記憶部は、角度計で検出した杭打機の角度が第1の傾斜角度となったときに各ジャッキに加わる前記第1の荷重を記憶するとともに、前記角度計で検出した杭打機の角度が第2の傾斜角度となったときに各ジャッキに加わる前記第2の荷重を記憶し、前記演算部は、前記データ記憶部が記憶した前記第1の荷重及び前記第2の荷重と前記傾斜角度設定部に設定された前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度とから前記重心位置を算出することを特徴とする請求項1記載の杭打機の安定度測定装置。
【請求項3】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に搭載し、該上部旋回体の前部にリーダを起伏可能に設けるとともに、前記上部旋回体の前方に一対のフロントジャッキを、後方に一対のリアジャッキをそれぞれ備えた杭打機の安定度を検出する方法であって、前記フロントジャッキ及びリアジャッキを作動させて杭打機を第1の傾斜角度で浮かせたときに各ジャッキに加わる第1の荷重と、前記フロントジャッキ及びリアジャッキを作動させて杭打機を第2の傾斜角度で浮かせたときに各ジャッキに加わる第2の荷重とを求め、前記第1の荷重及び前記第2の荷重と、前記第1の傾斜角度及び前記第2の傾斜角度との関係から前記杭打機の重心位置を算出し、算出した重心位置と前記下部走行体の寸法とから前記杭打機の安定度を算出することを特徴とする杭打機の安定度測定方法。
【請求項4】
前記荷重は、前記ジャッキに作用する油圧を検出して求めることを特徴とする請求項3記載の杭打機の安定度測定方法。
【請求項5】
前記第1の傾斜角度は、前記杭打機を水平に浮かせた状態であることを特徴とする請求項3又は4記載の杭打機の安定度測定方法。
【請求項6】
前記第2の傾斜角度は、水平面に対して前記杭打機の前方を高く傾斜させた状態であることを特徴とする請求項5記載の杭打機の安定度測定方法。
【請求項7】
前記杭打機を水平に浮かせた状態で各ジャッキに加わる第1の荷重に基づいて杭打機の重量を算出する第1段階と、
算出した前記重量と、両フロントジャッキに加わる第1の荷重の合計と、杭打機中心からフロントジャッキまでの距離と、杭打機中心からリアジャッキまでの距離とから、杭打機を水平状態で浮かせたときの杭打機前後方向における第1の重心線位置を算出する第2段階と、
水平面に対して前記杭打機の前方を高く傾斜させた状態で両フロントジャッキに加わる第2の荷重の合計と、フロントジャッキとリアジャッキとの距離と、前記算出した前記重量とから、杭打機の前方を高く傾斜させて浮かせたときの杭打機前後方向における第2の重心線位置を算出する第3段階と、
前記第2段階で算出した第1の重心線位置と前記第3段階で算出した第2の重心線位置との交点の位置を算出し、該交点の位置を前記重心位置とする第4段階とを含むことを特徴とする請求項5記載の杭打機の安定度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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