説明

杭打機用深度測定装置

【課題】クレーンのブームの先端にオーガマシーンを支持固定した型式の杭打機へ簡単に装着することができ、貫入体の貫入深さ等を正確に測定できる安価な杭打機用深度測定装置を提供する。
【解決手段】ラフタークレーン又はトラッククレーンのブームの先端に軸支したオーガマシーンにより貫入体を回転させつつ土中へ貫入させる型式の杭打機に装備され、前記オーガマシーン前方の支持金具に固定する電動ウインチと、架台上にワイヤ巻取りリールとロータリエンコーダを配備して、先端部を前記電動ウインチの吊上げフックに固定して基端部を前記ロータリエンコーダの回転プーリによりワイヤを一定の張力状態で巻き取り可能にした計測用ワイヤとから成る深度計と、ロータリエンコーダから発信した計測用ワイヤの移動量に対応する距離情報信号が入力されて当該距離情報信号から貫入体の地中への貫入深さを演算表示するコンピュータを備えた制御部とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にラフタークレーン等を用いた杭打機において利用されるものであり、地中に掘削した杭孔の深さや地中杭の形成深さ、既製杭の圧入深さ等を連続的に計測する深度測定装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、アースオーガを用いて地中に既製杭を圧入するための杭孔を掘削する場合や、地中に杭孔を掘削し乍ら掘削土とセメントミルク等を混練しつつ地中杭を形成するような場合には、アースオーガ等による杭孔の掘削深さを連続的に計測すると共に、当該深さの計測値と予め土質調査等によって得られた土質柱状図とを対比し乍らセメントモルタルの注入量調整を行う等の作業管理が、一般に行われている。
【0003】
図4乃至図6は、特開2002−348868号等により開示されている従前の所謂ニーディング工法による地中杭の形成時に利用されている深度測定装置の一例を示すものである。当該深度測定装置は、深度計Aと制御部Bとから構成されている。また、前者の深度計Aは、杭打用リーダ1のトップシーブ2に設けたトッププーリ3とベースマシーン7のリーダ回転盤部8に設けたロータリエンコーダ9との間に、スプリング4aを介して計測用ワイヤ4をエンドレス状に掛け渡すと共に、当該計測用ワイヤ4をオーガマシンガイドギブ5aを固定することにより形成されていて、オーガマシン5の下降量(移動量)が計測用ワイヤ4を介してロータリエンコーダ9により読み取られ、距離(若しくは長さ寸法)情報Lとして図6に示す制御部Bへ出力される。
【0004】
前記制御部Bは、通常作業現場の近傍に設置されており、制御盤箱10の内部には、中継アンプユニット10a、コンピュータ10b及びプリンター10c等が備えられている。また、この制御部Bへは、前記ロータリエンコーダ9により計測した距離情報Lやオーガマシン駆動用モータの負荷電流計Pからの負荷電流情報I、アースオーガ6の先端から杭穴内へ供給するセメントミルクの流量計Sからの流量情報Q等が入力されており、更に電源は、発電機11等から供給されている。
尚、図4において、6aはアースオーガの攪拌羽根、6bは練付けドラム、6cは掘削・拡径刃である。
【0005】
上記図4乃至図6の深度測定装置は、永い使用実績のある装置であり、優れた実用的効用を備えたものである。
【0006】
しかし、当該深度測定装置にも解決すべき多くの問題が残されており、その中でも特に解決が急がれる問題は(イ)深度計Aのセッティングに手数が掛かり過ぎること及び(ロ)所謂杭打用リーダ1を用いる杭打工法や杭孔の掘削工法にしか適用することが出来ず、例えば、ラフタークレーン等を用い、当該ラフタクレーンのブームの先端にオーガマシーン5を直接支持してブーム先端に下方向への押圧力を加えることにより、アースオーガ6等を土中へ貫入させるようにした型式の杭打機には適用することが出来ないと云う問題がある。
【0007】
また、杭打用リーダ1の使用が必須要件となっているため、杭打位置の変更等の場合にリーダ回転盤部8の旋回やベースマシーン7自体の旋回に時間が掛かり、作業能率の大幅な向上を図り難いうえ、オーガマシーン5等の自重のみによって掘削を行わねばならないため、固い地盤の場合には掘削スピードが極端に低下する等の問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−348868号公報
【特許文献2】特開2001−153638号公報
【特許文献3】特開2002−317594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従前のこの種杭打用リーダを用いる型式の杭打機の深度測定装置における上述の如き問題、即ち、(イ)計測用ワイヤ4をリーダーのトッププーリ3とロータリエンコーダ9間に巻き掛けするのに手数が掛かり、深度計Aを簡単に装着することができないこと、(ロ)杭打用リーダを使用しないラフタークレーン等を用いた杭打機へは適用できないこと及び(ハ)固い地盤等の場合には掘削スピードを上げることが困難なこと等の問題を解決せんとするものであり、ラフタークレーン等を用いた杭打機へも極く簡単に装着することができると共に、地中杭孔の掘削スピードの大幅な上昇が図れ、しかも杭打位置の変更等も迅速且つ簡単にできるようにした杭打機用深度測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ラフタークレーン又はトラッククレーンのブームの先端に前後方向へ揺動自在に軸支したオーガマシーンにより貫入体を回転させつつ土中へ貫入させる型式の杭打機に装備され、前記オーガマシーンより前方へ突設した支持金具に固定する電動ウインチと、架台上にワイヤ巻取りリールとロータリエンコーダを配備して成り、前記電動ウインチの下方の地上に設置する深度計本体と、先端部を前記電動ウインチの吊上げフックに固定すると共に基端部を前記ロータリエンコーダの回転プーリを通して前記ワイヤ巻取りリールへ所定の張力を付加した状態で巻き取り可能に固定した計測用ワイヤとから成る深度計と、前記深度計本体のロータリエンコーダから発信した計測用ワイヤの移動量に対応する距離情報信号が入力され、当該距離情報信号から貫入体の地中への貫入深さを演算表示するコンピュータを備えた制御部とから構成したことを発明の基本構成とするものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において貫入体をアースオーガ又は既製杭としたものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、制御部を、アースオーガの駆動用モータの負荷電流情報及び杭孔内へ供給する土壌固化剤の流量情報が入力される制御部としたものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、制御部を、計測した深度を無線信号に変換して発信する信号変換ユニットを備えたものとしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、ワイヤ巻取りリールから繰り出した1本の計測用ワイヤの先端をオーガマシーンに着脱自在に吊下げ固定した電動ウインチへ係合固定するだけで計測用ワイヤをセッティングすることができ、計測用ワイヤの装着や脱離を極く簡単にしかも地上で安全に行える。
【0015】
また、本発明においては、杭孔の掘削位置を変更する場合でも、電動ウインチの吊下げフックを遠隔操作によって下降させることにより、地上で安全に計測用ワイヤの先端を杭打機本体より取り外すことができる。
その結果、ラフタークレーン等の操作特性を十分に活用した杭孔の掘削や地中杭の形成を高能率で行うことが可能となり、特に狭い場所での杭打工事等においては、優れた実用的効用が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明に係る深度測定装置の全体構成を示す系統図であり、図2は深度測定装置の側面概要図、図3は深度計本体の平面概要図である。図1乃至図3において4は計測用ワイヤー、5はオーガマシーン、6はアースオーガ、9はロータリエンコーダ、10b・10b′はコンピュータ、10dは信号変換ユニット、11は発電機、13はブーム、13aはブーム先端金具、14は支軸、15は支持金具、16は電動ウインチ、16aは吊下げフック、17はプーリ、18はワイヤ巻取りリール、19は深度計架台、20は深度計本体、21は流量計ユニット、22は電流計ユニット、23a・23bはアンテナユニットである。
【0017】
図1を参照して、本発明に係る深度測定装置DMは深度計Aと制御部Bとから形成されている。
また深度計Aは、深度計架台19とその上に配設したプーリ17、ワイヤ巻取りリール18、ロータリエンコーダ9等から成る深度計本体20と、測定用ワイヤ4と電動ウインチ16等から構成されている。
更に、前記制御部Bは、制御盤箱10とその内部に格納した中継アンプユニット10a、コンピュータ10b、プリンター10c及び信号変換ユニット10d等から構成されている。
【0018】
前記ラフタークレーン12のブーム先端金具13aには、オーガマシーン5の上端部が支持軸14を介して前後方向へ揺動自在に軸支されている。
また、オーガマシーン5の正面側には支持金具15が前方へ向けて突設されており、その先端に電動ウインチ16の上部が支持固定されている。
【0019】
尚、地中へ貫入させるアースオーガ6は、前記オーガマシーン5の下方へ挿着されており、オーガマシーンの駆動用モータ(図示省略)により回転駆動されると共に、ブーム13の先端を下方へ押圧することにより、オーガマシーン5及びアースオーガ6が地中へ押込まれる。
又、本実施形態ではアースオーガ6を地中への貫入体としているが、既製杭を貫入体とすることも勿論可能である。
【0020】
前記測定用ワイヤ4の先端は、図2に示すように電動ウインチ16の吊下げワイヤ(図示省略)の先端に固定したフック16aへ係合されており、電動ウインチ16を作動させることにより、後述するワイヤ巻取りリール18から測定用ワイヤ4がロータリエンコーダ9及びプーリ17を介して繰り出され、フック16aによって所定の設定位置まで引上げられる。
【0021】
前記深度計Aの主要部を形成する深度計本体20は、深度計架台19の上方にワイヤー巻取りリール18とロータリエンコーダ9とプーリ17を配置することにより形成されており、前記ワイヤ巻取りリール18から繰り出された測定用ワイヤ4は、プーリ17aロータリエンコーダ9の回転プーリ9aを挿通したあと、プーリ17bを経てプーリ17cにより水平姿勢から垂直姿勢に変換され、上方へ向けて延伸される。
尚、ワイヤ巻取りリール18には、測定用ワイヤ4に巻込み方向の張力を常時付与する機構が設けられており、これによって測定用ワイヤ4には所定の大きさの引張り力が常時加えられている。
【0022】
前記ロータリエンコーダ9は、公知のロータリエンコーダと同一のものであり、外径4mmφのステンレス鋼がその移動によって回転プーリ9aを回転させることにより、感知機構部(図示省略)から測定用ワイヤ4の移動距離に対応した距離情報Lが制御部Bの中継アンプユニット10aへ出力される。
【0023】
前記流量計ユニット21は、アースオーガ6の中心部を通して掘削された杭孔内へ供給されるセメントモルタル等の土壌固化剤の流量を計測するものであり、流量情報信号Qは制御部Bの中継アンプユニット10aへ入力される。
【0024】
前記電流計ユニット22は、オーガマシーン5の駆動用モータの負荷電流情報Iを出力するものであり、当該負荷電流情報Iの変化と深度とから、土壌の固さ等の地質が判定若しくは把握される。
【0025】
前記制御部Bは、制御盤箱10内に収納した中継アンプユニット10aとコンピュータ10bとプリンター10c等の表示装置から形成されており、掘削中の杭孔の深さ(深度)や既製杭の貫入深さを表示することは勿論のこと、ロータリエンコーダ9からの距離情報(深度計測値)Lと電流情報Iとから、地質に関する情報等を表示する。
【0026】
次に、本発明に係る深度測定装置DMの作動について説明する。
図1を参照して、先ず、ラフタークレーン12のブーム先端金具13aへオーガマシーン5を支持軸14を介して取り付けると共に、これに所定寸法のアースオーガ6等の貫入体を装着する。次に、貫入体(アースオーガ6)の先端を地面上の所定位置へ接当させると共に、セメントミルク等の土壌固化剤の供給管の接続等を行い、杭孔の掘削準備を完了する。
【0027】
その後、電動ウインチ16を遠隔操作によって作動させ、その吊上フック16aを下降させると共に、これに測定用ワイヤ4の先端を固定する。そして、電動ウインチ16を再起動させて、吊上フック16aを所定位置(最上方位置)まで上昇させる。
更に、吊上フック16aが所定位置まで上昇すると、ワイヤー巻取りリール18を作動状態にセットし、測定用ワイヤ4に所定の張力を与えると共にロータリエンコーダ9をリセットし、距離情報Lの出力値を零にセッティングする。
【0028】
以上の操作により、深度測定装置のセッティングが完了する。その後オーガマシーン5が駆動され、ブーム13の伸縮操作と傾動操作とを組み合せることにより、アースオーガ6が順次地中へ貫入されて行く。
また、アースオーガ6が地中へ貫入するにつれてオーガマシーン5も下降する。その結果、測定用ワイヤ4もオーガマシーン5の下降距離に相当する長さ寸法だけワイヤ巻取りリール18に巻き取られる。これにより、ロータリエンコーダ9の回転プーリ9aを挿通する測定ワイヤ4が距離L分だけ移動することになり、ロータリエンコーダ9から前記移動距離L、即ち、杭孔の掘削深さに相当する距離情報Lが、制御部Bの中継アンプユニット10aへ入力される。距離情報Lがコンピュータ10bに取り込まれると、杭孔深度やその他の必要な地質情報が、コンピュータ10bにおいて演算され、表示装置やプリンターに出力される。
【0029】
また、コンピュータ10bから信号変換ユニット10dを介して、必要な信号が無線信号として発信され、制御部Bから離れた位置に設けた別のコンピュータ10b′へ必要情報が伝達される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ラフタークレーンやトラッククレーンを用いた杭打機のみならず、リーダを用いる杭打機等へも適用することができる。
また、本発明は杭孔の掘削や地中杭の形成時の深度測定のみならず、既製杭の圧入若しくは押込み深さの測定等にも利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る杭打機用深度測定装置の実施形態を示す全体系統図である。
【図2】深度測定装置の側面概要図である。
【図3】深度計本体の部分の平面概要図である。
【図4】従前のリーダ型杭打機用の深度測定装置の取付け状態を示す側面概要図である。
【図5】図4の深度測定装置の要部を拡大した側面概要図である。
【図6】従前の深度測定装置の制御部の系統図である。
【符号の説明】
【0032】
DM 深度測定装置
A 深度計
B 制御部
L ロータリエンコーダからの距離情報
I オーガマシーン駆動用モータの負荷電流情報
Q セメントミルク等の土壌固化剤の流量情報
1 杭打用リーダ
4 計測用ワイヤ
4a スプリング
5 オーガマシーン
6 アースオーガ
6a 攪拌羽根
6b 練付けドラム
6c 掘削・拡径刃
7 ベースマシーン
8 リーダ回転盤部
9 ロータリエンコーダ
10 制御盤箱
10a 中継アンプユニット
10b コンピュータ
10c プリンタ
11 発電機
12 ラフタクレーン又はトラッククレーン
13 クレーンブーム
13a ブーム先端金具
14 支持軸
15 支持金具
16 電動ウインチ
16a フック
17 プーリ
18 ワイヤリール
19 深度計架台
20 深度計本体
21 流量計ユニット
22 電流計ユニット
23a・23b アンテナユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフタークレーン又はトラッククレーンのブームの先端に前後方向へ揺動自在に軸支したオーガマシーンにより貫入体を回転させつつ土中へ貫入させる型式の杭打機に装備され、前記オーガマシーンより前方へ突設した支持金具に固定する電動ウインチと、架台上にワイヤ巻取りリールとロータリエンコーダを配備して成り、前記電動ウインチの下方の地上に設置する深度計本体と、先端部を前記電動ウインチの吊上げフックに固定すると共に基端部を前記ロータリエンコーダの回転プーリを通して前記ワイヤ巻取りリールへ所定の張力を付加した状態で巻き取り可能に固定した計測用ワイヤとから成る深度計と、前記深度計本体のロータリエンコーダから発信した計測用ワイヤの移動量に対応する距離情報信号が入力され、当該距離情報信号から貫入体の地中への貫入深さを演算表示するコンピュータを備えた制御部Bとから構成したことを特徴とする杭打機用深度測定装置。
【請求項2】
貫入体を、アースオーガ又は既製杭とした請求項1に記載の杭打機用深度測定装置。
【請求項3】
制御部を、アースオーガの駆動用モータの負荷電流情報及び杭孔内へ供給する土壌固化剤の流量情報が入力される制御部Bとした請求項1に記載の杭打機用深度測定装置。
【請求項4】
制御部を、計測した深度を無線信号に変換して発信する信号変換ユニットを備えたものとした請求項1に記載の杭打機用深度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−97398(P2006−97398A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286319(P2004−286319)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504367597)宇部コンクリート工業株式会社 (1)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】