説明

柑橘類の果肉繊維系およびゲルベースのデザート系

ゲルベースのデザート系(例えば、プディング系およびプレブレンド系)は、食用脂質と柑橘類の果肉繊維とを含んでいる。とりわけ有用な一ドライミックスは、柑橘類の果肉繊維と食用脂質と水とを含んでいる配合物をホモジナイズして、ホモジナイズされた製品を形成することにより作製される。この配合物は、柑橘類の果肉繊維1重量部当たり1〜20重量部の脂質を含んでいる。次に、このホモジナイズされた製品を乾燥させてドライブレンド系を形成する。そのようなドライブレンド系は、プリンなどにおいて使用されるショートニングを置き換えて、プディングのレオロジーおよび安定性を保持またはさらには改善しながら、トランス脂肪および飽和脂肪を減少させるために使用できることが見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、a)米国特許仮出願第61/207,699号(2009年2月15日出願、発明の名称「GEL−BASED DESSERT SYSTEMS INCORPORATING CITRUS PULP FIBER」)、およびb)米国特許仮出願第60/996,927号(2007年12月11日出願、発明の名称「CITRUS PULP FIBER DRY BLEND SYSTEMS」)の利益を主張するものであり、また、PCT国際出願PCT/US08/013579号(2008年12月11日出願、発明の名称「CITRUS PULP FIBER DRY BLEND SYSTEMS」)の一部継続出願であって、これら各文献の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、全般には、柑橘類の果肉繊維(pulp fiber)と食用油とを含むドライブレンド系および食品系、ならびに、食品におけるその使用の方法に関する。本明細書において開示する進歩は、トランス脂肪および飽和脂肪の含有量が少ない構造化脂肪(structured fat)と結び付いて、また、ゲルベースのデザート系と結び付いて、特定の有用性を有する。
【背景技術】
【0003】
食品メーカーは、品質保持期間を改善すること、風味を改善すること、カロリーを低下させること、一般に知られた食物アレルゲンを置き換えることおよび原材料生産コストを低く保つことなど、食品系において多様な品質を改善する方式を見出すために挑戦を続けている。これらの目標を達成するために、食品メーカーは、多くの場合、より良好またはより効率的な様式でこれらの品質を付与でき、および/または、低コストで同じ品質をもたらすことができる、伝統的な材料の代替品を見出すために努力する。しかし、同時に、食品系の、食欲をそそり本格感のある性質は維持されるべきである。加えて、食品メーカーは、健康的で天然の食品に対して高まりつつある消費者需要を満足させるために、天然源の食品系を作製する方式も追求し続けている。したがって、これらの望ましい目標を達成できる食品系を開発する必要性が引き続き存在する。
【0004】
さらに、健康志向の消費者は、食用製品中の脂肪の種類を意識するようになってきている。消費者の中には、血清コレステロールの増加に対する懸念を理由に、食餌中の飽和脂肪を制限しようとする人もいる。飽和脂肪レベルが比較的低い脂肪を部分的に水素化すると、伝統的なショートニング(例えば、ヤシ油などのトロピカル脂肪(tropical fat))に似た、可塑性を有する脂肪が得られる。しかしながら、部分的な水素化はトランス脂肪含有量を増加させる。合衆国における最近のマスコミ報道および表示規制(regulatory labeling)の変化により、消費者はトランス脂肪にも慎重になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0115564号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0044494号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
果汁(柑橘類の果汁など)を作製する現在のプロセスでは、汁を含有する、果実の内部(粗果肉(coarse pulp)、汁果肉(juice pulp)、浮遊果肉(floating pulp)、砂じょう(juice sac)または果肉繊維と呼ばれることが多い)をその外皮から分離するための抽出機が用いられることも周知である。これらのプロセスにより、果肉繊維および皮など、一定の果実のくず材料が生じる。長年にわたり、果実のくず材料の処分に伴う問題が、このくず材料を利用する試みを駆り立ててきた。例えば、ヒトおよび/またはペットが消費することを意図した食品において果肉繊維を用いるために、多数の試みがなされている。したがって、前述の目的に照らせば、前述の望ましい特徴を達成できる食品系を開発するために、柑橘類の果肉繊維など果実のくず材料の使用を探求することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、柑橘類の果肉繊維と食用脂質(edible lipid)とを含む組成物;そのような組成物を作製する方法;ならびに、柑橘類の果肉繊維と食用脂質、好ましくは液体食用油とを含んでいる、プレブレンド系、食品系および完成形の食品(例えばプディング)に関する。一実施形態は、食品を形成する方法を提供する。この方法には、柑橘類の果肉繊維と食用脂質と水とを含んでいる配合物をホモジナイズして、柑橘類の果肉繊維1グラム当たり1〜20グラムの脂質を含んでいるホモジナイズされた配合物(homogenized combination)を形成することが含まれる。次に、このホモジナイズされた配合物を乾燥させてドライブレンド系を形成する。有用な一手段では、この方法は、さらに、このドライブレンド系を、甘味料、デンプン、ならびに、場合により水および/または乳と混合してゲルベースのデザート系を形成することを包含する。有用な適応においては、食用脂質は、約2%以下のトランス脂肪と約20%未満のFDA飽和脂肪酸(FDA saturate)(以下に定義する)とを含む食用油である。
【0008】
別の態様は、柑橘類の果肉繊維と食用油とを含むドライブレンド系を提供する。この食用油の固体脂肪含有量は、0℃で5重量パーセント(重量%)以下である。このドライブレンド系は、水と、柑橘類の果肉繊維と、該柑橘類の果肉繊維1グラム当たり1〜20グラムの食用油とを含んでいる配合物をホモジナイズしてから、該ホモジナイズされた配合物を乾燥させることにより調製されている。
【0009】
さらなる一実施形態は、ゲルベースのデザート系(例えば完成形のプディング)を作製する方法を提供する。柑橘類の果肉繊維と食用脂質と水とをホモジナイズして、プレブレンド系を形成する。その後、該プレブレンドの少なくとも一部を、甘味料およびデンプン(例えば食用デンプン)と混合する。このプロセスの一手段では、該プレブレンド系を乾燥させてドライブレンド系を形成し、該プレブレンド系の少なくとも一部を混合するステップは、該ドライブレンド系を他の原料と混合することを含む。代替的な一手段では、該プレブレンド系は、乾燥させず、代わりに、該プレブレンド系の形成に使用する水を保持する。
【0010】
また別の実施形態は、構造化脂肪成分と水と食用デンプンとを含んでいるゲルベースのデザート製品を提供する。この構造化脂肪成分は、柑橘類の果肉繊維と食用油とを含み、固体脂肪含有量は0℃で5重量%以下である。このゲルベースのデザート製品は、水素化された脂質を含まなくてもよく、FDA飽和脂肪酸含有量は20%以下、例えば、該ゲルベースのデザート製品の総脂肪含有量の15%未満である。
【0011】
さらなる一実施形態は、ドライブレンド系であるゲルベースのデザート系を作製する方法を構成する。この方法は、柑橘類の果肉繊維と、水と、固体脂肪含有量が0℃で5重量%以下である食用油とを含むエマルションを形成することを包含する。このエマルションを、甘味料およびデンプンのうち少なくとも1つを含む第2の成分と接触させる。このエマルションおよび第2の成分を乾燥させて、合計含水量を10重量%以下にする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述のように、本開示は、柑橘類の果肉繊維と食用脂質とを利用するさまざまな方法および組成物について記載している。しかし、本開示のそうした態様の詳細を述べる前に、以下の説明において使用する用語のいくつかの意味を明らかにすることは有用である。
【0013】
抜粋した定義
本明細書において使用する場合、用語「ドライブレンド系」は、約90〜100%の乾燥原料(例えば、微粒子、粉末など)と、0〜約10%の水分とを含む系を意味すると理解される。
【0014】
本明細書において使用する場合、用語「食品系」は、ヒトおよび/またはペットが消費することを意図した食品および飲料を含む系を意味すると理解される。食品系は、完成食品をもたらす加工ステップに先立ち、特定の食品の原料全ての混合物を含むことができる。
【0015】
本明細書において使用する場合、用語「プレブレンド系」は、食品系中に存在する原料の部分系を意味すると理解される。プレブレンド系は、ドライブレンド系であってもよく、または、10%超の水分を含んでいてもよく、いくつかの有用な実施形態では、該プレブレンドは、50%超の水を含んでいる。
【0016】
本明細書において使用する場合、用語「ゲルベースのデザート系」は、ゲルベースのデザート、ゲルベースのデザート用原料の大部分または全ての混合物である食品系、および、ゲルベースのデザート完成品の作製において有用なドライブレンド系を包含する。ゲルベースのデザート製品としては、伝統的な乳ベースのプディングなどのプディング、ヨーグルトおよびカスタードなど他の乳製品ベースのゲル製品、ならびに、非乳製品のプディングまたはダイズヨーグルトなど非乳製品の等価物が挙げられる。
【0017】
本明細書において使用する場合、用語「柑橘類の果肉繊維」およびその文法的派生語は、汁を含有する柑橘類果実の内部(粗果肉、汁果肉、浮遊果肉、砂じょうまたは果肉繊維と呼ばれることが多い)に由来する繊維を意味すると理解される。本発明における使用に適した柑橘類の果肉繊維は、任意の柑橘類果実に由来するものであってもよく、そのような果実としては、オレンジ、タンジェリン、ライム、レモン、グレープフルーツおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、柑橘類の果肉繊維は、任意の品種、例えば、バレンシアオレンジ、早生/中生オレンジ(Early/Mid−Season orange)、ブラッドオレンジまたはマンダリンオレンジのオレンジ果実に由来するものであってもよい。
【0018】
本明細書において使用する場合、用語「バレンシアオレンジ」または「バレンシアオレンジ果実」は、遺伝子型またはバレンシア品種に由来するオレンジ果実を指し、この果実は、他の柑橘類果実、例えば、一般的には3月〜6月の数カ月の間に熟するオレンジ果実と比較して、収穫期の比較的遅い時期に通常熟する。バレンシアオレンジ果実の例としては、フロリダ産バレンシアオレンジ果実、カリフォルニア産バレンシアオレンジ果実およびブラジル産バレンシアオレンジ果実が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用する場合、用語「早生/中生オレンジ」または「早生/中生オレンジ果実」(「E/M」)は、収穫期の早期〜中期の間に通常熟するオレンジ果実、例えば、一般的には、10月〜2月の数カ月の間に熟するオレンジ果実を指す。早生/中生オレンジ果実の例としては、フロリダ産早生/中生オレンジ(ハムリン種、パーソン種、ブラウン種およびパイナップル種など)、ブラジル産早生/中生オレンジ果実(ペラ・リオ(Pera Rio)種およびナタル(Natal)種など)ならびにカリフォルニア産早生/中生オレンジ果実(カリフォルニアネーブル種など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において使用する場合、用語「〜を置き換える」およびその文法的変化形は、食品系中の全てまたは一部の固形分(例えば、脂質、タンパク質および/または炭水化物)を置き換えるために、柑橘類の果肉繊維を含む本開示のプレブレンド系を使用することを意味すると理解され、この場合、柑橘類の果肉繊維は、前記置き換えられた固形分の機能的な役割を果たす。理論に拘束されるものではないが、食品系中の置き換えられた固形分のそれぞれおよび/または全てについての機能性は、柑橘類の果肉繊維を含むプレブレンド系によって模倣されると考えられる。本開示のプレブレンド系は、食品系中で類似および一貫した官能特性をもたらすと考えられ、そうした特性は、伝統的には、置き換えられた固形分によりもたらされている。このようにして、本開示のプレブレンド系は、本開示のプレブレンド系に伴う独特な特性のおかげで、食品系中で機能的要件を補う(多くの場合、置き換えられた固形分と比較して低量で)ことができる。同様に、本開示のプレブレンド系はよく似た機能性を発揮することができることから、メーカーは、コストを低下させ、および/または、よりすっきりした原料表示をすることが可能になる。
【0020】
本明細書において使用する場合、用語「〜を含まない(devoid)」およびその文法的変化形は、せいぜい微量の物質(例えば0.5重量%未満)しか含有しないことを意味すると理解される。
【0021】
本明細書において使用する場合、用語「相乗作用」およびその文法的変化形は、組み合わさると個々の要素の合計を越える総合効果を生み出す、要素の相互作用を指す。
【0022】
米国食品医薬品局は、飽和脂肪酸を、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)およびステアリン酸(C18:0)を合わせたものと定義しており、本明細書において使用する場合、用語「FDA飽和脂肪酸」は、この全体を意味する。飽和脂肪酸の総含有量が明記されない限り、本明細書で表される飽和脂肪酸値は、「FDA飽和脂肪酸」のみを包含する。脂肪酸のパーセンテージおよびトランス脂肪のパーセンテージは全て、本明細書においては総脂肪酸含有量の重量パーセントである。油の脂肪酸含有量は、American Oil Chemists’ societyの方法AOCS Ce1c−89に従って定量してもよい。
【0023】
柑橘類の果肉繊維
さまざまな柑橘類の果肉繊維が市販されており、そのような繊維としては、Fiberstar,Inc.、Wilmar、Minnesota、USA(http://www.fiberstar.net/)からCITRI−FI(例えば、CITRI−FI 100およびCITRI−FI 100M40)の商品名で入手可能な食品用製品シリーズが挙げられる。一手段においては、柑橘類の果肉繊維は、米国特許出願公開第2006/0115564号(発明の名称「PROCESS OF EXTRACTING CITRUS FIBER FROM CITRUS VESICLES」)(特許文献1)に記載のプロセスにより抽出でき、同文献の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態は、柑橘類の果肉繊維1グラム当たり約7gの水〜約25gの水の水結合能と、柑橘類の果肉繊維1グラム当たり約1.5gの油〜約10gの油の油結合能とを有する柑橘類の果肉繊維を利用する。柑橘類の果肉繊維の水結合能は、試料を二重に調製し結果を平均して、以下の手順に従い最終結果に到達することにより測定できる:0.5gの当該繊維(乾燥粉末)を50mLの遠心管中に入れて計量できる(W1として記録)。次に、40gのmilli−Q水(W2として記録)を加えることができる。次に、この管に栓をして、手で1分間撹拌できる。この管を2000rpmで5分間遠心分離にかけることができ、次いで、上清をデカントして計量できる(W3として記録)。繊維の水結合能(WBC:water binding capacity)は、以下の式により計算できる:WBC=(W2−W3)/W1。WBCは、繊維1グラム当たりの水のグラム数(水(g)/繊維(g))として表される。
【0025】
柑橘類の果肉繊維の油結合能は、5%の粉末分散系を遠心分離して沈殿物を計量することにより測定できる。試料は、以下の手順に従い調製および測定できる:2.5gの粉末状の繊維(W1として記録)を、300mLビーカー中で50gの標準的な品質のダイズ油(W2として記録)中に分散させることができる。この試料を、繊維が完全に分散するまで約500rpmで10分間撹拌できる。試料は、疎水性に適応するまで30分間放置できる。適応後、試料を再び撹拌でき、45gの試料を遠心管に移すことができる。この管の重量をW3として記録でき、試料の入った遠心管の総重量をW4として記録できる。試料を含有する管を3800rpmで5分間遠心分離し、上清をデカントしてから、沈殿物を含有する遠心分離管を計量できる(W5として記録)。
【0026】
繊維の油結合能(OBC:oil binding capacity)は、以下の式により計算できる:OBC=Wco/Wcp(式中、Wcpは、Wcp=(W/100)×(W4−W3)として計算でき、Wcoは、Wco=W5−W3−Wcpとして計算できる)。W(試料の分散系中の製品の比率(%))は、W=W1×100/(W1+W2)として計算できる。W(試料の分散系中の油の比率(%))は、W=W2×100/(W1+W2)として計算できる。OBCは、繊維1グラム当たりの油のグラム数(油(g)/繊維(g))として表される。
【0027】
食用脂質
本開示のプレブレンド系は、食用脂質も含んでいる。本開示物においては、任意の食用脂質を使用できる。適当な脂質としては、植物油脂、ラウリン酸の油脂、乳脂肪、動物性脂肪、水産油(marine oil)、部分的に可消化性および非消化性の油脂、表面活性脂質、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な植物油脂としては、オレイン酸、リノール酸などのC18不飽和脂肪酸ベースのトリアシルグリセロール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な非水素化、部分的に水素化、および完全に水素化された植物油の非限定的な例としては、菜種(例えばキャノーラ)、ダイズ、ベニバナ、オリーブ、コーン、トウモロコシ(maize)、綿実、オリーブ、ヤシ、ピーナッツ、亜麻仁、ヒマワリ、米ぬか、ゴマ、ココアバターに由来する油、およびそれらの混合物が挙げられる。有用なラウリン酸の油脂としては、12個の炭素原子を含むラウリン酸ベースのトリアシルグリセロールが挙げられるが、これに限定されない。有用なラウリン酸の油脂の非限定的な例としては、ココナッツ油、パーム核油、ババス油、およびそれらの混合物が挙げられる。有用な動物性脂肪の非限定的な例としては、ラード、牛脂、卵脂質、筋組織中の内在性脂肪、およびそれらの混合物が挙げられる。有用な水産油の非限定的な例としては、ドコサヘキサエン酸などのΩ−3多価不飽和脂肪酸ベースのトリアシルグリセロール、メンヘーデン油、ニシン油、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
部分的に可消化性および非消化性の油脂は、一定の用途において有用である場合があり、その理由は、このような油脂は、食品系にほとんどまたは全くカロリーを付与せず、前記油脂が組み込まれる食品にコレステロール低下能力を付与できるからである。そのような油脂の非限定的な例としては、ポリオール脂肪酸ポリエステル、構造化トリグリセリド、植物ステロールおよびステロールエステル、エステル化プロポキシル化グリセリン(EPG)など他の非消化性脂質、ならびにそれらの混合物が挙げられる。有用な植物ステロールおよびエステルの例としては、シトステロール、シトスタノール、カンプエステロール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。食品系にコレステロール低下能力をもたらすことができる、部分的に可消化性および非消化性の油脂の例としては、Olean(登録商標)の商品名でProcter&Gamble Company、Cincinnati、OHにより販売されているものなどのショ糖ポリエステルが挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
従来のプディングは、典型的には、プディングに望ましいレオロジーおよび口当たりをもたらすために、植物性ショートニングなどの可塑性脂肪を用いる。可塑性脂肪は、固体脂肪含有量(SFC)が比較的高く、結晶性の固体脂肪が構造および可塑性をもたらす。固体脂肪含有量は温度に伴い変化することになるが、可塑性脂肪は、一般的には、関連温度でのSFCが10〜30重量%の脂肪と定義してもよい。例えば、典型的な全目的製パン用ショートニングは、普通、SFCが30℃で約12重量%、SFCが約15℃で約30重量%であるが、これは、該ショートニングが約15〜30℃で可塑性であることを意味している。冷蔵温度では、SFCは30重量%超であると考えられる。デニッシュペストリーなどを作製するために使用される種類の従来のロールイン用ショートニングのSFCレベルは、可塑温度範囲が25〜40℃に近く、10℃でのSFCが50重量%に近付く全目的ショートニングよりさらに高い。
【0030】
しかしながら、従来の植物性ショートニングは、トランス脂肪および/または飽和脂肪の含有量が高い傾向がある。例えば、多くの植物性ショートニングは、ダイズ油または綿実油など室温で液体である、部分的に水素化された植物油により形成される。油を部分的に水素化するプロセスにより、飽和脂肪およびトランス脂肪が両方とも作り出され、部分的に水素化された従来の大部分の植物性ショートニングは、25%超、典型的には30%以上のトランス脂肪を含有する(すなわち、油中の25重量%超、典型的には30重量%以上の脂肪酸は、トランス立体配置中で少なくとも1つの二重結合を有する)。飽和脂肪およびトランス脂肪により、所望の可塑度をもたらすために必要な固体脂肪含有量が供給される。ただし、合衆国内の食用製品メーカーが、その製品には1食分当たりのトランス脂肪が0gである(「トランスフリー」と呼ばれることが多い)ことを製品ラベル上に表示したいと考えた場合、高レベルのトランス脂肪により、同製品中に含まれている部分的に水素化された植物性ショートニングの量は制限されることになる。
【0031】
トランス脂肪を減少させるには、植物性ショートニングは、代わりに、ヤシ油およびココナッツ油などのトロピカル油を使用して作製することができる。これらの脂肪は飽和脂肪の含有量が高く、ヤシ油は少なくとも50%のFDA飽和脂肪酸を典型的に含有し(すなわち、先に定義したように、油中の少なくとも50重量%の脂肪酸がFDA飽和脂肪酸である)、ココナッツ油は90%超のFDA飽和脂肪酸を典型的に含有する。メーカーによっては、トランス脂肪含有量を高めずに飽和脂肪酸を増加させるために、完全に水素化されたダイズ油などの完全に水素化された油を用いることがある。可塑性をもたらすためにそのような脂肪を使用することにより、トランス脂肪含有量は最小化するが、完成食品の飽和脂肪含有量は増加する。合衆国および他の国々では食品ラベルに当該食品の飽和脂肪含有量を明示することが必要であることから、これらの植物性ショートニングを使用することにより、消費者の許容性にマイナスの影響を及ぼす可能性もある。
【0032】
以下に説明するように、本開示のプレブレンド系のいくつかの実施形態は、トランス脂肪がほとんどまたは全く含まれず、飽和脂肪含有量が比較的低い構造化脂肪系を提供できる。そのような実施形態では、本プレブレンド系は、液体食用油、好ましくは水素化されていない液体油を用いてもよい。この液体油は、25℃で固体脂肪を実質的に含まない、すなわち、25℃での固体脂肪含有量(「SFC25」)がおよそ0重量%、0℃での固体脂肪含有量(「SFC0」)が約5重量%以下、望ましくは2%未満であってもよい。多くの適当な油は、0℃で固体脂肪を実質的に含まない、すなわち、SFC0がおよそ0重量%である。固体脂肪含有量は、American Oil Chemists’ Societyの方法AOCS Cd 16b−93に従い、核磁気共鳴を用いて測定してもよい。
【0033】
さらに、本開示のプレブレンド系中の液体食用油は、比較的低いメトラー滴点(Mettler Dropping Point(MDP))を有してもよい。多くの食用脂質は、さまざまなトリアシルグリセロールを含有し、単一の明確に規定された融点をもたない。MDP(固体脂肪が液体になって流れる温度と考えてもよい)は、American Oil Chemists’ Societyの方法Cc18−80に従い測定する。本開示のプレブレンド系のいくつかの有利な手段では、本開示のプレブレンド系は、MDPが10℃未満、好ましくは5℃以下、例えば0℃以下の食用油を含んでいる。
【0034】
ある有用な実施形態では、本プレブレンド系において使用する油は、トランス脂肪および飽和脂肪の両方の含有量が低い、水素化されていない油である。商業的に作製された多くの植物油は、未精製の植物油を精製、漂白および脱臭するプロセスの間に生成される微量のトランス脂肪を有することになると思われることから、こうした油はトランス脂肪を完全に含まないとは考えられない。一実施形態では、トランス脂肪含有量は5%以下、例えば、3%以下または2%以下である。そのようなプレブレンド系中の油のFDA飽和脂肪酸は、望ましくは30%未満、望ましくは20%以下、好ましくは15%以下である。
【0035】
そのようなより低い量のトランス脂肪と飽和脂肪とのプレブレンド系を作製するための適当な油としては、水素化されていないおよび/または低度に水素化された菜種油(例えばキャノーラ油)、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、コーン油、綿実油およびピーナッツ油が挙げられるが、これらに限定されない。オレイン酸レベルが上昇しており、および/またはリノレン酸レベルが低下している特別品のキャノーラ、ダイズおよびヒマワリの油は、より長い品質保持期間を必要とするゲルベースのデザート系の調製において非常に有用であり、CLEAR VALLEY65およびCLEAR VALLEY75ブランドのキャノーラ油(Cargill,Incorporated、Wayzata、Minnesota、USA、以降「Cargill」と呼ぶ)は、そのような用途にとりわけ好適と考えられる。これらの油は、単独で、または、本プレブレンド系中で菜種油および綿実油を両方使用するなど組み合わせて使用してもよい。安定性または機能的な特徴を改善するには、本プレブレンド系の形成において使用する食用油は、完全に水素化されたダイズ油などの水素化油を、プレブレンド系に所望のトランス脂肪および飽和脂肪含有量が残ると思われる添加レベルでさらに含んでいてもよい。
【0036】
従来の知識から、ゲルベースのデザート系(特にプディング)の調製に使用する油は、固体脂肪含有量が比較的高い、例えば、SFC25が10重量%以上のショートニングなどであるべきであることが示唆される。その同じ知識から、液体油、例えばSFC0が5重量%未満のものを使用すれば、粘度および質感に問題があり、安定性が低下したゲルベースのデザート系が得られるであろうと示唆される。予想外にも、そのような液体油を使用する本開示のプレブレンド系からは、ショートニングを用いた対応する従来の組成物と同様の安定性およびそれより高い粘度を有するゲルベースのデザート系が作製される。
【0037】
脂質が乳化剤としても作用する状況においては、本開示のプレブレンド系は、望ましい特性を損なうことなく脂質(乳化剤)の代替品として有用であり得る。したがって、一態様では、本開示のプレブレンド系は、そのような脂質(レシチン、ポリソルベート、部分的に水素化された油、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない)を含む系の代用品として使用できる。したがって、本開示のプレブレンド系は、多様な食品系において使用される脂質固形分の全てまたは一部を置き換え、それにより、その中に存在する固形分の含有量を減少させることができる。
【0038】
本プレブレンド系の任意選択的な成分
本開示によるプレブレンド系は、所望の完成形の食用製品の形成において有用である任意の数の任意選択的な原料を含んでいてもよい。以下に説明するように、本開示のプレブレンド系は、ドライブレンド系、または、10%を超える水分を含んでいるウェットブレンド系であってもよい。そのようなウェットブレンド系は、20%を超える水、例えば、40〜99%の水を含んでいてもよい。より一般的には、本開示のウェットブレンド系は液体系を含んでいてもよく、そのような液体系は、水、水混和性の液体、水非混和性の液体およびマイクロエマルションのうち1つまたは複数であってもよい。水混和性の液体の非限定的な例としては、乳;クリーム、バターミルク、乳清およびヨーグルトなど、乳タンパク質を含有する液体;アイスクリーム;豆乳ベースの液体;アルコールを含有する液体;およびそれらの混合物が挙げられる。水非混和性の液体の非限定的な例としては、植物油、ココアバター、米ぬか由来の油など、脂質ベースの疎水性の液体、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
本明細書において使用する場合、「マイクロエマルション」は、2つの非混和性の液体の分散系を意味すると理解され(一方の液相は「分散しており」、他方は「連続している」)、この場合、分散相の個々の小滴の平均半径は、光の波長の約1/4未満、例えば約1,400Å未満である。一態様では、マイクロエマルションは、油および水を含むことができる。別の態様では、このウェット系は、電解質、微量元素、脂肪、香味料、酸化防止剤、食用酸、ビタミン類、ミネラル類、緩衝塩、着色料、保存料、乳化剤、甘味料、およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。
【0040】
他の態様では、本開示のプレブレンド系は、甘味料および/または他の炭水化物、乳製品または卵製品、乳化剤、および他の添加剤のうち1つまたは複数を含んでいてもよい。甘味料の適当な例としては、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、糖アルコール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、有用な単糖としては、エリトロースなどの四炭糖、アラビノース、キシロースおよびリボースなどの五炭糖、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボースおよびタガトースなどの六炭糖などを挙げることができる。別の例として、有用な二糖としては、ショ糖、マルトース、トレハルロース(trehalulose)、メリビオース、コージビオース、ソホロース、ラミナリビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、セロビオース、マンノビオース、乳糖、ロイクロース、マルツロース、ツルナノース(turnanose)などを挙げることができる。適当な甘味料としては、栄養性および非栄養性の高甘味度甘味料、例えば、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア配糖体およびモナチンを挙げることもできる。
【0041】
本開示のプレブレンドは、他の可消化性、部分的に可消化性および非消化性の多糖など、甘味料以外の炭水化物を含んでいてもよい。有用な可消化性多糖の非限定的な例としては、グリコーゲン;米、コーン、トウモロコシ(maize)、オオムギ、ダイズ、ヒマワリ、キャノーラ、コムギ、オートムギ、ライムギ、バレイショおよびキャッサバに由来するデンプン;デンプンの部分的な加水分解により得られるマルトデキストリン;およびそれらの混合物が挙げられる。適当な種類のデンプンは、天然の非加工デンプン、アルファ化デンプン、化学的加工デンプン、高アミラーゼデンプン、もちデンプン(waxy starch)、それらの混合物などであってもよい。
【0042】
有用な非消化性多糖は、水溶性または非水溶性であってもよい。水溶性および主に水溶性の非消化性多糖の非限定的な例としては、以下が挙げられる:オートムギふすま、オオムギふすま;サイリウム;ペントサン;ペクチン、イヌリンおよびβ−グルカン可溶性繊維などの植物抽出物;グアーガムおよびローカストビーンガムなどの種子ガラクトマンナン;アラビアガム、トラガントガムおよびカラヤガムなどの植物浸出物;寒天、カラギーナン、アルギネートおよびファーセレラン(furcellaran)などの海藻抽出物;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;キサンタンガムおよびジェランガムなどの微生物ガム;ヘミセルロース;ポリデキストロースおよびそれらの混合物。適当な非水溶性および主に非水溶性の非消化性多糖の非限定的な例としては、セルロース、微晶性セルロース、ふすま、抵抗性デンプンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
一実施形態では、本開示のプレブレンド系は、食品系における、組み合わせることによる総合効果が、炭水化物単独、または、当該食品系中に炭水化物が含まれない本プレブレンド系の効果の合計より大きいような、炭水化物との相乗作用を実証できる。例えば、柑橘類の果肉繊維と少なくとも1つの炭水化物とを含むプレブレンド系は食品系中で使用でき、柑橘類の果肉繊維と炭水化物とは相乗的に作用して、エマルションの安定性、シネレシスの低下、油結合能の増加など(これらに限定されない)を含む機能性を高める。本開示のプレブレンド系が炭水化物との相乗作用を実証できる食品系の非限定的な例としては、乳製品および非乳製品のプディング、カスタードおよびヨーグルトなどゲルベースのデザート系が挙げられるが、これらに限定されない。有用な一手段では、柑橘類の果肉繊維は、n−コハク酸オクテニル(nOSA)デンプンなどの炭水化物と相乗的に作用して機能性を高めることができる。
【0044】
炭水化物が乳化剤としても作用する状況においては、本開示のプレブレンド系は、望ましい特性を損なわず、炭水化物(乳化剤)の代替品として有用であり得る。したがって、一態様では、本開示のプレブレンド系は、そのような炭水化物(カルボキシメチルセルロース、ナトリウムステアロイルラクトリエート(lactlyate)、モノ/ジグリセリド、ならびにそれらの混合物を含むが、これらに限定されない)を含む系の代用品として使用できる。したがって、本開示のドライブレンド系は、多様な食品系中で使用される炭水化物固形分の全てまたはいくつかを置き換え、それにより、その中に存在する固形分含有量を減少させることができる。
【0045】
一態様では、本開示のプレブレンド系は、クリーム、全乳、バターミルク、スキムミルク、脱脂乳固形分、乳清、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物などの乳製品、およびそれらの混合物を含むことができる。そのような乳製品は、乳製品のプディング系および他の乳製品のゲルベースのデザート系の作製においてとりわけ有用である。他の適当な乳製品または卵製品は、乳製品タンパク質(例えば乳タンパク質)および卵タンパク質を含んでおり、そのようなタンパク質は、質感を与えること、乳化することおよび栄養価を与えることを非限定的に含むさまざまな機能をもたらすことができる。乳製品タンパク質は、先に列挙した乳製品由来のものであってもよい。適当な乳タンパク質の非限定的な例としては、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カルシウムおよびパラカゼイネート(レンネットカゼイン)などのカゼイネート、ならびに、β−ラクトグロブリンおよびα−ラクトアルブミンなどの乳清タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。卵タンパク質は、ニワトリ、アヒルおよびガチョウを非限定的に含む任意の鳥の卵に由来するものであってもよい。適当な卵タンパク質の非限定的な例としては、液体卵白タンパク質、液体卵黄タンパク質および卵タンパク質粉末が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本開示のプレブレンド系は、食品系中で使用される乳製品タンパク質固形分および卵タンパク質固形分の量を置き換えることもできる。一実施形態では、本開示のプレブレンド系は、カゼイネートおよび/または伝統的な合成乳化剤を含む食品系の全てまたは一部を有効に置き換えるために有利に使用できる。非限定的な例としては、本開示のプレブレンド系は、有利には、ゲルベースのデザート系中に組み込んで、カゼイネートを使用せず、またはカゼイネートの量を減少させて、適当な安定性および乳化をもたらすことができる。加えて、本開示のプレブレンドは、熱処理の間にゲルベースのデザート系に熱安定性をもたらすことができる。
【0047】
本開示のプレブレンドは、1つまたは複数の乳化剤を含んでいてもよい。食品乳化剤は、水と油とのエマルションを安定化させるために油脂を含有する加工食品中で長く使用されてきた。水と油とのエマルションは、2つの種類に大きく分けることができる:油が分散相であり水が連続相である水中油(o/w)エマルション(乳、アイスクリームおよびある種のプディングなど);または、水が分散相であり油が連続相である油中水(w/o)エマルション(マーガリンおよびバターなど)。
【0048】
エマルションは、熱力学的に安定ではなく、さまざまな方式で分解することがある。粒子は再結合または合体(破壊および合体)して、最終的に元の2つの非混和性の相に戻ることがある。他の状況では、エマルションは、油と水とが入れ替わることによりo/wエマルションがw/oエマルションになる相反転を起こすことがある。エマルションの不安定性の別の形態は、粒子が自身の独自性を保持しつつも容器中で不均一に分布し始める場合に起きる。これは、粒子が集まって塊を形成する凝集、または、粒子と連続相との間の密度差が原因で重力による分離が生じるクリーム分離、そのいずれかにより起きる場合がある。機序にかかわらず、エマルションの不安定性は、食品系を乱し損傷する場合がある。
【0049】
乳化剤は、その分子構造により、2つの非混和相間の表面張力を低下させる。乳化剤は、水に対し親和性を有する(親水性の)極性基と、油に対し親和性を有する(親油性の)非極性基とを両方とも有する。乳化剤分子上に両方の領域が存在することにより、乳化剤分子は、自ら相界面に配向し、エマルションの不安定性に繋がる界面エネルギーを低下させることが可能になる。一般的に、伝統的な合成の食品乳化剤は、脂肪酸およびポリオールの部分的なエステル、および/または水溶性の有機酸であってもよい。伝統的な食品乳化剤の非限定的な例としては、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ポリソルベート、モノ/ジグリセリド(MDG)、レシチンおよびステアロイル乳酸ナトリウムが挙げられる。ゼラチン、卵タンパク質および乳製品タンパク質などの親水コロイドおよびタンパク質も乳化剤として使用できる。
【0050】
しかし、一定の食品系中での特定の添加物を禁じる、行政による食品規制および/または宗教的慣習による制限により、伝統的な合成乳化剤を使用することの少なくとも1つの不利益が生じる。例えば、ステアロイル乳酸ナトリウムは、カナダの規制の下では乳製品のクリーマー食品系中では許可されない。別の例としては、ユダヤ教の慣習に従った食生活の下では、食品系中ではゼラチンは許可されない。したがって、乳化剤のように機能するがこれらの種類の制限に当たらない材料は、乳化剤の代替品として広く有用である場合があり、それにより、文化的に、また、食規制により制限された多様な市場区分への市場浸透が可能になる。さらに、天然の材料を源にするそのような乳化剤の代替材料は、健康的で天然の食品に対する高まりつつある消費者需要を満足させる天然源の食品系を作製するために使用できる。
【0051】
一態様では、本開示のプレブレンド系は、伝統的な合成および天然の乳化剤を含むプレブレンド系と類似の機能的な特徴を有することができる。理論により限定されることを意図するものではないが、柑橘類の果肉繊維は、親水性領域および親油性領域を両方とも有し、それにより、乳化剤として作用できると考えられる。したがって、柑橘類の果肉繊維(天然の材料に由来するもの)を含む本開示のプレブレンド系は、健康的で天然の食品に対する高まりつつある消費者需要を満足させる天然源の食品系を作製するために使用できる。
【0052】
例えば、本開示のプレブレンド系は、ゲルベースのデザート系を非限定的に含む多種多様な食品系中で、伝統的な合成および天然の乳化剤の一部または全てを有効に置き換えることができる。商業的に有望な一手段は、添加された乳化剤を含まないプディング系、特に、合成乳化剤を含まないプディング系である。
【0053】
別の態様では、柑橘類の果肉繊維と食用脂質とレシチンとを含むドライブレンド系は、前述のエマルションの機能性を相乗的に改善できる。理論により限定されることを意図するものではないが、柑橘類の果肉繊維上の親水性領域および親油性領域の存在が柑橘類の果肉繊維と乳化剤との間の相界面での競合に寄与することにより、個々の作用剤の別々の効果により予測されたものより大きい機能性がもたらされると考えられる。
【0054】
本開示のプレブレンド系は、親水コロイドも含むことができる。本開示のプレブレンド系中では、任意の親水コロイドを使用できる。本明細書において使用する場合、「親水コロイド」は、水を吸収することにより粘度を増加させる任意の親水性のコロイド材料を意味すると理解される。親水コロイドは、食品系に口当たりのよさとしっかりした質感(body texture)とを付与できる。適当な親水コロイドとしては、植物浸出物、植物種子ガム、植物の穀類の穀粒、マンナンガム、ペクチンおよび海藻抽出物など植物由来のガム;発酵ガム;動物製品;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例として、親水コロイドの菓子中で使用される親水コロイドとしては、寒天、アルギネート、キサンタンガム、ジェランガム、カロブビーンガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、コンニャクガム、デンプン誘導体、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
別の例としては、熱可逆性のゲルを形成でき、または熱可逆性のゲルの形成に寄与できる親水コロイドが有用である場合がある。そのような親水コロイドとしては、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムおよびマンナンガム(ローカストビーンガム(LBG)、コンニャクガム、タラガムおよびカシアガムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用する場合、「熱可逆性ゲルの形成に寄与する」とは、個々には熱可逆性ゲルを形成できないが、カラギーナンなど別の親水コロイドと組み合わされると熱可逆性ゲルを形成できるガムを意味すると理解される。さらなる例としては、熱可逆性ゲルを形成しないガムも、有用な親水コロイドである場合がある。そのような親水コロイドとしては、デキストリン(マルトデキストリンなど)、タンパク質、アラビアガムおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0056】
一実施形態では、本開示のプレブレンド系は、食品系における、組み合わせることによる総合効果が、親水コロイド単独、または、食品系中に親水コロイドが含まれない本プレブレンド系の効果の合計より大きいような、親水コロイドとの相乗作用を実証できる。例えば、柑橘類の果肉繊維と食用脂質と少なくとも1つの親水コロイドとを含むプレブレンド系を食品系中で使用でき、そのような食品系中では、柑橘類の果肉繊維および親水コロイドは相乗的に作用して、エマルション安定性、シネレシスの低下、油結合能の向上などを非限定的に含む機能性を高める。一例として、柑橘類の果肉繊維と食用油と少なくとも1つの親水コロイドとを含むプレブレンド系は、ゲルベースのデザート系中で前述の粘性および懸濁の機能的な特徴を相乗的に高めることができる。
【0057】
さらなる一態様では、本開示のプレブレンド系は、食品系(ゲルベースのデザート系が挙げられるが、これに限定されない)中の可塑性脂肪の含有量を置き換えることもできる。例えば、また、以下に述べるように、本開示のドライブレンド系は、プディング製品中に存在するショートニングの全てまたは一部を有効に置き換えながら、所望の官能特性、最終製品のできばえおよび消費者の許容性を達成できる。
【0058】
親水コロイド、脂質、炭水化物およびタンパク質などの多様な作用剤を食品系中に含ませると、安定性、乳化、せん断耐性、酸耐性、水吸収、濃厚さ、酸味付け、懸濁など多数の望ましい特性がもたらされる。しかし、使用する一定の作用剤(例えば、乳化剤、脂肪、タンパク質など)の量を減少またはゼロにすることにより、本開示のプレブレンド系は、食品系中に存在する固形分の含有量を減少させ、または、食品系中の一定の固形分を置き換えることができる。
【0059】
場合により、本開示のプレブレンド系は、ドライブレンド系の風味、色、質感、外見、栄養および/または他の特性を改善するために1つまたは複数の添加物をさらに含むことができる。そのような添加物の非限定的な例としては、電解質、微量元素、香味料、酸化防止剤、食用酸、ビタミン類、ミネラル類、緩衝塩、着色料、保存料、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いずれの実施形態において使用する場合も、そのような添加物は有効量で加える。
【0060】
本明細書において使用する場合、用語「食用酸」は、ヒトが摂取する場合に安全な、pKが約5未満の任意の水溶性の酸材料を意味すると理解される。食用酸の例としては、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、フマル酸、リン酸、リン酸一カリウム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
適当な電解質の例としては、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、クロム、銅、セレン、鉄、マンガン、モリブデン、亜鉛、およびそれらの混合物などの微量元素が含まれていてもよい。
【0062】
適当な香味料の非限定的な例としては、天然および合成的に調製された香味料、ノンカロリーの甘味料、刺激剤(bracer)およびフラバノールが挙げられる。本明細書において使用する場合、用語「香味料」は、調味料および香辛料を包含する。本開示においては、甘味フレーバー、果実フレーバー、天然の植物フレーバー、セイボリーフレーバー、およびそれらの混合物など、任意の天然または合成の香味料を使用できる。セイボリーフレーバーとしては、穀物ベースのフレーバー、香辛料ベースのフレーバーおよびバターのようなタイプのフレーバーが挙げられるが、これらに限定されない。甘味フレーバーとしては、チョコレート、プラリネおよびカラメルが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な果実フレーバーとしては、リンゴ、柑橘類、ブドウ、ラズベリー、クランベリー、サクランボなどが挙げられる。これらの果実フレーバーは、果汁およびフレーバー油など天然源に由来するものであってもよく、あるいは合成的に調製されてもよい。非限定的な天然の植物フレーバーとしては、アロエベラ、チョウセンニンジン、イチョウ、サンザシ、ハイビスカス、ローズヒップ、カモミール、ペパーミント、フェンネル、ショウガ、甘草、ハスの実、シザンドラ、ノコギリヤシ、サルサパリラ、ベニバナ、セントジョーンズワート、ウコン、カルダモン、ナツメグ、カシア樹皮、ブッコ、シナモン、ジャスミン、サンザシの実、キク、ヒシ、サトウキビ、ライチ、タケノコなどが挙げられる。香味料は、濃縮物、抽出物として、または、合成的に作製された風味付け用エステル、アルコール、アルデヒド、テルペン、セキテルペン(sequiterpene)などの形態で入手できる。
【0063】
プレブレンドを作製する方法
本開示のプレブレンド系は、当業者に公知の任意の様式により調製できる。例えば、本プレブレンド系の原料を物理的に共に混合して、ドライまたはウェットブレンド系を作製できる。以下で強調するように、脂質と柑橘類の果肉繊維とを組み込む本開示による食品系は、本食品系が、脂質と柑橘類の果肉繊維とを別々に加えることにより調製される場合であっても、柑橘類の果肉繊維を入れない系に対し向上した機能性(例えば粘性)を呈することができる。
【0064】
本開示の一定の有用な態様は、食用脂質と柑橘類の果肉繊維と水とを含むエマルションをホモジナイズおよび/または形成することにより実質的に機能性が向上したプレブレンド系を提供する。いくつかの手段においては、本プレブレンド系は、大部分または全ての水が減っていない、より完全な食品系の調製において使用する。他の手段においては、本プレブレンド系を乾燥させて、ドライブレンド系を創出する。
【0065】
一態様では、本開示のプレブレンド系は、食用脂質と柑橘類の果肉繊維と水とを含んでいる配合物をホモジナイズすることにより形成してもよい。以下に述べるように、高圧バルブ・ホモジナイゼーションおよび高せん断ホモジナイゼーションのうち少なくとも1つを用いるホモジナイゼーションにより、有益と考えられるエマルションを形成できる。しかし、そのように所望の場合、これらまたは任意の他の公知のホモジナイゼーション法は、エマルションを形成せずに使用してもよい。
【0066】
脂質、柑橘類の果肉繊維および水は、本プレブレンド系において所望の機能性が得られる任意の所望の比率で混合してもよい。液体油(例えば、SFC0が5重量%以下)を用いる例示的な実施形態は、柑橘類の果肉繊維の1重量部当たり約0.5〜約20重量部の間の油を有してもよく、すなわち、柑橘類の果肉繊維に対する油の重量比が約0.5〜約20であってもよい。いくつかの態様では、柑橘類の果肉繊維に対する脂質の重量比は、20以下、例えば、19以下、15以下または10以下であってもよい。ゲルベースのデザート系中で使用するためのプレブレンド系の形成においては、柑橘類の果肉繊維に対する脂質の重量比1〜20、例えば2〜15または2〜10は、広範な有用な食用製品にとって満足なものであるはずである。(油および柑橘類の果肉繊維の相対重量の比較において、また、これらの重量比の計算においては、柑橘類の果肉繊維の重量は乾量基準である)。
【0067】
前述のように、本開示のプレブレンド系の形成において使用するホモジナイズされた配合物は、水も含んでいてもよい。この水は、水(例えば濾過水)として加えてもよく、または、代わりに、水を含んでいる液体系(例えば乳など)の一部として加えてもよい。
【0068】
ホモジナイズされた配合物の含水量は、相当広い範囲内で変化させることができる。ホモジナイズされた配合物をウェットブレンド系として使用することを意図した場合、プレブレンド系中の含水量は、完成食品組成物の水必要量全体を構成するのに十分なものであってもよい。以下に説明するように、ホモジナイゼーションによりエマルション(例えば油中水エマルション)を形成する場合、そのことは有利と考えられる。そのような一実施形態では、含水量は、本プレブレンド系を、例えば、他の原料と混合することによりさらに加工して、完成食品の原料の大部分または全てを含んでいるさらなるプレブレンド系または食品系を形成することが可能なだけ十分長く安定であるようなエマルションを形成するように選んでもよい。一定の有用な実施形態では、ホモジナイズされた組成物は、約40〜99重量%の水、例えば75〜95重量%の水を含んでもよい。有用な一ウェットプレブレンド系は、80〜98重量%の水(84〜98重量%、84〜92重量%、85〜98重量%、または85〜92重量%の水など)を含む。前述の考察から、本開示のウェットブレンド系は、水、水混和性の液体および/またはマイクロエマルションを含んでいる液体系を使用してもよいことが示された。そのようなプレブレンド系の含水量の計算においては、本プレブレンド系中に存在する水の重量は、水混和性の液体および/またはマイクロエマルションの総重量ではなく、水混和性の液体および/またはマイクロエマルション中の水の重量として得てもよい。
【0069】
ホモジナイズされた組成物の重量パーセントとして表す代わりに、ホモジナイズされた組成物中の含水量を、柑橘類の果肉繊維に対する水の重量比として表してもよい。いくつかの実施形態では、本プレブレンド中の柑橘類の果肉繊維に対する水の重量比は、40〜99の間、例えば75〜95であってもよい。
【0070】
ホモジナイズされた組成物は、さまざまな方式でホモジナイズできる。好ましくは、ホモジナイゼーションは、エマルション、例えば油中水エマルションを形成するのに十分である。高圧バルブ・ホモジナイゼーション(HPVH)は、適当なエマルションの創出において有効であることが見出されている。適当なHPVH動作圧力は、用いられるバルブ設計(特定の組成物がホモジナイズされる)などに基づいて変化すると考えられるが、当業者であれば、意図する用途のための適切に安定なエマルションを形成するための適切な動作条件を容易に決定できる。当業者には、エマルションの作製において慣用的に用いられる高せん断混合および他の手法も、脂質と柑橘類の果肉繊維と水とをホモジナイズして、本開示のプレブレンド系を形成するうえでの使用に適応させてもよいことも理解されよう。
【0071】
これまでに述べたように、本開示のプレブレンド系は、本開示の食品系、および、本開示の食品系を使用して作製された完成食品を改善するために、添加された乳化剤、例えば、レシチンまたはナトリウムステアロイルラクトリエートを任意選択的に含んでいてもよい。本食品系が乳化剤を含むことになる場合、ホモジナイズされた組成物に乳化剤を加えることにより、より安定なホモジナイズされたエマルションを得ることができる。
【0072】
いくつかの実施形態は、ホモジナイゼーション後に少なくとも部分的に乾燥させるプレブレンド系を提供する。乾燥させることにより、輸送費用を減少させることもプレブレンド中の水分活性を低下させることも両方でき、水分活性の低下は、保管安定性の向上に寄与する。商業的に有用な一手段では、ホモジナイズド組成物を含水量15%未満、好ましくは10%以下に乾燥させて、ドライブレンド系を形成する。
【0073】
最初のウェットブレンド系は、さまざまな方式で乾燥させてもよい。例えば、凍結乾燥および流動層乾燥させると、驚くほど有益な機能性を有するドライブレンド系が得られることが見出されている。
【0074】
有用な一手段では、ホモジナイズされた組成物を、該ホモジナイズされた組成物中にはない少なくとも1つのさらなる原料を含むことができる第2の成分の存在下で乾燥させる。場合によっては、乾燥中に、ホモジナイズされた組成物を第2の組成物と接触させてもよい。第2の成分は、1つまたは複数の原料を含んでいるドライブレンド系を含んでもよいが、代わりにその含水量が高くなる可能性がある。
【0075】
この第2の成分の性質および組成は、本開示のドライブレンド系が使用されることになる食品系の性質に依存することになろう。第2の成分は、前述の任意選択的な原料のいずれかを含んでいてもよい。例えば、ゲルベースのデザートを作製するためのドライブレンド系は、デンプンおよび甘味料のうち少なくとも1つを含む第2の成分を含んでいてもよい。例えば、以下の例3においては、第2の成分は加工デンプンを含む。この乾燥プロセスにおいて第2の成分としてデンプンおよび甘味料(例えば、加工デンプンおよびショ糖)を使用すると、最終的な食品系の作製において他のデンプンおよび甘味料の必要性を低下させまたは排除することができるドライブレンド系が得られる。
【0076】
一般には、凍結乾燥には、材料を凍結してから低圧下で水を昇華させることが含まれる。凍結乾燥は食品業界において周知であり、多種多様な凍結乾燥機が市販されている。ホモジナイズされた組成物は、単独で、または第2の成分の存在下で、凍結乾燥させてもよい。
【0077】
流動層乾燥機も食品業界においては周知であり、さまざまな供給者から購入できる。一般的に、流動層乾燥機により、微粒子担体上で乾燥させることが必要な流体を噴霧し、コーティングされた担体の層を経由して乾燥用の気体(例えば、空気または窒素)を上方へ通すことが可能になる。有用な一実施形態では、本開示のホモジナイズされた組成物と、前述の第2の成分とを流動層に加えてもよい。例えば、第2の成分は、乾燥機の下部に加える、適切な大きさにした微粒子デンプンおよび/または甘味料を含んでもよい。ホモジナイズされた組成物は、第2の成分の流動層上に噴霧し一緒に乾燥させて、柑橘類の果肉繊維と脂質とでコーティングされた粒子を形成してもよい。
【0078】
ホモジナイズされた組成物と第2の成分との相対パーセンテージは、必要に応じて変化させることができる。流動層乾燥に有用な一実施形態では、本ドライブレンド系は、10〜40重量%、例えば15〜35重量%のホモジナイズされた組成物(乾量基準)と、約60〜90重量%、例えば65〜85%の第2の成分とを含んでいる。
【0079】
ゲルベースのデザート系
本開示のプレブレンドは、ゲルベースのデザート系における使用にとりわけ好適であることが見出された。以下の考察は、乳製品ベースのプディング系に焦点を合わせているが、同様の利益は、乳製品および非乳製品(例えばダイズ)のヨーグルトおよびカスタードなど他のゲルベースのデザート系にももたらされると見込まれる。
【0080】
従来の乳製品のプディング組成物は、典型的には、約30〜70重量%、例えば35〜45重量%の乳または脱脂乳;5〜20重量%、例えば10〜15重量%の添加水;0.05〜30重量%の甘味料(この範囲の下限は、普通、高甘味度甘味料についても保持される);0.5〜15重量%、例えば0.5〜10重量%のショートニング;2〜10重量%、例えば3〜8重量%のデンプンまたは他の増粘剤;0.05〜2重量%、例えば0.75〜1.25重量%の塩;0.01〜2重量%、例えば0.05〜1.5重量%の乳化剤;0.01〜2重量%、例えば0.02〜1.25重量%の着色料;および0.05〜2重量%、例えば0.01〜1.5重量%のフレーバーを含んでいる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0044494号(特許文献2)では、適当な着色料が開示されており、乳製品ベースのそのまま食べられる(RTE、ready−to−eat)プディングの作製のプロセスが記載されている。
【0081】
本開示のゲルベースのデザート系は、そのような従来製品と似た組成を有していてもよいが、一部(望ましくは全て)のショートニングが、柑橘類の果肉繊維と食用脂質、好ましくは前述のような液体油とで置き換えられていてもよい。好ましい一実施形態では、ショートニングは、他の原料と合わせる前に、水と共にホモジナイズされてエマルションが形成されており、場合により、乾燥させてドライブレンド系が形成されている、液体油と柑橘類の果肉繊維との配合物で置き換えられる。実施例において以下に説明するように、これにより、粘度を強化しながら、本デザート系中の飽和脂肪またはトランス脂肪の量を減少させることができる。
【0082】
一実施形態では、本ゲルベースのデザート系は、柑橘類の果肉繊維と食用脂質、好ましくは前述のような液体食用油とを含むドライブレンド系である。このゲルベースのデザート系は、所望のゲルベースのデザート完成品の作製において有用である追加的な乾燥原料も含んでいてもよい。例えば、本ドライブレンド系は、デンプン、甘味料、脱脂乳粉末、塩、着色料および香味料のうち1つまたは複数も含んでいてもよい。例示的な一実施形態では、本ドライブレンド系は、SFC0が5重量%未満の液体食用油;柑橘類の果肉繊維に対する油の重量比が約2〜15の柑橘類の果肉繊維;加工コーンスターチなどのデンプン;甘味料、好ましくはショ糖;乾燥脱脂乳粉末;ならびに、適当な着色料および香味料を含んでいる。そのようなドライミックスは、従来の様式で、消費者が乳および/または水を加え、結果として得られる食品系を加熱調理することにより調製できるプディングミックスとして販売してもよい。食品系を加熱する必要のない即席プディングドライブレンド系を作製するには、加工デンプンはアルファ化デンプンであってもよい。
【0083】
本開示による1つのゲルベースのデザート系は、本開示のプレブレンド系を使用して作製される、そのまま食べられる(ready−to−eat)完成形のプディング製品である。そのようなプディング製品は、好ましくは、10回以上の凍結/解凍サイクル後であってもプディング製品中の油の目に見える合体を回避する凍結/解凍安定性のあるものであってもよい。さらに、それは、望ましくは、少なくとも約20重量%の水を有し、見かけ粘度(以下の例2を参照のこと)は20℃および10秒−1で少なくとも10,000mPas、例えば、20℃および10秒−1で少なくとも12,000mPasである。例えば、見かけ粘度は、20℃および10秒−1で12,000〜25,000mPas、例えば、20℃および10秒−1で14,000〜20,000mPasであってもよい。
【0084】
これまでに説明したように、本開示のプレブレンド系は、トランス脂肪および飽和脂肪の含有量が低い水素化されていない液体油を使用して形成してもよいが、プディングの作製においては、慣用的に使用される部分的に水素化された油および/またはトロピカル油のショートニングを有効に置き換えることができる。結果として、ある実施形態は、水素化された脂質を含まない、例えば、部分的に水素化された油を含まないが、望ましくは感覚を刺激する品質を有する完成形のプディング製品を提供する。さらなる実施形態は、FDA飽和脂肪酸含有量が、プディング組成物の総脂肪含有量の20%以下、好ましくは15%以下、例えば10%以下である完成形のプディング製品を提供する。
【0085】
本開示のプレブレンドは、ゲルベースのデザート系において有用であるが、広範な他の食品系において使用できる。本開示のプレブレンド系を用いる例示的な食品系としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルコール飲料および非アルコール飲料、ジュース、栄養補助食品などの飲料;アイスクリーム、サワークリーム、コーヒークリーマー(コーヒーホワイトナー)、チーズなどの乳製品;イミテーションチーズ、ソルベ、シャーベット、水氷、非乳製品ベースのデザートなどの非乳製品の製品;レディーミックス(ready mix);肉製品;卵製品;スプレッド;ジャムおよびプリザーブ;アイシング;サラダドレッシング;ソース;薬味;サルサ;油、マヨネーズなど。本開示のプレブレンド系を組み込むことができる食品系の他の非限定的な適当な例は、次のとおりである:ジュースおよびジュース飲料(濃縮ジュースおよびそのまま飲めるジュース(ready to drink juices)および即席ジュース飲料を含む);乳(乳製品、ダイズ、米)および乳ベースの飲料(液体および粉末状);ジャム、ゼリー、プリザーブおよびスプレッド;ディップおよびサルサ;栄養飲料、シェークおよび置換食;そのまま飲めるスムージー、シェークおよび置換食;アルコール飲料ミックス;フルーツスナックおよびセイボリースナック(fruit and savory snacks)、キャンディーおよび菓子;アイシングおよび他の製パン用フィリング;ソース、サラダドレッシングおよび油;コーヒー、コーヒーベース飲料およびクリーマー(即席および液体)。
【実施例】
【0086】
以下は、前述の望ましい特徴を実証する、柑橘類の果肉繊維と食用脂質との多様な配合物を含有するプレブレンド系および食品系の例である。これらの例は、本開示を例証し、その作製および使用において当業者を補助するために示すものである。この例は、本開示の範囲を他の点で限定することを決して意図していない。例えば、いくつかの例では乳製品のプディング系について述べるが、そのような例では、非乳製品のプディングおよび乳製品および非乳製品のヨーグルトのようなゲルベースのデザート系など、他の食品系において実現化できる本開示のプレブレンドの利点を強調する。
【0087】
例1
プレブレンド系
この例では、凍結乾燥したドライブレンド系など、一定の有用なプレブレンド系について記載する。表1に記載のように、異なる比率の食用油と柑橘類の果肉繊維と水とを用いて、一連の6つの配合物を調製した。油は、CargillからCLEAR VALLEY65の商標で市販されている、SFC0が5重量%未満、トランス脂肪が3%未満、FDA飽和脂肪酸が15%未満の高オレイン酸の菜種油であった。米国特許出願公開第2006/0115564号(特許文献1)に記載のプロセスに従い、柑橘類の果肉繊維(表1において「CPF」と表記)を調製した。
【0088】
【表1】

【0089】
手順:撹拌機(IKA RW28。IKA−Werke GmbH&Co.KG、Staufen、ドイツから入手可能)を用い、塊が目に見えなくなるまで、柑橘類の果肉繊維および水を共に混合した。S25N−25Fアタッチメント付きのT25 Ultra−Turraxホモジナイザー(同じくIKA−Werkeから入手可能)で混合しながら、油を徐々に加えた。配合物が一貫して滑らかになるまで混合を続けた。次に、高圧バルブ・ホモジナイザー(MINI−LAB8.30H。APV Rannie AS、Albertslund、デンマークから入手可能)を約3,000psiで用いて、この油とCPFと水との配合物をホモジナイズした。これにより油中水エマルションが得られ、このエマルションを、ALPHA2−4凍結乾燥機を用いて凍結乾燥させてドライブレンド系を形成した(Martin Christ Gefriertrocknungsanlagen GmbH、Osterode am Harz、ドイツから入手可能)。簡単に取り扱える微細な粉末を得るために、試料の一部の低温製粉(cryo−mill)も行った。
【0090】
試料1.1〜1.3の全てから、視覚的に許容でき、外見上は安定な製品が得られた。試料1.1は油を一切含んでいなかったが、試料1.2および1.3からは、油対柑橘類の果肉繊維の重量比がそれぞれ5:1、10:1のドライブレンド系が得られた。柑橘類の果肉繊維1グラム当たり約15グラムの油を有する試料1.4は、少なくともかろうじて許容できたが、乾燥させると油の一部が合体した。油対柑橘類の果肉繊維の重量比がそれぞれ20:1、25:1である試料1.5および1.6は、乾燥させると相分離を呈し、商品として望ましくないドライブレンド系が得られた。驚くべきことに、柑橘類の果肉繊維のOBCを超える含有量の油を用いても、先に記載の方法を用いて測定した場合に柑橘類の果肉繊維1g当たり油が約10g以下である、少なくともかろうじて許容できるドライブレンド系が得られた。
【0091】
例2
プディング系
例1のドライブレンド系の1つを用いて調製した乳製品のプディング、すなわち、そのまま食べられる(RTE)完成形のプディングを3つの他の調合物と比較した。調合物は4つ全て、表2に示す同じ基本配合を有したが、脂肪成分の性質に関しては異なった。とりわけ、第1の調合物(プディング2A)の脂肪成分は、GOLD CUPの商品名でVandemoortele NV、Gent、ベルギーにより販売されている従来の植物性製パン用ショートニングであった。第2の調合物(プディング2B)中の脂肪成分は、CLEAR VALLEY65キャノーラ油であった。第3の調合物(プディング2C)中の脂肪成分は、例1において試料1.3として作製したドライブレンド系であった。第4且つ最後の調合物(プディング2D)中の脂肪成分は、例1において使用したものと同じ柑橘類の果肉繊維1部当たり10重量部のCLEAR VALLEY65キャノーラ油であったが、例1のプロセスに従ってドライブレンド系を形成するのではなく、これらの成分を別々に加えた。
【0092】
【表2】

【0093】
プディングの調製:練乳と90%(308.8g)の水とを混合してから塩、糖およびデンプンを加えることにより、コールドプレミックスを調製した。IKA−Werkeミキサーを500rpmで用い、低速で5分間混合しながらナトリウムステロイルラクチレートを脂肪成分に加えることにより、ホットプレミックスを調製した。二重ジャケット式容器を用いて、プディング2A中で使用するショートニングを10分かけて50℃の温度に加熱してから、ナトリウムステロイルラクチレートを加えた。ミキサーの速度を700rpmに上げ、混合物を10分かけて70℃に加熱しながら、残り10%(34.3g)の水を加えた。次に、例1のMINI−LAB8.30Hホモジナイザーを用いて、プディング2Aおよび2B(柑橘類の果肉繊維を含まない)を50バールでホモジナイズしたが、プディング2Cおよび2D(これらは柑橘類の果肉繊維を含んでいた)はホモジナイズしなかった。コールドプレミックスとホットプレミックスとを共に混合し、二重ジャケット式容器を用い、5分かけて90℃に加熱した。結果として得られるプディングそれぞれの30ml分を、凍結−解凍安定性試験用に別々の50mlメスシリンダー中に入れ、各プディングの残りは、冷まして冷蔵庫の中で一晩保管してから粘度を測定した。
【0094】
凍結−解凍安定性:完成形のプディングの4つのメスシリンダーを一晩(17:00〜09:00)−18℃で保管してから、20℃で日中(09:00〜17:00)最大10サイクルにわたり解凍させた。毎日、4つのプディング調合物を検査して、油の小滴がプディング中に見えないかどうかを確認した。キャノーラ油のみを含んでいるプディング2bは凍結−解凍安定性に乏しく、3日目に目に見える油の小滴を観察した後、試験を中止した。他の3つの試料では、10日間の試験期間にわたり目に見える油の小滴は一切生じなかった。このことは、ショートニング(第1のプディングにおいて見られるような)の代わりに固体脂肪含有量が低い(例えば、第2のプディングにおいて見られるような、5未満のより低いSFC0)液体油を含んでいる食品系からは、一般的に、商品として望ましくない完成形のプディングが作製されるという、当技術分野における一般的な理解と一致する。
【0095】
粘度測定:デンプンのセル構造(cell geometry)を用い、Physica MCR300流量計(Physica Messtechnik GmbH、Stuttgart、ドイツから入手可能)で、4つのプディングそれぞれの見かけ粘度を測定した。温度を20℃に設定し、せん断速度を0.1〜100秒−1の間で変化させた。せん断速度が10秒−1の条件では、4つのプディング調合物について測定した見かけ粘度は次のとおりであった:プディング2A(植物性ショートニング)の見かけ粘度は14,530mPasであり、プディング2B(キャノーラ油のみ)の見かけ粘度は13,300mPasであり、プディング2C(例1のドライブレンド系)の見かけ粘度は25,620mPasであり、プディング2D(キャノーラ油および柑橘類の果肉繊維を別々の原料として加えた)の見かけ粘度は19,570mPasであった。
【0096】
これらの結果は、いくつかの点で興味深い。まず、液体油のみを含有するプディングの見かけ粘度は、従来のショートニングベースのプディングの粘度より低く、あまり望ましくない口当たりが得られると予想できる。最初にドライブレンドを形成しない、柑橘類の果肉繊維と油とを含んでいるプディング2Dからは、第1の2つのプディング調合物両方と比較して見かけ粘度の顕著な増加が得られた。例1で調製したプレブレンド系を含んでいるプディング2Cは、プディング2Dと本質的に同じ組成を有していたが、30%超高い見かけ粘度測定値が得られた。
【0097】
このことから、液体油と柑橘類の果肉繊維とを含んでいる本開示によるプレブレンド系は、食品系(例えば、ゲルベースのデザート系)における粘度の予想外の増加を得ることができることが実証される。これにより、今度は、食品メーカーが、粘度を犠牲にせずにゲルベースのデザート系の脂肪含有量を減らし、または、ゲルベースのデザート系中の他の粘度向上剤を減少若しくはさらには排除し、潜在的にコストを削減し、および/または製品ラベル上に記載しなければならない原料数を減らすことが可能になると考えられる。さらに、この実験から、本開示によるドライブレンド系は、ゲルベースのデザート系中の植物性ショートニングおよび他の可塑性脂肪を置き換えるために、構造化脂肪系として使用できることも実証される。
【0098】
例3
代替的なドライブレンド系
この例は、流動層乾燥機を用いて調製したドライブレンド系など一定の有用なプレブレンド系について記載するものである。4つの試験それぞれについて、柑橘類の果肉繊維、食用油および水を使用してウェットブレンド系を調製した。油は、CargillからCLEAR VALLEY75の商標で市販されている、SFC0が5重量%未満、トランス脂肪が3%未満、FDA飽和脂肪酸が15%未満の高オレイン酸の菜種油であった。柑橘類の果肉繊維は、Fiberstar,Inc.、Willmar、Minnesota、USAからCITRI−FI 100M40の商品名で市販されている。次に、表3に記載のように、担体としてさまざまな量の微粒子デンプンを使用して、このウェットブレンド系を流動層中で乾燥させた。各ケースにおいて、微粒子担体は約40重量%のPOLARTEX05735および約60重量%のPOLARTEX06754であったが、その両方とも、Cargillから市販されている食品用加工デンプンである。
【0099】
【表3】

【0100】
手順:4つの2,000gのバッチのウェットブレンド系を調製した。各バッチについて、実験室用の撹拌機(Silverson Machines,Inc.、East Longmeadow、Massachusetts、US)を用いて、塊が存在しなくなるまで、柑橘類の果肉繊維45.5gを1500gの水と混合した。次に、454.5gのキャノーラ油を撹拌しながら加え、撹拌は、一貫して滑らかな状態が得られるまで続けた。次に、高圧バルブ・ホモジナイザー(MINI−LAB8.30H。APV Rannie AS、Albertslund、デンマークから入手可能)を約3,000psiで用いてこの配合物をホモジナイズすると、約75重量%の水を有し、油対柑橘類の果肉繊維の重量比が約10:1である油中水エマルションが作製された。
【0101】
これらの各エマルションを、異なる量の微粒子デンプン担体上に表3に記載の比率で噴霧することにより、流動層乾燥機中で乾燥させた。乾燥機の入口温度は約30〜50℃であり、出口温度は約60〜70℃であり、ポンプは12U/1.5バールで作動させた。結果として得られる4つのドライブレンド系の組成を表3に記載する。
【0102】
この実験における4つの各試料から、流動可能なドライブレンド系が得られた。
【0103】
例4
例3のドライブレンド系を用いたプディング系
例3で作製したドライブレンド系の1つを用いて調製した乳製品のRTEプディングを、2つの他の調合物と比較した。この調合物を以下の表4に記載する。
【0104】
【表4】

【0105】
プディングの調製:乾燥原料を全て、IKA−Werkeミキサーを500rpmで用いて混合しながら20℃の水に加えた。次に、同じ速度で撹拌し続けながら、二重ジャケット式容器を用いてこの混合物を52℃に加熱した。次に、撹拌し続けながら脂肪成分を加えた。プディング4A中の脂肪組成物は、添加に先立ち50℃で融解させたPA37ショートニングであり、プディング4B中の脂肪組成物はCLEAR VALLEY75キャノーラ油であり、プディング4C中の脂肪組成物は実験3のドライブレンド系試料番号3.1であった。同じ二重ジャケット式容器を用いてこの組成物を85℃に加熱し、同温度で5分間維持した。結果として得られる各プディングの一部を別々のカップの中に入れ、室温に冷却させてから、冷蔵庫の中で保管した。
【0106】
評価:Stable Micro Systems,Ltd.、Surrey、英国により販売されているTA.XTplusブランドの質感分析装置(texture analyzer)を用いて、各プディングの表面を貫くのに必要な力を測定した。この分析装置に、直径20mmの円柱形のスピンドルプローブを取り付けた。プローブを、試料に、約20mmにわたり1mm/秒の速度で侵入させ、これに必要な力を記録した。引き金の力は10gに設定した。測定中の試料温度は20℃であった。表5には、測定した力を掲載する。
【0107】
【表5】

【0108】
これらの結果は、前述の例2の結果と一致する。従来のショートニングベースのプディング4Aは、3つの試料のうち粘度が最低であった。油と柑橘類の果肉繊維とを別々に加えたプディング4Bの粘度は、プディング4Aの粘度より10%超高く、これにより、本発明の実施形態によるゲルベースのデザート系は、ショートニングが有するトランス脂肪または飽和脂肪の欠点を伴わずに、従来の調合物に匹敵するまたはそれに優るできばえを達成できることが実証された。本発明のさらなる一実施形態によるドライブレンド系を用いたプディング4Cは、さらにより粘性が高く、粘度測定値は、プディング4Aのものより40%超高かった。このことから、a)ショートニングを使用する従来のショートニング配合のプディング系も、また、さらにより驚くべきことにはb)水とホモジナイズしてプレブレンド系を形成する代わりに、他の原料と混合する前に油と柑橘類の果肉繊維とを別々に加える代替的な柑橘類の果肉繊維ベースの実施形態も上回る、粘性の顕著な改善が再度強調される。
【0109】
本明細書を通じ多くの箇所で、いくつかの米国特許、公開された外国特許出願および公開された技術論文を参照している。そのような引用文書は全て、本明細書に完全に記載されている場合と同様に、本開示に明示的に完全に組み込まれる。
【0110】
本明細書および添付の特許請求の範囲を目的とした場合、特に指示しない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用する量、パーセンテージまたは比率、および他の数値を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」により修飾されていると理解されたい。したがって、そうでないことが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数的パラメーターは、本開示により得られることを目指した所望の特性次第で変化する可能性のある近似値である。最低でも、また、特許請求の範囲との等価物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、各数的パラメーターは、少なくとも、報告された有効桁の数に照らして、また、通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0111】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、1つの指示物に明示的および明確に限定しない限り、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の指示物を包含することに注意する。したがって、例えば、「タンパク質(a protein)」と言った場合は、2つ以上の異なるタンパク質が包含される。本明細書において使用する場合、用語「としては〜が挙げられる、〜を含んでいる(include)」およびその文法的な変化形は、非限定的であることを意図していることから、リスト中で品目が列挙されていても、記載された品目に置き換えまたは追加することができる他の同様の品目は除外されない。
【0112】
見出しは、本明細書において使用する場合、純粋に構成上の目的のためのものであり、非限定的であることを意図していることから、ある見出しの下で品目が列挙されていても、その箇所で論じる品目に置き換えまたは追加することができる他の同様の品目は除外されないことにも注意する。
【0113】
本発明は、その実行において相当な変化を受け入れる余地がある。したがって、前述の説明は、本発明を、本明細書において前述した特定の実例に限定することを意図したものではなく、限定するものとして解釈されるべきではない。逆に、包含することを意図したものは、次に記載する特許請求の範囲に記載したとおりであり、また、法律上容認されるその等価物である。
【0114】
出願人らは、開示した実施形態の一切を、一般に、また、開示した一切の改変形または変形を特許請求の範囲内に文字どおり含むことができない程度まで捧げることを意図してはおらず、そのような改変形または変形は、等価物の原則の下で本発明の一部であると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
柑橘類の果肉繊維(pulp fiber)と食用脂質(edible lipid)と水とを含んでいる配合物をホモジナイズして、柑橘類の果肉繊維1重量部当たり1〜20重量部の脂質を含んでいるホモジナイズされた配合物を形成すること、および
前記ホモジナイズされた組成物を乾燥させてドライブレンド系を形成すること、
を含む、食品を形成する方法。
【請求項2】
前記ホモジナイズされた組成物の乾燥が、さらなる原料の存在下で前記ホモジナイズされた組成物を乾燥させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホモジナイズされた組成物の乾燥が、デンプンおよび甘味料のうち少なくとも1つの存在下で前記ホモジナイズされた組成物を乾燥させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ホモジナイズされた組成物の乾燥が、前記ホモジナイズされた組成物と、デンプンおよび甘味料のうち少なくとも1つとを流動層乾燥機に加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドライブレンド系を、水、水混和性の液体、水非混和性の液体およびマイクロエマルションのうち少なくとも1つを含む液体系と混合して食品系を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ドライブレンド系を甘味料およびデンプンと混合してゲルベースのデザート系を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲルベースのデザート系がドライブレンド系である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ドライブレンド系を、甘味料、デンプン、および水または乳のうち少なくとも1つと混合して、少なくとも約20重量%の水を含み、20℃および10秒−1で少なくとも約10,000mPasの粘度を有するゲルベースのデザート完成品を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記柑橘類の果肉繊維が、柑橘類の果肉繊維1グラム当たり約7gの水〜約25gの水の水結合能と、柑橘類の果肉繊維1グラム当たり約1.5gの油〜約10gの油の油結合能とを有する、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
柑橘類の果肉繊維と、固体脂肪含有量が0℃で5重量%以下である食用油とを含むドライブレンド系であって、水と、前記柑橘類の果肉繊維と、前記柑橘類の果肉繊維1グラム当たり1〜20グラムの前記食用油とを含んでいる配合物をホモジナイズし、そしてホモジナイズされた配合物を乾燥させることによって製造されたドライブレンド系。
【請求項11】
デンプンおよび甘味料のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項10に記載のドライブレンド系。
【請求項12】
デンプンおよび甘味料のうち少なくとも1つをさらに含み、前記ホモジナイズされた配合物の乾燥が、デンプンおよび/または甘味料の存在下で前記ホモジナイズされた組成物を乾燥させることを含む、請求項10に記載のドライブレンド系。
【請求項13】
以下:
柑橘類の果肉繊維と食用脂質と水とをホモジナイズしてプレブレンド系を形成すること、および、その後、
前記プレブレンド系の少なくとも一部を甘味料およびデンプンと混合すること、
を含む、ゲルベースのデザート系を作製する方法。
【請求項14】
前記プレブレンド系を乾燥させてドライブレンド系を形成することをさらに含み、プレブレンド系の少なくとも一部を混合する前記ステップが、前記ドライブレンド系を前記デンプン、前記甘味料および水と混合することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記食用脂質が、固体脂肪含有量が0℃で5重量%以下の食用油である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記食用脂質が、約2%以下のトランス脂肪と約20%未満のFDA飽和脂肪酸(FDA saturate)とを含有する食用油である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記食用油が、2つの異なる油の混合物であり、前記油の少なくとも1つが、菜種油、ダイズ油、コーン油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油およびオリーブ油から成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記食用脂質が、約20%以下のFDA飽和脂肪酸を含有する水素化されていない食用油である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
以下:
柑橘類の果肉繊維と、水と、固体脂肪含有量が0℃で5重量%以下である食用油とを含むエマルションを形成すること、
前記エマルションを、甘味料およびデンプンのうち少なくとも1つを含む第2の成分と接触させること、および
前記エマルションおよび第2の成分を合計含水量10重量%以下に乾燥させること、
を含む、ドライブレンド系であるゲルベースのデザート系を作製する方法。
【請求項20】
見かけ粘度が、20℃および10秒−1で少なくとも約10,000mPasであるゲルベースのデザート製品であって、以下:
柑橘類の果肉繊維と食用油とを含み、固体脂肪含有量が0℃で5重量%以下である構造化脂肪(structured fat)成分、
水、および
食用デンプン、
を含み、FDA飽和脂肪酸含有量が、ゲルベースのデザート製品の総脂肪含有量の20%以下である、ゲルベースのデザート製品。
【請求項21】
水素化された脂質を含まない、請求項20に記載のゲルベースのデザート製品。
【請求項22】
前記食用油が、水素化されていない植物油を含む、請求項20に記載のゲルベースのデザート製品。
【請求項23】
前記食用油が、菜種油、ダイズ油、コーン油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油およびオリーブ油から成る群から選択される少なくとも1つの水素化されていない植物油を含む、請求項20に記載のゲルベースのデザート製品。
【請求項24】
前記柑橘類の果肉繊維が、柑橘類の果肉繊維1グラム当たり約7gの水〜約25gの水の水結合能と、柑橘類の果肉繊維1グラム当たり約1.5gの油〜約10gの油の油結合能とを有する、請求項20に記載のゲルベースのデザート製品。

【公表番号】特表2012−517809(P2012−517809A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550252(P2011−550252)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024015
【国際公開番号】WO2010/093864
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】