説明

枠付きパネル

【課題】接合に伴う撓みや歪みが生じ難く、かつ、軽量化を図ることが可能なアルミニウム合金製の枠付きパネルを提供すること。
【解決手段】アルミニウム合金製の面材1と、アルミニウム合金製のフレーム材2とを備える枠付きパネルP1であって、フレーム材2は、面材1の縁部の裏面に重ね合わされる平坦面2aを有し、当該平坦面2aにおいて面材1にろう付されている、ことを特徴とする。フレーム材2は、面材1の外側に配置されるフレーム本体21と、フレーム本体21から張り出す張出部22とを有し、平坦面2aは、張出部22の表面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製の枠付きパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
面板にフレーム材を溶接してなるアルミニウム合金製の枠付きパネルは、例えば、搬送用のパレット(特許文献1)、表示装置用のシャーシ(特許文献2)、食品加工機械用のトレー(特許文献3)、自動車用のバッテリートレー、コンクリート成形用の型枠など、様々な分野において利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−347564号公報
【特許文献2】特開2002−6755号公報
【特許文献3】特開平9−206847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
面材にフレーム材を溶接すると、溶接箇所に局所的に発生する溶接ひずみの影響により、面材に撓みや歪みが生じる虞がある。また、溶接ひずみの影響は、面材の薄肉化を図るにつれて顕著に現れるようになるため、面材の薄肉化(軽量化)を断念せざるを得ないケースもある。
【0005】
このような観点から、本発明は、接合に伴う撓みや歪みが生じ難く、かつ、軽量化を図ることが可能なアルミニウム合金製の枠付きパネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る枠付きパネルは、アルミニウム合金製の面材と、アルミニウム合金製のフレーム材とを備える枠付きパネルであって、前記フレーム材は、前記面材の縁部の表面または裏面に重ね合わされる平坦面を有し、当該平坦面において前記面材にろう付されている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、面材およびフレーム材を溶融させることなく両者を接合することができるので、面材の板厚やフレーム材の肉厚を小さくして軽量化を図った場合であっても、接合に伴う撓みや歪みが生じ難くなる。なお、本発明では、面材とフレーム材とが「面」で接合されることになるので、接合強度を高めたい場合は、平坦面の面積を増やし、ろう付面積を増大させればよい。
【0008】
ろう材の種類に制限はないが、例えば、銅を27〜37質量%、珪素を5〜10質量%含み、残部がアルミニウム及び不可避的不純物からなる低温ろう付用の粉末状ろう材を使用するとよい。なお、粉末状ろう材は、前記組成の合金を溶融した後に、真空または不活性ガス中で噴霧し急冷することによって得ることができる。粉末状ろう材は、これに純水を加えて均一に混濁し、スラリー状にしたうえでろう付箇所に塗着すればよい。
【0009】
フレーム材の構成に制限はないが、例えば、前記面材の外側に配置されるフレーム本体と、前記フレーム本体から張り出す張出部とを有するフレーム材を使用してもよい。この場合、前記平坦面は、前記張出部の表面に形成し、前記面材の裏面に重ね合わせるとよい。このようにすると、面材を裏側から支持し得る構成となるので、面材の表面に物品が搭載されるトレーとして使用する場合に好適といえる。
【0010】
また、フレーム材として、前記面材の縁部に沿って配置されるフレーム本体と、前記フレーム本体から張り出す張出部とを有するものを使用してもよい。この場合、前記平坦面は、前記フレーム本体および前記張出部の裏面に形成し、前記面材の表面に重ね合わせるとよい。このようにすると、ろう付面積を増大させることが可能となるので、接合強度を高めたい場合に好適である。
【0011】
また、前記フレーム材に、前記面材の縁部を挟んで対向する一対の対向面を設け、一対の前記対向面のそれぞれに前記平坦面を形成してもよい。このようにすると、面材の縁部が一対の対向面に挟持されるようになるので、面材の表裏方向に荷重が作用するような場合に好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る枠付きパネルによれば、接合に伴う撓みや歪みが生じ難くなるとともに、軽量化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明の実施形態に係る枠付きパネルの斜視図、(b)はフレーム材のみを示す一部破断斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る枠付きパネルの断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る枠付きパネルの第一変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る枠付きパネルの第二変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る枠付きパネルの第三変形例を示す断面図である。
【図6】(a)は本発明の実施形態に係る枠付きパネルの第四変形例を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図7】本発明の実施形態に係る枠付きパネルの第五変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る枠付きパネルP1は、物品搭載用のトレー(例えば、厨房用トレー、搬送用トレー、食品加工機械用トレー、自動車用バッテリートレーなど)として使用されるものであり、図1の(a)に示すように、一面(上面)が開口した浅底の箱型を呈している。すなわち、枠付きパネルP1は、トレーの底となる面材1と、トレーの外周壁となる四つのフレーム材2,2,…とを備えて構成されている。
【0015】
面材1は、アルミニウム合金製の圧延板を切断して得たものであり、平面視矩形状を呈している。アルミニウム合金の種類に制限はなく、例えば、JIS規格の1000系合金、3000系合金、6000系合金などを使用することができる。
【0016】
フレーム材2は、アルミニウム合金製の中空押出形材(ホロー形材)を切断して得たものであり、図1の(b)に示すように、大小二つの中空部を備えている。四つのフレーム材2,2,…は、矩形枠状に組み合わされていて、一のフレーム材2と、これに突き合わされる他のフレーム材2とは、溶接されている。なお、フレーム材2,2,…は、同一断面形状の中空押出形材からなる。アルミニウム合金の種類に制限はなく、例えば、JIS規格の1000系合金、3000系合金、6000系合金などを使用することができる。
【0017】
フレーム材2は、面材1の縁部の裏面に重ね合わされる平坦面2a(図1の(b)においては、平坦面2aにハッチングを付している。)を有し、図2に示すように、平坦面2aにおいて面材1にろう付される。
【0018】
フレーム材2は、面材1の外側に配置されるフレーム本体21と、面材1の縁部を裏側(下側)から支持する張出部22とを有する。
【0019】
フレーム本体21の表面(上面)は、面材1の表面に搭載される物品(図示略)の脱落あるいは転落を防止することができるよう、面材1の表面よりも高いところに位置している。フレーム本体21は中空であり、フレーム本体21の断面の輪郭は縦長矩形状を呈している。なお、フレーム本体21の断面形状に制限はなく、適宜変更しても差し支えない。フレーム本体21の内部に仕切壁やリブ等を設け、フレーム本体21の剛性を向上させてもよい。
【0020】
張出部22は、フレーム本体21から張り出した部位(フレーム本体21よりも背が低い部位)であり、フレーム本体21の内側面(面材1側の側面)から、対向する他のフレーム材2に向かって延出している。張出部22は中空であり、張出部22の断面の輪郭はコ字状を呈している。張出部22の裏面(下面)は、フレーム本体21の裏面(下面)と面一になっている。なお、図示は省略するが、張出部22の高さ位置を上方にずらし、フレーム本体21の裏面と張出部22の裏面とに段差を設けてもよい。
【0021】
平坦面2aは、張出部22の表面(上面)に形成されている。平坦面2aには、面材1の縁部が載置される。
【0022】
フレーム材2は、平坦面2aにおいて面材1にろう付されている。ろう材の成分等に制限はないが、本実施形態では、銅(Cu)を27〜37質量%、珪素(Si)を5〜10質量%含み、残部がアルミニウム(Al)及び不可避的不純物からなる低融点のろう材を使用するとよい。このろう材は、三元共晶付近の組成を有しているため、二元共晶のろう材よりも、融点が低い。
【0023】
ろう材の形態に制限はないが、前記の組成の合金を溶融した後に、真空または不活性ガス中で噴霧し急冷することによって得られた粉末状のろう材を使用するとよい。このような製法により得られたろう材は、10〜100μmの平均粒径を有する微細な球形を呈しており、酸化物などの不純物をほとんど含んでいない。ここで、真空とは、真空度が200torr以下の雰囲気であり、また、不活性ガスとは、ろう材を酸化させることのないガスであって、例えば、アルゴン系の希ガス、水素等の還元性ガス、窒素等の非酸化性ガスなどである。
【0024】
粉末状のろう材は、これに純水を加えて均一に混濁し、スラリー状にしたうえで、面材1の縁部および平坦面2aの少なくとも一方に塗着する。
【0025】
枠付きパネルP1を製作する場合には、まず、四つのフレーム材2,2,…を互いに溶接して枠を形成し、その後、平坦面2a,2a,…にスラリー状のろう材を塗着する。面材1の縁部を平坦面2a,2a,…に載置したならば、面材1を治具等で押さえつつ、仮組みされた枠付きパネルP1を加熱炉の中に入れて加熱する。アルミニウム合金の融点よりも低い温度で且つろう材の融点よりも高い温度まで加熱し、その後冷却すると、面材1とフレーム材2,2,…が面接合され、枠付きパネルP1が得られる。
【0026】
以上説明した枠付きパネルP1によれば、面材1およびフレーム材2を溶融させることなく両者を接合することができるので、面材1の板厚やフレーム材2の肉厚を小さくして軽量化を図った場合であっても、接合に伴う撓みや歪みが生じ難くなる。
【0027】
なお、本実施形態では、面材1にフレーム材2のみをろう付した場合を例示したが、面材1またはフレーム材2の適所に補強部材やブラケットなどを設け、これらをろう付してもよい。
【0028】
(第一変形例)
本実施形態では、中空の張出部22を例示したが、図3に示す枠付きパネルP2のように、板状(フランジ状)の張出部22’としてもよい。なお、図示は省略するが、張出部22を省略しても差し支えない。
【0029】
(第二変形例、第三変形例)
面材1とフレーム材2の接合強度を高めたい場合には、張出部22の張出量を増やして平坦面2aの面積を増大させるか、図4に示す枠付きパネルP3あるいは図5に示す枠付きパネルP4のように、フレーム本体21を面材1の縁部に沿って配置し、平坦面2b,2cを面材1の表面に重ね合わせればよい。
【0030】
なお、枠付きパネルP3,P4においては、フレーム本体21の裏面および張出部22の裏面が平坦面2b,2cであり、フレーム材2は、平坦面2b,2cにおいて面材1にろう付されている。
【0031】
(第四変形例)
本実施形態では、張出部22を面材1にろう付する場合を例示したが、図6に示す枠付きパネルP5のように、面材1の縁部を挟んで対向する一対の対向面のそれぞれに平坦面3a(図6の(b)参照)を設け、平坦面3a,3aにおいてろう付してもよい。すなわち、フレーム材3に断面コ字状の凹溝を形成し、凹溝に面材1の縁部を挿入した状態で、面材1とフレーム材3とをろう付してもよい。このようにすると、面材1の縁部が一対の対向面(平坦面3a,3a)に挟持されるようになるので、面材1の表裏方向に荷重が作用するような場合に好適である。
【0032】
なお、枠付きパネルP5を製作する場合には、各フレーム材3の平坦面3a,3aあるいは面材1の縁部の表裏にろう材を塗着したうえで、面材1の縁部を各フレーム材3の凹溝に挿入し、その後、仮組みされた枠付きパネルP5を加熱炉の中に入れて加熱すればよい。フレーム材3同士は、必要に応じて、面材1とフレーム材3とをろう付する前、あるいは、ろう付した後に溶接する。
【0033】
(第五変形例)
本実施形態では、四つのフレーム材2,2,…を矩形枠状に組み合わせた場合を例示したが、図7に示す枠付きパネルP6のように、直線用のフレーム材4,4,…とコーナー用のフレーム材5,5,…とを組み合わせてもよい。すなわち、屈曲部を有するフレーム材5を面材1の四隅に配置するとともに、面材1の四辺に沿って直線用のフレーム材4を配置してもよい。コーナー用のフレーム材5は、曲げ加工を施した押出形材にて形成してもよいし、金型鋳造やダイカストなどにて形成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
P1〜P5 枠付きパネル
1 面材
2,3,4,5 フレーム材
21 フレーム本体
22 張出部
2a,2b,2c,3a 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製の面材と、
アルミニウム合金製のフレーム材とを備える枠付きパネルであって、
前記フレーム材は、前記面材の縁部の表面または裏面に重ね合わされる平坦面を有し、当該平坦面において前記面材にろう付されている、ことを特徴とする枠付きパネル。
【請求項2】
前記フレーム材は、前記面材の外側に配置されるフレーム本体と、前記フレーム本体から張り出す張出部とを有し、
前記平坦面は、前記張出部の表面に形成されており、前記面材の裏面に重ね合わされる、ことを特徴とする請求項1に記載の枠付きパネル。
【請求項3】
前記フレーム材は、前記面材の縁部に沿って配置されるフレーム本体と、前記フレーム本体から張り出す張出部とを有し、
前記平坦面は、前記フレーム本体および前記張出部の裏面に形成されており、前記面材の表面に重ね合わされる、ことを特徴とする請求項1に記載の枠付きパネル。
【請求項4】
前記フレーム材は、前記面材の縁部を挟んで対向する一対の対向面を有し、
一対の前記対向面のそれぞれに前記平坦面が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の枠付きパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−20301(P2012−20301A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158525(P2010−158525)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)