説明

果実収穫ロボット

【課題】
狭い栽培棚間でも確実に果実を検出し、果実を傷つけることがなく、且つ簡潔な構成の果実収穫ロボットを提供することを課題とする。
【解決手段】
果実の有無及び果実までの距離を検出する検出装置37と、収穫する果実が収穫可能かどうかを識別する識別装置49と、該識別装置49の識別結果にもとづいて果実を収穫するマニピュレータ45とからなる収穫装置Bを前後左右上下方向に移動自在に設けると共に、該収穫装置Bにて収穫した果実を回収する回収部Cを設け、マニピュレータ45で収穫した果実を把持したまま収穫装置Bを回収部Cへ移動させ、マニピュレータ45で把持している果実の把持を解除して回収部Cに投入させる制御装置53を設ける構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光利用型植物工場において高設栽培された果実類を対象とし、果実類の収穫作業を自動で行う果実収穫ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果実類を土耕又は水耕栽培による栽培棚で栽培を行い、これらの果実類の収穫作業は人手で行うのが一般的であった。
しかしながら、近年農村における人手不足や人件費の高騰等により、収穫作業の自動化が要望されるようになってきた。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されるように、撮像装置と画像処理装置を用いて、栽培棚の外部から果実の認識及び収穫の適否を判断する果実類の収穫作業を行うロボットがある。
また、特許文献2に記載されるように、視覚センサと画像処理装置を用いて、栽培棚の内部から果実の認識及び収穫の適否を判断する果実類の収穫作業を行うロボットがある。
【特許文献1】特開平8−275655号公報
【特許文献2】特開2001−145412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示された技術は、栽培棚と栽培棚の間に敷設されたレールに沿って機体を移動させ、撮像装置で撮像した画像から収穫可能な果実を判別し、収穫装置で収穫する果実収穫ロボットであるが、複数の果実が垂れ下がっている栽培棚と栽培棚との間隔は約80mmと狭いため、小型の撮像装置や広角レンズを用いた撮像装置を用いても複数の果実が鮮明に撮像できる位置に移動させることが困難であり、未熟果実を誤って収穫したり収穫できる果実を収穫しなかったりする誤収穫や、収穫装置や撮像装置が移動する際、移動先にある果実にぶつけるなどして果実を傷つけてしまうことがあった。
【0005】
さらに、撮像装置で撮像した画像から果実の位置を算出するための画像処理装置が必要となるため、その分ロボットの構成が複雑になってしまうと共に、果実の認識処理に時間がかかり、収穫作業にかかる時間を長引かせてしまっていた。
【0006】
本発明の課題は狭い栽培棚間でも短時間で確実に果実を検出し、果実を傷つけることがなく、且つ簡潔な構成の果実収穫ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、果実の有無及び果実までの距離を検出する検出装置(37)と、収穫する果実が収穫可能かどうかを識別する識別装置(49)と、該識別装置(49)の識別結果にもとづいて果実を収穫するマニピュレータ(45)とからなる収穫装置(B)を前後左右上下方向に移動自在に設けると共に、該収穫装置(B)にて収穫した果実を回収する回収部(C)を設けたことを特徴とする果実収穫ロボットとした。
【0008】
従って、検出装置(38)が果実までの距離を検出することによって、識別装置(49)やマニピュレータ(45)が収穫する果実を適正に識別・収穫できる位置に収穫装置(B)を移動させることができる。
【0009】
また、収穫装置(B)が前後左右上下方向に移動自在であることによって、検出装置(38)と識別装置(49)とマニピュレータ(45)は独立した移動機構を備えなくても、収穫装置(B)が動くことによって果実を適正に検出・識別・収穫することができる。
【0010】
請求項2の発明は、前記検出装置(37)を収穫装置(B)の下部に設け、マニピュレータ(45)を果実の果柄を把持する移動自在な把持部材(41)と、該把持部材(41)の移動を規制する規制部材(42)と、把持部材(41)の上部に果実の果柄を切断する移動自在な切断部材(43)と、把持部材(41)と切断部材(43)とを移動させる駆動装置(44)とから構成し、該マニピュレータ(45)の上部に識別装置(49)を設けたことを特徴とする請求項1記載の果実収穫ロボットとした。
【0011】
従って、検出装置(38)は果実の茎葉等の遮蔽物の少ない下方から果実の有無を検出するため、果実の検出漏れを防止することができる。
また、識別装置(49)をマニピュレータ(45)の上部に設けたことによって、識別作業を行う位置に識別装置(49)を移動させると、マニピュレータ(45)も果実を収穫する位置に移動させることができる。
【0012】
そして、把持部材(41)と切断部材(43)とを同じ駆動装置(44)で移動させる構成であるため、機体の構成する部品の数を減らすことができる。
さらに、規制部材(42)で把持部材(41)の動作だけを規制し、切断部材(43)はそのまま移動させることによって、果実の果柄を把持すると同時に切断することができる。
【0013】
請求項3の発明は、前記マニピュレータ(45)で収穫した果実を把持したまま収穫装置(B)を回収部(C)へ移動させ、マニピュレータ(45)で把持している果実の把持を解除して回収部(C)に投入させる制御装置(53)を設けたことを特徴とする請求項1及び2記載の果実収穫ロボットとした。
【0014】
従って、マニピュレータ(45)で把持した果実を回収部(C)に近づけてから把持を解除して果実を投入するため、果実を傷つけることなく回収部(C)に投入することができる。
【0015】
請求項4の発明は、前記識別装置(49)を複数のカラーセンサ(47a,47b,47c・・・)で構成したことを特徴とする請求項1記載の果実収穫ロボットとした。
従って、識別装置(49)が複数のカラーセンサ(47a,47b,47c・・・)で構成されていることによって、収穫対象の果実が収穫可能かどうかをより正確に識別することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、検出装置(38)が果実までの距離を検出することによって、識別装置(49)やマニピュレータ(45)を果実を適正に識別・収穫できる位置に移動させることができるので、識別装置(49)やマニピュレータ(45)が移動時に果実を傷つけることが防止されると共に、果実の収穫可否の識別や果実の収穫が適正に行われるため、果実の品質が向上する。
【0017】
また、収穫装置(B)が前後左右上下方向に移動自在であることによって、検出装置(38)と識別装置(49)とマニピュレータ(45)は独立した移動機構を備える必要が無いので、狭い作業スペースでも効率よく作業が行えると共に、機体の構成が簡潔になるので、故障が少なく効率的に作業を行うことができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、検出装置(38)は果実の茎葉等の遮蔽物の少ない下方から果実の有無を検出するため、果実が確実に検出されるので果実の検出漏れを防止することができると共に、正確な収穫作業を行うことができる。
【0019】
また、識別装置(49)をマニピュレータ(45)の上部に設けたことによって、識別装置(49)を果実の識別作業を行う位置に移動させるとマニピュレータ(45)も果実を収穫する位置に移動させることができるので、少ない動作で果実を収穫することができ、作業能率が向上する。
【0020】
そして、把持部材(41)と切断部材(43)とを同じ駆動装置(44)で移動させることにより、機体を構成する部品の数を減らすことができるので、機体の構成が簡潔になり、故障が少なく効率的に作業を行うことができる。
【0021】
さらに、規制部材(42)で把持部材(41)の動作だけを規制することによって、果実の果柄を把持すると同時に切断することができるので、少ない動作で果実を収穫することができ、作業能率が向上する。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項1及び2記載の発明の効果に加えて、マニピュレータ(45)で把持した果実を回収部(C)に近づけてから把持を解除して果実を投入するため、果実を傷つけることなく回収部(C)に投入することができるので、果実の品質が向上する。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、識別装置(49)が複数の識別体(47a,47b,47c・・・)で構成されていることによって、収穫対象の果実が収穫可能かどうかをより正確に識別することができ、大粒の未熟果実を収穫可能と判断して収穫したり、小粒の成熟果実を収穫不可として収穫しないなどの識別ミスを防止することができるので、正確な収穫作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、一実施例としていちごの栽培棚Tの間を走行し、いちごの収穫作業を2基の収穫装置で行ういちご収穫ロボットを説明する。
図1〜図6に示すように、いちご収穫ロボットは、いちごsが垂れ下がるように栽培する栽培棚T間を走行するための走行装置Aと、栽培棚Tから垂れ下がるいちごsを検出して収穫する収穫装置Bと、収穫したいちごsを回収する収穫部Cから構成されている。
【0025】
まず、走行装置Aの構成について説明する。
機体フレーム1の左右後下部に栽培棚Tのレール上を走行するための左右後輪2,2を取り付け、該機体フレーム1の前下部に従動スプロケット5を軸着したシャフト4を取り付けると共に、該シャフト4の左右端に栽培棚Tのレール上を走行するための左右前輪3,3を装着する。そして、機体フレーム1に駆動スプロケット7を装着したモータ6を取り付け、前記従動スプロケット5と駆動スプロケット7との間にチェーン8を無端状に掛け回し、モータ6の作動を切り替える左右スイッチ58,58を機体フレーム1の両端前部取り付けると共に、左右スイッチ58,58に左右接触センサ57,57を栽培棚Tの支柱に接触する位置に設けることによって、走行装置Aが構成される。
【0026】
上記構成によれば、機体の走行動力をモータ6から得ることによって、排気ガスを出すことなく栽培棚T間を走行していちごsの収穫作業を行うことができるので、ビニールハウス内の空気を汚すことを防止でき、いちごsの品質を向上させることができると共に、作業者が一酸化炭素中毒などを起こすことが防止されるので、作業者の安全性が向上する。
【0027】
また、左右接触センサ57,57を機体前部で且つ栽培棚Tの支柱に接触する位置に設けていることによって、機体前部が収穫作業中の栽培棚Tの終端の支柱に接触すると次の栽培棚Tまで走行し、次の栽培棚Tの始端の支柱に接触すると走行を停止して収穫作業を開始するようにできるので、収穫作業の開始位置と終了位置が正確になりいちごsの収穫が適正に行われ、作業能率が向上すると共にいちごsの収穫漏れが減少するため、いちご収穫ロボットによる収穫作業後に収穫漏れいちごsを手作業で収穫する作業が省略されるので、作業者の労力が軽減される。
【0028】
なお、左右接触センサ57,57の代わりに近接センサ等を用いてもよい。
次に、収穫装置Bについて説明する。
前記機体フレーム1上の前後部に前後収穫部フレーム9F,9Rを取り付け、該前後収穫部フレーム9F,9Rの上部前後間に上部連結フレーム10aを取り付けると共に、該上連結フレーム10aよりも下方に下連結フレーム10bを取り付ける。また、前記上連結フレーム10aと下連結フレーム10bとの間で且つ上下連結フレーム10a,10bの前後方向略中央部に支持フレーム11を取り付ける。そして、前記上下連結フレーム10a,10b間で且つ支持フレーム11と左右前後収穫部フレーム9F,9Rとの間に夫々螺子溝を刻んだメインシャフト12を回転自在に取り付けると共に、該メインシャフト12の左右に螺子溝を刻んだ左右サブシャフト13,13を固定して取り付ける。さらに、該メインシャフト12と左右サブシャフト13,13とにブッシュ14,14,14を介して上下動フレーム15を取り付ける。さらに、前記上連結フレーム10aに駆動軸に駆動プーリ17を装着した正逆転自在な上下動モータ16を取り付け、メインシャフト12の上端部に従動プーリ18とロータリエンコーダ20を取り付けると共に、該駆動プーリ17と従動プーリ18との間にベルト19を無端状に巻き掛けて、上下動装置21を構成する。
【0029】
また、前記上下動フレーム15上に左右動フレーム23を装着し、該左右動フレーム23に左右動ラック22を取り付けると共に、左右動フレーム23よりも機体外側に左右スライドレール24を取り付ける。そして、該スライドレール24上に、底部に転輪等のスライド部材25を取り付けた連結フレーム26を配置し、該連結フレーム26上に正逆転自在な左右動モータ27を取り付け、該左右動モータ27の駆動軸に左右動ピニオンギア28を装着すると共に、該左右動ピニオンギア28を左右動ラック22に噛み合わせて、左右動装置29を構成する。
【0030】
さらに、前記連結フレーム26にプレート30を取り付け、該プレート30に駆動軸から前後動ピニオンギア31を取り付けた正逆転自在な前後動モータ32を取り付ける。また、前記連結フレーム26に前後動ラック33を前後動ピニオンギア31に噛み合わせると共に、該前後動ラック33に前後動フレーム34を取り付けて、前後動装置35を構成する。
【0031】
そして、該前後動フレーム34に穴部を開けた連結プレート36を取り付け、該連結プレート36の穴部の下部に超音波センサ37を取り付ける。また、前記連結プレート36の機体外側端部にマニピュレータフレーム38を蝶番39を介して機体内側方向に移動自在に取り付け、該マニピュレータフレーム38の下端部に超音波センサ37を挟むように一対の突起40,40を取り付ける。さらに、マニピュレータフレーム38の上部にいちごsの果柄を把持する把持ハンド41と、該把持ハンド41を受ける弾性体等で構成するストッパ42を取り付けると共に、該把持ハンド41の上部にいちごsの果柄を切断する果柄カッタ43を取り付ける。また、前記把持ハンド41と果柄カッタ43とを移動させる正逆転自在な果実収穫モータ44の駆動軸に把持ハンド41と果柄カッタ43とを移動自在に装着すると共に、連結プレート36とマニュピレータフレーム38との間にスプリング46を取り付けてマニピュレータ45を構成する。
【0032】
さらに、前記果実収穫モータ44の左右一側に、センサケース48の内部に超音波センサ37で検出されたいちごsの着色の度合いを調べる第1〜第3カラーセンサ47a,47b,47cを縦方向に並べて構成した、いちごsが収穫可能かどうかを識別する収穫識別センサ49を構成する。
【0033】
なお、カラーセンサ47a・・・の数を増やせばより細かくいちごsの着色を識別することができると共に、横方向に並べるといちごsが幅広であってもいちごs全体を調べることができるので、いちごsの品種や作業条件によってカラーセンサ47a・・・の数や並べ方を変更するとより高精度且つ高能率の収穫作業を行うことができる。
【0034】
また、前記上下動フレーム15の下部に接続プレート50を取り付け、該接続プレート50に先端部を下方に向けて屈曲させると共に前記超音波センサ37が通過でき、突起40,40は屈曲部分に接触する幅の複数の切欠52を切り欠いた回収プレート51を取り付ける。また、前記蝶番39にONになると果実収穫モータ44を作動させて把持ハンド41を移動させていちごsの果柄の把持状態を解除するボタン式のスイッチ53を取り付けることによって、収穫装置Bが構成される。
【0035】
なお、本実施例ではスイッチ53はボタン式としているが、光量が設定値以下になると果実収穫モータ44を回転させる信号を発する光センサや、マニピュレータフレーム38の傾斜が設定角度以下になると果実収穫モータ44を回転させる信号を発する傾斜センサや、把持ハンド41とストッパ42とがいちごsの果柄を把持してから一定時間後に果実収穫モータ44を回転させる信号を発するタイマーなどで構成してもよい。
【0036】
上記構成によれば、収穫装置Bは上下動装置21と左右動装置29と前後動装置35とによって前後左右上下方向に自在に移動することができるので、超音波センサ37と収穫識別センサ49とマニピュレータ45とは独立した移動機構を備える必要が無いので、狭い作業スペースでも効率よく作業が行えると共に、機体の構成が簡潔になるので、故障が少なく効率的に作業を行うことができる。
【0037】
そして、超音波センサ37はいちごsの茎葉等の遮蔽物の少ない下方からいちごsの有無を検出するため、いちごsが確実に検出されるのでいちごsの検出漏れを防止することができると共に、正確な収穫作業を行うことができる。
【0038】
また、超音波センサ37がいちごsの有無を検出すると同時に超音波センサ37からいちごsまでの距離を検出できることによって、収穫識別センサ49やマニピュレータ45をいちごsを適正に識別・収穫できる位置に移動させることができるので、収穫識別センサ49やマニピュレータ45が移動時にいちごsを傷つけることが防止されると共に、いちごsの収穫可否の識別やいちごsの収穫が適正に行われるため、果実の品質が向上する。
【0039】
さらに、ストッパ42で把持ハンド41の動作だけを規制することによって、いちごsの果柄を把持すると同時に切断することができるので、少ない動作でいちごsを収穫することができ、作業能率が向上する。
【0040】
そして、把持ハンド41と果柄カッタ43とを同じ果実収穫モータ44で移動させることにより、機体を構成する部品の数を減らすことができるので、機体の構成が簡潔になり、故障が少なく効率的に作業を行うことができると共に、コストダウンを図ることができる。
【0041】
また、収穫識別センサ49が三つのカラーセンサ47a,47b,47cを縦方向に並べて構成していることによって、図 に示すように、カラーセンサ47aまたは47bのどちらかが、あるいは両方が赤色を検出しなければ未熟いちごと判断して収穫しないようにすることができ、カラーセンサ47aと47bとが赤色を検出し、カラーセンサ47cが赤色を検出しなかった場合は小粒の成熟いちごと判断して収穫することができると共に、カラーセンサ47cが赤色を検出しても、赤色の割合が設定値以下の場合は未熟いちごと判断して収穫しないようにすることができるので、収穫対象のいちごsが収穫可能かどうかが正確に識別され、識別ミスが防止されるので、正確な収穫作業を行うことができる。
【0042】
さらに、収穫識別センサ49をマニピュレータ45の上部に設けたことによって、収穫識別センサ49をいちごsの識別作業を行う位置に移動させるとマニピュレータ45もいちごsを収穫する位置に移動させることができるので、少ない動作でいちごsを収穫することができ、作業能率が向上する。
【0043】
そして、回収プレート51に超音波センサ37は通過でき、一対の突起40,40は回収プレート51の屈曲部分に接触する幅の切欠52を複数切り欠いていることによって、把持ハンド41とストッパ42とでいちごsの果柄を把持した収穫装置Bを前方へ移動させると超音波センサ37は切欠52に入ると共に、一対の突起40,40は回収プレート51の屈曲部に接触すると連結プレート36を機体外側方に押して蝶番39を介して連結したマニピュレータフレーム38を機体内側方向に移動させるので、把持ハンド41とストッパ42とに把持されたいちごsを後述する回収部Cに近づけてから落下させるため、いちごsが落下する距離を短くすることができるので、果実を傷つけることなく回収部Cに投入することができ、果実の品質が向上する。
【0044】
また、蝶番39にマニピュレータフレーム38が機体内側方向に一定距離以上移動するとONになるスイッチ53を取り付けたことによって、マニピュレータフレーム38が機体内側方向に移動すると自動的にスイッチがONになって果実収穫モータ44を作動させ、把持ハンド41を移動させていちごsの果柄の把持状態を解除することができるので、いちごsの回収部Cへの投入が自動的に行われ、作業能率が向上する。
【0045】
さらに、接続プレート36とマニピュレータフレーム38との間にスプリング46を取り付けたことによって、収穫装置Bが後退して一対の突起40,40が回収フレーム51の屈曲部分から離れたときに、マニュピレータフレーム38はスプリング46によって自動的に起き上がることができるので、収穫作業が全自動化され、作業能率が向上する。
【0046】
次に、回収部Cについて説明する。
前記上下動フレーム15上で且つ左右動フレーム23よりも機体内側に切欠部を設け、該切欠部に着脱自在なトレイ55を載置して、回収部Cを構成する。
【0047】
上記構成によれば、トレイ55が着脱自在であることによって、トレイ55を外して回収されたいちごsをまとめて移動させることができるので、いちごs収穫ロボットから一つ一ついちごsを取り出す作業が省略されるので、作業能率が向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
【0048】
また、収穫するいちごsの種類や作業条件に合わせて形状や材質の異なるトレイ55を載置することができるので、作業能率が向上する。
次に、本実施例のいちご収穫ロボットの作業手順について、フローチャート等を用いながら説明する。
【0049】
図7〜には収穫装置Bを用いていちごsを収穫する際のフローチャートを示し、図8〜図10にはブロック図を示す。
まず、収穫装置BをX軸方向に移動させていちごsの下方に移動させ、超音波センサ37を作動させていちごsの有無を走査する。また、超音波センサ37の捜査範囲内にいちごsがあれば超音波センサ37からいちごsまでの距離を算出し、この距離が制御装置(CPU)に入力されている設定値(超音波センサ37から収穫識別センサ49までの距離)よりも大きければ上下動モータ16を作動させて収穫装置Bを設定値と等しくなるまでZ軸方向に上昇させ、設定値よりも小さければ収穫装置Bを設定値と等しくなるまでZ軸方向に下降させる。超音波センサ37の捜査範囲内にいちごsが無ければ、左右動モータ27を作動させ、収穫装置BをX軸方向へ移動させ、再び超音波センサ37によるいちごsの有無の判定を行う。
【0050】
そして、収穫識別センサ49の第1〜第3カラーセンサ47a,47b,47cによって収穫対象のいちごsの赤色を検出させる。この第1〜第3カラーセンサ47a,47b,47cは夫々いちごsの赤色の割合(着色率)を識別し、着色率が制御装置56の設定値以上であれば、検出数を1として判定するものである。
【0051】
第1〜第3カラーセンサ47a,47b,47cの検出数が1以下である場合、対象のいちごsは未熟と判断して収穫装置Bを移動させる。また、検出数が一番上の第3カラーセンサ47cと第1カラーセンサ47a、もしくは第2カラーセンサ47bのどちらかからなる2であり、且つ第3カラーセンサ47cの着色率が0でなく設定値以下の場合も未熟と判断して収穫装置Bを移動させる。
【0052】
上記以外の条件の場合、収穫対象のいちごsは熟していると判断し、果実収穫モータ44を作動させ、マニピュレータ45の把持ハンド41と果柄カッタ43とを移動させて収穫対象のいちごsの果柄を把持・切断して収穫する。
【0053】
表1はイメージであり、記載している結果は一例である。
【0054】
【表1】

(収穫可と判断する着色率は80%以上に設定)
【0055】
そして、マニピュレータ45がいちごsの果柄を把持すると、前後動モータ32を作動させてマニピュレータ45の一対の突起40,40が回収プレート51の屈曲部に接触するまで前進させ、マニピュレータ45を回収部Cのトレイ55へと移動させる。このマニピュレータ45の移動によって蝶番39に設けたスイッチ53がONになると、制御装置56は果実収穫モータ44を作動させ、いちごsの果柄を把持している把持ハンド41を移動させて把持状態を解除するため、把持されていたいちごsがトレイ55に投入される。
【0056】
いちごsの収穫を終えた収穫装置は前後動モータ32を作動させて後退させ、マニピュレータ45を回収部Cから離間させて通常の作業位置に復帰させる。このとき、いちご収穫ロボットは設定されている作業ストロークに到達しているかどうかを判定し、到達していれば収穫作業を終了する。到達していない場合、次の収穫対象のいちごsの有無を判定し、上記動作を繰り返す。
【0057】
以下、本件いちご収穫ロボットの別実施例を説明する。
図11で示すように、一対の収穫装置B1,B2の左右動ラック22及びスライドレール24を連結させると共に、作業開始位置を夫々いちご収穫ロボットの進行方向に対して前後端から行うように配置する構成としてもよい。
【0058】
このとき、図12のフローチャートに示すように、一対の収穫装置B1,B2の収穫作業手順は通常の実施例と同じであるが、前端側に設けた収穫装置B1はX座標をプラスの方向に、後端側に設けた収穫装置B2はX座標をマイナスの方向に移動するように設定する。また、収穫装置B1,B2が走査中に隣接した場合、収穫対象のいちごsは収穫作業範囲内にないと判断できるので次の栽培棚Tまでいちご収穫ロボットを移動させると共に、どちらか一方が収穫作業を行っている場合は、その収穫作業が終了した時点で収穫対象のいちごsは収穫作業範囲内に無いと判断できるので次の栽培棚Tまでいちご収穫ロボットを移動させる。
【0059】
なお、図13には一対の収穫装置B1,B2のブロック図を示す。
上記構成によれば、一対の収穫装置B1,B2を互いに逆方向から移動させて収穫作業を行うことによって、いちごsの植生状態等の条件により、一方の収穫装置だけが作業を行い、もう一方の収穫装置が何もしないという状況を回避することができるので、作業能率が向上する。
【0060】
図14のフローチャート及びブロック図15で示すように、いちご収穫ロボットに収穫作業区域の温度を計測し、計測した温度と制御装置56に設定した設定値(いちごsが平均的な速度で成熟する際の気温等)に応じて第1〜第3カラーセンサ47a,47b,47cが収穫可能と判断する着色率を変更する信号を発する温度センサ59を設けてもよい。
【0061】
いちご等の果物は、一般的に気温が高いと成熟が早くなり、気温が低いと成熟が停滞するものである。このため、気温が高いときにいちご収穫ロボットで収穫作業を行うと、着色率が僅かに足りないため収穫を見送ったいちごsは次の収穫作業までに完熟を超えてしまい、枯れたり腐ったりしてしまうおそれがある。逆に、気温が低いときに収穫作業を行うと、収穫可能と判断されたいちごsは全て収穫されるが、次の作業で収穫すれば完熟に近い状態で収穫できるいちごsまで収穫してしまう可能性がある。
【0062】
しかしながら、上記構成のように温度センサ59を設けたいちご収穫ロボットが、収穫作業を行う収穫作業区域の温度に応じて第1〜第3カラーセンサ47a,47b,47cが収穫可能と判断する着色率を変更できることによって、作業区域の気温が設定値よりも高ければ収穫可能と判断する着色率を通常よりも低くして、放置すると次の収穫作業までに枯れたり腐ったりするいちごsを収穫することができると共に、作業区域の気温が設定値よりも低ければ収穫可能と判断する着色率を通常よりも高くして、次の収穫作業で収穫すれば完熟に近い状態で収穫できるいちごsを収穫しないようにすることができるので、いちごsの商品価値が高い状態で収穫することができる。
【0063】
表2、表3はイメージであり、記載している結果は一例である。
【0064】
【表2】

(気温の上昇に伴い、収穫可と判断する着色率を75%以上に変更)
【0065】
【表3】

(気温の低下に伴い、収穫可と判断する着色率を85%以上に変更)
また、図16で示すように、いちごsを回収するトレイ55の下部に低温(10〜15℃程度)の保冷剤60を取り付ける保冷剤ケース61を取り付ける構成としても良い。
【0066】
通常のトレイ55では時間と共に収穫したいちごsに気温の影響が出てしまい、特に最初の方に収穫したいちごsについては萎びたり煮えてしまったりして鮮度が低下するおそれがあるが、上記構成とすることによって、収穫したいちごsを気温の影響を受けないようにすることができるので、いちごsの鮮度を保たれ、いちごsの品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】果実収穫ロボットの側面図
【図2】果実収穫ロボットの正面図
【図3】果実収穫ロボットの平面図
【図4】果実収穫ロボットの側面図の要部拡大図
【図5】(a)果実収穫前の把持ハンド・切断アームの平面図 (b)果実の果柄を把持中の把持ハンド・切断アームの平面図 (c)果実の果柄を切断後の把持ハンド・切断アームの平面図
【図6】マニピュレータの側面図
【図7】果実収穫ロボットの収穫作業を示すフローチャート
【図8】果実収穫ロボットの制御ブロック図
【図9】果実収穫ロボットの制御ブロック図
【図10】果実収穫ロボットの制御ブロック図
【図11】2基の収穫装置で収穫作業を行う果実収穫ロボットの側面図
【図12】2基の収穫装置で収穫作業を行う果実収穫ロボットの収穫作業を示すフローチャート
【図13】2基の収穫装置で収穫作業を行う果実収穫ロボットのブロック図
【図14】温度センサを設けた果実収穫ロボットの収穫作業を示すフローチャート
【図15】温度センサを設けた果実収穫ロボットのブロック図
【図16】回収部の別実施例を示す正面断面図
【符号の説明】
【0068】
37 超音波センサ(検出装置)
41 把持ハンド(把持部材)
42 ストッパ(規制部材)
43 果柄カッタ(切断部材)
44 果実収穫モータ(駆動装置)
45 マニピュレータ
47a 第1カラーセンサ(カラーセンサ)
47b 第2カラーセンサ(カラーセンサ)
47c 第3カラーセンサ(カラーセンサ)
49 収穫識別センサ(識別装置)
53 スイッチ(制御装置)
B 収穫装置
C 回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実の有無及び果実までの距離を検出する検出装置(37)と、収穫する果実が収穫可能かどうかを識別する識別装置(49)と、該識別装置(49)の識別結果にもとづいて果実を収穫するマニピュレータ(45)とからなる収穫装置(B)を前後左右上下方向に移動自在に設けると共に、該収穫装置(B)にて収穫した果実を回収する回収部(C)を設けたことを特徴とする果実収穫ロボット。
【請求項2】
前記検出装置(37)を収穫装置(B)の下部に設け、マニピュレータ(45)を果実の果柄を把持する移動自在な把持部材(41)と、該把持部材(41)の移動を規制する規制部材(42)と、把持部材(41)の上部に果実の果柄を切断する移動自在な切断部材(43)と、把持部材(41)と切断部材(43)とを移動させる駆動装置(44)とから構成し、該マニピュレータ(45)の上部に識別装置(49)を設けたことを特徴とする請求項1記載の果実収穫ロボット。
【請求項3】
前記マニピュレータ(45)で収穫した果実を把持したまま収穫装置(B)を回収部(C)へ移動させ、マニピュレータ(45)で把持している果実の把持を解除して回収部(C)に投入させる制御装置(53)を設けたことを特徴とする請求項1及び2記載の果実収穫ロボット。
【請求項4】
前記識別装置(49)を複数のカラーセンサ(47a,47b,47c・・・)で構成したことを特徴とする請求項1記載の果実収穫ロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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