説明

果実の種子抜き装置

【課題】大量に、連続的に、能率よく、完全に、被処理果実の種子と果肉との分離を行えるようにする。
【解決手段】大径ローラ3と、該大径ローラ3と引き込み間隙tを介して対向し、かつ、前記大径ローラ3と同方向に回転する小径ローラ5と、該引き込み間隙tの上方に設けた果実投入ガイド17と、を備えた果実の種子抜き装置であって、前記引き込み間隙tの幅Yは、被処理果実7の種子7bよりも小さく形成され、前記両ローラ3、5の中心軸3c、5cを結ぶ連結直線Lを、前記大径ローラ3の中心軸3cを通る水平線Fに対して傾斜させ、該小径ローラ5の頂部5aを前記水平線Fの下方に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、銀杏、さくらんぼ、プラム、梅干し等の果実を果肉と種子に分離する、果実の種抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果実、例えば、梅干しは、硬い種子と、該種子の外側を覆う柔らかい果肉から構成されている。おにぎり等に使用される梅干しは、種子を抜いて果肉だけが用いられるが、少量の梅干しなら手作業により種抜きをしても、特に問題はがない。ところが、業務用などのために、大量の梅干しの果肉を必要とする場合には、多量の梅干しの種子抜きを行わなければならない。ところが、この作業を手で行う場合には、時間がかかり不経済であるとともに、重労働となる。
【0003】
そこで、従来、次のような装置を用いて被処理果実、即ち、果肉と種子とが分離される果実、を機械的に処理している。
(1)大型ドラムと小径ローラの下方に落下した被処理果実を、前記ドラム前面に接するようにして果肉を削ぎ落とし、果肉と種子を分離させる、種子と果肉の分離装置(例えば、特許文献1、参照)。
【0004】
(2)間欠に回転する回転板上の保持部に果実を挟み、上下動により種子の一部を押し込み果実から押し出す押し出しカッタを備えた、果実の種子抜き装置(例えば、特許文献2、参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−278561号公報
【特許文献2】特開平8−80181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例には、次のような問題がある。
特許文献1では、種子は傷つけないで回収されるが、果肉は削り取られ、バラバラになる。そのため、この果肉は、おにぎりなどに利用するには適しない。また、特許文献2では、果実の保持部におけるセッテングに人手がかかるので、作業能率が良くない。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑み、大量に、連続的に、能率よく、完全に、被処理果実の種子と果肉の分離が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、大径ローラと、該大径ローラと引き込み間隙を介して対向し、かつ、前記大径ローラと同方向に回転する小径ローラと、該引き込み間隙の上方に設けた果実投入ガイドと、を備えた果実の種子抜き装置であって、前記引き込み間隙の幅は、被処理果肉の種子よりも小さく形成され、前記両ローラの中心軸を結ぶ連結直線を、前記大径ローラの中心軸を通る水平線に対して傾斜させ、該小径ローラの頂部を前記水平線の下方に位置させたことを特徴とする。
【0009】
この発明の前記連結直線の前記水平線に対する傾斜角度は、10度〜20度であることを特徴とする。この発明の前記大径ローラの回転速度は、前記小径ローラの回転速度より速いことを特徴とする。この発明の前記引き込み間隙の幅は、前記種子の直径より1〜2mm小さいことを特徴とする。この発明の前記大径ローラと前記小径ローラは、それぞれ別個独立の駆動手段により駆動することを特徴とする。
【0010】
この発明の前記両ローラは、前記引き込み間隙を調整するための位置調整手段を備えていることを特徴とする。この発明の前記両ローラの外周面には、凹凸ローレット加工が施されていることを特徴とする。この発明の前記ガイドは、被処理果実を前記大径ローラ側に案内し、該果実の重心を通る垂線が前記引き込み間隙の中央部を通るようすることを特徴とする。この発明の前記引き込み間隙の下方に、果肉受皿が設けられていることを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
この発明は、以上のように構成したので、被処理果実は、果実投入ガイドに案内されながら引き込み間隙に落下した後、大径ローラの回転により該隙間に引き込まれ、果肉は変形しながら該隙間を通って落下する。該果実の種子は前記間隙に入り込むことができず、小径ローラの頂部に弾き出されるとともに、該小径ローラの回転によって機外に放出される。そのため、大量の被処理果実を、機械的、かつ、連続的に能率よく処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施の形態を図1〜図5により説明する。
金属フレームの支持台1には、大径ローラ3と、該大径ローラ3よりも小さい直径の小径ローラ5が互いに平行に配設されているが、これらのローラ3,5は、引き込み間隙tを介して対向している。前記大径ローラ3の直径は、例えば、前記小径ローラ路5の直径の約2倍であるが、これらの直径の大きさは、必要に応じて適宜選択される。
【0013】
大径ローラ3の中心軸3cは、小径ローラ5の中心軸5cと平行に設けられている。前記両中心軸3c,5cを結ぶ連結直線Lは、大径ローラ3の中心軸3cを通る水平線Fに対し傾斜角度θ、例えば、θ=10度〜20度、傾斜し、該小径ローラ5の頂部5aは、前記水平線Fより下方に位置している。従って、前記引き込み間隙tは、前記水平線Fの下方に位置している。
【0014】
引き込み隙間tの幅Yは、被処理果実7、即ち、果実7aと種子7bとを分離される果実、の種子7bの大きさよりも小さく、例えば、種子7bの直径よりも1mm〜2mm、小さく形成されている。この隙間tの幅Yは、大径ローラ3及び小径ローラ5にそれぞれ配設されている位置調整手段により調整される。この位置調整手段は、水平移動可能な軸受台8A、9Aと垂直移動を微調整する調整ねじ8B、9Bとを備えている。
【0015】
前記両ロール3、5の外表面には、凹凸ローレットRが施されている。又、両ローラ3,5は別個独立に設けた駆動モータ13,15により駆動する。前記両ローラ3、5の回転方向は、同一に設定されるが、回転速度は、大径ローラ3が小径ローラ5より高速に設定される。例えば、大径ローラ3と小径ローラ5の外表面の回転速度比は、1対5〜10の範囲で適宜選択される。
なお、前記傾斜角度θで処理する果実の重心の位置を変えることにより、面速度比の変化で処理能力を変化させることができる。
【0016】
前記小径ローラ5の上方には、果実投入ガイド17が設けられているが、このガイド17として、例えば、大径ローラ5側に被処理果実が巻き込まれるようにした傾斜板、が用いられる。この傾斜板17の下端部17aは、大径ローラ3の側面近傍に位置するとともに、小径ローラ5の頂部5aと空間部Sを介して対向し、該空間部Sから分離された種子が排出できる様になっている。
【0017】
図において、20は被処理果実を本装置に搬送するベルトコンベヤ、21は引き込み間隙tの下方に設けた果肉受皿、22は種子受皿、23,24はチェーン、25,26はローラ回転速度化変用ハンドル、27,28はローラ歯車、をそれぞれ示す。
【0018】
次に、本実施の形態の作動について説明する。
同一方向A(時計回転方向)に回転する大径ローラ3と小径ローラ5を、単独に回転速度比を設定し、大径ローラ3を高速側とし、小径ローラ5を低速側に設定する。又、大径ローラ3と小径ローラ5間の引き込み隙間tを、被処理果実、例えば、梅干し7、の種子7aの直径より1〜2mm、小さく設定するとともに、傾斜角度θを、例えば、10度になる様に設定する。
【0019】
ベルトコンベヤ20により搬送されてきた梅干し7が、前記ローラ3,5の上方に落下すると、該梅干し7は果実投入ガイド17に衝突し、大径ローラ3に巻き込まれて、前記間隙tに落下する。この時、前記ガイド17は、梅干し7の重心の位置が前記隙間tの幅Yの中心部に対応する様に調整するので、該梅干し7は、確実に前記隙間tに落下する。
【0020】
前記梅干し7は、大径ローラ3の回転により該引き込み間隙t内に引き込まれるが、種子7bが該隙間tの幅より大きいので、該隙間t内に進入することができず、果肉7aのみが変形しながら該間隙tを通過する。そのため、種子7bは、前記果実7から弾き出され、時計方向に回転している小径ローラ7aの頂部5aに乗るので、果肉7aと種子7bは、完全に分離される。この時、小径ローラ5は、前記水平線Fの下方に位置しているので、種子7bは容易に弾き出される。
【0021】
この際、梅干し7の重心の位置が、大径ローラ3と小径ローラ5の外周面の接線が垂直状になるように設定すれば、梅干し7の果肉7aは、確実に大径ローラ5に巻き込まれて前記引き込み間隙tを通り、果肉受皿21に落下する。又、果肉7aから分離された種子7bは、時計回転方向に回転している小径ローラ5に乗り、前記空間部Sを通って種子受皿22内に放出される。
【0022】
この発明の実施の形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、本件装置は、梅干し等の果実の他、硬いものを内蔵する柔らかい物体を、硬いものと柔らかいものに分離する場合にも用いることができる。従って、前記被処理果実には、この様な物体も含まれているものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本件発明の実施の形態を示す正面図である。
【図2】前記形態の側面図である。
【図3】前記形態の平面図である。
【図4】大径ローラと小径ローラの拡大平面図である。
【図5】被処理果実の分離過程を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 支持台
3 大径ローラ
5 小径ローラ
7 被処理果実
7a 果肉
7b 種子
17 果実投入ガイド
θ 傾斜角度
L 連結直線
t 引き込み間隙
Y 引き込み間隙の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径ローラと、該大径ローラと引き込み間隙を介して対向し、かつ、前記大径ローラと同方向に回転する小径ローラと、該引き込み間隙の上方に設けられた果実投入ガイドと、を備えた果実の種子抜き装置であって、
前記引き込み間隙の幅は、被処理果実の種子よりも小さく形成され、
前記両ローラの中心軸を結ぶ連結直線を、前記大径ローラの中心軸を通る水平線に対して傾斜させ、該小径ローラの頂部を前記水平線の下方に位置させたことを特徴とする果実の種子抜き装置。
【請求項2】
前記連結直線の前記水平線に対する傾斜角度は、10度〜20度であることを特徴とする請求項1記載の果実の種子抜き装置。
【請求項3】
前記大径ローラの回転速度は、前記小径ローラの回転速度より速いことを特徴とする請求項1、又は、2記載の果実の種子抜き装置。
【請求項4】
前記引き込み間隙の幅は、前記種子の直径より1〜2mm小さいことを特徴とする請求項1、2、又は、3記載の果実の種子抜き装置。
【請求項5】
前記大径ローラと前記小径ローラは、それぞれ別個独立の駆動手段により駆動することを特徴とする請求項1、2、又は、3記載の果実の種子抜き装置。
【請求項6】
前記両ローラは、前記引き込み間隙を調整するため位置調整手段を備えていることを特徴とする請求項1、2、3、4、又は、5記載の果実の種子抜き装置。
【請求項7】
前記両ローラの外周面には、凹凸ローレット加工が施されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、又は、6記載の果実の種子抜き装置。
【請求項8】
前記果実投入ガイドは、被処理果実を前記大径ローラ側に案内し、該果実の重心を通る垂線が前記引き込み間隙の中央部を通るようすることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、又は、7記載の果実の種子抜き装置。
【請求項9】
前記引き込み間隙の下方に、果肉受皿が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、又は、8記載の果実の種子抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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