説明

杭打機

【課題】簡単な構造で、安定性や作業性を損なうことなく、作業装置を円滑に昇降させることができるとともに、安定性や作業性を向上させることができ、製造コストの低減も図れるラックピニオン式昇降装置を備えた杭打機を提供する。
【解決手段】ベースマシンの前方に起伏可能に設けられた角パイプ状のリーダ13の前部に、ラックピニオン式の昇降装置15を介して作業装置14を昇降可能に装着した杭打機において、リーダの幅方向両側面の前端部にリーダ長手方向の板状のガイド部材21を設け、該ガイド部材の前面に先端にラック22aを有する板状のラック部材22を固着するとともに、作業装置の後方両側部に、ラックに噛合するピニオン23を駆動するピニオン駆動装置24と、ガイド部材の後面に摺接する後面摺接部25a及びラック部材の前面に摺接する前面摺接部25bを備えたスライディングサポート25とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、ラックピニオン式昇降装置を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機で作業装置をリーダに沿って昇降させるための機構として、ラックピニオン式昇降装置が知られている。このラックピニオン式昇降装置としては、リーダの幅方向両側にそれぞれ配設された一対のガイドパイプと、リーダの前面に設けられた両歯のラックと、作業装置の両側部分から後方に突設されて前記ガイドパイプにそれぞれ摺動可能に係合する一対のガイドギブと、作業装置の後部側中央部に設けられて前記ラックに両側から噛合する一対のピニオンとを備えたものや(例えば、特許文献1参照。)、リーダの幅方向両側にそれぞれ配設された一対の片歯のラックと、リーダの前面に設けられた一対のガイドパイプと、作業装置の後部側中央部に設けられて前記ガイドパイプにそれぞれ摺動可能に係合する一対のガイドギブと、作業装置の両側部分から後方に突設されて前記ラックにそれぞれ噛合する一対のピニオンとを備えたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3962615号公報
【特許文献2】特許第4043344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のものでは、ラックがリーダの前面に設けられ、ピニオンを駆動する2基の昇降用モータが作業装置の後部側中央部に並べて設けられていることから、施工する杭の径が大きくなると、昇降用モータを避けるために杭を前方に配置しなければならず、オーガなどの作業装置も大型化して前方への安定性が低下するだけでなく、リーダに作用する曲げモーメントが増加するため、そのままではリーダの強度が不足する虞がある。また、特許文献2のものでは、ガイドパイプとラックとを別部品にしているため、部品点数が多くなり、さらに、ガイドパイプとラックとが前後方向に離れているため、偏荷重がかかりやすいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造で、安定性や作業性を損なうことなく、作業装置を円滑に昇降させることができるとともに、安定性や作業性を向上させることができ、製造コストの低減も図れるラックピニオン式昇降装置を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンの前方に起伏可能に設けられた角パイプ状のリーダの前部に、ラックピニオン式昇降装置を介して作業装置を昇降可能に装着した杭打機において、前記リーダの幅方向両側面の前端部にリーダ長手方向の板状のガイド部材をそれぞれ設け、該ガイド部材の前面に先端にラックを有する板状のラック部材をそれぞれ固着するとともに、前記作業装置の後方両側部に、前記ラック部材のラックに噛合するピニオンを駆動するピニオン駆動装置と、前記ガイド部材の後面に摺接する後面摺接部及び前記ラック部材の前面に摺接する前面摺接部を備えたスライディングサポートとを設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の杭打機は、前記スライディングサポートが前記ガイド部材の先端面に摺接する側面摺接部を有していること、また、前記ラック部材の前面は、前記リーダの前面と面一乃至リーダの前面より前方に位置していること、前記ピニオンは、前記スライディングサポートの上下方向中間位置に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機によれば、リーダの幅方向両側面の前端部に設けたガイド部材にラック部材を固着しているので、ガイド部材とラック部材とを一体化することができ、部品点数の削減や製作工数の削減を図れるとともに、作業装置の昇降時にガイド部材やラック部材、スライディングサポートに大きな偏荷重が作用することがなくなり、作業装置を安定した状態で円滑に昇降させることができる。また、ガイド部材とラック部材とをリーダの両側に設けることにより、リーダの前面にラックやガイドパイプを設けた場合に比べて作業装置をリーダの前面に近付けることができ、大径の杭を大型の作業装置で施工する際でも、杭の中心がリーダに近くなり、前方への安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図4のI-I断面図である。
【図2】図4のII-II断面図である。
【図3】図4のIII-III断面図である。
【図4】本発明の第1形態例を示す杭打機の昇降装置の要部正面図である。
【図5】同じく杭打機の平面図である。
【図6】同じく杭打機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す杭打機11は、ベースマシン12の前方に主軸13aを介して起伏可能に設けた角パイプ状のリーダ13と、該リーダ13に沿って昇降可能なオーガなどの作業装置14と、該作業装置14を昇降させるラックピニオン式の昇降装置15とを備えており、作業装置14には、中央にスクリューや杭16を回転可能に挿通する回転駆動機構及びチャック機構を備えた回転駆動フレーム14aと、回転駆動機構やチャック機構等を作動させる2台の作業用油圧モータ14bとが設けられている。
【0011】
前記昇降装置15は、前記リーダ13の両側面に設けられるガイド部材21及びラック部材22と、前記作業装置14の後方両側部に設けられるピニオン23、昇降用油圧モータ24及びスライディングサポート25とを備えている。これらは、リーダ13及び作業装置14の両側に左右対称の状態で配置されており、ピニオン23及びピニオン23を回転駆動するピニオン駆動装置である昇降用油圧モータ24は、作業装置14の後部両側から突出した状態で設けられている。
【0012】
ガイド部材21は、厚手で長尺の偏平角棒状の板材からなるものであって、厚さ方向を前後方向に向けた状態でリーダ13の幅方向両側面の前端部に長手方向全長にわたって設けられている。また、ガイド部材21の前面基部側には、前記ラック部材22の位置決めと取付強度向上とを図るための段部21aが突設している。
【0013】
ラック部材22は、ガイド部材21と同様の偏平角棒状の板材からなるものであって、基部後部側角部を前記ガイド部材21の段部21aに当接させた状態でガイド部材21の前面にボルト止めされており、ガイド部材21の先端から突出するラック部材22の先端には、前記ピニオン23に噛合するラック22aが設けられている。また、ラック部材22の前面は、前記リーダ13の前面と面一乃至リーダ13の前面より前方に位置するように、ガイド部材21及びラック部材22の形状や位置が設定されている。
【0014】
前記スライディングサポート25は、前記ガイド部材21の後面に摺接する後面摺接部を有する後面摺接部材25aと、前記ラック部材22の前面に摺接する前面摺接部を有する前面摺接部材25bと、前記ガイド部材21の先端面(側端面)に摺接する側面摺接部を有する側面摺接部材25cとを有しており、後面摺接部材25a及び側面摺接部材25cは、前面摺接部材25bの後部側に固着されたスペーサ25dにボルト止めされている。前面摺接部材25b及びスペーサ25dの上下方向中間には、前記昇降用油圧モータ24の駆動軸24a及びピニオン23の位置に対応させたピニオン挿通用開口25eが設けられており、このピニオン挿通用開口25eの前面側には、前面摺接部材25b及びスペーサ25dの剛性を確保するための補強部材25fが設けられている。また、前記各摺接部には、摩擦係数の低い摺動板25gが着脱交換可能な状態でそれぞれネジ止めされている。
【0015】
このように形成した昇降装置15を備えた杭打機11で杭打ち作業を行う際には、作業装置14の回転駆動フレーム14aに杭16を挿通して保持し、作業用油圧モータ14bを作動させて杭16に掘削方向の回転を与えるとともに、昇降用油圧モータ24により駆動軸24aを介してピニオン23を下降方向に回転させる。これにより、各ピニオン23がラック部材22のラック22aを噛合状態で転動し、ガイド部材21及びラック部材22に沿って摺動するスライディングサポート25によりガイドされながら、作業装置14がリーダ13に沿って下降し、回転する杭16の螺旋羽根16aによって地盤を掘削していく。また、杭16による杭打ち作業が終了した際には、昇降用油圧モータ24により駆動軸24aを介してピニオン23を上昇方向に回転させることにより、ガイド部材21及びラック部材22に沿って摺動するスライディングサポート25にガイドされて作業装置14がリーダ13に沿って上昇する。
【0016】
本形態例の杭打機11によれば、昇降装置15を構成するリーダ13側のガイド部材21とラック部材22とを一体化した状態でリーダ13の幅方向両側面の前端部分に配設しているので、ラックとガイドパイプとを別々に配設した従来構造に比べてリーダ13側の構造を簡略化することができ、部品点数や溶接箇所が減少することによって製造コストの低減を図ることができる。また、ガイド部材21とラック部材22とが一体化していることにより、ピニオン23とスライディングサポート25とを近接配置することができ、これらの部材に大きな偏荷重が作用することがなくなり、作業装置14をリーダ13に沿って円滑に安定した状態で昇降させることができるとともに、これらの部材の摩耗や破損の発生を抑えることができる。
【0017】
また、ピニオン23を回転駆動するための昇降用油圧モータ24を作業装置14の後方両側部から突出させた状態で設けることにより、作業装置14の回転駆動フレーム14aを大型化して施工時の回転トルクを増大することができるとともに、リーダ13の前面に近接して配置することができる。これにより、従来に比べて大径の杭を施工することが可能となるだけだなく、回転駆動フレーム14aが前方に大きく張り出すことを抑制でき、杭打機11の安定性を確保することができる。特に、ラック部材22の前面をリーダ13の前面と面一乃至リーダ13の前面より前方に配置することにより、回転駆動フレーム14aの中心(杭中心)とスライディングサポート25との距離を更に短くすることができるので、前記偏荷重をより小さく抑えることができる。
【0018】
また、ガイド部材21及びラック部材22をリーダ13の幅方向両側前端部分に設けることにより、リーダ13の中心部を支持する主軸3aとの干渉を避けることができ、ガイド部材21及びラック部材22をリーダ13の下端部まで連続させることができるので、作業装置14の昇降範囲を広げることができ、作業性を向上することができる。
【0019】
さらに、ピニオン23をスライディングサポート25の上下方向中間に設け、ピニオン23の上下両側に後面摺接部材25a及び前面摺接部材25bを設けるようにしているので、各摺接部材25a、25bの各摺接部とガイド部材21及びラック部材22とを広い面積で摺接させることができ、作業装置14を昇降させる際にピニオン23を中心として発生する前後方向の回転モーメントを確実に抑えることができ、作業装置14をリーダ13に沿って円滑に昇降させることができる。また、スライディングサポート25に側面摺接部材25cを設けることにより、左右方向も確実に保持することができ、ピニオン23とラック22aとの噛合状態を最適な状態に保持することができる。
【0020】
加えて、スライディングサポート25の各摺接部に摩擦係数の低い摺動板25gを取り付けることにより、スライディングサポート25の摺動性を向上させることができ、作業装置14を更に良好に昇降させることができる。また、ガイド部材21とラック部材22とを別部材としたことにより、ラック部材22をリーダ13の前方位置に容易に配置することができるとともに、ラック部材22として焼き入れを行って硬度を高めたものを用いることができ、全体を焼き入れする場合に比べてコスト削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0021】
11…杭打機、12…ベースマシン、13…リーダ、13a…主軸、14…作業装置、14a…回転駆動フレーム、14b…作業用油圧モータ、15…昇降装置、16…杭、16a…螺旋羽根、21…ガイド部材、21a…段部、22…ラック部材、22a…ラック、23…ピニオン、24…昇降用油圧モータ、24a…駆動軸、25…スライディングサポート、25a…後面摺接部材、25b…前面摺接部材、25c…側面摺接部材、25d…スペーサ、25e…ピニオン挿通用開口、25f…補強部材、25g…摺動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前方に起伏可能に設けられた角パイプ状のリーダの前部に、ラックピニオン式昇降装置を介して作業装置を昇降可能に装着した杭打機において、前記リーダの幅方向両側面の前端部にリーダ長手方向の板状のガイド部材をそれぞれ設け、該ガイド部材の前面に先端にラックを有する板状のラック部材をそれぞれ固着するとともに、前記作業装置の後方両側部に、前記ラック部材のラックに噛合するピニオンを駆動するピニオン駆動装置と、前記ガイド部材の後面に摺接する後面摺接部及び前記ラック部材の前面に摺接する前面摺接部を備えたスライディングサポートとを設けたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記スライディングサポートは、前記ガイド部材の先端面に摺接する側面摺接部を有していることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記ラック部材の前面は、前記リーダの前面と面一乃至リーダの前面より前方に位置していることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【請求項4】
前記ピニオンは、前記スライディングサポートの上下方向中間位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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