説明

枠構造体の製造方法および枠構造体

【課題】枠の内側と外側との間で気密性および水密性を高めることができる枠構造体の製造方法および枠構造体を提供する。
【解決手段】外側枠部材10の内周面10aと内側枠部材11の外周面11aを、面削加工して平坦にする面削工程と、脱脂して油脂を除去する脱脂工程と、内側枠部材11を外側枠部材10の内側に嵌め合わせて、内側枠部材11の外周面11aと外側枠部材10の内周面10aとを突き合わせる嵌合工程と、各枠部材10,11の表面12a側から外側枠部材10と内側枠部材11の突合部17に沿って接合用回転ツール14を移動させて摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、各枠部材10,11の裏面12b側から突合部17に沿って接合用回転ツール14を移動させて摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠構造体の製造方法および枠構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合とは、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで金属部材同士を固相接合させるものである。
【0003】
この摩擦攪拌接合を用いて、金属部材同士を接合する発明が数多く提案されている。例えば、特許文献1または特許文献2には、複数の金属プレート部材を複数重ね合わせて、金属プレート部材の表面側から回転ツールを押し込んで移動させることで、金属プレート部材の一部を塑性流動化して、金属プレート部材同士を一体化して接合する技術が示されている。
【特許文献1】特開2007−30043号公報(図1)
【特許文献2】特開平11−28584号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本出願人は、長尺の直方体の金属部材を互いに接合して、額縁状の枠部材を形成する技術を開発中である。具体的には、一の金属部材の端面を隣接する金属部材の側面に接合して、その突合部を摩擦攪拌して接合することで、4本の金属部材を矩形の枠状に一体化する。この枠部材は、化学蒸着(CVD=Chemical Vapor Deposition)装置のフレーム等に用いられる部材であって、枠の内側と外側との間で所定の気密性および水密性が要求される。しかしながら、前記した一般的な摩擦攪拌接合方法では、フレームとして必要な気密性および水密性を確保するのが困難であった。
【0005】
そこで、本出願人は、摩擦攪拌接合を用いて所望の厚さと気密性および水密性を確保できる金属部材同士の接合方法を提案している(特開2008−87036)。この接合方法は、所定の厚さを有する金属部材同士を接合する方法であって、金属部材同士の突合部に対して、金属部材の表面側から摩擦攪拌を行う第一の本接合工程と、裏面側から摩擦攪拌を行う第二の本接合工程とを備えており、第二の本接合工程において、第一の本接合工程で形成された塑性化領域に回転ツールの攪拌ピンを入り込ませつつ摩擦攪拌を行うようになっている。このような接合方法によれば、表面側から形成された塑性化領域と裏面側から形成された塑性化領域とが一体化するので、接合部における気密性および水密性を高めることができる。
【0006】
しかしながら、近年では、気密性および水密性がより一層高いフレームが要求されており、さらなる改良が求められていた。
【0007】
このような観点から、本発明は、枠の内側と外側との間で気密性および水密性を高めることができる枠構造体の製造方法および枠構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するための請求項1に係る発明は、金属製の外側枠部材の内側に金属製の内側枠部材を嵌め合わせて接合して枠構造体を形成する枠構造体の製造方法であって、前記外側枠部材の内周面と前記内側枠部材の外周面を、面削加工して平坦にする面削工程と、前記外側枠部材の内周面と前記内側枠部材の外周面を、脱脂して油脂を除去する脱脂工程と、前記内側枠部材を前記外側枠部材の内側に嵌め合わせて、前記内側枠部材の前記外周面と前記外側枠部材の前記内周面とを突き合わせる嵌合工程と、前記枠部材の表面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、前記枠部材の裏面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を備えたことを特徴とする枠構造体の製造方法である。
【0009】
このような方法によれば、内側枠部材を外側枠部材の内側に嵌め合わせて、表面側および裏面側の両方から摩擦攪拌を行っているので、突合部の気密性および水密性を確保することができ、さらに、枠構造体が、外側枠部材と内側枠部材との二重構造になるので、気密性および水密性を大幅に高めることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記嵌合工程の前に、前記外側枠部材の内周面または前記内側枠部材の外周面に凹溝を形成する溝形成工程と、前記凹溝内に熱媒体管を布設する熱媒体管布設工程と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の枠構造体の製造方法である。
【0011】
このような方法によれば、外側枠部材と内側枠部材との間に熱媒体管を設けることができ、効率的に温度管理を行うことができる。また、熱媒体管は、外側枠部材と内側枠部材との突合部に設けられるので、枠構造体の断面方向中間部にバランスよく配置され、枠構造体全体に亘って満遍なく熱交換を行うことができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記熱媒体管布設工程後に、前記凹溝内の前記熱媒体管の周囲の空隙に熱伝導性物質を充填する充填工程を、さらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の枠構造体の製造方法である。
【0013】
このような方法によれば、熱媒体管の周辺に形成される空洞の発生を抑制することができ、熱伝導性物質を介して熱媒体管と枠構造体との熱伝導性を高めることができ、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記熱伝導性物質が、金属粉末、金属粉末ペースト又は金属シートであることを特徴とする請求項3に記載の枠構造体の製造方法である。
【0015】
このような方法によれば、熱媒体管と枠構造体との熱伝導性をさらに高めることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記嵌合工程において、前記内側枠部材の内周面側に設けられたタブ部材に穴を形成してこの穴に吊り用治具を装着し、前記内側枠部材を吊り手段で吊りながら、前記外側枠部材の内側に吊り下ろして嵌め合わせることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
【0017】
このような方法によれば、面削加工および脱脂加工が施された内側枠部材の外周面に触れることなく、内側枠部材を容易に吊り下ろすことができ、外側枠部材と内側枠部材の接合面を良好な状態のままで突き合わせることができる。また、後工程で除去されるタブ部材に穴を形成しているので、この穴の補修を行わなくて済み、作業手間を低減することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記第一本接合工程および第二本接合工程において、前記突合部の全周に亘って前記接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
【0019】
このような方法によれば、突合部の全周に亘って塑性化領域を介して枠部材同士を一体化でき、外側枠部材と内側枠部材との接合性能を高めることができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、前記接合用回転ツールの挿入位置に下穴を形成する下穴形成工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
【0021】
このような方法によれば、多くの時間を要する接合用回転ツールの挿入作業の時間を短縮することができ、接合作業の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
【0022】
請求項8に係る発明は、前記第一本接合工程において、前記枠部材の表面側から前記枠部材同士の前記突合部に沿って前記接合用回転ツールを一周移動させて摩擦攪拌を行い、さらに前記接合用回転ツールを移動させて一周目で形成された塑性化領域を再攪拌した後に、前記枠部材の表面側に現れる前記突合部から偏移させた位置で前記接合用回転ツールを抜き取って、この位置を終了位置とし、その後、前記終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する補修工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
【0023】
このような方法によれば、接合用回転ツールを一周させて塑性化領域を形成した後、塑性化領域に沿って回転ツールをさらに一周させることによって、塑性化領域がより一層攪拌されるので、空洞欠陥を低減させることができ、突合部の接合密閉性能を向上させることができる。また、突合部に抜き穴が形成されないので、枠部材同士の接合性が高くなり気密性が向上する。また、終了位置の接合用回転ツール抜き穴を補修することで、枠部材の美観を損なうことなく、強度の低下を防止できる。
【0024】
請求項9に係る発明は、前記第二本接合工程において、前記枠部材の裏面側から前記枠部材同士の前記突合部に沿って前記接合用回転ツールを一周移動させて摩擦攪拌を行い、さらに前記接合用回転ツールを移動させて一周目で形成された塑性化領域を再攪拌した後に、前記枠部材の裏面側に現れる前記突合部から偏移させた位置で前記接合用回転ツールを抜き取って、この位置を終了位置とし、その後、前記終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する補修工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
【0025】
このような方法によれば、裏面側においても、一周目で形成された塑性化領域がより一層攪拌されるので、空洞欠陥を低減させることができ、突合部の接合密閉性能を向上させることができる。また、突合部に抜き穴が形成されないので、枠部材同士の接合性が高くなり気密性が向上する。また、終了位置の接合用回転ツール抜き穴を補修することで、枠部材の美観を損なうことなく、強度の低下を防止できる。
【0026】
請求項10に係る発明は、前記補修工程において、前記接合用回転ツール抜き穴に補修部材を挿入し、前記接合用回転ツール抜き穴の周縁部と前記補修部材との突合部に沿って補修用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行った後に、前記突合部から偏移させた位置で前記補修用回転ツールを抜き取って、この位置を終了位置とし、その後、前記終了位置に形成された補修用回転ツール抜き穴に溶接金属を埋めて補修することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の枠構造体の製造方法である。
【0027】
このような方法によれば、溶接金属は、比較的小さい補修用回転ツール抜き穴に埋めるので、作業を容易に行うことができる。
【0028】
請求項11に係る発明は、前記枠部材が、直線状を呈する四つの金属部材を矩形枠状に組み合わせ、一の前記金属部材の端面を、他の隣接する前記金属部材の側面に突き合わせて摩擦攪拌によって接合することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
【0029】
このような方法によれば、接合部の気密性および水密性の高い枠部材を形成することができる。
【0030】
請求項12に係る発明によれば、前記第二本接合工程において、前記第一本接合工程で形成された塑性化領域に前記接合用回転ツールの攪拌ピンを入り込ませつつ摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1に記載の枠構造体の製造方法である。
【0031】
このような方法によれば、表面側の塑性化領域と裏面側の塑性化領域が一体化され、気密性および水密性の高い突合部を形成することができる。
【0032】
請求項13に係る発明は、金属製の枠部材の内側に他の金属製の枠部材を嵌め合わせて突き合わせ、前記枠部材の表面側および裏面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行い、前記枠部材同士を接合したことを特徴とする枠構造体である。
【0033】
このような構成によれば、枠構造体が、外側と内側の二重構造になるとともに、表面側および裏面側の両方から摩擦攪拌を行って突合部の気密性および水密性を確保しているので、枠構造体としての気密性および水密性を大幅に高めることができる。
【0034】
請求項14に係る発明は、前記枠部材のうち外側に位置する外側枠部材の内周面、または内側に位置する内側枠部材の外周面に凹溝を形成し、前記凹溝内に熱媒体管を布設したことを特徴とする請求項13に記載の枠構造体である。
【0035】
このような構成によれば、外側枠部材と内側枠部材との間に熱媒体管を設けることができ、効率的に温度管理を行うことができる。また、熱媒体管は、外側枠部材と内側枠部材との突合部に設けられるので、枠構造体の断面方向中間部にバランスよく配置され、枠構造体全体に亘って満遍なく熱交換を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る枠構造体の製造方法および枠構造体によれば、枠の内側と外側との間で気密性および水密性を高めることができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(第一実施形態)
本発明を実施するための第一の最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、二種の枠部材を枠の内外方向に固定した形態、具体的には、外側に位置する外側枠部材の内側に内側枠部材を嵌合して摩擦攪拌により固定した形態を例に挙げて説明する。まず、本発明に係る枠構造体の製造方法によって製造された枠構造体の構成を説明する。
【0038】
図1および図3に示すように、本実施形態に係る枠構造体1は、金属製の二種の枠部材(外側枠部材10,内側枠部材11)のうち、外側に位置する外側枠部材10の内側に、内側に位置する内側枠部材11を嵌め合わせて、外側枠部材10の内周面10a(図3参照)と内側枠部材11の外周面11a(図3参照)とを突き合わせ、各枠部材(外側枠部材10および内側枠部材11)の表面12a側および裏面12b(図7参照)側から突合部17に沿って本接合用回転ツール14(請求項における接合用回転ツール)(図7参照)を移動させて摩擦攪拌を行い、外側枠部材10および内側枠部材11を接合して構成されている。
【0039】
図1乃至図3に示すように、外側枠部材10および内側枠部材11は、それぞれ平面視長方形の矩形枠状を呈しており、長辺を構成する長尺直方体状の金属部材15(以下、「15a」と表示する場合がある)の長手方向の端面を、短辺を構成する隣接する長尺直方体状の金属部材15(以下、「15b」と表示する場合がある)の側面に突き合わせて、その突合部16に沿って摩擦攪拌を行うことによって形成されている。突合部16には、表面12a側に塑性化領域W1が形成され、裏面12b側に塑性化領域W2(図1および図3参照)が形成されており、金属部材15,15同士が一体的に接合されている。各塑性化領域W1,W2は、その底部同士が互いに重合するように形成されており、金属部材15,15同士の突合部16の厚さ全体に亘って摩擦攪拌が行われている。
【0040】
内側枠部材11は、外側枠部材10の内周面10a(図3参照)に嵌合する大きさに形成されており、外側枠部材10の内周面10aと内側枠部材11の外周面11a(図3参照)とが突き合わされている。なお、「塑性化領域」とは、接合用回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、接合用回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0041】
図1に示すように、内側枠部材11は、外側枠部材10の内側に嵌め合わされており、内側枠部材11の外周面11aと外側枠部材10の内周面10aとで互いに突き合わされた突合部17が構成されている。この突合部17に沿って表面12a側から摩擦攪拌を行うことで塑性化領域W3が形成されている。この摩擦攪拌は、突合部17の全周に亘って行われている。具体的には、本実施形態では、外側枠部材10と内側枠部材11との突合部17に沿って本接合用回転ツール14(図7参照)を一周移動させて摩擦攪拌を行い、さらに本接合用回転ツール14を移動させて一周目で形成された塑性化領域W3a(図6の(a)および(b)参照)を再攪拌して塑性化領域W3が形成されている。また、摩擦攪拌は、図7の(b)に示すように、突合部17に沿って裏面12b側からも行われ、裏面12bに塑性化領域W4が形成されている。
【0042】
図3および図7に示すように、外側枠部材10の内周面10aには凹溝30が形成されており、凹溝30内には熱媒体管31が布設されている。熱媒体管31は、例えば銅管等の熱伝導性の高い材質で形成された円筒状のパイプ材にて構成されており、外側枠部材10の内周面10aに沿うように屈曲して平面視C字状に形成されている。熱媒体管31の両端部は、外側枠部材10の外周面10b側に屈曲して接続部31aが形成されており、図示しない熱媒体供給源に延びる配管に接続されるようになっている。なお、熱媒体管をヒータ等の用途で用いる場合には、ステンレスからなるパイプ材にて構成してもよい。
【0043】
凹溝30は、底面部が熱媒体管31の外周径と同径の半円状に形成された断面U字状を呈しており、外側枠部材10の内周面10aの周方向に沿って略一周するように平面視C字状に形成されている。図3に示すように、凹溝30の延出長手方向両端の底部には、外側枠部材10の外周面10bに繋がる一対の貫通孔32,32がそれぞれ形成されている。貫通孔32,32は、短辺を構成する金属部材15bに、凹溝30の延出長手方向に直交して互いに平行に形成されている。貫通孔32,32には、熱媒体管31の両端の接続部31a,31aがそれぞれ挿通されている。本実施形態では、凹溝30は、外側枠部材10の内周面10aの厚さ方向(図3中、上下方向)に二段に形成されており、上側の凹溝30に繋がる貫通孔32,32と、下側の凹溝30に繋がる貫通孔32,32は、互いに対向する短辺位置の金属部材15b,15bにそれぞれ形成されている。なお、各凹溝30,30の貫通孔32,32・・は、同じ側の金属部材15bに形成してもよいし、短辺位置の金属部材15bではなく、長辺位置の金属部材15aに形成するようにしてもよい。
【0044】
図7に示すように、凹溝30内に熱媒体管31を布設すると、熱媒体管31の周囲で凹溝30の側壁との間に空隙ができるが、この空隙には、熱伝導性物質33が充填されている。熱伝導性物質33は、金属粉末、金属粉末ペースト又は金属シート等が採用されており、本実施形態では、外側枠部材10の内周面10aに側部を向いて開口する凹溝30に充填されるので一定の粘性を備えた金属粉末ペーストにて構成されている。金属粉末ペーストはアルミニウム粉末等の金属粉末と流動性を備えた樹脂との混合物から構成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、熱媒体管31が断面円形を呈するパイプ材にて構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、断面楕円形や多角形を呈するパイプ材で熱媒体管を形成してもよい。この場合、凹溝の底部の断面形状を熱媒体管の外周形状に合わせるのが好ましい。
【0046】
次に、本実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明する。
【0047】
かかる枠構造体の製造方法は、図1に示すように、金属製の枠部材(外側枠部材10)の内側に他の金属製の枠部材(内側枠部材11)を嵌め合わせて接合して枠構造体1を形成する製造方法であって、外側に位置する外側枠部材10の内周面10aと内側に位置する内側枠部材11の外周面11aとからなる接合面18(図3参照)を、面削加工して平坦にする面削工程と、面削加工された接合面18を脱脂して油脂を除去する脱脂工程と、内側枠部材11を外側枠部材10の内側に嵌め合わせて、内側枠部材11の外周面11aと外側枠部材10の内周面10aとを突き合わせる嵌合工程と、外側枠部材10および内側枠部材11の表面12a側から各枠部材(外側枠部材10および内側枠部材11)同士の突合部17に沿って本接合用回転ツール14(図7参照)を移動させて摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、外側枠部材10および内側枠部材11の裏面12b側から突合部17に沿って本接合用回転ツール14を移動させて摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を備えていることを特徴とする。
【0048】
また、本実施形態に係る枠構造体の製造方法は、嵌合工程の前に、図3に示すように、外側枠部材10の内周面10aまたは内側枠部材11の外周面11a(本実施形態では外側枠部材10の内周面10a)に凹溝30を形成する溝形成工程と、凹溝30内に熱媒体管31を布設する熱媒体管布設工程と、凹溝30内の熱媒体管31の周囲の空隙に熱伝導性物質33(図7参照)を充填する充填工程とを、さらに備えている。
【0049】
さらに、かかる枠構造体の製造方法は、摩擦攪拌の終了後に、図8および図9に示すように、摩擦攪拌の終了位置に形成された接合用回転ツールによる抜き穴Q2を補修する補修工程を備えている。
【0050】
(枠部材製造工程)
本実施形態では、前記各工程の前に、四つの金属部材15,15・・を矩形枠状に組み合わせ、隣り合う金属部材15,15同士を摩擦攪拌にて接合して外側枠部材10および内側枠部材11を製造する枠部材製造工程を行う。枠部材製造工程は、一の金属部材15の端面を、隣接する他の金属部材15の側面に突き合わせて、その突合部16に沿って摩擦攪拌を行い一体的に接合する。以下、図2にしたがって、内側枠部材11の製造工程を説明する。
【0051】
内側枠部材11および外側枠部材10を構成する金属部材15は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。本実施形態では、各金属部材15,15・・は、例えばアルミニウム等の同一組成の金属材料で形成されている。また、本実施形態では、各金属部材15,15・・は、同等の断面形状(略正方形形状)の長尺直方体状に形成されており、隣接する金属部材15,15同士の突合部16における厚さ寸法が同一になっている。
【0052】
金属部材15,15同士を摩擦攪拌によって接合するに際しては、図2に示すように、直方体形状を呈するブロック状の金属部材接合用第一タブ部材51(以下「第一タブ部材」という)および金属部材接合用第二タブ部材52(以下「第二タブ部材」という)が用いられる。第一タブ部材51および第二タブ部材52は、金属部材15,15同士の突合部16を、内側枠部材11の外周面11a側と内周面11b側から挟むように配置されるものであって、それぞれ、金属部材15,15に添設され、金属部材15の側面に現れる金属部材15,15の継ぎ目(厚さ方向に沿った境界線)を覆い隠す。
【0053】
なお、第一タブ部材51および第二タブ部材52の材質に特に制限はないが、本実施形態では、金属部材15と同一組成の金属材料で形成している。また、第一タブ部材51および第二タブ部材52の形状・寸法にも特に制限はないが、本実施形態では、その厚さ寸法を突合部16における金属部材15の厚さ寸法と同一としている。
【0054】
内側枠部材11を製造するに際しては、図2に示すように、まず、接合すべき四つの金属部材15,15・・を平面視長方形枠状に配置し、短辺を構成する金属部材15bの端部の側面に、長辺を構成する金属部材15aの端面を密着させて突き合せる。そして、金属部材15bの端部と、金属部材15aの端面とで構成される各突合部16,16・・の両側に第一タブ部材51と第二タブ部材52をそれぞれ配置する。金属部材15a,15bの突合部16の一端側(外周側)には、第一タブ部材51を配置して第一タブ部材51の当接面51aを、長辺を構成する金属部材15aの外周面11a側の側面、および短辺を構成する金属部材15bの端面に当接させて突合部53を形成する。一方、金属部材15a,15bより形成された入隅部(金属部材15a,15bの内周面11bに形成された角部)となる突合部16の他端側(内周側)に第二タブ部材52を配置して、第二タブ部材52の当接面52a,52bを金属部材15a,15bの内周面11b側に当接させて突合部54を形成する。
【0055】
その後、金属部材15a,15bと第一タブ部材51とにより形成された一対の入隅部51bを溶接して金属部材15a,15bと第一タブ部材51とを固定し、金属部材15a,15bと第二タブ部材52とにより形成された一対の入隅部52c,52cを溶接して金属部材15a,15bと第二タブ部材52とを固定する。
【0056】
金属部材15,15と第一タブ部材51および第二タブ部材52との溶接固定が終了したら、金属部材15,15・・と第一タブ部材51および第二タブ部材52を図示せぬ摩擦攪拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。その後、小型の仮接合用回転ツール(図示せず)を、突合部53,16,54の順に一筆書きの移動軌跡(図示せず)を形成するように適宜移動させて、突合部53,16,54に対して連続して摩擦攪拌を行って仮接合する。
【0057】
その後、第一タブ部材51の適所に開始位置S1を設定し、この開始位置S1に図示しない本接合用回転ツール(図示せず)の攪拌ピンが挿入される下穴(図示せず)を形成する。開始位置S1は、第一タブ部材51の表面で、金属部材15a,15b同士の突合部16の延長線上に設定されている。下穴は、本接合用回転ツールの攪拌ピンの挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものである。下穴の形成方法に制限はなく、例えば、図示せぬ公知のドリルを回転挿入することで形成することができる。
【0058】
下穴の形成が終了したら、金属部材15,15同士の突合部16を本格的に接合する本接合工程を実行する。本実施形態に係る本接合工程では、仮接合用回転ツールよりも大径の本接合用回転ツールを使用し、まず、仮接合された状態の突合部16に対して金属部材15の表面12a側から摩擦攪拌を行う。第一タブ部材51上の開始位置S1に形成した下穴に本接合用回転ツールの攪拌ピンを回転させながら挿入(圧入)し、挿入した攪拌ピンを突合部16側に向かって移動させる。突合部16の一端(外周側)まで摩擦攪拌を行ったら、そのまま本接合用回転ツールを突合部16に突入させ、突合部16に沿って摩擦攪拌を行う。そして突合部16の他端(内周側)まで本接合用回転ツールを移動させたら、摩擦攪拌を行いながら、第二タブ部材52上を金属部材15bから離反する方向に本接合用回転ツールを斜めに移動させ、そのまま第二タブ部材52上の適所に設定された終了位置E1に向けて移動させる。
【0059】
本接合用回転ツールが終了位置E1に達したら、本接合用回転ツールを回転させつつ上昇させて攪拌ピンを終了位置E1から離脱させる。このとき終了位置E1において攪拌ピンを上方に離脱させると、攪拌ピンと略同形の抜き穴Q1が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。
【0060】
以上の工程を、四箇所の各突合部16,16・・でそれぞれ行い、金属部材15,15・・を枠状に接合する。
【0061】
その後、各摩擦攪拌で発生したバリを除去し、さらに、金属部材15,15・・を裏返し、裏面(図示せず)を上にする。そして、第一タブ部材51の裏面の適所に設定された開始位置に下穴を形成する。この下穴形成は、前記した表面12aにおける下穴形成と同等の手順で行われる。
【0062】
下穴の形成が終了したら、本接合用回転ツールを使用して、裏面側から突合部16に対して摩擦攪拌を行う。この摩擦攪拌は、表面12a側からの摩擦攪拌と同様に、第一タブ部材51の裏面上の開始位置に形成した下穴に本接合用回転ツールの攪拌ピンを挿入(圧入)する。このとき、表面12a側からの摩擦攪拌にて形成された表側の塑性化領域W1に本接合用回転ツールの攪拌ピンを入り込ませる。以降、裏面側から摩擦攪拌を行う際には、表面12a側からの摩擦攪拌にて形成された塑性化領域W1に沿って本接合用回転ツールを移動させ、その攪拌ピンを塑性化領域W1に入り込ませつつ摩擦攪拌を行う。
【0063】
その後、挿入した攪拌ピンを突合部16側に向かって移動させ、突合部16の一端(外周側)まで摩擦攪拌を行ったら、そのまま本接合用回転ツールを突合部16に突入させ、突合部16に沿って摩擦攪拌を行う。そして突合部16の他端(内周側)まで本接合用回転ツールを移動させたら、摩擦攪拌を行いながら第二タブ部材52の裏面上を金属部材15から離反する方向に本接合用回転ツールを斜めに移動させ、そのまま第二タブ部材52の裏面上の適所に設定された終了位置に向けて移動させる。これによって、突合部16には、表面12a側から形成された塑性化領域W1と、裏面側から形成された塑性化領域W2(図3参照)の底部同士が互いに重合するように形成される。
【0064】
本接合用回転ツールが終了位置(図示せず)に達したら、本接合用回転ツールを回転させつつ上昇させて攪拌ピンを終了位置から離脱させる。このとき終了位置において攪拌ピンを上方に離脱させると、攪拌ピンと略同形の抜き穴(図示せず)が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。なお、裏面の終了位置は、表面12aの終了位置E1と重ならないように、ずらしておくのが好ましい。
【0065】
なお、本実施形態では、開始位置S1を第一タブ部材51上に設定し、終了位置E1を第二タブ部材52上に設定しているが、裏面における摩擦攪拌では、開始位置と終了位置とを反対に設定してもよい。これは、表面12a側では、第二タブ部材52の抜き穴Q1にネジ溝を形成して、フック56を螺合させるようにしているが、裏面側では、第二タブ部材52に穴を必要としないためであって、第一タブ部材51を終了位置としてもよいためである。
【0066】
以上のように、表面12a側および裏面側からの本接合が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去し、図3に示すように、外周側の第一タブ部材51を切除する。内側枠部材11では、第二タブ部材52は切除せずに、残置された抜き穴Q1の内周面にネジ溝を形成する加工を行う。ネジ溝が形成された抜き穴Q1には、後の嵌合工程で、内側枠部材11を吊下げるための吊り用治具であるフック56が螺合されて装着される。
【0067】
外側枠部材10は、内側枠部材11と大きさが相違しているが、その製造工程は、内側枠部材11の製造工程と略同じであるのでその説明を省略する。なお、内側枠部材11では、第二タブ部材52を切除せずに、残置された抜き穴Q1にネジ溝を形成しているが、外側枠部材10では、ネジ溝は形成せずに、第一タブ部材51とともに第二タブ部材52も切除する。これは、外側枠部材10の内側に内側枠部材11が嵌合されるためである。
【0068】
(溝形成工程)
その後、本実施形態では、図3に示すように、外側枠部材10の内周面10aに、その周方向に沿って凹溝30を形成する。凹溝30は、公知の切削工具を用いて、外側枠部材10の内周面10aを内側から所定の深さに切削し、底面部が熱媒体管31と同径の半円状の断面U字状に形成する(図7参照)。凹溝30は、外側枠部材10の内周面10aの厚さ方向(図3中、上下方向)に二段に形成する。凹溝30は、外側枠部材10の短辺を構成する金属部材15bに両端部を有する平面視C字状を呈するように形成し、その両端の底部に、外側枠部材10の外周面10bに繋がる一対の貫通孔32,32をそれぞれ形成する。貫通孔32,32は、公知のドリルを用いて、外側枠部材10の内周面10a側あるいは外周面10b側から、凹溝30の延出長手方向に直交する方向(金属部材15bの幅方向)に形成する。本実施形態では、上側の凹溝30に繋がる貫通孔32,32と、下側の凹溝30に繋がる貫通孔32,32は、互いに対向する短辺位置の金属部材15b,15bにそれぞれ形成する。そして、凹溝30と貫通孔32の形成が終了したら、各工程で発生したバリを除去する。
【0069】
(熱媒体管形成工程)
一方、銅管等の熱伝導性の高いパイプ材を、凹溝30および貫通孔32,32に沿う形状に適宜屈曲させて熱媒体管31を形成する。なお、熱媒体管31の形成は、枠部材製造工程後に行うのに限定されるものではなく、枠部材製造工程と並行して行ってもよいし、枠部材製造工程よりも前に行ってもよい。
【0070】
(面削工程)
次に、外側枠部材10の内周面10aと、内側枠部材11の外周面11aとからなる接合面18を、面削加工して平坦にする。面削工程では、外側枠部材10を図示せぬ架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束し、内側枠部材11の外周面11aとの接合面18となる内周面10aの全体に亘ってフライス盤等の工具を用いて面削加工を行い表面の凹凸を取り除く。また、内側枠部材11の外周面11aについても同様の面削加工を行い表面の凹凸を取り除く。これによって、接合面18の平坦度が向上し、外側枠部材10の内周面10aと内側枠部材11の外周面11aとが密着するようになる。
【0071】
(脱脂工程)
その後、面削加工された外側枠部材10と内側枠部材11を、図示せぬ脱脂用の処理槽のアルコールやアセトン等の脱脂処理液内に浸けて、外側枠部材10の内周面10aと、内側枠部材11の外周面11aとからなる各接合面18に付着した加工油等の油脂分や汚れを取り除く。これによって、接合面18から油等の有機物や水分を取り除くことができるので、塑性化領域に有機物の残渣や分解ガスが混入するのを防止することができる。
【0072】
(熱媒体管布設工程)
脱脂工程が終了した後に、熱媒体管31を適宜変形させて、熱媒体管31の接続部31aを外側枠部材10の内周面10a側から貫通孔32,32に貫通させ、その先端を外側枠部材10の外周面10bから外方に突出させるとともに、熱媒体管31を凹溝30内に沿わして布設する。ここで、熱媒体管31は、径に対して軸方向長さが非常に長いので、布設時には適宜弾性変形させて、最終的に凹溝30に沿った形状とし、貫通孔32,32に挿通されるとともに凹溝30内の底面に沿って周接して布設することができる。なお、布設時に、熱媒体管31が塑性変形してしまった場合には、布設後に適宜修正加工を行い、所定の形状に戻すようにすればよい。
【0073】
なお、本実施形態では、熱媒体管31を予め適宜屈曲させて所定の形状に形成してから凹溝30内に布設しているが、これに限定されるものではなく、直線状の熱媒体管を凹溝30に順次布設しながら、適宜変形させるようにしてもよい。
【0074】
(充填工程)
熱媒体管布設工程で凹溝30内に熱媒体管31を布設すると、凹溝30の開口部側で、熱媒体管31の周囲で凹溝30の側壁との間に空隙ができる。充填工程では、この空隙に、熱伝導性物質33を充填する。本実施形態では、水平方向から凹溝30内に熱伝導性物質33を充填するので、熱伝導性物質33は、一定の粘性を備えた金属粉末ペーストにて構成されており、外側枠部材10の内周面10aから凹溝30内に擦り込むように熱伝導性物質33を充填する。熱伝導性物質33は、その表面が外側枠部材10の内周面10aの表面と面一になるように充填する。
【0075】
(嵌合工程)
充填工程が終了したら、熱媒体管31が布設された外側枠部材10を図示しない摩擦攪拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示しない治具を用いて移動不能に拘束する。その後、図3に示すように、内側枠部材11の内側に取り付けられている各第二タブ部材52の抜き穴Q1に、フック56(吊り用治具)を螺合させてそれぞれ装着し、これらフック56に、ワイヤー57の先端に取り付けられたフック58を係止して、ワイヤー57を介してクレーン等の吊り手段(フックのみ図示)に吊り上げる。そして、内側枠部材11を外側枠部材10の上方から吊り下ろし、下方に適宜押し込んで、外側枠部材10の内周面10a内に嵌め合わせる。このとき、外側枠部材10の内周面10aと内側枠部材11の外周面11aはともに面削加工されて、表面の凹凸が取り除かれているので、内側枠部材11を外側枠部材10の内周面10aの内側に円滑に嵌合することができる。これによって、外側枠部材10の内周面10aと内側枠部材11の外周面11aとが突き合わされ、平面視長方形状の突合部17(図4参照)が構成される。
【0076】
その後、図4に示すように、ワイヤー57と一体のフック58を、フック56から離脱させ吊り手段を退避させた後に、各第二タブ部材52,52・・の抜き穴Q1,Q1・・からフック56,56・・をそれぞれ取り外す。その後、図5に示すように、第二タブ部材52を内側枠部材11の内周面11bから切除する。
【0077】
(下穴形成工程)
第二タブ部材52の切除が終了したら、図6の(a)に示すように、外側枠部材10の表面12aの適所に開始位置S2を設定し、この開始位置S2に本接合用回転ツール14(図7参照)の攪拌ピン14bが挿入される下穴(図示せず)を形成する。開始位置S2は、外側枠部材10の表面12aで、突合部17から所定の距離オフセットした位置に設定されている。下穴は、本接合用回転ツール14の攪拌ピンの挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものである。下穴の形成方法に制限はなく、例えば、図示せぬ公知のドリルを回転挿入することで形成することができる。なお、開始位置S2の設定と下穴の形成は、嵌合工程後に行うことに限定されるものではなく、嵌合工程前に行ってもよい。
【0078】
(第一本接合工程)
下穴の形成が終了したら、外側枠部材10および内側枠部材10の表面12a側から突合部17に沿って本接合用回転ツール14を移動させて摩擦攪拌を行う。本接合用回転ツール14は、外側枠部材10や内側枠部材11よりも硬質の金属材料からなり、図7に示すように、円柱状を呈するショルダ部14aと、このショルダ部14aの下端面に突設された攪拌ピン(プローブ)14bとを備えて構成されている。本接合用回転ツール14の寸法・形状は、外側枠部材10および内側枠部材11の材質や厚さ、凹溝30および熱媒体管31の位置等に応じて設定すればよい。攪拌ピン14bの突出長さ寸法は、塑性化領域W3,W4が凹溝30に干渉しない寸法であることが必要であり、外側枠部材10および内側枠部材11の製造工程で用いた本接合用回転ツールの攪拌ピンよりも短いものが用いられている。このような構成によれば、熱媒体管31が摩擦攪拌の摩擦熱によって変形することが防止される。本接合用回転ツール14の回転速度は70〜700(rpm)、送り速度は30〜300(mm/分)で、突合部17を押さえる押込み力は1〜20(kN)程度で、外側枠部材10や内側枠部材11の材質や板厚および形状に応じて適宜選択される。
【0079】
図6の(a)に示すように、本接合用回転ツール14の挿入位置(開始位置S2)は、突合部17から外側に外れた外側枠部材10の表面12aとなっている。本接合用回転ツール14を回転させながら、攪拌ピン14b(図7参照)を下穴に挿入し、そのまま開始位置S2から突合部17側へ回転させながら移動させ、その軸心が突合部17の突合面上に位置する部分に移動したならば、軸芯が突合部17に沿うように移動方向を変えて、本接合用回転ツール14を移動させる。このとき、本接合用回転ツール14の回転方向(自転方向)は、移動方向(突合部17に沿う公転方向)と同じ方向となるようにする。すなわち、本実施形態では、本接合用回転ツール14を左回りに移動させている(図6中、矢印Y1参照)ので、本接合用回転ツール14を左回転させる(図6中、矢印Y2参照)。なお、本接合用回転ツール14を右回りに移動させるときは、本接合用回転ツール14を右回転させることとなる。
【0080】
その後、本接合用回転ツール14の回転および移動を継続し、図6の(b)に示すように、本接合用回転ツール14を突合部17に沿って一周させて塑性化領域W3aを形成する。そして、図6の(b)および(c)に示すように、本接合用回転ツール14の一周目の移動が終わった後に、引き続いて塑性化領域W3aに沿って本接合用回転ツール14をさらに一周させる。本実施形態では、本接合用回転ツール14の二周目の回転および移動は、一周目の回転方向、回転速度、移動方向および移動速度と同様にしている(図3中、矢印Y3,Y4参照)。二周目の移動に入るに際して、本接合用回転ツール14は、交換を行わず、突合部17に挿入したままの状態で継続して回転および移動させ、攪拌ピン14bの押込み量も変更しない。なお、本接合用回転ツール14の回転速度や移動速度等は、外側枠部材10や内側枠部材11の材質や板厚および形状に応じて適宜変更してもよい。また、二周目の本接合用回転ツール14の押込み量を、一周目よりも深くしてもよい。
【0081】
ここで、本接合用回転ツール14は、一周目の移動において塑性化領域W3aを形成し、二周目の移動において、形成された塑性化領域W3aをさらに攪拌することでその内部に存在する空洞欠陥を低減させている。
【0082】
そして、図6の(c)に示すように、本接合用回転ツール14の二周目の移動が終了したならば、本接合用回転ツール14を塑性化領域W3(突合部17)から外側に外れた外側枠部材10の表面12aへと移動させ、その位置で、本接合用回転ツール14を引き抜く。このように、本接合用回転ツール14の引抜位置(終了位置E2)が、突合部17からオフセットした位置となっているので、攪拌ピン14bの抜き穴Q2(図8および図9参照)が突合部17に形成されることはない。これにより、外側枠部材10と内側枠部材11との接合性をさらに高めることができる。
【0083】
また、本接合用回転ツール14を一周させて塑性化領域W3aを形成した後に、この塑性化領域W3aに沿って本接合用回転ツール14をさらに一周させることによって、塑性化領域W3aよりもさらに攪拌された塑性化領域W3が形成される。すなわち、塑性化領域W3aに空洞欠陥が発生した場合であっても再攪拌することで自動的に欠陥を補修することとなり、塑性化領域W3における空洞欠陥を大幅に低減させることができる。したがって、突合部17における密閉性能をより一層向上させることができる。
【0084】
(補修工程)
次に、終了位置E2に形成された抜き穴Q2(請求項における接合用回転ツール抜き穴)を補修する。補修工程は、第一本接合工程において外側枠部材10の表面12aに形成された抜き穴Q2に、補修部材である充填用金属部材H(図8および図9参照)を充填する充填用金属部材挿入工程と、外側枠部材10と充填用金属部材Hの突合部40に対して表面12a側から摩擦攪拌を行う補修接合工程と、補修接合工程において充填用金属部材Hの表面に形成された抜き穴(請求項における補修用回転ツール抜き穴)Q3に溶接金属K(図8および図9参照)を充填する補修溶接工程と、を具備している。
【0085】
充填用金属部材挿入工程は、図8および図9に示すように、第二の本接合工程において形成された抜き穴Q2に、抜き穴Q2と同形の充填用金属部材Hを挿入して、抜き穴Q2を埋める工程である。なお、充填用金属部材Hを挿入する前に、抜き穴Q2の内周面および充填用金属部材Hの外周面を機械加工によって面削しておくのが好ましい。充填用金属部材Hは、外側枠部材10と同一組成の金属材料で形成されており、抜き穴Q2の内空部と同等の形状(本実施形態では円錐台形状)を呈している。なお、本実施形態では、外側枠部材10と同一組成の金属材料で充填用金属部材Hを形成しているが、これに限定されるものではなく、摩擦攪拌可能な金属材料であれば、異なった組成の金属で形成してもよい。
【0086】
補修接合工程は、外側枠部材10の抜き穴Q2の周壁と充填用金属部材Hの外周縁との突合部40に対して、図示しない補修用回転ツールを用いて摩擦攪拌を行う工程である。本実施形態で用いる補修用回転ツールは、ショルダ部の外径が突合部40の半径と略同等である。補修接合工程では、外側枠部材10と充填用金属部材Hとの継ぎ目(突合部40)上に設定された摩擦攪拌の開始位置S3に、補修用回転ツールを回転させながら、その攪拌ピンを入り込ませ、突合部40に沿って一周するように、補修用回転ツールを移動させることで、突合部40の全周に亘って摩擦攪拌を行う。
【0087】
本実施形態では、突合部40の全周に亘って摩擦攪拌を行った後に、補修用回転ツールを、充填用金属部材Hの表面の中心位置に設定された摩擦攪拌の終了位置E3(第一本接合工程における摩擦攪拌の終了位置E2と同位置)まで移動させ、補修用回転ツールを終了位置E3から離脱させる。このように、終了位置E3で補修用回転ツールの攪拌ピンを上方に離脱させると、終了位置E3に補修用回転ツールの攪拌ピンと略同形の小型の抜き穴Q3が形成される(図8および図9参照)。
【0088】
なお、本実施形態では、補修用回転ツールは、ショルダ部の外径が突合部40の半径と略同等であるものを用いているが、これに限定されるものではなく、外側枠部材10と充填用金属部材Hとの継ぎ目に沿って、円周状に攪拌ピンを移動させることができる大きさであれば、他の回転ツールを用いてもよい。
【0089】
補修溶接工程では、図9に示すように、充填用金属部材Hの表面に形成された抜き穴Q3内にMIG溶接等の肉盛溶接を行うことで、抜き穴Q3内に溶接金属Kを充填するようになっている。なお、補修溶接工程は、MIG溶接に限定するものではなく、他の公知の溶接を行ってもよい。また、溶接材料は、外側枠部材10と異なっていてもよいが、本実施形態では同一の材料を用いている。また、補修溶接工程では、抜き穴Q3に溶接金属Kを充填した後に、外側枠部材10の表面12aよりも盛り上がっている部分の溶接金属Kを切除することが望ましい。
【0090】
(下穴形成工程)
表面12a側における補修工程が終了したら、図7の(b)に示すように、外側枠部材10および内側枠部材11を裏返し、裏面12bを上にして、図示しない治具で移動不能に拘束する。そして、表面12a側における下穴形成工程と同様に、外側枠部材10の裏面12bの適所に開始位置(図示せず)を設定し、この開始位置に本接合用回転ツール14の攪拌ピン14b(図7参照)が挿入される下穴(図示せず)を形成する。
【0091】
(第二本接合工程)
下穴の形成が終了したら、外側枠部材10および内側枠部材11の裏面12b側から突合部17に沿って本接合用回転ツール14を移動させて摩擦攪拌を行う。第二本接合工程の詳細は、表面12a側における第一本接合工程と略同様であるので詳細な説明を省略する。なお、第二本接合工程における摩擦攪拌の終了位置(図示せず)は、第一本接合工程における摩擦攪拌の終了位置E2の裏面位置とはオフセットした位置に設定するのが好ましい。
【0092】
(補修工程)
第二本接合工程が終了したら、終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する。補修工程は、表面12a側における補修工程と同様の工程であるので詳細な説明を省略する。
【0093】
以上のような工程を経ることで、枠構造体1の製造が完了する。このような製造方法で製造された枠構造体1は、内側枠部材11を外側枠部材10の内側に嵌め合わせて、表面12a側および裏面12b側の両方から摩擦攪拌を行っているので、外側枠部材10と内側枠部材11とを容易かつ確実に一体化して接合することができるとともに、突合部17の気密性および水密性を確保することができる。さらに、枠構造体1が、内側と外側に亘って外側枠部材10と内側枠部材11との二重構造になるので、枠構造体1の内周側と外周側とが効果的に区画され、気密性および水密性を大幅に高めることができる。
【0094】
また、内側枠部材11を外側枠部材10の内側に嵌合させているので、接合面18を突き合わせた時点で、外側枠部材10と内側枠部材11が互いに固定されており、仮接合を行う必要がなく、作業手間を低減することができる。
【0095】
また、本実施形態では、突合部17の全周に亘って摩擦攪拌を行っているので、枠構造体1の突合部17の表裏方向においても高い気密性および水密性を確保できる。特に、本接合用回転ツール14を突合部17に対して二周させて、一周目の移動において形成された塑性化領域W3aを、二周目の移動においてさらに攪拌することでその内部に存在する空洞欠陥を低減させた塑性化領域W3(W4)を形成しているので、気密性および水密性がさらに高められている。また、表面12a側および裏面12b側の両方から摩擦攪拌を行っているので、表面12a側と裏面12b側との間で二重のシール効果が得られ、突合部17における気密性および水密性をさらに向上することができる。
【0096】
さらに、外側枠部材10の内周面10aと内側枠部材11の外周面11aとを、それぞれ面削加工して平坦にすることによって、外側枠部材10と内側枠部材11とが隙間なく密着し、また、外側枠部材10の内周面10aと内側枠部材11の外周面11aとを、それぞれ脱脂することによって、突合部17から油等の有機物や水分を取り除くことができるので、塑性化領域W3,W4に有機物の残渣や分解ガスが混入するのを防止することができる。したがって、外側枠部材10と内側枠部材11との摩擦攪拌による接合性を高めることができ、枠構造体1の接合部の気密性、水密性および接着性を向上することができる。
【0097】
また、本実施形態では、内側枠部材11の製造時に、内側枠部材11の内周面11bに固定された第二タブ部材52の抜き穴Q1を利用して、フック56(吊り用治具)を装着し、ワイヤー57を介して吊り手段で吊りながら、外側枠部材10の内側に吊り下ろして嵌め合わせるようにしているので、面削加工および脱脂加工が施された内側枠部材11の外周面11aに触れることなく、内側枠部材11を容易に吊り下ろすことができ、外側枠部材10と内側枠部材11の接合面18を、面削加工および脱脂加工後の良好な状態のままで互いに突き合わせることができる。また、第二タブ部材52に残された抜き穴Q1にネジ溝を形成しているので、わざわざネジ穴を別途に形成する必要がない。さらに、第二タブ部材52は後工程で切除することで容易に取り除くことができるので、ネジ穴の補修を行わなくて済み、作業手間を低減することができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、第一および第二本接合工程前に、本接合用回転ツール14の開始位置S1に、本接合用回転ツール14の挿入用の下穴を形成するようにしているので、多くの時間を要する本接合用回転ツール14の挿入作業の時間を短縮することができ、接合作業の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
【0099】
また、本実施形態では、内側枠部材11を外側枠部材10の内周面10aに嵌合させただけで、外側枠部材10と内側枠部材11が仮固定された状態になるので、タブ部材の設置や仮接合を行う必要がなく、作業手間を大幅に低減することができる。
【0100】
また、第一および第二本接合工程において、本接合用回転ツール14を、突合部17に沿って移動させた後に突合部17から外側枠部材10上に偏移させて抜き取って、この位置を終了位置E3としたことによって、突合部17に抜き穴Q2が形成されないので、外側枠部材10と内側枠部材11の接合性が高くなり気密性および水密性が向上する。また、その後、終了位置E3に形成された抜き穴Q2を補修するようにしたので、枠構造体1の美観を損なうことなく、強度の低下を防止できる。さらに、補修工程において、抜き穴Q2に充填用金属部材Hを挿入し、抜き穴Q2の周縁部と充填用金属部材Hとの突合部に沿って補修用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行った後に、前記突合部から偏移させた位置で補修用回転ツールを抜き取って、この位置を終了位置E3とし、その後、終了位置E3に形成された補修用回転ツールによる抜き穴Q3に溶接金属Kを埋めて補修しているので、溶接金属Kは、比較的小さい補修用回転ツールの抜き穴Q3に埋めるだけでよく、作業を容易に行うことができる。
【0101】
本実施形態に係る枠構造体1は、凹溝30内に熱媒体管31を布設して、内側枠部材11を外側枠部材10の内側に嵌合させるといった簡単な工程で、外側枠部材10と内側枠部材11との間に、熱媒体管31を内蔵して配置することができ、効率的に温度管理を行うことができる。また、熱媒体管31は、外側枠部材10と内側枠部材11との突合部17に設けられるので、熱媒体管31を、枠構造体1の内部の断面方向中間部にバランスよく配置することができ、枠構造体1全体に亘って満遍なく熱交換を行うことができる。
【0102】
また、凹溝30内の熱媒体管31の周囲の空隙に金属粉末ペーストからなる熱伝導性物質33を充填しているので、熱媒体管31の周辺に形成される空洞の発生を抑制することができ、熱伝導性物質33を介して熱媒体管31と枠構造体1との熱伝導性を高めることができるので、熱交換性能をより一層高めることができる。
【0103】
(第二実施形態)
次に、本発明を実施するための第二の最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0104】
図10および図11に示すように、本実施形態に係る枠構造体101は、外側に位置する外側枠部材110の内側に内側枠部材111を嵌め合わせて、外側枠部材110の内周面110a(図11参照)と内側枠部材111の外周面111a(図11参照)とを突き合わせ、外側枠部材110および内側枠部材111の表面112a側および裏面112b(図15参照)側から突合部117に沿って本接合用回転ツール114(図15参照)を移動させて摩擦攪拌を行い、外側枠部材110および内側枠部材111を接合して構成されている。
【0105】
外側枠部材110および内側枠部材111は、第一実施形態と同様に、それぞれ平面視長方形の矩形枠状を呈しており、長辺を構成する長尺直方体状の金属部材15(以下、「15a」と表示する場合がある)の長手方向の端面を、短辺を構成する隣接する長尺直方体状の金属部材15(以下、「15b」と表示する場合がある)の側面に突き合わせて、その突合部16に沿って摩擦攪拌を行うことによって形成されている。突合部16には、塑性化領域W1が表面112a側に形成され、塑性化領域W2が裏面112b側に形成されており、金属部材15,15同士が一体的に接合されている。各塑性化領域W1,W2は、その底部同士が互いに重合するように形成されており、金属部材15,15同士の突合部16の厚さ全体に亘って摩擦攪拌が行われている。
【0106】
ところで、かかる枠構造体101は、内側枠部材111の外周面111aに熱媒体管131を収容する凹溝130が形成されて点で、第一実施形態の枠構造体1と異なる。
【0107】
凹溝130は、底面部が熱媒体管31の外周径と同径の半円状に形成された断面U字状を呈しており、内側枠部材111の外周面111aの周方向に沿って略一周するように平面視C字状に形成されている。凹溝130の延出長手方向両端部は、内側枠部材111の表面112a側へ直交して屈曲しており、端部が表面112aに開口している。
【0108】
熱媒体管131は、例えば銅管等の熱伝導性の高い材質で形成された円筒状のパイプ材にて構成されており、内側枠部材111の外周面111aに沿うように屈曲して平面視C字状に形成されている。熱媒体管131の両端部は、内側枠部材111の表面112a側に屈曲して接続部131aが形成されており、図示しない熱媒体供給源に延びる配管に接続されるようになっている。接続部131aの先端部131bは、外側枠部材110の外周面110b側に屈曲している。
【0109】
外側枠部材110の内周面110aには、凹溝は形成されておらず平面状に形成されている。外側枠部材110の表面112aには、熱媒体管131の接続部131aの先端部131bを収容する凹溝132,132が形成されている。この凹溝132は、内側枠部材111の外周面111aに形成された凹溝130と同等の断面形状を呈しており、その内部に熱媒体管131を収容した歳に、熱媒体管131の外周の最上部が、外側枠部材110の表面112aと面一になるようになっている。
【0110】
凹溝130内に熱媒体管131を布設したときに形成される、熱媒体管131の周囲で凹溝130の側壁との間の空隙には、熱伝導性物質33が充填されている。熱伝導性物質33は、第一実施形態と同様に、一定の粘性を備えた金属粉末ペーストにて構成されている。
【0111】
次に、本実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明する。
【0112】
(枠部材製造工程)
まず、外側枠部材110および内側枠部材111を製造する。外側枠部材110および内側枠部材111を製造する枠部材製造工程は第一実施形態と同様の工程であるので、詳細な説明を省略する。
【0113】
(溝形成工程)
内側枠部材111が形成された後、本実施形態では、図11に示すように、内側枠部材111の外周面111aに、その周方向に沿って凹溝130を形成する。凹溝130は、公知の切削工具を用いて、内側枠部材111の外周面111a側から所定の深さに切削し、底面部が熱媒体管131と同径の半円状の断面U字状に形成される。凹溝130は、内側枠部材111の厚さ方向(図11中、上下方向)の中間部に一段に形成される。凹溝130は、内側枠部材111の短辺を構成する金属部材15bに両端部を有する平面視C字状を呈するように形成し、その両端部を、内側枠部材111の表面112a側へ直交して屈曲して端部が表面112aに開口するように形成する。
【0114】
外側枠部材110が形成された後、本実施形態では、図11に示すように、外側枠部材110の表面112aに、内周面110a側から外周面110b側へと繋がり、熱媒体管131の接続部131aの先端部131bを収容する凹溝132,132を形成する。凹溝132も、凹溝130と同様に、公知の切削工具を用いて、外側枠部材110の表面112a側から所定の深さに切削し、凹溝130と同等の断面U字状に形成される。
【0115】
そして、凹溝130と凹溝132の形成が終了したら、各工程で発生したバリを除去する。
【0116】
(熱媒体管形成工程)
枠部材製造工程と前後して、銅管等の熱伝導性の高いパイプ材を、適宜屈曲させて熱媒体管131を形成する。
【0117】
(面削工程・脱脂工程)
次に、第一実施形態と同様の作業工程で、外側枠部材110の内周面110aと、内側枠部材111の外周面111aとからなる接合面118を、面削加工した後に、脱脂加工を行う。
【0118】
(熱媒体管布設工程)
面削工程および脱脂工程が終了した後に、熱媒体管131を広げて適宜変形させて、内側枠部材111の外周面111a側から凹溝130内に沿わして布設する。ここで、熱媒体管31は、径に対して軸方向長さが非常に長いので、布設時には適宜弾性変形させて、最終的に凹溝130に沿った形状とし、凹溝130内の底面に沿って周接して布設される。このとき、熱媒体管131の両端の先端部131bは、内側枠部材111の表面112aから突出して、外側に向かって屈曲している。なお、布設時に、熱媒体管31が塑性変形してしまった場合には、布設後に適宜修正加工を行い、所定の形状に戻すようにすればよい。
【0119】
(充填工程)
次に、熱媒体管131の周囲で凹溝130の側壁との間にできた空隙に、熱伝導性物質33を充填する。一定の粘性を備えた金属粉末ペーストにて構成された熱伝導性物質33を、内側枠部材111の外周面111a側から凹溝130に擦り込むように充填する。
【0120】
(嵌合工程)
充填工程が終了したら、第一実施形態と同様に、外側枠部材110を図示しない摩擦攪拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示しない治具を用いて移動不能に拘束する。本実施形態でも、図11に示すように、内側枠部材111の内側に取り付けられている各第二タブ部材52の抜き穴Q1に、フック56(吊り用治具)を螺合させてそれぞれ装着し、これらフック56に、ワイヤー57の先端に取り付けられたフック58を係止して、ワイヤー57を介してクレーン等の吊り手段(フックのみ図示)で吊り上げる。そして、内側枠部材11を外側枠部材10の上方から吊り下ろし、下方へ適宜押し込んで、外側枠部材10の内周面10a内に嵌め合わせる。このとき、内側枠部材111の凹溝130に収容された熱媒体管131の先端部131bは、内側枠部材111とともに吊り下げられ、外側枠部材110の表面112aの凹溝132内に下降して布設されて収容される(図12参照)。
【0121】
その後、ワイヤー57と一体のフック58を、フック56から離脱させ、各第二タブ部材52,52・・の抜き穴Q1からフック56,56・・をそれぞれ取り外す。その後、図12に示すように、第二タブ部材52を内側枠部材111の内周面111bから切除する。
【0122】
(下穴形成工程)
第二タブ部材52の切除が終了したら、図13の(a)に示すように、外側枠部材110の表面112aの適所に開始位置S12を設定し、この開始位置S12に本接合用回転ツール114(図15参照)の攪拌ピン114bが挿入される下穴(図示せず)を形成する。開始位置S12は、外側枠部材110の表面112aで、突合部117から所定の距離オフセットした位置で、凹溝132の近傍に設定されている。下穴は、本接合用回転ツールの攪拌ピンの挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものである。下穴の形成方法は第一実施形態と同様に、例えば、図示せぬ公知のドリルを回転挿入することで形成することができる。なお、開始位置S12の設定と下穴の形成は、嵌合工程後に限定されるものではなく、嵌合工程前の外側枠部材110の製造工程の途中に行ってもよい。
【0123】
(第一本接合工程)
下穴の形成が終了したら、表面12a側から突合部117に沿って本接合用回転ツール114(請求項における接合用回転ツール)を移動させて摩擦攪拌を行う。本接合用回転ツール114は、外側枠部材110や内側枠部材111よりも硬質の金属材料からなり、図15に示すように、円柱状を呈するショルダ部114aと、このショルダ部114aの下端面に突設された攪拌ピン(プローブ)114bとを備えて構成されている。本接合用回転ツール114の寸法・形状は、外側枠部材110および内側枠部材111の材質や厚さ、凹溝130および熱媒体管131の位置等に応じて設定すればよい。攪拌ピン14bの突出長さ寸法は、塑性化領域W3,W4が凹溝130に干渉しない寸法であることが必要であり、第一実施形態の本接合用回転ツール14よりも、攪拌ピン114bが長く形成されている。
【0124】
図13の(a)に示すように、本接合用回転ツール114の挿入位置(開始位置S12)は、突合部117から外側に外れた外側枠部材110の表面112aで、一対の凹溝132,132の外側近傍となっている。本接合用回転ツール114を回転させながら、攪拌ピン114b(図15参照)を下穴に挿入し、そのまま開始位置S12から突合部117へ回転させながら移動させ、その軸心が突合部117の突合面上に位置する部分に移動したならば、軸芯が突合部117に沿うように、本接合用回転ツール114を凹溝132とは逆側に移動させる。このとき、本接合用回転ツール114の回転方向(自転方向)は、移動方向(公転方向)と同じ方向となるようにする。すなわち、本実施形態では、本接合用回転ツール114を右回りに移動させている(図13中、矢印Y5参照)ので、本接合用回転ツール114を右回転させる(図13中、矢印Y6参照)。なお、本接合用回転ツール114を左回りに移動させるときは、本接合用回転ツール114を左回転させることとなる。
【0125】
その後、本接合用回転ツール114の回転および移動を継続し、図13の(b)に示すように、本接合用回転ツール114を突合部117に沿って略一周させて塑性化領域W5を形成する。本接合用回転ツール114が開始位置S12の近傍の凹溝132とは逆側の図13の(b)中、右側に位置する凹溝132の近傍にまで移動したら、本接合用回転ツール114を突合部117から外側に外れた外側枠部材110の表面112aへと移動させ、その位置で、本接合用回転ツール114を引き抜く。このように、本接合用回転ツール114を、凹溝132,132を回避して移動させているので、熱媒体管131と本接合用回転ツール114が干渉することはない。また、本接合用回転ツール114の引抜位置(終了位置E12)が、突合部117からオフセットした位置となっているので、攪拌ピン114bの抜き穴Q12が突合部117に形成されることはない。これにより、外側枠部材110と内側枠部材111との接合性をさらに高めることができる。
【0126】
(補修工程)
次に、第一実施形態の補修工程と同様に、終了位置E12に形成された抜き穴Q12に充填用金属部材(図示せず)を充填して、外側枠部材110と充填用金属部材の突合部に対して表面112a側から摩擦攪拌を行い、この摩擦攪拌によって形成された抜き穴に溶接金属(図示せず)を充填して補修する。
【0127】
(下穴形成工程)
表面112a側における補修工程が終了したら、図14に示すように、外側枠部材110および内側枠部材111を裏返し、裏面112bを上にして、図示しない治具で移動不能に拘束する。そして、表面112a側における下穴形成工程と同様に、外側枠部材10の裏面112bの適所に開始位置(図示せず)を設定し、この開始位置に本接合用回転ツール114の攪拌ピン114b(図15参照)が挿入される下穴(図示せず)を形成する。
【0128】
(第二本接合工程)
下穴の形成が終了したら、裏面112b側から突合部117に沿って本接合用回転ツール114を移動させて摩擦攪拌を行う。第二本接合工程では、凹溝132および熱媒体管131が露出しないので、これらを回避する必要はない。
【0129】
図14の(a)に示すように、本接合用回転ツール114の挿入位置(開始位置S13)は、突合部117から外側に外れた外側枠部材110の裏面112bとなっている。本接合用回転ツール114を回転させながら、攪拌ピン114b(図15参照)を下穴に挿入し、そのまま開始位置S13から突合部117へ回転させながら移動させ、その軸心が突合部117の突合面上に位置する部分に移動したならば、軸芯が突合部117に沿うように、本接合用回転ツール114を移動させる。
【0130】
その後、本接合用回転ツール114の回転および移動を継続し、図14の(b)に示すように、本接合用回転ツール114を突合部117の全周に沿って一周させて塑性化領域W6を形成する。このとき、本接合用回転ツール114の突合部117上の移動始端P1と移動終端P2とがオーバーラップしており、塑性化領域W6の一部が重複するように構成されている。
【0131】
本接合用回転ツール114が、突合部117上の移動終端P2まで移動したら、本接合用回転ツール114を、突合部117から外側に外れた外側枠部材110の裏面112bへと移動させ、その位置で、本接合用回転ツール114を引き抜く。このように、本接合用回転ツール114の引抜位置(終了位置E13)が、突合部117からオフセットした位置となっているので、攪拌ピン114bの抜き穴が突合部117に形成されることはない。これにより、外側枠部材110と内側枠部材111との接合性をさらに高めることができる。
【0132】
なお、本実施形態では、表面112aおよび裏面112bにおいて、本接合用回転ツール114を突合部117に沿わせてそれぞれ一周回転させているが、裏面112bにおいては、本接合用回転ツール114が熱媒体管131と干渉することがないので、第一実施形態と同様に、本接合用回転ツール114を突合部117に沿わせて二周回転させるようにしてもよい。
【0133】
(補修工程)
第二本接合工程が終了したら、終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する。補修工程は、第一実施形態における補修工程と同様の工程であるので詳細な説明を省略する。
【0134】
以上のような工程を経ることで、枠構造体101の製造が完了する。このような製造方法で製造された枠構造体101は、第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる。なお、第二実施形態の方が、熱媒体管131の凹溝130への布設作業は熱媒体管131を広げるだけで済むので容易に行える。
【0135】
(第三実施形態)
次に、本発明を実施するための第三の最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0136】
図16および図17に示すように、本実施形態に係る枠構造体201は、外側に位置する外側枠部材210の内側に内側枠部材211を嵌め合わせて、外側枠部材210の内周面210aと内側枠部材211の外周面211aとを突き合わせ、外側枠部材210および内側枠部材211の表面212a側および裏面212b(図18参照)側から突合部217に沿って本接合用回転ツール214(図18参照)を移動させて摩擦攪拌を行い、外側枠部材210および内側枠部材211を接合して構成されている。
【0137】
外側枠部材210および内側枠部材211は、第一実施形態と同様に、それぞれ平面視長方形の矩形枠状を呈しており、長辺を構成する長尺直方体状の金属部材15(以下、「15a」と表示する場合がある)の長手方向の端面を、短辺を構成する隣接する長尺直方体状の金属部材15(以下、「15b」と表示する場合がある)の側面に突き合わせて、その突合部16に沿って摩擦攪拌を行うことによって形成されている。突合部16には、塑性化領域W1が表面212a側に形成され、塑性化領域W2が裏面212b側に形成されており、金属部材15,15同士が一体的に接合されている。各塑性化領域W1,W2は、その底部同士が互いに重合するように形成されており、金属部材15,15同士の突合部16の厚さ全体に亘って摩擦攪拌が行われている。
【0138】
ところで、かかる枠構造体201は、外側枠部材210の内周面210aおよび内側枠部材211の外周面211aのいずれにも凹溝が形成されず、熱媒体管が設けられていない点で、第一実施形態の枠構造体1および第二実施形態の枠構造体101と異なる。
【0139】
内側枠部材211の外周面211aおよび外側枠部材210の内周面210aは、それぞれ平面状に形成されており、嵌合工程の前に、面削加工が施され外周面211aおよび内周面210a(接合面218)の表面の凹凸が除去され、脱脂工程が施され付着した加工油等の油脂分や汚れが除去されている。
【0140】
本実施形態では、外側枠部材210と内側枠部材211との突合部217における摩擦攪拌が、第二本接合工程において、第一本接合工程で表面212a側からの摩擦攪拌にて形成された塑性化領域W7に本接合用回転ツール214(図18参照)の攪拌ピン214bを入り込ませつつ行うようになっている。これによって、突合部217には、表面212a側から形成された塑性化領域W7と、裏面212b側から形成された塑性化領域W8の底部同士が互いに重合するように形成されている。
【0141】
次に、本実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明する。
【0142】
(枠部材製造工程)
まず、外側枠部材210および内側枠部材211を製造する。外側枠部材210および内側枠部材211を製造する枠部材製造工程は第一実施形態と同様の工程であるので、詳細な説明を省略する。
【0143】
(面削工程・脱脂工程)
次に、第一実施形態と同様の作業工程で、外側枠部材210の内周面210aと、内側枠部材211の外周面211aとからなる接合面218を、面削加工した後に、脱脂加工を行う。
【0144】
(嵌合工程)
充填工程が終了したら、第一実施形態と同様に、外側枠部材210を図示しない摩擦攪拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示しない治具を用いて移動不能に拘束する。そして、内側枠部材211の内側に取り付けられている各第二タブ部材52の抜き穴Q1に、フック56(吊り用治具)を螺合させてそれぞれ装着し、これらフック56に、ワイヤー57の先端に取り付けられたフック58を係止して、ワイヤー57を介してクレーン等の吊り手段(フックのみ図示)で吊り上げる。そして、内側枠部材211を外側枠部材210の上方から吊り下ろしながら、下方へ適宜押し込んで、外側枠部材210の内周面210a内に嵌め合わせる。
【0145】
その後、ワイヤー57と一体のフック58を、フック56から離脱させ、各第二タブ部材52,52・・からフック56,56・・をそれぞれ取り外す。その後、第二タブ部材52を内側枠部材211から切除する。
【0146】
(下穴形成工程)
第二タブ部材52の切除が終了したら、第一実施形態と同様に、外側枠部材210の表面212aの適所に開始位置S22を設定し、この開始位置S22に本接合用回転ツール214(図15参照)の攪拌ピン214bが挿入される下穴(図示せず)を形成する。開始位置S22は、外側枠部材210の表面212aで、突合部217から所定の距離オフセットした位置に設定されている。
【0147】
(第一本接合工程)
下穴の形成が終了したら、表面212a側から突合部217に沿って本接合用回転ツール214(請求項における接合用回転ツール)を移動させて摩擦攪拌を行う。本接合用回転ツール214は、外側枠部材210や内側枠部材211よりも硬質の金属材料からなり、図18に示すように、円柱状を呈するショルダ部214aと、このショルダ部214aの下端面に突設された攪拌ピン(プローブ)214bとを備えて構成されている。本接合用回転ツール214の寸法・形状は、外側枠部材210および内側枠部材211の材質や厚さ等に応じて設定すればよい。本実施形態では、凹溝および熱媒体管が設けられていないので、攪拌ピン214bの突出長さ寸法は、摩擦攪拌によって形成される塑性化領域W7,W8がそれぞれ外側枠部材210および内側枠部材211の厚さの半分よりも深くなるように設定されており、第二実施形態の本接合用回転ツール114の攪拌ピン114bよりも、攪拌ピン214bが長く形成されている。
【0148】
第一本接合工程では、表面212a側から外側枠部材210と内側枠部材211との突合部217に沿って本接合用回転ツール214を一周移動させて摩擦攪拌を行い、さらに本接合用回転ツール214を連続して移動させて一周目で形成された塑性化領域(図示せず)を再攪拌して塑性化領域W7を形成した後、突合部217から偏移させた外側枠部材210の表面212a上の位置で本接合用回転ツール214を抜き取って、この位置を終了位置E22とする。なお、本接合用回転ツール214の移動軌跡は、第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0149】
(補修工程)
次に、終了位置E22に形成された抜き穴(図示せず)を第一実施形態と同様に、抜き穴に充填用金属部材(図示せず)を充填して、外側枠部材210と充填用金属部材の突合部に対して表面212a側から摩擦攪拌を行い、この摩擦攪拌によって形成された抜き穴に溶接金属(図示せず)を充填して補修する。
【0150】
(下穴形成工程)
表面212a側における補修工程が終了したら、図18に示すように、外側枠部材210および内側枠部材211を裏返し、裏面212bを上にして、図示しない治具で移動不能に拘束する。そして、表面212a側における下穴形成工程と同様に、外側枠部材210の裏面212bの適所に開始位置(図示せず)を設定し、この開始位置に本接合用回転ツール214の攪拌ピン214b(図15参照)が挿入される下穴(図示せず)を形成する。
【0151】
(第二本接合工程)
下穴の形成が終了したら、本接合用回転ツール214を回転させながら、攪拌ピン214b(図18参照)を下穴に挿入し、そのまま開始位置から突合部217へ回転させながら移動させ、その軸心が突合部217の突合面上に位置する部分に移動したならば、軸芯が突合部217に沿うように、本接合用回転ツール214を移動させる。このとき、本接合用回転ツール214の攪拌ピン214bは、その先端部が、第一本接合工程で表面212a側からの摩擦攪拌にて形成された塑性化領域W7に入り込んだ状態で魔削攪拌が行われる。なお、本接合用回転ツール214の移動軌跡は、第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0152】
(補修工程)
第二本接合工程が終了したら、終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する。補修工程は、第一実施形態における補修工程と同様の工程であるので詳細な説明を省略する。
【0153】
以上のような工程を経ることで、枠構造体201の製造が完了する。このような製造方法で製造された枠構造体201は、第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる他に、外側枠部材210と内側枠部材211との突合部217での摩擦攪拌によって、表面212a側から形成された塑性化領域W7と、裏面212b側から形成された塑性化領域W8の底部同士が互いに重合するので、塑性化領域W7,W8同士が一体化され、より一層気密性および水密性の高い突合部217を形成することができる。
【0154】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これに限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。例えば、前記した第一実施形態においては、二種の枠部材(外側枠部材10と内側枠部材11)を内外方向に嵌合して枠構造体1を形成しているが、これに限定されるものではなく、三種以上の枠部材を重ねてもよい。この場合、二重に形成された枠部材(外側枠部材となる)の内側にさらに他の内側枠部材を嵌合して摩擦攪拌してもよいし、二重に形成された枠部材(内側枠部材となる)をさらに他の外側枠部材の内側に嵌合して摩擦攪拌してもよい。このようにすれば、気密性および水密性がより一層高い枠構造体を形成することができる。
【0155】
また、前記した第一実施形態では、外側枠部材10および内側枠部材11を構成する金属部材15,15同士の突合部16の各塑性化領域W1,W2は、その底部同士が互いに重複するように形成されているが、これに限定されるものではなく、各塑性化領域の底部同士が重複していなくてもよい。
【0156】
さらに、前記した第一実施形態では、脱脂工程において、面削加工された外側枠部材10および内側枠部材11を脱脂処理液内に浸けて、接合面18に付着した加工油等の油脂分や汚れを取り除いたが、これに限定されるものではなく、接合面18に直接アルコールやアセトン等を適量散布した後に、ウエスと呼ばれる布によって、接合面18に付着した加工油等の油脂分や汚れとともに拭き取るようにしてもよい。ここで、アルコールとして、遺伝子組み換えによる品種改良がされたトウモロコシ、大豆等の穀物を発酵させて得られたエチルアルコールを抽出、精製したいわゆるバイオエタノールを使用すれば、経済面および環境面から見ても好ましい。勿論、接合面18の表面だけでなく、外側枠部材10および内側枠部材11の他の面に付着した加工油等の油脂分や汚れも同時に拭き取ることが望ましいのは言うまでもない。
【0157】
また、前記した第一実施形態では、外側枠部材10の表面12aおよび裏面12b上に抜き穴を形成して、この抜き穴を補修するようにしているが、摩擦攪拌を行う際にタブ部材を用いて、このタブ部材上に抜き穴を形成するようにしてもよい。このようにすれば、最終的にタブ部材を切除するので、抜き穴の補修を行わなくても済む。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】第一の実施形態に係る枠構造体を示した斜視図である。
【図2】内側枠部材の製造工程を説明するための平面図である。
【図3】第一の実施形態に係る枠構造体の内側枠部材を吊下げた状態を示した分解斜視図であって、る。
【図4】第一の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、外側枠部材の内側に内側枠部材を嵌合させた状態を示した斜視図である。
【図5】第一の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、外側枠部材の内側に内側枠部材を嵌合させた後にタブ部材を切除した状態を示した斜視図である。
【図6】第一の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、(a)、(b)および(c)は、第一本接合工程における本接合用回転ツールの移動状態を示した平面図である。
【図7】第一の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、(a)は、第一本接合工程における摩擦攪拌の状態を示した断面図、(b)は、第二本接合工程における摩擦攪拌の状態を示した断面図である。
【図8】第一の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、補修工程を説明するための平面図である。
【図9】第一の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、補修工程を説明するための断面図である。
【図10】第二の実施形態に係る枠構造体を示した斜視図である。
【図11】第二の実施形態に係る枠構造体の内側枠部材を吊下げた状態を示した分解斜視図である。
【図12】第二の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、外側枠部材の内側に内側枠部材を嵌合させた後にタブ部材を切除した状態を示した斜視図である。
【図13】第二の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、(a)および(b)は、第一本接合工程における本接合用回転ツールの移動状態を示した平面図である。
【図14】第二の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、(a)および(b)は、第二本接合工程における本接合用回転ツールの移動状態を示した平面図である。
【図15】第二の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、第二本接合工程における摩擦攪拌の状態を示した断面図である。
【図16】第三の実施形態に係る枠構造体を示した斜視図である。
【図17】第三の実施形態に係る枠構造体の内側枠部材を吊下げた状態を示した分解斜視図である。
【図18】第三の実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明するための図であって、第二本接合工程における摩擦攪拌の状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0159】
1 枠構造体
10 外側枠部材
10a 内周面
11 内側枠部材
11a 外周面
12a 表面
12b 裏面
14 本接合用回転ツール(接合用回転ツール)
15 金属部材
17 突合部
30 凹溝
31 熱媒体管
33 熱伝導性物質
52 第二タブ部材(タブ部材)
56 フック(吊り用治具)
H 充填用金属部材(補修部材)
K 溶接金属
Q1 抜き穴(タブ部材の穴)
Q2 抜き穴(接合用回転ツール抜き穴)
Q3 抜き穴(補修用回転ツール抜き穴)
101 枠構造体
110 外側枠部材
110a 内周面
111 内側枠部材
111a 外周面
112a 表面
112b 裏面
114 本接合用回転ツール(接合用回転ツール)
117 突合部
130 凹溝
131 熱媒体管
201 枠構造体
210 外側枠部材
210a 内周面
211 内側枠部材
211a 外周面
212a 表面
212b 裏面
214 本接合用回転ツール(接合用回転ツール)
217 突合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の外側枠部材の内側に金属製の内側枠部材を嵌め合わせて接合して枠構造体を形成する枠構造体の製造方法であって、
前記外側枠部材の内周面と前記内側枠部材の外周面を、面削加工して平坦にする面削工程と、
前記外側枠部材の内周面と前記内側枠部材の外周面を、脱脂して油脂を除去する脱脂工程と、
前記内側枠部材を前記外側枠部材の内側に嵌め合わせて、前記内側枠部材の前記外周面と前記外側枠部材の前記内周面とを突き合わせる嵌合工程と、
前記枠部材の表面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、
前記枠部材の裏面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を備えた
ことを特徴とする枠構造体の製造方法。
【請求項2】
前記嵌合工程の前に、前記外側枠部材の内周面または前記内側枠部材の外周面に凹溝を形成する溝形成工程と、
前記凹溝内に熱媒体管を布設する熱媒体管布設工程と、をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項3】
前記熱媒体管布設工程後に、前記凹溝内の前記熱媒体管の周囲の空隙に熱伝導性物質を充填する充填工程を、さらに備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項4】
前記熱伝導性物質は、金属粉末、金属粉末ペースト又は金属シートである
ことを特徴とする請求項3に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項5】
前記嵌合工程において、前記内側枠部材の内周面側に設けられたタブ部材に穴を形成してこの穴に吊り用治具を装着し、前記内側枠部材を吊り手段で吊りながら、前記外側枠部材の内側に吊り下ろして嵌め合わせる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第一本接合工程および第二本接合工程において、前記突合部の全周に亘って前記接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項7】
前記接合用回転ツールの挿入位置に下穴を形成する下穴形成工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項8】
前記第一本接合工程において、前記枠部材の表面側から前記枠部材同士の前記突合部に沿って前記接合用回転ツールを一周移動させて摩擦攪拌を行い、さらに前記接合用回転ツールを移動させて一周目で形成された塑性化領域を再攪拌した後に、
前記枠部材の表面側に現れる前記突合部から偏移させた位置で前記接合用回転ツールを抜き取って、この位置を終了位置とし、
その後、前記終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する補修工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第二本接合工程において、前記枠部材の裏面側から前記枠部材同士の前記突合部に沿って前記接合用回転ツールを一周移動させて摩擦攪拌を行い、さらに前記接合用回転ツールを移動させて一周目で形成された塑性化領域を再攪拌した後に、
前記枠部材の裏面側に現れる前記突合部から偏移させた位置で前記接合用回転ツールを抜き取って、この位置を終了位置とし、
その後、前記終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する補修工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項10】
前記補修工程において、前記接合用回転ツール抜き穴に補修部材を挿入し、前記接合用回転ツール抜き穴の周縁部と前記補修部材との突合部に沿って補修用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行った後に、
前記突合部から偏移させた位置で前記補修用回転ツールを抜き取って、この位置を終了位置とし、
その後、前記終了位置に形成された補修用回転ツール抜き穴に溶接金属を埋めて補修する
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項11】
前記枠部材は、直線状を呈する四つの金属部材を矩形枠状に組み合わせ、
一の前記金属部材の端面を、他の隣接する前記金属部材の側面に突き合わせて摩擦攪拌によって接合する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第二本接合工程において、前記第一本接合工程で形成された塑性化領域に前記接合用回転ツールの攪拌ピンを入り込ませつつ摩擦攪拌を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の枠構造体の製造方法。
【請求項13】
金属製の枠部材の内側に他の金属製の枠部材を嵌め合わせて突き合わせ、
前記枠部材の表面側および裏面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行い、前記枠部材同士を接合した
ことを特徴とする枠構造体。
【請求項14】
前記枠部材のうち外側に位置する外側枠部材の内周面、または内側に位置する内側枠部材の外周面に凹溝を形成し、
前記凹溝内に熱媒体管を布設した
ことを特徴とする請求項13に記載の枠構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−297755(P2009−297755A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156093(P2008−156093)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】