説明

杭頭接合構造

【課題】杭の施工誤差を調整することができるとともに、杭と構造物とを容易にかつ確実に接合することができる杭頭接合構造を提供する。
【解決手段】杭2の上端部2aに接合され外縁部4c側に杭2の中心軸を中心に周方向に円弧状に延びる複数の第1孔部11が周方向に配列されたフランジ4と、フランジ4に重ねられて接合されるとともに支持部材(構造物)3が接合され中心部5aから外縁部5c側に向かう半径方向に延びる複数の第2孔部12が互いに周方向に間隔をあけて配列された接合用プレート5と、第1孔部11および第2孔部12に挿通されフランジ4と接合用プレート5とを固定する複数の第1固定具6と、接合用プレート5と構造物とを接合する複数の第2固定具7とを備える。接合用プレート5は、中心部5aから第2ボルト孔(第2固定具の取り付け位置)5bまでの距離l2が、中心部5aから第2孔部12までの距離l1よりも長く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭接合構造に関し、特に、杭と杭の上部に設置される構造物を接合する杭頭接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤上に構造物を設置する際に、杭を地盤中に埋設し、この杭の上部に構造物を固定している。このように、構造物が杭に固定されることにより、杭が構造物の荷重を支持するとともに、風力などの外力によって構造物が地盤から離れることを防止している。
【0003】
例えば、特許文献1には、構造物(土台)を支持する支持部材(支持金具)に下方へ突出する円形突出部が設けられていて、該円形突出部が杭頭に形成された杭頭開口部に挿入されることで、支持部材を介して杭と土台とが接合される杭頭接合構造が開示されている。
ところで、杭の施工において、杭が設計どおりの正位置から多少ずれた位置に埋設されることがある。このため、杭の施工誤差を調整することができる杭頭接合構造が特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献2に開示された杭頭接合構造は、杭(施設支柱固定具)と、構造物(施設支柱)を支持する支持部材(支柱連結部)との水平方向の接合位置を調整可能に構成されている。
この杭には、上部に杭径よりも大きい外径のフランジが接合されて、このフランジには、縁部に杭の中心軸を中心として周方向に配された複数のスロットが形成されるとともに、中央部に固定孔が形成されている。また、支持部材には、所定の長さに延在するガイド孔(長孔)が形成されている。
【0005】
そして、杭が正位置から水平方向にずれて施工されていたとしても、支持部材を正位置に設置すれば、ガイド孔とスロットとが重なる部分があるとともに、ガイド孔の一部が固定孔と重なるため、この重なった部分にボルトなどの固定具を挿通させて締結すれば、支持部材3を正位置でフランジに接合することができる。
そして、支持部材3が正位置に設置されることにより、構造物を正位置に設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−213699号公報
【特許文献2】特開2010−236344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2では、フランジの中央部および縁部に支持部材が固定されるため、フランジが接合された杭と支持部材に固定された構造物とが安定した状態で固定されていない虞がある。
また、杭と構造物とを容易にかつ確実に接合できる杭頭接合構造が望まれている。
【0008】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたもので、杭の施工誤差を調整することができるとともに、杭と構造物とを容易にかつ確実に接合することができる杭頭接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る杭頭接合構造は、杭と、該杭の上部に設置される構造物とを接合する杭頭接合構造であって、前記杭の上端部に接合されて外縁部側に前記杭の中心軸を中心に周方向に円弧状または直線状に延びる複数の第1孔部が周方向に配列されたフランジと、該フランジに重ねられて接合されるとともに前記構造物が接合され中心部から外縁部側に向かう半径方向に延びる複数の第2孔部が周方向に互いに間隔をあけて配列された接合用プレートと、前記第1孔部および前記第2孔部に挿通され前記フランジと前記接合用プレートとを固定する複数の第1固定具と、前記接合用プレートと前記構造物とを接合する複数の第2固定具とを備え、前記接合用プレートは、前記中心部から前記第2固定具の取り付け位置までの距離が、前記中心部から前記第2孔部までの距離よりも長いことを特徴とする。
【0010】
本発明では、フランジの第1孔部が周方向に延びて、接合用プレートの第2孔部が半径方向に延びていることにより、フランジと接合用プレートとが重ねられたときに第1孔部と第2孔部とが部分的に重なっている。そして、フランジと接合用プレートとがずれて重ねられた場合でも第1孔部と第2孔部とが重なるため、この重なった部分に第1固定具を挿入してフランジと接合用プレートとを接合することができる。このため、杭が施工誤差により正位置からずれて設置された場合でも、接合用プレートを正位置に設置することで施工誤差を調整することができる。
そして、第1固定具は、フランジの外縁部側にある第1孔部に挿通されることにより、接合用プレートがフランジの外縁部側と複数ヶ所で固定されるため、フランジと接合用プレートと確実に固定することができる。これにより、フランジおよび接合用プレートを介して杭と構造物とを確実に接合することができる。
【0011】
また、接合用プレートは、中心部から第2固定具の取り付け位置までの長さが、中心部から第2孔部までの長さより長いことにより、第2固定具の取り付け位置が杭から離間するため、フランジに接合された接合用プレートに構造物を接合するときに、第2固定具および第2固定具を取り付ける作業者や装置が杭に干渉しない。これにより、接合用プレートに構造物を容易に接合することができる。
また、杭と構造物との間にフランジおよび接合用プレートを介装する簡便な構成であるため、杭頭接合構造の施工が容易であるとともに、コストを削減することができる。
【0012】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記接合用プレートは、前記第2孔部が2つ形成されているとともに前記第2固定具が2箇所に取り付けられていて、前記2つの第2孔部どうしを結ぶ直線と、前記2つの第2固定具の取り付け位置どうしを結ぶ直線とは、前記接合用プレートの中心近傍で直交していることが好ましい。
このように構成されることにより、第1固定具および第2固定具がバランスよく配されるため、接合用プレートおよび構造物がバランスよく接合される。
【0013】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記2つの第2固定具の取り付け位置間の距離は、前記フランジの全長よりも長いことが好ましい。
このように構成されることにより、第2固定具の取り付け位置がフランジの外方となるため、フランジに接合された接合用プレートに構造物を接合するときに、第2固定具および第2固定具を取り付ける作業者や装置がフランジに干渉しない。これにより、接合用プレートに構造物を容易に接合することができる。
【0014】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記構造物の設置高さを調整する高さ調整機構が設けられていることが好ましい。
このように構成されることにより、杭が施工誤差により正位置よりも低く設置されたときに、構造物を正位置に固定することができる。
【0015】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記構造物の設置角度を調整する角度調整機構が設けられていることが好ましい。
このように構成されることにより、杭が施工誤差により傾斜して設置されたときに、杭に対して構造物を傾斜させることで、構造物を水平に設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フランジの第1孔部が周方向に延びて、接合用プレートの第2孔部が半径方向に延びていることにより、フランジと接合用プレートとがずれて重ねられた場合でも第1孔部と第2孔部とが重なるため、この重なった部分に第1固定具を挿入してフランジと接合用プレートとを接合することができる。このため、杭が施工誤差により正位置からずれて設置された場合でも、接合用プレートを正位置に設置することで施工誤差を調整することができる。
そして、第1固定具は、フランジの外縁部側にある第1孔部に挿通されることにより、接合用プレートがフランジの外縁部側と複数ヶ所で固定されるため、フランジと接合用プレートと確実に固定することができる。
また、接合用プレートは、中心部から第2固定具の取り付け位置までの長さが、中心部から第2孔部までの長さより長いことにより、第2固定具の取り付け位置が杭から離間するため、フランジに接合された接合用プレートに構造物を接合するときに、第2固定具および第2固定具を取り付ける作業者や装置が杭に干渉しない。
このように、フランジおよび接合用プレートを介して杭に構造物を容易にかつ確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の実施形態による杭頭接合構造の一例を示す上面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図2】支持部材の上面図である。
【図3】フランジの上面図である。
【図4】接合用プレートの上面図である。
【図5】(a)は第1角度調整プレートを説明する図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図6】(a)は第2角度調整プレートを説明する図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は第2角度調整プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による杭頭接合構造について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1(a)乃至(c)に示すように、本実施形態による杭頭接合構造1は、杭2と、該杭2の上部に設置されて例えばソーラパネル(不図示)などを支持する支持部材(構造物)3との杭頭接合構造である。
本実施形態による杭頭接合構造では、杭2の上端部2a(図1(a)および(b)参照)に接合されたフランジ4と、支持部材3が取り付けられる接合用プレート5と、フランジ4と接合用プレート5とを固定するための第1固定具6と、接合用プレート5に支持部材3と固定するための第2固定具7とを備えている。
本実施形態では、第1固定具6および第2固定具7をボルト6a,7aとナット6b,7bとする。
【0019】
杭2は、鉛直方向に延在する、例えば円筒状の鋼管で、下端部(不図示)側が地盤(不図示)に埋設され、上端部2a側が地盤面より上方に位置している。
支持部材3は、水平方向に延在する、例えばCチャンネルなどの形鋼で、本実施形態では、延在方向に2本の形鋼3a,3aが配列されている。
また、図3に示すように、支持部材3には、第2固定具7のボルト7a(図1参照)が挿通可能な2つの第1ボルト孔3b,3bが形成されている。
【0020】
図1(a)および図3に示すように、フランジ4は、平面視において杭2の外径よりも大きい外径に形成された、例えば、円形状の鋼板で、中心部4aが杭2の中心軸上に位置するように杭2の上端部2aに溶接などにより接合されている。
また、フランジ4は、その外縁部4c側で、杭2の外周面よりも半径方向外側の位置に、中心部5aを中心として周方向に円弧状に延びる第1孔部11が周方向に複数配列されている。
【0021】
本実施形態では、フランジ4に4つの第1孔部11が形成されていて、これらの第1孔部11を配列の順番に第1孔部11A〜11Dとして以下説明する。
この4つの第1孔部11A〜11Dには、フランジ4の中心部4aからの半径方向の距離が異なる2種類のものがあり、これらが交互に配列されている。本実施形態では、第1孔部11A,11Cが、第1孔部11B,11Dよりもフランジ4の中心部4aからの半径方向の距離が短く設定されている。
そして、周方向に隣り合う第1孔部11は、その端部どうしが半径方向に重なっている。
これらの第1孔部11A〜11Dは、第1固定具6のボルト6a(図1(a)参照)が挿通可能で、挿通された第1固定具6のボルト6aが第1孔部11A〜11Dに沿って移動可能に構成されている。
【0022】
図1(a)および図4に示すように、接合用プレート5は、略菱形の各角部が切除された八角形状の鋼板で、フランジ4(図1(a)参照)よりも大きい外形に形成されている。
なお、接合用プレート5は、その剛性を高めるために縁部の一部以上が上方や下方へ折り曲げられた形状に形成されていてもよい。例えば、接合用プレート5の、支持部材3の延在方向に直交する方向の端部を下方に折り曲げて、図1の2点鎖線で示す折り曲げ部5dを形成してもよい。
【0023】
また、接合用プレート5には、半径方向に延びる長孔の第2孔部12が複数形成されている。ここで、半径方向とは、接合用プレートの中心近傍に位置する中心部5aから接合用プレートの外縁部5cに向かう方向とする。
本実施形態では、2つの第2孔部12A,12Bが、接合用プレート5の中心部5aを中心に対称に配列されている。
この第2孔部12A,12Bは、第1固定具6のボルト6a(図1(a)参照)が挿通可能で、挿通された第1固定具6のボルト6aが第2孔部12A,12Bに沿って移動可能に構成されている。
【0024】
そして、フランジ4の上に接合用プレート5を重ねると、上方から見て、接合用プレート5の2つの第2孔部12A,12Bは、それぞれ、フランジ4の4つの第1孔部11A〜11Dのいずれかと部分的に重なり、この重なった部分にボルト6aが挿通可能に構成されている。
ここで、フランジ4の中心部4aと、接合用プレート5の中心部5aとがずれている場合でも、第1孔部11は周方向に延びて、第2孔部12は半径方向に延びているため、第2孔部12A,12Bは、それぞれ第1孔部11A〜11Dのいずれかと重なるように構成されている。
【0025】
また、接合用プレート5には、第2固定具7のボルト7a(図1(a)参照)が挿通可能な第2ボルト孔5b,5bが2つ形成されている。本実施形態では、2つの第2ボルト孔5b,5bは、接合用プレート5の中心部5aを中心に対称に配列されている。
そして、この2つの第2ボルト孔5b,5b間の距離は、支持部材3の2つの第1ボルト孔3b,3b間の距離と同じ距離となるように構成されている。
【0026】
そして、接合用プレート5の上に支持部材3を設置すると、支持部材3の一方の第1ボルト孔3bと接合用プレート5の一方の第2ボルト孔5bとが重なり、また、支持部材3の他方の第1ボルト孔3bと接合用プレート5の他方の第2ボルト孔5bとが重なるように構成されている。
このとき、重なった第1ボルト孔3bおよび第2ボルト孔5bに、第2固定具7のボルト7aを挿通し、ナット7bを締結することで、接合用プレート5と支持部材3とが接合される。
【0027】
本実施形態では、接合用プレート5の2つの第2孔部12A,12Bを結ぶ直線L1と、2つの第2ボルト孔5b,5bを結ぶ直線L2とは、接合用プレート5の中心部5aで直交している。また、中心部5aから第2孔部12A,12Bの半径方向外側端部までの距離l1は、中心部5aから第2ボルト孔5bまでの距離l2よりも短くなるように構成されている。
なお、接合用プレート5の2つの第2孔部12A,12Bを結ぶ直線L1と、2つの第2ボルト孔5b,5bを結ぶ直線L2とは、直交していなくてもよく、また接合用プレート5の中心部5aで交差していなくてもよい。
【0028】
また、図1に示すように、本実施形態では、接合用プレート5と支持部材3との間に、支持部材3の高さを調整するための高さ調整プレート(高さ調整機構)13が介装可能に構成されている。
高さ調整プレート13は、平面視において接合用プレート5とほぼ同形に形成された鋼板で、接合用プレート5の第2孔部12A,12Bと重なる第3孔部13A,13Bと、接合用プレート5の第2ボルト孔5b,5bと重なる第3ボルト孔13bが形成されている。
【0029】
高さ調整プレート13は、所定の厚さに形成され、接合用プレート5の上部に重なるように構成されている。
そして、接合用プレート5と支持部材3との間に、高さ調整プレート13を介装することにより支持部材3の高さを調整することができる。
これにより、杭2の上端部2a高さが施工誤差により設計高さよりも低い場合でも、支持部材3を所望の高さに設置することができる。
【0030】
なお、高さ調整プレート13は、1枚だけ設置されてもよいし、複数枚重ねて設置されてもよい。高さ調整プレート13が複数枚設置される場合は、複数枚の高さ調整プレート13が全て同じ厚さに形成されていてもよいし、異なる厚さに形成されていてもよい。また、高さ調整プレート13は、接合用プレート5の下側に設置されてもよい。
また、高さ調整プレート13は、平面視において接合用プレート5とほぼ同形としなくてもよく、例えば、平面視において支持部材3と略同じ幅で所定の厚さの鋼板としてもよい。
【0031】
また、杭2が施工誤差により傾斜して施工された場合は、図5および図6に示すように、接合用プレート5と支持部材3との間に、支持部材3の設置角度を調整するための第1角度調整プレート(角度調整機構)14A(図5参照)または第2角度調整プレート(角度調整機構)14B(図6参照)が、介装可能に構成されている。
第1角度調整プレート14Aは、杭2が施工誤差により支持部材5の延在方向において傾斜して施工された場合に使用され、第2角度調整プレート14Bは、杭2が施工誤差により支持部材5の延在方向に直交する方向において傾斜して施工された場合に使用される。
【0032】
図5(a)、(b)に示すように、第1角度調整プレート14Aは、平面視において接合用プレート5よりも小さく形成された例えば円板状の鋼板で、第2固定具7のボルト7aが挿通可能な第4ボルト孔14bが1つ形成されている。
そして、第1角度調整プレート14Aが、接合用プレート5の2つの第2ボルト孔5b,5bのうち傾斜の下側に配された第2ボルト孔5bと重なるように設置され、この上に支持部材3を接合用プレート5に対して傾斜して取り付けることにより、杭2の傾斜が調整されて支持部材3は水平に設置されることになる。
なお、第1角度調整プレート14Aは、1枚だけ設置されてもよいし、複数枚設置されてもよい。そして、第1角度調整プレート14Aが、複数枚設置される場合は、複数枚の第1角度調整プレート14Aは、同じ厚さに形成されていてもよいし、異なる厚さに形成されていてもよい。
【0033】
また、図6(a)乃至(c)に示すように、第2角度調整プレート14Bは、平面視において接合用プレート5よりも小さい例えば円形で、かつ、支持部材3の延在方向から見て上端面14cと下端面14dとが平行でなく、例えば台形状に形成された部材で、第2固定具7のボルト7aが挿通可能な第4ボルト孔14bが形成されている。
そして、一対の第2角度調整プレート14B,14Bが、接合用プレート5の2つの第2ボルト孔5b,5bとそれぞれ重なるように設置され、第2角度調整プレート14B,14Bの上端面14cの上に支持部材3を取り付けることにより、杭2の傾斜が調整されて支持部材3は水平に設置されることになる。
なお、杭2が施工誤差により支持部材5の延在方向およびこの延在方向に直交する方向において傾斜して施工された場合に、第1角度調整プレート14Aおよび第2角度調整プレート14Bを併用してもよい。
【0034】
次に、杭2と支持部材3の接合方法について説明する。
まず、地盤の所定の位置に杭2を設置する。なお、杭2の上端部2aには、予め工場や現地などでフランジ4を接合しておく。
続いて、フランジ4の上部に接合用プレート5を設置する。
このとき、杭2が施工誤差により正位置からずれている場合は、接合用プレート5を正位置へ設置する。これにより、接合用プレート5の中心部5aとフランジ4の中心部4aとがずれた状態となる。
【0035】
続いて、接合用プレート5の高さと角度を確認する。
そして、杭2の上に設置された接合用プレート5の設置高さが設計高さよりも低い場合は、接合用プレート5の上部に高さ調整プレート13を重ねて設置する。また、杭2の上に設置された接合用プレート5が傾斜している場合は、この傾斜に合わせて第1角度調整プレート14Aおよび第2角度調整プレート14Bのうち1つ以上を設置する。
【0036】
続いて、フランジ4、接合用プレート5および高さ調整プレート13を第1固定具6で接合する。
このとき、フランジ4の下部および高さ調整プレート13の上部に第1固定具6のボルト6aが挿通可能なボルト孔15aが形成された添え板15を設置し、添え板15を介して第1固定具6でフランジ4、接合用プレート5および高さ調整プレート13を接合する。
【0037】
そして、接合用プレート5の第2孔部12Aおよび高さ調整プレート13の第3孔部13Aと、フランジ4の第1孔部11Dとが重なった部分に第1固定具6のボルト6aを挿通させるとともに、接合用プレート5の第2孔部12Bおよび高さ調整プレート13の第3孔部13Bと、フランジ4の第1孔部11Cとが重なった部分に第1固定具6のボルト6aを挿通させ、各ボルト6aにナット6bを締結する。これにより、フランジ4と接合用プレート5および高さ調整プレート13とが接合される。
【0038】
続いて、支持部材3を設置する。
接合用プレート5および高さ調整プレート13の上部に支持部材3を設置し、接合用プレート5の第2ボルト孔5bおよび高さ調整プレート13の第3ボルト孔13bと、支持部材3の第2ボルト孔5bとを重ね、この重なった3つのボルト孔5b,13b,3bに第2固定具7のボルト7aを挿通させ、ボルト7aにナット7bを締結する。なお、第1角度調整プレート14Aや第2角度調整プレート14Bが設置されている場合は、上記3つのボルト孔5b,13b,3bに加え、第1角度調整プレート14Aや第2角度調整プレート14Bの第4ボルト孔14bにもボルト7aを挿通させ、ナット7bを締結する。
これにより、接合用プレート5と支持部材3とが接合されるため、フランジ4および接合用プレート5を介して、支持部材3と杭2とが接合される。
【0039】
次に、上述した杭頭接合構造1の作用効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による杭頭接合構造1によれば、杭2が設計位置(正位置)からずれて設置された場合でも、接合用プレート5を正位置に設置すれば、接合用プレート5の第2孔部12A,12Bが、それぞれフランジ4の第1孔部11A〜11Bのいずれかと部分的に重なることになる。このため、この重なった部分に第1固定具6のボルト6aを挿通してナット6bを締結すれば、フランジ4と接合用プレート5とを接合することができる。
そして、正位置に設置された接合用プレート5に支持部材3を接合することで、施工誤差により杭2が正位置からずれた場合でも、支持部材3を正位置に設置することができる。
【0040】
そして、フランジ4の第1孔部11A〜11Dは、フランジ4の外縁部4c側に形成されていることにより、接合用プレート5が、フランジ4の外縁部4c側と2ヶ所で固定されるため、支持部材3を、フランジ4および接合用プレート5を介して、杭2に対してバランスよく安定した位置に確実に接合することができる。
【0041】
また、接合用プレート5は、2つの第2孔部12A,12Bを結ぶ直線L1と、2つの第2ボルト孔5b,5bを結ぶ直線L2とが直交しているとともに、中心部5aから第2ボルト孔5bまでの距離l2が、中心部5aから第2孔部12までの距離l1よりも長くなるように構成されているため、第1固定具6と第2固定具7とがバランスよく配されて、各部材を均等に接合することができる。
【0042】
また、第2ボルト孔5bがフランジ4から半径方向外側へ離間するため、フランジ4に接合された接合用プレート5に支持部材3を接合するときに、第2固定具7および第2固定具7を取り付ける作業者や装置がフランジ4と干渉しない。これにより、接合用プレート5に支持部材3を容易に接合することができる。
また、杭2と支持部材3との間にフランジ4および接合用プレート5を介装する簡便な構成であるため、杭頭接合構造1の施工が容易であるとともに、コストを削減することができる。
【0043】
また、高さ調整プレート13を設置することにより、杭2が施工誤差により正位置よりも低く設置された場合でも、支持部材3を正位置に設置することができる。
また、第1角度調整プレート14Aおよび第2角度調整プレート14Bのうち1つ以上を設置することにより、杭2が施工誤差により傾斜して設置された場合でも、杭2に対して支持部材3を傾斜させて設置することで、支持部材3を水平に設置することができる。
【0044】
以上、本発明による杭頭接合構造1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、第1孔部11は、フランジ4の中心部4aを中心に周方向に円弧状に延びる形状に形成されているが、フランジ4の中心部4aを中心に周方向に直線状に延びる形状に形成されていてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、フランジ4には、4つの第1孔部11が形成され、接合用プレート5には、2つの第2孔部12が形成されているが、第1孔部11および第2孔部12の数は任意に設定されてよい。
また、上記の実施形態では、支持部材3および接合用プレート5には、それぞれ2つずつ第1ボルト孔3bおよび第2ボルト孔5bが形成されているが、第1ボルト孔3bおよび第2ボルト孔5bの数は任意に設定されてよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、第1固定具6および第2固定具7は、ボルト6a,7aおよびナット6b,7bであるが、ボルト・ナット以外の固定具としてもよい。
また、上記の実施形態は、ソーラパネルなどを支持する支持部材3を接合用プレート5に接合しているが、支持部材3に代わって、ソーラパネルなどを接合用プレート5に接合する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 杭頭接合構造
2 杭
2a 上端部
3 支持部材(構造物)
3b 第1ボルト孔
4 フランジ
4a 中心部
4c 外縁部
5 接合用プレート
5a 中心部
5b 第2ボルト孔
5c 外縁部
6 第1固定具
7 第2固定具
11,11A〜11D 第1孔部
12,12A,12B 第2孔部
13 高さ調整プレート(高さ調整機構)
14A 第1角度調整プレート(角度調整機構)
14B 第2角度調整プレート(角度調整機構)
L1 直線
L2 直線
l1 距離
l2 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭と、該杭の上部に設置される構造物とを接合する杭頭接合構造であって、
前記杭の上端部に接合されて外縁部側に前記杭の中心軸を中心に周方向に円弧状または直線状に延びる複数の第1孔部が周方向に配列されたフランジと、
該フランジに重ねられて接合されるとともに前記構造物が接合され中心部から外縁部側に向かう半径方向に延びる複数の第2孔部が周方向に互いに間隔をあけて配列された接合用プレートと、
前記第1孔部および前記第2孔部に挿通され前記フランジと前記接合用プレートとを固定する複数の第1固定具と、
前記接合用プレートと前記構造物とを接合する複数の第2固定具とを備え、
前記接合用プレートは、前記中心部から前記第2固定具の取り付け位置までの距離が、前記中心部から前記第2孔部までの距離よりも長いことを特徴とする杭頭接合構造。
【請求項2】
前記接合用プレートは、前記第2孔部が2つ形成されているとともに前記第2固定具が2箇所に取り付けられていて、
前記2つの第2孔部どうしを結ぶ直線と、前記2つの第2固定具の取り付け位置どうしを結ぶ直線とは、前記接合用プレートの中心近傍で直交していることを特徴とする請求項1に記載の杭頭接合構造。
【請求項3】
前記2つの第2固定具の取り付け位置間の距離は、前記フランジの全長よりも長いことを特徴とする請求項2に記載の杭頭接合構造。
【請求項4】
前記構造物の設置高さを調整する高さ調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の杭頭接合構造。
【請求項5】
前記構造物の設置角度を調整する角度調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の杭頭接合構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−188824(P2012−188824A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51593(P2011−51593)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】