説明

柄部のみを描出するシェニール糸と織物

【課題】絵柄を描出する織物において、織物の自由な位置にシェニール糸で不定形な柄部を描出させることを課題とする。
【解決手段】ヨコ糸に、パイルが芯糸に係止され、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有し、シェニール糸上に設けられた色彩差、パイル長差、糸素材差いずれかによる変化を目印とし、この目印でシェニール糸を折り返すと絵柄を描出する目印である折り返し目印部をシェニール糸上に不定間隔に設けたシェニール糸と、もう1種類以上の糸を使用し、織物内に部分的に絵柄を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有するシェニール糸10をヨコ糸として織り込むと、シェニール糸10の色彩が変化して絵柄が描出されているシェニール織物と呼ばれる織物を構成するシェニール糸と、それを用いた織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、絵柄を描出するシェニール織物用の、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有するシェニール糸10は、シェニール糸10をヨコ糸として織り込むと、シェニール糸10の色彩の変化によって絵柄を描出するために、一定間隔で折り返しの目印を設けたものが公開されており、特許願(例えば、特許文献1参照)には、この折り返し目印を織物の端に合わせることで、狙いの絵柄が描出される製法が開示されている。
【0003】
また、従来の糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有するシェニール糸10をヨコ糸として織り込み、シェニール糸10の色彩の変化によって絵柄が描出されているシェニール織物は、織幅全体にヨコ糸が織り込まれた状態で形成され、ヨコ糸が全幅に織り込まれる特性上、絵柄は地部13と柄部12で構成され、シェニール糸設計時に設定された織幅20と織長21より成る四角形の決められた配置に柄部12を構成していた。
【特許文献1】特願2005−335313(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手芸等の創作活動において、製作者は常にオリジナル性を求める傾向にあるが、従来の、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有するシェニール糸10をヨコ糸として織り込み、シェニール糸10の色彩の変化によって絵柄が描出されているシェニール織物は、織幅20と織長21より成る四角形の決められた配置に柄部12を構成し、設定通りの絵柄の構図しか織れない自由度のない織物であると共に、不定形な柄部12のみを織るためのシェニール糸は存在していなかった。
【0005】
そこで本発明は、絵柄を描出する織物において、織物の自由な位置にシェニール糸10で不定形な柄部12を描出させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、パイルが芯糸に係止され、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有するシェニール糸10は、シェニール糸10上に設けられた色彩差、パイル長差、糸素材差いずれかによる変化を目印とし、この目印でシェニール糸10を折り返すと絵柄を描出する目印である折り返し目印部11を、シェニール糸10上に不定間隔に設けていることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明によれば、織幅に関係なく、シェニール糸10上にシェニール糸10を折り返すと絵柄を描出する折り返し目印部11を不定間隔に構成することにより、シェニール糸10を織幅全域に織り込まず、シェニール糸10に設けられた折り返し目印部11で折り返し織り込んでいくことにより、作成者が意図する箇所に自由にシェニール糸10による絵柄を形成する柄部12を描出することを可能にするシェニール糸を実現させることができる。
【0008】
また、本発明に係る絵柄を描出する織物の第1の特徴は、ヨコ糸に2種類以上の糸を使用すると共に、その1つに、シェニール糸10上に設けられた折り返し目印部11でシェニール糸10を折り返すと絵柄を描出する不定間隔に設けられた折り返し目印部11を有するシェニール糸を使用し、織物内に部分的にこのシェニール糸10を折り返し織り込み、絵柄を形成する柄部12を描出した点にある。
【0009】
本発明によれば、ヨコ糸に2種類以上の糸を使用することにより、シェニール糸10を柄部12に使用し、柄部12以外をシェニール糸10以外の糸で構成することにより、作成者が意図する箇所に自由にシェニール糸による絵柄を形成する柄部12を描出する織物を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、シェニール糸10上にシェニール糸10を折り返すと絵柄を描出する色彩差、パイル長差、糸素材差いずれかによる変化からなる折り返し目印部11を不定間隔に構成することにより、四角形でない絵柄を形成する柄部12のみを描出するシェニール糸を得ることができる。
【0011】
また、ヨコ糸に2種類以上の糸を使用することにより、このシェニール糸10を柄部12に使用し、柄部12以外をシェニール糸10以外の糸で構成することにより、作成者が意図する箇所に自由にシェニール糸による絵柄描出を行う織物を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示す実施の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有し、折り返し目印間隔Lが一定となる折り返し目印部11で構成されたシェニール糸10をヨコ糸として用い、一定間隔に設けられた折り返し目印部11を織物の両端に合わせ、地部13と柄部12を描出した従来のシェニール糸と従来のシェニール織物を示したものである。
【0014】
図1において、地部13と柄部12で描出されたシェニール織物は、シェニール糸10の設計時に想定された織幅20と織長21より成る四角形の決められた配置に柄部12を描出している。
【0015】
また、図1における要部断面図は、織物形成時に、ジェニール糸が屈曲している状態を示しており、折り返し目印部の間隔Lは織りによる屈曲を考慮し、織幅より広い長さにて一定に設定されている。
【0016】
図2は、本発明におけるシェニール糸を図示するものであり、パイルが芯糸に係止され、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有するシェニール糸10おいて、シェニール糸10上に不定間隔に設けられた色彩の変化による折り返し目印部11でシェニール糸10を折り返すと柄部12が描出できる状態を示すものである。
【0017】
図3は、本発明におけるシェニール糸を図示するものであり、不定間隔に設けられた目印部11のパイル長が異なった状態を示しており、折り返し目印部11は糸素材差により設定されたものでもよい。
【0018】
図4は、本発明におけるシェニール糸を図示するものであり、図2においては、色彩差による不定間隔に設けられた折り返し目印部11を示したが、この折り返し目印部の幅18が一定でない状態で、柄部12を形成した状態を示すものである。
【0019】
本発明のシェニール糸は、柄色部12を描出するための折り返し目印部11が、色彩差、パイル長差、糸素材差いずれかによる変化を目印とし、シェニール糸上に不定間隔に構成されておればよく、折り返し目印部の幅18が一定でなくてもよい。
【0020】
図5は、本発明における織物の絵柄表現を図示するものであり、ヨコ糸として、2本の絹糸22と、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有し折り返しの目印間隔が不定となる折り返し目印部11で構成されたシェニール糸10とを用い、絹糸22を折り返し織り成す地部13と、シェニール糸10により織り成された柄部12を描出した状態を示すものである。
【0021】
なお、図5における拡大図は、シェニール糸10より構成される柄部12と絹糸22より構成される地部13の間に隙間が発生しないようにするための、シェニール糸10と絹糸22の接結例を示したものであり、図のようにシェニール糸10と絹糸22をシェニール糸10の折り返し目印部11で交差するように織り込むと柄部12と地部13の間に隙間が発生しない。
【0022】
なお、シェニール糸10より構成される柄部12と地部13に隙間が発生しないようにする製法として、シェニール糸10より構成される柄部12に、シメ糸と呼ばれる柄表現に影響を与えない細い糸を織り込み、地部13を構成するヨコ糸と交差させてもよい。
【0023】
また、シェニール糸10より構成される柄部12と地部13に隙間が発生しないようにする製法として、柄部12を形成するシェニール糸10と地部13を構成するヨコ糸と交差させず、柄部12を構成するタテ糸に地部13に形成するヨコ糸を折り返す方法を用いても良い。
【0024】
なお、本発明の織物は、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有し折り返しの目印間隔が不定となる折り返し目印部11で構成されたシェニール10糸以外に、もう1種類以上の異質の糸を用いればよく、図5においては、絹糸22で形成された領域が地部13のみで構成されているが、これは本発明の一例にすぎず、シェニール10糸以外の糸で形成された領域にて、シェニール10糸以外の糸で、絵柄を表現する織技法である綴れ織技法を用い、絵柄を構成してもよい。
【0025】
また、本発明の織物おいては、長さ方向において色彩が変化しているシェニール糸10を絵柄表現に用いているため、1本のシェニール糸10で柄部12が構成でき、綴れ織の技法のように、多数の色糸を使用し柄部12を構成する技法に対し、生産性の面で非常に有効である。
【0026】
なお、本発明の織物おいては、ヨコ糸に、長さ方向において色彩が変化しているシェニール糸10以外の糸を使用する時、シェニール糸に対し太さの細い糸を使用すると、柄色部12が織物の表面に浮き出したような凹凸感を有する織物となり、従来にない質感の織物となる。
【0027】
また、シェニール糸は織り上げると絵柄に形成するようにパイルに色彩を配する製造方法ゆえに、非常に高価な糸であるとともに、販売されている絵柄に限りがあるが、本発明は、折り返し目印部11の配置を柄部12に応じて不定間隔に配置し、柄部12のみを描出するシェニール糸を実現させることにより、価格を押さえ、織物の自由な位置に柄部12を描出することが可能となるため、手芸の領域において、経済性からも、オリジナル性からも非常に有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る織物の平面図である。
【図2】本発明に係る織物の平面図である。
【図3】本発明に係る織物の平面図である。
【図4】本発明に係る織物の平面図である。
【図5】本発明に係る織物の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
10:シェニール糸
11:折り返し目印部
12:柄部
13:地部
14:タテ糸
15:柄部構成色彩部
16:折り返し目印部のパイル長
17:柄部構成色彩部のパイル長
18:折り返し目印部の幅
20:織幅
21:織長
22:絹糸
23:絹糸織り始め部
24:絹糸織り終わり部
25:シェニール糸織り始め部
26:シェニール糸織り終わり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイルが芯糸に係止され、糸の長さ方向において複数の色彩のパイルを有するシェニール糸(10)おいて、シェニール糸(10)上に設けられた色彩差、パイル長差、糸素材差いずれかによる変化を目印とし、この目印でシェニール糸(10)を折り返すと絵柄を描出する目印である折り返し目印部(11)を、シェニール糸(10)上に不定間隔に設けていることを特徴とするシェニール糸。
【請求項2】
絵柄を描出する織物において、ヨコ糸に2種類以上の糸を使用すると共に、その1つに請求項1に記載のシェニール糸を使用し、織物内に部分的にこの請求項1に記載のシェニール糸を折り返し織り込み、絵柄を形成する柄部(12)を描出した織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−38292(P2008−38292A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215155(P2006−215155)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(304048551)有限会社K・T・クリエイト (4)
【Fターム(参考)】