説明

杭打機

【課題】作業装置による杭の押し込み力が強くなってもリーダが傾くことを防止できる杭打機を提供する。
【解決手段】杭打機11は、ベースマシン14の前部に設けたフロントブラケット15に杭打機の左右方向に回動可能に軸支されたリーダ支持フレーム16と、リーダ支持フレームに前後方向に回動可能に軸支されたリーダ17と、リーダを杭打機の前後方向に回動させる起伏シリンダと、リーダ支持フレームを杭打機の左右方向に回動させる回動用シリンダ18と、リーダ支持フレームの回動を規制する回動規制用シリンダ19とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、リーダに沿って下降する作業装置によって杭を地中に押し込んでいく杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場における杭打ち作業には、ベースマシンの前部に立設したリーダに沿って昇降するオーガドライブなどの作業装置に杭を装着し、作業装置により杭を回転駆動しながら作業装置をリーダに沿って下降させることにより、杭を地中に押し込んでいくる杭打機が用いられている。このような杭打機では、ベースマシンの前部に設けたフロントブラケットにリーダ支持フレームを杭打機の左右方向に回動可能に軸支するとともに、該リーダ支持フレームにリーダを杭打機の前後方向に回動可能に軸支し、リーダ支持フレームとリーダとをそれぞれ回動用シリンダと起伏シリンダとによって回動させることにより、リーダを所定の角度、例えば鉛直方向に立設させる芯出しを行うようにしたリーダの支持装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−26111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたリーダの支持装置は、リーダを前後方向に回動させる起伏シリンダと、リーダ支持フレームを左右方向に回動させる回動用シリンダとを作動させることによってリーダを所定の角度に立設させることができるが、作業装置による杭の押し込み力が強くなるとリーダ支持フレームを回動させる方向の反力が作用し、回動用シリンダの取付部の僅かな遊びによってリーダ支持フレームが軸支点を中心として回動し、リーダ支持フレームの回動に伴ってリーダが所定の角度から傾くのに伴って作業装置の軸線も傾くため、杭を所定の方向に押し込めなくなったり、作業装置によって回転駆動されている杭にミソすり運動が発生して杭やリーダなどが大きく振動することがあり、杭打ち作業に悪影響を与えることがあった。
【0005】
そこで本発明は、作業装置による杭の押し込み力が強くなってもリーダが傾くことを防止できる杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンの前部に設けたフロントブラケットに杭打機の左右方向に回動可能に軸支されたリーダ支持フレームと、該リーダ支持フレームに杭打機の前後方向に回動可能に軸支されたリーダと、該リーダを杭打機の前後方向に回動させる起伏シリンダと、前記リーダ支持フレームを杭打機の左右方向に回動させる回動用シリンダとを備えた杭打機において、前記リーダ支持フレームの回動を規制する回動規制用シリンダを設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の杭打機は、前記回動規制用シリンダは、作業装置による杭の押し込み力の反力でリーダ支持フレームが回動する方向の力よりも強い力でリーダ支持フレームを前記回動方向とは逆方向に回動させる力をリーダ支持フレームに常時作用させることを特徴とし、また、前記回動規制用シリンダは、前記回動用シリンダと平行に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機によれば、作業装置による杭の押し込み力が強くなってリーダ支持フレームを回動させる方向の力が作用しても、回動規制用シリンダによってリーダ支持フレームの回動が規制されているため、リーダ支持フレームが回動することはなく、リーダが所定の角度から傾くことがなくなるので、杭にミソすり運動が発生したりすることを防止でき、杭打ち作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の杭打機の一形態例を示す要部正面図である。
【図2】同じく要部側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す杭打機11は、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、前記上部旋回体13の前部に設けられたフロントブラケット15に杭打機11の左右方向に回動可能に軸支されたリーダ支持フレーム16と、該リーダ支持フレーム16の前部に杭打機11の前後方向に回動可能に軸支されたリーダ17と、前記リーダ支持フレーム16を回動させる回動用シリンダ18と、前記リーダ支持フレーム16の回動を規制する回動規制用シリンダ19と、前記リーダ17を回動させる起伏シリンダ20と、前記リーダ17に昇降可能に設けられた作業装置21と、該作業装置21を昇降用チェーン22を介して昇降させる昇降用油圧モータ23とを備えている。
【0011】
リーダ支持フレーム16は、フロントブラケット15の一側方、本形態例では杭打機11の左側に、杭打機11の前後方向に配置された回動軸16aに軸支されて杭打機11の左右方向に回動可能な状態となっており、回動軸16aの反対側となるリーダ支持フレーム16の回動端側16b、すなわち、杭打機11の右側に、前記回動用シリンダ18と前記回動規制用シリンダ19とが設けられている。
【0012】
回動用シリンダ18及び回動規制用シリンダ19は、リーダ支持フレーム16の回動端側16bと上部旋回体13のフレームとの間に設けられており、回動用シリンダ18を伸縮させることによってリーダ支持フレーム16を回動軸16aを中心に回動させ、リーダ支持フレーム16の前部に設けたリーダ17の左右方向の角度を調整することができるように形成されている。
【0013】
また、起伏シリンダ20は、リーダ17と上部旋回体13との間に設けられてリーダ17を後方から支持するものであって、起伏シリンダ20を伸縮させることにより、リーダ17をリーダ支持フレーム16へのリーダ支持軸17aを中心に回動させてリーダ17の前後方向の角度を調整することができ、さらに、起伏シリンダ20を最も縮めた状態にすることにより、リーダ17をベースマシン14の上部に略水平に格納することができるように形成されている。
【0014】
一方、回動規制用シリンダ19は、杭打ち作業中にリーダ支持フレーム16が回動しないように保持するためのものであって、リーダ17の角度調整後に、調整位置に固定される回動用シリンダ18及び起伏シリンダ20に対して、回動規制用シリンダ19は、杭打ち作業中にのみ作動状態となる。
【0015】
リーダ17の立設角度の調整は、回動規制用シリンダ19を自由伸長状態として回動用シリンダ18及び起伏シリンダ20を伸縮させることによって行われる。リーダ17の角度調整が終了した時点では、作業装置21などを含むリーダ17の荷重がリーダ支持フレーム16の回動端側16bを下方に押す方向に作用しているので、回動用シリンダ18には縮み方向の力が作用し、回動用シリンダ18の両端の取付部に比較的大きな遊びがあったとしても、両取付部は、回動用シリンダ18を縮ませる方向の力が作用したときに当接する部分がそれぞれ密着した状態になっている。
【0016】
このようにしてリーダ17の角度調整が終了した後、前記回動規制用シリンダ19が作動を開始する。回動規制用シリンダ19の作動方向は、リーダ支持フレーム16に加わるリーダ17の荷重の方向と同一の方向、すなわち、前記回動用シリンダ18を縮ませる方向で、回動規制用シリンダ19が短縮する方向の力が生じるように設定される。また、回動規制用シリンダ19の短縮方向への力の大きさは、作業装置21による杭の最大押し込み力に応じて設定されている。
【0017】
杭打機11による杭打ち作業は、下端に掘削具24を備えた掘削ロッド25を作業装置21に装着し、掘削ロッド25の上端に設けたスイベルジョイント26を介してホース27からセメントミルクを注入しながら、作業装置21により掘削ロッド25を回転駆動するとともに、昇降用油圧モータ23を作動させて作業装置21をリーダ17に沿って下降させ、掘削具24で掘削しながら掘削ロッド25を地中に押し込むことにより行われる。
【0018】
杭打ち作業中、地盤の状態によって作業装置21による掘削ロッド25の押し込み力が強くなり、押し込み力の反力が昇降用チェーン22及び昇降用油圧モータ23を介してリーダ17を上方に移動させる力が発生し、このリーダ17を上方へ移動させようとする力が作業装置21などを含むリーダ17の重量を上回ると、リーダ支持軸17aを介してリーダ支持フレーム16に上方への力が加わるため、リーダ支持フレーム16には、回動軸16aを中心として回動端側16bが上方に向けて回動する方向の力が加わる。
【0019】
このとき、回動用シリンダ18の両端の取付部は、回動用シリンダ18の縮み方向には遊びがないが、回動用シリンダ18の伸び方向には遊びがあるため、回動規制用シリンダ19が無い場合には、取付部の遊びの分だけリーダ支持フレーム16が回動してリーダ17が傾くことになるが、回動規制用シリンダ19が、リーダ支持フレーム16が上方に向かって回動する力よりも強い力でリーダ支持フレーム16を前記回動方向とは逆方向、すなわち、リーダ支持フレーム16の回動端側16bを下方に引っ張る方向の力をリーダ支持フレーム16に常時作用させているので、リーダ支持フレーム16の回動を規制することができ、リーダ支持フレーム16及びリーダ17を角度調整後の所定の状態に保持しておくことができる。
【0020】
したがって、作業装置21による掘削ロッド25の押し込み力が強くなってもリーダ17が傾くことはなく、掘削ロッド25、即ち杭を所定の方向に確実に押し込むことができるとともに、掘削ロッド25にミソすり運動が発生することを防止でき、杭打ち作業を確実に行うことができる。
【0021】
なお、回動規制用シリンダは、回動用シリンダの近傍に平行に設けることによって回動規制用シリンダを容易に設置することができるなどの利点があるが、リーダ支持フレームの回動を規制することができれば任意の位置に設けることができ、シリンダの本数も任意である。また、回動を規制する力をリーダ支持フレームに常時作用させることなく、所定の力で回動を規制した状態でシリンダを固定しておくこともできる。さらに、作業装置をリーダに沿って昇降させる手段は、昇降用チェーンと昇降用油圧モータとの組み合わせに限るものではなく、ラックピニオン方式など、各種昇降手段を採用することができる。
【符号の説明】
【0022】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…フロントブラケット、16…リーダ支持フレーム、16a…回動軸、16b…回動端側、17…リーダ、17a…リーダ支持軸、18…回動用シリンダ、19…回動規制用シリンダ、20…起伏シリンダ、21…作業装置、22…昇降用チェーン、23…昇降用油圧モータ、24…掘削具、25…掘削ロッド、26…スイベルジョイント、27…ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前部に設けたフロントブラケットに杭打機の左右方向に回動可能に軸支されたリーダ支持フレームと、該リーダ支持フレームに杭打機の前後方向に回動可能に軸支されたリーダと、該リーダを杭打機の前後方向に回動させる起伏シリンダと、前記リーダ支持フレームを杭打機の左右方向に回動させる回動用シリンダとを備えた杭打機において、前記リーダ支持フレームの回動を規制する回動規制用シリンダを設けたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記回動規制用シリンダは、作業装置による杭の押し込み力の反力でリーダ支持フレームが回動する方向の力よりも強い力でリーダ支持フレームを前記回動方向とは逆方向に回動させる力をリーダ支持フレームに常時作用させることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記回動規制用シリンダは、前記回動用シリンダと平行に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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