説明

板圧延のパススケジュールの設定方法

【課題】所望の平坦度、板クラウンを安定的に得ることのできる板圧延のパススケジュールの設定方法を提供する。
【解決手段】各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれ、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれ、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを指標とする評価関数を用い、該評価関数値を最小とするパススケジュールを探索し、これを実現するようにパススケジュールを設定する。このとき、各パス出側における伸びひずみ差、各パスにおける板クラウン比率変化、各パス出側における板クラウンの、それぞれ理想値からのずれを、それぞれ各パス出側板厚のべき乗で除したものを指標とする評価関数を用いることが好ましい。また、各パス出側板厚が所定値以下の領域で各パス出側における板クラウン比率が一定となるように板クラウンの理想値を設定することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板圧延のパススケジュールの設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板材を複数の圧延パスにより所定の板厚まで圧延する場合、各パスで板厚をどのように減じていくか、いわゆるパススケジュールを設定する必要がある。
【0003】
各パスでの最大圧下量は、圧延機ハウジングの許容荷重、圧延機モータ及びスピンドルの許容トルク、圧延ロールの許容接触荷重、被圧延材の圧延機への噛込限界などで決定される。特許文献1で開示された技術では、初期板厚を基準に、各パスでの圧下量を最大として、出側板厚が所望の板厚をはじめて下回る総圧延パス数を求め、このときの最終パスでの出側板厚と所望の板厚との差に応じて各パス出側板厚を修正することにより、少ない総圧延パス数で所望の板厚を得ることができるパススケジュールの設定方法が示されている。特許文献1では、所望の板厚を得ることができる最少の総圧延パス数により圧延作業を行うので、総圧延パス数の削減、ひいては、生産性の向上に寄与できる。ところが、特許文献1では、圧延板の重要な品質管理項目の一つである板クラウンや平坦度には特段の注意を払っていないため、必ずしも所望の板クラウン、平坦度を得ることができるとは限らない。所望の板クラウン、平坦度を達成しない被圧延材は、歩留ロスや平坦度矯正のような他工程の負荷の増加を招くので、本方法は、実用的な板圧延のパススケジュール設定方法とはなり得ない。
【0004】
ここで、板クラウンとは、被圧延材の板幅中央における板厚と、板幅端部から所定の距離に定義されるクラウン定義点における板厚との差を意味する。
【0005】
また、例えば、圧延板に耳波が存在する場合、板の長さ方向に板に沿って測定される線長は、板幅端部における値のほうが板幅中央部における値よりも大きくなっている。これら両者の差を線長差と呼び、この線長差を板長さで除したものを伸びひずみ差(あるいは線長差率)と呼ぶ。換言すると、伸びひずみ差とは、板を仮想的に板幅方向にスリット分割した場合の板幅中央部に位置するスリットの伸びひずみとクラウン定義点に位置するスリットの伸びひずみとの差であり、圧延板の平坦度と相関のある指標として、しばしば用いられている。
【0006】
一方、ある圧延パスにおける板クラウン比率変化と当該圧延パス出側における伸びひずみ差(当該圧延パス出側における被圧延材の平坦度を表す)との間には、次の式(1)のような密接な関係があることが非特許文献1に示されている。
【0007】
【数1】

(1)
【0008】
ここでH、hはそれぞれ当該圧延パスにおける入側板厚及び出側板厚であり、C、Cはそれぞれ当該圧延パス入側及び出側における板クラウンである。また、板クラウンを板厚(通常、板幅中央における板厚が良く用いられる)で除した値であるC/H、及び、C/hをそれぞれ当該圧延パスの入側、出側における板クラウン比率と呼ぶ。板クラウン比率変化とは、圧延パスの出側におけるクラウン比率C/hと、該圧延パスの入側におけるクラウン比率C/Hとの差である。さらに、ξは形状変化係数と呼ばれる係数であり、ξ=0の場合は板クラウン比率が変化しても伸びひずみ差Δε(平坦度に対応する)が現れず、一方、ξ=1の場合は板クラウン比率の変化が全て伸びひずみ差Δεに現れることを意味する。通常、形状変化係数ξは0と1との間の値をとる。
【0009】
式(1)の関係に基づき、被圧延材の平坦度を確保するためには、板クラウン比率一定圧延が望ましいと言われている。
【0010】
例えば、非特許文献2に開示された技術では、所望の出側板厚を最終パス出側板厚とし、板クラウン比率一定圧延を実現する最終パス入側板厚を計算し、これを該圧延パス入側板厚が初期板厚となるまで上流パスにさかのぼって繰り返す。このとき、該圧延パス荷重もしくは該圧延パストルクがそれぞれの許容値を超えると、該圧延パスを含む上流側の各パス入側板厚を許容荷重、許容トルクの範囲内となるように設定する。このようにして、初期板厚から所望の板厚を実現するパススケジュールを設定する方法が示されている。
【0011】
ところが、板クラウン比率一定圧延を行う圧延パス数をやみくもに増加させることは総圧延パス数の増加による生産性の悪化を招いてしまう。そこで、例えば、非特許文献3には、板クラウン比率の変化に許容範囲を持たせたパススケジュールの設定方法が示されている。ところが、板クラウン比率変化を抑制した圧延パスと最大負荷能力で決められる圧延パスとの繋ぎ圧延パスでの圧延条件が悪いと、平坦度が悪化するという問題もある。例えば、特許文献2には、繋ぎ圧延パスでの板クラウン比率変化がある程度以上に大きい場合に、板クラウン比率一定圧延の第1パスの圧延荷重を引き下げることにより平坦度悪化を抑制する方法が提案されているが、板クラウン比率を一定とする圧延パス、もしくは、板クラウン比率変化を抑制する圧延パスと、最大負荷圧延パスとの間の繋ぎ圧延パスでの大きな板クラウン比率変化を特定の圧延パスにおいて集中的に補償しようとしていることに起因して、平坦度悪化を安定的に抑制することは困難である。
【0012】
数値解析モデルに基づくパススケジュールの設定方法として、非特許文献4には、入側板厚から所望の出側板厚を実現できる任意のパススケジュールに対して、最終パス出側における平坦度を評価し、これを平坦とするパススケジュールを収束計算して求める方法が示されている。ところが、非特許文献4では、板クラウンに関する制約がないだけでなく、途中パス出側における平坦度にも何ら制約がないので、所望の板クラウン、平坦度を安定的に達成できるパススケジュールを得ることは難しい。
【0013】
一方、例えば、非特許文献5に、関数評価に基づくパススケジュールの設定方法が示されている。この方法では、ある評価指標の理想値との差異を評価関数に用いることで、評価指標の理想値からのずれを許容しつつ、これを最小とするためには、どの圧延パスでどれだけそのずれを許容するのが最善かを、評価関数値として定量化することができる。このとき、用いる評価関数の良否が得られるパススケジュールの良否を左右してしまう。本例では、各パスでの板クラウン比率変化の累積値を平坦度の評価関数に用いている。特定の圧延パスでの板クラウン比率変化に乗じる重み係数を大きくすることで、該圧延パス出側での平坦度を重視することが可能であることも示されているが、重み係数をどのように与えるべきか、具体的な開示はない。
【0014】
その他、例えば、特許文献3には、過去の操業実績を記憶、参照し、パススケジュールを設定する方法が示されている。また、例えば、特許文献4には、過去の操業実績から、ニューラルネットワークモデルを介してパススケジュールを設定する方法が示されている。ところが、このような経験に基づく手法では、製品品質の厳格化、圧延品種構成や圧延ライン構成の変化に瞬時に対応することは容易ではない。
【0015】
つまり、従来、可能な限り少ない総圧延パス数で、しかも、所望の板クラウン、平坦度を安定的に得る板圧延のパススケジュールの設定方法は見当たらない。
【0016】
なお、本発明に関する、任意の圧延条件に対する該圧延パス出側における板クラウン、該圧延パスにおける板クラウン比率変化、及び、該圧延パス出側における伸びひずみ差の計算方法は、例えば非特許文献6に示されている。また、本発明に関する、形状変化係数ξiは、例えば非特許文献7に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭62−259605号公報
【特許文献2】特開平09−57316号公報
【特許文献3】特開平07−60320号公報
【特許文献4】特開平05−38511号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】日本塑性加工学会編「板圧延」第3章の式(3.146)(第85頁)
【非特許文献2】「塑性と加工」第16巻第168号(1975年)の第10頁〜第17頁
【非特許文献3】「川崎製鉄技報」第8巻第3号の第374頁〜第387頁
【非特許文献4】Iron and Steel Engineer(1977年9月)の第70頁〜第76頁
【非特許文献5】「塑性と加工」第10巻第106号の第808頁〜第816頁
【非特許文献6】日本鉄鋼協会編「板圧延の理論と実際」第4章(第89頁〜第110頁)
【非特許文献7】「塑性と加工」第23巻第263号(1982年)の第1172頁〜第1180頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記したように、従来、可能な限り少ない総圧延パス数で、しかも、所望の板クラウン、平坦度を安定的に得る板圧延のパススケジュールの設定方法は見当たらず、当該設定方法が希求されていた。
【0020】
本発明は、上記課題に鑑み、可能な限り少ない総圧延パス数で、しかも、所望の板クラウン及び/又は平坦度を安定的に得る板圧延のパススケジュールを設定する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明者らは、板圧延のパススケジュールと、板クラウンや、板クラウン比率、伸びひずみ差、平坦度との関係について、数多くの理論検討及び実験検討を行った。これにより、以下の知見を得た。
【0022】
所望の板クラウン、平坦度を得るためには、最終パスの圧延条件だけでなく、最終パスをも含む各パスの圧延条件が少なからず影響を及ぼすことが知られている。それゆえ、所望の板クラウン、平坦度を得るためには、最終パスだけでなく、全圧延パスについて、適切なパススケジュールを設定することが必要となる。
【0023】
そこで、各パス出側の平坦度を定量化するための各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれ、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれ、各パス出側板クラウンを定量化するための各パス出側板クラウンの理想値からのずれ、の少なくともいずれか一つを指標とする評価関数を用い、この評価関数の値を最小化するパススケジュールを求めることで、所望の板クラウン、平坦度を安定的に得ることが可能となることが判明した。さらにこのとき、出側板厚が薄くなるほど、各パスでの圧延条件が各パス出側での板クラウンや平坦度に及ぼす影響が大きくなる傾向があることが判明した。それゆえ、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、の少なくともいずれか一つを指標とする評価関数を用いることが好ましいことが判明した。なお、各パス出側における伸びひずみ差の理想値は、一般にゼロを設定すればよいが、被圧延材の圧延操業の困難さ等に応じて、任意の適切な値を設定することもできる。
【0024】
さらに、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを各パス出側板厚のl乗で除したものを指標とする評価関数を用いるにあたり、板厚の影響がほとんど無いものも存在する一方、影響の程度が板厚の4乗を越えるほど顕著なものは現状で見当たらなかった。したがって、べき乗の指数lは0<l≦4とすることが好ましいことが判明した。さらに、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が大きい場合には上記板厚の影響は大きい一方、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が小さい場合には上記板厚の影響は小さいことも判明した。それゆえ、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が大きい場合にはべき乗の指数lは大きめに設定することが好ましい一方、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が小さい場合にはべき乗の指数lは小さめに設定することが好ましいことが判明した。
【0025】
また、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを各パス出側板厚のm乗で除したものを指標とする評価関数を用いるにあたり、板厚の影響がほとんど無いものも存在する一方、影響の程度が板厚の4乗を越えるほど顕著なものは現状で見当たらなかった。したがって、べき乗の指数mは0<m≦4とすることが好ましいことが判明した。加えて、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が大きい場合には上記板厚の影響は大きい一方、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が小さい場合には上記板厚の影響は小さいことも判明した。つまり、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が大きい場合にはべき乗の指数mは大きめに設定することが好ましい一方、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が小さい場合にはべき乗の指数mは小さめに設定することが好ましいことが判明した。なお、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値は、一般にゼロを設定すればよいが、被圧延材の圧延操業の困難さ等に応じて、任意の適切な値を設定することもできる。
【0026】
同様に、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを各パス出側板厚のn乗で除したものを指標とする評価関数を用いるにあたり、板厚の影響の程度が板厚の1乗以下と小さいものは見当たらない一方、その影響の程度が板厚の5乗を越えるほど顕著なものは現状で見当たらなかった。したがって、べき乗の指数nは1<n≦5とすることが好ましいことが判明した。なお、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が大きい場合には上記板厚の影響は大きい一方、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が小さい場合には上記板厚の影響は小さいことも判明した。それゆえ、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が大きい場合にはべき乗の指数nは大きめに設定することが好ましい一方、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が小さい場合にはべき乗の指数nは小さめに設定することが好ましいことが判明した。
【0027】
また、板クラウン比率一定圧延を行うと平坦度不良の発生を抑制できる一方、出側板厚が薄くなるとわずかな伸びひずみ差により平坦度不良が発生しやすくなることから、各パス出側における板クラウンの理想値を、各パス出側板厚がある値以下の領域では当該パス出側板厚に関わらず各パス出側における板クラウン比率が一定となるように与えることが好ましいことが判明した。このとき、少なくとも各パス出側板厚が20mm以下の領域では、板クラウン比率一定圧延を指向することがより好適であることが判明した。加えて、板幅が広いほどわずかな伸びひずみ差により平坦度不良が発生しやすくなることから、板クラウン比率一定圧延を指向する板厚領域を板幅に応じて変化させることがより好適であることも判明した。
【0028】
本発明は上記の知見を基になされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
【0029】
(1)板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のl乗(l:0<l≦4の実数)で除したものを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法が提供される。
【0030】
(2)板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のm乗(m:0<m≦4の実数)で除したものを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法が提供される。
【0031】
(3)板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のn乗(n:1<n≦5の実数)で除したものを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法が提供される。
【0032】
(4)板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のl乗(l:0<l≦4の実数)で除したもの、並びに、前記各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のm乗(m:0<m≦4の実数)で除したもの、並びに、前記各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のn乗(n:1<n≦5の実数)で除したもの、の少なくともいずれか一つを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法が提供される。
【0033】
(5)前記(3)または(4)に記載の板圧延のパススケジュールの設定方法において、前記各パスの出側板厚が所定値以下の領域で、当該各パスの出側における板クラウン比率が一定となるように、当該各パスの出側における板クラウンの理想値を設定してもよい。
【0034】
(6)前記(5)に記載の板圧延のパススケジュールの設定方法において、前記所定値が少なくとも20mm以上であるようにしてもよい。
【0035】
(7)前記(5)または(6)に記載の板圧延のパススケジュールの設定方法において、前記所定値は、被圧延材の板幅を変数とする関数で決定されてもよい。これにより、板クラウン比率一定圧延を指向する板厚領域を定めるための前記所定値は、被圧延材の板幅に応じて増減して設定される。
【0036】
(8)また、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の板圧延のパススケジュールの設定方法において、圧延機の設備能力に基づく最少総圧延パス数を前記総圧延パス数の初期値に設定し、当該総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該総圧延パス数での前記評価関数の値を最小とするパススケジュールが所望の条件を満たさない場合、前記総圧延パス数を順次増加させて当該増加させた総圧延パス数での前記評価関数の値を最小とするパススケジュールの決定を再試行するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0037】
前記(1)乃至(2)の発明によれば、従来に比して、少ない総圧延パス数で、より安定的に所望の平坦度を得ることのできる板圧延のパススケジュールを設定することができる。前記(3)の発明によれば、従来に比して、少ない総圧延パス数で、より安定的に所望の板クラウンを得ることのできる板圧延のパススケジュールを設定することができる。また、前記(4)の発明によれば、従来に比して、少ない総圧延パス数で、より安定的に、所望の板クラウンや平坦度を得ることのできる板圧延のパススケジュールを設定することができる。さらに、前記(5)乃至(6)の発明によれば、最終パス出側板厚が薄い場合に、安定的に平坦度悪化を抑制することのできる板圧延のパススケジュールを設定することができる。加えて、前記(7)の発明によれば、圧延板の板幅範囲が大きい場合にも、安定的に平坦度悪化を抑制することのできる板圧延のパススケジュールを設定することができる。前記(8)の発明によれば、所望の板クラウンや平坦度を得ることのできる最少の総圧延パス数での最適パススケジュールを設定することができる。
【0038】
以上のように、本発明によれば、従来に比して、可能な限り少ない総圧延パス数で、所望の板クラウン及び/又は平坦度を安定的に得ることのできるパススケジュールの設定が実現できる。また、これにより、圧延の歩留まりロスが抑制され、かつ、生産性が向上するという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に用いた圧延ラインを表す図。
【図2】本発明の実施例に用いた理想クラウンスケジュールを表す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0041】
以下、本発明の一実施形態にかかる板圧延のパススケジュールの設定方法について説明する。本実施形態では、以下の手順でパススケジュールを設定する。ここで、被圧延材の初期板厚をhin、製品板厚などから求まる所望の最終パス出側板厚をhoutと定義する。
【0042】
(1)被圧延材の初期板厚hinを第1パスの入側板厚とし、最大圧下量で圧延を繰り返し、該圧延パス出側板厚が所望の最終パス出側板厚houtを下回る総圧延パス数Nを求める。この総圧延パス数Nは、圧延機の設備能力に基づく最少総圧延パス数に相当し、総圧延パス数の初期値として設定される。
【0043】
(2)第1パス入側板厚hinを起点に、第1パス〜第(N−1)パスを最大圧下量で圧延した場合の第iパス下限出側板厚hを求める。このとき、第Nパス出側板厚は最終パス出側板厚houtに等しくなるように与える。
【0044】
(3)第Nパス出側板厚houtを起点に、第2パス〜第Nパスを最大圧下量で圧延した場合の第(i+1)パス上限入側板厚(=第iパス上限出側板厚)hを求める。このとき、第1パス入側板厚は初期板厚hinに等しくなるように与える。
【0045】
(4)総圧延パス数がNであり、かつ、第iパス出側板厚hが第iパス上限出側板厚hと第iパス下限出側板厚hとの間に存在する、任意の複数のパススケジュールを仮定し、この複数のパススケジュールのうちから選択された1つのパススケジュールに関し、各パス出側における板クラウン、各パスにおける板クラウン比率変化、各パス出側における伸びひずみ差を評価する。このとき、例えば、第iパス上限出側板厚hと第iパス下限出側板厚hとを均等分割して与えられた任意の分割点を通るようなパススケジュールを選択すればよい。
【0046】
なお、任意の圧延条件に対する該圧延パス出側における板クラウンの計算方法は、例えば、非特許文献6に示されている。この非特許文献6によれば、圧延パス出側における板クラウンCは(2)式で求めることができる。ここで、Cは当該圧延パス入側における板クラウン量、α、α、αは、それぞれ圧延荷重P、ロールクラウンRCW及びRCB、ロールベンドJによるワークロール軸心たわみ係数である。また、Bは板幅、Lはロールバレル長である。
【0047】
【数2】

(2)
【0048】
よって、(2)式より当該圧延パス出側における板クラウンCが求まれば、当該圧延パスにおける板クラウン比率変化{(C/h)−(C/H)}が計算でき、さらに、例えば(1)式を用いて当該圧延パス出側における伸びひずみ差Δεを計算することができる。
【0049】
(5)上記(4)で求めた各パス出側における板クラウン、各パスにおける板クラウン比率変化、各パス出側における伸びひずみ差を用いて、該パススケジュールに対する評価関数値を求める。ここで、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれ、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれ、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれの少なくともいずれか一つを指標とする評価関数を用いる。このとき、評価関数の指標として、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを各パス出側板厚のl乗で除したもの、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを各パス出側板厚のm乗で除したもの、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを各パス出側板厚のn乗で除したもの、の少なくともいずれか一つを用いることが好ましく、ここで、指数l及び指数m及び指数nをそれぞれ0<l≦4、0<m≦4、1<n≦5とすることがさらに好ましい。さらに好ましくは、指数l及び指数m及び指数nをそれぞれ0<l≦2、0<m≦2、1<n≦3とする。このとき、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が大きい場合にはべき乗の指数l、m、nは大きめに設定することが好ましい一方、被圧延材の初期板厚と最終パス出側板厚との差が小さい場合にはべき乗の指数l、m、nは小さめに設定することが好ましい。また、各パス出側における板クラウンの理想値を、各パス出側板厚が所定値以下の領域では各パス出側板厚に関わらず各パス出側における板クラウン比率が一定となるように与えることが好ましい。このとき、少なくとも各パス出側板厚が20mm以下となる領域における各パス出側における板クラウンの理想値を、各パス出側における板クラウン比率が一定となるように与えることが好ましい。さらに、このとき、各パス出側における板クラウンの理想値を各パス出側における板クラウン比率が一定となるように与える各パス出側板厚の範囲を板幅に応じて変化させることが好ましい。
【0050】
(6)上記の(4)〜(5)の評価を、上記仮定された複数のパススケジュールについてそれぞれ繰り返して、各パススケジュールの評価関数値を求める。この結果、上記複数のパススケジュールの中で、評価関数値が最小となるパススケジュールが、所望の条件を満たす場合、例えば、最終パス出側における板クラウン、平坦度が所望の値である、あるいは、所望の範囲内にある場合には、当該パススケジュールが最適と評価して、当該最適なパススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定する。一方、上記所望の条件を満たさない場合、例えば、最終パス出側における板クラウン、平坦度が所望の値でない、あるいは、所望の範囲内にない場合には、初期値として設定された総圧延パス数Nを増加させて上記(2)〜(6)を繰り返す。このとき、通常は総圧延パス数Nを1ずつ増加させればよいと考えるが、例えばリバース式圧延の場合には、総圧延パス数Nを2ずつ増加させてもよい。このようにして、当該順次増加された総圧延パス数N+iで仮定された複数のパススケジュールのうち、上記評価関数値が最小となるパススケジュールの決定を再試行し、当該評価関数値が最小となるパススケジュールであって、かつ、上記所望の条件を満たす最適なパススケジュールを得た後に、当該最適なパススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定する。
【0051】
以上、本発明の一実施形態における板圧延のパススケジュール設定の過程を示したが、本実施形態では、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したものの少なくともいずれか一つを指標とする評価関数を用い、該評価関数値を最小とするパススケジュールを求めて設定するので、従来に比して、可能な限り少ない総圧延パス数で、所望の板クラウン、平坦度を安定的に得ることのできるパススケジュールの設定が実現できる。これにより、圧延の歩留まりロスが抑制され、かつ、生産性が向上するという効果も得られる。
【実施例1】
【0052】
以下、本発明の一実施例について図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例で用いられる数値、関数等は、本発明を説明するための一例にすぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
図1に示す、圧延機1による圧延のパススケジュールの設定に本発明を適用する実施例を考える。圧延機1では、その上流から被圧延材2が送られてくる。このとき、該圧延機1の上流側に設けられた板厚計3で該被圧延材2の板厚hinが測定される。該板厚計3で測定された該被圧延材2の板厚hinは、演算装置4に送られる。なお、該演算装置4には、該被圧延材2の鋼種、サイズ、温度などの情報も送られている。また、制御装置5は、演算装置4の演算結果に基づいて設定された最適なパススケジュールに従って、圧延機1を制御する。
【0054】
ここで、該被圧延材2の初期板厚hinは87.3mmであり、これを圧延機1において、最終パス出側板厚houtが10.9mmとなるまで圧延することが求められている。このとき、最終パス出側における平坦度を抑制することが望まれている。よって、式(3)で表される評価関数φを用いて、本発明に基づく演算を演算装置4において実施することにより、最終パス出側における平坦度を抑制することが可能なパススケジュールを探索した。ここで、ωは第iパス出側での評価関数値に対する重みである。本実施例では、第iパス出側における評価関数値に対する重みωを全て1とし、べき乗の指数l=1とした。したがって、実施例1の評価関数φは、指標である各パス出側における伸びひずみ差Δεに対して、その理想値Δε(本実施例ではこれをゼロと置いた)からのずれを各パス出側板厚hで除したものに、重み係数ωを乗じ、各パスについて総和を取ったものである。ただし、指標に基づく評価関数の形はこのような形に全くこだわるものではない。
【0055】
【数3】

(3)
【0056】
本実施例では、形状変化係数ξは非特許文献7に示されているものを用いた。また、本実施例では、最終パス出側における急峻度λを0.5%以下とすることを目標とした。ここで、伸びひずみ差Δεと急峻度λとは式(4)で関係付けた。
【0057】
【数4】

(4)
【0058】
探索演算の結果、表1に示すようなパススケジュールを適用することにより、8パスで最終パス出側における急峻度λを約0.3%に抑制できることが判明した。ちなみに、7パス以下の各総圧延パス数に対して求められた最適パススケジュールでは、最終パス出側における急峻度λを0.5%以下とすることは不可能であった。また、表1には、比較例として、従来、同仕様の被圧延材を8パスで製造する場合のパススケジュール設定と、本パススケジュール設定に対する評価関数値φ、最終パス出側における急峻度λの予測値を示す。ここで、比較例では、非特許文献1に基づく方法を用いて、パススケジュールを設定している。比較例によるパススケジュール設定に対する評価関数値φは本実施例による評価関数値φを上回り、最終パス出側における急峻度λの予測値も大きくなっていることがわかる。なお、評価関数値φの相対比較(大小)は、同一圧延板仕様に対する同一総圧延パス数下でのパススケジュールの優劣を判定する上で意味を持つが、評価関数値φの絶対値自体は意味を持たない(異なる総圧延パス数、圧延板仕様に対するパススケジュールの相対比較には適用できない)ことに注意されたい。
【0059】
【表1】

【0060】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように制御装置5を用いて各パスの圧下を設定し、圧延を実施した結果、最終パス出側における急峻度は0.3%となった。これは、本方法により、良好な平坦度を得るパススケジュールを合理的に探索し、設定することができるようになったためである。なお、従来、本条件と同様の被圧延材に対しては10パスの圧延を実施しており、平坦度も必ずしも良好なものではなかった。つまり、本実施例は、総圧延パス数を2パス減らし、かつ、平坦度の良好な圧延板を得ることを可能としたといえる。
【0061】
以上、本発明をその一実施例を元に説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することもできる。例えば、ここでは、式(3)において各パス出側における伸びひずみ差の理想値Δεをゼロとした場合を例として説明したが、本発明は、各パス出側における伸びひずみ差の理想値をゼロと置く場合に限定するものではなく、例えば、耳波圧延あるいは中伸び圧延を指向し、各パス出側における伸びひずみ差の理想値を非ゼロの任意の値としてもよい。
【0062】
また、本実施例は、式(3)で表される評価関数φを用いた場合を例として説明したが、本発明は、評価関数φを式(3)に限定するものではなく、例えば、係数を乗じたものや、付加項を加えたものなど、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、又は、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、又は、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを各パス出側板厚のべき乗で除したもの、の少なくともいずれか一つを指標に含む種々の評価関数φを用いてもよい。
【0063】
また、本実施例は、総圧延パス数を未知数とする場合を例として説明したが、例えば、仕上熱延工程のような連続タンデム圧延機に適用する場合のように、総圧延パス数を既知数とする場合に本発明を適用することも可能である。
【0064】
さらに、本実施例は、圧延機1で被圧延材2の圧延を開始する前の段階で、該被圧延材2の全圧延パスに対するパススケジュールを設定する場合を例として説明したが、例えば、圧延機1で被圧延材2の圧延を開始した後で本発明を適用してもよい。つまり、例えば、被圧延材2に対し、数パスの圧延を実施した結果、外乱等に起因して、想定した圧延結果が得られていない場合に、該被圧延材2の該圧延パスよりも下流側でのパススケジュールを修正する場合に本発明を適用してもよい。
【実施例2】
【0065】
この実施例2は、被圧延材の入側板厚hinと出側板厚houtとの差が比較的小さい場合に好適なものである。実施例1と同様に、本発明に基づく演算を演算装置4において実施することにより、各パス出側における被圧延材の平坦度を確保しつつ、最終パス出側における板クラウンChNを50μm以内とすることが可能なパススケジュールを探索する。ここで、該被圧延材2の初期板厚hinは48.6mmであり、これを圧延機1において、最終パス出側板厚houtが8.0mmとなるまで圧延することが求められている。そのため、本実施例では、式(5)で表される評価関数φを用いた。すなわち、べき乗の指数l=0.2とした。
【0066】
【数5】

(5)
【0067】
そのほか、各パス出側における伸びひずみ差の理想値Δεはゼロと置き、また、本実施例では、最終パス出側における急峻度λを0.5%以下とすることを目標とした。
【0068】
探索演算の結果、表2に示すようなパススケジュールを適用することにより、8パスで最終パス出側における急峻度λを約0.2%に抑制できることが判明した。ちなみに、7パス以下の各総圧延パス数に対して求められた最適パススケジュールでは、最終パス出側における急峻度λを0.5%以下とすることは不可能であった。また、表2には、比較例として、従来、同仕様の被圧延材を8パスで製造する場合のパススケジュール設定と、本パススケジュール設定に対する評価関数値φ、最終パス出側における急峻度λの予測値を示す。比較例によるパススケジュール設定に対する評価関数値φは本実施例による評価関数値φを上回り、最終パス出側における急峻度λの予測値も大きくなっていることがわかる。
【0069】
【表2】

【0070】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように制御装置5を用いて各パスの圧下を設定し、圧延を実施した結果、最終パス出側における急峻度は0.4%となった。これは、本方法により、良好な平坦度を得るパススケジュールを合理的に探索し、設定することができるようになったためである。つまり、本実施例は、平坦度の良好な圧延板を得ることを可能としたといえる。
【実施例3】
【0071】
この実施例3は、被圧延材の入側板厚hinと出側板厚houtとの差が比較的大きい場合に好適なものである。実施例1と同様に、本発明に基づく演算を演算装置4において実施することにより、各パス出側における被圧延材の平坦度を確保しつつ、最終パス出側における板クラウンChNを50μm以内とすることが可能なパススケジュールを探索する。ここで、該被圧延材2の初期板厚hinは130.3mmであり、これを圧延機1において、最終パス出側板厚houtが8.7mmとなるまで圧延することが求められている。そのため、本実施例では、式(6)で表される評価関数φを用いた。すなわち、べき乗の指数l=4とした。
【0072】
【数6】

(6)
【0073】
そのほか、各パス出側における伸びひずみ差の理想値Δεはゼロと置き、また、本実施例では、最終パス出側における急峻度λを0.5%以下とすることを目標とした。
【0074】
探索演算の結果、表3に示すようなパススケジュールを適用することにより、10パスで最終パス出側における急峻度λを約0.3%に抑制できることが判明した。また、表3には、比較例として、従来、同仕様の被圧延材を10パスで製造する場合のパススケジュール設定と、本パススケジュール設定に対する評価関数値φ、最終パス出側における急峻度λの予測値を示す。比較例によるパススケジュール設定に対する評価関数値φは本実施例による評価関数値φを上回り、最終パス出側における急峻度λの予測値も大きくなっていることがわかる。
【0075】
【表3】

【0076】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように制御装置5を用いて各パスの圧下を設定し、圧延を実施した結果、最終パス出側における急峻度は0.3%となった。これは、本方法により、良好な平坦度を得るパススケジュールを合理的に探索し、設定することができるようになったためである。つまり、本実施例は、平坦度の良好な圧延板を得ることを可能としたといえる。
【実施例4】
【0077】
この実施例4では、実施例1と同じ被圧延材条件であるが、式(7)で表される評価関数φを用いて、本発明に基づく演算を演算装置4において実施することにより、各パス出側における被圧延材の平坦度を確保しつつ、最終パス出側における板クラウンChNを50μm以内とすることが可能なパススケジュールを探索した。ここで、ωは第iパス出側での評価関数値に対する重みである。本実施例では、第iパス出側での評価関数値に対する重みωを全て1とし、べき乗の指数m=2とした。したがって、実施例4の評価関数φは、指標である各パスにおける板クラウン比率変化の所望値からのずれを各パス出側板厚hの二乗で除したものに対して、これを二乗し、重み係数ωを乗じ、各パスについて総和を取ったものである。ただし、指標に基づく評価関数の形はこのような形に全くこだわるものではない。
【0078】
【数7】

(7)
【0079】
本実施例では、各パスにおける板クラウン比率変化を0.001とすることを理想としており、その所望値C0には1×10−3を与えた。ただし、各パス出側における急峻度を1.0%以下とする制約条件を課した。
【0080】
探索演算の結果、表4に示すようなパススケジュールを適用することにより、8パスで最終パス出側における板クラウンChNが38μmとなることが判明した。ちなみに、7パス以下の各総圧延パス数に対して求められた最適パススケジュールでは、最終パス出側における板クラウンChNを50μm以内とすることは不可能であった。また、表4には、比較例として、従来、同仕様の圧延材を8パスで製造する場合のパススケジュール設定と、本パススケジュール設定に対する評価関数値φ、最終パス出側における板クラウンChNの予測値を示す。ここで、比較例では、非特許文献1に基づく方法を用いて、パススケジュールを設定している。比較例によるパススケジュール設定に対する評価関数値φは本実施例による評価関数値φを上回り、最終パス出側における板クラウンChNの予測値も所望の範囲を上回っていることがわかる。
【0081】
【表4】

【0082】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように制御装置5を用いて各パスの圧下を設定し、圧延を実施した結果、最終パス出側における板クラウンChNは42μmとなった。これは、本方法により、良好な平坦度を得るパススケジュールを合理的に探索し、設定することができるようになったためである。なお、従来、本条件と同様の被圧延材に対しては10パスの圧延を実施しており、平坦度も必ずしも良好なものではなかった。つまり、本実施例は、総圧延パス数を2パス減らし、かつ、平坦度の良好な圧延板を安定的に得ることを可能としたといえる。
【実施例5】
【0083】
この実施例5は、被圧延材の入側板厚hinと出側板厚houtとの差が比較的小さい場合に好適なものである。実施例4と同様に、本発明に基づく演算を演算装置4において実施することにより、各パス出側における被圧延材の平坦度を確保しつつ、最終パス出側における板クラウンChNを50μm以内とすることが可能なパススケジュールを探索する。ここで、該被圧延材2の初期板厚hinは49.6mmであり、これを圧延機1において、最終パス出側板厚houtが11.1mmとなるまで圧延することが求められている。そのため、本実施例では、式(8)で表される評価関数φを用いた。すなわち、べき乗の指数m=0.5とした。
【0084】
【数8】

(8)
【0085】
そのほか、各パスにおける板クラウン比率変化Cはゼロとし、また、本実施例では、各パス出側における急峻度λを0.8%以下とする制約条件を課した。
【0086】
探索演算の結果、表5に示すようなパススケジュールを適用することにより、8パスで最終パス出側における板クラウンChNが33μmとなることが判明した。また、表5には、比較例として、従来、同仕様の被圧延材を8パスで製造する場合のパススケジュール設定と、本パススケジュール設定に対する評価関数値φ、最終パス出側における板クラウンChNの予測値を示す。比較例によるパススケジュール設定に対する評価関数値φは本実施例による評価関数値φを上回り、最終パス出側における板クラウンChNの予測値も大きくなっていることがわかる。
【0087】
【表5】

【0088】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように制御装置5を用いて各パスの圧下を設定し、圧延を実施した結果、最終パス出側における板クラウンChNは42μmとなった。これは、本方法により、良好な平坦度を得るパススケジュールを合理的に探索し、設定することができるようになったためである。つまり、本実施例は、平坦度の良好な圧延板を得ることを可能としたといえる。
【実施例6】
【0089】
この実施例6では、実施例1と同じ被圧延材条件であるが、最終パス出側における板クラウンを100μm以下に抑制することが望まれているとする。そこで、式(9)で表される評価関数φを用いて、最終パス出側における板クラウンを100μm以下とすることが可能なパススケジュールを本発明に基づいて探索した。本実施例においても、第iパス出側での評価関数値に対する重みωiを全て1とし、べき乗の指数n=2としている。
【0090】
【数9】

(9)
【0091】
ここで、

は第iパス出側における板クラウン、

は第iパス出側における板クラウンの理想値を示すので、

は第iパス出側における板クラウンの理想値からのずれを示す。
【0092】
本実施例では、出側板厚hが所定値h以下の領域で各パス出側における板クラウン比率を一定とする、図2のような板クラウン比率スケジュールを実現するクラウンスケジュールを理想値とした。また、本実施例では、hを20mmとした。つまり、本実施例では、第iパス出側における板クラウンの理想値

を式(10)で与えた。
【0093】
【数10】

(10)
【0094】
その結果、表6に示すようなパススケジュールを適用することにより、9パスで最終パス出側における板クラウンChNを91μmに抑制できることが判明した。ちなみに、8パス以下の各総圧延パス数に対して求められた最適パススケジュールでは、最終パス出側における板クラウンChNを100μm以下とすることは不可能であった。また、表6には、比較例として、従来、同一仕様の圧延板を9パスで圧延する場合のパススケジュール設定と、このときの最終パス出側における板クラウンChNの予想値を示す。比較例によるパススケジュール設定では、最終パス出側における板クラウンChNは118μmとなり、所望値(100μm以下)を達成できないと予想される。
【0095】
【表6】

【0096】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように各パスの圧下を設定して圧延を実施した結果、実際に得られた最終パス出側における板クラウンは88μmであり、100μmを下回っていた。なお、従来、本条件と同様の被圧延材に対しては11パスの圧延を実施しており、それでも100μmを上回る板クラウンが生じることが頻発していた。つまり、本実施例では、従来よりも総圧延パス数を低減し、かつ、最終パス出側における板クラウンも低減できるといえる。
【実施例7】
【0097】
この実施例7は、被圧延材の入側板厚hinと出側板厚houtとの差が比較的小さい場合に好適なものである。実施例6と同様に、本発明に基づく演算を演算装置4において実施することにより、各パス出側における被圧延材の平坦度を確保しつつ、最終パス出側における板クラウンChNを100μm以内とすることが可能なパススケジュールを探索する。ここで、該被圧延材2の初期板厚hinは50.2mmであり、これを圧延機1において、最終パス出側板厚houtが11.0mmとなるまで圧延することが求められている。そのため、本実施例では、式(11)で表される評価関数φを用いた。すなわち、べき乗の指数n=1.2とした。
【0098】
【数11】

(11)
【0099】
本実施例では、出側板厚hが所定値h以下の領域で各パス出側における板クラウン比率を一定とする、図2のような板クラウン比率スケジュールを実現するクラウンスケジュールを理想値とした。また、本実施例では、hを20mmとした。つまり、本実施例では、第iパス出側における板クラウンの理想値

を式(12)で与えた。
【0100】
【数12】

(12)
【0101】
探索演算の結果、表7に示すようなパススケジュールを適用することにより、9パスで最終パス出側における板クラウンChNが83μmとなることが判明した。また、表7には、比較例として、従来、同仕様の被圧延材を9パスで製造する場合のパススケジュール設定と、本パススケジュール設定に対する評価関数値φ、最終パス出側における板クラウンChNの予測値を示す。比較例によるパススケジュール設定に対する評価関数値φは本実施例による評価関数値φを上回り、最終パス出側における板クラウンChNの予測値も大きくなっていることがわかる。
【0102】
【表7】

【0103】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように制御装置5を用いて各パスの圧下を設定し、圧延を実施した結果、最終パス出側における板クラウンChNは79μmとなった。これは、本方法により、良好な平坦度を得るパススケジュールを合理的に探索し、設定することができるようになったためである。つまり、本実施例は、平坦度の良好な圧延板を得ることを可能としたといえる。
【実施例8】
【0104】
この実施例8は、被圧延材の入側板厚hinと出側板厚houtとの差が比較的大きい場合に好適なものである。実施例6と同様に、本発明に基づく演算を演算装置4において実施することにより、各パス出側における被圧延材の平坦度を確保しつつ、最終パス出側における板クラウンChNを100μm以内とすることが可能なパススケジュールを探索する。ここで、該被圧延材2の初期板厚hinは102.1mmであり、これを圧延機1において、最終パス出側板厚houtが9.1mmとなるまで圧延することが求められている。そのため、本実施例では、式(13)で表される評価関数φを用いた。すなわち、べき乗の指数n=5とした。
【0105】
【数13】

(13)
【0106】
本実施例では、出側板厚hが所定値h以下の領域で各パス出側における板クラウン比率を一定とする、図2のような板クラウン比率スケジュールを実現するクラウンスケジュールを理想値とした。また、本実施例では、hを25mmとした。つまり、本実施例では、第iパス出側における板クラウンの理想値

を式(14)で与えた。
【0107】
【数14】

(14)
【0108】
探索演算の結果、表8に示すようなパススケジュールを適用することにより、9パスで最終パス出側における板クラウンChNが77μmとなることが判明した。また、表8には、比較例として、従来、同仕様の被圧延材を9パスで製造する場合のパススケジュール設定と、本パススケジュール設定に対する評価関数値φ、最終パス出側における板クラウンChNの予測値を示す。比較例によるパススケジュール設定に対する評価関数値φは本実施例による評価関数値φを上回り、最終パス出側における板クラウンChNの予測値も大きくなっていることがわかる。
【0109】
【表8】

【0110】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように制御装置5を用いて各パスの圧下を設定し、圧延を実施した結果、最終パス出側における板クラウンChNは82μmとなった。これは、本方法により、良好な平坦度を得るパススケジュールを合理的に探索し、設定することができるようになったためである。つまり、本実施例は、平坦度の良好な圧延板を得ることを可能としたといえる。
【実施例9】
【0111】
この実施例9では、実施例1と同じ被圧延材条件であるが、最終パス出側における板クラウンを120μm以下に抑制し、かつ、良好な平坦度を得ることが望まれているとする。そこで、式(15)で表される評価関数φを用いて、最終パス出側における板クラウンを120μm以下に抑制し、かつ、最終パス出側における急峻度を0.5%以下とすることが可能なパススケジュールを本発明に基づいて探索した。
【0112】
【数15】

(15)
【0113】
ここで、本実施例では、各パスにおいて弱い耳波圧延を指向したので、各パス出側における伸びひずみ差の理想値Δεは5×10−7を与えた。さらに、図2に示す板クラウン比率スケジュールを実現するクラウンスケジュールを理想値とした。なお、本実施例では、上記出側板厚の所定値hを30mmとした。すなわち、本実施例では、第iパス出側における板クラウンの理想値

を式(16)で与えた。
【0114】
【数9】

(16)
【0115】
また、べき乗の指数l=2、n=3とした。
【0116】
その結果、表9に示すようなパススケジュールを適用することにより、9パスで最終パス出側における板クラウンChNを105μmに抑制し、かつ、最終パス出側における急峻度λを0.4%に抑制できることが判明した。ちなみに、8パス以下の各総圧延パス数に対して求められた最適パススケジュールでは、最終パス出側における板クラウンChNを120μmに抑制し、かつ、最終パス出側における急峻度λを0.5%以下とすることは不可能であった。また、表9には、比較例として、従来、同一仕様の圧延板を9パスで圧延する場合のパススケジュール設定と、このときの最終パス出側における急峻度λ、最終パス出側における板クラウンChNの予想値を示す。比較例によるパススケジュール設定では、最終パス出側における急峻度λは0.6%、最終パス出側における板クラウンChNは137μmと予測され、所望値(最終パス出側における板クラウン120μm以下かつ最終パス出側における急峻度0.5%以下)を達成できないと予想される。
【0117】
【表9】

【0118】
本実施例で得られたパススケジュールを実現するように各パスの圧下を設定して圧延を実施した結果、実際に得られた最終パス出側における板クラウンは112μmであり、最終パス出側における急峻度は0.4%であった。なお、従来、本条件と同様の被圧延材に対しては圧延パス数を9パスとする限りは、安定的に最終パス出側における板クラウンを120μm以下に抑制し、しかも、良好な平坦度を得ることは困難であった。つまり、本実施例では、従来よりも総圧延パス数を低減するとともに、最終パス出側における板クラウンを低減し、かつ、最終パス出側における平坦度も向上できるといえる。
【0119】
また、本実施例は、式(15)で表されるように、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを板厚の自乗で除したものの自乗和と、各パス出側におけるクラウンの理想値からのずれを板厚の3乗で除したものに形状変化係数を乗じたものの自乗和との和で定義される評価関数φを用いた場合を例として説明した。しかし、本発明は、評価関数φを式(15)に限定するものではなく、例えば、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを板厚のべき乗で除したものの自乗和と、各パス出側におけるクラウンの理想値からのずれを板厚のべき乗で除したものに形状変化係数を乗じたもの自乗和との積、差、商など、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを板厚のべき乗で除したもの、各パス出側におけるクラウン比率変化の理想値からのずれを板厚のべき乗で除したもの、各パス出側におけるクラウンの理想値からのずれを板厚のべき乗で除したもの少なくともいずれか一つを指標に含む種々の評価関数φを用いてもよい。
【実施例10】
【0120】
この実施例10では、板幅w=2000〜5000(mm)の種々の被圧延材に対し、最終パス出側における板クラウンを80μm以下に抑制し、かつ、良好な平坦度を得ることを可能とするパススケジュールを設定することが望まれている。そこで、式(15)で表される評価関数φを用いて、最終パス出側における板クラウンを80μm以下に抑制し、かつ、良好な平坦度を得ることが可能なパススケジュールを本発明に基づいて探索した。すなわち、l=2、n=3である。本実施例では、板クラウンの理想スケジュールとして、板クラウン比率一定圧延を指向する領域を決定する板厚の所定値h(mm)を式(17)で表すように、板幅w(mm)に応じて変化させた。この式(17)は、上記板厚の所定値hを板幅wに応じて決定する関数であり、この関数は、板幅wが大きいほど所定値hが大きくなるように決定される線形関数となっている。これは、板幅wが大きいほど、わずかな伸びひずみ差により平坦度不良が発生しやすくなるので、上記板厚の所定値hを大きい値に設定して、板クラウン比率一定圧延を指向する板厚領域を広げることで、平坦度不良の発生を抑制するためである。
【0121】
【数17】

(17)
【0122】
なお、第iパス出側における板クラウンの理想値

は、出側板厚hが上記板厚の所定値h以下の領域では、板クラウンの理想値を該パス出側板厚で除した値が、70μm(最終パス出側におけるクラウンの目標値)を最終パス出側板厚で除した値と等しくなるように設定し、また、出側板厚hが上記板厚の所定値hを超える領域では、第1パス入側板厚hinにおける板クラウンの理想値をゼロとし、これと板厚の所定値hにおける前記板クラウンの理想値とを、板クラウンの理想値を出側板厚hで除した値が出側板厚hに対し、線形に変化するように設定した。また、各パス出側における伸びひずみ差の理想値Δεはゼロを与えた。
【0123】
種々の被圧延材(合計300本)に対し、本実施例による方法の平均総圧延パス数は8.2であった。一方、従来法では、平均総圧延パス数は9.5であり、本実施例では総圧延パス数を削減できていることがわかる。しかも、本実施例によるパススケジュール設定方法を適用した場合の合格率(総圧延本数に対する最終パス出側における板クラウンが80μm以下かつ最終パス出側における急峻度が1.0%以下を達成した割合)は92%であったのに対し、従来法では63%であった。つまり、本実施例により、所望の板クラウン、平坦度を実現するパススケジュールを安定的に設定することを可能としたことがわかる。
【0124】
一例として、板幅w=2339mmのある被圧延材について、本実施例で得られたパススケジュール、最終パス出側における急峻度λおよび最終パス出側における板クラウンChNと、従来法で得られたそれらとの比較を表10に示す。また、板幅w=4827mmのある被圧延材について、本実施例で得られたパススケジュール、最終パス出側における急峻度λおよび最終パス出側における板クラウンChNと、従来法で得られたそれらとの比較を表11に示す。いずれの場合も、本実施例によるパススケジュール設定では、最終パス出側における板クラウンを80μm以下に抑制し、かつ、最終パス出側における急峻度は0.5%以下と、良好な平坦度を得ることができているのに対し、比較例で得られたパススケジュールでは、最終パス出側における板クラウン、かつ、最終パス出側における急峻度が大きくなっていることがわかる。
【0125】
【表10】

【0126】
【表11】

【0127】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0128】
本発明の板圧延のパススケジュールの設定方法は、熱間の厚鋼板の製造に用いることを想定できるが、それ以外にも、例えば、薄鋼板の熱間圧延、冷間圧延、または、アルミニウムや銅などの非鉄金属だけでなく非金属の板圧延などにも応用が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 圧延機
2 被圧延材
3 板厚計
4 演算装置
5 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のl乗(l:0<l≦4の実数)で除したものを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法。
【請求項2】
板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のm乗(m:0<m≦4の実数)で除したものを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法。
【請求項3】
板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のn乗(n:1<n≦5の実数)で除したものを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法。
【請求項4】
板圧延のパススケジュールを設定する方法において、
設定された同一の総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該仮定された各パススケジュールについて、各パス出側における伸びひずみ差の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のl乗(l:0<l≦4の実数)で除したもの、並びに、前記各パスにおける板クラウン比率変化の理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のm乗(m:0<m≦4の実数)で除したもの、並びに、前記各パス出側における板クラウンの理想値からのずれを求め、当該理想値からのずれを前記各パスの出側板厚のn乗(n:1<n≦5の実数)で除したもの、の少なくともいずれか一つを指標とする評価関数を用い、
当該評価関数の値を最小とするパススケジュールを最適と評価し、当該パススケジュールを実現するようにパススケジュールを設定することを特徴とする、板圧延のパススケジュールの設定方法。
【請求項5】
前記各パスの出側板厚が所定値以下の領域で、当該各パス出側における板クラウン比率が一定となるように、当該各パス出側における板クラウンの理想値を設定することを特徴とする、請求項3または4に記載の板圧延のパススケジュールの設定方法。
【請求項6】
前記所定値が20mm以上であることを特徴とする、請求項5に記載の板圧延のパススケジュールの設定方法。
【請求項7】
前記所定値は、被圧延材の板幅を変数とする関数で決定されることを特徴とする、請求項5または6に記載の板圧延のパススケジュールの設定方法。
【請求項8】
圧延機の設備能力に基づく最少総圧延パス数を前記総圧延パス数の初期値に設定し、当該総圧延パス数に対する複数のパススケジュールを仮定し、当該総圧延パス数での前記評価関数の値を最小とするパススケジュールが所望の条件を満たさない場合、前記総圧延パス数を順次増加させて、当該増加させた総圧延パス数での前記評価関数の値を最小とするパススケジュールの決定を再試行することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の板圧延のパススケジュールの設定方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−75994(P2010−75994A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58202(P2009−58202)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】