説明

【課題】使用に際しての取扱いが簡便で、身体をしっとりと受け止めてくれる感触を有し、所望する使用態様での使用時における保形性に優れている枕を提供する。
【解決手段】折り曲げ手段16により折り曲げ自在となる長尺の枕10であって、低反発機能を有する素材で形成された中材12を含む。中材12は、側地14の内部に収容される。側地14は、当該内部の空気抜けを遅延させる高密度の生地で形成されている。折り曲げ手段16は、側地14の表裏を縫合する縫合線を含む。縫合線は、枕10の幅方向の中間点を通って枕10の長さ方向に延びる中心線X−Xに交差する斜線方向に配設される斜め縫合線18,20を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、枕に関し、特に、折り曲げ自在に形成され、使用者にとって寝心地の良い快適な眠りを得るための手立てとなる、枕に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の背景となる従来技術には、移動が容易であるような分量の詰め物を棒状蒲団側内に封入した状態において棒状蒲団側内に遊びの空間部を残存させ、任意に折り曲げ可能な状態に構成した抱き蒲団(抱き枕)があった(例えば、特許文献1参照。)。棒状蒲団側内に封入する詰め物としては、ソバ殻,もみ殻,穀物類,木製又はコルク製粒状ボール,発泡スチロールビーズ,小粒ボール,ポリエチレンビーズ,細く短い粒状パイプ等の直径が2mm〜6mm程度の粒状の詰め物、あるいは、小粒ボール状又は中型ボール状に加工した綿,パンヤ,絹,羊毛,ポリエステル綿,アクリル綿または前記した材料による混合綿等による直径が3cm〜5cmのボール状の詰め物、もしくは、合成樹脂製またはゴム製のスポンジを直径が3cm〜5cmのボール状に加工したスポンジボール状の詰め物の内から所望の詰め物が選択されて使用されている。
この抱き蒲団(抱き枕)では、使用者が、その時の気分によって抱き蒲団(抱き枕)を任意所望の形状に折り曲げて、色々な使用態様で使用することができ、その際に、棒状蒲団側内に封入された詰め物の移動に応じて、常に使用者の身体に馴染んだ状態の抱き蒲団(抱き枕)として使用できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−190384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の抱き蒲団(抱き枕)では、棒状蒲団側内に遊びの空間部を残存させた状態で封入した詰め物を移動させることによって、当該棒状蒲団を折り曲げ可能な状態に構成されているため、使用者が所望する使い心地にするためには、使用者自身が良好な抱き蒲団(抱き枕)として使用することができるように、詰め物の出入口ファスナーから棒状蒲団側内に封入させるべき詰め物の分量を、当該詰め物の種類,大きさおよび棒状蒲団側の直径,長さに応じて、使用者が個別に調節しなければならず、使用に際しての取扱いが面倒なものとなっていた。
また、この従来の抱き蒲団(抱き枕)では、詰め物として、直径が2mm〜6mm程度の粒状の詰め物、直径が3cm〜5cmのボール状の詰め物、および、直径が3cm〜5cmのボール状に加工したスポンジボール状の詰め物から所望の詰め物が選択されて使用されている。つまり、いずれの詰め物にしても、小球状物からなる小片の集合体で充填物(所謂、中材)が構成されているため、当該従来の抱き蒲団(抱き枕)を抱きしめたときや身体を当該抱き蒲団(抱き枕)に預けたときに、たとえば繊維素材のクッション材のような弾力性がなく、異質の反発性となっているため、身体をしっとりと受け止めてくれる感触のないものであった。
さらに、この従来の抱き蒲団(抱き枕)では、移動が容易であるような分量の詰め物を棒状蒲団側内に封入した状態において棒状蒲団側内に遊びの空間部を残存させた構造となっているため、使用者が抱き蒲団を色々な使用態様で当該抱き蒲団(抱き枕)を使用している間に、棒状蒲団側内を詰め物が移動する虞が多分にあり、所望する使用態様をいつまでも安定した状態で維持できることが困難となっていた。すなわち、この従来の抱き蒲団(抱き枕)では、所望する使用態様での保形性が劣っているため、長期に亘って、枕としての所定の機能を発揮させることが困難となる不具合を有するものとなっていた。
【0005】
それゆえに、本願発明の主たる目的は、使用に際しての取扱いが簡便で、身体をしっとりと受け止めてくれる感触を有し、所望する使用態様での保形性に優れている、枕を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1にかかる本願発明は、折り曲げ手段により折り曲げ自在となる長尺の枕であって、低反発機能を有する素材で形成された中材と、中材をその内部に収容し、当該内部の空気抜けを遅延させる生地で形成された側地を含み、折り曲げ手段は、側地の表裏を縫合する縫合線を含み、縫合線は、枕の幅方向の中間点を通って枕の長さ方向に延びる中心線に交差する斜線方向に配設される斜め縫合線を含むことを特徴とする、枕である。
請求項1にかかる本願発明では、中材が低反発機能を有する素材で形成され、中材を収容する側地が当該側地の内部の空気抜けを遅延させる生地で形成されているので、当該枕に身体を預けた場合、身体をしっとりと受け止めてくれる柔らかく且つ腰のある感触で、押し返しも少なく、体圧を分散して、反発力による身体に掛かる負担も軽減される。この場合、側地が上記した構成の生地で形成されているため、中材を収容した当該側地内部の空気抜けを遅延させることができ、しかも、中材自体の低反発機能と相俟って、枕としての低反発感を増幅させることが可能となっている。つまり、使用者が当該枕に身体を預けたときの枕の沈下速度を遅らせることで、枕に対して身体が優しくゆっくりとランディングするものとなり、反発力による身体に掛かる負担が軽減される。
また、請求項1にかかる本願発明では、折り曲げ手段により所望する使用態様に自在に折り曲げることが可能となっている。この場合、折り曲げ手段は、側地の表裏を縫合する斜め縫合線によって、上記した従来技術のように側地内での中材の片寄りが防止される。そのため、折り曲げ手段により折り曲げられた所望する使用態様をいつまでも安定した状態で維持することができる保形性の優れたものとなっている。そして、折り曲げた状態から元の状態に戻せば、身体ごと預けて体躯の負担を軽減させる長尺の抱き枕としての機能を有するものとなり、上記した低反発機能により、たとえば使用者の横の就寝者の動きの伝達が弛緩され、その影響を受け難いものとすることができる。
さらに、請求項1にかかる本願発明では、上記した特許文献1にかかる従来技術のように、使用者自身が棒状蒲団側(側地)内に封入させるべき詰め物の分量を、当該詰め物の種類,大きさおよび棒状蒲団側の直径,長さに応じて、使用者が個別に調節する必要もなく、使用に際しての取扱いが極めて簡便なものとなっている。
請求項2にかかる本願発明は、請求項1にかかる発明に従属する発明であって、折り曲げ手段は、枕の長さ方向の一端および/または他端と、枕の長さ方向の中央との間に配設される少なくとも1つの斜め縫合線を含み、特定された1つの斜め縫合線に沿って、枕がL字状に折り曲げ可能となることを特徴とする、枕である。
請求項2にかかる本願発明では、特定された1つの斜め縫合線に沿って、枕をL字状に折り曲げて使用することができるので、L字状の短辺部側に枕としての機能を持たせ、L字状の長辺部側に抱き枕としての機能を持たせて、枕と抱き枕とを一体にしたものとすることができる。この場合、使用者は、あたかも腕枕をされるような感触が得られるものとなり、身体をL字状の長辺部側に預けて、上記した請求項1にかかる枕と同様に、体躯の負担を軽減させることができる。
請求項3にかかる本願発明は、請求項1にかかる発明に従属する発明であって、折り曲げ手段は、枕の長さ方向に間隔を隔てて配設される少なくとも2つの斜め縫合線を含み、特定された2つの斜め縫合線と、枕の幅方向に相対する1組の対辺とで囲繞された部位が平面視台形状となるように、少なくとも2つの斜め縫合線が配列され、特定された2つの斜め縫合線に沿って、枕がU字状に折り曲げ可能となることを特徴とする、枕である。
請求項3にかかる本願発明では、特定された2つの斜め縫合線に沿って、枕をU字状に折り曲げて使用することができるので、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部を接続する接続辺部(中央部)側に枕としての機能を持たせ、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部の双方に抱き枕としての機能を持たせて、上記した請求項2にかかる枕と同様に、枕と抱き枕とを一体にしたものとすることができる。この場合、使用者は、頭をのせる接続辺部(中央部)の高さ(以下、「枕の高さ」という。)を2つの折り曲げ辺部の折り返し方向によって、この頭部を乗せる部位の枕の高さを使用者に合った高さに調節することが可能となっている。すなわち、当該2つの折り曲げ辺部を枕の表面側に折り曲げた場合に比べて、当該2つの折り曲げ辺部を枕の裏面側に折り曲げた場合の方が、枕の高さを高くすることができるものとなっている。
そして、この相対する2つの折り曲げ辺部の折り返し方向が上記したいずれの場合であっても、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部は、使用者の両肩・肩甲骨や背中から当該使用者を両腕で支えるように身体を受け止めるので、U字状に折り曲げられた当該枕では、頭と首・肩の段差や隙間ができにくくなり、首や肩などへの自重負担を軽減することが可能となっている。そのため、当該枕は、身体に負担を掛けずにゆったりとリラックスした状態で使用者に安眠を付与することができ、延いては、寝苦しさや肩こり、腰痛、鼾、無呼吸症等による不眠を解消することができるものとなっている。
請求項4にかかる本願発明は、請求項3にかかる発明に従属する発明であって、特定された2つの斜め縫合線は、枕の長さ方向の中間点を通って枕の幅方向に延びる中心線に対して線対称に配設されることを特徴とする、枕である。
請求項4にかかる本願発明では、上記した構成を有することによって、特定された2つの斜め縫合線に沿って、相対する2つの折り曲げ辺部を線対称に折り曲げることが可能となり、両側の折り曲げ辺部がバランスの取れたものとなるため、上記した請求項3にかかる枕の作用・効果が一層有効に発揮されるものとなる。
請求項5にかかる本願発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項にかかる発明に従属する発明であって、中材を形成する低反発素材は、PPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)を含み、側地は、打ち込み本数の多い高密度の生地で形成されることを特徴とする、枕である。
請求項5にかかる本願発明では、上記した構成を有することによって、身体をしっとりと受け止めてくれる柔らかく且つ腰のある感触で、押し返しも少なく、体圧を分散して、反発力による身体に掛かる負担を軽減するという作用・効果をより一層有効に発揮させることができる。さらに、中材を収容した側地内部の空気抜けを遅延させ、中材自体の低反発機能と相俟って、枕としての低反発感を増幅させることにより、使用者が当該枕に身体を預けたときの枕の沈下速度を遅らせるという作用・効果をより一層有効に発揮させることができる。すなわち、請求項5にかかる本願発明では、枕に対して身体および身体の一部を優しくゆっくりとランディングさせることが可能となり、反発力による身体に掛かる負担がより一層軽減されるものとなっている。
また、側地が打ち込み本数の多い高密度の生地で形成されているため、側地内部からのたとえばハウスダストの一因ともなる繊維切れ屑および埃等の流出を困難なものとすることが可能となり、アレルギー対策等としても効果的な枕を提供することができる。
請求項6にかかる本願発明は、請求項5にかかる発明に従属する発明であって、中材を形成する低反発素材は、1.1〜3.3デニールの範囲の繊維太さを有するPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)を含み、側地は、打ち込み本数が390〜414の範囲にある高密度の生地で形成されることを特徴とする、枕である。
請求項6にかかる本願発明では、上記した構成を有することによって、上記した請求項5にかかる枕の作用・効果をさらにより一層有効に発揮させることができるものとなっている。
請求項7にかかる本願発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項にかかる発明に従属する発明であって、斜め縫合線は、側地の表裏間に配置された補強片を介して側地の表裏を縫合することを特徴とする、枕である。
請求項7にかかる本願発明では、補強片を介在させて側地の表裏を縫合することによって斜め縫合線が形成されているため、当該斜め縫合線は、補強片により補強することが可能となっている。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、使用に際しての取扱いが簡便で、身体をしっとりと受け止めてくれる感触を有し、所望する使用態様での保形性に優れている枕を提供することができる。
【0008】
本願発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明にかかる枕の実施形態の一例を示す斜視図解図である。
【図2】図1の切断線A−Aにおける断面図解図である。
【図3】図1に示す枕の平面図解図である。
【図4】図1,図2,図3に示す枕に適用される側地の機能を説明するための図解図である。
【図5】図1,図2,図3に示す枕と比較される比較例を説明するための図解図である。
【図6】図1,図2,図3に示す枕を、折り曲げ手段に沿って、当該枕の表面側にU字状に折り曲げた状態の一例を示す平面図解図である。
【図7】図1,図2,図3に示す枕を、折り曲げ手段に沿って、当該枕の表面側にU字状に折り曲げた状態の一例を示す斜視図解図である。
【図8】図6,図7に示す折り曲げ状態の枕の使用状態の一例を示す斜視図解図である。
【図9】図8に示す使用状態における枕の高さを示す側面図解図である。
【図10】図1,図2,図3に示す枕を、折り曲げ手段に沿って、当該枕の表面側にU字状に折り曲げた状態の他の例を示す平面図解図である。
【図11】図1,図2,図3に示す枕を、折り曲げ手段に沿って、当該枕の裏面側にU字状に折り曲げた状態の一例を示す平面図解図である。
【図12】図1,図2,図3に示す枕を、折り曲げ手段に沿って、当該枕の裏面側にU字状に折り曲げた状態の一例を示す斜視図解図である。
【図13】図11,図12に示す折り曲げ状態の枕の使用状態の一例を示す斜視図解図である。
【図14】図13の使用状態における枕の高さを示す側面図解図である。
【図15】図1,図2,図3に示す枕を、折り曲げ手段に沿って、L字状に折り曲げた状態の一例を示す平面図解図である。
【図16】図1,図2,図3に示す枕を、折り曲げ手段に沿って、L字状に折り曲げたときの使用状態の一例を示す斜視図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本願発明にかかる枕の実施形態の一例を示す斜視図解図であり、図2は、図1の切断線A−Aにおける断面図解図であり、図3は、図1に示す枕の平面図解図である。
本実施形態例の枕10は、図1,図2に示すように、たとえば平面視矩形状の長尺形に形成されている。この枕10は、図3に示すように、当該枕10の幅をWとし、長さをLとしたとき、たとえばW=38cm、L=230cmに形成されている。
枕10は、中材12と、中材12をその内部に収容する側地14と、枕10を所定の態様に折り曲げ自在とする折り曲げ手段16とを有する。さらに、枕10は、側地14を被覆する枕カバー(図示せず)を適宜有し得るものとなっている。この場合、枕カバー(図示せず)は、綿75重量%、ポリエステル25重量%(ニット地)で、たとえば幅Wが約40cm、長さLが230cmに形成され得る。
【0011】
中材12は、低反発機能を有する素材として、たとえばPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)を含む。中材12は、たとえば、当該中材12を構成するPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)の割合が100重量%、当該中材12の繊度が1.1デニール、当該中材12の充填量が2.5kgとなっている。中材12の繊度は、0.9〜6.0デニールの範囲に形成されているのが好ましく、さらに好ましいのは、0.9〜3.3デニールの範囲に形成されているもので、特に好ましいのは1.1デニールのものである。中材12を構成するPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)の割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは100重量%である。
【0012】
側地14は、上記した中材12が収容される内部の空気抜けを遅延させる生地で形成されている。側地14は、たとえば打ち込み本数が390本で且つ高密度のポリエステル繊維を含み、当該側地14を構成するポリエステル繊維の割合は100重量%となっている。側地14の打ち込み本数は、390〜414の範囲に形成されるのが好ましい。
【0013】
折り曲げ手段16は、図1,図2に示すように、側地14の表裏を縫合する縫合線を含む。当該縫合線は、枕10の幅方向の中間点を通って枕10の長さ方向に延びる中心線X−Xに交差する斜線方向に配設されるたとえば2つの斜め縫合線18,20を含む。2つの斜め縫合線18,20は、枕10の長さ方向に所定の間隔を隔てて配設されている。
一方の斜め縫合線18は、枕10の長さ方向の一端と当該枕10の長さ方向の中央との間に配設され、他方の斜め縫合線20は、枕10の長さ方向の他端と当該枕10の長さ方向の中央との間に配設されている。一方の斜め縫合線18および他方の斜め縫合線20は、たとえば図1,図3に示すように、枕10の長さ方向の中間点を通って当該枕10の幅方向に延びる中心線Y−Yに対して線対称に配設されている。
【0014】
この場合、枕10は、特に、たとえば図3に示すように、当該枕10の相対する2つの直線状長辺部10A,10Bと、1つの斜め縫合線18とが当接してできる4つの角の内、1つの斜め縫合線18の反対側にあって相対する一方の1組の角θ1,θ1は、錯角の関係にあって等しく、たとえば45度に設定されている。同様に、当該枕10の相対する2つの直線状長辺部10A,10Bと、1つの斜め縫合線20とが当接してできる4つの角の内、1つの斜め縫合線20の反対側にあって相対する一方の1組の角θ2,θ2は、錯角の関係にあって等しく、たとえば45度に設定されている。
【0015】
本実施形態例では、たとえば図3に示すように、上記した2つの斜め縫合線18,20と、枕10の幅方向に相対する1組の対辺、すなわち、上記した直線状長辺部10A,10Bとで囲繞された部位が平面視台形状となるように、当該2つの斜め縫合線18,20が配列されている。
【0016】
本実施形態例では、図3に示すように、上記した2つの直線状長辺部10A,10Bが一方の斜め縫合線18と当接する当接端点を22,24とし、当該2つの直線状長辺部10A,10Bが他方の斜め縫合線20と当接する当接端点を26,28とし、上記直線状長辺部10Aの長さ方向の一端30(頂点)から当接端点26に至る長さをL1とし、上記直線状長辺部10Aの長さ方向の他端32(頂点)から当接端点22に至る長さをL2とし、当接端点22および当接端点26間の長さをL3とし、また、上記直線状長辺部10Bの長さ方向の一端34(頂点)から当接端点28に至る長さをL4とし、上記直線状長辺部10Bの長さ方向の他端36(頂点)から当接端点24に至る長さをL5とし、当接端点24および当接端点28間の長さをL6としたとき、たとえばL1=L2=100cm、L3=30cm、L4=L5=60cm、L6=110cmに設定されている。
【0017】
本実施形態例では、特に、たとえば図2に示すように、側地14の表裏間に配置された補強片38を介して当該側地14の表裏を縫合することによって、上記した2つの斜め縫合線18,20が形成されている。この場合、当該斜め縫合線18,20の部位に、2重ステッチ(2本針縫い)等の縫製手段が施されることによって、当該斜め縫合線18,20の部位は、補強片38を介して補強されるものとなっている。
【0018】
図1,図2および図3に示す上述の実施形態例では、中材12を形成する低反発素材が、特に、たとえば、0.9〜6.0デニールの範囲の繊維太さを有するPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)を含む構成となっているため、使用者が枕10に身体を預けた場合、身体をしっとりと受け止めてくれる柔らかく且つ腰のある感触で、押し返しも少なく、体圧を分散して、反発力による身体に掛かる負担を軽減してくれるものとなっている。その上、側地14は、打ち込み本数が、特に、たとえば、390〜414の範囲にある高密度の生地で形成され、当該側地14の内部の空気抜けを遅延させる機能を備えているため、この枕10では、中材12独自の低反発機能と相俟って、枕としての低反発感を増幅させることができる。すなわち、使用者が当該枕10に身体を預けたときの枕の沈下速度を遅らせることで、枕に対して身体が優しくゆっくりとランディングするものとなり、反発力による身体に掛かる負担が軽減される。
【0019】
図4は、図1,図2,図3に示す枕に適用される側地の機能を説明するための図解図であり、図5は、図1,図2,図3に示す枕と比較される比較例を説明するための図解図である。
図1,図2,図3に示す枕10に適用される側地14では、図4の(A)に示すように、枕10に身体を預けるなどして、当該枕10に圧力をかけた場合、上記したように、当該側地14が高密度の側生地で形成され、通気性が低くなっているため、図4の(B)に示すように、空気の抜けが遅く、側地14内部の空気抜けによる枕10の沈み込みが弛緩されるものとなっている。つまり、中材12独自の低反発機能と相俟って、枕としての低反発感を増幅させることができ、上記したように、枕の沈下速度を遅らせることができるものとなっている。
それに対して、側地44が低密度の所謂織目の荒い側生地で形成された比較例の枕40では、図5の(A)に示すように、当該枕40に身体を預けるなどして、枕40に圧力をかけた場合、側地44の通気性が高くなっているため、図5の(B)に示すように、空気の抜けが速く、中材42を収納した側地44内部の空気が瞬時に抜け易いものとなり、それによる枕40の沈み込みで当該枕40が押し潰されてしまうという不具合が生じるものであった。
【0020】
上記したように、図1,図2および図3に示す上述の実施形態例では、側地14が打ち込み本数の多い高密度の生地で形成されているので、側地14内部からのたとえばハウスダストの一因ともなる繊維切れ屑および埃等の流出を阻害することができ、アレルギー対策等としても有用な枕が得られるものとなっている。また、上述の実施形態例では、側地14が高密度のポリエステル樹脂で形成され、中材12がPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)で形成さているため、当該枕10は、水洗いをして、汗や汚れも手軽に洗い流すことができ、しかも、速乾性にも比較的優れているので、家庭での洗濯が可能となっている。
【0021】
上述の実施形態例では、たとえば図6および図7に示すように、2つの斜め縫合線18,20に沿って、枕10を当該枕10の表面側にU字状に折り曲げて使用することができる。U字状の折り曲げ部は、相対する2つの折り曲げ辺部46,48と、2つの折り曲げ辺部46,48を接続する接続辺部(中央部)50とを含むものである。そのため、この枕10では、たとえば図8に示すように、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部46,48を接続する接続辺部(中央部)50側に頭を乗せる枕としての機能を持たせ、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部46,48側双方に抱き枕としての機能を持たせることができるものとなっている。
【0022】
この2つの斜め縫合線18,20に沿って枕10を折り曲げた際の角度は、中材12,側地14の上記した素材特性などにもより柔軟に曲がるため、たとえば図10に示すように、使用者の好みにより2つの折り曲げ辺部46,48を内側へ折り曲げることにより身体をより開いて眠ることができ、また、当該2つの折り曲げ辺部46,48を外側へ折り曲げることにより身体をより閉じて眠ることもできる。
【0023】
さらに、上述の実施形態例では、たとえば図11および図12に示すように、2つの斜め縫合線18,20に沿って、枕10を当該枕10の裏面側にU字状に折り曲げて使用することもできる。この場合も、上記した折り返し方向に折り曲げた場合(図6〜図8参照)と同様に、枕10は、たとえば図13に示すように、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部46,48を接続する接続辺部(中央部)50側に頭を乗せる枕としての機能を持たせ、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部46,48側の双方に身体を預ける抱き枕としての機能を持たせることができる。
【0024】
本実施形態例では、使用者は、頭をのせる接続辺部(中央部)50の高さ(以下、「枕の高さ」という。)を2つの折り曲げ部の折り返し方向によって、頭部を乗せる接続辺部(中央部)50の枕の高さを使用者に合った高さに調節することができる。すなわち、当該2つの折り曲げ辺部46,48をたとえば図6,図7に示すように、枕10の表面側に折り曲げた場合の枕10の高さH1(図9参照)に比べて、当該2つの折り曲げ辺部46,48をたとえば図11,図12に示すように、枕10の裏面側に折り曲げた場合の方が、枕10の高さH2(図14参照)を高くすることができるものとなっている。
【0025】
この相対する2つの折り曲げ辺部46,48の折り返し方向が上記したいずれの場合であっても、U字状の相対する2つの折り曲げ辺部46,48は、たとえば図6,図8および図11,図13に示すように、それぞれ、使用者の両肩・肩甲骨や背中から当該使用者を両腕で支えるように身体を受け止めるので、U字状に折り曲げられた当該枕10では、頭と首・肩の段差や隙間ができにくくなり、首や肩などへの自重負担を軽減することができる。そのため、当該枕10は、身体に負担を掛けずにゆったりとリラックスした状態で使用者に安眠を付与することができる。延いては、寝苦しさや肩こり、腰痛、鼾、無呼吸症等による不眠を解消することができるものとなっている。
【0026】
本実施形態例では、2つの斜め縫合線18,20が、図3に示すように、枕10の長さ方向の中間点、この場合、当該長さ方向の中央を通って枕10の幅方向に延びる中心線Y−Yに対して線対称に配設される構成を有することによって、2つの斜め縫合線18,20に沿って、相対する2つの折り曲げ辺部46,48を線対称に折り曲げることができ、両側の折り曲げ辺部46,48がバランスの取れたものとなる。そのため、上述した枕10の作用・効果がより一層有効に発揮されるものとなっている。
【0027】
また、上述した実施形態例では、図15,図16に示すように、たとえば特定された1つの斜め縫合線20に沿って、枕10をたとえばL字状に折り曲げて使用することができる。この場合、L字状の折り曲げ部は、図16に示すように、L字状の短辺部52側に頭を乗せる枕10としての機能を持たせ、L字状の長辺部54側に抱き枕としての機能を持たせて、頭を乗せる枕の機能と、身体をまかせる抱き枕の機能とを一体化することができる。この場合、使用者は、あたかも腕枕をされるような感触が得られるものとなり、身体をL字状の折り曲げ部の長辺部54側に預けて、体躯の負担を軽減させることができる。
【0028】
また、上述した実施形態例では、折り曲げ手段16により所望する使用態様に自在に折り曲げることができる。このとき、折り曲げ手段16は、側地14の表裏を縫合する斜め縫合線18,20によって、側地14内での中材12の片寄りが防止されるため、当該斜め縫合線18,20により折り曲げられた所望する使用態様をいつまでも安定した状態で維持することができ、保形性の優れたものとなっている。そして、枕10を折り曲げた状態から元の状態に戻せば、身体ごと預けて体躯の負担を軽減させる長尺の抱き枕としての機能を有するものとなり、中材12の低反発機能により、たとえば使用者の横の就寝者の動きの伝達が弛緩され、その影響を受け難いものとすることも可能となっている。
【0029】
しかも、本実施形態例では、たとえば上記した特許文献1にかかる従来技術のように、使用者自身が棒状蒲団側(側地)内に封入させるべき詰め物の分量を、当該詰め物の種類,大きさおよび棒状蒲団側の直径,長さに応じて、使用者が個別に調節する必要もなく、使用に際しての取扱いが極めて簡便なものとなっている。
【0030】
上述した実施形態例では、折り曲げ手段16を構成するたとえば2つの斜め縫合線18,20が、枕10の長さ方向の一端および他端と、枕10の長さ方向の中央との間に配設されたが、当該斜め縫合線は、枕10の長さ方向の一端および/または他端と、枕10の長さ方向の中央との間に間隔を隔てて、少なくとも1つ以上、多数配設されてもよく、この場合、多数の斜め縫合線の内、特定された1つの斜め縫合線に沿って、枕10がL字状に折り曲げ可能となるようにしてもよい。
さらに、多数の斜め縫合線の内、特定された2つの斜め縫合線と、枕10の幅方向に相対する1組の対辺とで囲繞された部位が平面視台形状となるように、少なくとも2つの斜め縫合線が配列され、特定された2つの斜め縫合線に沿って、枕10がU字状に折り曲げ可能となるようにしてもよい。
【0031】
なお、中材12を構成するPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)の断面形状としては、必要に応じて丸断面、中空断面、異形断面などを適宜選定すればよい。また、PPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)は、デニールの異なるものや、繊維長の異なるものを混綿して使用され得る。さらに、PPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)どうしは、熱接着されていないほうが、枕に好適な柔らかさを実現するうえで好ましいものとなっている。さらに必要に応じて、PPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)に、天然繊維や他の化学繊維を本願発明の目的を損なわない程度に混ぜることも適宜可能である。特に、枕10の易洗濯性を考え、繊維間摩擦係数を下げたポリエチレンテレフタレート繊維や、嵩高なポリエチレンテレフタレート繊維を含むことも適宜可能である。
また、側地14は、低反発機能を有する極細繊維として、ポリエステル繊維以外の高密度のたとえば合成繊維の集合体等の繊維状物の集合体であってもよい。
【0032】
上述した実施形態例では、側地14を被覆する枕カバー(図示せず)を適宜有し得るものとなっているため、より一層、汚れ防止と洗濯が容易なものとなっている。なお、この枕カバー(図示せず)は、中材12の低反発性機能を損なわなければ、伸縮性を有する生地で形成することが好ましいものである。伸縮性の生地としては、たとえば平編、リブ編、パイル編のような編み生地が好ましく、また、スパンデックスのような伸縮性繊維を含む編地を用いることも好ましいものである。さらに、この枕カバー(図示せず)には、放香機能、消臭機能、抗菌機能等の機能を付与することも適宜可能なものである。また、特に、この枕カバー(図示せず)に吸汗機能や透湿機能を付与することによって、当該枕カバーでカバーされた上述の実施形態例の枕は、その快適な使用を実現することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 枕
10A,10B 枕の直線状長辺部
12 中材
14 側地
16 折り曲げ手段
18 一方の斜め縫合線
20 他方の斜め縫合線
22,24,26,28 当接端点
30,32,34,36 頂点
38 補強片
40 比較例の枕
42 比較例の枕の中材
44 比較例の枕の側地
46,48 U字状の相対する折り曲げ辺部
50 U字状の相対する折り曲げ辺部を接続する接続辺部(中央部)
52 L字状の短辺部
54 L字状の長辺部
X−X 枕の幅方向の中間点を通って当該枕の長さ方向に延びる中心線
Y−Y 枕の長さ方向の中間点を通って当該枕の幅方向に延びる中心線
θ1,θ1 1組の角(錯角)
θ2,θ2 他の1組の角(錯角)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ手段により折り曲げ自在となる長尺の枕であって、
低反発機能を有する素材で形成された中材、および
前記中材をその内部に収容し、前記内部の空気抜けを遅延させる生地で形成された側地を含み、
前記折り曲げ手段は、前記側地の表裏を縫合する縫合線を含み、
前記縫合線は、前記枕の幅方向の中間点を通って前記枕の長さ方向に延びる中心線に交差する斜線方向に配設される斜め縫合線を含むことを特徴とする、枕。
【請求項2】
前記折り曲げ手段は、前記枕の長さ方向の一端および/または他端と、前記枕の長さ方向の中央との間に配設される少なくとも1つの前記斜め縫合線を含み、
特定された前記1つの斜め縫合線に沿って、前記枕がL字状に折り曲げ可能となることを特徴とする、請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記折り曲げ手段は、前記枕の長さ方向に間隔を隔てて配設される少なくとも2つの前記斜め縫合線を含み、
特定された前記2つの斜め縫合線と、前記枕の幅方向に相対する1組の対辺とで囲繞された部位が平面視台形状となるように、前記少なくとも2つの斜め縫合線が配列され、
前記特定された2つの斜め縫合線に沿って、前記枕がU字状に折り曲げ可能となることを特徴とする、請求項1に記載の枕。
【請求項4】
前記特定された2つの斜め縫合線は、前記枕の長さ方向の中間点を通って前記枕の幅方向に延びる中心線に対して線対称に配設されることを特徴とする、請求項3に記載の枕。
【請求項5】
前記中材を形成する低反発素材は、PPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)を含み、
前記側地は、打ち込み本数の多い高密度の生地で形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の枕。
【請求項6】
前記中材を形成する低反発素材は、1.1〜3.3デニールの範囲の繊維太さを有するPPT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)を含み、前記側地は、打ち込み本数が390〜414の範囲にある高密度の生地で形成されることを特徴とする、請求項5に記載の枕。
【請求項7】
前記斜め縫合線は、前記側地の表裏間に配置された補強片を介して前記側地の表裏を縫合することを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−75816(P2012−75816A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226436(P2010−226436)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(396024521)株式会社ルナール (1)
【Fターム(参考)】