説明

枡の補修機および補修方法

【課題】 本体2及び蛇腹部1を枡16及び取付管17の全面に密着させ、それらの補修を正確に行うこと。
【解決手段】 本体2の開口端を閉塞する蓋板3に、3以上の脚7の上端を固定し、その下端を本体2の底部2aに接地させて、本体2の高さを一定にする。そして、圧縮空気を内部に供給して適宜圧に維持し、本体の全外周を枡等に隙間なく圧接する。それと共に、蓋板3を貫通するハンドル5の下端に連結体6の一端を枢着部11を介し接続する。そして連結体6の他端にカメラ4を設け、その軸線を取付管の軸線に整合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水配管系の桝と取付管の入口部とを補修する桝の補修機およびその補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
桝は、その外周に入口管と出口管とが接続され、その出口管の下流端が下水本管に接続されている。永年使用に伴い、入口管及び出口管で構成する取付管の出入口部及び桝内面全体を補修する必要が生じる。
そのような補修機として、特許文献1に記載の「宅マス管口補修機」が提案されている。この補修機は、その特許請求の範囲に記載されている如く、伸縮性補修材の外周に熱硬化性付着剤を塗布した補修材を用い、それを宅マス管口の周縁に密着させる宅マス管口補修機であり、その天板に結合されたゴムスリーブの側面に蛇腹状スリーブが連通されている。そして、内部の気密性が保持された伸縮性ラバーブーツと、天板に気密性を保って昇降自在に挿通されたシャフトと、シャフトの下端に回動自在に連結されると共に、蛇腹状スリーブの前面に対して先端が固設されたロッドと、シャフトの外周とロッドの外周に設けられたヒータと、ラバーブーツを膨張するために天板に設けられたエアー出入口とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2906331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来型の補修機は、内部に加圧空気を封入したとき、ゴムスリーブや蛇腹状スリーブの各部が自由に膨張し、その外周の断面が弧状になり、その外面の一部が桝及び取付管の全面に接触せず、部分的に非接触部が存在するおそれがある。すると、補修布と枡等との間に隙間が生ずる。
また、蛇腹状スリーブの軸線と取付管の軸線とを正確に整合させることが難しく、取付管の出入口の補修を正確にでき難かった。
そで本発明は、係る問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、枡の内周面およびその取付管の入口部を補修する補修機であって、有底の筒状に形成され、加圧気体を介して膨張するゴム弾性を有し、その底部(2a)の外面側に伸縮自在な蛇腹部(1)が一体に突設された補修機本体(2)を具備し、その本体(2)の外周に熱硬化性または光硬化性の樹脂含浸布または樹脂膜からなる補修材(20)が被着されて、それが枡(16)の内周面に圧接固定されるものにおいて、
その本体(2)の上端開口を閉塞する蓋板(3)と、前記蛇腹部(1)の先端に取付られ、取付管の内部を観察するカメラ(4)と、
上下動および起倒自在に前記蓋板(3)を気密に貫通する細長いハンドル(5)と、そのハンドル(5)の下端に一端が枢着部(11)で軸支され、他端が前記カメラ(4)に接続される細長い連結体(6)と、
互いに離間して上端が前記蓋板(3)に固定され、下端が前記本体(2)の底部(2a)に着地される3以上の脚(7)と、を具備する枡の補修機である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の枡の補修機において、
前記連結体(6)に上端が接続され下端が本体(2)の底部(2a)に着地される小脚(8)を具備する枡の補修機である。
請求項3記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の枡の補修機において、
前記本体(2)の底面の外面側に樋状部(9)が突設され、その樋状部(9)の一端に前記蛇腹部(1)が一体に連設された枡の補修機である。
【0007】
請求項4に記載の本発明は、上記いずれかの補修機を用いて、枡の内周面およびその取付管の入口部を補修する枡の補修方法において、
補修機本体(2)の外周に熱硬化性または光硬化性の樹脂含浸布または樹脂膜からなる補修材(20)を被着する工程と、
その補修機本体(2)を枡(16)内に挿入すると共に、各脚(7)の下端を前記本体(2)の底部(2a)に着地する工程と、
前記カメラ(4)で取付管を観察しつつ、前記ハンドル(5)を介して蛇腹部(1)を取付管に整合させ且つ、補修機本体(2)の内部に加圧空気を供給する工程と、
その本体(2)内のヒータまたは光ランプを介して、前記樹脂含浸布または樹脂膜を硬化させる工程と、
次いで、本体(2)の内部の加圧空気を外部に放出して、その本体(2)を枡の外に取り出す工程と、を具備する枡の補修方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の桝の補修機は、3以上の脚7の上端が蓋板3に固定され、その下端が本体2の底部2aに着地されるように構成したから、蓋板3を上方から下方に押圧することにより、本体2の高さを特定し、その状態で適宜圧の加圧気体によって、本体2の外周を枡16及び取付管17に隙間なく、確実に密着させることができる。それにより、補修材20を枡16及び取付管17に確実に圧着固定し、補修材と枡等との間に隙間のない信頼性の高い桝の補修を確保し得る。
さらに、その3以上の脚7に設置状態で、ハンドル5及び連結体6を介し、カメラ4の向きを変えることにより、蛇腹部1の向きを変えてそれを取付管17に整合させることができる。これは、カメラ4によって取付管の内部を観察しつつ、それを取付管の軸線方向にハンドル5及び連結体6を介して整合させることができるからである。その整合によって、取付管17と枡16との継目部分を正確に補修することが可能となる。
【0009】
上記構成において、請求項2に記載のように、連結体6に小脚8を設け、それが本体2の底部2aに着地するようにした場合には、カメラ4の向きを小脚8を介してより容易に変更することができ、作業性の良い桝の補修機となる。
上記構成において、請求項3に記載のように本体2の底面の外面側に樋状部9を突設し、その樋状部9の一端に蛇腹部1を形成した場合には、枡16の底面に樋状凹陥部を有する場合にも、その枡内を完全に補修することが可能となる。
また、請求項4に記載の枡の補修方法によれば、作業性が良く、特に枡と取付管の入口部との補修を、ともに正確に行える補修方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の桝の補修機の縦断面図。
【図2】図1のII−II矢視略図。
【図3】本発明の桝の補修機のハンドル5と連結体6とカメラ4との動作説明図。
【図4】図1のIV−IV矢視断面図。
【図5】本発明の桝の補修機の一部破断斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
本発明の桝の補修機は、本体2と蓋板3とを有し、内部に3以上の、この例では4本の脚7とを具備する。
本体2は、膨張および収縮自在のゴム膜からなり、有底の筒状でカメ型に形成され、その底部2aの一側に蛇腹部1が一体に突設されている。なお、本体の外形は、各種枡の形状に整合するように作られる。本体の横断面が方形の場合もある。
その本体2の底部2aには、樋状部9が設けられ、その樋状部9の一端に蛇腹部1の開口部が連設し、その先端にカメラ4の先端の外周縁の全周が気密に接合されている。
その蓋板3に細長いハンドル5が貫通し、そのハンドル5の下端が枢着部11を介して、細長い連結体6の一端に軸支され、その連結体6の他端がカメラ4に固定されている。連結体6の枢着部11に近い位置には、小脚8の上端が固定され、その他端が底部2a又は樋状部9に接地する。
【0012】
蓋板3には、球型軸受22が設けられ、その球型軸受22をハンドル5が貫通して、そのハンドル5が上下動および起倒自在に傾斜する。そして、シール用蛇腹21によって蓋板3とハンドル5との貫通部を気密に保持する。
さらに蓋板3には、ノズル12が貫通し、その上端に開閉弁14を介してエアーパイプ13が接続されている。さらに4本の脚7には、上下に離間し一対の連結体6が枠状に固定され、その連結体6に支持板10の一端が夫々接続されている。
この例でその支持板10は、V字状に曲折形成された金属板からなり、その他端がヒータ18に接続されている。この支持板10を半径方向に拡縮することにより、ヒータ18の位置を本体2に接離自在に近接できる。ヒータ18には、電気ケーブル15の一端が接続され、それが蓋板3を気密に貫通する。電気ケーブル15の他端は、各種スイッチや制御装置を介して電源に接続されている。
【0013】
なお、本体2の上端開口と蓋板3とは締結バンド19を介して気密に接続されている。そして図1で、ハンドル5を一例として、実線の状態から鎖線の状態に傾けると、連結体6及びカメラ4は、実線の状態から鎖線の状態に移動し、蛇腹部1が引き伸ばされる。
なお、カメラ4には図示しないケーブルの一端が接続され、それが蓋板3を気密に貫通し、画像モニターに接続されている。
【0014】
(作用)
図3に示す如く、本体2の外周面及び底部2a並びに蛇腹部1に補修材20を被着する。この補修材20は、熱硬化性樹脂等を含浸した布状のもので、それが本体2,蛇腹部1の周りに懸回される。このとき各端部は互いに重ね合わされて、内部に加圧空気が封入されたとき、補修材20の重なり部分が次第に少なくなるように広がる。
なお、補修材20としては熱硬化性又は光硬化性の樹脂を含浸した補修布を懸回する場合と、筒状に形成された拡縮自在な光硬化性の樹脂膜とする場合が存在する。本発明は、何れのものであってもよい。
【0015】
そして、予め補修材20が被覆された本補修機を枡16内に挿入する。このとき図示しないモニターによって、カメラ4の位置が取付管17の位置に整合するようにする。次いで、開閉弁14を開放し、エアーパイプ13及びノズル12から本体2内に加圧空気を封入する。このとき、外力を加えて蓋板を下方に押しつけ、4つの脚7を本体の底面に接地させる。それにより本体の高さを特定する。そして、本体内の気圧を適宜圧にして、本体の全周が枡16の内面に密着するように、その気圧を保持する。本体2の底部2aの樋状部9は、枡16の底の溝に密着する。そして、ハンドル5を上下動させると共に、それを傾斜させ、連結体6を介してカメラ4の向きを変え、蛇腹部1の軸線と、取付管17の軸線とを整合させる。そして、補修材20を枡16及び取付管17の内面に圧着させ、ヒータ18を加熱することにより、この例では熱硬化性の補修材20を硬化させ、枡16内面及び取付管17の出入口部を補修する。
【0016】
このときも、前述のように、蓋板3を下方に押圧し、脚7が底部2aに着座するように維持する。なお、ハンドル5を上下動させると共に、傾斜させるとき、小脚8を本体2の樋状部9に接地させ、又は非接地状態で、連結体6及びカメラ4の向きを変える。小脚8を接地させた場合には、連結体6の軸線の傾斜を容易に行える。この例では、連結体6およびカメラ4の向きを実線の状態から鎖線の状態に変化させることができる。
補修材20の硬化の後、本体2の内部の加圧空気を外部に放出し、本体2の外周を枡16及び取付管17から分離することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 蛇腹部
2 本体
2a 底部
3 蓋板
4 カメラ
5 ハンドル
6 連結体
7 脚
【0018】
8 小脚
9 樋状部
10 支持板
11 枢着部
12 ノズル
13 エアーパイプ
14 開閉弁
15 電気ケーブル
【0019】
16 枡
17 取付管
18 ヒータ
19 締結バンド
20 補修材
21 シール用蛇腹
22 球型軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枡の内周面およびその取付管の入口部を補修する補修機であって、有底の筒状に形成され、加圧気体を介して膨張するゴム弾性を有し、その底部(2a)の外面側に伸縮自在な蛇腹部(1)が一体に突設された補修機本体(2)を具備し、その本体(2)の外周に熱硬化性または光硬化性の樹脂含浸布または樹脂膜からなる補修材(20)が被着されて、それが枡(16)の内周面に圧接固定されるものにおいて、
その本体(2)の上端開口を閉塞する蓋板(3)と、前記蛇腹部(1)の先端に取付られ、取付管の内部を観察するカメラ(4)と、
上下動および起倒自在に前記蓋板(3)を気密に貫通する細長いハンドル(5)と、そのハンドル(5)の下端に一端が枢着部(11)で軸支され、他端が前記カメラ(4)に接続される細長い連結体(6)と、
互いに離間して上端が前記蓋板(3)に固定され、下端が前記本体(2)の底部(2a)に着地される3以上の脚(7)と、を具備する枡の補修機。
【請求項2】
請求項1に記載の枡の補修機において、
前記連結体(6)に上端が接続され下端が本体(2)の底部(2a)に着地される小脚(8)を具備する枡の補修機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の枡の補修機において、
前記本体(2)の底面の外面側に樋状部(9)が突設され、その樋状部(9)の一端に前記蛇腹部(1)が一体に連設された枡の補修機。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載の枡の補修機を用いて、枡の内周面およびその取付管の入口部を補修する補修方法において、
補修機本体(2)の外周に熱硬化性または光硬化性の樹脂含浸布または樹脂膜からなる補修材(20)を被着する工程と、
その補修機本体(2)を枡(16)内に挿入すると共に、各脚(7)の下端を前記本体(2)の底部(2a)に着地する工程と、
前記カメラ(4)で取付管を観察しつつ、前記ハンドル(5)を介して蛇腹部(1)を取付管に整合させ且つ、補修機本体(2)の内部に加圧空気を供給する工程と、
その本体(2)内のヒータまたは光ランプを介して、前記樹脂含浸布または樹脂膜を硬化させる工程と、
次いで、本体(2)の内部の加圧空気を外部に放出して、その本体(2)を枡の外に取り出す工程と、を具備する枡の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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