説明

【課題】仰向けに寝ている姿勢から左または右に寝返りを打って横臥した姿勢をとったとき、自然に耳が音孔に合致するようにして、枕をずらしあるいは体をずらすことを不要にした枕を得る。
【解決手段】枕本体1に形成されていて枕本体1外の音を枕本体1内に向かって導き入れることができるように枕本体の外側部に開放した音導入路と、枕本体1の上面側において開放するとともに音導入路に連通している音孔8と、を具備し、音孔8は、人体の耳を受け入れることができる大きさであり、枕本体1の左右に1個ずつ設けられている。枕本体1は、左右方向中央部に人体の後頭部を受けることができる頭部受け部21を有し、頭部受け部21に仰向けの姿勢で後頭部を載せた状態から左右に寝返りをうったとき左右の耳が音孔8に位置するように、音孔8の位置が定められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕に関するもので、特に、横臥した姿勢でテレビなどを見る場合でも耳が塞がれることなく音声を聞くことができ、あるいは、耳の不自由な人が補聴器を付けたまま上記の姿勢をとっても補聴器が邪魔にならず音声を聞くことができるようにした枕に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リラックスしてテレビなどを見る場合、横臥した姿勢すなわち横向きに寝た姿勢をとることがある。この姿勢を保つためには、側頭部を枕に載せて頭部の荷重を枕で支える必要がある。しかし、従来一般の枕は、どこの横断面形状もほぼ一定で、上端面の左右方向の形状に変化がないため、横臥した姿勢をとると耳が頭部の下側になって枕に当たり、頭部の荷重によって耳が押しつぶされる。そのため、テレビの音声や周囲の音声を聞き取りにくくなり、また、耳が痛くなるという難点がある。また、耳が不自由で補聴器を装着した人が横臥した姿勢でテレビなどを見ようとすると、頭部の荷重によって補聴器が枕に押し付けられるため、事実上補聴器を装着した人は横臥した姿勢をとることができない。同じ理由で、ピアスを付けている人も上記の姿勢をとることができない。
【0003】
従来、枕体の中間部に耳逃がし部を形成し、使用時は、枕体に頭を載せかつ上記耳逃がし部に耳を入れることにより、頭の重さによる耳の潰れをなくし、さらに、枕体は台座部とクッション部で構成し、台座部は上面部と折り返し部と下面部とからなる横断面U字形とすることにより、外部の音が遮断されることのないようにした枕が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ブロック形枕本体の中央部に凹部とこの凹部から側辺部に伝音溝を形成してなる横寝枕も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−181042号公報
【特許文献2】実開平4−34963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載されているような、外部からの音を聴くことに対して障害とならないように工夫した従来の枕は、いずれも枕本体の中央部に耳逃がし部を設けあるいは凹部を設けたものである。したがって、仰向けの姿勢で頭部を枕に載せたとき、上記耳逃がし部あるいは凹部に後頭部が位置し、後頭部の一部が宙に浮いた感覚になって寝心地を害する難点がある。また、仰向けの姿勢から寝返りを打ちながら枕の上面に沿って頭部を90度近く回転させ、そのまま左または右の側頭部を枕で支える横臥姿勢をとると、耳が上記耳逃がし部あるいは凹部からずれ、耳が枕の上面で押しつぶされる。そこで、寝返りを打つときは、頭を持ち上げて枕の位置をずらし、あるいは体をずらして、耳逃がし部あるいは凹部に耳が一致するように調整する必要がある。しかし、このような動作を使用者に強いることになるので、使用者にとっては面倒であるとともに、体力のない年配者や障害者は、耳逃がし部あるいは凹部に耳を一致させることが難しいという難点がある。
【0006】
本発明は、以上説明した従来の枕の問題点を解消するためになされたもので、横臥した姿勢でテレビなどを見る場合でも耳が塞がれることなく音声を聞くことができ、あるいは、耳の不自由な人が補聴器を付けたまま、さらには、ピアスを付けたまま、横臥した姿勢をとっても補聴器が邪魔にならず音声を聞くことができるようにするとともに、仰向けに寝ている姿勢から左または右に寝返りを打って横臥した姿勢をとったとき、自然に耳が音孔に合致するようにして、枕をずらしあるいは体をずらすことを不要にした枕を提供することを目的とする。
本発明はまた、仰向けに寝ている姿勢と横臥した姿勢とで、それぞれの姿勢に適した枕の高さになるように工夫し、横臥した姿勢をとっても、例えば肩などに無理な加重が集中することのないようにした枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、枕本体に形成されていて枕本体外の音を枕本体内に向かって導き入れることができるように枕本体の外側部に開放した音導入路と、枕本体の上面側において開放するとともに上記音導入路に連通している音孔と、を具備し、上記音孔は、人体の耳を受け入れることができる大きさであり、枕本体の左右に1個ずつ設けられていることを最も主要な特徴とする。
枕本体は、左右方向中央部に人体の後頭部を受けることができる頭部受け部を有し、この頭部受け部に仰向けの姿勢で後頭部を載せた状態から左右に寝返りをうったとき左右の耳が音孔に位置するように、上記音孔の位置が定められているとよい。
枕本体は、左右方向中央部の高さよりも左右両側の高さが高くなっているとなおよい。
【発明の効果】
【0008】
仰向けに寝る場合は、枕本体の左右方向中央部の頭部受け部に後頭部を載せる。寝たままテレビなどを見るために横臥姿勢をとる場合は、枕の上面に沿って頭を転がしながら寝返りを打てばよく、枕をずらす必要はなく、あるいは体をずらす必要もない。横臥姿勢をとることによって左または右の耳が音孔に入り、頭部の荷重で耳が押しつぶされることはない。音孔は音導入路に連通し、音導入路は枕本体の外側部で開放しているため、テレビから発せられる音声または周辺の音声が音導入路および音孔を経て耳に達し、枕の使用者はテレビから発せられる音声または周辺の音声を良好に聞き取ることができる。
仰向けに寝た状態に適した枕の高さと横臥した状態に適した枕の高さは異なる。仰向けに寝た状態では、背中と後頭部の高さ位置の差分に相当する枕の高さがあればよく、横臥姿勢では肩の側面と側頭部の高さ位置の差分に相当する枕の高さが必要で、後者のほうがより高くなる。そこで、枕本体は、左右方向中央部の高さよりも左右両側の高さが高くなるように構成するとよい。かかる構成にすることにより、横臥姿勢での頭部の荷重を無理なく有効に支持することができ、肩に荷重が集中することを防止して、肩こりの原因になるなどの不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明にかかる枕の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1ないし図3において、符号1は枕本体を示す。枕本体1は、外周が縫いつけなどによって結合された上部布団2と下部布団3を有してなる。上部布団2の内部には例えば化学繊維などからなる綿4が詰め込まれている。下部布団3内には、後述の音導入路を構成する筒部材5が配置されるとともに、筒部材5の内部空間を除いてクッション材が詰め込まれている。クッション材としては任意のものを選択して使用すればよい。例えば、蕎麦殻、ウレタンなどが考えられるが、図4に示すような、薄い合成樹脂からなる柔らかい無数のパイプ材9を用いるとよい。
【0010】
枕本体1を構成する上部布団2には、枕本体1の上面側において開放する円形の音孔8がドーナツの孔状に形成されている。音孔8は人体の耳を受け入れることができる大きさであり、枕本体の左右に1個ずつ設けられている。枕本体1は、左右方向中央部に人体の後頭部を受けることができる頭部受け部21を有し、この頭部受け部21に仰向けの姿勢で後頭部を載せた状態から左右に寝返りをうって横臥したとき左または右の耳が音孔8に位置するように、上記左右1個ずつの音孔8の位置が定められている。左右の音孔8は上部布団2に孔を穿ち、かつ、孔の周縁部を下方に向かって円筒形状に成形することによって形成されている。
【0011】
枕本体1には、枕本体1外の音を枕本体1内に向かって導き入れることができるように枕本体1の外側部に開放した音導入路を構成する筒部材5が配置されている。筒部材5は枕本体1の左右にまたがっていて、この筒部材5には上記の各音孔8と連通する開口52が形成されている。したがって開口52が左右に1個ずつ形成されている。筒部材5は円筒形状の部材であっても差し支えないが、図示の実施例では、枕本体1内で安定に保持されるように、横断面形状四角形の筒部材5で構成されている。そして、この横断面形状四角形の筒部材5が下部布団3の内部に配置され、適宜の固定手段で位置決めされている。筒部材5の左右両端部は開放口51となっていて、この各開放口51は枕本体1の左右の外側部で開放している。筒部材5は、枕全体の重量が重くならないように合成樹脂の一体成形品で形成するとよい。図1、図3に示すように、上記開口52は、筒部材5の上面の一部を円筒形状に立ち上がらせることによって形成されている。
【0012】
筒部材5の上記円筒形状の開口52が音導入路5から突出して存在していると、その上方にクッション材4が介在しているとはいえ、頭部を載せたときの感触がよくないので、各開口52には、荷重を分散させて感触を良くするための荷重分散部材6が上側から嵌められている。荷重分散部材6は、弾性のある合成樹脂の一体成形によって製作することができ、円盤型の本体部分61と、本体部分61の中央部から下方に向かって突出した円筒部62を有してなる。また、本体部分61は、リング状の外周縁部とその内方に形成されたメッシュ状の部分とからなる。本体部分61は上部座布団2と下部座布団3との重合部に位置し、上部座布団2と下部座布団3が縫い合わせられることによって上部座布団2と下部座布団3で挟み込まれている。上記円筒部62の外径は筒部材5の開口52の内径と略同じになっていて、上記円筒部62が筒部材5の開口52の内径側に嵌められている。このようにして、枕本体1の外側で発せられた音声は、筒部材5の開放口51から取り込まれ、筒部材5→その開口52→荷重分散部材6の円筒部62→音孔8の順に伝達され、音孔8に位置する耳に到達するようになっている。荷重分散部材6の本体部分61は上面側がクッション材4で、下面側がクッション部材9で埋められていて、枕本体1の上面からかかる荷重が荷重分散部材6の本体部分61に分散してかかり、筒部材5の開口52に集中して荷重がかかることが防止されるため、音孔8の上に頭を載せたときのごつごつ感が軽減されて感触が改善される。
【0013】
仰向けに寝た状態に適した枕の高さと横臥した状態に適した枕の高さは異なる。仰向けに寝た状態では、背中と後頭部の高さ位置の差分に相当する枕の高さがあればよく、横臥姿勢では肩の側面と側頭部の高さ位置の差分に相当する枕の高さが必要で、後者のほうがより高くなる。そこで、図示の実施例では、図3に示すように、仰向けの姿勢で寝る場合に後頭部を受けるべき枕本体1の左右方向中央部の頭部受け部21の高さに対して、左右両側の頭部受け部22の高さが高くなっている。図3では、両者の高さの差をhで示している。この高さの差hは、仰向けに寝た状態に適した枕の高さと横臥した状態に適した枕の高さとの差に相当する。かかる構成にすることにより、横臥姿勢での頭部の荷重を無理なく有効に支持することができ、肩に荷重が集中することを防止して、肩こりの原因になるなどの不具合を防止することができる。また、横臥した姿勢でテレビなどを見る場合に目の高さ位置を高くすることができるため、テレビなどが見やすくなる利点もある。
【0014】
図1に示すように、枕本体1の前面には、人体の肩が対向すべき部分に、複数個の磁石11が固着されたテープ状の部材10が装着可能となっている。枕本体1の前面下縁に沿って布製の袋24が縫い付けられていて、この袋にテープ状の部材10を挿入しあるいは引き出すことによって着脱することができるようになっている。上記袋24にテープ状の部材10を装着しておけば、寝た状態で頭部を枕本体1に載せたとき、テープ状の部材10に固着されている磁石11に肩が接し、磁気の作用によって人体の血行を良くする効果を得ることができる。テープ状の部材10を着脱する上記装着面24およびこれに続く枕本体1の前面下部には、枕本体1に頭部を載せたとき、肩と枕本体との当たりを和らげるために、スポンジのような弾性体を入れておくとよい。
【0015】
以上説明した実施例によれば、仰向けに寝た姿勢では頭部受け部21に後頭部を載せ、この状態からテレビなどを見るために横臥姿勢をとる場合は、頭部受け部21に沿って頭部を転がしながら寝返りを打てばよい。横臥姿勢では、左または右の耳が左または右の音孔8に嵌るため、耳が枕で押しつぶされることはない。したがって、耳が痛くなることを防止することができ、耳にピアスや補聴器などを付けていても安全である。また、外部の音波が開口部51→音導入路5→開口52→音孔8を通じて耳に届くため、テレビの音声や周辺の音を良好に聞き取ることができる。寝たきりの人を仰向けの姿勢から横臥姿勢に寝返りを打たせたとき、音孔8に耳が入り、外部の音声を自然のまま聞き取ることができるため、介護人などとのコミュニケーションをとることが容易であり、痴呆の防止など、健康面でも好ましい効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる枕の実施例を示す斜視図である。
【図2】上記実施例の内部に組み込まれる音導入路および荷重分散部材の例を示す分解斜視図である。
【図3】上記実施例中の音孔を通る線に沿った縦断面図である。
【図4】上記実施例に用いることができるクッション部材の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1 枕本体
5 音導入路を構成する筒部材
8 音孔
10 テープ状の部材
11 磁石
51 開放口
52 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕本体に形成されていて枕本体外の音を枕本体内に向かって導き入れることができるように枕本体の外側部に開放した音導入路と、
枕本体の上面側において開放するとともに上記音導入路に連通している音孔と、を具備し、
上記音孔は、人体の耳を受け入れることができる大きさであり、枕本体の左右に1個ずつ設けられている枕。
【請求項2】
枕本体は、左右方向中央部に人体の後頭部を受けることができる頭部受け部を有し、この頭部受け部に仰向けの姿勢で後頭部を載せた状態から左右に寝返りをうったとき左右の耳が音孔に位置するように、上記音孔の位置が定められている請求項1記載の枕。
【請求項3】
音導入路は枕本体の左右にまたがる筒部材からなり、この筒部材には音孔と連通する開口が形成されている請求項1記載の枕。
【請求項4】
枕本体の前面には、人体の肩が対向すべき部分に、複数個の磁石が固着されたテープ状の部材が装着可能となっている請求項1記載の枕。
【請求項5】
枕本体は、左右方向中央部の高さよりも左右両側の高さが高くなっている請求項1記載の枕。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−307346(P2007−307346A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188851(P2006−188851)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3123811号
【原出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(505195362)
【Fターム(参考)】