説明

架橋された有機ポリマーの製造法

【課題】TAICROSより明らかに低い蒸気圧を有し、しかし、比較可能な架橋効率及び重合特性を有する熱安定性の架橋剤を提供する。
【解決手段】ポリマーと架橋剤との反応によって架橋された有機ポリマーを製造する方法において、架橋剤が、式I又は式IIの化合物を有することを特徴とする方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーと、置換されたシアヌレート及びイソシアヌレートの群からの架橋剤との反応によって架橋された有機ポリマーを製造する方法、並びにこの群からの新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
継続使用温度に並びに短期の高い熱負荷に鑑みたプラスチック材料の熱的な要求は絶えず上昇している。自動車分野において継続使用温度が上昇していることの背景には、例えば、いっそう性能のよいエンジンの開発、並びにいっそう良好な防音(これはエンジンルーム内の温度を連続的に上昇させる)がある。そうこうするうちに、自動車メーカーから250℃までの継続使用温度が要求される。それゆえ、ますます標準ゴム材料は、より高い熱安定性を有する材料か又は高融点熱可塑性プラスチックで置き換えられる。
【0003】
電子分野、例えば"コネクタ"、"接点ホルダ"又は回路基板における適用には、例えば金属接合部のはんだ付けに際して又は過電圧に際して発生することのある、場合によってはその融点を超える非常に高い温度に、その形を変えることなく短期的に耐えなければならない材料が必要とされる。
【0004】
これらの要求を満たすために熱可塑性プラスチックが使用され、その際、それらの熱安定性はラジカル架橋によってさらに高められる。該架橋は、基本的に、架橋助剤、例えばトリアリルシアヌレート(TAC)又はトリアリルイソシアヌレート(TAICROS(R))によって明らかに改善されることができる。
【0005】
これらの高い要求のために問題になっているプラスチック材料(エンジニアリングポリマー及び高性能ポリマー)、例えばPA 12、PA 11、PA 6、PA 66、PA 46タイプのポリアミド、又はポリエステルは、しかしながら、例えばTACがもはや使用可能ではなくなるぐらい高い融点及び加工温度(>180℃)を有している(なぜなら、TACはこれらの温度ですでに熱重合するからである)。TAICROSは、それがより熱安定性であることから、加工時間に応じて最大250℃まで使用されることができる。しかしながら、それはこれらの加工温度で比較的高い蒸気圧を有しており、このことは架橋剤の損失及びなかでも排出の問題をもたらす。それによってコンパウンド中で架橋剤の均一な濃度を保証することは非常に困難である。
【0006】
2009年に日本化成より、エラストマー及び熱可塑性プラスチック用の構造
【化1】

の新規の変性架橋剤を提供する特許が公開されており、該架橋剤は固体であり、それゆえロール機で又は押出機中でより簡単に組み込まれることができ、それらは殊にフッ素ゴムとのより良好な相容性を有し、それゆえ金型汚染の問題の軽減をもたらす。
【0007】
これらの化合物は、しかしながら、それらがラジカル架橋に関して二官能性にすぎず、それに即して架橋効率がより少ないという欠点を有する。さらに該化合物が有する欠点とは、それらがエステル基とともに、加水分解し且つ低分子化合物を遊離し得る化学的に比較的安定に乏しいさらなる官能基を材料中に取り込むことであり、これは架橋されたポリマーの化学的安定性にとって欠点である。化合物の熱安定性もしくは蒸気圧に関しては何も知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、TAICROSより明らかに低い蒸気圧を有し、しかし、比較可能な架橋効率及び重合特性を有する熱安定性の架橋剤の需要が存在する。目下のところ、かかる架橋剤は、市場で入手可能ではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、ポリマーと架橋剤との反応によって架橋された有機ポリマーを製造する方法において、架橋剤が、式I
【化2】

又は式II
【化3】

[式中、
1、R2、R3は、同じか又は異なって、二価の、スペーサーとも称される炭素基であり、該炭素基は、
分枝した又は分枝していない、C1〜C20、殊にC1〜C6のアルキレン、その際、スペーサーは、場合によっては、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
分枝した又は分枝していない、C2〜C20、殊にC2〜C8のアルケニレン、その際、スペーサーは、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
単核又は二核の、場合により、そのつど1〜3個のC原子を有する1〜3個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C5〜C12のシクロアルキレン、シクロアルケニレン又はシクロアルキルジエニレン、
場合により、1〜2個のC原子を有する1〜4個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C6〜C14の二価の、脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基、その際、脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基は、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、の群から選択されている]を有することを特徴とする方法である。
【0010】
特に有利なのは、式中、R1、R2又はR3が同じであり、且つ
分岐していないC1〜C4−アルキレン、又は
2〜C8−アルケニレン、フェニレン又はシクロヘキサニレン
の群から選択された炭化水素基を表す化合物である。
【0011】
特に選択されるのは、化合物のトリメチルアリルシアヌレート、トリメチルアリルイソシアヌレート、トリヘキセニルシアヌレート、トリヘキセニルイソシアヌレート及びトリアリルフェニルシアヌレート及び−イソシアヌレートである(135:123157 CA,Synthesis and characterization of triallylphenoxytriazine and the properties of its copolymer with bismaleimide,Fang,Qiang; Jiang,Luxia,Journal of Applied Polymer Science (2001)、81(5)、1248−1257)。
【0012】
使用される化合物のモル質量は、有利には≧290g/モル、殊に600g/モルまでであり、且つ損失質量は−熱重量分析により測定して(条件:RT〜350℃、空気中での加熱速度10K/分)、250℃まで有利には20質量%未満であり、もしくは蒸気圧は、200℃で有利には<20mbarである。
【0013】
本発明による方法は、熱可塑性ポリマー、例えばポリビニルポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー又はそれらの混合物に、それらが互いに相容性と知られている範囲内で特に適している。
【0014】
有利なのは、それらが互いに相容性と知られている範囲内で、融点>180℃を有する高融点ポリマー、例えばポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー又はそれらの混合物である。
【0015】
特に有利なのは、ポリアミド及びポリエステル又はそれらの混合物である。
【0016】
従来技術によれば、それから溶融ポリマー及び架橋剤として作用する化合物からの混合物が、ポリマー又はオリゴマーの溶融温度に等しいか又はそれより高い加工温度で製造される。
【0017】
式I又はIIに記載の化合物は、本発明により、架橋可能なモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーに対して0.01〜10質量%、殊に0.5〜7質量%、特に有利には1〜5質量%の量で使用される。
【0018】
一般的に架橋剤の量は、特定のポリマー及びこのポリマーの意図された適用範囲に依存する。他の架橋作用する成分との組み合わせは排除されないが、しかし、どうしても必要というわけではない。
【0019】
架橋は、過酸化物により又は電子線架橋によって行うことができる。本発明により使用される特に有利な高融点ポリマーの場合、室温で行われる電子線架橋のみが適用可能であり、その一方で、過酸化物の加工温度は最大150℃であり、且つ過酸化物により架橋される系の場合、架橋温度は160〜190℃である。それゆえ、有利には100〜150℃の融点を有するポリマー又はオリゴマーの場合に過酸化物架橋が行われる。
【0020】
しかしながら、本発明により使用される架橋剤は、ラジカル架橋性エラストマー、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、フッ素ゴム、エチレン−酢酸ビニル−コポリマー、シリコーンゴム又はそれらの混合物の架橋にも適しており、その際、該架橋剤は、殊に比較的高い加工温度の場合に利点をもたらし、且つ比較的長い側鎖に基づき、非極性エラストマー、例えばフッ素ゴムとの相容性がより良好である。
【0021】
同じように本発明の対象は、一般式I
【化4】

又は式II
【化5】

[式中、
1、R2、R3は、同じか又は異なって、二価の、スペーサーとも称される炭素基を意味し、該炭素基は、
分枝した又は分枝していない、C1〜C20、殊にC1〜C6のアルキレン、その際、スペーサーは、場合によっては、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
分枝した又は分枝していない、C2〜C20、殊にC2〜C8のアルケニレン、その際、スペーサーは、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
単核又は二核の、場合により、そのつど1〜3個のC原子を有する1〜3個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C5〜C12のシクロアルキレン、シクロアルケニレン又はシクロアルキルジエニレン、
場合により、1〜3個のC原子を有する1〜4個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C6〜C14の二価の、脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基、その際、脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基は、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、の群から選択されている]の化合物(但しトリアルキルフェニルシアヌレート、トリス(2−メチル−2−プロペニル)シアヌレート及びトリブテニルイソシアヌレートの化合物を除く)である。
【0022】
特に有利なのは、式中、R1、R2又はR3が同じであり、且つ
分岐していないC1〜C4−アルキレン、
2〜C8−アルケニレン、フェニレン、シクロヘキサニレン
の群から選択されていることを意味する化合物である。
【0023】
炭化水素基の命名法は、Handbook of Chemistry and Physics,52nd Edition,1972−1972からのものに即している。
【0024】
使用される化合物の製造は、下記方法に従って行われる:
TAC類似体(式IIに相当):
該置換基に相当するアルコール又はOH基を含む化合物が、いくらかの量の水と冷却下で装入され、次いで5〜20℃の、たいてい7〜15℃の反応温度で、塩化シアヌル及び水酸化ナトリウム溶液が1〜2時間に亘って同時に配量される。添加後、有機マトリックスの後処理及び分離処理が、水の添加及び相応する相分離によって行われる。
【0025】
有機マトリックスから、次いで蒸留により残渣の水及び溶媒(使用されるアルコールもしくはOH基を含む化合物)が取り除かれ、ひいては目標生成物が得られる。
【0026】
蒸留によって回収されたアルコール又はOH基を含む化合物は、プロセスに再び供給されることができる。合成は、1.0:3.3:3.1〜1.0:6.0:3.5の塩化シアヌル:アルコールもしくはOH基を含む化合物:水酸化ナトリウム溶液のモル比で行われ、殊に、しかし、1.0:5.1:3.36で行われる。
【0027】
化合物の同定は、HPLC−MSにより確認された。
【0028】
TAICROS類似体(式Iに相当):
合成は、シアヌル酸ナトリウム(イソシアヌル酸のトリナトリウム塩)及び相応する塩化アルケンもしくは塩化物により置換された化合物から、殊に溶媒としてのジメチルホルムアミド中で行われ、その際、全ての成分は、有利には一緒に装入され、次いで5〜8時間のあいだ120℃〜145℃で反応させられる。冷却後、塩から濾過分離され、得られた有機相から真空下での蒸留によりジメチルホルムアミドが取り除かれ、ひいては目標生成物が得られる。
【0029】
合成は、反応体のシアヌル酸ナトリウム及び塩化物のモル比1:3で行われる。
【0030】
化合物の同定は、HPLC−MSにより確認された。
【0031】
同じように本発明の対象は、ポリビニルポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー又はそれらの混合物、殊にポリアミド及びポリエステル又はそれらの混合物の群から選択されたポリマー、あるいは天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、フッ素ゴム、エチレン−酢酸ビニル−コポリマー、シリコーンゴム又はそれらの混合物の群から選択されたエラストマー及び式I又はIIに記載の化合物を含む架橋可能な組成物である。
【実施例】
【0032】
架橋剤の応用技術的試験:
実施例において、下記化合物を使用する:
TAC:トリアリルシアヌレート
TAIC(TAICROS(R)):トリアリルイソシアヌレート
TMAC:トリメチルアリルシアヌレート
TMAIC:トリメチルアリルイソシアヌレート
THC:トリヘキセニルシアヌレート
THIC:トリヘキセニルイソシアヌレート
TAPC:トリアリルフェニルシアヌレート
【0033】
1.架橋剤の特性:
1.1 加熱した場合の損失質量:
下記表に示されるように、新規の化合物はTAICより明らかに低い蒸気圧を有する。これは比較的高い温度に加熱した場合の明らかにより低い損失質量で表される。
【0034】
【表1】

【0035】
1.2 熱安定性
熱安定性の試験のために、少量(50〜100mg)の物質を様々な温度で貯蔵し、且つモノマー含有率の変化を、時間を介してHPLC分析によって調査した。その際、全ての化合物は、MEHQ(メチルヒドロキノン)100ppmで安定化されていた。
【0036】
下記表には、残留モノマー含有率が%記載で示されている:
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
新規の化合物は、一時的に明らかにより高い加工温度に耐えることができるか、もしくは明らかに緩慢な熱誘導単独重合を示す。
【0041】
2.適用例:
ポリアミド 6(Ultramid B3K,BASF)を、それぞれ3質量%のTAICROS(R)(Evonik)、THCもしくはTAPCと押出機中でコンパウンディングした。
【0042】
同様に、ポリアミド 66(Ultramid A3K)を、それぞれ3質量%のTHCもしくはTAPCと押出機中で混合した。TAICとの押出は、高すぎる蒸気圧及び重合が開始するがゆえにPA 66とは可能でない。
【0043】
架橋剤の配量を軽減するために、これらをマスターバッチの形で配量した。該マスターバッチは、液状の架橋剤の場合は、該液体を多孔質ポリアミド(Accurell MP 700)に直接付着させることによって製造し、また固体の架橋剤の場合は、該架橋剤の溶液をAccurellに付着させ、引き続き乾燥させることによって製造した。該マスターバッチの濃度は30%であり、すなわち、PA−マスターバッチ(PA MB)10%が混ぜられていた。比較のために、ポリアミド試料を未負荷のAccurell MP 700と押出した。
【0044】
コンパウンディングに際して、PA6とTAICROSの場合、明らかな"ミスチング"(ポリマーストランドからのTAICROSの蒸散)が、押出機出口で相応する悪臭を伴って観察された。これは2つの新規の架橋剤THC及びTAPCでは当てはまらなかった。
【0045】
2.1 MFI:
押出後、MFI(メルトフローインデックス)を基にして、"プレ重合"がコンパウンディングに際して行われたかどうかを調べた。未負荷のAccurellとの押出によって、MFIはいくらか低下し、すなわち、溶融粘度はいくらか上昇する。
【0046】
PA 6の場合、TAICROS並びにTHCも、それと比較してMFIの僅かな低下をもたらし、これにより初期架橋量は最小となる。TAICROS MはMFIに影響を及ぼさず、その一方で、TAPCはMFIの明らかな増大、すなわち、溶融粘度の低下をもたらす。これは該化合物が潤滑剤として作用することに因るものと推測される。
【0047】
PA 66中では、テストした全ての架橋剤はMFIの僅かな増大をもたらす。明らかに、250℃に対して280℃のより高い規定温度の場合、潤滑剤作用はより一層顕著なものとなる。いずれにせよ、コンパウンディングに際して、予定より早い明らかな架橋が起こらないことを前提とすることができる。
【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
2.2 架橋度:
全ての混合物のペレット試料(Granulatproben)を、次いで120及び200KGyにより電子線架橋した。引き続き、該ペレット試料についての架橋度をゲル含有率により下記の通りつきとめた:
そのつど約1.0gのペレットを量り入れ、且つm−クレゾール100mlを混ぜ、攪拌下で沸騰温度に加熱し、且つ還流下で少なくとも3時間処理した。この時間の後、架橋しなかったポリアミドは完全に溶解していた。架橋された試料の場合、不溶性分を濾過分離し、且つトルエンで洗浄した。次いで残留物を、真空炉内で120℃で7時間まで乾燥し、且つ秤量した。不溶性分は架橋度に相当する。
【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
全ての混合物はすでに120kGyにて完全に架橋していたので、200kGyにて架橋した試料のゲル含有率はもはや測定しなかった。
【0054】
2.3 からみ合い密度(Verschlaufungsdichte):
架橋に関する更なるデータは、式:
E/3=n×k×T、その際、
n=からみ合い密度
k=ボルツマン定数=1.38×1023 J/K
T=温度(K)
に従って、弾性率から算出された"からみ合い密度"により得られる。
【0055】
それに従って、下記値がもたらされる:表を参照されたい。この方法によれば、架橋剤を含まないPAとの違いは、ゲル含有率の時ほど表れないが、それでもやはり、架橋剤によるからみ合い密度の明らかな増大が明らかになる。TAICROSと比較して新規の架橋剤を用いた傾向的により低い値は、より高い分子量、すなわち、3%の添加の場合のより低いモル数に起因するものと考えられ、その際、TAPCが傾向的にTHCより効率がよい。
【0056】
【表10】

【0057】
【表11】

【0058】
2.4 残留架橋剤含有率:
そのうえ、架橋ペレットについての残留架橋剤含有率をメタノールでの全抽出によって測定した。すでに120kGyにて全ての架橋剤は>99%反応することがわかった。
【0059】
【表12】

【0060】
【表13】

【0061】
2.5 短期の耐熱変形性(半田ごてテスト(Loetkolbentest)):
さらに、ペレットについて"半田ごてテスト"を実施した。その際、高い温度を有する金属ロッドを、規定の圧力下で数秒間、試験体に押圧し、且つ侵入深さを測った。このテストは、ここで記載される材料が特に適している短期の高い熱負荷をシミュレートする。
【0062】
【表14】

【0063】
【表15】

【0064】
結果から確かめられるのは、架橋剤の添加によってポリアミドの架橋が著しく増大し、それによって高い熱機械的な安定性/耐熱変形性が短期の負荷において達成されることである。架橋剤間の相違点は、大部分が、異なる分子量から生まれ、その際、TAPCがこの特性に関してTHCより傾向的にいくらか乏しいとされる。
【0065】
材料のその他の機械的特性も要求に合致することを保証するために、該コンパウンドから試験体を製造し、上記と同じ条件下で電子線架橋し、且つ機械的特性を引張試験において測定し、並びに耐熱変形性(HDT)を測定した。
【0066】
2.6 長期の耐熱変形性(HDT):
TAICROSもしくはTAICROS Mと同じように、新規の架橋剤はポリアミドの耐熱変形性(HDT=heat distortion temperature)を改善する。新規の架橋剤を用いた傾向的により低い値は、上記ですでに述べたように、より高い分子量、すなわち、3%の添加の場合のより低いモル数に基づく、より少ない数の架橋部位に起因するものと考えられる。
【0067】
【表16】

【0068】
【表17】

【0069】
2.7 機械的特性:
機械的特性の場合、TAPCはTHCより脆い挙動を示す。
【0070】
【表18−1】

【表18−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと架橋剤との反応によって架橋された有機ポリマーを製造する方法において、前記架橋剤が、式I
【化1】

又は式II
【化2】

[式中、
1、R2、R3は、同じか又は異なって、二価の、スペーサーとも称される炭素基であり、前記炭素基は、
分枝した又は分枝していない、C1〜C20、殊にC1〜C6のアルキレン、その際、前記スペーサーは、場合によっては、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
分枝した又は分枝していない、C2〜C20、殊にC2〜C8のアルケニレン、その際、前記スペーサーは、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
単核又は二核の、場合により、そのつど1〜3個のC原子を有する1〜3個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C5〜C12のシクロアルキレン、シクロアルケニレン又はシクロアルキルジエニレン、
場合により、1〜3個のC原子を有する1〜4個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C6〜C14の二価の、脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基、その際、前記の脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基は、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、の群から選択されている]を有することを特徴とする、ポリマーと架橋剤との反応によって架橋された有機ポリマーを製造する方法。
【請求項2】
1、R2、R3が同じであり、且つ
分岐していないC1〜C4−アルキレン、
2〜C8−アルケニレン、フェニレン、シクロヘキサニレン
の群から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリマーとして、ポリビニルポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー又はそれらの混合物を含む群から選択された熱可塑性ポリマーを、それらが互いに相容性と知られている範囲内で使用することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記式I又はIIに記載の使用される化合物の量が、前記の架橋可能なポリマーに対して0.01〜10質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記架橋を、架橋されるべきポリマーに依存して、適した過酸化物の添加下で160〜190℃の温度で実施するか、又は室温での電子線架橋によって実施することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
一般式I
【化3】

又は式II
【化4】

[式中、
1、R2、R3は、同じか又は異なって、二価の、スペーサーとも称される炭素基であり、前記炭素基は、
分枝した又は分枝していない、C1〜C20、殊にC1〜C6のアルキレン、その際、前記スペーサーは、場合によっては、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
分枝した又は分枝していない、C2〜C20、殊にC2〜C8のアルケニレン、その際、前記スペーサーは、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、
単核又は二核の、場合により、そのつど1〜2個のC原子を有する1〜3個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C5〜C12のシクロアルキレン、シクロアルケニレン又はシクロアルキルジエニレン、
場合により、1〜2個のC原子を有する1〜4個のアルキル基又はアルケニル基によって置換された、C6〜C14の二価の、脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基、その際、前記の脂環式及び/又は芳香族の、単核又は二核の炭化水素基は、場合により、窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子を含む、の群から選択されている]の、但し化合物のトリアルキルフェニルシアヌレート、トリス(2−メチル−2−プロペニル)シアヌレート及びトリブテニルイソシアヌレートを除く化合物。
【請求項7】
ポリマーとして、ポリビニルポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー又はそれらの混合物の群から選択されたポリマーを、それらが互いに相容性と知られている範囲内で含み、及び前記式I又はIIに記載の化合物を含む架橋可能な組成物。

【公開番号】特開2011−225880(P2011−225880A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96340(P2011−96340)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】