説明

果実保持部材

【課題】果実の損傷等による品質劣化を抑制することが可能で、果実を確実に保持することが可能な果実保持部材を提供する。
【解決手段】底面部12の一部に形成されたV字状の折り曲げ部22と、折り曲げ部22のV字の頂点部近傍に形成された切れ込み部28と、を有しており、切れ込み28は、その一端側のみが底面部12の外周部に連通している。イチゴ10は、切れ込み28に沿って果柄10aが挿入された状態、かつ、底面部12上にイチゴの可食部が配置された状態で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果実保持部材に関し、特に、果柄付きの果実を保持する果実保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、イチゴや、桃、梨、洋梨などの果実用トレーには、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂シートからなる成形品が多く使用されているが、イチゴなどの果実は果肉がやわらかいため、搬送中にトレー内で移動することにより、損傷等の品質劣化が生じやすい。そのため、これを解消するための技術として、例えば、トレーの一部に、果実の軸すなわち果柄を貫通させることが可能な貫通孔を設けておき、当該貫通孔に果柄を通して固定する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、トレーの一部に嵌合凹部(空隙)を設けておき、果柄を嵌合凹部に嵌め込むことにより果実の移動を抑制する技術も提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平7−40567号公報
【特許文献2】特開平8−258871号公報
【特許文献3】実開平7−13782号公報
【特許文献4】実開昭63−177212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜4のいずれにおいても、トレー(容器)に果実を載置するときには、果実に直接触れる必要がある。このため、イチゴ(特に、品種「とちひめ」などの果肉が非常に柔らかい品種)のような果実の場合、果実に触れることで品質を劣化させてしまうおそれがある。また、作業者が果実に直接触れることは衛生的にも問題がある。
【0005】
これに対し、特開2002−284114号公報や、特開2007−230618号公報には、果実部分(可食部)に触れずに果実を収容することが可能な容器(トレー)が開示されている。
【0006】
しかるに、特開2002−284114号公報においては、果柄を収容するための収容部が設けられているが、様々な太さの果柄に対応するためには、収容部を大きめに設計しておく必要がある。このことは、果実の果柄部分での固定を満足に行うことができず、振動等によって果実が損傷する可能性があることを意味する。また、上記公報では、果実を横にするか、あるいは斜め横に寝かせるように容器に収容させる必要があるため、果実が容器に接触して損傷する可能性が高い。
【0007】
また、特開2007−230618号公報に記載のトレーでは、トレーに設けられた切込がジグザグ状となっているため、果柄(主茎)の太さの違いに対応可能で、かつ、果柄が切込に把持されることにより果実を固定することができる。しかしながら、このトレーにおいても、果実を横に寝かせるように容器に収容させる必要があるため、果実が容器に接触して損傷する可能性が高い。また、ジグザグ状の切込の加工には手間がかかる。
【0008】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、果実の損傷等による品質劣化を抑制することが可能な果実保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は第1の観点からすると、シート状部分を有し、当該シート状部分の一側の面を、果柄付きの果実を保持する果実保持面とする果実保持部材であって、前記果実保持面の一部に、前記シート状部分の外周部から前記果実保持面内の一軸方向に沿って谷折り形成された略V字状の折り曲げ部と、前記折り曲げ部の略V字の頂点部近傍に、前記一軸方向に沿って形成された切れ込み部と、を有し、前記切れ込み部は、その一端側のみが前記シート状部分の外周部に連通しており、当該切れ込み部に前記果実の果柄が挿入され、かつ、前記シート状部分の前記果実保持面に前記果実の可食部が配置された状態で前記果実を保持することを特徴とする。
【0010】
ここで、「果実の可食部」とは、人間が食する部分(一般的には果肉部分)を意味し、イチゴにおける花托などをも含む概念である。
【0011】
これによれば、切れ込み部は、その一端側のみがシート状部分の外周部に連通した状態で折り曲げ部の頂点部近傍に形成されており、当該切れ込み部に前記果実の果柄が挿入され、かつ、シート状部分の果実保持面に可食部が配置された状態で果実が保持されるので、作業者は果柄を把持した状態で、シート状部分の外周部から切れ込み部に果柄を挿入するのみで、切れ込み部に果柄を挟持させることができる。このように、果実を果実保持面に保持させる際には、作業者は可食部に一切触れることなく果柄のみを把持すれば良いため、可食部の損傷等による品質劣化を抑制することができる。また、切れ込み部で保持されている果柄が果実の頂部方向に抜けそうになっても、切れ込み部が果柄に食い込むように作用するため、果柄の上方への抜けを抑制し、果実の保持を確実に行うことができる。更に、折り曲げ部に果柄が挟持された状態で、可食部が果実保持面上で保持されることから、例えば果実がイチゴである場合には、必然的に、イチゴのヘタの部分のみが果実保持面に接触することになるので、果実保持面に接触することによる可食部の品質劣化を抑制することが可能となる。
【0012】
この場合において、前記シート状部分の前記果実保持面を覆う状態で設けられるカバー部分を有するようにすることができる。かかる場合には、果実の外部との接触を抑制することができるので、果実の品質劣化を抑制することが可能である。
【0013】
この場合、シート状部分とカバー部分は別体で構成されていても良いが、例えば、前記シート状部分と前記カバー部分とが一体成型されていることとしても良い。
【0014】
また、本発明の果実保持部材では、前記シート状部分には、前記折り曲げ部と前記切れ込み部とが複数形成されていることとしても良い。かかる場合には、1つの果実保持部材に複数の果実を保持させることが可能となる。
【0015】
また、本発明は第2の観点からすると、果柄付きの果実を保持する果実保持面を有する果実保持部材であって、一軸方向に沿って配列された、前記果実保持面を有する複数の板状部材を備え、前記隣接する2つの板状部材の対向面間の一部が固着されることにより、前記隣接する2つの板状部材の近接する角部の間から前記一軸方向に交差する方向に沿って切れ込み部が形成され、前記切れ込み部に前記果実の果柄が挿入され、かつ、前記果実保持面に前記果実の可食部が配置された状態で前記果実を保持することを特徴とする。
【0016】
これによれば、切れ込み部は、隣接する2つの板状部材の近接する角部の間から一軸方向に交差する方向に延びており、当該切れ込み部に前記果実の果柄が挿入され、かつ、シート状部分の果実保持面に可食部が配置された状態で果実が保持されるので、作業者は果柄を把持した状態で、切れ込み部に果柄を挿入するのみで、切れ込み部に果柄を挟持させることができる。このように、果実を果実保持面に保持させる際には、作業者は可食部に一切触れることなく果柄のみを把持すれば良いため、可食部の損傷等による品質劣化を抑制することができる。また、切れ込み部に果柄が挟持された状態で、可食部が果実保持面上で保持されることから、例えば果実がイチゴである場合には、必然的に、イチゴのヘタの部分のみが果実保持面に接触することになるので、可食部の品質劣化を抑制することが可能となる。更に、本果実保持部材によると、板状部材の数を変更することにより、保持可能な果実数を変更することができるので、ユーザのニーズなどに応じた適切な対応が可能となる。
【0017】
また、本発明の果実保持部材では、前記切れ込み部の前記果柄が挿入される側の端部は、その他の部分よりも広い隙間を有することとすることができる。かかる場合には、広い隙間部分から果柄を挿入することで、果柄の挿入を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、果実の損傷等による品質劣化を抑制することが可能な果実保持部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1には、本実施形態のイチゴ保持部材100にイチゴ10が保持された状態が示されている。このイチゴ保持部材100は、プラスチックやPET(Polyethylene Terephthalate)等の材料により一体的に形成され、イチゴ10を保持するシート状部分としての底面部12と、側壁部14A,14Bと、上面部16とを有する略箱状(枠状)の形状を有している。
【0021】
底面部12は、図2(a)、図2(b)に示すように、その中央部分に折り曲げ形成されたV字状の折り曲げ部22と、折り曲げ部22から左右方向に広がる水平面部24A,24Bと、水平面部24A、24Bの折り曲げ部22とは反対側の端部から略L字状に折り曲げ形成された第1L字部26A,26Bと、第1L字部26A,26Bからさらに略L字状に折り曲げ形成された第2L字部29A,29Bと、を有している。本実施形態では、図1に示すように、底面部12の上面側にイチゴの可食部(花托)が位置することになるので、以下においては、底面部12の上面側を指して、「イチゴ保持面」とも呼ぶものとする。
【0022】
V字状の折り曲げ部22の頂点部分には、切れ込み部28が形成されている。この切れ込み部28は、図2(b)に示すように、底面部12の外周(図2(b)の手前側の外周部分)から底面部12の略中央部にかけて形成されている。
【0023】
本実施形態では、底面部12が上述したような複雑な形状を有することにより、底面部12の強度向上が図られているとともに、切れ込み部28には、切れ込み部28の隙間間隔を狭めようとする付勢力が常時作用するようになっている。
【0024】
側壁部14A、14Bは、底面部12の長手方向一端部及び他端部から立設された状態とされており、各側壁部14A,14Bの一部(高さ方向中央部よりやや下側)には、補強のために折り曲げ形成された略V字状の補強部32A、32Bがそれぞれ設けられている。
【0025】
上面部16には、2つの凸状部分34A、34Bが折り曲げ形成されている。ここで、図2(b)に示すように、上面部16の長手方向一端部(図2(b)における紙面右側の端部)から凸状部分34Aが立ち上がっている位置までの距離(距離a)と、上面部16の長手方向他端部(図2(b)における紙面左側の端部)から凸状部分34Bが立ち上がっている位置までの距離(距離a’)とは一致しており(距離a=距離a’)、それらは、底面部12の第2L字部29Aの幅(幅b)と第2L字部29Bの幅(幅b’)のそれぞれとも一致している(a=a’=b=b’)。
【0026】
上記のように構成されるイチゴ保持部材100によるイチゴの保持は、以下のようにして行われる。すなわち、作業者は、図3(a)に示すように、イチゴ10の果柄部分10aをつまみ持った状態(把持した状態)で、イチゴ10を図3(a)の矢印方向に相対移動させて、イチゴ10をイチゴ保持部材100に近づける。そして、イチゴの可食部が底面部12の上側(イチゴ保持面側)に位置し、果柄部分10aをつまみ持っている手(指)が底面部12の下側に位置するようにして、図3(b)に示すように果柄部分10aを切れ込み部28に対して挿入する。この場合、作業者は、果柄部分10aが、それ以上切れ込み部28の奥に入ることができなくなる位置までイチゴ10を挿入するようにする。このようにすることで、イチゴ10は、図1に示すような状態でイチゴ保持部材100により保持されるようになっている。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のイチゴ保持部材100では、作業者は、イチゴの果柄のみをつまんで、イチゴ保持部材100にイチゴを保持させることができるので、イチゴに直接触れることによるイチゴへの損傷を抑制するとともに、イチゴを従来よりも衛生的に出荷等することができる。また、イチゴ保持部材100は、折り曲げ部22に形成した切れ込み部28部分でイチゴの果柄10aを保持することとしているので、果柄の太さの違いに対応することが可能である。また、切れ込み部28部分で保持されている果柄が果実の頂部方向(上方)に抜けそうになっても、切れ込み部28に常時作用している、切れ込み部28の隙間間隔を狭めようとする付勢力により、切れ込み部28が果柄に食い込むように作用するため、果柄が上方に抜けにくくなり、イチゴの保持を確実に行うことができる。したがって、イチゴを搬送している間にイチゴ保持部材100に振動等が作用しても、イチゴがイチゴ保持部材100の側壁部14A,14B等に接触するのを抑制することができ、これにより、イチゴへの損傷を抑制することができる。更に、本実施形態では、底面部12の上面側(イチゴ保持面)には、イチゴのヘタ部分のみが接触することとなるので、イチゴを寝かせた状態で保持する場合と比べ、イチゴの可食部(花托)の損傷を抑制することができる。
【0028】
ここで、本実施形態では、図4に示すように、イチゴ保持部材100を上下方向に重ねることが可能である。この場合、前述したように、図2(b)における寸法a、a’,b,b’のそれぞれが同一であることから、図4において上側に位置するイチゴ保持部材の底面部12と下側に位置するイチゴ保持部材の上面部16とが、図4の紙面左右方向(底面部12及び上面部16の長手方向)に関して嵌合するようになる。これにより、イチゴ保持部材100を上下に重ねた状態を安定的に維持することが可能である。また、本実施形態では、図4の下側に位置するイチゴ保持部材の上面部16に形成された凸状部分間の隙間に、上側のイチゴ保持部材によって保持されたイチゴの果柄が位置することから、上側に位置するイチゴの果柄によって邪魔されること無く、イチゴ保持部材100を上下に重ねることが可能である。
【0029】
更に、本実施形態では、図4に示すように、イチゴ保持部材の上面部に形成された凸状部分が、作業者や消費者がイチゴ保持部材100を手でつまむための取っ手としての機能も有しているので、側壁部14A、14Bを手でつまんだ場合に生じる側壁部14A,14Bの変形(凹み)に起因するイチゴの損傷や、切れ込み部28部分の形状変化に起因するイチゴの脱落等を抑制することができる。
【0030】
なお、上記第1の実施形態の底面部12、側壁部14A,14B、上面部16の形状等は一例であって、図1〜図4で示した形状に限定されるものではない。すなわち、イチゴ保持部材としては、底面部12に少なくとも折り曲げ部22と切れ込み部28とが形成されたものであれば、その形状は問わない。
【0031】
なお、上記第1の実施形態では、底面部12、側壁部14A,14B、上面部16を一体的に形成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、底面部12と、側壁部14A,14B及び上面部16とを別体で構成しても良い。この場合、底面部12全体を覆うカバー部材を底面部12の上方から覆い被せるように設けることとしても良い。
【0032】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態にかかるイチゴ保持部材100’について、図5、図6に基づいて説明する。
【0033】
本第2の実施形態のイチゴ保持部材100’は、前述した第1の実施形態と異なり、複数のイチゴを保持可能である点に特徴を有している。このイチゴ保持部材100’は、例えば、プラスチックやPETなどのシート状部材(板状部材)を、図5(a)に示すように折り曲げ加工(又はプレス加工)したものであり、3つのV字状の折り曲げ部122A、122B,122Cが、シート状部材の短手方向に平行に形成されている。
【0034】
折り曲げ部122Aの頂点部分には、折り曲げ部122Aの長手方向一端部から切れ込み部28Aが形成され、長手方向他端部から切れ込み部28Dが形成されている。また、同様に折り曲げ部122Bの頂点部分には、折り曲げ部122Bの長手方向一端部及び他端部から切れ込み部28B、28Eが形成され、折り曲げ部122Cの頂点部分には、折り曲げ部122Cの長手方向一端部及び他端部から切れ込み部28C、28Fが形成されている。
【0035】
このように構成されるイチゴ保持部材100’では、前述した第1の実施形態と同様に、作業者がイチゴの果柄部分をつまんだ状態で、果柄部分を切れ込み部28A〜28Fに挿入することにより、図5(b)に示すように、6つのイチゴをイチゴ保持部材100’に保持させることが可能である。この場合、第1の実施形態と同様、イチゴの果柄の太さの違いに対応することができるとともに、イチゴの保持を確実に行うことができるようになっている。
【0036】
また、本第2の実施形態では、図6に示すように、イチゴ保持部材100’の大きさにあわせて製造したカバー200を、イチゴ保持部材100’の上方から覆い被せることにより、イチゴ保持部材100’に保持された6つのイチゴの外部との接触を防止することが可能である。
【0037】
なお、上記第2の実施形態では、イチゴ保持部材100’が6つのイチゴを保持できる構成について説明したが、これに限らず、保持することが可能なイチゴの数としては、種々の数を採用することができる。
【0038】
また、上記第2の実施形態では、1つの折り曲げ部に、その長手方向一端部と他端部から2つの切れ込み部を形成した場合について説明したが、これに限らず、1つの折り曲げ部にその長手方向の一端部又は他端部のいずれかから切れ込み部を1つのみ形成することとしても良い。すなわち、本第2の実施形態では、切れ込み部28Aと切れ込み部28Dの両方を、共通の折り曲げ部122Aに形成することとしたが、これに代えて、例えば、折り曲げ部122Aを2つの折り曲げ部に分け、一方に切れ込み部28Aを形成し、他方に、切れ込み部28Dを形成することとしても良い。
【0039】
なお、上記第2の実施形態では、イチゴ保持部材100’とカバー200とを別体で構成した場合について説明したが、これに限らず、イチゴ保持部材100’に第1の実施形態で説明した側壁部14A,14B、上面部16のような門型のカバー部分を一体的に形成することとしても良い。
【0040】
なお、上記第1、第2の実施形態では、折り曲げ部22,折り曲げ部122A〜122Cが、V字状に折り曲げ加工されている場合について説明したが、これに限らず、折り曲げ部は、U字状を含む略V字状に折り曲げ加工されていても良い。
【0041】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態にかかるイチゴ保持部材100”について、図7に基づいて説明する。図7(a)は、イチゴ保持部材100”の平面図であり、図7(b)は、イチゴ保持部材100”の側面図である。
【0042】
これら図7(a)、図7(b)に示すように、本第3の実施形態のイチゴ保持部材100”は、前述した第2の実施形態と異なり、板状部材としての複数の基本トレー42が紙面内左右方向に配列されて構成されている点に特徴を有している。
【0043】
基本トレー42は、平面視(上方から見て)略長方形状の板状部分44aと、板状部分44aの下面から突出した状態で設けられた台座部44bと、板状部分44aの上面に設けられた平面視(上方から見て)略菱形の突出部44cと、板状部分44aの上面において紙面内上下方向に延設されたイチゴ保持レール44d1〜44d4と、を有している。なお、基本トレー42それぞれは、樹脂等を射出成型することにより製造される。
【0044】
これら複数の基本トレー42のうち、隣接する基本トレー42間は、互いに対向する部分のうちの一部(図7(a)において、符号42aにて示す部分)にて接着剤等により固着されている一方、その他の部分は固着されていない。このため、隣接する2つの基本トレー42間には、図7(a)の紙面内上下方向に延びる2つの切れ込み部(スリット)46a,46bが形成された状態となっている。なお、切れ込み部46a,46bの間に所定間隔の隙間が形成されるように、固着されない部分と固着される部分との間に段差部を設けることとしても良い。
【0045】
また、各基本トレー42の板状部分44aの角部は、図7(a)に示すように、円弧状の面取り加工が施されている。このため、切れ込み部46aの紙面下側の端部と、切れ込み部46bの紙面上側の端部は、その他の部分よりも隙間が広がった状態となっている(この部分を、「供給部48a,48b」とも呼ぶ)。
【0046】
以上のように構成されるイチゴ保持部材100”によると、前述した第1、第2の実施形態と同様に、作業者がイチゴの果柄部分をつまんだ状態で、果柄部分を切れ込み部46a,46bに挿入することにより、図7(a)、図7(b)に示すように、イチゴを隣接する基本トレー42上(イチゴ保持レール44d1〜44d4上)で保持させることが可能である。この場合、第1、第2の実施形態と同様、イチゴの果柄の太さの違いに対応することができるとともに、イチゴの保持を確実に行うことができるようになっている。
【0047】
また、本第3の実施形態では、切れ込み部46a,46bの端部に供給部48a,48bが形成されていることから、簡易に、イチゴの果柄部分を切れ込み部46a,46bに挿入することが可能である。なお、切れ込み部の端部に供給部を設けることについては、上述した第1、第2の実施形態にも適用することが可能である。すなわち、例えば、図2の切れ込み部28を形成する際に、切れ込み部28の端部を略三角形状に切り取ることにより供給部を形成することとしても良い。このような供給部を設けることにより、切れ込み部へのイチゴの果柄部分の挿入を容易に行うことが可能である。
【0048】
なお、上記第3の実施形態(図7)では、イチゴ保持部材100”が、基本トレー42を3つ有する場合について図示したが、これに限られるものではなく、保持させたいイチゴの数(ユーザのニーズなど)にあわせて基本トレー42の数を適宜変更することが可能である。
【0049】
また、上記第3の実施形態でも、前述した第2の実施形態と同様に、図6に示すようなカバーを、イチゴ保持部材100”の上方から覆い被せることとしても良い。これにより、イチゴ保持部材100”に保持されたイチゴの外部との接触を防止することが可能である。
【0050】
なお、上記第3の実施形態の基本トレー42の構成は一例である。すなわち、隣接する2つの基本トレーの対向面間の一部が固着されることにより、隣接する2つの基本トレーの近接する角部の間から切れ込み部が形成されるのであれば、その構成は問わない。例えば、図7(a)の基本トレー42を上下方向の中央部で切断したもの(構造体)を基本トレーとしても良い。
【0051】
なお、上記各実施形態では、本発明の果実保持部材が、イチゴを保持するイチゴ保持部材100,100’である場合について説明したが、これに限らず、本発明の果実保持部材は、果柄を有するその他の果実(桃や柿など)の保持部材としても適用することが可能である。
【0052】
上述した各実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施形態に係るイチゴ保持部材100がイチゴを保持した状態を示す斜視図である。
【図2】図1のイチゴ保持部材を示す斜視図である。
【図3】イチゴ保持部材にイチゴを保持させる手順を示す図である。
【図4】イチゴ保持部材を配列した状態を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係るイチゴ保持部材を示す斜視図である。
【図6】図5のイチゴ保持部材にカバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7】第3の実施形態に係るイチゴ保持部材を示す平面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 イチゴ(果実)
12 底面部(シート状部分)
14A,14B 側壁部(カバー部分の一部)
16 上面部(カバー部分の一部)
22 折り曲げ部
28 切れ込み部
28A〜28F 切れ込み部
42 基本トレー(板状部材)
100,100’,100” イチゴ保持部材(果実保持部材)
122A〜122C 折り曲げ部
200 カバー部材(カバー部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部分を有し、当該シート状部分の一側の面を、果柄付きの果実を保持する果実保持面とする果実保持部材であって、
前記果実保持面の一部に、前記シート状部分の外周部から前記果実保持面内の一軸方向に沿って谷折り形成された略V字状の折り曲げ部と、
前記折り曲げ部の略V字の頂点部近傍に、前記一軸方向に沿って形成された切れ込み部と、を有し、
前記切れ込み部は、その一端側のみが前記シート状部分の外周部に連通しており、当該切れ込み部に前記果実の果柄が挿入され、かつ、前記シート状部分の前記果実保持面に前記果実の可食部が配置された状態で前記果実を保持することを特徴とする果実保持部材。
【請求項2】
前記シート状部分の前記果実保持面を覆う状態で設けられるカバー部分を有することを特徴とする請求項1に記載の果実保持部材。
【請求項3】
前記シート状部分と前記カバー部分とは、一体成型されていることを特徴とする請求項2に記載の果実保持部材。
【請求項4】
前記シート状部分には、前記折り曲げ部と前記切れ込み部とが複数形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の果実保持部材。
【請求項5】
果柄付きの果実を保持する果実保持面を有する果実保持部材であって、
一軸方向に沿って配列された、前記果実保持面を有する複数の板状部材を備え、
前記隣接する2つの板状部材の対向面間の一部が固着されることにより、前記隣接する2つの板状部材の近接する角部の間から前記一軸方向に交差する方向に沿って切れ込み部が形成され、
前記切れ込み部に前記果実の果柄が挿入され、かつ、前記果実保持面に前記果実の可食部が配置された状態で前記果実を保持することを特徴とする果実保持部材。
【請求項6】
前記切れ込み部の前記果柄が挿入される側の端部は、その他の部分よりも広い隙間を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の果実保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190763(P2009−190763A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33821(P2008−33821)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】