説明

板金修復治具

【課題】板金の修復対象部位の加熱と冷却をスムーズに行い、修復精度を高くすることができるとともに、作業者の作業負担を軽減することが可能な板金修復治具を提供する。
【解決手段】板金修復治具1は、板金の修復対象位置を、加熱及び冷却して板金を平滑化する治具である。板金修復治具1は、導電性材料により形成される円筒状のローラ2と、ローラ2を円筒回転軸で回動可能に支持するローラ支持軸3と、ローラ支持軸3を支持する支持体4と、支持体4の一端に設けられ、ローラ2と電気的に接続された電極5と、ローラ2の接触面に対して、冷却空気を放出するための通路となる冷却通路6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に用いられる板金の曲面や周面に生じた凹みや歪みの修復を行う板金修復治具に関する。
【背景技術】
【0002】
接触や衝突等により発生する自動車のボディ等における板金の凹みや歪みを修復するに当たっては、まず、凹みや歪みの箇所を確認し、修復が必要なパネルの付属部品を取り外し、確認した凹みや歪みの箇所に塗布された塗装を剥離する。次に、プーラ等を用いて、凹みや歪みの箇所の板金を引き出し、たたき出し又は溶接等を行い、該当箇所を概ね平らにする。続いて、該当箇所に対して、加熱と冷却を繰り返して、加熱による膨張と冷却による収縮を利用して行う。
【0003】
このような板金の凹みや歪みを修復する板金修復治具として、以下の技術が提案されている(特許文献1参照)。この板金修復治具は、加熱手段となるローラと、ローラを回動可能に支持するローラ軸と、ローラ軸の軸受けとなるコの字型の保持枠とを備える。このローラを熱源とし、ローラを修復箇所に当接させ均一スピードで移動させることで、板金の熱分布にムラを生じにくく、また傷をつけずに修復作業を行えるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3154968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、板金における凹みや歪みの修復作業では、加熱と冷却を繰り返す必要がある。この点、上記従来の技術では、ローラを用いることにより、加熱する作業自体は容易になった。しかしながら、板金の修復対象を冷却する場合には、作業者は、一度加熱するローラを置いて別途冷却するための装置を手に取り、冷却作業を行う必要があった。そのため、作業者は、加熱するための装置と冷却するための装置を取り替えながら修復作業を行わなければならず、作業者にとって手間となっていた。
【0006】
また、近年の自動車のボディ等に用いられる高張力鋼板などは、熱に弱く、低温で加熱して膨張させる必要がある。このような鋼板では、温度が上がりすぎないように、加熱後すぐに冷やすことが大切になっている。しかしながら、従来の板金修復治具では、都度加熱手段と冷却手段との持ち替えが必要であったから、加熱後すぐに冷却することが難しかった。また、加熱後に冷却までのタイムラグがあると、板金の加熱箇所へのローラの接触具合により、当該加熱箇所の温度が、加熱手段の制御温度よりも高くなってしまう場合があった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、板金の修復対象部位の加熱と冷却をスムーズに行い、修復精度を極めて高くすることができるとともに、作業者の作業負担を軽減することが可能な板金修復治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、板金の修復対象位置を加熱及び冷却して板金を平滑化する板金修理治具において、円筒状で導電性材料により形成され加熱手段となるローラと、前記ローラを円筒回転軸で回動可能に支持するローラ支持軸と、前記ローラ支持軸を支持しつつ、前記ローラと電気的に接続された電極を備える支持体と、板金修復対象位置と前記ローラとの接触面に対して、冷却空気を放出するための空気の通路となる冷却通路と、を備え、前記冷却通路は、前記ローラ支持軸内に形成されるとともに、冷却空気を前記板金修復対象箇所とローラとの接触面に向けて放出する放出口を有することを特徴とする板金修理治具。
【0009】
以上の態様では、板金修理治具の修復対象位置に接するローラの近傍に冷却空気を放出する構成としたので、ローラによる加熱後、すぐの冷却が可能となる。また、このようなローラによる加熱によって、絞り加工だけでなくローラによる修復面の平滑化も可能となり、より精度の高い修復が可能となる。
【0010】
自動車のボディ等に用いる板金は、曲面加工等が施されているため、内部応力が残留している。この場合に、板金の加熱後、自然放熱に任せたり、そのまま放置したりすると、板金の加工された曲面形状等が変形してしまう。そこで、加熱後は、すぐに冷却することが求められる。この点、本態様では、ローラによる加熱と同時に、冷却通路を通って放出口から放される冷却空気により、加熱後の板金の冷却を即座に行うことが可能である。
【0011】
このような本態様によれば、特に、高張力鋼板等の熱に弱い材料に対して、ローラによる加熱によっても、必要以上に鋼板が高熱になることを防ぐことができ、低温での修復ができるようになる。
【0012】
また、従前は、加熱手段と冷却手段とが別に設けられていたため、作業者は板金の修復対象位置の加熱後、加熱に用いた装置を一度置き、冷却に用いる装置に持ち替えて冷却を行っていた。この点、本態様によれば、一つの装置で加熱と冷却を行うことができるので、作業者の手間を著しく省くことができる。
【0013】
なお、作業点付近においてガスを放出する装置として、CO2溶接又はMAG溶接が一般に知られているが、これらの放出ガスは、アーク溶接により溶けた金属が空気に触れないようにするシールドガスとしてのものであるから、本発明の冷却のための空気とは技術思想が全く異なるものである。
【0014】
ローラは、その接触面積の加減による抵抗の増減や、長時間の接触により、制御された温度を超えて温度上昇する場合がある。この点、本態様では、ローラの接触後、冷却手段により即座に冷却することができるので、接触面積や接触時間に影響され難い。そのため、結局は熟練の技が必要となる板金修復作業において、不慣れな作業者でも熟練者と技量の差が表れないような装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記ローラは、軸方向に複数分割して設けられ、複数のローラの間隙に、前記放出口が形成されたことを特徴とする。
【0016】
以上の態様では、ローラを複数に分け、その間隙に放出口を設けて冷却空気を放出する構成としたことで、板金修復対象箇所とローラとの接触面の幅方向(ローラ軸方向)に対して、均等に冷却空気を送ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上の本発明によれば、板金の修復対象部位の加熱と冷却をスムーズに行い、修復精度を高くすることができるとともに、作業者の作業負担を軽減することが可能な板金修復治具を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る板金修正治具の全体構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係る板金修正治具の全体構成を示す平面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る板金修正治具の作用を示す側面模式図。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る板金修正治具の全体構成を示す平面図。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る板金修正治具の全体構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態(以下、本実施形態という。)について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[1.本実施形態]
[1−1.構成]
本実施形態に係る板金修復治具1は、例えば、一般鋼板、アルミニウム製板金、ステンレス製板金、高張力鋼板などからなる板金の修復対象位置を加熱及び冷却して、板金を平滑化して修復するための治具である。この板金修復治具1は、図1及び図2に示すように、導電性材料により形成される円筒状のローラ2と、ローラ2を円筒回転軸で回動可能に支持するローラ支持軸3と、ローラ支持軸3を支持する支持体4と、支持体4の一端に設けられ、ローラ2と電気的に接続された電極5と、ローラ2の接触面に対して、冷却空気を放出するための通路となる冷却通路6と、を備える。
【0021】
ローラ2は、電流を流すことで抵抗熱を生じさせる加熱手段である。ローラ2の形状は円筒形で、材料には銅・フェライトなどの導電性材料を用いる。本実施形態において、ローラ2は、同大同形の2つの部分(ローラ2a,2b)から構成される。2つのローラ2a,2bの間隙は、後述する放出口6bの大きさに依存するが、放出口6bの機能を確保し得る限り、狭く設定するのが好ましい。
【0022】
ここで、ローラ2の材料として、上記特許文献1に見られるカーボンを用いず、銅やフェライトを用いる。これは次の理由による。すなわち、特許文献1においては、アークを発生させず発熱性能を維持することとしているが、特許文献1においても指摘があるように、カーボンは銅に比較して耐摩耗性が低く、減りが早い。そのため、ローラとして用いた場合に、摩耗して平滑でないカーボンにより、板金の修復対象箇所を適切に平らにすることができない場合があった。本実施形態では、このようなカーボンのデメリットを、ローラに流れる電流を調整するとともに、後に詳述する冷却手段を設けつつ、耐摩耗性の高い銅やフェライトを用いることとしている。
【0023】
ローラ支持軸3は、2つのローラ2a,2bを回動可能に支持する棒状体である。ローラ支持軸3は、後述する冷却通路6を形成するため、幅方向で半分程度の中間位置まで、中空で形成され、さらに、2つのローラ2a,2bの間隙部分には、後述する放出口6bを形成している。
【0024】
支持体4は、平面視U型で、左右の端部においてローラ支持軸3を軸支する構成を有する。本実施形態では、図1に示すように、ローラ支持軸3の左右端部に雌ネジを切り、支持体4にナットNによって支持体4を挟むように固定している。なお、支持体4にローラ支持軸3が固定される方法は、このような固定手法に限らず、支持体4にローラ支持軸3が固定される方法であれば、公知の種々の固定方法を採用可能である。
【0025】
電極5は、支持体4の平面視U字型形状を成すUの底部分に形成されるものであって、ローラ支持軸3と直交する方向に設けられている。電極5は、図示しない外部の電流供給装置に電気的に接続する接続部分の役割を担う。この電流供給装置としては、例えば特許文献1において板金修復治具本体として開示されるような公知の装置を用いる。
【0026】
なお、ローラ2、ローラ支持軸3、支持体4及び電極5は、いずれも導電性の部材から構成されており、図示しない外部の電流供給装置を介して電極5に入力される電流は、支持体4、ローラ支持軸3を伝わってローラ2まで流れる。
【0027】
冷却通路6は、ローラ支持軸3の中空に形成される冷却空気の搬送経路である。冷却通路6の一方の端部には、図示しない外部の送風機(公知)から空気を流入させる流入口6aが設けられ、他方の端部にはこの流入した空気を放出する放出口6bが設けられ、その間に流路6cが形成される。
【0028】
流入口6aは、支持体4がローラ支持軸3を軸支する一方の端部に設けられており、この流入口6aに送風機の送風ノズルを接続することで冷却空気の取り入れ口となる。一方、放出口6bは、2つのローラ2の間隙であって、ローラ支持軸3の軸方向中央部分に設けられている。
【0029】
放出口6bはノズル6nにより形成され、このノズル6nにより、放出口6bの噴出方向が、ローラ2の接触面方向、すなわち、図2の平面図に表れる平面方向に垂直な方向に向けて設けられている。この噴出方向の設定角度は、次の理由により定められる。板金修復治具1を修復作業に用いる際には、電極5に、図示しない電流供給装置の接続部分を接続して用いるが、この電流供給装置の接続部分の外装には絶縁体からなる取手が設けられている。作業者は、この取手を持って、支持体4のU字型平面を板金の平面とほぼ併せて、修正治具を動かす(図3参照)。したがって、支持体4のU字型平面の方向に放出口を設けたほうが、放出口6bが、2つのローラ2a,2bの接触面付近で冷却空気を送ることができるようになる。そこで、上述のように、ノズル6nによる放出口6bの噴出方向は、ローラ2の接触面方向に向けるようにして構成している。ただし、この放出口6bの向きは、電極5ないし作業者の取手と、板金の修復対象面との成す角との関係で、適宜変更可能であり、望ましくは、板金の修復対称面に冷却空気が直接当たる向きに設定する。
【0030】
なお、本実施形態において放出口6bから放出する空気としては、炭酸ガス(CO2)を用いることができることはもちろん、大気や窒素など、板金の修復対象箇所を冷却することができさえすれば、その種類は問わない。
【0031】
[1−2.作用]
以上の構成からなる本実施形態の板金修復治具1は、次のように作用する。
まず、板金修復治具1を、図示しない外部の電流供給装置(公知の装置を使用)に対して、電極5を接続する。同時に、ローラ支持軸3の一端に設けられた流入口6aに図示しない送風機(公知)の送風ノズルを接続し、冷却空気の送風経路を確立する。
【0032】
続いて、作業者は、電極5と接続した外部電流供給装置の接続部分に設けられた取手を持って、作業を開始する。なお、このとき、外部電流供給装置の電流値を制御することで、板金修復治具1が板金に当接した際の温度制御を行う。
【0033】
この状態で、作業者は、取手を持ちつつ、ローラ2を板金の修復対象位置に当接し、ローラ2を修復対象面に対して転がす。このとき、外部の電流供給装置から電極5、支持体4、ローラ支持軸3を介してローラ2に所定の電気が流れ、ローラ2と板金の接触面に抵抗熱が生じることで板金の修復対象位置が加熱される。これと同時に、外部の送風機から冷却空気が送られ、流入口6aから冷却通路6を通過して放出口6bから放出される。
【0034】
ここで、冷却通路6の放出口6bに設けられたノズルは、図3の側面模式図に表すとおり、板金修復治具1の使用時には、板金の修復面Aにほぼ対向する位置になるように設けられる。そのため、ノズルから放出される冷却空気は、2つのローラ2a,2bの間から放出され、板金修復面に当たって、左右に拡散し、さらに、ローラ2a,2bの板金当接面の前後を挟むように拡がる。
【0035】
[1−3.効果]
以上のような本実施形態の板金修復治具1では、修復対象位置に接するローラ2の近傍に、冷却空気を放出する構成としたので、ローラ2による加熱後、加熱箇所をすぐに冷却することができる。また、このようなローラによる加熱によって、絞り加工だけでなくローラによる修復面の平滑化も可能となり、より精度の高い修復が可能となる。
【0036】
自動車のボディ等に用いる板金は、曲面加工等が施されているため、内部応力が残留している。この場合に、板金の加熱後、自然放熱に任せたり、そのまま放置したりすると、板金の加工された曲面形状等が残留応力により変形してしまう場合がある。そこで、加熱後は、すぐに冷却することが求められる。この点、本実施形態の板金修復治具1では、ローラ2による加熱と同時に、冷却通路6を通って放出口6bから放出される冷却空気により、加熱後の板金を即座に冷却を行うことが可能である。特に、高張力鋼板等の熱に弱い材料に対しては、ローラ2による加熱により必要以上に鋼板が高熱になることを防ぐことができ、低温による修復ができるようになる。
【0037】
従前は、加熱手段と冷却手段とを別に用意していたため、作業者は板金の修復対象位置の加熱後、加熱に用いた板金修復治具を一度置き、冷却に用いる装置に持ち替えて冷却を行っていた。この点、本実施形態における板金修復治具1によれば、一つの装置で加熱と冷却を行うことができるので、作業者の手間を著しく省くことができる。
【0038】
なお、作業点付近においてガスを放出する装置として、CO2溶接又はMAG溶接が一般に知られているが、これらの放出ガスは、アーク溶接により溶けた金属が空気に触れないようにするシールドガスとしてのものであるから、本実施形態の板金修復治具において冷却のための空気とは技術思想が全く異なるものである。
【0039】
また、ローラ2は、その接触面積の加減による抵抗の増減や、長時間の接触により、制御された温度を超えて温度上昇する場合がある。この点、実施形態の板金修復治具1では、ローラ2の接触後、冷却手段により即座に冷却することができるので、接触面積や接触時間に影響され難い。そのため、結局は熟練の技が大切となる板金修復作業において、不慣れな作業者でも熟練者と技量の差が表れないような装置を提供することができる。
【0040】
また、ローラ2を複数(ここでは2つ)に分け、その間隙に放出口6bを設けて冷却空気を放出するような構成としたことで、図3に示すように、板金修復対象箇所とローラとの接触面の幅方向(ローラ軸方向)に対して、均等に冷却空気を送ることが可能となる。本実施形態では、特に、ローラを2つに分け、その中央に位置するローラの間隙に、冷却空気の放出口を設けた。そして、この放出口からローラの板金接触面に対して、対向する位置から冷却空気を放出することで、ローラと板金の修復対象箇所の接触面全体に均等に冷却空気を送ることができるようになる。
【0041】
[2.他の実施形態]
本発明は、上記実施形態において示した態様に限定されるものではなく、例えば以下の態様も包含する。すなわち、本実施形態において、ローラ2を2つに分割し、2つのローラの中央のローラ支持軸3に放出口6bを設けたが、本発明は、このような態様に限られず、ローラを3つや4つなど、さらに多くに分割して構成することも可能である。
【0042】
例えば、図4に示す板金修復治具10のように、ローラ20を3つに分割し、ローラ20の両側に流入口60aを2つ設け、各ローラ20の2つの間隙に放出口60bを設ける構成を取ることができる。このような態様では、図4に示すように、ローラ支持軸30の両端から、一つ目の放出口60bに至る幅方向各3分の1の位置までローラ支持軸30の中空により形成される流路60cを形成することで、両端から冷却通路60を2本形成し、放出口60bもこれにあわせて2つ形成する構成を採用可能である。また、図示はしないが、変形例として、ローラ支持軸の一端から幅方向で3分の2程度の位置までに中空を形成して流路を設け、その途中と端部とに、放出口及びを設けるような構成も採用可能である。
【0043】
上記実施形態では、放出口6bにより構成されるノズル6nの噴出方向を、図2の平面図に表れる平面方向に垂直な方向に向けて構成した。しかしながら、本発明は、このような態様に限られず、例えば、ノズル6nの噴出方向を、電極5の軸と同一方向、すなわち、図1の斜視図又は図3の模式図でいう真下方向に向けて構成することも可能であるし、図2の平面図に表れる平面方向に対して垂直な方向と、電極5の軸と同一方向との中間方向である斜め方向に設定してもよい。すなわち、ローラ2を板金の対象箇所に対して当てる角度に応じて、ローラの接触面方向に対してこれと同じになる方向にノズル6nの放出方向を向ける構成が好ましい。なお、例えば、ノズル6nを支持軸3に対して回動可能に取り付けることで、ノズル6nにおける冷却空気の放出口6bの放出方向を可変とする構成も採用可能である。
【0044】
図1に示した実施形態の変形例として、支持軸3の端部から冷却空気を導入する実施態様以外に、図5に示すような態様も可能である。図5は、変形例に係る板金修復治具20について、平面方向から模式的に表したものである。なお、図5においては、説明の便宜上、支持体4をローラ2の上部辺りで切り出して断面として表現している。
【0045】
図5に示す板金修復治具20のように、ローラ2aと2bとの間隙に支持軸3と垂直方向に冷却通路61を形成し、この冷却通路61の端部に冷却空気の流入口61aを設ける構成も採用し得る。冷却通路61の流入口61aには、図示しない外部の送風機から延伸したホース(図中に仮想線で示す)を取り付けて空気を送る。また、この場合、冷却通路61の導入経路の直線上に放出口61bを設ける。この板金修復治具20の使い方は、図3に示した態様と同様である。
【0046】
また、このような実施態様においては、図5に示すように、支持軸3のローラ2に覆われた部分に、ローラ2a,2bの中間に位置する冷却通路61から支持軸3内において左右に分岐して支持軸3の端部位置まで貫通させ、ローラ2a,2bの中心部分に、支持軸3内部の冷却通路61からローラ2a,2b側に連通する通気孔61dを設ける構成も考えられる。
【0047】
このように、支持軸3のローラ2a,2bに覆われた部分に通気孔61dを設けることにより、図5に矢印で示すように、支持軸3とローラ2a,2bの裏面との間のわずかなクリアランスに通気孔61dからの排出空気の流れが生まれる。これにより、ローラ2a,2bを冷却空気により冷やすことができるようになる。そのため、ローラ2a,2bをある程度低温状態に保ったまま、修復処理を行うことが可能となる。
【0048】
なお、この通気孔61dの形状は円形であっても方形であってもいいし、それぞれに1つ設けても小孔を複数設けるような構成としても良い。また、図5においては、設計上の観点から、冷却通路61が支持軸3を貫通し、両端を蓋付きのナットNによって閉塞する構成としているが、冷却通路61の左右端部は機能的には流入口61aと放出口61bとが設けられた中心部分から左右の連通孔61dの位置まで延伸していれば問題ない。
【符号の説明】
【0049】
1,10,20…板金修復治具
2,2a,2b,20…ローラ
3,30…支持軸
4…支持体
5…電極
6,60,61…冷却通路
6a,60a,61a…流入口
6b,60b,61b…放出口
6c,60c,61c…流路
61d…通気孔
6n…ノズル
A…修復面
N…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金の修復対象位置を加熱及び冷却して板金を平滑化する板金修理治具において、
円筒状で導電性材料により形成され加熱手段となるローラと、
前記ローラを円筒回転軸で回動可能に支持するローラ支持軸と、
前記ローラ支持軸を支持しつつ、前記ローラと電気的に接続された電極を備える支持体と、
板金修復対象位置と前記ローラとの接触面に対して、冷却空気を放出するための空気の通路となる冷却通路と、を備え、
前記冷却通路は、前記ローラ支持軸内に形成されるとともに、冷却空気を前記板金修復対象箇所とローラとの接触面に向けて放出する放出口を有することを特徴とする板金修理治具。
【請求項2】
前記ローラは、軸方向に複数分割して設けられ、複数のローラの間隙に、前記放出口が形成されたことを特徴とする請求項1記載の板金修復治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232340(P2012−232340A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267566(P2011−267566)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【分割の表示】特願2011−101763(P2011−101763)の分割
【原出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(591142954)
【Fターム(参考)】