説明

架橋したポリウレタンを製造するための周囲温度硬化性でイソシアナートを含まない組成物

【課題】周囲温度硬化性で高水準の架橋したポリウレタンを生じさせることによる性能特性、性質の向上。
【解決手段】実質的にイソシアナートを含まず、第1コンポーネントとしてポリカルバマートをおよび第2コンポーネントとしてポリアルデヒド、またはそのアセタールもしくはヘミアセタールを含み、さらにこの第1および第2コンポーネントが0℃〜80℃未満の温度で硬化して架橋したポリウレタンを形成するのに有効量の誘発剤を含む多コンポーネント組成物。該多コンポーネント組成物は、そのコンポーネントの全てが一緒にされる場合に、7.0以下のpHを有する周囲温度硬化性組成物を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、実質的にイソシアナートを含まない多コンポーネント組成物からの架橋したポリウレタン、並びに関連する組成物、方法、物品および他の関連する発明に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、式(A):−O−C(=O)−N< (A)のカルバマート基を含む繰り返し単位を含む。ポリウレタンは線状もしくは分岐、非架橋もしくは架橋、またはこの組み合わせとして特徴付けられうる。ポリウレタンについては、化学および関連産業における多くの用途が見いだされてきた。このような用途の例はコーティング、シーラントおよび接着剤の製造である。ポリウレタンは成形部品(例えば、自動車用バンパー)、発泡体、およびエラストマー性繊維を含む物品において特に有用でもある。
【0003】
ポリウレタンは典型的には、互いに反応してポリウレタンを製造する2種類の反応物質の混合物を硬化させることにより製造される。この反応は段階成長重合メカニズムを介すると考えられている。この反応は、溶媒として機能する不活性な液体中で行われることができる。典型的には、反応物質間の反応はこの混合物を熱、水分、硬化用触媒、またはこの組み合わせの少なくとも1つに曝露させることにより開始される。段階成長重合中に形成される中間体は、所望の分子量を有するポリウレタンを製造するのに必要な程度まで段階成長重合を進ませるのを可能にする様に、溶媒中に充分に可溶性であるべきである(すなわち、溶媒から沈殿もしくは結晶化するべきではない)。
【0004】
硬化工程においてポリウレタンを製造するのに使用される反応物質は異なる構造を有することができ、よってそのそれぞれの反応は異なる構造のポリウレタンを生じさせる。ポリウレタンの製造の硬化工程は相補的に反応する官能化した反応物質の構造の種類によって、イソシアナートベースもしくはいわゆる「イソシアナートを含まない(isocyanate−free)」として概して特徴付けられうる。
【0005】
イソシアナートベースのポリウレタン調合物化学はその欠点を有している。例えば、ポリイソシアナート化合物およびそれを含む硬化性組成物の製造および使用に関連した、並びにイソシアナートベースのポリウレタン調合物の硬化工程に関連した環境および健康上の懸念が存在する。そのため、ポリウレタン技術分野において最も求められているが、従来とらえどころのなかった目標は、イソシアナートを含まない実行可能なポリウレタン調合物、特に室温で硬化可能なものの発見であった。
【0006】
この目標に到達していないイソシアナートベースのもしくはイソシアナートを含まないポリウレタン調合物の例は、例えば、米国特許第5,356,669号;および第6,541,594号に知られている。米国特許第5,356,669号は(a)付加された少なくとも1つのカルバマート基を有するポリマー骨格を含む第1コンポーネントと、(b)前記カルバマート基と反応性である複数の基を有する化合物を含む第2コンポーネントとの反応生成物をベースにしたポリウレタンを開示する。米国特許第6,541,594号は、(a)ヘテロ原子を実質的に含まずかつ室温で結晶質固体ではなく、かつ(i)12〜72個の炭素原子および少なくとも2つの官能基(ii)を含む反応性コンポーネントと、(b)化合物(a)の官能基(ii)と反応性である複数の官能基(iii)を含む架橋剤とを含み、官能基(ii)および(iii)は、これらの間の反応が熱的に不可逆な化学結合を生じさせる様に選択される、コーティング組成物を開示する。
【0007】
米国特許第7,442,325号はアミノプラストベースの架橋性組成物およびその製造方法を開示する。この組成物は、活性水素基を有する物質もしくはポリマーを含む硬化性組成物中の架橋剤として有用である。米国特許第7,442,325号は硬化性組成物の活性水素含有物質を用いて架橋したポリウレタンを製造することを開示していない。
【0008】
先行技術において開発されたイソシアナートを含まないポリウレタン化学は欠点を有し、例えば、先行技術のイソシアナートを含まないポリウレタン調合物は歴史的に、架橋したポリウレタンを得るのに有効化効果を達成するために80℃を超える硬化温度で硬化されなければならない。先行技術のイソシアナートを含まないポリウレタン調合物の高い硬化温度の欠点は、それが床、家具、自動車、産業用メンテナンス、および周囲温度、特に室温(例えば、20℃〜30℃)での硬化を必要とする特定の接着剤用途に使用されるのを妨げる。さらに、既知のイソシアナートを含まないポリウレタン調合物は典型的には望まれない揮発性有機化合物(VOC)副生成物を生じさせ、かつ残存量のホルムアルデヒドを含み、これに曝露される環境および人に害を与える場合がある。また、先行技術の水ベースのポリウレタン調合物は典型的には、天然の親水性物質(例えば、天然の親水性コーティング)であり、有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン(MEK))によって劣化を受けやすい物質であり、充分な硬度にかける物質であり、またはこの組み合わせであるポリウレタンを調製した。このポリウレタンは比較的低い量の架橋剤を有し、かつ先行技術のポリウレタンを製造するのに使用された材料の親水特性がもたらす水に感受性の生成物を提供するか、またはその双方であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,356,669号明細書
【特許文献2】米国特許第6,541,594号明細書
【特許文献3】米国特許第7,442,325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、周囲温度硬化性であって、かつ高水準の架橋を有する架橋したポリウレタンを生じさせて性能特性もしくは性質を向上させる、実質的にイソシアナートを含まない組成物を提供するという課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明には、実質的にイソシアナートを含まない多コンポーネント組成物、当該多コンポーネント組成物から製造された周囲温度硬化性組成物、周囲温度硬化性組成物を製造し、それを80℃以下の温度で硬化させて架橋したポリウレタンを製造する当該多コンポーネント組成物を使用する方法、並びに当該方法によって製造された架橋したポリウレタンが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に従って、実質的にイソシアナートを含まない多コンポーネント組成物は第1コンポーネントとしてポリカルバマート、および第2コンポーネントとしてポリアルデヒド、またはそのアセタールもしくはヘミアセタールを含み、多コンポーネント組成物は第1および第2コンポーネントが一緒にされたときに、反応して0℃〜80℃未満の温度で硬化して架橋したポリウレタンを形成する組成物を形成するのに有効量の誘発剤をさらに含み、さらに、多コンポーネント組成物の全コンポーネントが一緒にされる場合に得られる組成物は7.0以下のpHを有する。第1コンポーネントおよび第2コンポーネントは一緒にされ硬化されるときに、架橋したポリウレタンを形成する。
【0013】
好ましくは、多コンポーネント組成物およびこれから製造される周囲温度硬化性組成物は実質的にホルムアルデヒドを含まない。この組成物は、ホルムアルデヒドから製造される樹脂、例えば、アミノプラスト、およびフェノールもしくはレゾールホルムアルデヒド縮合物を実質的に含まない。
好ましくは、本発明の多コンポーネント組成物の第1コンポーネントにおいては、ポリカルバマートは平均2.5以上、またはより好ましくは3.0以上のカルバマート官能基、例えば、100以下、または好ましくは20以下のカルバマート官能基を有する。
【0014】
好ましくは、本発明の組成物の第1コンポーネントにおいては、ポリカルバマートは、例えば、1種以上のポリオールと不飽和カルバミン酸アルキルエステルもしくは尿素との縮合生成物である。好適なポリオールには、例えば、アクリル、飽和ポリエステル、アルキド、ポリエーテル、もしくはポリカルボナートポリオールが挙げられうる。より好ましくは、ポリカルバマートはカルバマート基およびヒドロキシル基を、カルバマート基の当量:ヒドロキシル官能基の当量数の比率1:1〜20:1、または好ましくは、5.5以上:4.5、または好ましくは、10以下:1で有する。この比率は、カルバマート官能基の平均数をポリカルバマートにおけるヒドロキシル官能基の平均数で割ることによって決定されうる。用語「ポリカルバマートにおけるヒドロキシル官能基の平均数」はポリオールから製造されたポリカルバマート中に残っているヒドロキシル基の平均数であり、ポリカルバマートのヒドロキシル滴定によってそのヒドロキシル数を決定し、次いで、ポリオールからのポリカルバマートの製造において反応してカルバマート基を形成したヒドロキシル基の数を計算し、このヒドロキシル数をポリオール中の当初のヒドロキシル基の数と比較することによって決定される数を意味する。
【0015】
本発明の多コンポーネント組成物の第2コンポーネントにおいては、ポリアルデヒド、そのアセタールもしくはヘミアセタールは好ましくは、25℃で水1ミリリットルあたり0.015〜0.20グラム、好ましくは0.15グラム以下、または好ましくは0.03グラム以上のポリアルデヒドの水中溶解度を有する。好ましさのより低いものは、より水溶性のポリアルデヒド、例えば、グリオキサールもしくはグルタルアルデヒドである。
【0016】
好ましくは、ポリアルデヒドはC〜C11脂環式もしくは芳香族ジアルデヒド、またはより好ましくはC〜C10脂環式もしくは芳香族ジアルデヒド、例えば、(シス,トランス)−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、(シス,トランス)−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドおよびその混合物から選択される。
【0017】
本発明の多コンポーネント組成物においては、誘発剤は6.0未満のpKaを有する酸であり得る。
【0018】
好ましくは、組成物のポットライフを延ばすために、本発明の多コンポーネント組成物は硬化阻止剤をさらに含む。硬化阻止剤は周囲硬化条件下で組成物から揮発する。好ましくは、硬化阻止剤は水、アルコールもしくはその混合物、例えば、第1級もしくは第2級アルコールから選択される。
【0019】
好ましくは、これから製造された硬化し乾燥した塗膜の可とう性、接着性もしくはこの双方を増大させるために、本発明の多コンポーネント組成物は、組成物中の固形分の全重量を基準にして3〜20重量%の顔料、例えば、TiOをさらに含む。
【0020】
別の形態においては、本発明に従って、架橋したポリウレタンを製造する方法はポリカルバマート第1成分と、ポリアルデヒドまたはそのアセタールもしくはヘミアセタール第2成分とを混合して、7.0以下のpHを有する実質的にイソシアナートを含まない周囲温度硬化性組成物を形成し、得られた組成物を0℃〜80℃未満の温度で硬化させることを含み、この周囲温度硬化性組成物は有効量の誘発剤を有する。
【0021】
本発明の方法は架橋したポリウレタンを含む塗膜もしくはコーティングされた基体を提供するために使用されうる。
好ましい架橋ポリウレタンは少なくとも1種のジェミナルビス(ウレタン)基を有する。
【0022】
本発明は、多コンポーネント組成物のコンポーネントを一緒に混合して周囲温度硬化性組成物を形成し、そして架橋したポリウレタンを製造する様にこの得られた組成物を80℃未満の硬化温度で硬化させることを含む、架橋したポリウレタンを製造する方法をさらに提供する。
【0023】
本発明は、本発明の方法によって製造された架橋したポリウレタンをさらに提供する。
【0024】
本発明の多コンポーネント組成物の第1コンポーネントおよび第2コンポーネント、並びに何らかの他のコンポーネントは混合されることができ、イソシアナート基を実質的に含まない周囲温度硬化性組成物を製造することができ、この多コンポーネント組成物はポリカルバマート第1コンポーネントおよびポリアルデヒド第2コンポーネントを含み;ポリアルデヒドは25℃で水1ミリリットルあたり0.15グラム未満のポリアルデヒドの水中溶解度を示し、かつ多コンポーネント組成物は、架橋したポリウレタンを形成する様な有効量の誘発剤と共に、24℃の硬化温度で硬化可能であるとして特徴付けられる。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「接着剤」は「グルー」、「粘質物」、「マスチック」および「セメント」と同義であり、表面付着の手段によって、同じかまたは異なる2つの物質を一緒に固着することができる物質を意味する。用語「周囲温度」もしくは「周囲硬化条件」とは標準圧力で0℃〜80℃未満の温度を意味する。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「周囲温度硬化性」とは0℃〜80℃未満で化学変換プロセスにおいて反応できることを意味する。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「物品」とは個々の物体もしくは成形品を意味する。物品は任意の形状、形態およびサイズであることができ、かつ任意のガラスもしくは固体材料からなることができる。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「架橋したポリウレタン」とは、各繰り返し単位が2価の結合性カルバマート基を独立して含むか、2つの隣り合う繰り返し単位が一緒に2価の結合性カルバマート基を含むか、またはその組み合わせである、複数の繰り返し単位を分子骨格のそれぞれが独立して含む2つの隣り合う分子骨格を含み;この隣り合う分子骨格は2価の結合性カルバマート基の少なくとも1つの共有結合を介して一緒に共有結合されており、それにより単一の架橋したポリウレタン分子を形成する様に隣り合う分子骨格を一緒に共有結合しているポリマー物質を意味する。2価の結合性カルバマート基は後で説明される。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「2価のカルバマート基」とは
【化1】

基を意味する。
【0030】
本明細書において使用される場合、
【化2】

(すなわち、文中での末端「−」)は基を示す。共有結合した隣り合う分子骨格のそれぞれは独立して線状もしくは分岐であり、かつ独立して0、1もしくはそれより多い環式基、例えば、芳香族基を含む。各分子骨格は1以上の他の分子骨格に共有結合されうる。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「硬化」とは化学変換に有効な条件にかけること、またはこのような条件下での化学変換を意味する。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「硬化温度」とは、本発明の周囲温度硬化性組成物を本発明の架橋したポリウレタンに化学変換させるのに有効な熱さもしくは冷たさの程度を意味する。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語「顔料の有効量」とは、組成物中の固形分の合計重量を基準にして1重量%〜25重量%、好ましくは3重量%以上、例えば、3重量%〜20重量%、またはより好ましくは、5重量%以上、または15重量%以下、または8重量%以下を意味する。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「ポリアルデヒド」とは、2以上のアルデヒド基もしくはその水和物、またはそのアセタールもしくはヘミアセタールを含む分子を意味し、この分子は本明細書に記載される様に実行でき、かつ本発明の架橋したポリウレタンを形成する様な本発明の硬化工程中にポリカルバマートと反応することができる。本明細書においては、アルデヒド基は−C(=O)Hまたは−CHOと表される。本明細書においては、用語「ポリアルデヒド」は、アルデヒドモノマーを自己重合させることにより製造されるポリマー物質を意味するために使用されない。
【0035】
本明細書において他に示されない限りは、用語「カルバマート基」とは式
【化3】

の構造の基を意味する。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「多コンポーネント組成物」とは、2以上のコンポーネントを含み、それぞれが少なくとも1種の成分を有する組成物を意味する。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「ポリカルバマート」とは、2以上のカルバマート基(H2NC(O)O−)を含む分子を意味し、この分子は本発明の架橋したポリウレタンを形成する様な本発明の硬化工程中にポリアルデヒドと反応することができる。
【0038】
本明細書において使用される場合、用語「ポリオール」とは少なくとも2個の−OH官能基を有する有機分子を意味する。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「ポリエステルポリオール」とは、少なくとも2つのアルコール(−OH)基(好ましくは、アルファ、オメガ−OHを含む)かつ少なくとも1つのカルボキシルエステル(CO−C)官能基を有する有機分子であるポリオールのサブクラスを意味する。用語「アルキド」とは、少なくとも1つのカルボキシルエステル官能基が好ましくは、ポリオールのアルコール性−OHと(C−C60)脂肪酸のカルボキシルとの間のエステル化反応により形成されている、脂肪酸改質ポリエステルポリオールであるポリエステルポリオールのサブクラスを意味する。
【0040】
本明細書において使用される場合、語句「一緒に反応する」とは、2以上の分子間もしくはその部分間で1以上の共有結合を形成することを意味する。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「組成物中の固形分」とは、樹脂、反応物質および全ての不揮発性添加剤もしくは材料、例えば、触媒をいう。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「水中溶解度」とは、ASTM E1148−02(水性溶解度の測定のための標準試験方法(2002))に従った、分子式HOの液体中での溶解の程度を決定することを意味する。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「実質的にイソシアナート基を含まない」もしくは「実質的にイソシアナートを含まない」イソシアナート基とは、組成物中のイソシアナート基+カルバマート基の合計モル数を基準にして5モルパーセント(モル%)未満、好ましくは3モル%未満、またはより好ましくは1モル%未満、およびさらにより好ましくは0.1モル%未満の−N=C=O基(すなわち、イソシアナート基)を有することを意味する。
【0044】
他に示されない限りは、丸括弧内の事項は挿入語句なしもしくは挿入語句ありの双方の用語を意味する。よって、例えば、「(ポリ)イソシアナート」とはポリイソシアナートもしくはイソシアナートを意味する。
【0045】
他に示されない限りは、圧力および温度の全ての単位は標準圧力および室温をいう。
【0046】
本発明の多コンポーネント組成物は混合されて本発明の周囲温度硬化性組成物を製造する。本発明の周囲温度硬化性組成物を使用する方法は本発明の架橋したポリウレタンを製造するのに有用である。本発明の架橋したポリウレタンは接着剤、コーティングもしくはシーラントとして有用である。本発明の接着剤、コーティングもしくはシーラントはこれを含む物品を製造するのに有用である。
【0047】
本発明の方法は、多コンポーネント組成物を混合して周囲硬化性組成物を形成し、この周囲温度硬化性組成物を硬化させ、それにより、高度の架橋およびこれによる1以上の改良された特性、例えば、改良された耐水性、メチルエチルケトン(MEK)摩擦に対する改良された劣化耐性、増大した硬度、改良されたクロスハッチ接着性、またはこの組み合わせを含む本発明の架橋したポリウレタンを生じさせる。この硬化工程で生じる唯一の副生成物は水である。本明細書において使用される場合、用語「副生成物」とは意図される化学変換の自然な結果として反応から生じる物質もしくは分子(例えば、脱水を伴う化学変換における水の分子の放出)を意味する。これに対して、用語「副生物」とは反応から(例えば、2以上の異なる反応を使用する反応の一方の反応物質の2以上の分子間での副反応のせいで、または反応物質または生成物の分解のせいで)生じる望まれない物質もしくは分子を意味する。これらの利点は、好適でない低い水準の架橋、許容できない水準の揮発性有機化合物(VOC)副生成物、もしくはその両方を生じさせた、および/または望ましくなく高い硬化温度を必要とした先行技術のアプローチによって従来達成され得なかった低温硬化の商業的な用途で、イソシアナートを含まずに本発明が使用されうることを意味する。
【0048】
本発明者は、例えば、ジェミナルビス(ウレタン)基を有するもののような、ポリカルバマートとポリアルデヒドとを7.0以下のpHで反応させることによる新たな種類の架橋したポリウレタンを見いだした。このような架橋したポリウレタンの形成においては、より大きな程度の水溶解度(すなわち、0.2g/mL以上の水溶解度)を有するポリアルデヒドは好ましさが低く、ポリカルバマートと反応してポリウレタン、およびこの物から製造され、望ましさが低い耐水性を有するコーティングを製造する。さらに、本発明者は、低い水溶解度を有する(すなわち、0.15g/mL未満の水中溶解度を有する)ポリアルデヒドは本発明の架橋したポリウレタンを製造するのにより望ましくかつ効果的であることを見いだした。本発明者は、耐摩耗性および耐水性を有する発明の丈夫な架橋したポリウレタンコーティングを製造するために本発明の架橋したポリウレタンが使用されうることも見いだした。本発明の架橋したポリウレタンの有利な特性は本発明のコーティング、シーラントもしくは接着剤としてのその使用に適用し、かつ本発明の製造物品を製造する際のその使用に適用する。
【0049】
本発明には、多コンポーネント組成物、周囲温度硬化性でイソシアナートを含まない組成物、周囲温度硬化性でイソシアナートを含まない組成物を製造するための多コンポーネント組成物を使用する方法、および架橋したポリウレタンを製造するための周囲温度硬化性でイソシアナートを含まない組成物を使用する方法、後者の方法によって製造される架橋したポリウレタン、並びに関連する発明(例えば、架橋したポリウレタンを製造するためのキット、および架橋したポリウレタンを含む物品)が挙げられ、全ては上でまとめられている。
【0050】
本出願においては、何らかの数値範囲の下限、またはその範囲の何らかの好ましい下限は、その範囲の何らかの上限、またはその範囲の何らかの好ましい上限と組み合わせられることができ、その範囲の好ましい形態もしくは実施形態を画定することができる。数値の各範囲は、その範囲内に含まれる全ての数値を含む(例えば、1〜5の範囲は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0051】
単語「任意に」とは「含むかまたは含まない」ことを意味する。例えば、「任意に第3のらせん状要素」とは第3のらせん状要素を含むかまたは含まないことを意味する。
【0052】
頭字語「ANSI」は米国ワシントンD.C.に本部を置く組織の名称である、米国規格協会(American National Standards Institute)を表す。頭字語「ASTM」は米国ペンシルベニア州ウェストコンショホケンに本部を置く組織の名称である、ASTMインターナショナルを表し、ASTMインターナショナルは以前は米国材料試験協会と称されていた。頭字語「ISO」は、スイス国ジュネーブ20に本部を置く組織の名称である、国際標準化機構を表す。
【0053】
好ましくは、多コンポーネント組成物もしくは周囲温度硬化性組成物は「実質的にイソシアナートを含まず」、このことは、多コンポーネント組成物もしくは周囲温度硬化性組成物が、多コンポーネント組成物もしくは周囲温度硬化性組成物中のイソシアナート基+カルバマート基の合計モル数を基準にして3モル%未満、より好ましくは1モル%未満、およびさらにより好ましくは0.1モル%未満しかイソシアナート基を含まないことを意味する。
【0054】
本発明の多コンポーネント組成物、周囲温度硬化性組成物、もしくはその双方は独立して、1種以上の追加の成分をさらに含むことができる。追加の成分の例は組成物中の固形分の全重量を基準にして0.1重量パーセント(重量%)〜90重量%の量の有機溶媒;組成物中の固形分の全重量を基準にして0.01重量%〜10重量%の量の脱水剤、例えば、カルボン酸無水物、ハロゲン化カルボン酸(例えば、塩化アセチル)、およびハロゲン化スルホン酸(例えば、トルエンスルホニルクロリド);並びに、何らかの界面活性剤、分散剤、湿潤剤、接着促進剤、紫外(UV)光吸収剤、光安定化剤、1種以上の着色剤もしくは染料および酸化防止剤である。
【0055】
好適な有機溶媒の例は非極性もしくは極性の有機溶媒、例えば、アルカン(例えば、(C−C12)アルカン)、エーテル(例えば、(C−C12)エーテル、例えば、(C−C12)ジアルキルエーテル)、カルボキシルエステル(例えば、(C−C12)カルボキシルエステル)、ケトン(例えば、(C−C12)ケトン)、第2級もしくは第3級カルボキサミド(例えば、第2級もしくは第3級(C−C12)カルボキサミド)、スルホキシド(例えば、(C−C12)スルホキシド)、またはその2種以上の混合物などである。
【0056】
好ましくは、組成物のポットライフとコーティング乾燥時間もしくはその硬化の際の塗膜硬度、またはその双方との間の相間を低減させもしくはなくするために、本発明の多コンポーネント組成物は硬化阻止剤、例えば、水もしくは第1級アルカノール(例えば、(C−C12)アルカノール)などを含む。硬化阻止剤は、硬化が望まれる時間まで組成物の硬化の開始を遅らせるかもしくは硬化時間の長さを長くするか、またはその双方のために使用されることができ、そして組成物から(例えば、蒸発によって)取り除かれることができ、それによりその硬化を開始させ、またはその硬化の速度を増大させることができる。好適な硬化阻止剤は大気圧で300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらにより好ましくは200℃以下の沸点を有する。好ましくは、硬化阻止剤が多コンポーネント組成物中に存在する場合には、それは組成物中の固形分の全重量を基準にして0.5重量%〜90重量%の量で、より好ましくは60重量%以下、さらにより好ましくは50重量%以下の量で存在する。好ましくは、硬化阻止剤濃度は組成物中の固形分の全重量を基準にして少なくとも1重量%、さらにより好ましくは少なくとも2重量%である。硬化阻止剤は、望まれる場合に、組成物が長いポットライフ(例えば、14日以上)を維持するのを可能にでき、次いで、硬化が望まれるときに、この硬化阻止剤を含まない以外は同じ本発明の組成物の硬化および指触乾燥(drying to touch)時間と同等の時間量で、得られる本発明の組成物の硬化および指触乾燥を可能にし、かつ得られたその硬化および乾燥した塗膜が、この硬化阻止剤を含まない以外は同じ本発明の組成物から調製された硬化および乾燥した塗膜のと匹敵する程度の硬度を示すことができる様に、硬化阻止剤は(例えば、蒸発によって)本発明の組成物から除去されることができる。硬化阻止剤には、例えば、アルカノール、水、もしくはその混合物、または好ましくは第1級アルカノールが挙げられうる。好ましくは、アルカノールは組成物中の固形分の全重量を基準にして0.5重量%〜50重量%、より好ましくは20重量%以下、さらにより好ましくは10重量%以下の濃度で存在する。より好ましくは、アルカノール濃度は組成物中の固形分の全重量を基準にして少なくとも1重量%、さらにより好ましくは少なくとも2重量%である。好ましくは、水は組成物中の固形分の全重量を基準にして0.5重量%〜40重量%、より好ましくは20重量%以下、さらにより好ましくは10重量%以下の濃度で存在する。より好ましくは、水の濃度は組成物中の固形分の全重量を基準にして少なくとも1重量%、さらにより好ましくは少なくとも2重量%である。より好ましくは、硬化阻止剤は水とアルカノールとの組み合わせを含む。
【0057】
好ましくは、本発明の多コンポーネント組成物から製造された硬化し乾燥した塗膜もしくは膜もしくは組成物の可とう性(例えば、マンドレル曲げ)、接着性、もしくはその双方を増大させるために、組成物は顔料(例えば、TiO、ランプブラック、タルク、炭酸カルシウムもしくはクレイ)を含む。好ましくは、接着性を増大させるための顔料の有効量は組成物中の固形分の全重量を基準にして1重量%〜25重量%、好ましくは3重量%以上、例えば、3重量%〜20重量%、またはより好ましくは5重量%以上、または15重量%以下、または8重量%以下である。可とう性(マンドレル曲げ)はASTM D522−93a(2008;接着した有機塗膜のマンドレル曲げ試験についての標準試験方法)に従って決定される。接着性はASTM D3359−09(テープテストによる接着性を測定するための標準試験方法;ASTM D3359−09e2、2009を参照)に従って決定される。
【0058】
本発明の多コンポーネント組成物は有機溶媒を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は脱水剤を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は分散媒体を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は界面活性剤を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は分散剤を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は湿潤剤を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は接着促進剤を含んでいなくてもよく、またはこの組成物はUV光吸収剤を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は光安定化剤を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は着色剤もしくは染料を含んでいなくてもよく、またはこの組成物は酸化防止剤を含んでいなくてもよい。
【0059】
好ましくは、第1コンポーネントおよび第2コンポーネントが一緒にされ反応させられる場合に、本発明の多コンポーネント組成物はジェミナルビス(ウレタン)基を形成する。例えば、本発明の第2コンポーネントのポリアルデヒドは2つのアルデヒド基を有することができ(本明細書においてジアルデヒドとも称される)、この2つのアルデヒド基の少なくとも一方は、複数のジェミナルビス(ウレタン)基を含む架橋したポリウレタンを形成する様に、同じポリウレタン鎖(分子)からの2つのカルバマート基と反応する。ジアルデヒドの2つのアルデヒド基は、複数のジェミナルビス(ウレタン)基を含む架橋したポリウレタンを形成する様に、2つの異なるポリウレタン鎖からの2つのカルバマート基と反応することができる。本発明の好適なポリアルデヒドは2つ、3つ、4つもしくはそれより多くのアルデヒド基を有する。3つのアルデヒド基を有するポリアルデヒドは本明細書においてはトリアルデヒドとも称される。
【0060】
第2コンポーネントのポリアルデヒドは2〜20個の炭素原子を有するこのような分子を含むことができ、またはポリアルデヒドは20個を超える炭素原子、すなわち、100以下を有することができ、ただし、20個を超える炭素原子を有するポリアルデヒドは11個の炭素原子ごとに少なくとも1つのアルデヒド基、例えば、10個の炭素原子ごとに少なくとも1つのアルデヒド基を有するであろう。ポリアルデヒドは環式、直鎖、もしくは分岐の;環式かつ非芳香族;環式かつ芳香族(例えば、3−ホルミルベンズアルデヒド)、またはその組み合わせであることができる。
【0061】
本発明のポリアルデヒドは実質的にホルムアルデヒドを含まない。本明細書において使用される場合、用語「実質的にホルムアルデヒドを含まない」とは、多コンポーネント組成物もしくは周囲温度硬化性組成物がポリアルデヒド固形分の全重量を基準にして500ppm未満、好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満の遊離のホルムアルデヒドしか含まないことを意味する。本発明の組成物はホルムアルデヒドから製造された樹脂、例えば、アミノプラストおよびフェノールもしくはレゾールホルムアルデヒド縮合物を非常に少ししか含まず、そのような組成物中の遊離のホルムアルデヒドの量は「実質的にホルムアルデヒドを含まない」の定義を満たす。
【0062】
好ましくは、本発明のポリアルデヒドは1種以上の環式非芳香族ポリアルデヒド、または1種以上の芳香族ポリアルデヒドを含む。例えば、ポリアルデヒドは3〜20個の環炭素原子を有する1種以上の環式非芳香族ポリアルデヒドを含み、および3〜20個の環炭素原子を有する1種以上の環式非芳香族ポリアルデヒドから本質的になることができる。
【0063】
より好ましくは、多コンポーネント組成物中のそれぞれの環式非芳香族ポリアルデヒドは独立して5〜12個の環炭素原子を有し、さらにより好ましくは、(シス,トランス)−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドと(シス,トランス)−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドとの混合物である。
【0064】
本発明に従って、ポリアルデヒドは2〜16個の炭素原子を有する1種以上の非環式直鎖もしくは分岐ポリアルデヒドを含むことができる。
【0065】
別の実施形態においては、16個以上の炭素原子を有する1種以上の非環式直鎖もしくは分岐ポリアルデヒドのそれぞれは、脂肪酸エステルまたはより好ましくはシードオイルから得られる実質的に水不溶性の多オレフィン含有化合物をヒドロホルミル化することによって製造される。例えば、16個以上の炭素原子を有する1種以上の非環式直鎖もしくは分岐ポリアルデヒドのそれぞれは、多オレフィン含有オリゴマーもしくはポリマーをヒドロホルミル化することによって製造される。好ましくは、シードオイルから得られる多オレフィン含有化合物は48個以上の炭素原子を有する多オレフィン含有脂肪酸トリグリセリドである。
【0066】
好適な環式ポリアルデヒドの例はトランス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド;シス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド;トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド;シス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド;1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドと1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドとの混合物、好ましくはその1:1混合物;エキソ,エキソ−2,5−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エキソ,エキソ−2,6−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エキソ,エンド−2,5−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エキソ,エンド−2,6−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エンド,エンド−2,5−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エンド,エンド−2,6−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド生成物(エンドおよびエキソ混合物);3−(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパナール;3−(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパナール;2−(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパナール;2−(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパナール;およびシクロドデカン−1,4,8−トリカルバルデヒドである。トランス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド;シス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド;トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド;およびシス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドは後述のヒドロホルミル化条件を用いて3−シクロヘキサン−1−カルボキシアルデヒドをヒドロホルミル化することを含む方法によって製造されうる。1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの1:1混合物はディールスアルダー反応においてアクロレインと1,3−ブタジエンとを反応させて3−シクロヘキセンカルボキシアルデヒド(1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒドとも称される)を生じさせ、後述のヒドロホルミル化条件を用いて3−シクロヘキセンカルボキシアルデヒドをヒドロホルミル化することを含む方法によって製造されうる。エキソ,エキソ−2,5−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エキソ,エキソ−2,6−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エキソ,エンド−2,5−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エキソ,エンド−2,6−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;エンド,エンド−2,5−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド;およびエンド,エンド−2,6−ノルボルナンジカルボキシアルデヒド生成物(エンドおよびエキソ混合物)はディールスアルダー反応においてアクロレインとシクロペンタジエンとを反応させて、2−ノルボルネン−5−カルボキシアルデヒドを生じさせ、後述するヒドロホルミル化条件を用いてこの2−ノルボルネン−5−カルボキシアルデヒドをヒドロホルミル化することを含む方法によって製造されうる。3−(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパナール;3−(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパナール;2−(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパナール;および2−(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパナールは、ビニルシクロヘキセンをヒドロホルミル化することを含む方法によって製造されうる。シクロドデカン−1,4,8−トリカルバルデヒドは1,3−ブタジエンをトリマー化して1,4,8−シクロドデカトリエンを得て、後述のヒドロホルミル化条件を用いてこの1,4,8−シクロドデカトリエンをヒドロホルミル化する方法によって製造されうる。
【0067】
本発明のポリアルデヒドはブロックされずかつ保護されていなくてもよく、またはブロックていてもよく、もしくは保護されていてもよい。ブロックされたもしくは保護されたポリアルデヒドはブロックされておらずかつ保護されていないポリアルデヒドを好適なブロックもしくは保護基と反応させることによって形成されうる。アルデヒド基のための保護もしくはブロック基の例は亜硫酸水素塩(例えば、ポリアルデヒドと亜硫酸水素ナトリウムとの反応から)、ジオキソラン(例えば、ポリアルデヒドとエチレングリコールとの反応から)、オキシム(例えば、ポリアルデヒドとヒドロキシルアミンとの反応から)、イミン(例えば、ポリアルデヒドとメチルアミンとの反応から)およびオキサゾリジン(例えば、ポリアルデヒドと2−アミノエタノールとの反応から)である。
【0068】
好ましいアルデヒド保護基は水和基(>C(OH))、ヘミアセタール、アセタールもしくはイミンであり、好ましい保護されたポリアルデヒドは水和基(>C(OH))、ヘミアセタール、アセタールもしくはイミンを含む。これら好ましい保護されたポリアルデヒドはポリアルデヒドを水;1モル当量のアルカノール(例えば、メタノールもしくはエタノール);2モル当量のアルカノール;またはアンモニアもしくは第1級アミン(例えば、メチルアミン)とそれぞれ反応させることによって製造されうる。ヘミアセタール、アセタールもしくはイミン保護基は、望まれる場合には、加水分解のような脱保護によって除かれ、ポリアルデヒドの保護されていない形態に戻されうる。このようなアルデヒド保護もしくはブロック基、並びに形成および除去(すなわち、脱保護)は、例えば、米国特許第6,177,514B1号に教示されている。
【0069】
好ましくは、ポリアルデヒドはそのままの形態で安定であり(すなわち、実質的に自己重合しない)、より好ましくは実質的に水不溶性でありかつそのままの形態で安定である。
【0070】
本発明のポリアルデヒドは何らかの好適な手段、例えば、対応するポリオールの酸化によって、並びにポリアルデヒドを製造するバッチ式および連続方法で製造されうる。好ましくは、ポリアルデヒドは実質的に水不溶性のモノオレフィン含有アルデヒド化合物、実質的に水不溶性の多オレフィン含有アルデヒド化合物、もしくは実質的に水不溶性の多オレフィン含有出発化合物(本明細書においては、簡略化のために、集合的に、実質的に水不溶性のオレフィン含有化合物と称する)をヒドロホルミル化することによって製造される。ヒドロホルミル化工程は何らかの従来の手段によって、例えば、水素ガス、一酸化炭素、およびオレフィン含有出発化合物を用いて製造されうる。好ましくは、ヒドロホルミル化工程は概して、改良された分離プロセスを記載する米国特許第6,252,121B1号に記載される様な方法で行われる。
【0071】
好適なヒドロホルミル化方法においては、例えば、水素ガス(H)、一酸化炭素(CO)およびオレフィン出発化合物の全ガス圧力は約1ポンド/平行インチ絶対圧力(psia;6.9キロパスカル(kPa))〜約10,000psia(69メガパスカル(MPa))の範囲であり得る。しかし、概して、その方法は水素、一酸化炭素および実質的に水不溶性のオレフィン含有化合物の全ガス圧力約2000psia未満、より好ましくは約1000psia未満で操作されるのが好ましい。最小全圧力は、反応の所望の速度を得るのに必要な反応物質の量によって主に限定される。より具体的には、本発明のヒドロホルミル化方法の一酸化炭素分圧は好ましくは約1psia〜約1000psia、より好ましくは約3psia〜約800psiaであり、一方、水素分圧は好ましくは約5psia〜約500psia、より好ましくは約10psia〜約300psiaである。概して、ガス状水素対一酸化炭素のH:COモル比は約1:10〜100:1、もしくはそれより高い範囲であることができ、より好ましくは、水素:一酸化炭素モル比は約1:10〜約10:1でありうる。さらに、ヒドロホルミル化方法は約−25℃〜約200℃の反応温度で行われることができる。概して、約50℃〜約120℃のヒドロホルミル化反応温度が全ての種類のオレフィン含有化合物に好ましい。
【0072】
好ましくは、ヒドロホルミル化は連続方法で行われる。連続ヒドロホルミル化方法は当該技術分野において周知であり、(a)オレフィン含有化合物を一酸化炭素および水素ガスを用いて、非極性溶媒、金属−有機リンリガンド複合体触媒および遊離の有機リンリガンドを含む液体均一反応混合物中でヒドロホルミル化し;(b)オレフィン含有化合物のヒドロホルミル化に有利な反応温度および圧力条件を維持し;(c)組成量のオレフィン含有化合物、一酸化炭素および水素ガスを、これら反応物質が使い尽くされる様に反応媒体に供給し;並びに(d)相分離によって所望のポリアルデヒド生成物を回収する;ことを伴うことができる。
【0073】
光学活性でないポリアルデヒド生成物が望まれる場合には、アキラルで実質的に水不溶性のオレフィン含有化合物出発物質および有機リンリガンドが使用される。光学活性ポリアルデヒド生成物が望まれる場合には、プロキラルもしくはキラルタイプの実質的に水不溶性のオレフィン含有化合物出発物質および有機リンリガンドが使用される。
【0074】
本発明は、(1)金属−有機リンリガンド複合体触媒、任意に遊離の有機リンリガンド、および非極性溶媒の存在下で、オレフィン含有化合物を一酸化炭素および水素ガスと反応させて、多相反応生成物流体を形成し;並びに(2)前記多相反応生成物流体を分離して、非極性相および極性相を得る;ことを含み、非極性相が前記オレフィン含有化合物、金属−有機リンリガンド複合体触媒、任意に遊離の有機リンリガンドおよび非極性溶媒を含み、極性相がポリアルデヒドを含む;方法によって製造されるポリアルデヒドの製造および使用にも関する。
【0075】
ポリアルデヒドの製造は場合によっては、アルデヒドブロックもしくは保護基でのポリアルデヒドのアルデヒド基を可逆的にブロックもしくは保護して、それぞれ、ブロックされたもしくは保護されたポリアルデヒドを得ることをさらに含むことができる。保護されたポリアルデヒドはポリアルデヒドの代わりにもしくはポリアルデヒドに加えて、本発明の多コンポーネント組成物に使用されうる。このような実施形態においては、本発明の架橋ポリウレタンを製造する本発明の方法は、ポリアルデヒドの代わりにもしくはポリアルデヒドに加えて、保護されたポリアルデヒドを使用することができ、かつこの方法は保護されたポリアルデヒドを用いてポリカルバマートを直接硬化させることを含むことができ、またはこの方法は場合によっては、その場でポリアルデヒドを得る様に保護されたポリアルデヒドを脱保護し、そしてこのポリアルデヒドを本明細書に記載される様にポリカルバマート第1コンポーネントを用いて硬化させる工程をさらに含むことができる。
【0076】
好ましくは、本発明のポリアルデヒドはトランス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、およびシス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、またはこれらポリアルデヒドの保護されたもしくはブロックされた形態の2種以上を含む混合物である。
【0077】
ポリアルデヒド生成物混合物は、相分離によってポリアルデヒド混合物を生じる粗反応混合物の他の成分から分離されうる。相分離は自発的に起こることができ、または温度もしくは圧力の変化によって、または添加剤、例えば、塩、溶媒もしくはその組み合わせの添加によって誘起されうる。例えば、ヒドロホルミル化の終了時に(もしくは、ヒドロホルミル化中に)所望のポリアルデヒドは反応混合物から回収されうる。例えば、連続液体触媒リサイクルプロセスにおいて、反応領域から取り出された液体反応混合物の部分は分離領域に通されることができ、そこでは相分離によってその液体反応混合物から所望のポリアルデヒド生成物が分離されることができ、所望の場合にはさらに精製されうる。残りの触媒含有液体反応混合物は、次いで、反応領域にリサイクルされて戻されることができ、所望の場合には、何らかの他の物質、例えば、実質的に水不溶性の未反応のオレフィン含有化合物は、水素ガスおよび一酸化炭素と共に、ポリアルデヒド生成物からそれを分離した後で液体反応中に溶かされうる。
【0078】
本発明の第1コンポーネントのポリカルバマートは平均2.5個以上のカルバマート基、または平均3個以上のカルバマート基、または平均4個以上のカルバマート基を有することができる。本明細書において使用される場合、用語「カルバマート基の平均数」は、ポリカルバマートを形成するために使用されるポリオールもしくは(ポリ)イソシアナートの完全変換を仮定して、ゲル浸透クロマトグラフィによって決定されるポリカルバマートの全数平均分子量を、カルバマートを製造するために使用されるポリオール中のヒドロキシル基の数、またはカルバマートを製造するために使用される(ポリ)イソシアナート中のイソシアナート基の数(どちらが使用されてもよい)で割った値を意味する。アルキドの場合には、ヒドロキシル基の数はGPCによって決定されるアルキドの数平均分子量をアルキドのヒドロキシル当量重量で割った値、すなわち56,100mgKOH/モルKOHをヒドロキシル価(mgKOH/g樹脂)で割った値に等しい。さらに、ポリカルバマートの数平均分子量はポリオールもしくはポリイソシアナートのGPC、次いで、ポリカルカルバマートを製造するための尿素もしくはアルキルカルバマートとの反応からの追加の重量を含ませることによって決定されることができる。
【0079】
ポリカルバマートは非環式の直鎖もしくは分岐の;環式かつ非芳香族の;環式かつ芳香族の;またはこの組み合わせであることができる。ある実施形態においては、ポリカルバマートは1種以上の非環式直鎖もしくは分岐ポリカルバマートを含む。例えば、ポリカルバマートは1種以上の非環式直鎖もしくは分岐ポリカルバマートから本質的になることができる。
【0080】
好ましくは、ポリカルバマートは炭素、水素、窒素および酸素原子から本質的になり、より好ましくは炭素、水素、窒素および酸素原子からなる。さらにより好ましくは、ポリカルバマートは炭素、水素、窒素および酸素原子からなり、各窒素および酸素原子はポリカルバマートの2以上のカルバマート基のうちの1方の窒素もしくは酸素原子である。
【0081】
典型的には、ポリカルバマートは(a)ポリオールをO−メチルカルバマートもしくは尿素と反応させてポリカルバマートを生じさせ;(b)ポリイソシアナートをO−ヒドロキシ(C−C20)アルキルカルバマートと反応させてポリカルバマートを生じさせ;または(c)O−ヒドロキシ(C−C20)アルキル−カルバマートをメタクリル酸無水物と反応させて、2−カルバモイルアルキルメタクリラートを得て、次いで2−カルバモイルアルキルメタクリラートをアクリル酸モノマーと重合させて、ポリアクリルベースのポリカルバマートとしてポリカルバマートを得る;ことにより製造される。(a)〜(c)において製造されるポリカルバマートは典型的には異なる構造を有するであろう。これら反応の例はそれぞれのスキーム(a)〜(c)において以下に図示される。
【0082】
スキーム(a)〜(c):
【化4】

式中、mがスキーム(a)およびR(OH)について定義される場合、mは2以上である。
【0083】
【化5】

式中、mは2以上の整数である。好ましくはmは2〜20の整数である。ある実施形態においては、mは2または3である。
【0084】
【化6】

式中、メタクリル酸無水物は[CH=C(CH)C(=O)]Oであり、アクリルモノマーの例はアクリル酸、(C−C20)アルキルアクリル酸(例えば、(C)アルキルアクリル酸はメタクリル酸である)、並びに(C−C20)アルキルアクリラート(すなわち、アクリル酸(C−C20)アルキルエステル、例えば、(C)アルキルアクリラートはメチルアクリラートを意味する)である。スキーム(c)には示されていないが、他のオレフィンモノマー(例えば、スチレン)もアクリルモノマーと共に使用されることができ、それによりポリ(アクリル、他のオレフィンモノマー)ベースのポリカルバマートとしてのポリカルバマートを製造することもできる。
【0085】
好ましくは、1種以上のアクリル直鎖もしくは分岐ポリカルバマートのそれぞれは1種以上のポリオールと非置換カルバミン酸アルキルエステルもしくは尿素と反応させて1種以上のアクリル直鎖もしくは分岐ポリカルバマートを生じさせる。好適なポリオールは(メタ)アクリルポリオール(すなわち、メタクリルもしくはアクリルポリオール)、ポリアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリ(オキシアルキレン)、例えば、ポリ(オキシエチレン)、例えば、ポリ(エチレングリコール))、ポリエステルポリオール、またはポリカルボナートポリオールであることができる。好ましくは、ポリアルキレンポリオールはポリアルキレングリコールである。好ましくは、ポリアルキレングリコールはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールである。
【0086】
より好ましくは、ポリカルバマートは1種以上の環式非芳香族ポリカルバマートを含み、1種以上の環式非芳香族ポリカルバマートから本質的になることができる。
【0087】
ある実施形態においては、1種以上の環式非芳香族ポリカルバマートのそれぞれはN,N’,N”−トリ置換−シアヌル酸誘導体であって、その各置換基は独立して式:HNC(=O)O−(CH−OC(=O)NH−CH−((C−C12)シクロアルキル)CH−のものであり、式中nは2〜20の整数である。好ましくは、各nは独立して2〜12の整数であり、各シクロヘキシレンは独立して1,3−シクロヘキシレンもしくは1,4−シクロヘキシレンである。より好ましくは、nは2であり、かつN,N’,N”−トリ置換−シアヌル酸は実施例3において使用される化合物(P3)である。
【0088】
好ましくは、本発明のポリカルバマートは実質的にイソシアナートを含まない。イソシアナート基を含む分子の存在または非存在はフーリエ変換赤外(FT−IR)分光法もしくは炭素−13核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル法によって容易に決定されうる。イソシアナート基含有反応物質が使用される場合には、これから製造されるポリカルバマートはイソシアナートクエンチング剤によって滴定もしくは「クエンチ」されて、残留イソシアナート基をカルバマートもしくはアミンに変換する。イソシアナートクエンチング剤として使用されることができた化合物の例は、水、水酸化ナトリウム、メタノール、ナトリウムメトキシド、およびポリオールである。
【0089】
本発明に従って、多コンポーネント組成物はポリアルデヒド第2コンポーネントおよびポリカルバマート第1コンポーネントから本質的になることができ、このコンポーネントの一方に、または別個に誘発剤を有させることができる。本発明に従って、周囲温度硬化性組成物は第1コンポーネント、第2コンポーネントおよび誘発剤の混合物から本質的になることができる。このような多コンポーネント組成物および周囲温度硬化性組成物は実質的にホルムアルデヒドを含まず、かつ実質的にイソシアナートを含まない。好ましくは、多コンポーネント組成物は実質的にイソシアナートを含まない、例えば、第1コンポーネント中にポリカルバマートおよび有効量の誘発剤を含み、第2コンポーネント中にポリアルデヒドを含む2パート配合物であり、かつ第1パートおよび第2パートは一緒に混合されて周囲温度硬化性組成物を形成する様に共同的に配置される。
【0090】
好ましくは、本発明においては、周囲温度硬化性組成物の硬化温度は80℃以下、より好ましくは60℃以下、さらにより好ましくは40℃以下、さらにより好ましくは30℃以下である。好ましい最低有効硬化温度は本発明の周囲温度硬化性組成物を硬化させて本発明の架橋したポリウレタンを7日以内に生じさせるのに有効な最低温度である。本発明の周囲温度硬化性組成物を使用する本発明の方法の硬化工程は珍しいことに周囲温度(すなわち60℃以下)で行われうる。ある実施形態においては、硬化のための周囲温度は少なくとも0℃であり、ある実施形態においては少なくとも10℃、ある実施形態においては少なくとも20℃である。ある実施形態においては、硬化のための周囲温度は50℃以下、ある実施形態においては40℃以下、ある実施形態においては35℃以下、およびある実施形態においては30℃以下である。硬化のための好ましい周囲温度は19℃〜29℃である。
【0091】
本発明の周囲温度硬化性組成物を周囲温度で硬化させるにもかかわらず、本発明の方法は7日間以下の硬化期間内で本発明の硬化したポリウレタンを製造する。ある実施形態においては、周囲温度硬化性組成物は5日間以下、より好ましくは24時間以下、さらにより好ましくは12時間以下、さらにより好ましくは1時間以下の硬化期間で硬化される。このような短い硬化期間は周囲温度硬化工程としてはずば抜けている。
【0092】
好ましくは、本発明に従って製造された架橋したポリウレタンは優から秀のクロスハッチ接着性、耐水性、メチルエチルケトンを用いた耐摩擦性、高いペンデュラム硬度、またはそのいずれか2以上の組み合わせを示す塗膜を形成する。
【0093】
好ましくは、本発明の方法の硬化工程は、揮発性有機化合物(VOC)である反応副生成物を生じさせない。好ましくは、本発明の方法は、副生成物である水の少なくとも80重量パーセント(重量%)、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは95重量%を除去する様に架橋したポリウレタンを乾燥させ、それにより乾燥した架橋したポリウレタンを製造することをさらに含む。
【0094】
好ましくは、本発明の架橋したポリウレタンは耐水性の架橋したポリウレタンである。さらに、架橋したポリウレタンは有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン(MEK))による劣化に対して耐性でありうる。
【0095】
本発明の硬化工程は好ましくは誘発事象、誘発剤またはその組み合わせによって開始される。このような開始は本発明の多コンポーネント組成物を誘発事象、誘発剤またはその組み合わせへの曝露を始め、本発明の架橋したポリウレタンを製造するのに充分な期間このような曝露を続けることにより行われる。誘発事象の例は熱である。好ましくは、熱は放射的に適用されるが、対流による様な他の手段、または手段の組み合わせが使用されうる。好ましくは、誘発剤は、組成物中の固形分の全重量を基準にして、多コンポーネント組成物の0.001重量%〜10重量%、より好ましくはその0.01重量%〜5重量%、または好ましくはその0.1重量%〜2重量%の量で使用される。本明細書においては、誘発剤のこのような量は誘発剤の「有効量」とも称される。
【0096】
カルバマート基(−O−C(=O)−NH)とアルデヒド基(−C(=O)H)との反応の速度を増大させるのに好適な何らかの化合物、物質もしくは材料が誘発剤として使用されうる。誘発剤の例はルイス酸(例えば、三ふっ化ほう素エーテラート)およびプロトン酸(すなわち、ブレンステッド酸)である。好ましくは、誘発剤は、6以下のpKを有するとして特徴付けられうるプロトン酸を含み、pKはプロトン酸の酸解離定数Kの10を底とする対数にマイナスを付けたものである。よって、本発明の周囲温度硬化性組成物は7.0以下のpH、好ましくはpH3からpH6未満を有する。好ましいプロトン酸は無機プロトン酸もしくは有機プロトン酸である。好ましい無機プロトン酸はリン酸もしくは硫酸である。好ましい有機プロトン酸はカルボン酸、ホスホン酸もしくはスルホン酸である。好ましいカルボン酸は酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸もしくはジカルボン酸である。好ましいホスホン酸はメチルホスホン酸である。好ましいスルホン酸はメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸である。好適なルイス酸硬化触媒の例はAlCl;ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(TEBAC);Cu(OSCF;(CHBrSBr;FeCl(例えば、FeCl・6HO);HBF;BFO(CHCH;TiCl;SnCl;CrCl;NiCl;およびPd(OC(O)CHである。
【0097】
誘発剤は担持されていなくてもよく(固体担体なし)、または担持されていてもよく、すなわち固体担体に共有結合されていてもよい。担持された誘発剤の例は担持された硬化触媒、例えば、担持された酸触媒、例えば、酸(H)形態のカチオン交換型ポリマー樹脂(例えば、エタンスルホン酸、2−[1−[ジフルオロ[(1,2,2−トリフルオロエチル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2−テトラフルオロ−、ポリマーと1,1,2,2−テトラフルオロエタン、商品名NAFION NR50で販売(E.I.デュポンde Nemours&Co.Inc.,デラウエア州ウィルミントン)、およびエテニルベンゼンスルホン酸ポリマーとジエテニルベンゼン、AMBERLYST商標として販売(ザダウケミカルカンパニー(米国ミシガン州ミッドランド)の子会社であるロームアンドハースカンパニー))である。
【0098】
本発明の周囲温度硬化性組成物を形成するために、ポリアルデヒド第2コンポーネント、有効量の誘発剤およびポリカルバマート第1コンポーネントが一緒に混合される。
【0099】
本発明の架橋したポリウレタンは複数の2価の結合性カルバマート基を含む。用語「2価の結合性カルバマート基」とは、ポリアルデヒドのもしくはポリアルデヒドからのアルデヒド基と、ポリカルバマートのもしくはポリカルバマートからのカルバマート基との反応によって形成される分子をいう。2価の結合性カルバマート基はヘミアミナール基もしくはジェミナルビス(ウレタン)基を含む。ヘミアミナール基は式(H−A):
【化7】

の2価の基の構造を含む。ヘミアミナール基はポリカルバマートの1つのカルバマート基とポリアルデヒドの1つのアルデヒド基との反応から形成される。ジェミナルビス(ウレタン)基は式(G−BU):
【化8】

の部分を含み、式中Rはポリアルデヒド(例えば、ジアルデヒド)の残基であり、Rはポリカルバマート(例えば、ジカルバマート)の残基である。ジェミナルビス(ウレタン)基は2つのカルバマート基と、ポリアルデヒドの1つのアルデヒド基との反応から形成される。ポリアルデヒドとポリカルバマートとの反応からのジェミナルビス(ウレタン)基の形成は酸性pHで起こり、すなわち、本発明の周囲温度硬化性組成物のpHはpH7.0以下、例えば、pH3からpH6未満であり;ジェミナルビス(ウレタン)基のこのような形成は塩基性pHでは起こり得ず、すなわち、本発明の周囲温度硬化性組成物のpHはpH7.0より大きく、例えば、pH7.1〜pH14である。典型的には、2つのカルバマート基の一方は1つのポリカルバマート分子からのものであり、その2つのカルバマート基のもう一方は別のポリカルバマート分子からのものである(すなわち、式(G−BU)における各Rは別のポリカルバマート分子からのものである)。本発明の架橋したポリウレタンにおける2価の結合性カルバマート基の種類は、分析技術、例えば、元素分析、赤外(IR)分光法(例えば、フーリエ変換IR分光法、すなわちFT−IR分光法)、質量分析、および核磁気共鳴(NMR)スペクトル法(例えば、式(H−A)における−OHを有する各炭素原子上のプロトン、および式(G−BU)におけるRを有する各炭素原子上のプロトンを観察し積分することによるようなプロトン−NMRスペクトル法)の技術の1以上などによって容易に特定されることができる。
【0100】
好ましくは、架橋したポリウレタンは少なくとも1つのジェミナルビス(ウレタン)基を含む。より好ましくは、架橋したポリウレタンは複数のジェミナルビス(ウレタン)基を含む。
【0101】
珍しいことに、ポリアルデヒドが2つしかアルデヒド基を有さずかつポリカルバマートが2つだけもしくはそれより多くのカルバマート基を有する場合であってさえ、架橋したポリウレタンが製造されうる。これはポリアルデヒドの少なくとも1つのアルデヒド基が2つのカルバマート基と反応でき、それにより2つの異なる隣り合うポリカルバマートのそれぞれからの1つが、上記複数のジェミナルビス(ウレタン)基の1つを形成する様に、ポリアルデヒドを介して隣りあうポリカルバマートを架橋する。このような二重反応は副生成物として水の分子を生じさせる。
【0102】
ジェミナルビス(ウレタン)基はジアルデヒドがポリカルバマートに反応し架橋して、それによりジアルデヒドから生じた架橋を有する本発明の架橋したポリウレタンを形成するのさえ可能にする。ジェミナルビス(ウレタン)基は3つ以上のアルデヒド基を有するポリアルデヒドを用いて形成されることもでき、この3つ以上のアルデヒド基を有するポリアルデヒドはそれにより、このようなポリアルデヒドから生じた架橋を有する本発明の架橋したポリウレタンを形成する様にポリカルバマートを架橋する。
【0103】
本発明の架橋したポリウレタンは、室温での硬化によって生じたものでさえ、高い程度の架橋を有する。この高い程度の架橋は好ましくはその分光特性(例えば、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)スペクトル法、13C−NMRスペクトル法、またはFT−IRスペクトル法から得られる)によって、またはより好ましくは、先行技術、特に、メラミン−ホルムアルデヒド先行技術と比べて改良された1以上の性能特性によって証明される。好ましくは、改良された性能特性の少なくとも1つはクロスハッチ接着性、耐水性、メチルエチルケトン摩擦に対する耐劣化性、または高いペンデュラム硬度である。
【0104】
好ましくは、本発明の架橋したポリウレタンを使用する方法は多コンポーネント組成物を用いて形成された塗膜を含み、この塗膜は対す伊勢、メチルエチルケトンでの耐摩擦性、高いペンデュラム硬度、クロスハッチ接着性、またはこの何らかの2以上の組み合わせを示す。
【0105】
本発明の接着剤組成物は本発明の架橋したポリウレタンを含むことができ、これは互いに接着されうる2つの基体の間に配置され、および2つの基体のそれぞれの少なくとも一部分で独立して操作可能に接触している。
【0106】
本発明のコーティング組成物は本発明の架橋したポリウレタンを含み、これはコーティングされうる基体の少なくとも一部分にコーティング操作可能に接触している。
【0107】
本発明のコーティングされた基体はあらゆる好適な方法で製造されうる。例えば、基体の表面をコーティングする方法においては、この方法は本発明の周囲温度硬化性組成物を基体の表面の少なくとも一部分に適用し、そして架橋したポリウレタンを含むコーティングされた機体を製造する様に、この複合材料の周囲温度硬化性組成物の硬化性塗膜を80℃以下、または例えば30℃以下の硬化温度で硬化させることを含む。
【0108】
好ましくは、本発明の塗膜は30秒以上、より好ましくは50秒以上、さらにより好ましくは80秒以上、さらにより好ましくは100秒以上のペンデュラム硬度を示す。
【0109】
好ましくは、本発明の塗膜は有機溶媒耐性、すなわち、30以上、より好ましくは50以上、さらにより好ましくは70以上、さらにより好ましくは100以上、さらにより好ましくは200を超えるメチルエチルケトン(MEK)前後往復摩擦を示す。このような有機溶媒耐性は、架橋して、架橋したポリウレタンを形成したことの証明である。
【0110】
好ましくは、本発明の塗膜は2〜6、より好ましくは3〜6、さらにより好ましくは4〜6、さらにより好ましくは5〜6、およびさらにより好ましくは6の耐水性を示す。これらの値は後に説明される。
【0111】
好ましくは、本発明の塗膜は1B〜5B、より好ましくは2B〜5B、さらにより好ましくは3B〜5B、さらにより好ましくは4B〜5B、およびさらにより好ましくは5Bのクロスハッチ接着性値を示す。
【0112】
上記ペンデュラム硬度、MEK往復摩擦(前後)の数、およびクロスハッチ接着性値のいずれか1以上を決定する場合に、塗膜は本明細書において記載される様にスチール基体上に形成される。耐水性値を決定する際に、塗膜は本明細書において記載される様にスチールまたはポプラ木材基体上に形成される。好ましくは、このように形成された本発明の塗膜は、後述の様に測定して、10マイクロメートル(μm)〜70μm、より好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm未満、およびさらにより好ましくは30μm未満の厚みを有する。ある実施形態においては、このように形成された本発明の塗膜は14μm以上、さらにより好ましくは20μm以上の厚みを有する。
【0113】
本発明の架橋したポリウレタンはシーラントを含むことができ、これはシールされうる基体にシール操作可能に接触する様に配置される。好ましくは、本発明のシーラントは液体またはガス、ダストもしくは煙;より好ましくは液体またはガス;さらにより好ましくは液体、並びにさらにより好ましくは水の通過を妨げるかまたは抑制する。ある実施形態においては、シーラントは不活性フィラー材料(例えば、不活性微粉砕粉体)をさらに含む。本発明のシーラントを使用する方法においては、シールされる基体は何らかの好適な方法によって製造されうる。例えば、基体をシールする方法は本発明の周囲温度硬化性組成物を基体の少なくとも一部分と接触させて、少なくとも基体のその部分と操作可能に接触している周囲温度硬化性組成物の硬化性コーティングを含む複合材料を生じさせ;そして少なくとも基体のその部分にシール操作可能に接触している本発明の架橋したポリウレタンのシーラント層を含むシールされた基体を製造するように、0℃から80℃未満の硬化温度で、複合材料の周囲温度硬化性組成物の硬化性コーティングを硬化させることを含む。例えば、硬化性組成物は30℃以下の硬化温度で硬化されうる。
【0114】
本発明の周囲温度硬化性組成物は、何らかの好適な適用手段、例えば、刷毛塗り、カレンダリング、ローリング、噴霧、モッピング、コテ塗りまたは浸漬などによって基体の表面に適用されうる。コーティングされる、接着される、またはシールされる基体は、例えば、平坦なもしくは巻かれたシート(例えば、円筒)、球体、ビーズ、微粉砕粒子など任意の形状のものであることができる。コーティングされる、接着される、またはシールされる基体の表面は不規則もしくは規則的、連続もしくは不連続、多孔もしくは無孔、継ぎ目ありもしくは継ぎ目なしであってよい。
【0115】
接着される、コーティングされる、またはシールされるのに好適な基体は、独立して任意の材料を含むことができる。好適な材料の例は木材、金属、セラミック、プラスチックおよびガラスである。
【0116】
接着物品は接着された基体を含み、この接着された基体は2つの基体の少なくとも部分的に接着操作可能に接触して、かつ2つの基体の間に配置される本発明の架橋したポリウレタンを含む。この2つの基体は同じかまたは異なっている。
【0117】
コーティングされた物品はコーティングされた基体を含み、このコーティングされた基体は、基体の少なくとも一部分にコーティング操作可能に接触して本発明の架橋したポリウレタンの層を含む。
【0118】
シールされた物品はシールされた基体を含み、このシールされた基体は、基体の少なくとも一部分にシール操作可能に接触して本発明の架橋したポリウレタンの層を含む。
【0119】
好ましくは、多コンポーネント組成物はキットで提供される。好ましくは、このキットは別々の第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネント、並びにそれらを混合するための道具もしくはフィーチャ、例えば、これらコンポーネント間の破壊可能な障壁を含み;このキットは本発明の多コンポーネント組成物の安定化された混合物を含むことができる。用語「安定化された混合物」とは、成分の組み合わせが24℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは40℃以下である場合に、硬化工程を受けないであろう、または極度にゆっくりとこのような硬化工程を受ける(例えば、1週間につき1%未満の硬化速度)成分の物理的組み合わせを意味する。このような安定化された混合物は本発明の硬化阻止剤を含むことができる。
【実施例】
【0120】
材料:
UNOXOL商標ジオールは、(シス,トランス)−1,3−シクロヘキサンジメタノールと(シス,トランス)−1,4−シクロヘキサンジメタノールとの約1:1混合物であり、米国ミシガン州ミッドランドのザダウケミカルカンパニーから入手可能である。
グルタルアルデヒドおよびグリオキサールはアルドリッチから購入された。
ジブチルスズジラウラートは米国ミズーリ州セントルイスのアルドリッチケミカルカンパニーから購入される。
ジブチルスズオキシドはアルドリッチケミカルカンパニーから購入された。
イソホロンジイソシアナート(IPDI)はバイエルコーポレーションから購入される。
Luperox商標ターシャリー−アミル2−エチルヘキシルペルオキシカルボナート(TAEC)、ラジカル開始剤、は米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのアルケマインコーポレーティドから購入される。
天然オイルポリオール(NOP)は、ダイズから得られるメチルヒドロキシメチルステアラート(MHMS)モノマーから調製される。国際公開第2009/009271A2号を参照。
メチルカルバマート(CHOC(=O)NH)はアルドリッチケミカルカンパニーから得られる。
分子あたり平均で約7.1のOH官能基を有するアクリルポリオールDesmophen商標A365はバイエルコーポレーションから得られる。
Tone商標0210ポリオールは135.2ミリグラム水酸化カリウム(KOH)/グラム(mgKOH/g)のヒドロキシル価を有するポリカプロラクトンジオールである。
PARALOID商標AU−608Xアクリルポリオールはキシレン中58重量%固形分、695g/当量モル(固形分)のヒドロキシル当量重量、および分子あたり平均で約11.5のOH官能基を有する。
Tone0210ポリオールおよびPARALOID AU−608Xポリオールは米国ミシガン州ミッドランドのザダウケミカルカンパニーから得られる。
DURAMAC商標52−5205ココナツ油をベースにした、175のヒドロキシル価(キシレン中60重量%固形分)、8の最大酸価(固体)を有するショートオイルアルキド樹脂が米国イリノイ州カルペンタースビルのモメンティブスペシャリティーケミカルズから得られる。
Cymel商標303ヘキサメチロールメラミン、コネチカット州スタンフォードのサイテックより。
スチールプレートはアクトテストパネル、コールドロールスチールであり、滑らかで清浄で、4インチ×12インチ×0.02インチの寸法を有する(10センチメートル(cm)×30cm×0.05cm)。
ポプラ木材板はホームデポポプラであり、3.5インチ×3フィート(8.9cm×91cm)の板から切り出された3.5インチ×5インチ(8.9cm×13cm)の寸法を有する。
【0121】
方法:
パーセント固形分:以下のことを除いて、ASTM D2369−07(コーティングの揮発性物質含量についての標準試験方法)に従って決定される:決定は三回測定で行われる。それぞれの決定のために、風袋の重さを量ったアルミニウム皿に、試験される材料のサンプル0.5〜0.7gを秤量し、0.1mgの精度で重量を記録する。サンプルを3mLのトルエンで覆う。110℃に予備加熱した対流オーブンに60分間皿を入れて、次いで、再秤量して、残留する固体の重量を得る。残留する固体の重量に基づいてパーセント固形分を計算する。
あるいは、窒素ガスパージを有する標準の熱重量分析ユニット内に10mgのサンプルを配置することにより、パーセント固形分は熱重量分析(TGA)によって決定される。10℃/分(℃/分)の加熱速度でサンプルを25℃から300℃まで加熱する。時間の関数としての重量損失%曲線のグラフから、重量損失が固形分(の分率)パーセントとして横ばい状態になるその曲線の傾斜におけるブレイクを使用する。
【0122】
塗膜の厚み:ASTM D7091−05(鉄金属に適用される非磁性塗膜および非鉄金属に適用される非磁性非導電性塗膜の乾燥膜厚の非破壊測定のための標準的手順(2005))。
【0123】
ヒドロキシル価:ASTM D4274−05(ポリウレタン減量を試験するための標準試験方法:ポリオールのヒドロキシル価の決定(2005))に従って決定され、試験物質のグラムあたりの水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数(mgKOH/g)として表される。
【0124】
光沢:測定はASTM D523−08(鏡面光沢度の標準試験方法(2008))に従って、BYKラボトロングロスユニットを用いてなされる。
【0125】
耐衝撃性:ガードナー衝撃試験機を使用し、ASTM D2794−93に従って決定される(素早い変形(衝撃)の影響に対する有機塗膜の耐性についての標準試験方法(1993))。
【0126】
耐摩耗性:テーバー(Taber)研磨機(CS−17ホイール、1000g重量、500サイクル)を使用する。
【0127】
ペンデュラム硬度:ANSI ISO1522(ペンデュラム減衰試験)に従ったKonigペンデュラム硬度試験に従う。
【0128】
鉛筆硬度:ASTM D3363−05(鉛筆試験による膜硬度についての標準試験方法(2005))。
【0129】
酸エッチング耐性:塗膜の表面上にHSOの10%溶液数滴を配置し、2時間待って、その塗膜に及ぼす目に見える効果を観察し、目に見える効果を、効果なし、中程度のエッチング、または重度のエッチングに分類することにより決定される。効果なしとは塗膜表面に変化がないことを意味し、中程度のエッチングとは塗膜表面の白化を意味し、そして重度のエッチングとは塗膜表面のブリスター形成を意味する。
【0130】
(塗膜の)耐水性:塗膜の表面上に脱イオン水を数滴配置し、その液滴をガラスカバーで覆って、24時間待って、その塗膜上の目に見える効果を観察し、そしてこの目に見える効果を効果なし、中程度のエッチング、または重度のエッチングに分類することにより決定される。効果なしとは塗膜表面に変化がないことを意味し、中程度のエッチングとは塗膜表面の白化を意味し、そして重度のエッチングとは塗膜表面のブリスター形成を意味する。1〜6の相対的な評定を割り当てて、6は最も高い耐水性、および1は最も低い耐水性であり、以下の様に特徴付けられる:
1=塗膜を通り抜け、塗膜を溶解し、クラック/剥離除去。
2=水が基体を浸食する。
3=重度のかぶり、泡/皺の形成。
4=中程度のかぶり/黄変、手触りの変化なし。
5=効果なし、目に見えるかまたはそうではない。
6=効果なし、かぶりさえなし。
【0131】
(塗膜の)耐溶媒性:塗膜を基体表面まで充分に除去し、それにより基体の表面を露出させるのに必要とされるメチルエチルケトン(MEK)往復摩擦の数として報告される。往復摩擦は1回の前後の摩擦である。塗膜は部分的に除去されることができたが、基体を露出させるまでに完全に除去され得なかった。
【0132】
ポリアルデヒドの水中溶解度:ASTM E1148−02(水性溶解度の測定のための標準試験方法(2002))。
【0133】
クロスハッチ接着性:ASTM D3359−09(テープテストにより接着性を測定するための標準試験方法)(評定0B〜5Bで、5Bは最良の接着性である)。
【0134】
製造例
製造1:1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの約1:1混合物(P1)の製造。
米国特許第6,252,121号の実施例8の手順に従う。ヘキサン(20グラム)中のロジウムジカルボニルアセチルアセトナートおよびトリス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチルフェニル)ホスファイト)(すなわち、リガンドC)の溶液(300ppmのロジウムを含み、20/1のリガンドC/ロジウムモル比を有する)がParr反応器に入れられ、90℃および100psiの合成ガス(CO/H=1:1)で約1時間活性化される。1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒド(40グラム、1,3−ブタジエンおよびアクロレインのディールスアルダー反応によって製造される)をこのオートクレーブに入れ、90℃および100psiの合成ガスでヒドロホルミル化する。このCO/H比は反応過程中1:1に維持される。ガスクロマトグラフ分析が1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒドの完全な消費を示すまで、この反応が続けられる。1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド生成物の選択性は95%を超える。このオートクレーブは周囲温度まで冷却され、反応混合物はオートクレーブから取り出されて2相系を生じさせる。上部ヘプタン相は主として触媒およびリガンドCを含み、これは所望の場合には、別のバッチの1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒドのヒドロホルミル化のために再利用されうる。下相が分け取られ、ヘプタンで洗浄され、蒸留によって精製されて、(シス/トランス)−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドおよび(シス/トランス)−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの約1:1混合物(P1)を得る。
【0135】
製造1a:UNOXOLジオール開始NOP(P1a)の製造:
330.4グラムのメチルヒドロキシメチルステアラート、72.4グラムの1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの1:1混合物(UNOXOL商標ジオール)、並びに0.411グラムのジブチルスズオキシド触媒を、機械式攪拌装置、凝縮器、添加漏斗、窒素ガス入口および反応温度を監視/制御するためのTHERM−O−WATCH商標センサー(米国インジアナ州テレハウテのGlas−Col,LLC)を備えた500ミリリットル5つ口丸底ガラスフラスコに入れた。攪拌しつつ、外部加熱油浴を用いてその混合物の温度を150℃まで上げて、1時間150℃に維持した。次いで、200℃の最終反応温度に到達するまで、温度を45分ごとに10℃の増分で上昇させる。全部で30グラムのメタノール(理論値の90%)を集める。得られる天然オイルポリオール(NOP)(P1a)を集め、これは136mgKOH/gの測定ヒドロキシル価を有している(P1a)。
【0136】
製造1b:1,3/1,4−ADIトリマー(P1b)の製造:
【化9】

米国特許第6,252,121号に記載される様に、(シス/トランス)−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび(シス/トランス)−1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの約1:1アミノメチル混合物を製造する。あるいは、アルドリッチケミカルカンパニーから(シス/トランス)−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび(シス/トランス)−1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得る。米国特許出願公開第2006/0155095A1号での教示における様に、ジクロロメタンの様な不活性溶媒中で、非求核塩基、例えば、トリエチルアミンもしくは炭酸ナトリウムの存在下で2モル当量のホスゲンとこの1:1アミノメチル混合物を反応させて、(シス/トランス)−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび(シス/トランス)−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの約1:1イソシアナトメチル混合物(1,3/1,4−ADI)を得る。(シス/トランス)−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび(シス/トランス)−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの異性体の構造は米国特許出願公開第2006/0155095A1号のパラグラフ[0012]に示されている。
【0137】
米国特許出願公開第2006/0155095A1号の実施例32/33の手順に従って、(シス/トランス)−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび(シス/トランス)−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンをトリマー化する。ガスバブラー、機械式攪拌装置、温度計および凝縮器を備えた1.8Lのハステロイ(HASTELLOY商標)(米国、インディアナ州ココモのHaynes International Inc.)反応器に、1600グラムの1,3/1,4−ADIを添加する。70℃に加熱しながら、生じる攪拌された反応混合物に乾燥窒素ガスをバブリングする。この反応混合物に、N,N,N−トリメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム2−エチルへキサノアートのエチレングリコール中75%溶液の2.8グラムを添加する。反応温度を70℃〜75℃に維持する。本明細書において記載される様に、反応混合物のNCO含量を監視する。反応混合物のNCO含量が25%に到達したときに、1gのクロロ酢酸の添加によってこの反応を停止させる。ショートパス蒸留ユニットにおいて過剰な1,3/1,4−ADIモノマーを分離して、透明な1,3/1,4−ADIトリマーを生じさせる。1,3/1,4−ADIトリマーを酢酸ブチル中に溶かして、30重量%酢酸ブチルを含み、12%のNCO含量、および0.5重量%未満の遊離の1,3/1,4−ADIモノマー含量の溶液として、製造1bの1,3/1,4−ADIトリマー(1b)を得る。オリゴマー分布の分析はこの溶液が全部で29%の1,3/1,4−ADIトリマー(1イソシアヌレート環構造)、20%の2つのイソシアヌレート環構造を含む分子、51%の高分子量オリゴマーを含むことを示す。
【0138】
製造2:天然オイルジカルバマート(P2)の製造:
機械式攪拌装置、ディーンスタークトラップ、パック(packed)凝縮器(65℃で循環するグリセロール/水を使用)、および窒素ガスバブラーシステムを備えた500mL3つ口丸底フラスコを含むシステムに、UNOXOL商標ジオール開始NOP(150g、製造1a)、メチルカルバマート(66.75g)、ジブチルスズジラウラート(0.325g)およびトルエン(25mL)を入れて、反応混合物を得る。このシステムは加熱前に窒素でフラッシュされる。2日間ゆっくりとした窒素スイープをしつつ、この反応混合物は120℃にされ、20mgKOH/g未満のヒドロキシル価が達成されるまで、定期的にサンプリングされ、ヒドロキシル価を分析する。ヒドロキシル価が20mgKOH/g未満に到達したら、パック凝縮器をショートパス蒸留ヘッドと置き換えて、窒素フローを増大させて、トルエンおよび残留メチルカルバマートを除去する。3.4mgKOH/g(P2)の最終ヒドロキシル価を有する天然オイルジカルバマート(P2)が製造される。
【0139】
製造3:N,N’,N”−トリ置換−シアヌル酸(P3)溶液の製造:
【化10】

(P3)中の各シクロヘキシレンは独立して1,3−シクロヘキシレンもしくは1,4−シクロヘキシレンである。
【0140】
機械式攪拌装置、窒素バブラーシステム、還流凝縮器、温度制御装置を備えた加熱マンテル、並びに添加漏斗を備えた反応フラスコを含むシステムに、15.0gの2−ヒドロキシエチルカルバマート(0.142モル)、ジブチルスズジラウラート(0.035g、0.055%)および50mLの乾燥N−メチル−2−ピロリジン(NMP)を入れる。このシステムは窒素でフラッシュされる。添加漏斗に、酢酸n−ブチル中のADIトリマー溶液51.1g(0.142モルの−N=C=O)(70%固形分)を入れる。反応フラスコを70℃にして、反応温度を80℃未満に維持しつつADIトリマー溶液をゆっくりと添加する。この添加が完了した後で、この溶液は80℃で4時間攪拌される。イソシアナート基のパーセント(NCO%滴定)が行われる。NCO%滴定によって示されるNCO%値がほぼゼロまたは当初イソシアナート量の5%未満になるまで、液体反応溶液は80℃に維持される。さらなる特徴付けは行われない。カルバマート含量は添加された2−ヒドロキシエチルカルバマートの量および反応内容物の最終重量に基づいて計算される(1.17ミリモルカルバマート/g溶液)。
【0141】
製造4:アクリルポリオールからのDesmophen商標A365ポリカルバマート(P4)の製造:
機械式攪拌装置、ディーンスタークトラップ、凝縮器、および窒素バブラーシステムを備えた2000mLの3つ口丸底フラスコを含むシステムに、Desmophen商標A365アクリルポリオール(バイエルコーポレーション)(500g、0.341モルのヒドロキシル)を入れる。加熱前にこのシステムは窒素でフラッシュされる。この内容物を150℃にして、酢酸ブチル溶媒(酢酸ブチルの沸点126℃、予想約146.25mL)を除去する。メチルカルバマート(96.0g、0.512モル)およびジブチルスズオキシド触媒(1.8g、0.30%)が添加され、このシステムは窒素でフラッシュされる。メチルカルバマートが溶解したら、得られる反応混合物をゆっくりと145℃まで加熱する。生じたメタノールは集められ、集められたメタノールの体積が記録される。メタノールがもはや有意に生じなくなったら、反応フラスコを通し液体内容物上に窒素が流され、反応混合物からメタノールおよび過剰のメチルカルバマートを追出させる。反応混合物は常に150℃以下に保たれる。メチルカルバマートの除去の後で、過重水素化ジメチルスルホキシド(d6−DMSO)中での炭素−13核磁気共鳴(13C−NMR)が行われる。最初の日に150℃での加熱が8時間行われ、加熱が停止され(熱源が停止される)、次いで二日目に150℃の加熱がさらに8時間続けられる。二日目の150℃での8時間の加熱の後で、反応温度は100℃に下げられ、メチルカルバマートが除去されたことを13C−NMR分析が示すまで、反応混合物上に窒素を通しつつこの温度は維持される。メチルカルバマートの除去中に、生じる生成物の粘度が、その生成物を注ぐのが遅くなるであろうほど高くなりすぎる場合には、混合キシレンをその反応混合物に添加して、その生成物が満足行く様に注ぐことができる様に粘度を下げる。このメチルカルバマート除去工程は5日〜7日間かかる場合があった。ヒドロキシル価滴定はヒドロキシル基のカルバマート基への変換を証明する。完了時に、(P4)は液体溶液である。TGAが行われて固形分パーセントを決定する(2.12ミリモルカルバマート/g(P4)溶液、溶媒の量を調節、61%固形分)。さらなる特徴付けは行われない。生成物のカルバマート含量は当初Desmophen商標A365ヒドロキシル含量から最終反応生成物のヒドロキシル含量を引くことによって決定され、これは2.12ミリモルカルバマート/g(P4)溶液をもたらす。
【0142】
製造5:ポリエーテルポリオールからのPEG200,2ポリカルバマート(P5)の製造:
機械式攪拌装置、ディーンスタークトラップ、凝縮器、および窒素バブラーシステムを備えた1000mLの3つ口丸底フラスコを含むシステムに、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200グラム/モル(g/モル)、2つのヒドロキシル官能基;「PEG200,2ポリエーテル」)(250g、1.25モル)、メチルカルバマート(281.5g、3.75モル)、およびジブチルスズオキシド(0.53g、0.1%)を入れて反応混合物を得る。このシステムは加熱前に窒素ガスでフラッシュされる。温度がゆっくりと180℃にされる。生じたメタノールは集められ、集められた体積が記録される。メタノールがもはや有意に生じなくなったら、このフラスコを通し液体内容物上に窒素ガスが流され、反応混合物からメタノールおよび過剰のメチルカルバマートを追出させる。メチルカルバマートの除去の後で、DMSO中で13C−NMRが行われる。最初の日に180℃での加熱が8時間行われ、加熱が停止され(熱源が停止される)、次いで二日目に180℃での加熱がさらに8時間続けられる。二日目の180℃での8時間の加熱の後で、反応温度は100℃に下げられ、メチルカルバマートが除去されたことを13C−NMR分析が示すまで、反応媒体上に窒素を通しつつ、この温度は維持される。この工程は5日〜7日間かかる場合があった。シアヌル酸は(メチルカルバマートの3つの分子の副反応からの)副生物として観察され、メタノールは副生成物として観察される。PEG200,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P5)が液体として得られる。PEG200,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P5)のそれぞれの分子は2つのカルバマート基を有する。さらなる特徴付けは行われない。生成物のカルバマート含量は当初PEG200,2ポリエーテルヒドロキシル含量から最終反応生成物のヒドロキシル含量を引くことによって決定される。
【0143】
製造6〜11:ポリエーテルからのポリカルバマートの製造:
それぞれ、PEG200,2ポリエーテルを毎回下記のものと置き換えることを除いて製造5の手順が繰り返された。
製造6:ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000グラム/モル(g/モル)、2つのヒドロキシル官能基;「PEG1000,2ポリエーテル」);
製造7:エトキシ化グリセリン(IP625;重量平均分子量625グラム/モル(g/モル)、3つのヒドロキシル官能基;「エトキシ化グリセリン625,3ポリエーテル);
製造8:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量425グラム/モル(g/モル)、2つのヒドロキシル官能基;「PPG425,2ポリエーテル」);
製造9:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000グラム/モル(g/モル)、2つのヒドロキシル官能基;「PPG1000,2ポリエーテル」);
製造10:ポリプロピレングリコールアーク(Arch)ケミカルカンパニーのPoly−G30−400T(重量平均分子量420グラム/モル(g/モル)、3つのヒドロキシル官能基;「PPG420,3ポリエーテル」);
製造11:ポリプロピレングリコールアークケミカルカンパニーのPoly−G540−378T(重量平均分子量600グラム/モル(g/モル)、4つのヒドロキシル官能基;「PPG600,4ポリエーテル」)。
【0144】
各製造6、7、8、9および10は、それぞれ、ポリカルバマートへの約90%変換をもたらした(13C−NMRスペクトル法およびヒドロキシル価特徴付けによる)。生成物のカルバマート含量は当初ポリエーテルポリオールヒドロキシル含量から最終反応生成物のヒドロキシル含量を引くことにより決定された。
【0145】
製造12:ポリカプロラクトンからのポリカルバマート(P12)の製造:
Tone0210ポリオール(93.75g)、触媒ジブチルスズジラウラート(0.1g)およびUNOXOL商標ジオール(11.43g)を、凝縮器、オーバーヘッド攪拌装置、添加漏斗および窒素バブラーシステムを備えた3つ口丸底フラスコに入れる。窒素パージ下で、この混合物を80℃に加熱し、約200回転/分(rpm)で2時間攪拌し、出発物質からの水を除去する。得られる内容物を70℃まで冷却し、攪拌速度を250rpmに上げる。上記IPDI(82.31g)が添加漏斗に入れられ、滴下添加される。氷浴を用いて発熱反応が制御され、反応温度が80℃に保たれる。IPDIの添加が完了した後で、反応の温度は80℃で4時間維持される。このフラスコは68℃に冷却され、−N=C=O滴定が行われて、活性−NCO基の量を決定する。この混合物に2−ヒドロキシエチルカルバマート(26.74g)を添加し、−N=C=O滴定が−N=C=O基が残っていないことを示すまで、得られる混合物を80℃で6時間加熱する。得られる生成物の粘度を下げるために溶媒MEKが添加され、MEK中の(P12)の液体溶液を生じさせる。さらなる特徴付けは行われない。おそらく、全ての2−ヒドロキシエチルカルバマートはNCO基と反応してしまっており、ポリマー鎖に組み込まれている。
【0146】
製造13:ポリアクリルPARALOID商標AU−608Xアクリルポリオールからのポリカルバマートの製造:
機械式攪拌装置、ディーンスタークトラップ、凝縮器、および窒素バブラーシステムを備えた2000mLの3つ口丸底フラスコを含むシステムに、PARALOID商標AU−608Xアクリルポリオール(1500g、1.334モルのヒドロキシル)、メチルカルバマート(100.2g、1.334モル)およびジブチルスズオキシド触媒(4.8g、0.30%)を入れ、このシステムを窒素ガスでフラッシュする。メチルカルバマートが溶解した後で、得られる反応混合物をゆっくりと140℃まで加熱する。生じたメタノールを集め、その体積を記録する。メタノールがもはや有意に生じなくなったら、反応フラスコを通し液体内容物上を窒素ガスでフラッシュし、反応混合物から残留しているメタノールおよび過剰のメチルカルバマートを追出させる。反応混合物の温度を140℃以下に保持する。最初の日に140℃での加熱が8時間行われ、加熱が停止され(熱源が停止される)、次いで二日目に反応混合物上に窒素ガスを通しつつ140℃の加熱がさらに8時間続けられる。過重水素化ジメチルスルホキシド(d6−DMSO)中での炭素−13核磁気共鳴(13C−NMR)分析はメチルカルバマートが除去されたことを示す。メタノールおよび未反応のメチルカルバマートの除去中に、生じる混合物の粘度が、その生成物を注ぐのが遅くなるであろうほど高くなりすぎる場合には、混合キシレンをその反応混合物に添加して、その生成物が満足行く様に注ぐことができる様に粘度を下げる。ヒドロキシル価滴定をおこない、これはヒドロキシル基のカルバマート基への変換を証明する(OH価=10mgKOH/g)。完了時に、製造13のポリアクリルベースのポリカルバマートは液体溶液である。ポリアクリルベースのポリカルバマートのカルバマート含量は、そのヒドロキシル含量を出発PARALOID商標AU−608Xアクリルポリオールのヒドロキシル含量から引くことにより決定される。TGAが行われて固形分パーセントを決定する(0.974ミリモルカルバマート/gポリアクリルベースのポリカルバマート溶液、溶媒の量を調節、68.7重量%固形分)。
【0147】
製造14:DURAMAC商標52−5205ショートオイルアルキド樹脂からのアルキドからのポリカルバマートの製造:
PARALOID商標AU−608Xアクリルポリオールの代わりにDURAMAC商標52−5205(500g、0.936モルのヒドロキシル)、70.2g(0.936モル)のメチルカルバマート、および1.7g(30%)のジブチルスズオキシドを使用することを除いて、製造14の手順を反復し、メタノールおよび過剰のメチルカルバマートが除去された混合物を得る。メタノールおよび未反応のメチルカルバマートの除去中に、生じる混合物の粘度が、その生成物を注ぐのが遅くなるであろうほど高くなりすぎる場合には、メチルエチルケトンをその冷却された反応混合物に添加して、その生成物が満足行く様に注ぐことができる様に粘度を下げる。ヒドロキシル価滴定をおこない、これはヒドロキシル基のカルバマート基への変換を証明する(OH価=15mgKOH/g)。完了時に、製造14のアルキドベースのポリカルバマートは液体溶液である。ポリアクリルベースのポリカルバマートのカルバマート含量は、そのヒドロキシル含量を出発アルキドベースのポリカルバマートのヒドロキシル含量から引くことにより決定され、次いでTGAを行って固形分パーセントを決定した(0.896ミリモルカルバマート/gアルキドベースのポリカルバマート溶液、溶媒の量を調節、39.5%固形分)。
【0148】
ある実施形態においては、本発明は上記製造のいずれかで製造された配合物もしくは生成物を提供する。
【0149】
実施例:
実施例1a〜1f:スチール基体上でのN,N’,N”−トリ置換−シアヌル酸(P3)および水性グルタルアルデヒドもしくは水性グリオキサールを用いる塗膜の製造:
6つの別々の実験においては、20gの製造例3のN,N’,N”−トリ置換−シアヌル酸溶液(P3)、1gのMEK溶媒、0.13gの50重量パーセント(重量%)のMEK中トリフルオロ酸触媒溶液、および2.46gの50重量%水性グルタルアルデヒド(実施例1a、1b、もしくは1c)、または1.78gの40重量%水性グリオキサール(実施例1d、1eもしくは1f)を手作業で混合して混合物を得て、それぞれ実施例1a、1bおよび1cの3つの塗膜、およびそれぞれ実施例1d、1eおよび1fの3つの塗膜を生じさせるように、得られた混合物のそれぞれを、標準のドローダウンバーを用いてスチールプレートの表面に適用し、24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ、7日間、30分間および30分間硬化させた。
【0150】
実施例1g〜1l:スチール基体上でのDesmophen商標A365ポリアクリルからのポリカルバマートおよび水性グルタルアルデヒド(実施例1g、1hおよび1i)または水性グリオキサール(実施例1j、1kおよび1l)を用いる塗膜の製造:
6つの別々の実験においては、等しい当量(すなわち1:1)量の20gの製造4のDesmophen商標A365ポリアクリルベースのポリカルバマート溶液(P4)、5gのメチルエチルケトン(MEK)、0.14gの50重量パーセント(重量%)のMEK中トリフルオロ酢酸、および1.94gの40重量%水性グリオキサール、または2.55gの50重量%水性グルタルアルデヒドを手作業で混合して、得られる混合物のそれぞれをスチールプレートに適用し、それぞれ実施例1g、1hおよび1iの3つの塗膜並びにそれぞれ実施例1j、1kおよび1lの3つの塗膜を生じさせる様に、それぞれ24℃、60℃および140℃の温度で、それぞれ、7日間、30分間および30分間硬化させた。
【0151】
実施例2:天然オイルジカルバマート、並びに1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物からの架橋したポリウレタンの製造:
天然オイルジカルバマート(P2)(20.0g)を1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドのほぼ1:1の混合物(P1)(1.45g)と室温で手作業で混合した。得られる攪拌した混合物に、0.13gの50重量%MEK中ドデシルベンゼンスルホン酸触媒溶液を添加した。室温で1時間にわたって、得られた混合物を増粘させ;室温で24時間後、それは実施例2の架橋したポリウレタンを形成した。この架橋したポリウレタンはNMPに実質的に不溶性である堅いゴム状塊であった。
【0152】
実施例3:本発明の架橋したポリウレタンの製造:
15gの製造3のN,N’,N”−トリ置換−シアヌル酸溶液(P3)、1.23gの製造2の1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド(P2)の混合物、3gのNMP溶媒、および0.1gの50重量パーセント(重量%)ドデシルベンゼンスルホン酸/NMP溶液(0.3重量%の触媒を有する反応混合物を与える)を手作業で混合し、これは次いで24℃の硬化温度で24時間硬化させられて、実施例3の架橋したポリウレタンを得た。24℃で合計7日間のさらなる硬化が、さらに硬化した実施例3の架橋したポリウレタンをもたらした。
【0153】
実施例3a〜3h:スチール基体(実施例3a、3bおよび3c)および木材基体(実施例3d〜3h)上での本発明の塗膜のそれぞれの製造:
それぞれの回において以下のことを除いて、実施例3が別々に8回繰り返された:ドデシルベンゼンスルホン酸/NMP触媒溶液を添加した直後に、得られた硬化性混合物を、標準的ドローダウンバーを用いてスチールプレートまたは5つのポプラ木材板の1つに適用し、そして実施例3a、3bおよび3cの3つの塗膜を生じさせる様にそれぞれ24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ7日、30分および30分間硬化させた。それぞれ実施例3d、3e、3f、3gおよび3hの5つの塗膜を生じさせる様に、ポプラ木材板上で、24℃でそれぞれ1日および7日間、60℃でそれぞれ30分、2時間および4時間の間硬化性混合物を硬化させた。塗膜の厚み、クロスハッチ接着性(スチール上の塗膜のみ)、ペンデュラム硬度(スチール上の塗膜のみ)、MEK往復摩擦(前後)耐性(スチール上の塗膜のみ)および耐水性の特性の結果がそれぞれ以下の表1Aに示される。
【0154】
実施例3aa−3dd:比較の架橋したポリウレタンの製造:
15gの製造3のN,N’,N”−トリ置換−シアヌル酸溶液(P3)、2.28gのCymel商標303、0.1gの50重量%MEK中ドデシルベンゼンスルホン酸溶液、および2gのNMPを手作業で混合した。実施例3ddにおいては、Cymel商標303は除かれた。各混合物は、次いで、スチール基体上にコーティングされ、そして以下の表1Aに示される様々な条件下で独立して硬化させられた。
【0155】
実施例4:1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物、並びにDesmophen商標A365ポリアクリルベースのポリカルバマート(1:1)からの本発明の架橋したポリウレタンの製造:
等しい当量(すなわち1:1)量の7.5gの製造4のDesmophen商標A365ポリアクリルベースのポリカルバマート溶液(P4)、並びに1gの製造1の1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド(P1)の混合物を、2gのメチルエチルケトン(MEK)および0.05gの50重量%のMEK中ドデシルベンゼンスルホン酸溶液と共に混合して、次いで得られた混合物を24℃の硬化温度で24時間硬化させて、実施例4の架橋したポリウレタンを得た。24℃での合計7日間のさらなる硬化が、さらに硬化された実施例4の架橋したポリウレタンを生じさせた。
【0156】
実施例4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4h:スチール基体(実施例4a、4bおよび4c)および木材基体(実施例4d〜4h)上での本発明の塗膜のそれぞれの製造:
それぞれの回において以下のことを除いて、実施例4が別々に8回繰り返された:ドデシルベンゼンスルホン酸/MEK触媒溶液を添加した直後に、得られた硬化性混合物を、標準的なドローダウンバーを用いて、別々のスチールプレートもしくは5つのポプラ木材板の別々の1つに適用し、そしてそれぞれ実施例4a、4bおよび4cの3つの発明の塗膜を生じさせる様にスチールプレート上でそれぞれ24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ7日、30分および30分間硬化させた。ポプラ木材板上に得られた層は、実施例4d、4e、4f、4gまたは4hの5つの発明の塗膜を生じさせる様にそれぞれ24℃の温度で1日、および7日間、並びに60℃でそれぞれ30分、2時間および4時間硬化させられた。塗膜厚み、クロスハッチ接着性(スチール上の塗膜のみ)、ペンデュラム硬度(スチール上の塗膜のみ)、MEK往復摩擦(前後)耐性(スチール上の塗膜のみ)および耐水性の特性の結果がそれぞれ以下の表1Bに示される。
【0157】
実施例4aa−4dd:比較の架橋したポリウレタンの製造:
10gのDesmophen商標A365ポリカルバマート:溶液(P4)、2.47gのCymel商標303、0.08gのドデシルベンゼンスルホン酸溶液(MEK中50重量%)、および3gのMEKを手作業で混合した。実施例4ddにおいては、Cymel商標303は除かれた。各混合物は、次いで、スチール基体上にコーティングされ、そして以下の表1Bに示される様々な条件下で独立して硬化させられた。
【0158】
実施例5:1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物(P1)、並びにPEG200,2ポリエーテルベースのポリカルバマートからの本発明の架橋したポリウレタンの製造:
以下のことを除いて、実施例4の手順が繰り返された:Desmophen商標A365ポリアクリルベースのポリカルバマートを製造5のPEG200,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P5)に変えて、得られた混合物を24℃の硬化温度で24時間硬化させて実施例5の架橋したポリウレタンを得た。特に、15gのPEG200,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P5)、7.24gの製造1の1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物(P1)、0.13gの50重量%のMEK中ドデシルベンゼンスルホン酸触媒溶液、並びに3gのMEK溶媒をビーカーに入れた。24℃で合計7日間のさらなる硬化は、さらに硬化された実施例5の架橋したポリウレタンを生じさせた。
【0159】
実施例5a〜5c:スチール基体上でのそれぞれの本発明の塗膜の製造(実施例5a、5bおよび5c):
Desmophen商標A365ポリアクリルベースのポリカルバマートを製造5のPEG200,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P5)に変えたことを除いて、実施例4a〜4cが繰り返された。それぞれの回について、ドデシルベンゼンスルホン酸/MEK溶液を添加した直後に、得られた硬化性混合物を標準的なドローダウンバーを用いてスチールプレートに適用し、そしてそれぞれ実施例5a、5bおよび5cの3つの塗膜を生じさせる様にそれぞれ24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ7日、30分および30分間硬化させた。塗膜厚み、クロスハッチ接着性(スチール上の塗膜のみ)、ペンデュラム硬度(スチール上の塗膜のみ)、MEK往復摩擦(前後)耐性(スチール上の塗膜のみ)および耐水性の特性の結果がそれぞれ以下の表1Cに示される。
【0160】
実施例6〜11:1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物、並びにポリエーテルベースのポリカルバマートからの本発明の架橋したポリウレタンの製造:
PEG200,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P5)を以下のそれぞれに変えたことを除いて、実施例5が別々に6回(実施例6〜11についてそれぞれ1回)繰り返された:製造6のPEG1000,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P6);製造7のエトキシ化グリセリン625,3ポリエーテルベースのポリカルバマート(P7);製造8のPPG425,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P8);製造9のPPG1000,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P9);製造10のPPG420,3ポリエーテルベースのポリカルバマート(P10);並びに、製造11のPPG600,4ポリエーテルベースのポリカルバマート(P11)。それぞれの得られた混合物は24℃の硬化温度で24時間硬化されて、実施例6、7、8、9、10、または11のそれぞれの架橋したポリウレタンを得た。24℃で合計7日間のさらなる硬化が実施例6、7、8、9、10、または11の硬化された架橋したポリウレタンを生じさせた。
【0161】
実施例8a〜8c:DesmophenA365ポリアクリルベースのポリカルバマートを製造8のPPG425,2ポリエーテルベースのポリカルバマート(P8)に変えたことを除いて、実施例4a〜4cの各手順が繰り返された。それぞれの回について、ドデシルベンゼンスルホン酸/MEK溶液を添加した直後に、得られた硬化性混合物を標準的なドローダウンバーを用いてスチールプレートに適用し、そしてそれぞれ実施例8a、8bおよび8cの3つの発明の塗膜を生じさせる様にそれぞれ24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ7日、30分および30分間硬化させた。塗膜厚み、クロスハッチ接着性(スチール上の塗膜のみ)、ペンデュラム硬度(スチール上の塗膜のみ)、MEK往復摩擦(前後)耐性(スチール上の塗膜のみ)および耐水性の特性の結果がそれぞれ以下の表1Cに示される。
【0162】
実施例10a、10bおよび10c:DesmophenA365ポリアクリルベースのポリカルバマートを製造10のPPG420,3ポリエーテルベースのポリカルバマート(P10)に変えたことを除いて、実施例4a〜4cの各手順が繰り返された。それぞれの回について、ドデシルベンゼンスルホン酸/MEK溶液を添加した直後に、得られた硬化性混合物を標準的なドローダウンバーを用いてスチールプレートに適用し、そしてそれぞれ実施例10a、10bおよび10cの3つの発明の塗膜を生じさせる様にそれぞれ24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ7日、30分および30分間硬化させた。塗膜厚み、クロスハッチ接着性(スチール上の塗膜のみ)、ペンデュラム硬度、MEK往復摩擦(前後)耐性および耐水性の特性の結果がそれぞれ以下の表1Cに示される。
【0163】
実施例11a、11bおよび11c:DesmophenA365ポリアクリルベースのポリカルバマートを製造11のPPG600,4ポリエーテルベースのポリカルバマート(P11)に変えたことを除いて、実施例4a〜4cの各手順が繰り返された。それぞれの回について、ドデシルベンゼンスルホン酸/MEK溶液を添加した直後に、得られた硬化性混合物を標準的なドローダウンバーを用いてスチールプレートに適用し、そしてそれぞれ実施例11a、11bおよび11cの3つの塗膜を生じさせる様にそれぞれ24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ7日、30分および30分間硬化させた。塗膜厚み、クロスハッチ接着性(スチール上の塗膜のみ)、ペンデュラム硬度(スチール上の塗膜のみ)、MEK往復摩擦(前後)耐性(スチール上の塗膜のみ)および耐水性の特性の結果がそれぞれ以下の表1Cに示される。
【0164】
実施例12:1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物、並びにポリカプロラクトンベースのポリカルバマートからの本発明の架橋したポリウレタン:
DesmophenA365ポリアクリルベースのポリカルバマートを製造12のポリカプロラクトンベースのポリカルバマート(P12)に変えて、得られた混合物を24℃の硬化温度で24時間硬化させて実施例12の架橋したポリウレタンを得たことを除いて、実施例4の手順が繰り返された。特に、15gの製造12のポリカプロラクトンベースのポリカルバマート(P12)、1.32gの製造1の1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物(P1)、0.1gの50重量%のMEK中ドデシルベンゼンスルホン酸溶液(0.3重量%触媒を有する反応混合物を与える)、並びに5gのMEK溶媒をビーカー内で混合した。24℃で合計7日間のさらなる硬化は、実施例12の硬化された架橋したポリウレタンを生じさせた。
【0165】
実施例12a、12bおよび12c:DesmophenA365ポリアクリルベースのポリカルバマートを製造12のポリカプロラクトンベースのポリカルバマート(P12)に変えたことを除いて、実施例4a〜4cの各手順が繰り返された。それぞれの回について、ドデシルベンゼンスルホン酸/MEK溶液を添加した直後に、得られた硬化性混合物を標準的なドローダウンバーを用いてスチールプレートに適用し、そしてそれぞれ実施例12a、12bおよび12cの3つの塗膜を生じさせる様にそれぞれ24℃、60℃および140℃の硬化温度で、それぞれ7日、30分および30分間硬化させた。塗膜厚み、クロスハッチ接着性(スチール上の塗膜のみ)、ペンデュラム硬度(スチール上の塗膜のみ)、MEK往復摩擦(前後)耐性(スチール上の塗膜のみ)および耐水性の特性の結果がそれぞれ以下の表1Cに示される。
【0166】
表1における塗膜厚みデータはmil単位で、および挿入的にマイクロメートル単位で表される(1milは1000分の1インチすなわち25.4μmである)。表1におけるペンデュラム(Konig)硬度データは秒単位で表され、より大きな秒数はより大きなペンデュラム硬度を意味する。表1における溶媒すなわちMEK往復摩擦耐性データは、塗膜が基体まで貫通させられる前のMEK往復摩擦の数で表され、より大きな数のMEK往復摩擦はより大きなMEK往復(前後)摩擦耐性を意味する。表1における耐水性データは1〜6の尺度で順位付けする定性的な値で表され、1は最も低い耐水性であり、6は最も高い耐水性である。表1におけるクロスハッチ接着性データは0B〜5Bの尺度で順位付けする定性的な値で表され、0Bは最も低いクロスハッチ接着性であり、5Bは最も高いクロスハッチ接着性である。このデータは上述のペンデュラム硬度、MEK往復摩擦、耐水性およびクロスハッチ接着性試験方法を使用して得られる。表1においては、ハイフンは文章を欄に適合させる様に使用され;「Ex.」は例を意味し、「No.」は番号を意味する。
【0167】
【表1】

3aa、3bb、3ccおよび3ddは比較である;N/d=決定されていない;**N/t=試験されていない。
【0168】
上の表1Aに示される様に、実施例3a、3b、3c、3d、3e、3f、3gおよび3hの塗膜は優〜秀のMEK往復摩擦結果、または優〜秀の耐水性をもたらし、非常に低い硬化温度での架橋を示す。これに対して、比較例3aa、3bbおよび3ccにおけるメラミン架橋塗膜は良好な架橋をもたらすために140℃の硬化を必要とした。例3ddは架橋剤を有していなかった。
【0169】
以下の表1Bに示される様に、約7.1のカルバマート官能基を有するポリカルバマートから製造される実施例4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの塗膜は優〜秀のMEK往復摩擦結果、または優〜秀の耐水性をもたらし、非常に低い硬化温度での架橋を示す。これに対して、比較例4aa、4bbおよび4ccにおけるメラミン架橋塗膜は良好な架橋をもたらすために140℃の硬化を必要とした。例4ddは架橋剤を有していなかった。
【0170】
【表2】

4aa、4bb、4ccおよび4ddは比較である;N/d=決定されていない;**N/t=試験されていない。
【0171】
【表3】

【0172】
上の表1Cに示される様に、トリ官能性ポリカルバマートからの実施例10a、10b、10c、並びにテトラ官能性ポリカルバマートから製造された実施例11a、11bおよび11cの塗膜は優〜秀のMEK往復摩擦結果、優の評定のペンデュラム硬度、並びに良〜秀の耐水性をもたらし、非常に低い硬化温度での架橋を示す。劣った耐水性および硬度特性をもたらすと予想されるポリエーテルポリオールからポリカルバマートが製造されたことを考慮すると、これは優れた性能である。これに対して、ジカルバマート ポリカルバマートから製造された実施例5a、5b、5c、8a、8bおよび8cにおける架橋塗膜は劣った耐水性およびペンデュラム硬度をもたらした。
【0173】
【表4】

【0174】
上の表1Dに示される様に、ジ官能性ポリカルバマートからの実施例12a、12b、12cの塗膜は、140℃での硬化でさえ、劣った〜良のMEK耐性および劣ったペンデュラム硬度をもたらした。
ここで示されないが、実施例の塗膜は20度光沢、60度光沢、鉛筆硬度(彫り込み)、指の爪による傷つけ試験(合格または不合格)、耐衝撃性(直接、インチ−ポンド)、マイクロマー耐性、耐スクラッチ性またはその組み合わせによってさらに特徴付けられた。
【0175】
実施例13a〜13d:塗膜乾燥時間および硬度からのポットライフの関係性低下:
FlackTekスピードミキサーDAC150FVZ−Kを使用して、7.5gのAU608カルバマート(キシレン中62%;メチルカルバマートとPARALOID商標AU−608ポリオールとの反応により製造された)、4.76gの硬化阻止剤(実施例13a〜13d)、および0.091gのパラ−ドデシルベンゼンスルホン酸溶液(イソプロパノール(IPA)中10重量%)が混合された。次いで、この混合物に、0.47gの(シス,トランス)−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドおよび(シス,トランス)−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物(P1)が添加され、スピードミキサーによって2000rpmで1分間混合された。得られた配合物の粘度がブルックフィールド粘度計DV−IIIで測定され、ポットライフは粘度が900センチポイズ(cP)に到達するための時間として定義される。ワイヤ巻き付けロッド(#50)を用いてこの配合物をアルミニウム基体上にドローダウンすることによって塗膜を製造する。指触乾燥時間は、軽く圧力をかけて綿棒で触った後に印が残らないように、塗膜が充分乾燥するのに必要とされる最低量の時間である。マイクロ圧子フィッシャースコープHM2000によって塗膜のマルテンス硬度が、ニュートン/平方ミリメートル(N/mm)単位で測定された。比較として、本発明の多コンポーネント組成物を得るために、硬化阻止剤のかわりに炭化水素溶媒キシレン(実施例13e)を使用して上記手順が繰り返された。以下の表2は硬化阻止剤によるポットライフおよび指触乾燥時間/硬度発現の関係性低下を示す。
【0176】
【表5】

N/dは決定されていないことを意味する;*は比較である。
【0177】
実施例13a〜13dはカルボキシルエステル、ケトンおよびアルコールが硬化阻止剤として機能して、多コンポーネント組成物のポットライフについて、その指触時間およびその組成物から製造される塗膜もしくは膜の硬度との関係性を低下させる。上の表2に示される様に、実施例13dは、イソプロパノールは乾燥時間を有意に悪化させることなく劇的にポットライフを向上させることを示す。実施例13eは、キシレンは有機溶媒として使用されうるが、多コンポーネント組成物において硬化阻止剤として有効ではないことを示す。
【0178】
実施例14a〜14cにおいて、それぞれ0.68のメタノール(実施例14b)およびエタノール(実施例14c)がさらに添加されたことを除いて、実施例13eが3回繰り返された。下の表3に示される様に、アルコール硬化阻止剤は、少量でさえ、その指触時間/硬度発現を悪化させることなく組成物のポットライフを劇的に延ばす。実施例14aは、キシレンは本発明の組成物において硬化阻止剤としてではなく有機溶媒として使用されうることを示す。
【0179】
【表6】

比較
【0180】
実施例15:顔料を含む塗膜の改良された接着性および可とう性。
下の表4に示される多コンポーネント組成物が製造され、上述の様にアルミニウム上にコーティングされて、ASTM D522−93aに従って可とう性(マンドレル曲げ)、並びにASTM D3359−09e2および水に24時間さらした後で試験する様に改変されたASTM D3359−09e2に従って乾燥および水に濡れた塗膜の接着性を決定した。結果は下の表5に示される。
【0181】
【表7】

【0182】
【表8】

接着性5Bは最も大きく、0Bは最も小さい。
【0183】
上の表5に示される様に、実施例15は、顔料が、その顔料を含む多コンポーネント組成物から製造された塗膜もしくは膜の可とう性および接着性を、その塗膜もしくは膜が金属基体上に適用される場合に、その顔料がないことを除いて同じ多コンポーネント組成物と比較して改良することを示す。
【0184】
実施例16:架橋したポリウレタンおよびアルミニウム上でのこれを含む塗膜:
等しいモル当量(すなわち1:1)量の10gのポリアクリルベースのポリカルバマート溶液、0.682gの1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、0.26gの25重量%のメチルエチルケトン(MEK)中のドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)溶液、並びに4gのMEKを充分に混合することによって、アルミニウム基体上にポリアクリルベースのポリカルバマート(製造13)並びに1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド(P1)の混合物が準備され、ポリアクリルベースのポリカルバマート並びに1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドに対して0.6重量%DDBSAを有する反応混合物を得た。得られた混合物はドローダウンバーもしくはロッドを用いてアルミニウムプレート上に層を生じさせる様にアルミニウムプレートの表面に適用され、次いで、実施例16の塗膜を生じさせる様に得られた層を24℃の硬化温度で7日間硬化させた。アルミニウム基体の代わりにスチールプレートもしくは木材基体を使用したことを除いてこの手順は2回繰り返された。試験の結果は下の表6に記録される。
【0185】
実施例17:架橋したポリウレタンおよび木材上でのこれを含む塗膜:
アルミニウムの代わりにポプラ木材板(1/4”×4”×48”、5”の長さに切り出し)を使用し、ドローダウンバーの代わりに塗料用ブラシを用いて混合物が適用されて、塗膜を含むコーティングされた木材板を生じさせ、次いで、このコーティングされた板をオーブン中で60℃で30分間加熱したことを除いて、実施例16の手順が繰り返された。次のこと「塗膜をかるく磨き、このかるく磨かれた塗膜に追加の混合物を適用し、オーブン中60℃で30分間加熱する」ことが2回繰り返されて3回コーティングされた木材板を生じさせた。3回コーティングされた板は室温で7日間乾燥させられ、次いで4滴の試験液体に以下の様に曝露させられた:塗膜の表面上の13mmの吸収性紙ディスクに4滴の試験液体が適用され、次いで、このディスクをプラスチックボトルキャップで24時間覆って、試験液体の蒸発を最小限にした。24時間にわたって試験された試験液体はWINDEX商標オリジナルでアンモニア−Dクリーナーを伴うもの(S.C.ジョンソン&サン インコーポレーティド、ワイオミング州ラシーンからの水性アンモニアクリーニング流体)、水、50%水性エタノール、並びにSKYDROL商標LD4液圧流体(米国ミズーリ州セントルイスのSoltia Inc.からのトリブチルホスファート(58.2重量%)、ジブチルフェニルホスファート(20.0〜30.0重量%)、ブチルジフェニルホスファート(5.0〜10.0重量%)、2−エチルヘキシル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボキシラート(10重量%以下)および2,6−ジ(tert−ブチル)−パラ−クレゾール(1.0〜5.0重量%)を含む耐火性液圧流体)であった。24時間後、木材表面は、それぞれの試験液体に対する損傷および耐性の程度について目で見て観察された。
【0186】
実施例18:架橋したポリウレタンおよびアルミニウム上のこれを含む塗膜:
ポリアクリルベースのポリカルバマート(製造13)の代わりにアルキドベースのポリカルバマート(製造14)を使用したことを除いて、実施例16の手順が繰り返された。試験の結果は下の表6に記録される。
【0187】
実施例19:架橋したポリウレタンおよび木材上のこれを含む塗膜:
ポリアクリルベースのポリカルバマート(製造13)の代わりにアルキドベースのポリカルバマート(製造14)を使用して実施例18の手順が繰り返され、3回コーティングされて乾燥させられた木材板を得た。試験のために、コーティングされ乾燥させらた板を4滴の試験液体に以下の様に曝露させた:塗膜の表面上に13mmの吸収性紙ディスクを配置して、そのディスクに4滴の試験液体を適用し、そしてこのディスクをプラスチックボトルキャップを使用して24時間覆って、試験液体の蒸発を最小限にした。24時間にわたって試験された試験液体はWINDEX商標オリジナルでアンモニア−Dを伴うもの、水(脱イオン)、50%水性エタノール、並びにSKYDROL商標LD4であった。24時間後、木材表面は損傷の程度について目で見て観察され、それぞれの試験液体に対する耐性を決定した。
【0188】
【表9】

【0189】
上の表6に示される様に、実施例16および18における1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物から製造されたポリアルデヒドの使用は、増大した耐水性をはじめとする多くの予想外の利点をもたらす。さらに、実施例16および18におけるポリアルデヒドと多官能性ポリカルバマートとの組み合わせは室温硬化を可能にし、優〜秀のMEK溶媒耐性を有するポリウレタンを生じさせ、したがって高水準の架橋を生じさせる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にイソシアナートを含まずかつ実質的にホルムアルデヒドを含まない多コンポーネント組成物であって、
当該多コンポーネント組成物は第1コンポーネントとして、平均2.5以上のカルバマート官能基を有するポリカルバマート、および第2コンポーネントとして、ポリアルデヒドまたはそのアセタールもしくはヘミアセタールを含み、
当該多コンポーネント組成物は第1および第2コンポーネントが一緒にされたときに、反応して0℃〜80℃未満の温度で硬化して架橋したポリウレタンを形成する組成物を形成するのに有効量の誘発剤をさらに含み、さらに、
当該多コンポーネント組成物の全コンポーネントが一緒にされる場合に得られる組成物は7.0以下のpHを有する、
多コンポーネント組成物。
【請求項2】
ポリアルデヒド、そのアセタールもしくはヘミアセタールが2〜20個の炭素原子もしくは20個より多い炭素原子を有し、ただし20個より多い炭素原子を有するポリアルデヒドは10個の炭素原子ごとに少なくとも1つのアルデヒド基を有する、請求項1に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項3】
ポリアルデヒドが(シス,トランス)−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、(シス,トランス)−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドおよびその混合物から選択される、請求項2に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項4】
誘発剤がルイス酸または6.0未満のpKaを有する酸である、請求項1に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項5】
ポリカルバマートが1種以上のポリオールと不飽和カルバミン酸アルキルエステルもしくは尿素との縮合生成物である、請求項1に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項6】
ポリオールがアクリル、飽和ポリエステル、アルキド、ポリエーテルまたはポリカルボナートである、請求項5に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項7】
第1コンポーネントのポリカルバマートが、カルバマート基の当量:ヒドロキシル官能基の当量数の比率1:1〜20:1でカルバマート基およびヒドロキシル基を有する、請求項5に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項8】
硬化阻止剤をさらに含む、請求項1に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項9】
硬化阻止剤が水、アルコールまたはその混合物から選択される、請求項7に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項10】
多コンポーネント組成物から製造された硬化し乾燥した塗膜の可とう性、接着性もしくはその双方を増大させるために、組成物中の固形分の全重量を基準にして3〜20重量%の顔料をさらに含む、請求項1に記載の多コンポーネント組成物。
【請求項11】
ポリカルバマート第1成分と、ポリアルデヒドまたはそのアセタールもしくはヘミアセタール第2成分とを混合して、7.0以下のpHを有する周囲温度硬化性組成物を形成し、並びに得られた組成物を0℃〜80℃未満の温度で硬化させることを含み、前記周囲温度硬化性組成物は有効量の誘発剤を有する、架橋したポリウレタンを製造する方法。
【請求項12】
少なくとも1種のジェミナルビス(ウレタン)基を有する請求項11に記載の架橋したポリウレタン。

【公開番号】特開2012−1720(P2012−1720A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−132753(P2011−132753)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】