説明

架橋性の置換フルオレン化合物

9位において1つ又は複数の架橋性の部分によりさらに置換されている新規な2,7−ジ(アリールアミノ)−置換フルオレン、前記架橋性部分の架橋により形成されたオリゴマー又はポリマー、それらを調製する方法、及び電子素子、特にエレクトロルミネッセンス素子における中間層としての用途を有する耐溶剤性フィルムを形成するためのそれらの用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年11月17日出願の米国仮出願第60/520,597号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、9位において1つ又は複数の架橋性部分によりさらに置換されている新規な2,7−ジ(アリールアミノ)フルオレン及びこの化合物を調製する方法に関する。本発明は、さらに、上記置換フルオレン化合物のオリゴマー及びポリマー;上記化合物、オリゴマー、ポリマー及びそれらのブレンドから調製されたフィルム及びコーティング;上記フィルム及びコーティングを調製する方法;並びに1層または複数層のこのようなポリマーフィルムを含む電子素子、特にエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0003】
9位の炭素においてアルキル基により置換されているフルオレンのポリマー及びオリゴマーは、Fukudaらにより、Japanese Journal of Applied Physics、Vol.28、pp.L1433〜L1435(1989)に報告されている。上記ポリマーは、発光ダイオードの調製におけるルミネッセンス材料として有用である旨が記載されている。これらのポリマーは、適当なフルオレンモノマーを大過剰の塩化第二鉄等の酸化性金属塩で数日間処理するKovacicの方法により調製されたものである。その構造は、ポリ(フルオレン2,7’−ジイル)類として表される。米国特許第6,605,373号、第6,362,310号、第6,255,449号、第6,255,447号、第6,169,163号及び第5,962,631号を含む一連の特許は、特定の2,7−二置換フルオレン化合物であって、9位において、C1〜20ヒドロカルビル基;1つ又は複数のS、N、O、P又はSi原子を含有するC1〜20ヒドロカルビル基;C4〜16ヒドロカルビルカルボニルオキシ基;C4〜16アリール(トリアルキルシロキシ)基;アルキリデニル基;又は5−ノルボルン−2−エニリデニル(5−norborn−2−enylidenyl)基等の二価のスピロ環を形成する基を含む1個又は2個の置換基によってさらに置換されている化合物をいくつか開示している。2位及び7位における適当な置換基には架橋性基が含まれる。上記化合物類の改良された合成方法もまた米国特許第5,777,070号に開示されている。
【0004】
JP20−327640には、有機エレクトロルミネッセンス素子における正孔輸送材料として使用するための特定の2−(ジアリールアミノ)−7−ジ(アリールアミノ)アミノフルオレン誘導体が開示されている。他のジアリールアミノフルオレン誘導体について同様の用途がJP09−258465に開示されている。JP11−322679には特定のビスアリールアミノフルオレンの調製が開示されている。EP−A−823669には、有機発光ダイオード(OLED)の感光層材料用として使用されるビス(ジアリールアミノ)フルオレン化合物類を含む一連のフルオレン誘導体が開示されている。
【0005】
Macromol.Rapid Commun.20、224〜228(1999)及びMacromol.Rapid Commun.21、583〜589(2000)は、溶液のスピンコーティング技術によって多層の有機発光素子を調製するために使用するのに適した特定の架橋性のトリアリールアミン正孔輸送材料について記載している。J.Phys.Org.Chem.16、194〜201(2003)、Polymer Preprints 43(1)、104(2002)及びPolymer Preprints 44(1)、1061(2003)は、9,9−ジデシル−2,7−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)フルオレンの構造及びエレクトロルミネッセンス特性を明らかにしている。
【0006】
ディスプレイ技術における最近の進歩によって、発光ダイオード(LED)などのエレクトロルミネッセンス素子に使用される化合物及び加工技術の改善がもたらされた。青色発光化合物を含めて、可視光スペクトルの大部分について、高輝度材料が入手可能である。最近、活性層又は発光層と陽極との間に電荷輸送層を組み込むことによって、多層LEDの活性層又は発光層の寿命及び効率が改善されることが見出された。このような層は、正孔注入層及び/又は正孔輸送層とも呼ばれ、その目的は、発光層への正孔注入を改善すること、及び陽極と発光層との間に緩衝層を提供することである。他の応用として、この中間層は、素子の効率及び寿命を最適化するために電荷キャリヤーのバランスをとる電子障壁層として作用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、多層LEDの中間層に使用するための、並びに電界効果トランジスタ(FET)、光電池などのその他の電子素子に使用するため、さらに集積回路又はプリント基板のための新規な化合物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、次式の化合物が提供される。
【化1】


式中、Rは、それぞれ独立して出現するごとに、i)C1〜40ヒドロカルビル基、ii)1つ又は複数の炭素が、S、N、O、P、B又はSi原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子により置換されているC1〜40ヒドロカルビル基、或いはiii)i)又はii)のハロゲン化誘導体であり、但し、少なくとも1つの出現においてRは架橋性基であり;
は、それぞれ独立して出現するごとに、水素、ハロゲン、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ヒドロカルビルオキシ、C1〜20チオエーテル、C1〜20ヒドロカルビルカルボニルオキシ、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ、又はシアノであり;
Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立して出現するごとに、1つ又は複数のS、N、O、P、B若しくはSiヘテロ原子を任意に含有するC6〜20芳香族基、又はそれらのハロ−、C1〜20ヒドロカルビル−、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ−、C1〜20ヒドロカルビルオキシ−、トリ(C1〜10ヒドロカルビル)シリル−又はトリ(C1〜10ヒドロカルビル)シロキシ−置換誘導体であり;
a及びbは、それぞれ独立して出現するごとに、0又は1であり;
及びXは、それぞれ独立して出現するごとに、共有結合、O、S、SO、CH、C(R又はNRであり、ここでRは、C1〜22アルキル、C1〜22シクロアルキル、C6〜24アリール及びC7〜24アラルキルからなる群から選択される。
【0009】
第2の態様において、本発明は、次式の1つ又は複数の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む組成物である。
【化2】


式中、Rは、それぞれ独立して出現するごとに、i)C1〜40ヒドロカルビル基、ii)1つ又は複数の炭素が、S、N、O、P、B又はSi原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子により置換されているC1〜40ヒドロカルビル基、或いはiii)i)又はii)のハロゲン化誘導体であり、但し、少なくとも1つの出現においてRは、i)、ii)又はiii)から選択された架橋性基の架橋により形成された二価の結合基であって、これを介して繰り返し単位は結合しており;
は、それぞれ独立して出現するごとに、水素、ハロゲン、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ヒドロカルビルオキシ、C1〜20チオエーテル、C1〜20ヒドロカルビルカルボニルオキシ、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ又はシアノであり;
Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立して出現するごとに、1つ又は複数のS、N、O、P、B若しくはSiヘテロ原子を任意に含有するC6〜20芳香族基、又はそれらのハロ−、C1〜20ヒドロカルビル−、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ−、C1〜20ヒドロカルビルオキシ−、トリ(C1〜10ヒドロカルビル)シリル−又はトリ(C1〜10ヒドロカルビル)シロキシ−置換誘導体、或いは前記したものの二価の誘導体であり;
a及びbは、それぞれ独立して出現するごとに、0又は1であり;
及びXは、それぞれ独立して出現するごとに、共有結合、O、S、SO、CH、C(R又はNRであり、ここでRは、C1〜22アルキル、C1〜22シクロアルキル、C6〜24アリール及びC7〜24アラルキルからなる群から選択される。
【0010】
第3の態様において、本発明は、式(Ia)の1つ又は複数のビス(ジアリールアミノ)フルオレン基を含むオリゴマー又はポリマーを調製する方法であって、この方法は、1つ又は複数の式(I)の化合物、或いはそれらを含む組成物、たとえばそれらと1つ又は複数のさらなる重合可能なモノマー、オリゴマー又はポリマーとの混合物などの組成物を、反応を妨害しない任意のその他の化合物の存在下で、式(Ia)の1つ又は複数の基を有するオリゴマー又はポリマーを形成するのに十分な反応条件下で加熱する工程を含む方法である。
【0011】
第4の態様において、本発明は、本発明の第2の実施形態のオリゴマー又はポリマーの1つ又は複数を含むフィルム、或いは本発明の第3の態様により調製可能なフィルムである。
【0012】
第5の態様において、本発明は、電子素子、特に1つ又は複数のポリマーフィルムを含み、その少なくとも1つが本発明の第4の態様によるフィルムを含む発光ダイオード等のエレクトロルミネッセンス素子である。
【0013】
前記の化合物、オリゴマー及びポリマーは、電子素子における中間層として特に有効な正孔注入/輸送又は電子障壁特性を保有することが見出され、有利なことに、減少したイオン化ポテンシャル及び改良された導電性を特徴とする。その上、この化合物は架橋した耐溶剤性フィルムを形成することができ、LED等の電子素子における上記中間層等として使用するのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
米国特許の実務により、本明細書で引用した特許、特許出願又は刊行物についてその全ての内容が、特にモノマー、オリゴマー又はポリマーの構造、合成技術及び当技術分野における一般的な知識の記載が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において用語「〜を含む」及びその類義語が使用された場合、そのものが本明細書に開示されているいないにかかわらず、さらなる成分、工程または手順の存在を排除しない。疑義を回避するために記すと、用語「〜を含む」を使用して本明細書でクレームされる組成物は全て、これに反する記述がない限り、さらなる添加剤、補助剤又は化合物を含むことができる。一方、本明細書において用語「〜から本質的になる」が使用された場合は、その語に続く列挙の範囲から、実施可能性にとって本質的でないものを除き、他の全ての成分、工程又は手順は排除される。用語「〜からなる」が使用された場合は、具体的に記述又は列挙されていない成分、工程又は手順は全て排除される。用語「又は」は、他に反対の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り、列挙された個々のメンバー及び任意の組み合わせを意味する。
【0015】
本明細書で使用する用語「芳香族」とは、(4δ+2)π電子を含む多原子環状環系を指し、δは、1以上の整数である。本明細書で2つ以上の多原子環状の環を含む環系に関して使用される用語「縮合した」とは、その少なくとも2つの環に関して、隣接する原子の少なくとも一対が2環に含まれていることを意味する。
【0016】
「B段階の(B−Staged)」とは、モノマーの部分重合から得られるオリゴマー混合物又は低分子量ポリマー混合物を指す。未反応モノマーがその混合物に含まれ得る。
【0017】
「架橋性」は、一般に加熱したときに不可逆的に硬化又は重合することができ、それによって再造形又は再形成することができない材料を形成することができる官能基を意味する。架橋はUV、マイクロ波、X線又は電子線照射によって助長することができ、触媒又は開始剤の使用によって補助できる。この用語は、架橋が熱的に行われる場合には「熱硬化性」としばしば互換可能に使用される。
【0018】
「不活性置換基」とは、その後のモノマー又はB段階のオリゴマーのあらゆる望ましい重合反応を妨げることなく、本明細書で開示したさらなる重合可能な環構造を含まない置換基を意味する。
【0019】
好ましい置換基Rは、C1〜40ヒドロカルビル、1つ又は複数のS、N、O、P又はSiヘテロ原子を含有するC3〜40ヒドロカルビル、並びに架橋性基を含有する前記C1〜40ヒドロカルビル及びC3〜40のヘテロ原子を含有する基から選択される。好ましい架橋性基は、二重結合、三重結合、二重結合をその場で形成することができる前駆体、又は複素環式の付加重合性基のいずれかの不飽和結合を含有する。最も好ましい架橋性のR基は、重合可能なビニル基又はそれらの前駆体を含有する。適当な架橋性のR基の例には下記が含まれる。
【化3】


(式中、
は、水素、ハロゲン、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ハロヒドロカルビル又はC1〜20ハロカルビルであり;
は、C1〜20ヒドロカルビレン、C1〜20ハロヒドロカルビレン又はC1〜20ハロカルビレンであり;
mは、0又は1である)。
【0020】
好ましいR基は、ビニル、C1〜4アルキルアクリレート、ビニルフェニル、ビニルフェニルオキシ、マレイミド、ビニルベンジル、ビニルベンジルオキシ、オキセタニル、2−プロピニル、トリフルオロエテニル、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン及びメチル−1−ベンゾ−3,4−シクロブタンである。
【0021】
好ましいR基は、水素、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ハロヒドロカルビル、C1〜20ハロカルビル、C1〜20ヒドロカルビルオキシ、C1〜20ヒドロカルビルチオ、C1〜20ヒドロカルボニルオキシ、C1〜20ヒドロカルビルオキシカルボニル、C1〜20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノ、最も好ましくは水素である。
【0022】
好ましい基Ar、Ar、Ar及びArは、フェニル又はフェニレンであり、好ましいX及びX基は、O、又はSであり、好ましくはa及びbは、0又は1である。
【0023】
本発明の架橋されていない化合物は、2,7−ジハロ−9−フルオレン等の9位で反応させることができる2,7−ジハロフルオレン化合物を、所望のR官能基を形成することができる前駆体と反応させることによって調製することができる。ジアリールアミノ官能基を、そのあと通常の合成経路を用いて2及び7位に組み込む。
【0024】
式(Ia)の基から本質的になるオリゴマー状ホモポリマー及び架橋したホモポリマーは、式1)のモノマーを加熱及び硬化すれば容易に調製される。改良された流動性及び自己レベリング性を有する組成物を製造するためにモノマーのB段階化を採用することができるが、本モノマーは、十分に低粘度のものであり、フィルム形成に使用する前にB段階化を必要とはしない。該モノマーは、また、コポリマーの形成に使用して、得られるポリマーに部分的な架橋と改良された耐溶剤性を付与することもできる。望ましくは、上記コポリマーは、式(Ia)の基を、1から50モルパーセント、より好ましくは2から30モルパーセント、最も好ましくは5から20モルパーセント含む。
【0025】
式(I)の化合物と共重合できる適当な反応性コモノマーは、連鎖延長又は架橋性のR基による架橋を経てオリゴマー又はポリマーを形成することができる反応性の基を含む化合物である。例としては、グリシジルエーテル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エテニル、エチニル、マレイミド又はシクロブテン部分を含む化合物が挙げられる。好ましい例は、p−ジビニルベンゼン及び1,5−ジビニルナフタレンである。
【0026】
本発明のフルオレンオリゴマー又はポリマーは、希薄溶液又は固体の状態で強い光ルミネセンスを示す。上記材料が、300から700ナノメートルの波長の光に晒されると、その材料は、400から800ナノメートルの領域の波長の光を放つ。より好ましくは、上記材料は、350から400ナノメートルの波長の光を吸収し、400から650ナノメートルの領域の波長の光を放つ。本発明の架橋されていないフルオレンは、通常の有機溶媒に容易に溶解する。それらは、トルエン、キシレン、メシチレン又はエチルベンゼン等の溶媒を使用する溶液のスピンコーティング、リソグラフィー又はインクジェット印刷等の従来技術によりフィルム又はコーティングに加工可能である。
【0027】
本発明のフルオレンオリゴマー又はB段階化ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定してポリスチレン換算で、好ましくは500から5000ダルトンの重量平均分子量を有する。その化合物及びオリゴマーは、架橋性の化合物とのブレンド又は混合物の一成分として使用することができる。望ましくは、本発明の化合物又はオリゴマーは、架橋性の組成物を1から50パーセント、より好ましくは5から25パーセント含む。
【0028】
本発明の化合物は、望ましくは架橋して、耐溶剤性で、100度以上、より好ましくは150℃以上の温度で耐熱性のあるフィルムを形成する。好ましくは、上記架橋は、350℃以下、より好ましくは300℃以下、最も好ましくは250℃以下で起こる。本発明の架橋性の化合物、オリゴマー及びポリマーは、60℃以上、より好ましくは150℃以上で安定である。本明細書で使用する「安定」とは、上記オリゴマーが、所定の温度以下で架橋又は重合反応を起こさないことを意味する。触媒又はフリーラジカル開始剤等の添加剤を、本発明による硬化ポリマーの形成を補助するために架橋性の組成物中に含ませることができる。適当な添加剤としては、過酸化ベンゾイル等の過酸化物又はその他のフリーラジカルを発生する化合物が挙げられる。
【0029】
本発明のオリゴマー及びポリマーの主要な用途は、フィルムの形成におけるものである。このようなフィルムは、一般的には蛍光又はリン光を発するコーティングとして、並びにポリマーの発光ダイオード等の電子素子における中間層、保護コーティング、さらに正孔輸送及び電子障壁層として使用することができる。そのコーティング又はフィルムの厚さは、最終的な用途に依存する。一般に、上記厚さは、0.01から200マイクロメートルであり得る。コーティングとして使用するとき、そのフィルムの厚さは望ましくは50から200マイクロメートルまでである。保護層として使用するとき、そのフィルムの厚さは望ましくは5から20マイクロメートルまでである。ポリマー発光ダイオードの電荷輸送層として使用するとき、そのフィルムの厚さは望ましくは0.05から2マイクロメートルまでである。本発明のオリゴマー又はポリマーは、実質的にピンホール及びその他の欠陥のないフィルムを形成する。上記フィルムは、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ローラーコーティング及びインクジェット印刷を含む技術的によく知られた方法により調製することができる。上記コーティングは、本発明の化合物、オリゴマー又はポリマーを含む組成物を、基板に塗布し、フィルムが形成される条件に曝露する方法によって調製することができる。フィルムを形成する条件は、塗布技術及びフィルム形成成分の反応性末端基に依存する。好ましくは、その溶液は、本発明のオリゴマー又はポリマーを0.1から10重量パーセント含有し、残りは溶媒及び/又はその他のポリマー形成性の成分である。薄いコーティングに対しては、該組成物は、化合物、オリゴマー又はポリマーを0.5から5.0重量パーセント含有するのが好ましい。この組成物を次に望ましい方法によって適当な基板に塗布し、溶媒を蒸発させる。残留溶媒は、真空及び/又は加熱により除去することができる。溶媒が低沸点の場合は、低い溶液濃度、例えば0.1から2パーセントが望ましい。溶媒が、高沸点の場合は、高濃度、例えば、3から10パーセントが望ましい。溶媒の除去後、高い耐溶媒性及び熱抵抗性を有するフィルムを調製するために、必要に応じて、フィルムを硬化するために必要な条件に曝露する。フィルムは、好ましくは厚さが実質的に均一であり、ピンホールが実質的にない。フィルムは好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、最も好ましくは150℃以上の温度にさらした時に硬化する。フィルムは好ましくは300℃以下の温度で硬化する。
【0030】
フィルムを調製する際、組成物は、そのフィルムの硬化を促進又は開始するのに適した触媒をさらに含むことができる。このような触媒は、当技術分野でよく知られており、例えば、エチレン性不飽和基を有する材料の場合、フリーラジカル触媒を使用することができる。グシシジルエーテルを末端基として有するアリール成分の場合、尿素類又はイミダゾール類を使用することができる。グシシジルエーテルアリール末端成分を有するフルオレン類からフィルムを調製する場合、架橋を促進する一般的に知られている硬化剤と反応させることができる。好ましい硬化剤には、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物(無水ナディック酸)及び無水マレイン酸である。
【0031】
別の望ましい実施形態では、フィルムを形成する前に、モノマー及びオリゴマーを部分硬化させるか又はB段階とすることができる。このような実施形態では、組成物を、反応性材料の一部分が硬化し、反応性材料の一部分が硬化しないような条件に曝露する。これは組成物の加工性を改善するためによく使用され、フィルムの調製を容易にする。このようなB段階の材料は、上記に記載した方法でその後コーティングを調製するために使用することができる。B段階化中、好ましくは10パーセント以上の反応性成分を反応させる。好ましくは、50パーセント未満の反応性成分を反応させる。
【0032】
本発明のさらに別の態様は、本発明のポリマーを含むフィルムを、1成分として含有する電子素子に関する。電子素子、特にLEDは、一般に、陽極と陰極の間に挟まれた有機フィルムからなり、プラスのバイアスが素子にかけられると、正孔が陽極からその有機フィルム中に注入され、電子が陰極から注入される。正孔と電子が組み合わされると、エキシトンを生じることができ、それが光子を放出することによる基底状態への放射減衰を起す。実際には、陽極には、一般的にその導電性及び透明性のためにスズとインジウムの混合酸化物が使用される。有機フィルムによる発光が観察できるように、混合酸化物(通常は、インジウムスズ二酸化物又はITO)をガラス又はプラスチック等の透明な基板上に蒸着する。有機フィルムは、別個の機能のためにそれぞれ設計された、いくつかの個別の層の複合体であり得る。正孔は、陽極から注入されるため、陽極に隣接する層は、正孔を輸送する機能を有することが必要である。同様に、陰極に隣接する層は、電子を輸送する機能を有することが必要である。多くの場合、正孔又は電子輸送層は、発光層としても作用する。他の例においては、正孔及び/又は電子輸送と発光は異なる層によって機能する。有機フィルムの個々の層は、本質的にすべてポリマーであるか又はポリマーのフィルムと蒸着により形成された小分子のフィルムの組合せであり得る。有機フィルムの全体の厚さは、好ましくは1000nm未満、より好ましくは500nm未満、最も好ましくは300nm未満である。本発明の一実施形態は、その有機フィルムが本発明のポリマー組成物の少なくとも1つを含む電子素子である。
【0033】
基板及び陽極としての役割を果たすITOガラスは、洗浄剤、有機溶媒及びUVオゾン処理による通常の洗浄の後、コーティングに使用することができる。正孔注入、表面レベリング、及び/又はフィルムの接着を助長するため導電性物質の薄層を最初にコートすることもできる。上記物質としては、銅フタロシアニン、ポリアニリン及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)が含まれる。この最後の2つは、有機の強酸、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)をドーピングすることにより導電性にする。この層の厚さは、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0034】
本発明の化合物は、多層素子における中間層の調製において、正孔輸送ポリマー層を形成する化合物の混合物の一成分として、又は多層エレクトロルミネッセンス素子における別の正孔輸送層として使用され得る。本発明以外の正孔輸送ポリマーを使用する場合、既知の正孔導電性ポリマー、例えば、ポリビニルカルバゾール、又は米国特許第6,605,373号、第6,362,310号、第6,255,449号、第6,255,447号、第6,169,163号、第5,962,631号、第5,929,194号又は第5,728,801号に記載されているポリマーアリールアミンなどを使用することができる。この層の次に塗布されるべきコポリマーフィルムの溶液による侵食に対する耐性は、多層素子の作成を成功させるには明らかに重要である。したがって、本発明のコポリマーは、前に堆積した層をどれも溶解しないキシレン又はトルエン等の溶液により通常は塗布される。正孔輸送若しくは電子障壁層として本ポリマーの架橋フィルムを形成するか、又は前に堆積させた正孔輸送若しくは電子障壁層を本発明による架橋ポリマーを含む中間層で覆うか保護するかのいずれかにより、LEDの製造において使用されるその後の薬剤若しくは溶媒からそのアセンブリを保護することができる。本発明による正孔輸送層、電子障壁又は中間層の厚さは、望ましくは500nm以下、好ましくは300nm以下、最も好ましくは150nm以下である。
【0035】
本発明の電子素子における正孔輸送層として有効に使用される低分子量又は小分子の材料としては、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体(Burrowsらにより、Applied Physics Letters Vol.64、pp.2718〜2720(1994)に記載されている)、10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリンの金属錯体(Hamadaらにより、Chemistry Letters、pp.906〜906(1993)に記載されている)、1,3,4−オキサジアゾール(Hamadaらにより、Optoelectronics−Devices and Technologies、Vol.7、pp.83〜93(1992)に記載されている)、1,3,4−トリアゾール(Kidoらにより、Chemistry Letters、pp.47〜48(1996)に記載されている)、及びペリレンのジカルボキシミド(Yoshidaらにより、Applied Physics Letters、Vol.69、pp.734〜736(1996)に記載されている)が挙げられる。
【0036】
本発明によるLED用のポリマー電子輸送(発光)材料としては、オキサジアゾール含有ポリマー(Liらにより、Journal of Chemical Society、pp.2211〜2212(1995)に、Yang及びPeiにより、Journal of Applied Physics、Vol.77、pp.4807〜4809(1995)に、及びEP−A−875947に記載されている)、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー(Strukeljらにより、Science、Vol.267、pp.1969〜1972(1995)に記載されている)、キノキサリン含有ポリマー(Yamamotoらにより、Japan Journal of Applied Physics.Vol.33、pp.L250〜L253(1994)に、O’Brienらにより、Synthetic Metals、Vol.76、pp.105〜108(1996)に記載されている)、及びシアノ−PPV(Weaverらにより、Thin Solid Films.Vol.273、pp.39〜47(1996)に記載されている)が例示される。この層の厚さは、500nm以下、好ましくは300nm以下、最も好ましくは150nm以下であり得る。
【0037】
金属の陰極は、熱蒸着によるかスパッタリングによるかのいずれかにより蒸着することができる。陰極の厚さは、100nmから10,000nmまでであり得る。好ましい金属は、カルシウム、マグネシウム、インジウム及びアルミニウムである。これらの金属の合金もまた使用することができる。リチウムを1から5パーセント含有するアルミニウムの合金及びマグネシウムを少なくとも80パーセント含有するマグネシウムの合金が好ましい。
【0038】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、50ボルト以下の印加電圧をかけると、3.5Cd/Aの高さの輝度効率で光を放つ。
【0039】
好ましい実施形態では、エレクトロルミネッセンス素子は、本発明のポリマーで構成されている少なくとも1つの正孔輸送ポリマーフィルムと、陽極材料と陰極材料との間に配置されている発光ポリマーフィルムとを含み、素子が順方向にバイアスをかけられたとき、印加電圧下で、正孔は陽極材料から正孔輸送ポリマーフィルムに注入され、電子は陰極材料から発光ポリマーフィルム中に注入され、発光層からの発光が生じる。別の好ましい実施形態においては、それぞれが1つ又は複数の正孔輸送ポリマーを含む複数の層は、陽極に最も近い層がより低い酸化電位を有し、隣接する層が徐々により高い酸化電位を有するように配置されている。これらの方法によって、単位電圧当たりの発光出力が比較的高く、白色光を含み広域のスペクトルを発するエレクトロルミネッセンス素子を調製することができる。
【0040】
本明細書で使用される用語「正孔輸送ポリマーフィルム」とは、ポリマーのフィルム層であって、2つの電極間に配置され、電界がかけられ、正孔が陽極から注入されるときに、正孔の発光ポリマーへの適切な輸送を可能にするポリマーのフィルム層を指す。正孔輸送ポリマーは、一般的には、トリアリールアミン部分を含んでいる。添加剤又は「ドーパント」、例えば、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモナートなどをポリマーに添加してそのポリマーの正孔輸送特性を修正することができる。本明細書で使用される用語「発光ポリマーフィルム」は、光子を放出することによって、好ましくは可視光範囲の波長に対応する光子を放出することによって励起状態から基底状態に戻ることができるポリマーのフィルム層を指す。本明細書で使用される用語「陽極材料」は、4.5電子ボルト(eV)〜5.5eVの仕事関数を有する半透明又は透明な導電フィルムを指す。その例は、インジウムとスズの酸化物及び混合酸化物並びに金である。本明細書で使用される用語「陰極材料」は、2.5eV〜4.5eVの仕事関数を有する導電フィルムを指す。その例は、リチウム、カルシウム、マグネシウム、インジウム、銀、アルミニウム又はこれらのブレンド及び合金である。
【0041】
本発明の実施形態のいずれか1つに関する、好ましい又は望ましい、より好ましい又はより望ましい、非常に好ましい又は非常に望ましい、或いは最も好ましい又は最も望ましい置換基、範囲、最終用途、方法又は組合せの上記の開示は、同様に、本発明の前出又は後に続く他の実施形態のいずれに対しても、他のいずれかの特定の置換基、範囲、用途、方法又は組合せとは無関係に同様に適用できることを明らかに意図している。
【0042】
以下の実施例は、例示目的のみのために含まれ、特許請求の範囲を限定するものではない。特に明記しない限り、文脈から間接的に又は当技術分野の慣例で、本明細書の部及び百分率はすべて重量に基づくものである。本発明が、具体的に開示されていない任意の成分がなくても実施可能であることは当然である。「一晩」という用語が使用される場合は、約16〜18時間という時間を指し、「室温」が使用される場合、約20〜25℃という温度を指す。
【実施例1】
【0043】
9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレン(4)の調製
表題化合物を、以下の合成経路を用いて調製した。
【化4】

【0044】
化合物1:ジブロモフルオレノン(9g、26.6mmol)、アニソール(25ml)、メタンスルホン酸(20ml)及びメルカプト酢酸(0.5ml)の混合物を、窒素下室温で一晩撹拌する。HPLCにより、ジブロモフルオレノンが完全に転化したことが示される。次に、50mlのメタノールをその反応混合物にゆっくり加える。明るいオレンジ色の沈殿を濾過によって集め、メタノールで洗浄する。減圧下50℃で一晩乾燥することにより、黄色の粉末(12.1g)として2,7−ジブロモ−9,9−ジ(4−メトキシフェニル)フルオレン(化合物1)が得られる。
【0045】
化合物(2):酢酸パラジウムの0.18g(0.8mmol)及びトリ−o−トリルホスフィンの0.49g(1.6mmol)を、トルエン25mlに溶解し、その溶液を室温で10分間撹拌する。その溶液に2,7−ジブロモ−9,9−ジ(4−メトキシフェニル)フルオレン(化合物1)の6.0g(11.2mmol)、ジフェニルアミンの5.68g(33.6mmol)及びカリウムt−ブトキシドの3.84g(40mmol)を加える。その混合物を窒素下で一晩還流させる。室温まで冷却した後、pH値が5〜6に達するまで1NのHClをゆっくり加える。その溶液を中性のアルミナカラムに通し、トルエンで溶出する。濃縮した後、そのトルエン溶液を300mlのメタノール中に注ぎ、生成物を沈殿させる。その沈殿をトルエンにより再結晶させ、黄色の粉末の表題化合物の5.5gを生じさせる。
【0046】
化合物(3):9,9−ジ(4−メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレン(化合物2)の5.36g(7.52mmol)を、ジクロロメタンの25mlに溶解し、その溶液を、窒素流の保護のもと、ドライアイス−アセトン浴中で冷却する。この溶液に、ジクロロメタン中の三臭化ホウ素の1.0M溶液34ml(34mmol)を滴下して加え、その間反応系を撹拌する。三臭化ホウ素を加えた後、反応混合物を室温まで温め、室温で一晩撹拌する。その反応混合物を次に300gの砕氷中に注ぐ。濃塩酸(1.0ml)を加え、その水性混合物を室温で2時間撹拌する。その混合物を次にジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥する。その溶液を濾過し、溶媒をロータリーエバポレータにかけて除去する。粗生成物を少量の酢酸エチルに再溶解し、シリカゲルカラムにより精製し、酢酸エチルとヘキサンとの混合物(9:1v/v)により溶出する。溶媒を除去した後、その固体をエタノールと酢酸エチルの混合溶媒により再結晶させ、オフホワイトの結晶の最終生成物を3.5g生じさせる。純度:96.7パーセント(HPLC)
【0047】
化合物(4):化合物(3)の3.1g(4.53mmol)及び4−ビニルベンジルクロリドの3.45g(22.6mmol)を、無水アセトンの50ml中で溶解する。無水炭酸カリウム(4.14g、30mmol)及び18−クラウン−6の0.2gをその溶液に加える。その反応系を窒素下で一晩還流させる。その混合物を次に室温まで冷却し、THFを200ml加えた後、その溶液を濾過する。その濾液を10mlまで濃縮し、メタノールの200ml中に注ぐ。生成物は白色粉末として沈殿する。その粗生成物を次に少量のトルエン中に再溶解し、トルエンとヘキサンとの混合物(9:1v/v)で溶出するシリカゲルカラムで2回精製する。室温において減圧下で24時間乾燥させた後、白色粉末の3.2gを得る。HPLC分析は、最終生成物中に1つの主生成物と1つの副生成物の2成分を明らかにする。その主生成物は、280nmで96.3±0.3パーセント及び320nmで95.8±0.2パーセントの面積パーセントアッセイを有する。副生成物は、280nmで3.2±0.3パーセント及び320nmで3.7±0.2パーセントの面積パーセントアッセイを有する。APCI/LC/MS(atmospheric pressure chemical ionization liquid chromatography mass spectrometry−大気圧化学イオン化液体クロマトグラフィー質量分析)による分析は、主生成物を主題化合物又は異性体(Mw916)として同定し、副生成物は、主題化合物のモノブロミド(Mw994)として暫定的に同定する。
【実施例2】
【0048】
架橋フィルムの調製
混合キシレン中の9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンの5パーセントの溶液を、ガラス基板上に2000rpmでスピンコートする。約50nmの厚さを有する良好な品質のフィルムが得られる。そのフィルムをホットプレート上180℃で30分間加熱する。前記のやり方で焼き付けた後は、そのフィルムは混合キシレンに不溶性である。アニールしたフィルムは、UVランプのもとで青い光を放つ。
【実施例3】
【0049】
正孔輸送層材料としてドープした9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンフィルムを使用する発光素子
9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンの240mg及びトリス(4−ブロモフェニル)アニミウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH、Sigma−Aldrich,Inc.から入手可能)の24mgを、4mlの混合キシレンに溶解する。その溶液を室温で一晩振とうし、次いで0.45μmのナイロンシリンジフィルタを通して濾過する。ITOをコートした清浄なガラス基板に、約80nmの厚さの9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンフィルムを、その溶液を4000rpmでスピンコーティングすることにより堆積させる。そのフィルムをそのあと窒素を充満したオーブン中、180℃で30分間加熱し、不溶性の正孔輸送層をつくり出す。その正孔輸送層表面に、電子輸送ポリマー層(LUMATION(商標)Green1300シリーズ、The Dow Chemical Companyから入手可能(80nm))を、キシレン中の溶液からスピンコートする(1.3g/100ml)。陰極金属(Caを10nm及びAlを150nm)を、そのポリマーフィルム上に蒸着する。その素子は、直流電圧をかけると、7.5Vにおいて1.1cd/Aの光効率で200cd/mの明るさを有する黄緑の光を放つ。約9.0Vにおいて、その明るさは、約2cd/Aの光効率で1000cd/mに達する。最大の効率は、12Vにおいて4000cd/mの明るさに達する約3cd/Aと測定され、最大の明るさは約13,000cd/mであった。
【実施例4】
【0050】
正孔輸送フィルム材料として、ドープした9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレン及びポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−ブチルフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)(PFB)のブレンドを用いる発光素子
PFB(80mg、米国特許第6,605,373号に開示されており、以下の繰り返し構造:
【化5】


を有する)及び9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンの16mgを、4mlのキシレンに溶解する。その溶液を室温で一晩振とうし、0.45μmのナイロンシリンジフィルタを通して濾過する。ITOをコートした清浄なガラス基板に、約80nmの厚さのポリマーフィルムを、その溶液からスピンコートする。そのフィルムをそのあと窒素を充満したオーブン中で、180℃で30分間加熱し、耐溶剤性の正孔輸送層をつくり出す。その正孔輸送層表面に、LUMATION(商標)Green1300シリーズ(The Dow Chemical Companyから入手可能)の厚さが約80nmの電子輸送ポリマー層を、キシレン中の溶液からスピンコートする(1.3g/100ml)。陰極金属(Caを10nm及びAlを150nm)を、そのポリマーフィルム上に蒸着する。その素子は、約15,000cd/mの最大明るさ及び3cd/Aの最大効率(約10,000cd/mにおいて)を示す。200cd/mにおける効率は、1.3cd/A(9.5Vにおいて)である。
【実施例5】
【0051】
正孔輸送フィルム材料として9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレン及びPFBのドープしたブレンドを用いる発光素子
PFB(80mg)、9,9−ジ(4−(4−ビニルフェニル)メトキシフェニル)−2,7−ビス(ジフェニルアミノ)フルオレンの16mg及びTBPAHの9.6gを、4mlの混合キシレンに溶解する。その溶液を室温で一晩振とうし、0.45μmのナイロンシリンジフィルタを通して濾過する。ITOをコートした清浄なガラス基板に、ほぼ80nmの厚さのポリマーフィルムを、その溶液からスピンコートする。そのフィルムをそのあと窒素を充満したオーブン中で、180℃で30分間加熱し、耐溶剤性の正孔輸送層をつくり出す。その正孔輸送層表面に、LUMATION(商標)Green1300シリーズ(The Dow Chemical Companyから入手可能)の厚さが80nmの電子輸送ポリマー層を、キシレン中の溶液からスピンコートする(1.3g/100ml)。陰極金属(Caを10nm及びAlを150nm)を、そのポリマーフィルム上に蒸着する。その素子は、約14,500cd/mの最大明るさ及び3cd/Aの最大効率(約10,000cd/mにおいて)を示す。200cd/mにおける効率は、1.5cd/A(7.0Vにおいて)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物:
【化1】


[式中、Rは、それぞれ独立して出現するごとに、i)C1〜40ヒドロカルビル基、ii)1つ又は複数の炭素が、S、N、O、P、B又はSi原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子により置換されているC1〜40ヒドロカルビル基、或いはiii)iii)又はiv)のハロゲン化誘導体であり、但し、少なくとも1つの出現においてRは架橋性基であり、;
は、それぞれ独立して出現するごとに、水素、ハロゲン、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ヒドロカルビルオキシ、C1〜20チオエーテル、C1〜20ヒドロカルビルカルボニルオキシ、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ又はシアノであり;
Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立して出現するごとに、1つ又は複数のS、N、O、P、B若しくはSiヘテロ原子を任意に含有するC6〜20芳香族基、又はそれらのハロ−、C1〜20ヒドロカルビル−、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ−、C1〜20ヒドロカルビルオキシ−、トリ(C1〜10ヒドロカルビル)シリル−又はトリ(C1〜10ヒドロカルビル)シロキシ−置換誘導体であり;
a及びbは、それぞれ独立して出現するごとに、0又は1であり;
及びXは、それぞれ独立して出現するごとに、共有結合、O、S、SO、CH、C(R又はNRであり、ここでRは、C1〜22アルキル、C1〜22シクロアルキル、C6〜24アリール及びC7〜24アラルキルからなる群から選択される]。
【請求項2】
は、それぞれ独立して出現するごとに、C1〜40ヒドロカルビル、1つ又は複数のS、N、O、P、又はSiヘテロ原子を含有するC3〜40ヒドロカルビル、及び架橋性基を含有する前記のC1〜40ヒドロカルビル又はC3〜40のヘテロ原子を含む基からなる群から選択され、但し、少なくとも1つの出現においてRは架橋性基を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、少なくとも1つの出現において、二重結合、三重結合、二重結合をその場で形成することができる前駆体又は複素環式の付加重合性基を含有する請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、少なくとも1つの出現において、
【化2】


(式中、
は、水素、ハロゲン、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ハロヒドロカルビル、又はC1〜20ハロカルビルであり;
は、C1〜20ヒドロカルビレン、C1〜20ハロヒドロカルビレン、又はC1〜20ハロカルビレンであり;
mは、0又は1である)
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、ビニル、C1〜4アルキルアクリレート、ビニルフェニル、ビニルフェニルオキシ、マレイミド、ビニルベンジル、ビニルベンジルオキシ、オキセタニル、2−プロピニル、トリフルオロエテニル、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン及びメチル−1−ベンゾ−3,4−シクロブタンからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、それぞれ独立して出現するごとに、水素、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ハロヒドロカルビル、C1〜20ハロカルビル、C1〜20ヒドロカルビルオキシ、C1〜20ヒドロカルビルチオ、C1〜20ヒドロカルボニルオキシ、C1〜20ヒドロカルビルオキシカルボニル、C1〜20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
は、出現するごとに水素である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Ar、Ar、Ar及びArがフェニル又はフェニレンであり、X及びXがO又はSであり、a及びbが0又は1である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
次式の1つ又は複数の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマー:
【化3】


[式中、Rは、それぞれ独立して出現するごとに、i)C1〜40ヒドロカルビル基、iii)1つ又は複数の炭素が、S、N、O、P、B又はSi原子から選択される1つ又は複数のヘテロ原子により置換されているC1〜40ヒドロカルビル基、或いはiii)i)又はii)のハロゲン化誘導体であり、但し、少なくとも1つの出現においてRは、i)、ii)又はiii)から選択された架橋性基の架橋によって形成された二価の結合基であって、これを介して繰り返し単位は結合しており;
は、それぞれ独立して出現するごとに、水素、ハロゲン、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ヒドロカルビルオキシ、C1〜20チオエーテル、C1〜20ヒドロカルビルカルボニルオキシ、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ又はシアノであり;
Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立して出現するごとに、1つ又は複数のS、N、O、P、B若しくはSiヘテロ原子を任意に含有するC6〜20芳香族基、又はそれらのハロ−、C1〜20ヒドロカルビル−、ジ(C1〜20ヒドロカルビル)アミノ−、C1〜20ヒドロカルビルオキシ−、トリ(C1〜10ヒドロカルビル)シリル−又はトリ(C1〜10ヒドロカルビル)シロキシ−置換誘導体、或いは前記したものの二価の誘導体であり;
a及びbは、それぞれ独立して出現するごとに、0又は1であり;
及びXは、それぞれ独立して出現するごとに、共有結合、O、S、SO、CH、C(R又はNRであり、ここでRは、C1〜22アルキル、C1〜22シクロアルキル、C6〜24アリール及びC7〜24アラルキルからなる群から選択される]。
【請求項10】
請求項9に記載のオリゴマー又はポリマーを含む組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の1つ又は複数の基を有するオリゴマー又はポリマーを形成するのに十分な反応条件下で請求項1に記載の組成物を加熱する工程を含むオリゴマー又はポリマーを調製する方法。
【請求項12】
フィルムの形態の請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーフィルムの1つ又は複数の層を含む電子素子であって、その少なくとも1つが、請求項12に記載のフィルムを含む電子素子。
【請求項14】
エレクトロルミネッセンス素子である請求項13に記載の電子素子。

【公表番号】特表2007−514654(P2007−514654A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539569(P2006−539569)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/036075
【国際公開番号】WO2005/049548
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】