説明

松樹皮抽出物を含む脂質代謝改善剤

体内の脂質を効率よく代謝させる脂質代謝改善剤として、松樹皮抽出物を有効成分とする脂質代謝改善剤を提供する。本発明の脂質代謝改善剤は、コレステロール排泄促進、脂質吸収抑制、体脂肪低減、および脂肪蓄積抑制などの作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、松樹皮抽出物を有効成分とする脂質代謝改善剤に関する。
【背景技術】
高脂血症は、動脈硬化や脳卒中を引き起こす原因として注目されている症状の一つである。この高脂血症を予防または治療するために、種々の方法あるいは薬剤が検討されている。例えば、特許第3393304号公報には、トウモロコシタンパク質を加水分解して得られるアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドを含有する高脂血症の予防または治療剤が開示されている。
このほかに、メバロチンあるいは特公昭61−13699号公報に記載のML−236B誘導体のように肝臓でのコレステロールの生合成を阻害する作用を有する化合物が知られている。さらに、キトサンおよびその誘導体のようにコレステロールの吸収を抑制することにより、体外へコレステロールを排出する作用を有する物質あるいはそれを含有する材料が知られており(特許第3108675号公報および特公平8−19001号公報)、これを投与することによって、体内のコレステロール量を減少させ、血中脂質を改善することが行われている。
しかし、上記メバロチンおよびML−236B誘導体は、その作用機序がコレステロールの生合成阻害であり、体内において必要なコレステロールの生合成をも阻害するおそれがある。そのため、メバロチンおよびML−236B誘導体は、主に高脂血症の治療に用いられており、高脂血症を予防する点においては適していないのが実情である。上記キトサンおよびその誘導体は、体内のコレステロールを体外に排出する機能を有するため、体内のコレステロールを排出することにより、これを減少させるだけでなく、食事によって摂取されたコレステロールの体内吸収を阻害することが可能である。そのため、キトサンは高脂血症の治療および予防に最も効果的であり近年注目されつつある。しかし、キトサンは食物アレルギーなどの問題があり、使用する上で注意が必要である。上記特許第3108675号公報の記載においては、キトサンはタンパク質加水分解物と組み合わせて利用されているが、いまだその効果は充分とは言えない。
また、高脂血症を抑制するために、血中の低密度リポタンパク質(LDL)を減らし、高密度リポタンパク質(HDL)を増やすことで、肝臓へのコレステロールの吸収を促進することが試みられている。
このような目的で、例えば、特開2002−223727号公報には、ヒアルロン酸およびフコダインを含む機能性食品が、特表平11−507910号公報には、コレステロールエステル転移タンパク質の免疫原性エピトープを含有する組成物が、さらに特表2000−505308号公報には、分離ダイズタンパク質およびダイズ繊維を含む栄養組成物がそれぞれ開示されている。
このほかに、特表平11−515025号公報には、アシル−CoAコレステロールO−アシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤と、HMG−CoA還元酵素阻害剤とを投与することにより、HDLが増加することが開示されている。さらに肝臓でのコレステロールの分解を促進し、または胆汁酸とともにコレステロールを排出するのを促進するようにして、体内のコレステロールなどの脂質を減らす高脂血症の治療または予防が、試みられている。
しかし、これらの技術においては、肝臓での脂質代謝における負担が大きく、肝臓の機能の低下が生じる。例えば、肝炎ウイルスの感染、アルコールの摂取、および薬物投与などによる負荷によって、肝臓でのコレステロール代謝と吸収とのバランスが崩れ、肝臓内への脂質の蓄積が亢進し、脂肪肝を併発する恐れがある。肝臓に脂肪が蓄積した状態が続くと、肝臓組織の壊死が起こり、壊死した組織部分への細胞の浸潤によって肝臓の繊維化が生じる(すなわち肝硬変が発症する)。このように、肝臓における脂質代謝は、生体内の健康を維持する上で重要な機能であり、肝臓への脂肪の蓄積は、結果として大きな疾病および疾患へとつながるおそれがある。また、体への脂肪の蓄積は、肥満の原因となり、またそれによって引き起こされる成人病、例えば、高血圧、脂肪肝、肝炎、および肝硬変などがあるが、これらの成人病は社会的問題にもなっている。
そこで、脂肪の吸収を抑制し、体内での脂肪蓄積防止が試みられている(特開平8−259461号公報および特願2000−31955号公報)。
しかし、これらの効果は十分ではなく、特に、リパーゼの阻害効果があったとしても、脂質の吸収を十分抑制し得ないという問題がある。
【発明の開示】
本発明者らは、上述の脂質代謝を改善する成分について鋭意検討した。その結果、松樹皮抽出物に優れた脂質代謝改善効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、脂質代謝改善剤を提供し、この脂質代謝改善剤は、松樹皮抽出物を有効成分として含有する。
好適な実施態様においては、上記脂質代謝改善剤は脂質吸収抑制剤である。
好適な実施態様においては、上記脂質代謝改善剤はコレステロール排泄促進剤である。
好適な実施態様においては、上記脂質代謝改善剤は体脂肪低減剤である。
好適な実施態様においては、上記脂質代謝改善剤は内臓脂肪および皮下脂肪の脂肪蓄積抑制剤である。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1における本発明の脂質代謝改善剤(松樹皮抽出物を含有する脂質吸収抑制剤)が、綿実油投与に伴う血中の中性脂肪の上昇を抑制することを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の脂質代謝改善剤は、松樹皮抽出物を有効成分として含有する。この脂質代謝改善剤は、松樹皮抽出物以外に、さらに必要に応じて機能性成分、栄養成分、および添加剤などを含有し得る。以下、本発明の脂質代謝改善剤に含有される各成分、および本発明の脂質代謝改善剤について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
(I)松樹皮抽出物
松樹皮抽出物の原料となる松樹皮としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、およびカナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮が好ましく用いられる。
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、およびその他の生理活性成分などを含有する。
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、上記の松の樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には、温水または熱水が用いられる。有機溶媒を用いる場合には、食品あるいは薬剤の製造に許容される溶媒が用いられ得る。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、メチルエチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。特に、水、エタノール、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。食品または医薬品に用いる場合の安全性の観点から、水、エタノール、および含水エタノールがより好ましく、加温して抽出することがより好ましい。
松樹皮からの抽出方法に特に制限はないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、および亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
超臨界流体抽出法は、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程、および目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程とからなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出法を用いてもよい。この方法は、超臨界流体を形成し得る上記流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、およびケトン類を2〜20W/V%程度添加し、この流体を超臨界流体状態として目的物質を抽出する方法である。この方法によれば、プロアントシアニジンおよびカテキン類などの目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇でき、または分離の選択性を増強させることができるので、効率的に松樹皮抽出物を得ることができる。
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、および超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
上記抽出により得られた松樹皮抽出物は、限外濾過、あるいは吸着性担体(ダイヤイオンHP−20、Sephadex−LH20、キチンなど)を用いたカラム法またはバッチ法により精製を行うことが安全性の面から好ましい。
本発明の脂質代謝改善剤に用いられる松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法により調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和水溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mLで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mLを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回繰り返す。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過して回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mLに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して洗浄するため沈殿させる工程を2回繰り返す。この方法により、例えば、重合度が2〜4のプロアントシアニジンを20質量%以上含有し、かつカテキン類を5質量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。ここで、抽出物中の特定の成分の含有量は、抽出物の乾燥質量を基準とした値である。以下、同様である。
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、主な有効成分の一つとして、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果実の皮および種に集中的に含まれている。このプロアントシアニジンは、ヒトの体内では生成することができない物質である。
このプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物を摂取した場合に、優れた脂質代謝改善効果が得られる。松樹皮抽出物には、プロアントシアニジンとして重合度が2以上の縮重合体が含有され、さらにカテキンなどが含有される。特に、重合度が低い縮重合体が多く含まれるプロアントシアニジンが好ましく用いられる。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)がさらに好ましい。重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)のプロアントシアニジンは、特に体内に吸収されやすいため、コレステロールの排泄促進作用の他に、中性脂肪の分解促進などの作用がより効果的に得られると考えられる。本明細書では、上記の重合度が2〜4の重合体を、オリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin、以下「OPC」という)という。
また、5量体以上のプロアントシアニジンは、コレステロールの排泄および中性脂肪の吸収阻害を促進する作用を有すると考えられる。松樹皮抽出物としては、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体;すなわち、OPC)を15質量%、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%の割合で含有し、5量体以上のプロアントシアニジンを10質量%以上、好ましくは15質量%以上の割合で含有する抽出物が好ましい。上記のように松樹皮抽出物においては、OPCおよび5量体以上のプロアントシアニジンが含まれていることにより、コレステロールの排泄促進作用、脂肪吸収抑制作用、体脂肪低減作用などが得られると考えられる。このような相乗的な作用により、体内における脂質代謝が改善される。
上記松樹皮抽出物には、さらにカテキン(catechin)類が含有され得、このカテキン類は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上の割合で含有される。カテキン類は、上記抽出方法によって、プロアントシアニジン(OPC)とともに抽出され得る。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、およびアフゼレキンなどが知られている。上記松樹皮抽出物からは、上記の(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキンまたはガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類には、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、血圧上昇の抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化効果、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、および抗酸化作用などがあることが知られている。また、カテキン類には、血糖の上昇を抑制する抗糖尿病効果があることが知られている。カテキン類は、単独では水溶性が乏しく、その生理活性が低いが、OPCの存在下では、水溶性が増すと同時に活性化する性質がある。従って、カテキン類はOPCとともに摂取することで効果的に作用する。
カテキン類は、上記松樹皮抽出物に、5質量%以上含有されていることが好ましい。より好ましくは、OPCを20質量%以上、かつ5量体以上のプロアントシアニジンを10質量%以上含有する松樹皮抽出物に、カテキン類が5質量%以上含有されるのが好ましい。例えば、松樹皮抽出物のカテキン類含有量が5質量%未満の場合、含有量が5質量%以上となるようにカテキン類を添加してもよい。カテキン類を5質量%以上含有し、OPCを20質量%以上、かつ5量体以上のプロアントシアニジンを10質量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。
(II)機能性成分
本発明の脂質代謝改善剤に含有され得る上述の機能性成分としては、アスコルビン酸およびその誘導体、ムコ多糖類、アミノ糖、フラボノイド類、アスコルビン酸以外のビタミン類、および水溶性食物繊維などが挙げられる。
アスコルビン酸またはその誘導体は、松樹皮抽出物中のプロアントシアニジン、特にOPCの効果をより効率よく発揮させることができる。アスコルビン酸の誘導体としては、通常、食品添加物として用いられるアスコルビン酸の誘導体が用いられ得、例えば、アスコルビン酸グリコシド、アスコルビン酸ナトリウム、およびアスコルビン酸マグネシウムなどがある。また、アスコルビン酸を豊富に含む天然素材(例えば、レモン、オレンジ、およびアセロラなどの果実由来の天然素材、あるいは、ブロッコリー、メキャベツ、ピーマン、コマツナ、およびカリフラワーなどの野菜由来の天然素材)を利用することも可能である。
アスコルビン酸を上記OPCとともに摂取すると、アスコルビン酸の吸収率および生理活性の持続性が高くなることが知られている。本発明では、血管の保護、特に血管の柔軟性と強度の増強や血中のコレステロールを低下させる目的で、アスコルビン酸またはその誘導体を含有させる。特に、アスコルビン酸は、血管だけでなくあらゆる組織の構成タンパク質であるコラーゲンの合成を促進する作用、ストレス(特に、酸化ストレス)を軽減する作用、抗血栓作用、および免疫力を高める作用があることが知られているため、血管保護や血液の流動性の改善効果だけでなく、生体内全体の組織を改善する効果がある。
本発明の脂質代謝改善剤がアスコルビン酸またはその誘導体を含有する場合は、松樹皮抽出物中のプロアントシアニジンに対して、質量比で、好ましくは1:0.1〜1:50、より好ましくは1:0.2〜1:20となるように、含有される。しかし、アスコルビン酸の量は、上記の比率を超える量であっても差し支えない。
上記機能性成分のうち、ムコ多糖類およびアミノ糖などは、松樹皮抽出物と同様にコレステロール排泄促進効果を有する。アスコルビン酸以外のビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンK、およびビタミンEなどがある。水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリンなどがある。
上記機能性成分のうち、特に、血糖値、血中脂質、および血圧の上昇抑制作用を有する成分、抗血栓作用、抗炎症作用、および抗腫瘍作用など、細胞接着因子との関わりの深い疾病疾患を予防する効果を有する成分が好適に含有され得る。このような成分としては、例えば、含硫有機化合物、ビタミンB群、ビタミンK、ビタミンE、キチンおよびその誘導体、キトサンおよびその誘導体、ムコ多糖類、アミノ糖、およびコラーゲンなどがあり、血管の保護作用および抗酸化作用を有するヘスペリジン、ケルセチン、ルチン、およびこれらの誘導体なども好適に用いられ得る。
(III)その他の成分
本発明の脂質代謝改善剤に含有され得る栄養成分は、特に限定されないが、例えば、ローヤルゼリー、プロテイン、ミネラル、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、およびモロヘイヤ末などがある。さらに、ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液、および調味料などを加えて味を整えてもよい。
本発明の脂質代謝改善剤に含有され得る添加剤としては、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、滑沢剤、湿潤剤、懸濁剤、着色料、香料、および食品添加物などがある。
(IV)脂質代謝改善剤
本発明の脂質代謝改善剤は、上記松樹皮抽出物、および必要に応じて各種機能性成分、栄養成分、添加剤などを含有する。具体的には、これらの成分を用いて、通常、当業者が行う加工を施し、各種の形状に調製される。
例えば、本発明の脂質代謝改善剤の加工方法は、松樹皮抽出物に賦形剤などを加えて、錠剤もしくは丸剤などの形状に成形してもよく、あるいは、成形せずに、散剤の形態や、その他の形態としてもよい。その他の剤型としては、ハードカプセルおよびソフトカプセルなどのカプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、およびペーストなどがある。また、ティーバッグ状および飴状などに加工することも可能である。
本発明の脂質代謝改善剤の摂取方法は、特に限定されない。脂質代謝改善剤を、その形状または好みに応じて、そのまま飲食しても良いし、あるいは水、湯、および牛乳などに溶いて飲んでも良いし、成分を浸出させたものを飲んでも良い。
本発明の脂質代謝改善剤は、松樹皮抽出物を任意の割合で含有する。本発明の脂質代謝改善剤は、その作用機作から以下に説明するようにいくつかの類型に分類され得るが、一般的に、例えば食品および医薬品とする場合、松樹皮抽出物の含有量は、求める作用機作(効果)により変動するが、一般的にはプロアントシアニジンの含有量に換算して0.00005質量%〜50質量%が好ましい。
本発明の脂質代謝改善剤の摂取量は、その効果を得るために、1日あたりの摂取量がプロアントシアニジンとしての下限値で0.0005g以上、好ましくは0.001g以上、より好ましくは0.02g以上、最も好ましくは0.04g以上である。また、1日あたりの摂取量は、プロアントシアニジンとしての上限値で1.0g以下、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.3g以下である。この値は、求める作用機作(効果)により変動し得る。
以下、本発明の脂質代謝改善剤に含まれる類型について説明する。
(IV−1)脂質吸収抑制剤
本発明の脂質代謝改善剤は、消化過程における脂質の分解を抑制する効果を有する。従って、本発明の脂質代謝改善剤は、脂質吸収抑制剤として使用され得る。脂質吸収抑制剤は、上記の加工方法で加工され得、上記の摂取方法で摂取され得る。
また、脂質吸収抑制剤は、松樹皮抽出物を任意の割合で含有する。例えば、食品および医薬品とする場合、松樹皮抽出物の含有量は、プロアントシアニジンの含有量に換算して0.0001質量%〜50質量%、好ましくは0.001質量%〜50質量%、より好ましくは0.005質量%〜20質量%である。
上記脂質吸収抑制剤の摂取量は、その効果を得るために、1日あたりの摂取量がプロアントシアニジンとして0.002g〜1.0g、好ましくは0.004g〜0.5gである。
(IV−2)コレステロール排泄促進剤
本発明の脂質代謝改善剤は、体内のコレステロールを効率よく体外に排泄させる効果を有する。従って、本発明の脂質代謝改善剤は、コレステロール排泄促進剤として使用され得る。コレステロール排泄促進剤は、上記の加工方法で加工され得、上記の摂取方法で摂取され得る。
また、コレステロール排泄促進剤は、松樹皮抽出物を任意の割合で含有する。例えば、食品および医薬品とする場合、松樹皮抽出物の含有量は、プロアントシアニジンの含有量に換算して0.001質量%〜50質量%、好ましくは0.005質量%〜30質量%、より好ましくは0.01質量%〜20質量%である。
上記コレステロール排泄促進剤の摂取量は、その効果を得るために、1日あたりの摂取量がプロアントシアニジンとして0.001g〜1.0g、好ましくは0.02g〜0.5g、より好ましくは0.04g〜0.3gである。
(IV−3)体脂肪低減剤
本発明の脂質代謝改善剤は、消化過程における脂質の分解を抑制する効果、および吸収された脂質の分解を促進する効果を有する。従って、本発明の脂質代謝改善剤は、体脂肪低減剤として使用され得る。体脂肪低減剤は、上記の加工方法で加工され得、上記の摂取方法で摂取され得る。
また、体脂肪低減剤は、松樹皮抽出物を任意の割合で含有する。例えば、食品および医薬品とする場合、松樹皮抽出物の含有量は、プロアントシアニジンの含有量に換算して0.00005質量%〜50質量%、好ましくは0.001質量%〜50質量%、より好ましくは0.005質量%〜20質量%である。また、松樹皮抽出物とした場合は、含有量の下限値が0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、上限値は50質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
上記体脂肪低減剤の摂取量は、その効果を得るために、1日あたりの摂取量がプロアントシアニジンとして0.0005g〜1.0g、好ましくは0.001g〜0.5gである。
(IV−4)脂肪蓄積抑制剤
本発明の脂質代謝改善剤は、消化過程における脂質の分解を抑制する効果などを有する。従って、本発明の脂質代謝改善剤は、脂肪蓄積抑制剤として使用され得る。脂肪蓄積抑制剤は、上記の加工方法で加工され得、上記の摂取方法で摂取され得る。
また、脂肪蓄積抑制剤は、松樹皮抽出物を任意の割合で含有する。例えば、食品および医薬品とする場合、松樹皮抽出物の含有量は、プロアントシアニジンの含有量に換算して0.00005質量%〜50質量%、好ましくは0.001質量%〜50質量%、より好ましくは0.005質量%〜20質量%である。また、松樹皮抽出物とした場合は、含有量の下限値が0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、上限値は50質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
上記脂肪蓄積抑制剤の摂取量は、その効果を得るために、1日あたりの摂取量がプロアントシアニジンとして0.0005g〜1.0g、好ましくは0.001g〜0.5gである。
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、この実施例は本発明を制限するものではない。
[実施例1]脂質吸収抑制作用の評価
エタノールおよび水で抽出して得られた松樹皮抽出物(OPC含有量30質量%;株式会社東洋新薬)を用いて下記のように脂質吸収抑制作用を評価した。
5週齢の雄性SDラット(株式会社日本チャールズリバー)10匹を基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次いで、16時間絶食させ、各群の平均体重がほぼ同等となるように2群に分けた。次いで、眼窩より採血し血清を得た後に、1群のラットには、綿実油0.5mlとともに上記松樹皮抽出物を100mg/kg体重となるように、ゾンデで強制経口投与した(試験群とする)。残りの1群については、綿実油0.5mlのみを投与した(対照群とする)。
上記投与から1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後に、再度眼窩より採血し、血中の中性脂肪値を中性脂肪測定キット(和光純薬工業株式会社)で測定した。なお、測定結果は、投与前の測定値を1として、投与後における各時間の測定値を相対値として算出した。図1には平均値を、表1には平均値および標準偏差を示す。

図1および表1の結果より、松樹皮抽出物を含有する本発明の脂質代謝改善剤を加えた試験群は、加えていない対照群に比べ、綿実油投与に伴う血中の中性脂肪の上昇を抑制し得ることがわかる。すなわち、本発明の脂質代謝改善剤は、脂質吸収抑制作用を有し、血中の中性脂肪の上昇を抑制していることがわかる。
なお、投与から1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後の上記試験結果について、二元配置の分散分析を行なったところ、試験群および対照群の間に、有意水準1%で有意差が認められた。さらにテューキーの方法による多重比較を行なったところ、試験群および対照群の間に、有意水準1%で有意差が認められた。
[実施例2]コレステロール排泄促進作用の評価
OPCを40質量%、5量体以上のプロアントシアニジンを20質量%、およびカテキンを10質量%含有する松樹皮抽出物(商品名:フラバンジェノール;株式会社東洋新薬)を用いて、下記のようにコレステロール排泄促進作用を評価した。
4週齢のSDラット(株式会社日本チャールズリバー)30匹を基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次いで、血中の全コレステロール量を測定キット(コレステロールE−テストワコー、和光純薬株式会社)で測定し、各群の平均値がほぼ同等となるように5群に分けた。次いで、コレステロールを1質量%、コール酸ナトリウムを0.25質量%、およびコーンオイルを10質量%の割合となるように基本飼料に添加し、さらにこれに松樹皮抽出物を0.02質量%、0.2質量%または2.0質量%となるように加えて3種の試験飼料とした。これらの試験飼料のうちの異なる1種ずつを、上記3群のラットの各々に自由摂取させた(試験群とする)。残りの2群のうち1群を対照として、上記試験飼料と同様であるが松樹皮抽出物のみを含有しない対照飼料を同様に自由摂取させた(対照群とする)。さらに、残りの1群には、基本飼料を同様に自由摂取させた(基本群とする)。摂取開始から24日目に各ラットの糞便を回収した。さらに25、26、および27日目にも同様に回収した。これらの回収された糞便からFolchらの方法(Folch J.et al、ジャーナル オブ バイオロジカルケミストリー(J.Biol.chem.)、226巻、497−509頁参照)によって、脂質成分を抽出し、前記測定キットによって全コレステロール量を測定した。その結果を表2に示す。

表2の結果より、松樹皮抽出物を含有する本発明の脂質代謝改善剤を加えた試験群は、松樹皮抽出物を0.02質量%とごくわずかな量を含有するだけであるが、加えていない対照群に比べて、優れたコレステロール排泄促進作用を有することが分かる。
同様の試験を、松樹皮抽出物ではなく、ブドウ種子抽出物(OPCを40質量%、および5量体以上のプロアントシアニジンを30質量%含有する)を用いて行ったところ、上記松樹皮抽出物の場合に比べてはるかに低い効果しか得られなかった。
[実施例3]体脂肪低減作用の評価
松樹皮抽出物(OPC含有量30質量%;株式会社東洋新薬)を用いて下記のように体脂肪低減作用を評価した。
4週齢のSDラット(株式会社日本チャールズリバー)21匹を基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次いで、各群の平均体重がほぼ同等となるように3群に分けた。次いで、コレステロールを1質量%、コール酸ナトリウムを0.25質量%、およびコーンオイルを10質量%の割合となるように基本飼料に添加し、さらにこれに松樹皮抽出物を0.02質量%または2.0質量%となるように加えて2種の試験飼料とした。これらの試験飼料のうちの1種を、上記のうち1群のラットに自由摂取させ、他の1種の試験飼料をもう1群のラットに自由摂取させた(試験群とする)。残りの1群を対照として、上記試験飼料と同様であるが松樹皮抽出物のみを含有しない対照飼料を同様に自由摂取させた(対照群とする)。
摂取開始から28日目に各ラットの体重を測定し、その後解剖し、腎周囲の脂肪組織を摘出して脂肪質量を測定した。体重あたりの脂肪質量(%)を、下記の式(I)で算出した。結果を表3に示す。


表3の結果より、松樹皮抽出物を含有する本発明の脂質代謝改善剤を加えた試験群は、加えていない対照群に比べ、体重あたりの脂肪質量が減少していることがわかる。すなわち、本発明の脂質代謝改善剤は、脂肪低減作用を有することがわかる。
[実施例4]脂肪蓄積抑制作用の評価
プロアントシアニジンを75質量%およびカテキンを10質量%の割合で含有する松樹皮抽出物(OPC含有量40質量%および5量体以上のプロアントシアニジン含有量35質量%;株式会社東洋新薬)を用いて下記のように肝臓内脂質蓄積抑制作用を評価した。
4週齢のSDラット(株式会社日本チャールズリバー)24匹を基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次いで、血中の全コレステロール量を測定キット(コレステロールE−テストワコー、和光純薬株式会社)で測定し、各群の平均値がほぼ同等となるように4群に分けた。次いで、コレステロールを1質量%、コール酸ナトリウムを0.25質量%、およびコーンオイルを10質量%の割合となるように基本飼料に添加し、さらにこれに松樹皮抽出物を0.2質量%または2.0質量%となるように加えて2種の試験飼料とした。これらの試験飼料のうちの1種を、上記のうち1群のラットに自由摂取させ、他の1種の試験飼料をもう1群のラットに自由摂取させた(試験群とする)。残りの2群のうち1群を対照として、上記試験飼料と同様であるが松樹皮抽出物のみを含有しない対照飼料を同様に自由摂取させた(対照群とする)。さらに、残りの1群には、基本飼料を同様に自由摂取させた(基本群とする)。
摂取開始から28日目に各ラットより肝臓を摘出し、Folchらの方法(Folch J.et al、ジャーナル オブ バイオロジカルケミストリー(J.Biol.chem.)、226巻、497−509頁参照)によって、肝臓組織中の脂質成分を抽出し、前記測定キットによって全コレステロール量を測定した。さらに、肝臓内のトリグリセライドについても測定キット(トリグリセライドG−テストワコー、和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。それらの結果を表4に示す。

表4の結果より、松樹皮抽出物を含有する本発明の脂質代謝改善剤を加えた試験群は、加えていない対照群に比べ肝臓内のコレステロール並びにトリグリセライドが減少していることがわかる。すなわち、本発明の脂質代謝改善剤は、肝臓内脂質蓄積抑制作用を有し、肝臓内のコレステロールおよびトリグリセライドの量を減少させることが可能である。従って、本発明の脂質代謝改善剤を用いると、脂肪肝や肝硬変の予防が期待でき、肝臓の代謝を正常に維持することができると考えられる。
同様の試験を、松樹皮抽出物ではなく、プロアントシアニジンを90質量%の割合で含有するブドウ種子抽出物を用いて行ったところ、同様に肝臓内脂質蓄積抑制効果が得られたが、その作用はプロアントシアニジン含有量が75質量%である上記松樹皮抽出物の場合に比べてやや低かった。
[実施例5]脂肪蓄積抑制作用および脂質吸収抑制作用の評価
プロアントシアニジンを60質量%の割合で含有する松樹皮抽出物(OPC含有量30質量%;株式会社東洋新薬)を用いて下記のように内臓脂肪および皮下脂肪の脂肪蓄積抑制作用、ならびに脂質吸収抑制作用を評価した。
7週齢の雌性ICR系マウス(日本クレア株式会社)14匹を基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次いで、各群の平均体重がほぼ同等となるように2群に分けた。次いで、1群のマウスに、牛脂を40質量%、グラニュー糖を9質量%、および上記の松樹皮抽出物を5質量%含有する試験飼料を自由摂取させた(試験群とする)。残りの1群のマウスには、試験飼料と同様であるが松樹皮抽出物のみを含有しない対照飼料を自由摂取させた(対照群とする)。
摂取開始から25日目に各ラットの体重を測定し、体重の増加率を、下記の式(II)で算出した。
増加率(%)=(摂取開始25日目の体重−摂取前の体重)/摂取前の体重×100
…(II)
さらに、皮下脂肪を実験動物用X線CT(商品名:LATheata;アロカ社)で測定した。次いで、各マウスの眼底より採血した後解剖し、後腹膜脂肪および子宮周囲脂肪を摘出して、これらの脂肪の合計質量(内臓脂肪の質量)を測定した。また、採血した血液は、血中の中性脂肪値を中性脂肪測定キット(和光純薬工業株式会社)で測定した。結果を表5に示す。

表5の結果より、松樹皮抽出物を含有する本発明の脂質代謝改善剤を加えた試験群は、加えていない対照群に比べ、内臓脂肪および皮下脂肪量が減少していることがわかる。すなわち、本発明の脂質代謝改善剤は、内臓脂肪および皮下脂肪の脂肪蓄積抑制作用を有することがわかる。また、体重の減少効果も得られた。
さらに、松樹皮抽出物を含有する本発明の脂質代謝改善剤を加えた試験群は、加えていない対照群に比べ、血中の中性脂肪が減少していることがわかる。すなわち、本発明の脂質代謝改善剤は、脂質吸収抑制作用を有することがわかる。
[実施例6]脂肪蓄積抑制作用の評価
実施例5と同じ松樹皮抽出物を用いて下記のように脂肪蓄積抑制作用を評価した。
(脂肪細胞への分化誘導)
マウス由来の3T3L1細胞を、24ウェルプレートに1ウェル当たり3×10細胞となるように、標準培地(10容量%で非働化した牛胎児血清を含有するDMEM培地)に懸濁した細胞を播種し、48時間培養した。次いで、この培養した細胞を脂肪細胞に分化させるために標準培地を除去した後、分化誘導培地1(0.5mM 3−isobutyl−1−methylxathine、1μM Dexamethazoneおよび10容量%で非働化した牛胎児血清を含有するDMEM培地)を1ウェル当たり2ml加えて48時間培養した。次いで、分化誘導培地1を除去した後に、分化誘導培地2(10μg/ml Insulinおよび10容量%で非働化した牛胎児血清を含有するDMEM培地)を加えて、さらに48時間培養した。次いで、培地を標準培地に置換して48時間培養し、分化誘導を行なった。
(脂肪細胞蓄積抑制試験)
分化誘導終了後、標準培地を除去した。次いで、標準培地に上記松樹皮抽出物を0.0001質量/容量%含有する試験培地(試験培地1とする)、松樹皮抽出物の代わりに脂肪分解促進効果を有することが知られている大豆イソフラボン(不二製油社)を含有する試験培地(試験培地2とする)、および何も加えない標準培地をそれぞれ4ウェルずつ準備し、1ウェル当たりに2ml加えて(それぞれ試験培地1群、試験培地2群、および標準培地群とする)24時間培養した。培養が終了した後に、培地を除去し、PBS(−)でウェルを3回洗浄した。次いで、10容量%のホルムアルデヒド溶液を1ウェル当たり0.5ml添加して、室温で1時間反応させ細胞を固定した。次いで、ホルムアルデヒド溶液を除去し、PBS(−)でウェルを3回洗浄した後にOil Red Solution(和光純薬工業株式会社)を1ウェル当たり0.5ml添加して、1時間反応させて細胞中に蓄積した脂肪を染色した。染色後、PBS(−)でウェルを3回洗浄し、イソプロパノールを1ウェル当たり0.5ml添加して、室温で30分間かけて細胞中の脂肪を抽出し、上清を回収した。回収したそれぞれの上清は、490nmの吸光度を測定し、平均値を求めた。測定にはイソプロパノールをブランクとして用い、下記の式(III)で標準培地群の平均値を100%としたときの脂肪蓄積抑制効果を算出した。結果を表6に示す。


表6の結果より、松樹皮抽出物を含有する本発明の脂質代謝改善剤を加えた試験培地1群は、大豆イソフラボンを加えた試験培地2群に比べ、脂肪細胞における脂肪蓄積を抑制し得ることがわかる。すなわち、本発明の脂質代謝改善剤は、脂肪の細胞内への取り込み抑制、または細胞内での脂肪分解促進のいずれかの理由により、脂肪蓄積抑制作用を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
本発明の脂質代謝改善剤は、有効成分として松樹皮抽出物を含有しており、この松樹皮抽出物には、OPCおよび5量体以上のプロアントシアニジンなどが含まれている。OPCは体内に吸収されやすく、体内において、コレステロールの排泄、および中性脂肪の分解を促進し、効率よく脂肪を代謝させる作用があると考えられる。他方、5量体以上のプロアントシアニジンは、消化過程における脂質の分解を抑制することなどにより、消化管からの脂質の吸収を抑制すると考えられる。従って、本発明の脂質代謝改善剤が、食品および医薬品などに利用されることによって、脂質代謝を改善することができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮抽出物を有効成分とする、脂質代謝改善剤。
【請求項2】
前記脂質代謝改善剤が、脂質吸収抑制剤である、請求項1に記載の改善剤。
【請求項3】
前記脂質代謝改善剤が、コレステロール排泄促進剤である、請求項1に記載の改善剤。
【請求項4】
前記脂質代謝改善剤が、体脂肪低減剤である、請求項1に記載の改善剤。
【請求項5】
前記脂質代謝改善剤が、内臓脂肪および皮下脂肪の脂肪蓄積抑制剤である、請求項1に記載の改善剤。

【国際公開番号】WO2005/046706
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515416(P2005−515416)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016448
【国際出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】