説明

板状体の搬送装置

【課題】既知の板状体の搬送装置に比べて、吸気機構の配設費用と消耗電力費用と騒音とを低減させる。
【解決手段】吸気機構3を構成する複列状に配設された吸気部材3aが有する吸気口3bの列の両側に、搬送機構4を構成する搬送ベルト4cと、該搬送ベルト4cの走行位置を規制する規制部材4dとを配設して成る板状体の搬送装置に於て、適宜の幅と前記吸気口3bの列の長さに相当する長さとを有する板状の吸引補助部材5を、搬送ベルト4cの吸気口3bの列が存在しない片側に近接させて規制部材4dと同じ高さの位置に、而も、近隣に位置する別の吸引補助部材5との間に、符号cで示す矢印の如く大気を上方から容易に吸引するに足る、間隔5Aを設けて複列状に並設した。当該間隔5Aからも積極的に吸気ができるので、少数の吸気機構と小容量の吸気機とを以って、単板2が適確に吸引できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体の搬送装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベニヤ単板・金属薄板等の板状体を、上面側から吸引しつ搬送する搬送装置としては、例えば特許文献1に開示される如く、ベルトコンベヤ状の搬送機構を構成する適数条の有孔ベルトの内周側に、適時開閉作動可能な開閉弁等の開閉部材を介して、適数基の吸気機の吸気口に繋がる適数個の吸気口を有する吸気部材を備えた吸気機構を、前記吸気部材の吸気口が、前記有孔ベルトの孔の列に対して適数の列状に臨むように配備して成り、有孔ベルトを介して間接的に板状体を吸引する形式と、特許文献2・特許文献3等に開示される如く、適数基の吸気機と、適時開閉作動可能な開閉部材を介して、前記吸気機の吸気口に繋がる適数個の吸気口を有する適数個の吸気部材とを備えた吸気機構を、前記吸気部材の吸気口が、板状体の搬送方向に倣って複列状に並ぶように配備すると共に、適数条の搬送ベルトと、各搬送ベルトの走行位置を、各搬送ベルトの内周側に於て規制する規制部材(該規制部材が別の機能を兼備する構成例もある)とを備えた搬送機構を、前記各搬送ベルトが、前記吸気口の各列に近接して下方へ適度に突出するように配備して成り、搬送ベルトの近傍で板状体を直接的に吸引する形式とに大別されるが、いずれの形式のものも、後述する難点・弱点を有するものであった。
【0003】
即ち、前記いずれの形式であっても、吸気機構を介して吸気することにより、板状体の上面側の空気密度を下げて吸引力を発生させるものであるが、前者の形式は、有孔ベルトの孔の数や大きさに拘わって吸引力が制約されることから、板状体を吸引して搬送するに足る吸引力を得る為には、吸気機の能力を相当に著大とすることが必要であり、結果的に、吸気機構の配設費用と消耗電力費用が高額化する難点があると共に、有孔ベルトは、孔の部分から損傷し易いので、有孔ベルトの保守管理費用が高額化する弱点もある。一方、後者の形式は、有孔ベルトに比べて搬送ベルトが損傷し難いので、搬送ベルトの保守管理費用が比較的安価で済む利点を有するものの、前者とは別の後述する要因によって、局部的に吸引力が制約されることから、同じく、吸気機の能力を相当に著大とすることが必要であり、やはり、吸気機構の配設費用と消耗電力費用が高額化する難点があった。
【0004】
詳述すると、特許文献2・特許文献3の図面の記載などからも明らかな如く、既知のこの種の形式は、板状体の上面に臨む部分の略全面に亘って、吸気機構の吸気部材、搬送機構の搬送ベルト、搬送ベルトの内周側に於て該搬送ベルトの走行位置を規制する規制部材を兼用する遮蔽板等の部材を配設することによって、板状体の上面に臨む部分の略全面が、実質的に、大気に対して非開放状となる構成を採っている。
【0005】
而して、述上の如き構成を採ると、例えば搬送装置の前位に位置する搬入コンベヤを介して搬入される板状体を吸引して、搬送ベルトに吸着させる際に、吸気部材の吸気口への吸気の流入は、主として板状体の前端側に於ける吸気部材の吸気口付近の下方乃至斜め下方から成されることになり、副弐的に板状体の左右両端の側方と、吸着直前の板状体に臨む位置にある吸気部材の吸気口付近の後方側とから成されることはあっても、板状体の搬送方向と直交方向に隣合う吸気口同士の中間部に於ては、吸気が殆ど成されないので、安定的に板状体を搬送ベルトに吸着させるのに必要な吸引力を得る為には、吸気口の列の間隔が狭小となるよう、吸気口の列の数を相当に多くして、吸気口の総面積に適応する容量の吸気機を備えるか、或は吸気口の列の間隔が広い場合には、各吸気口の列毎に備える吸気機の容量を著大にする必要があり、結果的に、前記難点が実在する。
【0006】
また更に、述上の如き吸引力不足の問題は、搬入コンベヤから板状体を吸引する際のみに限らず、搬送ベルトに吸着した板状体を搬送する際にも同様に惹起されるのは当然であって、例えば汎用寸法(繊維方向の幅=約2m〜2.5m、繊維方向と直交方向の長さ=約1m〜1.3m)のベニヤ単板(以下、単に単板と称す)の如く、板面が比較的広大な板状体を吸引して搬送する際には、板状体の中央部分に作用する吸引力が、板状体の四周端部分に作用する吸引力に比べて著しく減少するので、全体的に吸引力が不足し易い傾向があり、搬送途上に於て板状体が落下する不具合の発生を予防する為にも、やはり、吸気機の能力を相当に著大とすることが必要となる。
【0007】
因に、述上の如く、板面が比較的広大な板状体を吸引した際に、板状体の中央部分に作用する吸引力が、板状体の四周端部分に作用する吸引力に比べて著しく減少する原因は、板状体の四周端部分近辺を流れる空気の密度と中央部分近辺に滞留し易い空気の密度との間に差異が生じる為であると考えられ、特製の大きな漏斗状の吸引具を、掃除機の吸引口に取り付け、床に撒いた小麦粉を、前記吸引具を介して上方から吸引する実験を行ったところ、案の定、前記吸引具の中央部分近辺の小麦粉が十分に吸引しきれない現象が確認された。また更に他の問題点について付言すると、著大な容量の吸気機による吸気・排気は、大きな騒音を惹起するので、作業環境が悪化する不都合もある。
【特許文献1】特公昭38−10562号公報
【特許文献2】特公昭43−9140号公報
【特許文献3】実開昭55−164249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記既知の搬送装置の難点・問題点を解消すべく開発したものであり、搬送ベルトの近傍で板状体を直接的に吸引する形式の搬送装置に於て、板状体の搬送方向と直交方向に隣合う吸気口同士の間隔が比較的広い場合であっても、該隣合う吸気口同士の中間部に於て効果的な吸気が成される構成を採ることにより、板状体の搬送方向と直交方向の中央部分へも、板状体の四周端部分に作用する吸引力と大差のない大きな吸引力が及ぶようにして、吸気機構の配設費用と消耗電力費用を、既知の搬送装置に比べて大幅に低減させ、エネルギーと騒音の軽減化を図らんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的な基本装置として、適数基の吸気機と、適時開閉作動可能な開閉部材を介して、前記吸気機の吸気口に繋がる適数個の吸気口を有する適数個の吸気部材とを備えた吸気機構を、前記吸気部材の吸気口が、板状体の搬送方向に倣って複列状に並ぶように配備すると共に、少なくとも前記吸気口の列の数と同数条の搬送ベルトと、各搬送ベルトの走行位置を、各搬送ベルトの内周側に於て規制する規制部材とを備えた搬送機構を、前記各搬送ベルトが、前記吸気口の各列の少なくともいずれか片側に近接して下方へ適度に突出するように配備して成り、板状体を上面側から吸引しつつ搬送する搬送装置であって、適宜の幅と前記吸気口の列の長さに相当する長さとを有する板状の吸引補助部材を、前記各搬送ベルトの吸気口の列が存在しない片側に近接させて規制部材と同じ高さの位置に、而も、近隣に位置する別の吸引補助部材又は吸気口の列との間に、大気を上方から容易に吸引するに足る間隔を設けて複列状に並設して成ることを特徴とする板状体の搬送装置(請求項1)を提案する。
【0010】
また、適当な実用例として、吸気口の各列の両側に夫々搬送ベルトと吸引補助部材を配備して成る搬送機構を具備して成る請求項1記載の板状体の搬送装置(請求項2)、吸気部材の吸気口を、板状体の搬送方向に於て複数の区画に区分すると共に、各区画毎に開閉部材を備え、板状体の進行に対応させて、板状体の搬送方向の上手側から下手側へと、順次開閉部材を開放作動させるように構成して成る請求項1又は請求項2記載の板状体の搬送装置(請求項3)を夫々提案する。
【発明の効果】
【0011】
前記請求項1に係る搬送装置によれば、各搬送ベルトに吸引補助部材を並設したことによって、吸引補助部材を並設せずに吸気部材のみによって吸気する場合よりも広範囲に吸気作用が及ぶので、吸気部材のみによって吸気する場合に比べて大きな吸引力を発生させることができるのは勿論のこと、各搬送ベルトに並設した吸引補助部材と、近隣に位置する別の吸引補助部材又は吸気口の列との間に、大気を上方から容易に吸引するに足る間隔を設けたから、板状体の搬送方向と直交方向に隣合う吸気口同士の中間部に於ても吸気が成され、該中間部に空気が滞留する現象が解消されるので、吸気口の列の数を、比較的少なくしても、搬入コンベヤから格別支障なく板状体を吸引して、搬送ベルトに吸着させることができ、更に板面が比較的広大な板状体を搬送する際でも、板状体の搬送方向と直交方向の中央部分に、板状体の四周端部分に作用する吸引力と大差のない大きな吸引力が及ぶことになり、総じて、従来に比べて少数個の吸気部材と小容量の吸気機とを用いて、板状体を安定的に吸引して搬送することが可能となる。
【0012】
更に、請求項2に記載する如く、吸気口の各列の両側に夫々搬送ベルトと吸引補助部材を配備する構成によれば、吸気部材と吸引補助部材とによる吸気作用によって発生する吸引力を、最も有効に活用して、板状体を搬送ベルトに吸着させることができるので有益である。また、請求項3に記載する如く、板状体の搬送方向に於て複数に区分した区画毎の吸気口による吸気を、板状体の進行に対応させて、搬送方向の上手側から下手側へと、順次開始する構成によれば、無駄な吸気をせずに済むので、吸気機の所要容量を一段と顕著に低減させることができ、極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、装置を構成する各部材の形態については、図示例の形態に限るものではなく、要は所要の機能を奏する形態であれば足り、必要に応じて、各部材の形態を適宜設計変更して差支えない。但し、吸気部材が有する吸気口の列の幅については、既に実用的な範囲が判明しているので、予め言及しておくと、前記吸気口の列の幅が過少であれば、吸気の及ぶ範囲が当然に狭くなると共に、吸気に際する空気の流通抵抗が大きくなるので有効に吸引力が発揮し得ない傾向があり、逆に過多であれば、板状体の前端側を吸引する際の過剰な吸気の為に著大な吸気機が必要となるので、いずれも不適切であって、実用的には、50mm〜250mmとするのが好ましく、100mm〜200mmとするのがより適切である。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る板状体の搬送装置の側面説明図であり、図2は、図1に例示した板状体の搬送装置の背面説明図であり、図3は、図1のY−Y線に於ける断面部分拡大説明図である。図中、1は、回転軸1a、プーリ1b、搬送ベルト1c、規制部材1d等から成る搬入コンベヤであって、サーボモータ、クラッチ&ブレーキ付電動機等から成る駆動源(図示省略)により、図示矢印方向に回動走行せしめられ、汎用寸法の単板2を繊維方向と直交方向に搬送し、本発明に係る板状体の搬送装置へ搬入する。
【0015】
3は、本発明に係る板状体の搬送装置を構成する吸気機構であって、複数個(実施例は5個)を一組の列として、3列を単板2の搬送方向に倣って複列状に並べた漏斗状の吸気部材3a、該吸気部材3aの各列と3基の吸気機3cとを連結する通気管3d、各吸気部材3aの上部に位置するよう前記通気管3dに付設された取付座3e、各取付座3eに付設された流体シリンダ3f、該流体シリンダ3fのロッド3gを介して上下に昇降させしめられ、前記吸気部材3aの吸気口3bを開放・閉止させる円錐台状の開閉部材3h等を有して成り、図示しない制御機構の制御を得て、単板2の進行に応じて搬送方向の上手側から下手側へと、順次開閉部材3hを下降させるように、流体シリンダ3fが作動し、搬入コンベヤ1を介して搬入される単板2を、前端側から後端側にかけて順次吸引して、後述する搬送機構4の搬送ベルト4cに吸着させると共に、単板2の前端が所定位置に至ると、全ての開閉部材3hを一斉に上昇させるように、流体シリンダ3fが作動し、単板2の吸引を開放して、後述する堆積台6に載置された敷板7の上に単板2を落下させる。
【0016】
4は、本発明に係る板状体の搬送装置を構成する搬送コンベヤ状の搬送機構であって、回転軸4a、プーリ4b、複数条の搬送ベルト4c、規制部材4d等を有して成り、各搬送ベルト4cの位置を規制する規制部材4dは、前記吸気部材3aが有する吸気口3bの下方に同径の穴を具備して、吸気部材3aの機能の一部を兼備するように、且つ、前記吸気部材3aが有する吸気口3bの各列の両側に夫々搬送ベルト4cが適度に下方に(例えば吸気部材3aの機能の一部を兼備する規制部材4dに対してベルト自体の厚さと同程度下方に)突出して位置するように夫々配備されており、サーボモータ、クラッチ&ブレーキ付電動機等から成る駆動源(図示省略)により、図示矢印方向に回動走行せしめられ、前記吸気機構4によって搬送ベルト4cに吸着される単板2を、図示矢印方向に搬送する。
【0017】
5は、前記吸気部材3aが有する吸気口3bの列の幅W1と同等以上の幅(図示例は略同等)W2と、前記吸気部材3aが有する吸気口3bの列の長さに相当する長さとを有する板状の吸引補助部材であって、各搬送ベルト4cの吸気口3bの列が存在しない片側に近接させて規制部材4dと同じ高さの位置に、而も、近隣に位置する別の吸引補助部材5との間に(又は吸気口の列の片側にしか搬送ベルトと吸引補助部材が存在しない場合には、吸気口の列との間に)、大気を上方から容易に吸引するに足る間隔5Aを設けて複列状に並設されており、前記吸気機構3の吸気作用に伴う吸引力を増幅させるように助長する。
【0018】
6は、搬出コンベヤ6aを有する堆積台であって、図示しない制御機構の制御を得て、適時、図示矢印方向に昇降せしめられ、本発明に係る板状体の搬送装置から落下する単板2を、敷板7を介して常に概ね一定の高さを以って受止めて堆積させると共に、堆積が所望高さに至る都度、搬出コンベヤ6aを介して左右いずれかの側方へ搬出する。
【0019】
8は、反射式光電管検知器などから成る単板検知器であって、搬入コンベヤ1を介して搬入される単板2の前端の到来を検知して、図示しない制御機構が、単板2の進行に応じて搬送方向の上手側から下手側へと、順次開閉部材3hを下降させるよう、吸気機構3の流体シリンダ3fを作動させる為に必要となる、単板前端の検知信号を、図示しない制御機構に向けて発信する。
【0020】
9は、反射式光電管検知器などから成る単板検出器であって、搬送機構4を介して搬送される単板2の前端の到達を検知して、図示しない制御機構が、全ての開閉部材3hを一斉に上昇させるよう、吸気機構3の流体シリンダ3fを作動させる為に必要となる、単板前端の検出信号を、図示しない制御機構に向けて発信する。尚、当該単板検出器が発信する単板前端の検出信号に基づいて、全ての開閉部材を一斉に上昇させるように、吸気機構の流体シリンダを作動させることにより、吸気機構による吸引を断って、単板を落下させるに際し、搬送機構による単板の搬送を暫時休止させるように、図示しない制御機構が制御する構成を採れば、単板の落下位置が一段と安定化するので好ましい。
【0021】
本発明に係る板状体の搬送装置は、例えば前記の如く構成するものであり、以下、図4乃至図8に例示した動作説明図を併せて引用して、その作動態様を説明すると、図4に例示する如く、搬入コンベヤ1を介して搬入される単板2の前端が単板検知器8の位置に到来すると、該単板検知器8が図示しない制御機構に単板前端の検出信号を発信し、制御機構が、単板搬送方向の最も上手側に位置する吸気機構3の流体シリンダ3fを作動させて、開閉部材3hを下降させ、単板搬送方向の最も上手側に位置する吸気部材3aの吸気口3bを開放するので、図4及び図5に於て符号aで示す点線の矢印の如く、主として単板2の前端側に於ける吸気部材3aの吸気口付近の下方乃至斜め下方から吸気が成されることになると共に、副弐的に符号bで示す点線の矢印の如く単板2の左右両端の側方と、吸着直前の単板2に臨む位置にある吸気部材3aの吸気口付近の後方側とからも吸気が成されるが、加えて図5に於て符号cで示す点線の矢印の如く、隣合う吸引補助部材5同士の間に設けられた間隔5Aの部分からも吸気が成されることになる。
【0022】
そうすると、符号aで示す点線の矢印の如き空気の流れに起因して、単板2の前端側が上方へ浮き上がり易くなると共に、単板2の前端側に於ける吸気部材3aの吸気口付近の空気圧が低下し、単板2の真下にある大気圧との間に差異が生じるので、単板2の前端が上方へ吸引されて、図6・図7に例示する如く、搬送機構4の搬送ベルト4cに吸着されることになる。そして、図示しない制御機構は、単板2の進行に対応させて、搬送方向の上手側から下手側へと、流体シリンダ3fを作動させて吸気部材3aの吸気口3bを順次開放するので、図8に例示する如く、そのまま引続き吸着と搬送が継続されるが、やがて、単板2の前端が単板検出器9の位置に到達し、該単板検出器9から単板検出信号が発信されると、図示しない制御機構は、全ての流体シリンダ3fを作動させて吸気部材3aの吸気口3bを一斉に閉止するので、単板2は吸引・吸着を開放され、堆積台6に向かって落下する。
【0023】
而して、既知のこの種の搬送装置は、主として符号aで示す点線の矢印の如く、単板の前端側に於ける吸気部材の吸気口付近の下方乃至斜め下方からの吸気と、符号bで示す点線の矢印の如く、単板の左右両端の側方と、吸着直前の単板に臨む位置にある吸気部材の吸気口付近の後方側とからの副弐的な吸気を以って、単板の前端側を吸引するものであるから、安定的で確実な吸引・吸着を行う為には、例えば吸気口の列の数を相当に多くして、吸気口の列の間隔を狭くすると共に、吸気口の総面積に適応する容量の吸気機を備えるか、或は吸気口の列の間隔が広い場合には、各吸気口の列毎に備える吸気機の容量を著大にする必要があるが、本発明に係る板状体の搬送装置は、述上の如く、搬送機構の搬送ベルトに吸引補助部材を並設して、符号cで示す点線の矢印の如く、隣合う吸引補助部材同士の間に設けられた間隔の部分からの吸気をも併せて活用するので、総じて、従来に比べて少数個の吸気部材と小容量の吸気機とを用いて、単板を安定的に吸引して搬送することが可能となる。
【0024】
因に、比較例として、図示は省略したが、前記図示例に於ける吸気機構及び搬送機構のみの組合せで成る構造、つまり、吸引補助部材の付設を完全に省略した構造の試験装置を別途に組立てて実験したことろ、吸気口の列の数を、図示例の約2倍(5〜6列)にすると共に、各列毎に付設する吸気機の容量を、図示例で用いた吸気機の容量と略同等にしなければ(総容量としては、約2倍)、同様の機能を奏することができなかった。
【0025】
前記実験結果は、吸引補助部材の効用を如実に立証するものであり、吸気機構及び搬送機構のみの組合せで成る構造によると、吸気機構の吸気に伴って空気圧が低下する作用、つまり、減圧作用が及ぶ幅は、吸気口の列の幅W1に、搬送ベルトの幅W4を加算(図示例の如く両側に在れば、加算は2倍)した幅(W1+W4×2)を若干上回る程度に限られるが(図3参照)、吸引補助部材を付設した場合には、更に吸引補助部材の幅W2を加算(図示例の如く両側に在れば、加算は2倍)した幅(W1+W4×2+W2×2)を若干上回る程度に増幅されるので、より大きな吸引力(大気圧による押上力)が発生し、単板を確実に吸引することが可能となるのである。但し、吸引補助部材の幅が過少であると、斯様な吸引補助作用が微増に留まり、また逆に過多であると、減圧作用自体が全幅に及び難くなったり、或は吸気口の列同士の間隔が過剰に広くなったりするので、いずれも不適切であることから、過少或は過多を避けるのが好ましく、一応の目安としては、吸気口の列の幅W1に対して、吸引補助部材の幅W2を、1〜3倍程度に設定するのが適切であった。
【0026】
また、更に別の比較例として、図示は省略したが、前記図示例に於ける吸引補助部材同士の間隔5Aの部分を、別の板材を用いて間隔が全く無くなるように塞いで実験を行ったところ、図示例で用いた吸気機の容量の約100%増し、つまり、約2倍の容量の吸気機を用いなければ、同様の機能を奏することができなかった。該実験結果は、前記間隔の効用を立証するものであり、前記間隔が全く無い構造によると、吸気機構の吸気に伴って空気圧が低下する作用、つまり、減圧作用が、吸気口の列から比較的遠くに離れた部分に及び難くなるので、結果的に、吸引力が徐々に低下して、安定的な吸引と吸着が成し得なくなるのであり、特に、単板(板状体)の中央部分に問題が発生し易い傾向がある。
【0027】
即ち、先記一連の動作説明に於て、例えば図1に於ける線Y―Y付近にある単板2の中央部分に於ては、図3に示す如く、単板2が搬送機構4の搬送ベルト4dに吸着されるのが原則的な状態であるが、吸気機による吸気は、真空ポンプによる強い吸引に比べて、均等性・密閉性が劣る性質があり、例えば開放或は半開放状態にある吸気口の部分、或は例えば搬送ベルトと単板(板状体)との間に隙間がある箇所を吸引している吸気口の部分、更には例えば単板に内在する割れ・欠けなどの空隙の箇所を吸引している吸気口の部分等から優先的に吸気が成されるので、図3に示す如き状態が継続されると、やがて、概ね密閉状態にある吸気口の箇所に於て空気が滞留する現象が発生し、吸着当初に比べて吸引力が徐々に低下する傾向となる。従って、例えば単板2の反り・アバレ、単板自重の変動、或は振動等に起因して、単板2の中央部分が搬送機構4の搬送ベルト4dから離れて下方に落下しかかる異常事態が発生し易くなるが、前記間隔が全く無い構造によると、単板2の左右両端の側方から以外には、該当する吸気口3bの箇所に空気が流入する余地が殆どないので、吸着当初のように吸引力を復元させて落下を食い止めることが困難であり、そのまま単板が落下してしまう虞が大きい。
【0028】
一方、それに対して、間隔を設けた場合には、図9に例示する如く単板2の中央部分が搬送機構4の搬送ベルト4dから離れて下方に落下しかかる異常事態が発生すると、符号cで示す矢印の如く間隔5Aを介して直ちに空気が流入するので、吸着当初のように吸引力が復元され、図3に示す状態に吸着が回復されて、落下が防止されるのである。但し、前記間隔5Aの幅W3が過少であると、空気の流入を阻害し易く、また逆に過多であると、吸気口の列同士の間隔が過剰に広くなったりするので、いずれも不適切であることから、過少或は過多を避けるのが好ましく、一応の目安としては、吸気口の列の幅W1に対して、間隔5Aの幅W3を、1/2(半分)〜1倍(同等)程度に設定するのが適切であった。
【0029】
而して、述上の如き吸気部材と吸引補助部材とによる吸気作用によって発生する吸引力を、最も有効に活用して、板状体を搬送ベルトに吸着させるには、前記図示例の如く、吸気口の各列の両側に夫々搬送ベルトと吸引補助部材を配備する構成を採るのが適切であって、吸気口の各列の片側のみに搬送ベルトと吸引補助部材を配備する構成を否定するものではないが、積極的に推奨ものではない。
【0030】
また、前記図示例の如く、吸気部材の吸気口を、板状体の搬送方向に於て複数の区画に区分すると共に、各区画毎に開閉部材を備え、板状体の進行に対応させて、板状体の搬送方向の上手側から下手側へと、順次開閉部材を開放作動させるように構成すれば、単板(板状体)の前端側を順次吸引する際に、無駄な吸気をせずに済むので、吸気機の所要容量を一段と顕著に低減させることができ、極めて有益であって、特に、吸気口の列の幅を100mm以上とする場合には、その効用が顕著であり、全ての吸気口を当初から全開したままにする場合に比べて、吸気機の所要容量を数分の1に著減できる。
【0031】
尚、前記図示例に於ては、吸気部材と規制部材とを一体状に成形し、規制部材に吸気部材の機能の一部(吸気口)を兼備させる構成を採ったが、吸気部材と規制部材を別体として、個別に備えても差支えなく、必要に応じては、一体状のものと別体状ものが混在する構成であっても差支えない。また、前記図示例に於ては、漏斗状の吸気部材の複数個を列状に並べて用いたが、この場合に、各吸気部材同士の間隔は必ずしも密接状である必要はなく、図示する如く、吸気部材同士の間に若干の隔たりがあり、該若干の隔たり部分に於ける吸気が些か不完全であっても、搬送途上に於ける単板(板状体)には、搬送方向と同方向の慣性力が作用するので、比較的高速の搬送速度を以って搬送する限り、搬送に格別支障が生じる虞はない。
【0032】
但し、吸気部材の形状としては、漏斗状に限るものではなく、図示は省略したが、図示例と同じく複数に分離して列状に並べる方式のものとしては、例えば円柱状、四角柱状、楕円柱状、角錐台状等々、既知の形状を含めた種々の形状を採用して差支えなく、また、斯様に吸気部材を複数に分離して列状に並べる方式を採る場合には、必要に応じて、先記特許文献2に開示される態様に準じて、板状体の搬送方向と直交方向に並ぶ吸気部材同士を、適宜形状の通気管で連結すると共に、各通気管毎に開閉部材と吸気機を付設する形態を取ることも可能であり、通気管と吸気機の所要個数が増加する難点はあるが、実用上問題となるほどの障害ではない。
【0033】
一方、吸気口の列の幅を比較的狭くする構成を採る場合には、図示は省略したが、例えば広幅サンダの吸塵フードの如く、細長い矩形の吸気口を有する非分離方式の吸気部材を採用し易くなるが、該非分離方式を採用する場合であっても、吸気口の内部に隔壁を設けると共に、隔壁で区分された部分毎に開閉部材を備え、板状体の進行に対応させて、板状体の搬送方向の上手側から下手側へと、順次開閉部材を開放作動させるように構成するのが望ましい。
【0034】
また、吸引補助部材の形状としては、板状を基本とするが、取付け具・補強具等の付設を制約するものではなく、図示は省略したが、例えば球平鋼状の如く、板状を成す本体の底面以外の部分に、適宜形状の補強用の突起を設けた形状、或は例えば板状を成す本体の底面以外の部分に、適宜形状の取付け腕を付設した形状等々、要は板状体に臨む底面の部分が、適当な幅と長さを有する平滑な板状であれば足り、その材料も、必ずしも規制部材と同じである必要はなく、金属・合成樹脂・木材等々種々の材料を用いることが可能であり、更にその取付け態様についても、搬送ベルトの吸気口の列が存在しない片側に近接させて規制部材と同じ高さの位置に取付ける外は、必ずしも取外し可能である必要はないなど、特に制約はなく、前記同じ高さとは、若干の許容誤差を含む高さであって、例えば板状体の進行を著しく阻害しなければ、規制部材より若干下方に位置して、板状体に軽く接触しても差支えない。また更に、図示は省略したが、必要に応じては、例えば吸引補助部材の振動等を予防すべく、前記間隔5Aの一部分に適当な部材を配設して、隣合う吸引補助部材同士を連結するようにしても、該間隔からの吸気を著しく妨げない形態であれば実用的に格別支障はない。
【0035】
また、先記図示例に於ては、搬送機構の規制部材として、吸気口を穿孔して成る板状のものを用い、搬送ベルトを摺動支持するようにしたが、規制部材としては、転子(コロ)を列状に配設したものを用い、搬送ベルトを転動支持するようにしても差支えなく、更に搬送機構の搬送ベルトについても、先記図示例の如く断面が単純な矩形のありふれた搬送ベルトに限らず、図示は省略したが、例えば表面側に、板状体に対する摩擦係数の増大化を図る為の適宜形状の突起を付設して成るもの、或は例えば裏面側に、別途にプーリに付設した歯部と係合する、歯状の突起を付設して成るものなど、必要に応じて、適宜設計変更して差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上明らかな如く、本発明に係る板状体の搬送装置は、吸気機構の配設費用と消耗電力費用を、既知のこの種の搬送装置に比べて、概ね半分程度に削減することが可能であり、併せて騒音の低減も可能とするものであるから、先記図示例の単板に限らず、金属薄板・合成樹脂板・ガラス板・厚紙等々種々の板状体の搬送に用いて有効であり、板状体関連の業界に於ける利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る板状体の搬送装置の側面説明図である。
【図2】図1に例示した板状体の搬送装置の背面説明図である。
【図3】図1のY−Y線に於ける断面部分拡大説明図である。
【図4】図1乃至図3に例示した板状体の搬送装置の側面動作説明図である。
【図5】図4に例示した動作説明図の背面部分拡大説明図である。
【図6】図1乃至図3に例示した板状体の搬送装置の側面動作説明図である。
【図7】図6に例示した動作説明図の背面部分拡大説明図である。
【図8】図1乃至図3に例示した板状体の搬送装置の側面動作説明図である。
【図9】図1乃至図3に例示した板状体の搬送装置に於て異常事態が発生した際の断面部分拡大動作説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 :搬入コンベヤ
2 :単板
3 :吸気機構
3a :吸気部材
3b :吸気口
3c :吸気機
3d :通気管
3h :開閉部材
4 :搬送機構
4a :搬送ベルト
4d :規制部材
5 :吸引補助部材
6 :堆積台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適数基の吸気機と、適時開閉作動可能な開閉部材を介して、前記吸気機の吸気口に繋がる適数個の吸気口を有する適数個の吸気部材とを備えた吸気機構を、前記吸気部材の吸気口が、板状体の搬送方向に倣って複列状に並ぶように配備すると共に、少なくとも前記吸気口の列の数と同数条の搬送ベルトと、各搬送ベルトの走行位置を、各搬送ベルトの内周側に於て規制する規制部材とを備えた搬送機構を、前記各搬送ベルトが、前記吸気口の各列の少なくともいずれか片側に近接して下方へ適度に突出するように配備して成り、板状体を上面側から吸引しつつ搬送する搬送装置であって、適宜の幅と前記吸気口の列の長さに相当する長さとを有する板状の吸引補助部材を、前記各搬送ベルトの吸気口の列が存在しない片側に近接させて規制部材と同じ高さの位置に、而も、近隣に位置する別の吸引補助部材又は吸気口の列との間に、大気を上方から容易に吸引するに足る間隔を設けて複列状に並設して成ることを特徴とする板状体の搬送装置。
【請求項2】
吸気口の各列の両側に夫々搬送ベルトを配備して成る搬送機構を用いると共に、各搬送ベルト毎に吸引補助部材を並設して成る請求項1記載の板状体の搬送装置。
【請求項3】
吸気部材の吸気口を、板状体の搬送方向に於て複数の区画に区分すると共に、各区画毎に開閉部材を備え、板状体の進行に対応させて、板状体の搬送方向の上手側から下手側へと、順次開閉部材を開放作動させるように構成して成る請求項1又は請求項2記載の板状体の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−13264(P2008−13264A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182911(P2006−182911)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】