説明

枕装置

【課題】テレビを見てくつろいだりするときに使用できる枕装置について、安定性がよく、快適に使用できるようにする。
【解決手段】人体の頭部を支える枕装置11であって、人体の上半身が乗る被押圧基板部22が設けられるとともに、該被押圧基板部22の後方端部側に、被押圧基板部22に対して後方に傾斜して人体の頭部を受ける傾斜部23が設けられ、傾斜部23には、前面側に膨出する着脱自在の枕部材31が取り付けられた枕装置11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寝るときに使用する枕に関し、より詳しくは、特にテレビを見たり本を読んだりしてくつろぐ時に使用するのに好適な枕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビを見ながらくつろぐ時や体調が悪く横になる時などには、ごろりと体を横たえる。単に体を横たえたのでは、頭が不安定なので、座布団を2つ折りにして頭の下に敷いたり、肘枕をしたりするのが一般的である。
【0003】
しかし、座布団を使用する場合には、高さの調節が困難なので、快適さを得られにくい。そのうえ、2つ折りにした座布団の屈曲部分が首に近い側に位置するので、頭の向きを変えたときなど、簡単に座布団がずれ、頭の下から外れる。
【0004】
この点、エア式の枕(たとえば、下記特許文献1参照)や、角度を調節することによって高さを調節する枕(下記特許文献2参照)などが案出されている。
【0005】
これらによれば、好みに応じて頭を支えることができ、快適さを得られるようであるが、枕はあくまでも頭だけの下に敷いて使用するものであるので、頭の向きを変えたときなどに枕が動いて、頭が外れてしまうことがあるなど、安定性に欠けるという難点がある。
【0006】
一方、肘枕の場合には、腕が疲れるという難点がある。
【0007】
この点、下記特許文献3に開示されているような枕がある。この枕は、方形状の基枠板の前端側部分にラチェットからなる第1のヒンジを介して、左右一対のへの字型アームを基枠板の後端方向に向けて連設し、これらへの字型アームの他端に、ラチェットからなる第2のヒンジを介してU字状のフレームを基枠板の後端方向に向けて接続した構造であり、U字状のフレームとへの字型アームとで囲まれた部分に、腕を挿入できるようにされている。すなわち、頭部をU字状のフレーム部分で支えたときに、肘枕をするときの腕を上記の囲まれた部分から下に伸ばせるようにしている。
【特許文献1】特開2002−238716号公報
【特許文献2】実開昭56−62954号公報
【特許文献3】特許第3843398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示されたような枕の使用時には、U字状のフレーム部分で人体の頭部が支えられ、肘枕をするはずの腕がU字状のフレーム等に囲まれた部分から伸ばせて自由になるので、腕が疲れないという利点がある。
【0009】
しかし、基枠板とU字状のフレーム等よりなる枕は、側面視で略「く」字状をなし、その上端の傾斜した部分で人体の頭部を支えるため、この部分に大きな荷重がかかる。肘枕をすべき腕を自由にしたときには、その荷重はより大きくなる。
【0010】
すると、略「く」字状をなす枕の基枠板の前端部に持ち上がろうとする力が作用する。この部分には、枕の構造上、人体の脇部分のみが乗った状態になっている。しかしながら、人体の脇部分は比較的立体的な形状をしており、基枠板の前端部を押さえ付ける作用はあまりなく、基枠板の前端部が持ち上がろうとする力によって、却って人体の一部が集中して圧迫される。
【0011】
このように、安定性に欠ける上に、快適性にも欠けるという難点がある。
【0012】
また、横向きにしてしか使用できず、就寝時に使用することなどもできず、汎用性に欠けるという難点もある。
【0013】
そこで、この発明は、安定して快適に使用でき、汎用性も有するようにすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのための手段は、人体の頭部を支える枕装置であって、人体の上半身が乗る被押圧基板部が設けられるとともに、該被押圧基板部の後方端部側に、被押圧基板部に対して後方に傾斜して人体の頭部を受ける傾斜部が設けられた枕装置である。
【0015】
被押圧基板部が人体の上半身によって押圧されて接地状態が保持され、この状態で傾斜部が人体の頭部を受けて支えるので、人体の頭部は安定して支持される。傾斜部は人体の頭部からの荷重を受けるが、被押圧基板部が人体の上半身によって押さえられているので、被押圧基板部が持ち上がる作用は働かない。また、人体の頭部を支える傾斜部は、被押圧基板部から斜め後方に傾斜しているので、ごろりと体を横たえたときの頭でも、仰向けに寝たときの頭でも、支持できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、人体の頭部を支えたときに枕装置の一部に持ち上がるような力が作用しないので、安定性がよい。そのうえ、人体に圧迫感を感じさせないようにすることもでき、快適に使用できる。また、ごろりと体を横たえるときのほか、仰向けになるときでも、就寝するときでも使用可能であって、汎用性も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、枕装置11の斜視図であり、図2はその分解斜視図、図3は断面図である。これらの図に示すように、枕装置11は、屈曲した板状をなす支持台部材21と、この支持台部材に着脱自在に保持される枕部材31とを有する。
【0018】
支持台部材21も枕部材31も人体を弾力的に支持できるように柔軟性を有する。また、大きさは、支持台部材21のほうが枕部材31よりも幅狭に設定されている。すなわち、枕部材31は一般的な枕としての幅を有する一方、支持台部材21はそれよりも幅狭である。具体的には、大人が使用するものとして、枕部材31の幅を500mm程度としたときに、支持台部材21の幅を350mm程度に設定するとよい。
【0019】
まず、支持台部材21について説明し、次に枕部材31について説明する。
【0020】
支持台部材21は、人体の上半身が乗る被押圧基板部22と、この被押圧基板部22の後方端部側に設けられ、被押圧基板部22に対して後方に傾斜して人体の頭部を受ける傾斜部23とを有した、折曲した板状の形態をなす。構造は、金属製のフレーム24を内部に有し、このフレーム24の上面側にフレーム24を完全に覆う大きさのクッションマット27を固定するとともに、フレーム24とクッションマット27を柔軟な発泡樹脂シート28で被包して、その上から着脱可能なカバー29を被せてなるものである。
【0021】
前記フレーム24は、図4に示したように、平面視長方形枠状をなし、前記被押圧基板部22の芯となる被押圧基枠25と、この被押圧基枠25の後方端部側から斜め後方に向けて延びて、前記傾斜部23の芯となる傾斜枠26とを有する。
【0022】
被押圧基枠25は、丸パイプを偏平にして枠状に組んで本体部25aを構成し、この本体部25aの内側には帯状体25bが張られ、前記のクッションマット27を安定して支えるようにされている。
【0023】
傾斜枠26は、複数の部材からなる。起立部26aと、ラチェット26bと、傾動枠26cである。起立部26aは、被押圧基枠25の後端部側の左右両側の上面から斜め後方に向けて立ち上がるもので、上端には前記ラチェト26bが保持されている。起立部26aの高さは、適宜高さ、たとえば大人用の場合で、50mm程度から90mm程度に設定されるとよい。
【0024】
前記ラチェット26bは、起立部26aから後方側にせり出す形状をなし、そのせり出した後端から上方に接続部26dが設けられている。この接続部26dに、前記傾動枠26cが固定される。ラチェット26bの存在により、傾動枠26cは、後方に傾いた状態で複数段階に角度調節できる。また、傾動枠26cを図5に示したような前方に倒した姿勢にしてコンパクト化を図ることもできる。
【0025】
なお、前記被押圧基板部22の後端位置が前記ラチェット26bの直下位置まで後方に延出されている。すなわち、被押圧基板部22の芯となる前記被押圧基枠25の後端25c位置は、少なくともラチェット26bの直下位置まで後方に延びるように延設されている。これにより、ラチェット26bの直下位置に支えがある状態になる。
【0026】
傾動枠26cは、その基部が連結杆26eで連結され一体性が高められるとともに、前記クッションマット27を安定して支持できるように帯状体26fが張られている。
【0027】
前記枕部材31は、弾力性の高い発泡体からなる本体32と、これを覆うカバー33とからなる。本体32は、背面側が平面で、正面側は上端部と下端部とにふくらみを有し、これらの間が凹んだ曲面からなる立体形状である。また、上下方向の長さは、枕部材31を支持台部材21に取り付けたときに、前記傾斜枠26のラチェット26b位置よりも下まで延びるように、換言すれば傾斜部23の角度調節可能な部分である傾動枠26の長さよりも、長く設定されている。
【0028】
カバー33の背面には、図6に示したように、カバー33と同様に伸縮性を有する素材からなり、下が開口した袋状のポケット34が形成され、このポケット34に、支持台部材21の傾斜部23が入るようにしている。つまり、このポケット34が、枕部材31を着脱可能にするための構造である。
【0029】
このように構成された枕装置11では、図7(a)に示したように、傾斜部23の上側部分がラチェット26bによって複数段階に傾斜し、所望の角度で固定される。
【0030】
使用するときには、傾斜部23の角度を適宜設定して、図8や図9に例示したように、人体の上半身を被押圧基板部22に乗せるとともに、人体の頭部を枕部材31に乗せる。図8は、仰向け状態での使用、図9は横向け状態での使用を示している。
【0031】
このように、被押圧基板部22が人体の上半身によって押圧されて接地状態が保持されるとともに、この状態で傾斜部23と枕部材31が人体の頭部を支えるので、人体の頭部は安定して支持される。また、傾斜部23は人体の頭部からの荷重を受けるが、被押圧基板部22が人体の上半身によって押さえられているので、被押圧基板部22が持ち上がる力は作用しにくい。この作用は、枕部材31の存在によって、荷重がかかる部分が前方に出ることにより高められる。
【0032】
このため、安定性が良好であり、被押圧基板部22の前端部が持ち上がるようなことがないので、人体の一部が圧迫されて不快な思いをすることもなく、快適に使用できる。快適に使用できる効果は、被押圧基枠25の本体部25aが偏平に形成されていることと、フレーム24を完全に覆う大きさのクッションマット27を有すること、傾斜部23が角度調節可能であることからも高められる。
【0033】
また、人体の頭部を支える傾斜部23は、被押圧基板部22から斜め後方に傾斜しているので、図8、図9に示したように、仰向けに寝たときの頭でも、ごろりと体を横たえたときの頭でも支持できる。このため、単にテレビを見ながらくつろぐときのほか、仮眠を取るとき、さらには、就寝するときでも使用可能であって、汎用性を有する。
【0034】
さらに、枕部材31は、支持台部材21の傾斜部23に対して着脱自在であるので、好みによっては別形状の枕部材を用意しておき、好みや使用目的に応じて枕部材を選択して使用することもできる。また、枕部材31を外して使用することもできる。
【0035】
枕部材31は、枕として必要な大きさを有するとともに、支持台部材21が枕部材31よりも幅狭であるので、枕として十分に使用できるとともに、形態の上でも支持台部材21の占める割合が小さくなって、比較的コンパクトで使用しやすい枕装置11となる。
【0036】
なお、傾斜部23のラチェット26bを、図7(b)に示したように、傾斜部23の下端位置に設けることもできる。この図7(b)においては、被押圧基枠25に、後方に延びる後端を描かなかったが、前記のように後端25cを形成することもできる。
【0037】
しかし、前記のように傾斜部23のラチェット26bを、起立部26aを介して設けるとともに、枕部材31の上下方向の長さを、枕部材31の下端がラチェット26b位置よりも下に下がるように長く設定しているので、図7(a)に示したように、傾斜部23は、比較例として例示した図7(b)の場合とは大きく異なる傾斜の動きをし、有利な効果を得られる。
【0038】
すなわち、図7(a)に示したように、傾斜部23を傾動させても、取り付けた枕部材31の長さ方向の中間部分(凹んだ部分)の前後方向での位置の変位が、図7(b)の場合よりも少ない。しかも、傾斜部を大きく傾けたときでも、枕部材31の前記の中間部分の位置は、ラチェット26bの位置より後方にずれることが少ない。
【0039】
つまり、図8、図9に示したように、人体の頭部の重みでかかる荷重は、ラチェット26b部分の上方か、それよりも前側にかかり、しかも、傾斜部23を支える被押圧基板部22が人体の上半身によって押さえつけられている。さらに、被押圧基枠25の後端25c位置がラチェット26bの直下位置まで後方に延びて、ラチェット26b部分にかかる荷重に対して支えとなるように構成されている。
【0040】
このため、枕装置11には後方に傾くような力はかからない。つまり、図7(a)に示した如く前記のように構成したほうが、図7(b)に示したように構成した場合よりも、使用時の安定性が極めて高いものとなる。
【0041】
この発明の構成と、前記の一形態の構成との対応において、
この発明の枕部は、枕部材31に対応するも、
この発明は、前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
たとえば、枕部(枕部材)は高さ調節可能であるもよく、また枕部材の着脱は面ファスナ等の他の手段によるもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】枕装置の斜視図。
【図2】枕装置の分解斜視図。
【図3】枕装置の縦断面図。
【図4】フレームの斜視図。
【図5】フレームの折り畳み状態の側面図。
【図6】枕部材の背面図。
【図7】傾斜部の傾斜状態の説明図。
【図8】使用状態の説明図。
【図9】使用状態の説明図。
【符号の説明】
【0043】
11…枕装置
22…被押圧基板部
23…傾斜部
24…フレーム
25…被押圧基枠
25c…後端
26…傾斜枠
26a…起立部
26b…ラチェット
26c…傾動枠
31…枕部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の頭部を支える枕装置であって、
人体の上半身が乗る被押圧基板部が設けられるとともに、
該被押圧基板部の後方端部側に、被押圧基板部に対して後方に傾斜して人体の頭部を受ける傾斜部が設けられた
枕装置。
【請求項2】
前記傾斜部の前面に、前面側に膨出する枕部が設けられた
請求項1に記載の枕装置。
【請求項3】
前記被押圧基板及び傾斜部が、枕部よりも幅狭である
請求項2に記載の枕装置。
【請求項4】
前記枕部が、傾斜部とは別部材で形成され、傾斜部に対して着脱自在に保持される
請求項2または請求項3に記載の枕装置。
【請求項5】
前記傾斜部が角度調節可能である
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の枕装置。
【請求項6】
前記傾斜部の基部に、被押圧基板から立ち上がって被押圧基板に対する角度が固定された起立部が形成されるとともに、起立部の上端に、角度調節のためのラチェットが設けられた
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の枕装置。
【請求項7】
前記枕部の長さが、傾斜部の角度調節可能な部分の長さよりも長く設定された
請求項6に記載の枕装置。
【請求項8】
前記被押圧基板部の後端位置が、前記ラチェットの直下位置まで後方に延出された
請求項6または請求項7に記載の枕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−57854(P2010−57854A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229345(P2008−229345)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(502020168)ユーバ産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】