説明

【課題】枕の内部に詰物を容易に出し入れすることができ、使用者の欲する使用感の得られる枕を簡単かつ短時間に調製することができる枕を提供する。
【解決手段】枕100は、枕100の上面を構成する上側生地110の内側に詰物Tを出し入れするための開口部114a〜114gを有する詰物充填部113a〜113gをそれぞれ備えている。また、枕100は、枕100の下面を構成する下側生地120の内側に詰物充填部113a〜113gに対向した状態で詰物Tを出し入れするための開口部124a〜124gを有する詰物充填部123a〜123gをそれぞれ備えている。各詰物充填部113a〜113g,123a〜123gは、それぞれ独立した状態で設けられている。また、上側生地110の一部と下側生地120の一部とがファスナー131により接合されており、詰物充填部113a〜113gに詰物Tを充填する際には上側生地110の一部が下側生地120に対して分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕の内部に充填する詰物の材質、量および硬さを枕内部の部分ごとに適宜調整することができる枕に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、密閉された布製の袋体内にそば殻、ビーズ、またはウレタン材などからなる素材を詰物として充填した枕が広く用いられている。従来、枕は、単一の素材からなる詰物を充填して構成されることが多かったが、近時においては、枕の使用感を向上させる目的で互いに異なる種類の素材からなる詰物を適宜組み合わせて充填した枕が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、枕の内部空間を複数の小空間(小室)に分割するとともに、同小空間内をセパレートシートを用いて上下2層に区画することにより、小空間ごとに上層および下層に互いに異なる素材からなる詰物を充填することができる枕が開示されている。これにより、使用者の好みの使用感(例えば、高さ、硬さ、通気性、および保温性など)が得られる枕を実現しようとしている。
【特許文献1】特許第3873228号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された枕においては、枕内部に形成された小空間が上下2層に分かれているため、詰物の出し入れを繰り返す枕の調製作業の作業性が悪いという問題がある。すなわち、このような枕に詰物を充填する場合においては、使用者の求めに応じて複数種類の素材からなる詰物を適宜交換または充填量を調整しながら使用者にとって最適な使用感が得られる枕に仕上げられる。ところが、この場合、詰物を充填する小空間の内部が2つの層に分かれているため、一方の層への詰物の出し入れ作業において他方の層へ詰物が混入、または同他方の層から一方の層へ詰物が混入することがある。特に、上層の詰物の充填量を維持した状態で下層の詰物の充填量または種類を変更する場合、または大きさの小さい粒状の詰物を出し入れする場合においては、上下層間相互の詰物の混入が生じ易く作業性が著しく悪い。このため、使用者の欲する使用感の得られる枕を調製し難いという問題があった。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、枕の内部に同種または異種の素材からなる詰物を容易に出し入れすることができ、使用者の欲する使用感の得られる枕を簡単かつ短時間に調製することができる枕を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、枕の上面を構成する上側生地の内側に、詰物を出し入れするための第1の開口部を有した第1の詰物充填部を複数配置し、枕の下面を構成する下側生地の内側に、詰物を出し入れするための第2の開口部を有した第2の詰物充填部を第1の詰物充填部に対向した状態で配置したことにある。
【0007】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、枕は、枕の上面を構成する上側生地の内側に詰物を出し入れするための第1の開口部を有する第1の詰物充填部を備えるとともに、枕の下面を構成する下側生地の内側に同詰物を出し入れするための第2の開口部を有する第2の詰物充填部を前記第1の詰物充填部に対向した状態で設けて構成されている。すなわち、枕内部には、上側と下側に複数の詰物充填部がそれぞれ独立した状態で設けられている。この場合、詰物を出し入れする開口部は各詰物充填部ごとに設けられている。これらにより、第1および第2の詰物充填部に詰物を出し入れする際においては、上下方向に隣接する第1および第2の詰物充填部間において詰物が互いに混入することがない。この結果、枕の内部に同種または異種の素材からなる詰物を容易に出し入れでき、使用者の欲する使用感(例えば、高さ、硬さ、通気性、および保温性など)の得られる枕を簡単かつ短時間に調製することができる。
【0008】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記枕において、第1の詰物充填部は、上側生地の内側に複数配置され、第2の詰物充填部は、下側生地の内側に複数配置されたことにある。このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、第1および第2の詰物充填部に詰物を出し入れする際、第1の詰物充填部間、および第2の詰物充填部間で詰物が互いに混入することがない。この結果、枕の内部に同種または異種の素材からなる詰物を容易に出し入れでき、使用者の欲する使用感の得られる枕を簡単かつ短時間に調製することができる。
【0009】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記枕において、第1の開口部は、第1の詰物充填部における第2の詰物充填部側の表面に設けられ、上側生地の少なくとも一部を下側生地から分離可能な状態で接合する接合手段を備えたことにある。このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、上側生地の表地には第1の詰物充填部の第1の開口部が設けられていないため、上側生地の表地に接する使用者に第1の開口部が触れることによる不快感を生じさせることがない。すなわち、上記特許文献1に開示された枕においては、詰物を出し入れするための開口部が使用者の頭部を載せる枕上面に設けられているため、枕の使用感が損なわれていたが、本願発明によれば、快適な使用感を得ることができる。
【0010】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記枕において、接合手段は、枕の周縁部の一部に設けられていることにある。このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、接合手段は枕の周縁部の一部に設けられているため、枕の使用者は接合手段が設けられていない部分を使用者側に向けて枕を使用することができる。換言すれば、使用者側に向けられる枕の周縁部以外の周縁部に接合手段を設けるとよい。これにより、枕の調製者による調整作業が行い易くなるとともに、使用者の使用感が向上する。すなわち、調製者は、使用者の頭部が枕上に載せられた状態で上側生地と下側生地との間に手やスペーサなどを差し入れて使用者の頭の位置、詰物の充填具合、または枕の厚さ(所謂枕の高さ)を確認することができる。また、使用者は、枕の使用時に接合手段が触れることがないため快適に枕を使用することができる。
【0011】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記枕において、第2の詰物充填部は、襠を備えることにある。このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、第2の詰物充填部は、襠を備えているため、第2の詰物充填部(延いては、枕)を型崩れさせることなく大量の詰物や方形状の詰物を充填することができる。また、肩幅の広い使用者の横臥時においても、使用者と枕との密着性を確保することができ使用感を向上させることができる。
【0012】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記枕において、枕の周縁部の一部に凹状の逃げ部を備えたことにある。このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、枕の周縁部の一部に凹状の逃げ部が設けられているため、枕の使用者は逃げ部が設けられた部分を使用者側に向けて枕を使用することができる。換言すれば、使用者側に向けられる枕の周縁部に逃げ部を設けるとよい。これによれば、使用者の頸部に枕の上側生地が密着するとともに、枕の逃げ部近傍の周縁部と使用者の肩部とが密着する。また、使用者が横臥した際においても使用者と枕100との密着性が確保される。これらの結果、快適な使用感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(枕100の構成)
以下、本発明に係る枕の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(A),(B)は、本発明に係る枕100の外観を概略的に示す図であり、(A)は枕100の表側を示す斜視図であり、(B)は同枕100の裏側を示す斜視図である。ここで、枕100の表側とは使用者の頭部を載せる上面側であり、裏側とは枕100が配置される面(例えば、敷布団)に接する下面側である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0014】
この枕100は、上面視略長方形状の綿布からなる上側生地110と下側生地120とを袋状に縫合して形成されている。ここで、上側生地110は、使用者の頭部が載せられる枕100の表側を構成しており、下側生地120は、枕100が配置される面(例えば、敷布団)に接する枕100の裏側を構成している。
【0015】
これらのうち、上側生地110は、図2に示すように、枕100の上面を構成する生地であり、枕100の表側に配置される表地111と、同枕100の内側に配置される裏地112とから構成されており、表地111および裏地112の互いの縁部が縫合されて上面視略長方形状の袋状に形成されている。この上側生地110における図示下側の縁部中央部には、図示上方に向かって凹状に凹んだ逃げ部110aが形成されている。
【0016】
上側生地110の内側には、表地111と裏地112とを縦方向および横方向に複数縫合することにより、表地111と裏地112との間の空間を独立した複数の小空間に分割した詰物充填部113a〜113gが形成されている。詰物充填部113a〜113gは、枕100の使用感(例えば、高さ、硬さ、通気性、および保温性など)の調製に用いる図示しない詰物Tを充填するための空間であり、それぞれ独立した袋状に形成されている。すなわち、この詰物充填部113a〜113gが、本発明に係る第1の詰物充填部に相当する。
【0017】
本実施形態においては、表地111と裏地112とを枕100の横方向(長手方向)に3分割するとともに、同分割した3つの空間のうち中央部の空間を更に枕100の縦方向に3分割して詰物充填部113a〜113cを形成している。また、横方向に分割した3つの空間のうち両側の2つの空間を更に枕100の縦方向に2分割して詰物充填部113d〜113gを形成している。これらのうち、詰物充填部113a〜113cは使用者の頸部および後頭部を載せる部分であり、詰物充填部113d〜113gは使用者の横臥時における両頬部および両側頭部を載せる部分である。
【0018】
詰物充填部113a〜113gには、裏地112に開口する開口部114a〜114gがそれぞれ設けられている。開口部114a〜114gは、詰物充填部113a〜113g内に所定の詰物Tを出し入れするための口であり、本発明に係る第1の開口部に相当する。この開口部114a〜114gの内側には、詰物充填部113a〜113g内の詰物の漏出を防止するためのスリーブ状の返し布115a〜115gがそれぞれ設けられている。また、裏地112の中央部には4つの面ファスナー116がそれぞれ設けられている。
【0019】
下側生地120は、図3に示すように、枕100の下面を構成する生地であり、枕100の裏側表面に配置される表地121と、同枕100の内側に配置される裏地122とから構成されており、表地121および裏地122の互いの縁部が縫合されて上面視略長方形状の袋状に形成されている。この下側生地120における表地121には、図4に示すように、同表地121の縁部が図示上方に向かって起立した状態の襠121aが設けられており、裏地122の縁部はこの襠部121aの縁部と縫合されている。また、下側生地120における図示下側の縁部中央部には、前記逃げ部110aに対応して図示上方に向かって凹状に凹んだ逃げ部120aが形成されている。
【0020】
下側生地120の内側には、図5に示すように、前記襠121aと同様の高さに形成された襠121bを介して表地121と裏地122とを縦方向および横方向に複数縫合することにより、表地121と裏地122との間の空間を独立した複数の小空間に分割した詰物充填部123a〜123gが形成されている。詰物充填部123a〜123gは、詰物充填部113a〜113gと同様に、枕100の使用感の調製に用いる詰物Tを充填するための空間であり、それぞれ独立した袋状に形成されている。すなわち、この詰物充填部123a〜123gが、本発明に係る襠を備えた第2の詰物充填部に相当する。
【0021】
本実施形態においては、詰物充填部123a〜123gは詰物充填部113d〜113gに対応して設けられている。すなわち、表地121と裏地122とを枕100の横方向(長手方向)に3分割するとともに、同分割した3つの空間のうち中央部の空間を更に枕100の縦方向に3分割して詰物充填部123a〜123cを形成している。また、横方向に分割した3つの空間のうち両側の2つの空間を更に枕100の縦方向に2分割して詰物充填部123d〜123gを形成している。これらのうち、詰物充填部123a〜123cは詰物113a〜113cに対応し、詰物充填部123d〜123gは詰物充填部1113d〜113gに対応する。
【0022】
詰物充填部123a〜123gには、表地121に開口可能なファスナー開口部124a〜124gがそれぞれ設けられている。ファスナー開口部124a〜124gは、詰物充填部123a〜123g内に所定の詰物を出し入れするための口であり、本発明に係る第2の開口部に相当する。このファスナー開口部124a〜124gの内側には、詰物充填部123a〜123g内の詰物の漏出を防止するためのスリーブ状の返し布125a〜125gがそれぞれ設けられている。また、裏地122における中央部には前記面ファスナー116に対応する面ファスナー126がそれぞれ設けられている。
【0023】
これらの上側生地110と下側生地120とは、裏地112と裏地122とが互いに対向した向きで互いの縁部における一部が縫合されるとともに、他の一部がファスナー131によって開閉自在な状態で接合されており、枕100を一体的に形成している。具体的には、上側生地110および下側生地120における図示下側の各縁部、および同下側の縁部に連続する図示左右両側の縁部の図示下側の略半分が縫合されている。
【0024】
また、上側生地110および下側生地120における図示上側の各縁部、および同上側の縁部に連続する図示左右両側の縁部の図示上側の略半分がファスナー131により開閉自在に接合されている。すなわち、上側生地110は、ファスナー131が開いた状態で下側生地120に対して図示上側の略半分が捲れるようになっている。このファスナー131が、本発明に係る接合手段に相当する。また、上側生地110と下側生地120とが縫合およびファスナー131により接合された枕100の周囲部分(側面部分)が枕100の周縁部である。
【0025】
(枕100の作動)
次に、上記のように構成した枕100の作動について説明する。まず、枕100へ詰物Tを充填する枕100の調整作業について説明する。枕100の調製者は、詰物充填部113a〜113g,123a〜123gに詰物Tが充填されていない枕100と、同枕100に充填する詰物Tを用意する。この場合、詰物Tは、前記したように、枕100の使用感(例えば、高さ、硬さ、通気性、および保温性など)を調製するための部材であり、例えば、そば殻、パンヤ、樹脂製ビーズ、筒状ビーズ(シンセテンホールビーズ、ドングリビーズなど)、綿、羽毛、木片チップ、液体または気体を内包したパック、またはウレタンなどで構成される。
【0026】
次に、調製者は、枕100の下側生地120の詰物充填部123a〜123gの各ファスナー開口部124a〜124gを開いて各詰物充填部123a〜123g内に枕100の使用者Uの好みに応じた詰物Tを好みに応じた量でそれぞれ充填する。図5は、詰物充填部123a〜123c内に詰物Tとしてドングリビーズを充填した例を示している。なお、この場合、詰物充填部123a〜123gには襠121a,121bが設けられているため、枕100の高さ調整の幅を広くすることができるとともに、大量の詰物Tを充填する場合、またはウレタンなどの方形状の詰物Tを充填する場合であっても詰物充填部123a〜123g(延いては枕100全体の形状)を型崩れさせることなく充填することができる。
【0027】
次に、調製者は、図6に示すように、枕100のファスナー131を開いて上側生地110における詰物充填部113c,113e,113gに相当する部分(図示右側半分)を反対側に捲る。これにより、上側生地110と下側生地120との間の内部空間(枕100の内部)が開放され、上側生地110の裏地112の一部(詰物充填部113c,113e,113gに相当する部分)が外部に露出した状態となる。
【0028】
調製者は、捲った上側生地110の裏地112に設けられた開口部114a〜114gを指で押し広げながら詰物充填部113a〜113g内に使用者Uの好みに応じた詰物Tを好みに応じた量でそれぞれ充填する。そして、調製者は、捲った状態の上側生地110を下側生地120上に戻し、使用者Uによる使用感の確認を行う。この場合、調製者は、逃げ部110a,120a側を使用者Uの頸部側とする。図5は、詰物充填部113a〜113c内に詰物Tとして綿を充填した例を示している。調製者は、使用感を確認した使用者Uの求めに応じて詰物充填部113a〜113g,123a〜123g内に充填した詰物Tの種類および充填量を適宜調整する。
【0029】
この場合、詰物充填部113a〜113g,123a〜123gは各個独立した袋状に形成されているため、詰物充填部113a〜113g,123a〜123gへの詰物Tの出し入れ作業において詰物充填部113a〜113g,123a〜123gの相互間で詰物Tが混入し合う事はない。また、ファスナー131が使用者Uの頭部側に設けられているため、調製者による調整作業が行い易い。すなわち、調製者は、使用者Uの頭部が枕100上に載せられた状態で上側生地110と下側生地120との間に手やスペーサなどを差し入れて使用者の頭の位置、詰物Tの充填具合、または枕100の厚さ(所謂枕の高さ)の確認を行うことができ、調整作業に反映させることができる。
【0030】
また、詰物充填部113a〜113g,123a〜123gの開口部114a〜114gおよびファスナー開口部124a〜124gの各裏側に返し布115a〜115g,125a〜125gが設けられているため、詰物充填部113a〜113g,123a〜123g内に充填される詰物Tの不用意な漏出が防止される。これらにより、詰物Tの正確な充填作業を円滑かつ迅速に行うことができる。
【0031】
そして、詰物充填部113a〜113g,123a〜123gへの詰物Tの充填量が使用者の好みに合致した場合には、調製者は、上側生地110を下側生地120上に載置してファスナー131を閉じる。この場合、調製者は、上側生地110および下側生地120の各裏地112,122にそれぞれ設けられている面ファスナー116と面ファスナー126とを貼り合わせた状態でファスナー131を閉じる。これにより、枕100の調整作業が終了する。
【0032】
次に、枕100の使用方法について説明する。使用者は、枕100における上側生地110を上向きにした状態で枕100を使用位置(例えば、就寝する布団上)に配置する。そして、使用者Uは、枕100における周縁部に設けられた逃げ部110a,120a側を頸部側として頭部を上側生地110に載せて枕100を使用する。この場合、枕100の逃げ部110a,120aが凹状に形成されているため使用者Uの頸部に枕100の上側生地110が密着するとともに、枕100の逃げ部110a,120a近傍の周縁部と使用者Uの肩部が密着する。また、使用者Uが横臥した際においても使用者Uと枕100との密着性が確保されるとともに、肩幅が広い使用者Uが横臥した際においても詰物充填部123a〜123gに設けられた襠部121a,121bによって使用者Uと枕100との密着性が確保される。これらにより、快適な使用感を得ることができる。
【0033】
また、この場合、ファスナー131が使用者Uの頭部側に設けられているため、枕100の周縁部に接する使用者Uにファスナー131が触れることによる不快感を生じさせることがない。また、上側生地110の表地111には詰物充填部113a〜113gの開口部114a〜114gが設けられていないため、上側生地110に接する使用者Uに開口部114a〜114gが触れることによる不快感を生じさせることがない。さらに、上側生地110および下側生地120の各裏地112,122にそれぞれ設けられている面ファスナー116と面ファスナー126とを貼り合わせているため、上側生地110が下側生地120に対してずれることが防止される。すなわち、詰物充填部113a〜113gと詰物充填部123a〜123gとの位置関係がずれることがないため、最適な調製具合を長時間に亘って維持することができる。
【0034】
さらに、また、詰物充填部113a〜113gの開口部114a〜114gの裏側に返し布115a〜115gが設けられているため、詰物充填部113a〜113g内に充填されている詰物Tの漏出が防止され、詰物充填部113a〜113g内の詰物Tの充填量減少が防止される。これらにより、快適な使用感を長期間に亘って得ることができる。
【0035】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、枕100は、枕100の上面を構成する上側生地110の内側に詰物Tを出し入れするための開口部114a〜114gを有する詰物充填部113a〜113gを複数備えるとともに、枕100の下面を構成する下側生地120の内側に同詰物Tを出し入れするためのファスナー開口部124a〜124gを有する詰物充填部123a〜123gを前記詰物充填部113a〜113gに対向した状態で設けて構成されている。すなわち、枕100内部には、上側と下側に複数の詰物充填部113a〜113g,123a〜123gがそれぞれ独立した状態で設けられている。この場合、詰物Tを出し入れする開口部114a〜114gおよびファスナー開口部124a〜124gは各詰物充填部113a〜113g,123a〜123gごとに設けられている。これらにより、詰物充填部113a〜113g,123a〜123gに詰物Tを出し入れする際においては、水平方向に隣接する詰物充填部113a〜113g,123a〜123g間、および上下方向に隣接する詰物充填部113a〜113g,123a〜123g間において詰物Tが互いに混入し合うことがない。この結果、枕100の内部に同種または異種の素材からなる詰物Tを容易に出し入れでき、使用者Uの欲する使用感(例えば、高さ、硬さ、通気性、および保温性など)の得られる枕100を簡単かつ短時間に調製することができる。
【0036】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態においては、上側生地110および下側生地120にそれぞれ7つずつの詰物充填部113a〜113g,124a〜124gを設けた。しかし、詰物充填部113a〜113g,124a〜124gを設ける位置、数、および大きさなどは、使用者Uの好みに応じて適宜決定すればよく、当然、上記実施形態に限定されるものではい。
【0038】
また、上記実施形態においては、詰物充填部113a〜113gに詰物Tを出し入れするための開口部114a〜114gを上側生地110における裏地112に設けるとともに、詰物充填部123a〜123gに詰物Tを出し入れするためのファスナー開口部124a〜124gを下側生地120における表地121に設けた。しかし、開口部114a〜114gおよびファスナー開口部124a〜124gを設ける位置は、詰物充填部113a〜113g,123a〜123gにそれぞれ詰物Tを出し入れできれば、当然、上記実施形態に限定されるものではい。例えば、開口部114a〜114gを上側生地110の表面111に設けてもよい。これによれば、上側生地110を下側生地120に対して分離するための構成、具体的にはファスナー131が不要となるため枕100をより簡単に構成することができる。また、この場合、開口部114a〜114gからの詰物Tの露出をより確実に防止するため、開口部114a〜114gをファスナーで構成としてもよい。これらによっても、上記実施形態と同様に、使用者Uの欲する使用感の得られる枕100を簡単かつ短時間に調製することができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、枕100を使用する使用者Uの頭部側の周縁部にファスナー131を設けた。これは、枕100の周縁部における使用者Uに接しない部分にファスナー131を配置することにより、使用者Uに不快感を生じさせないためである。したがって、ファスナー131を配置する位置は、使用者Uに不快感を与えない位置であれば、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る接合手段の形態も、ファスナー131以外の形態であってもよい。例えば、ファスナー131に代えて、面ファスナー116,126を接合手段としてもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0040】
また、上記実施形態においては、詰物充填部123a〜123gに襠121a,121bを設けた。しかし、襠121a,121bは、詰物123a〜123gの詰物Tの容量を増加させて枕100の高さの調整の幅を広くするためのものであり、本発明の必須の構成要素ではない。したがって、襠121a,121bを設けない構成の枕100であっても、上記実施形態と同様に、使用者Uの欲する使用感の得られる枕100を簡単かつ短時間に調製することができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、枕100の周縁部の一部に逃げ部110a,120aを設けた。しかし、逃げ部110a,120aは、枕100の使用感を向上させるものであり、本発明の必須の構成要素ではない。したがって、逃げ部110a,120aを設けない構成の枕100であっても、上記実施形態と同様に、使用者Uの欲する使用感の得られる枕100を簡単かつ短時間に調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A),(B)は本発明の一実施形態に係る枕の全体構成を示す図であり、(A)は枕の表側の斜視図であり、(B)は枕の裏側の斜視図である。
【図2】図1(A)に示す枕における上側生地および下側生地を裏返した際の上側生地の裏面を示す正面図である。
【図3】図1(B)に示す枕における上側生地および下側生地を裏返した際の下側生地の裏面を示す正面図である。
【図4】図1(A)に示す枕の右側面図である。
【図5】図1(A)に示すA−Aから見た枕の断面図である。
【図6】図4に示す枕における上側生地を捲った状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
100…枕、110…上側生地、110a…逃げ部、111…表地、112…裏地、113a〜113g…詰物充填部、114a〜114g…開口部、115a〜115g…返し布、116…面ファスナー、120…下側生地、120a…逃げ部、121…表地、121a,121b…襠、122…裏地、123a〜123g…詰物充填部、124a〜124g…ファスナー開口部、125a〜125g…返し布、126…面ファスナー、131…ファスナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕の上面を構成する上側生地の内側に、詰物を出し入れするための第1の開口部を有した第1の詰物充填部を配置し、
前記枕の下面を構成する下側生地の内側に、前記詰物を出し入れするための第2の開口部を有した第2の詰物充填部を前記第1の詰物充填部に対向した状態で配置したことを特徴とする枕。
【請求項2】
請求項1に記載した枕において、
前記第1の詰物充填部は、前記上側生地の内側に複数配置され、
前記第2の詰物充填部は、前記下側生地の内側に複数配置されたことを特徴とする枕。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した枕において、
前記第1の開口部は、前記第1の詰物充填部における前記第2の詰物充填部側の表面に設けられ、
前記上側生地の少なくとも一部を前記下側生地から分離可能な状態で接合する接合手段を備えたことを特徴とする枕。
【請求項4】
請求項3に記載した枕において、
前記接合手段は、前記枕の周縁部の一部に設けられていることを特徴とする枕。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した枕において、
前記第2の詰物充填部は、襠を備えることを特徴とする枕。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した枕において、
前記枕の周縁部の一部に凹状の逃げ部を備えたことを特徴とする枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−247592(P2009−247592A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98959(P2008−98959)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(508067220)株式会社ワタボシ (1)
【Fターム(参考)】