柱体昇降作業装置
【課題】操作性を向上することができるとともに、構造を簡素化して、軽量化を図り、コストを低減することができる柱体昇降作業装置を提供する。
【解決手段】柱体11の周りに装着される環状機枠13の上部フレーム13aの端部に回転軸14によって上部駆動輪15を取り付ける。前記環状機枠13のウエイト部13bの下端部にアーム部13cを設け、そのアーム部13cの先端部に回転軸16によって下部駆動輪17を装着する。前記環状機枠13の重量中心Oの位置をウエイト部13bに位置するように設定する。環状機枠13の重量中心Oに作用する重量M・g(Mは質量、gは重力加速度)によって、前記上部駆動輪15及び下部駆動輪17が柱体11の外周面に押圧される。このため、柱体11の外周面と上部駆動輪15及び下部駆動輪17の外周面との接触部に摩擦抵抗が作用し、昇降作業装置12が柱体11の外周面から滑り落ちることなく昇降動作される。
【解決手段】柱体11の周りに装着される環状機枠13の上部フレーム13aの端部に回転軸14によって上部駆動輪15を取り付ける。前記環状機枠13のウエイト部13bの下端部にアーム部13cを設け、そのアーム部13cの先端部に回転軸16によって下部駆動輪17を装着する。前記環状機枠13の重量中心Oの位置をウエイト部13bに位置するように設定する。環状機枠13の重量中心Oに作用する重量M・g(Mは質量、gは重力加速度)によって、前記上部駆動輪15及び下部駆動輪17が柱体11の外周面に押圧される。このため、柱体11の外周面と上部駆動輪15及び下部駆動輪17の外周面との接触部に摩擦抵抗が作用し、昇降作業装置12が柱体11の外周面から滑り落ちることなく昇降動作される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱体昇降作業装置に係り、詳しくは例えば樹幹、電柱あるいは各種の柱などの柱体に沿って昇降動作して、例えば枝打ち作業やその他の作業を行うようにした柱体昇降作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の枝打機として、特許文献1に開示されたものが提案されている。この枝打機は、駆動輪を含む主輪を取り付けたフレームと、フレームの左右に開閉可能に枢着される開閉アームと、副輪を取り付けてフレームの左右端に開閉アームの開閉と連動して開閉可能に枢着される巻付きアームとを備ている。そして、前記開閉アームを開いて、巻付きアームを閉じて、主輪と副輪とで幹を抱き締めるようになっている。さらに、前記開閉アームと巻付きアームとを高応答性弾性材で引っ張り、かつ開閉アーム同士を小ばね定数大弾発力弾性材で押し開いて主輪と副輪とによる幹への抱き締め力を発生させるようになっている。
【特許文献1】特開2000−205931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の枝打機は、主輪と副輪とを幹の外周面に押し付けるために高応答性弾性材及び大弾発力弾性材を使用しなければならないので、幹に対し枝打機を装着する際には、手動により前記巻付きアームに大きな力を働かせる必要があるので、操作性が低下し、一人では使用することが難しいという問題があった。又、前記弾性材に耐えるだけの剛性を有するフレーム、開閉アーム及び開閉アームを使用しなければならないので、それらの重量を軽減することができず、部品点数も多くなって構造が複雑となり、コストの低減を図ることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、操作性を向上することができるとともに、構造を簡素化して、軽量化を図り、コストを低減することができる柱体昇降作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、柱体に対しその外周面を取り巻くように脱着される環状機枠の上部に対し、前記外周面を転動する上部主車輪を取り付けるとともに、環状機枠の下部に対し前記外周面を転動する下部主車輪を前記上部主車輪と前記柱体を挟んで反対側に位置するように取り付け、前記環状機枠に対し前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を駆動する駆動機構を設け、同じく前記環状機枠に所定の作業を行う作業機を設け、前記環状機枠の重量中心の位置を、前記下部主車輪側において該下部主車輪よりも外側に設定したことを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記環状機枠には前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を前記柱体の直径方向に位置調整するための主車輪位置調整機構が設けられていることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記環状機枠には上部主車輪の下方に位置して柱体の外周面を転動する下部補助車輪及び前記下部主車輪の上方に位置して柱体の外周面を転動する上部補助車輪の少なくともいずれか一方が装着され、それらの補助車輪は、付勢機構により前記柱体の外周面にそれぞれ押圧されるように構成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2において、前記上部主車輪は一箇所又は二箇所に設けられ、前記下部主車輪は二箇所又は一箇所に設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3において、前記環状機枠には、前記上部主車輪が第1上部主車輪及び第2上部主車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部主車輪が第1下部主車輪及び第2下部主車輪として二箇所に設けられ、前記上部補助車輪が第1上部補助車輪及び第2上部補助車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部補助車輪が第1下部補助車輪及び第2下部補助車輪として二箇所に設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構により柱体の直径方向に位置調整される複数の可動支持体には、固定アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各固定アームの先端部には前記主車輪がそれぞれ装着され、前記各可動支持体には、揺動アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各揺動アームの先端部には前記補助車輪がそれぞれ取り付けられ、前記各揺動アームは、前記付勢機構により柱体に接近するように付勢されていることを要旨とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記各固定アームの先端部には前記主車輪の進行方向をそれぞれ変更する操舵機構が設けられていることを要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記各揺動アームの先端部には、前記補助車輪の進行方向を前記主車輪の操舵角度の変更に応じて前記主車輪とほぼ平行状態に変更する操舵機構がそれぞれ設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構は、前記柱体の直径寸法又は柱体に対する環状機枠の傾斜角度を演算し、これらの演算値に基づいてサーボモータにより前記主車輪の位置を制御するように構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項において、前記主車輪の駆動機構は、サーボモータにより回転されるウォームと、前記主車輪の回転軸に連結され、かつ前記ウォームに噛み合われたウォームホィールとにより構成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項11に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか一項において、前記各主車輪位置調整機構は、共通の手動操作ハンドル又は共通のサーボモータによって同期して調整されるように構成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜6、10,11のいずれか一項において、前記環状機枠には、作業機としての枝打ち機構が柱体としての樹幹の周方向に旋回可能に装着されていることを要旨とする。
【0015】
請求項13に記載の発明は、請求項7〜9のいずれか一項において、前記環状機枠には作業機としての枝打ち機構が装着されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、柱体から環状機枠が滑り落ちないようにするための付勢機構が不要となるので、柱体に対する環状機枠の脱着が容易となり、操作性を向上することができるとともに、構造を簡素化して、軽量化を図り、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した柱体昇降作業装置の一実施形態を図面に従って説明する。
最初に、柱体11を昇降する柱体昇降作業装置12の原理を図1及び図2に基づいて説明する。
【0018】
この柱体昇降作業装置12は、前記柱体11の外周に取り外し可能に装着される環状機枠13を備えている。この環状機枠13は環状の上部フレーム13aと、その一部に下方に指向するように連結されたウエイト部13bと、ウエイト部13bの下端部に前記柱体11に向かって一体に形成されたアーム部13cとにより構成されている。前記上部フレーム13aの一部(左側)には回転軸14により前記柱体11の表面を転動する上部駆動輪15が装着され、前記アーム部13cの先端には回転軸16により前記柱体11の表面を転動する下部駆動輪17が装着されている。前記上部及び下部駆動輪15,17は、図示しない駆動機構により回転駆動されるようになっている。図2に示すように前記上部フレーム13aには、支持軸18により従動輪19,20が180°隔てて装着され、前記上部及び下部駆動輪15,17と協働して柱体昇降作業装置12が柱体11に沿って安定して昇降することができるようにしている。
【0019】
前記環状機枠13には図示しないが、例えば、チェーンソーを備えた枝打ち機構あるいはその他の例えば清掃作業等を行う作業機が前記柱体11の周りを旋回可能に装着されている。
【0020】
次に、前記柱体昇降作業装置12が柱体11の表面に沿って昇降する原理について説明する。
前記柱体昇降作業装置12全体の重量中心Oは、前記柱体11の外部において前記下部駆動輪17よりも外側の前記ウエイト部13bに設定されている。柱体昇降作業装置12の重量M・g(Mは質量、gは重力加速度)が前記重量中心Oに作用すると、柱体11と、上部及び下部駆動輪15,17との接触点で押付力の反力として、上部でF1、下部でF2が環状機枠13に作用し、これにより、上部でμ1・F1、下部でμ2・F2の摩擦力が発生する。ここで、μ1,μ2は、摩擦係数である。このとき、力とモーメントの釣り合い式は、以下のようになる。
【0021】
μ1・F1+μ2・F2=M・g
F1=F2
F1・h−μ1・FD=Mg・w
ただし、Dは柱体11の直径、hは両駆動輪15,17の上下方向の距離、wは柱体11と前記重量中心Oとの水平方向の距離である。説明を簡素化するために、μ1=μ2=μとすると、μ=h/(D+2w)である。このμが上部駆動輪15、下部駆動輪17と柱体11の表面との摩擦係数より小さくなる設定としているので、柱体昇降作業装置12は重量M・gにより滑り落ちることなく、柱体11に沿って昇降することができる。
【0022】
次に、前述した柱体昇降作業装置12の原理を応用した樹幹11Aの枝打ち装置12Aに具体化した一実施形態を図3〜図10に基づいて説明する。
この枝打ち装置12Aの概略構成を図3及び図4に基づいて説明する。図4に示すように、平面視正四角環状の環状機枠13の四隅部に対し、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dが装着されている。前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bには、図3に示すように第1及び第2上部固定アーム22A,22Bが装着され、両アーム22A,22Bの先端部に第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが装着されている。前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2下部固定アーム23A,23Bが装着され、両アーム23A,23Bの先端部に第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが装着されている。
【0023】
前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bには、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bが上下方向の揺動可能に装着され、両アーム25A,25Bの先端部に第1及び第2下部従動輪20A,20Bが装着されている。前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2上部揺動アーム24A,24Bが上下方向の揺動可能に装着され、両アーム24A,24Bの先端部に第1及び第2上部従動輪19A,19Bが装着されている。
【0024】
前記第1及び第2上部揺動アーム24A,24B、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bは、コイルバネ26によりそれぞれ樹幹11Aに接近する方向に付勢されている。前記環状機枠13には、前記第1及び第2下部駆動輪17A,17Bと対応するようにウエイト部13bが設けられている。従って、前記ウエイト部13bによって前記第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが樹幹11Aの表面に押し付けられるとともに、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが樹幹11Aの表面に押し付けられ、枝打ち装置12Aが樹幹11Aから滑り落ちないようにしている。
【0025】
次に、枝打ち装置12Aの具体的構成を図5〜図10に基づいて説明する。
最初に、前記環状機枠13の構成について説明する。この環状機枠13は図9及び図10に示すように、ヒンジ機構27によって水平方向の開閉可能に連結された平面視コ字状の第1及び第2フレーム28,29によって、前記樹幹11Aの周囲に脱着可能に構成されている。前記第1及び第2フレーム28,29の前記ヒンジ機構27と反対側の両端部には、該両端部を互いに連結するための連結機構30が設けられている。この連結機構30は、第1フレーム28の端部に形成されたネジ孔28aに、第2フレーム29の端部に設けられた蝶ボルト30Aを螺合することにより第1フレーム28と、第2フレーム29を連結するように構成されている。
【0026】
次に、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dについて説明する。各調整機構21A〜21Dは同様に構成されているので、図6〜図8に基づいて、第1車輪位置調整機構21Aについて説明する。
【0027】
図6に示すように、前記環状機枠13の隅部には、取付台座31を介して案内ロッド32が水平に支持固定され、この案内ロッド32と平行にボールねじ33が前記取付台座31に回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の先端部は、前記案内ロッド32の先端に固定した連結板34によって回転可能に支持されている。前記案内ロッド32及びボールねじ33には、該ボールねじ33に螺合されたボールねじナットを有する可動支持体35が水平方向の往復移動可能に支持されている。前記可動支持体35には支持軸36が貫通固定され、この支持軸36に前記第1上部駆動輪15Aを装着した第1上部固定アーム22Aが連結されている。前記支持軸36には、前記第1下部従動輪20Aを装着した第1下部揺動アーム25Aが上下方向の往復揺動可能に装着され、図7示すコイルバネ26によって前記樹幹11Aに接近するように付勢されている。
【0028】
前記環状機枠13の隅部には、ウォーム37が回転軸38によって回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の基端部には前記ウォーム37に噛み合わされたウォームホィール39が連結され、前記回転軸38には上下二段にプーリ40が嵌合されている。そして、前記プーリ40が回転されると、ウォーム37、ウォームホィール39及びボールねじ33が回転され、前記可動支持体35が水平方向に往復移動され、前記第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの水平方向の位置が調整されるようにしている。
【0029】
図8に示すように、前記ヒンジ機構27には前記プーリ40を回転するための手動操作機構41が設けられている。該機構41とヒンジ機構27に共通の回転軸42には第1及び第2タイミングプーリ43,44が嵌合され、操作ハンドル45によって回動可能になっている。前記第1タイミングプーリ43と前記第1車輪位置調整機構21Aの上部のプーリ40との間には、第1タイミングベルト46が掛装され、第1車輪位置調整機構21Aのプーリ40を回転するようになっている。又、前記第1車輪位置調整機構21Aの下部のプーリ40と、第2車輪位置調整機構21Bのプーリ40との間には、第2タイミングベルト47が掛装され、該プーリ40を回転するようになっている。同様に、前記第2タイミングプーリ44と第3車輪位置調整機構21Cの下部のプーリ40とに掛装された第3タイミングベルト48によって、該プーリ40が回転されるようになっている。さらに、第3車輪位置調整機構21Cの上部のプーリ40と、第4車輪位置調整機構21Dのプーリ40とに掛装されたタイミングベルト49によって該プーリ40が回転されるようになっている。
【0030】
従って、前記操作ハンドル45が手動により回転されると、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dのそれぞれの可動支持体35が同期して移動され、図5に示す駆動輪15A,15B、17A,17B及び従動輪19A,19B,20A,20Bの位置が調整される。
【0031】
図6に示すように、第1上部固定アーム22Aに装着された第1上部駆動輪15Aは、第1上部固定アーム22Aの先端部に固定された取付台座51に回転可能に支持された回転軸52、該回転軸52の外周面に嵌合したウォーム53、前記回転軸52を回転するサーボモータ54及び前記回転軸14に嵌合され、かつ前記ウォーム53に噛み合わされたウォームホィール55によって回転されるようになっている。
【0032】
次に、図5に基づいて、前記環状機枠13に装着された枝払い機構60について説明する。
この枝払い機構60は、前記環状機枠13を構成する第1及び第2フレーム28,29の上面に対し、複数の支持ロッド61により支持された上下二段の環状リング62を備えている。この環状リング62は半円弧状に分割され、ヒンジ機構63により前記第1及び第2フレーム28,29の開閉動作に同期して開閉されるようになっている。前記両環状リング62には、旋回支持体64が環状リング62に沿って円周方向に往復旋回可能に装着されている。この旋回支持体64には旋回駆動源としてのサーボモータ65が装着され、このサーボモータ65にはチェーンソー67を備えた枝払い機構66が装着され、モータ65によりチェーンソー67を周回駆動するようにしている。
図5に鎖線で示すように、前記環状機枠13の第1フレーム28には、前記サーボモータ54、65を駆動する蓄電池や制御機器を収容した制御ボックス68が設けられている。この制御ボックス68の重量は、図4に示すウエイト部13bの機能を有するものである。そして、前記旋回支持体64が図5に示すように制御ボックス68から最も離隔された状態においても図3において、両駆動輪15A,15B及び駆動輪17A,17Bが樹幹11Aに適度に押し付けられるようにしている。
【0033】
前述したサーボモータ54,65の起動又は停止動作は、地上から延長コードを用いて遠隔操作されるようになっているが、無線交信により遠隔操作するように構成してもよい。
次に、前記のように構成された枝打ち装置12Aの動作について説明する。
【0034】
図9及び図10においては、前記枝払い機構60が省略されている。前記環状機枠13を樹幹11Aに装着する場合には、図9に示すように前記連結機構30の蝶ボルト30Aをネジ孔28aから取り外して、ヒンジ機構27を中心に第1及び第2フレーム28,29を開放し、樹幹11Aの外周に、第1及び第2フレーム28,29を図10に示すように装着して、連結機構30の蝶ボルト30Aを第1フレーム28のネジ孔28aに螺合する。又、前記手動操作機構41の操作ハンドル45を回動することにより、前記第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dのボールねじ33を回動し、前記第1及び第2上部固定アーム22A,22B、第1及び第2下部固定アーム23A,23B、第1及び第2上部揺動アーム24A,24B及び第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bを樹幹11Aに向かって移動する。そして、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bを樹幹11Aの外周面に接触させる。
【0035】
この状態で前記サーボモータ54を起動して、回転軸52及びウォーム53を回転すると、前記ウォームホィール55及び回転軸14を介して、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bがそれぞれ回転され、枝打ち装置12Aが樹幹11Aに沿って上方に移動される。この枝打ち装置12Aの上昇動作と同期して、前記枝払い機構60のサーボモータ65が作動され、チェーンソー67が作動されるとともに、旋回支持体64が環状リング62に沿って円周方向に旋回される。従って、枝打ち装置12Aの上昇の動作が行われると共に、チェーンソー67によって、樹幹11Aから張り出した枝が切り落とされる。
【0036】
樹幹11Aの枝の切り落とし動作が終了すると、前記サーボモータ65が停止されるとともに、サーボモータ54が逆方向に回転され、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが逆方向に回転され、枝打ち装置12Aは、樹幹11Aに沿って下方に移動される。
【0037】
上記実施形態の柱体昇降作業装置12及び枝打ち装置12Aによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、図1に示すように環状機枠13に対し回転軸14により上部駆動輪15を装着し、アーム部13cに回転軸16により下部駆動輪17を装着し、環状機枠13にウエイト部13bを設け、ウエイト部13bの重量中心Oを、前記下部駆動輪17の外側方に設定した。このため、柱体11の外周面に対し上部及び下部駆動輪15,17が所定の押圧力によって押し付けられることになり、柱体11の外周面に対し柱体昇降作業装置12の上部及び下部駆動輪15,17が所定の摩擦力によって滑り落ちるのが防止される。従って、従来必要であった上部及び下部駆動輪15,17を柱体11の外周面に強い力で押し付けるための付勢機構が不要となり、柱体昇降作業装置12の部品点数を低減して、軽量化を図ることができるとともに、装置12を一人の作業者によって容易に使用することもできる。
【0038】
(2)上記実施形態では、図6及び図7に示すように、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bの位置を調節する第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dを設けたので、樹幹11Aの直径寸法が変化した場合に、前記操作ハンドル45を回動することにより、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bの位置を適正位置に容易に調節することができる。
【0039】
(3)上記実施形態では、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bをサーボモータ54、ウォーム53及びウォームホィール55等よりなる動力伝達機構によって回転するようにした。このため、サーボモータ54が停止された状態で、両上部駆動輪15A,15B、両下部駆動輪17A,17Bの回転が停止される。従って、専用のブレーキ機構を設ける必要がなく、構造を簡素化して、この点からも軽量化を図ることができる。
【0040】
次に、この発明の別の実施形態を図11〜図13に基づいて説明する。
この実施形態においては、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17B、第1及び第2上部従動輪19A,19B、第1及び第2下部従動輪20A,20Bの進行方向を変更する操舵機構71を設けたものである。この操舵機構71について説明する。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記取付台座51に連結された回動軸72が図13(a)に示すように回転可能に支持され、この回動軸72にはホィール73が嵌合されている。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記ホィール73に噛み合わされるウォーム74を支持する回転軸75が支持されている。図12に示すように前記可動支持体35にはサーボモータ76が取り付けられ、その回転軸77と前記回転軸75との間には、タイミングベルト78を備えたベルト伝動機構79が設けられている。
【0041】
前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記第1下部従動輪20Aを装着した回動支持体81が回転支持軸82によって往復回動可能に装着されている。前記回転支持軸82には図13(b)に示すようにウォームホィール83が取り付けられ、前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記ウォームホィール83に噛み合わされるウォーム84が回転軸85によって回転可能に支持されている。前記回転軸85と前記サーボモータ76の回転軸77との間には、タイミングベルト86を備えたベルト伝動機構87が設けられている。図11に示すように前記チェーンソー67は、環状機枠13の第1フレーム28側の所定位置に装着されている。前記操作ハンドル45に代えて、サーボモータ91が設けられ、前記回転軸42を回転するようになっている。
【0042】
従って、前記サーボモータ76が駆動されると、前記ベルト伝動機構79,87及びウォーム伝動機構によって、第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの傾き角度が互い平行状態で変更され、枝打ち装置12Aが旋回しながら樹幹11Aに沿って昇降される。
【0043】
上記の実施形態においては、前記支持ロッド61、環状リング62、ヒンジ機構63及び旋回支持体64を省略することができるので、枝払い機構60の構成を簡素化することができ、装置全体の軽量化を図ることができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図5に示す前記操作ハンドル45に代えて、図14に示すようサーボモータ91を用いても良い。この実施形態においては、樹幹11Aの直径が枝打ち装置12Aの上昇とともに、小さくなると、前記サーボモータ91の制御により第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bの位置が調整され、枝打ち装置12Aは、殆ど傾くことなく、樹幹11Aに対する姿勢が適正状態に保持される。このため許容される樹幹11Aの直径の範囲が広くなる。
【0045】
・図11及び図14に示す実施形態においては、前記サーボモータ91の制御は次のようにして行われる。
前記樹幹11Aの直径と、樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度は、第1上部固定アーム22Aと第1下部揺動アーム25Aの関節部に組み込まれ、かつ両アームのなす角度を検出するための角度センサからの検出信号と、サーボモータ91に組み込まれた例えばロータリーエンコーダ等の回転数を検出する回転数センサの検出信号(例えば駆動輪の位置信号)とに基づいて幾何学関係を考慮して後述する方法により演算される。演算された樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度が所定の範囲にあればそのままとし、所定範囲を超えた場合には、サーボモータ91を駆動して、第1上部固定アーム22Aを適正な位置に変位させる。このようにして、枝打ち装置12Aの環状機枠13は、樹幹11Aに対して殆ど傾かないようにその姿勢が制御される。
ここで、図15に基づいて、樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度α及び樹幹11Aの直径xを演算する方法について説明する。
初期状態では、各駆動輪及び従動輪が直径Dの樹幹11Aを接触点が長方形となるように挟んでいるとする。この初期状態から、樹幹11Aの直径Dが変化しxとなったときの状態を幾何学的に考察する。ここで、次の各記号を以下のように定義する。
d1 :第1上部駆動輪15Aの直径、d2 :第1下部従動輪20Aの直径、L1:第1上部固定アーム22Aの長さ、L2:第1下部揺動アーム25Aの長さ、D :初期設定の樹幹11Aの直径、x :樹幹11Aの直径、LAB: 二点A,Bの長さ、:∠AOB(既知)、:∠AOB’(計測値)、:∠LAO (既知)、:∠DAC (既知)、:∠EAC、:∠OAB’、:∠EAB’、:∠DAG(傾き角度)。
【0046】
図15において、△AOB’は二辺OAとOB’の長さが既知で、そのなす角度θが角度センサによって計測できるので、余弦定理より、以下の二つの式が成立する。
【0047】
【数1】
【0048】
【数2】
△
AB ’Kは直角三角形であるから、以下の三つの式が成立する。
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】
【数5】
従って、∠EACは、次の式で求められる。
【0052】
【数6】
△AECは直角三角形であるから、未知の樹幹11Aの直径xは、次の式により演算される。
【0053】
【数7】
また、樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度αは、次の式により演算される。
【0054】
【数8】
従って、上記の方法により演算された未知の樹幹11Aの直径x及び樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度αのいずれか一つのデータに基づいて、前記サーボモータ91を制御することにより、枝打ち装置12Aの環状機枠13が樹幹11Aに対して殆ど傾かないように制御される。
【0055】
・前記第1及び第2上部従動輪19A,19Bを省略してもよい。又、第1及び第2下部従動輪20A,20Bを省略してもよい。さらに、前述した全ての従動輪を省略してもよい。
【0056】
・図4において前記第1及び第2下部駆動輪17A,17Bを一つの下部駆動輪とし、該駆動輪の位置を両輪17A,17Bの間の中央に設定してもよい。又、図4において前記第1及び第2上部駆動輪15A,15Bを一つの上部駆動輪とし、該駆動輪の位置を両輪15A,15Bの間の中央に設定してもよい。
【0057】
・前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bを省略してもよい。又、第3及び第4車輪位置調整期21C,21Dを省略してもよい。さらに、全ての車輪位置調整機構を省略してもよい。
【0058】
・前記上部駆動輪15又は下部駆動輪17のいずれか一方のみを駆動輪としてもよい。
・前記従動輪の操舵機構を省略してもよい。この場合には従動輪に方向性を持たない例えば球体を回転させる構成のものを使用するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の柱体昇降作業装置の原理を示す正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】この発明を枝打ち装置に具体化した一実施形態を示す略体正面図。
【図4】図3の略体平面図。
【図5】枝打ち装置全体を示す斜視図。
【図6】第1車輪位置調整機構、第1上部固定アーム、第1下部揺動アーム及び第1上部駆動輪を示す正面図。
【図7】図6の右側面図。
【図8】第1〜第4車輪位置調整機構の斜視図。
【図9】樹幹に枝打ち装置を装着する動作を説明する斜視図。
【図10】樹幹に枝払い機構を省略した枝打ち装置を装着した状態を示す斜視図。
【図11】この発明の枝打ち装置の別の実施形態を示す斜視図。
【図12】図11の枝打ち装置の操舵機構を示す斜視図。
【図13】(a)及び(b)は、それぞれ図12の操舵機構の部分略体説明図。
【図14】この発明の枝打ち装置の別の実施形態を示す斜視図。
【図15】樹幹の直径が変化した場合の環状機枠の傾斜角度を求める方法を説明する線図。
【符号の説明】
【0060】
O…重量中心、11…柱体、11A…樹幹、13…環状機枠、14,16,38,42,52,75,77,85…回転軸、35…可動支持体、37,53,74,84…ウォーム、39,55,83…ウォームホィール、41…手動操作機構、54,76,91…サーボモータ、71…操舵機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱体昇降作業装置に係り、詳しくは例えば樹幹、電柱あるいは各種の柱などの柱体に沿って昇降動作して、例えば枝打ち作業やその他の作業を行うようにした柱体昇降作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の枝打機として、特許文献1に開示されたものが提案されている。この枝打機は、駆動輪を含む主輪を取り付けたフレームと、フレームの左右に開閉可能に枢着される開閉アームと、副輪を取り付けてフレームの左右端に開閉アームの開閉と連動して開閉可能に枢着される巻付きアームとを備ている。そして、前記開閉アームを開いて、巻付きアームを閉じて、主輪と副輪とで幹を抱き締めるようになっている。さらに、前記開閉アームと巻付きアームとを高応答性弾性材で引っ張り、かつ開閉アーム同士を小ばね定数大弾発力弾性材で押し開いて主輪と副輪とによる幹への抱き締め力を発生させるようになっている。
【特許文献1】特開2000−205931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の枝打機は、主輪と副輪とを幹の外周面に押し付けるために高応答性弾性材及び大弾発力弾性材を使用しなければならないので、幹に対し枝打機を装着する際には、手動により前記巻付きアームに大きな力を働かせる必要があるので、操作性が低下し、一人では使用することが難しいという問題があった。又、前記弾性材に耐えるだけの剛性を有するフレーム、開閉アーム及び開閉アームを使用しなければならないので、それらの重量を軽減することができず、部品点数も多くなって構造が複雑となり、コストの低減を図ることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、操作性を向上することができるとともに、構造を簡素化して、軽量化を図り、コストを低減することができる柱体昇降作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、柱体に対しその外周面を取り巻くように脱着される環状機枠の上部に対し、前記外周面を転動する上部主車輪を取り付けるとともに、環状機枠の下部に対し前記外周面を転動する下部主車輪を前記上部主車輪と前記柱体を挟んで反対側に位置するように取り付け、前記環状機枠に対し前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を駆動する駆動機構を設け、同じく前記環状機枠に所定の作業を行う作業機を設け、前記環状機枠の重量中心の位置を、前記下部主車輪側において該下部主車輪よりも外側に設定したことを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記環状機枠には前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を前記柱体の直径方向に位置調整するための主車輪位置調整機構が設けられていることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記環状機枠には上部主車輪の下方に位置して柱体の外周面を転動する下部補助車輪及び前記下部主車輪の上方に位置して柱体の外周面を転動する上部補助車輪の少なくともいずれか一方が装着され、それらの補助車輪は、付勢機構により前記柱体の外周面にそれぞれ押圧されるように構成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2において、前記上部主車輪は一箇所又は二箇所に設けられ、前記下部主車輪は二箇所又は一箇所に設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3において、前記環状機枠には、前記上部主車輪が第1上部主車輪及び第2上部主車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部主車輪が第1下部主車輪及び第2下部主車輪として二箇所に設けられ、前記上部補助車輪が第1上部補助車輪及び第2上部補助車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部補助車輪が第1下部補助車輪及び第2下部補助車輪として二箇所に設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構により柱体の直径方向に位置調整される複数の可動支持体には、固定アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各固定アームの先端部には前記主車輪がそれぞれ装着され、前記各可動支持体には、揺動アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各揺動アームの先端部には前記補助車輪がそれぞれ取り付けられ、前記各揺動アームは、前記付勢機構により柱体に接近するように付勢されていることを要旨とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記各固定アームの先端部には前記主車輪の進行方向をそれぞれ変更する操舵機構が設けられていることを要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記各揺動アームの先端部には、前記補助車輪の進行方向を前記主車輪の操舵角度の変更に応じて前記主車輪とほぼ平行状態に変更する操舵機構がそれぞれ設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構は、前記柱体の直径寸法又は柱体に対する環状機枠の傾斜角度を演算し、これらの演算値に基づいてサーボモータにより前記主車輪の位置を制御するように構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項において、前記主車輪の駆動機構は、サーボモータにより回転されるウォームと、前記主車輪の回転軸に連結され、かつ前記ウォームに噛み合われたウォームホィールとにより構成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項11に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか一項において、前記各主車輪位置調整機構は、共通の手動操作ハンドル又は共通のサーボモータによって同期して調整されるように構成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜6、10,11のいずれか一項において、前記環状機枠には、作業機としての枝打ち機構が柱体としての樹幹の周方向に旋回可能に装着されていることを要旨とする。
【0015】
請求項13に記載の発明は、請求項7〜9のいずれか一項において、前記環状機枠には作業機としての枝打ち機構が装着されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、柱体から環状機枠が滑り落ちないようにするための付勢機構が不要となるので、柱体に対する環状機枠の脱着が容易となり、操作性を向上することができるとともに、構造を簡素化して、軽量化を図り、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した柱体昇降作業装置の一実施形態を図面に従って説明する。
最初に、柱体11を昇降する柱体昇降作業装置12の原理を図1及び図2に基づいて説明する。
【0018】
この柱体昇降作業装置12は、前記柱体11の外周に取り外し可能に装着される環状機枠13を備えている。この環状機枠13は環状の上部フレーム13aと、その一部に下方に指向するように連結されたウエイト部13bと、ウエイト部13bの下端部に前記柱体11に向かって一体に形成されたアーム部13cとにより構成されている。前記上部フレーム13aの一部(左側)には回転軸14により前記柱体11の表面を転動する上部駆動輪15が装着され、前記アーム部13cの先端には回転軸16により前記柱体11の表面を転動する下部駆動輪17が装着されている。前記上部及び下部駆動輪15,17は、図示しない駆動機構により回転駆動されるようになっている。図2に示すように前記上部フレーム13aには、支持軸18により従動輪19,20が180°隔てて装着され、前記上部及び下部駆動輪15,17と協働して柱体昇降作業装置12が柱体11に沿って安定して昇降することができるようにしている。
【0019】
前記環状機枠13には図示しないが、例えば、チェーンソーを備えた枝打ち機構あるいはその他の例えば清掃作業等を行う作業機が前記柱体11の周りを旋回可能に装着されている。
【0020】
次に、前記柱体昇降作業装置12が柱体11の表面に沿って昇降する原理について説明する。
前記柱体昇降作業装置12全体の重量中心Oは、前記柱体11の外部において前記下部駆動輪17よりも外側の前記ウエイト部13bに設定されている。柱体昇降作業装置12の重量M・g(Mは質量、gは重力加速度)が前記重量中心Oに作用すると、柱体11と、上部及び下部駆動輪15,17との接触点で押付力の反力として、上部でF1、下部でF2が環状機枠13に作用し、これにより、上部でμ1・F1、下部でμ2・F2の摩擦力が発生する。ここで、μ1,μ2は、摩擦係数である。このとき、力とモーメントの釣り合い式は、以下のようになる。
【0021】
μ1・F1+μ2・F2=M・g
F1=F2
F1・h−μ1・FD=Mg・w
ただし、Dは柱体11の直径、hは両駆動輪15,17の上下方向の距離、wは柱体11と前記重量中心Oとの水平方向の距離である。説明を簡素化するために、μ1=μ2=μとすると、μ=h/(D+2w)である。このμが上部駆動輪15、下部駆動輪17と柱体11の表面との摩擦係数より小さくなる設定としているので、柱体昇降作業装置12は重量M・gにより滑り落ちることなく、柱体11に沿って昇降することができる。
【0022】
次に、前述した柱体昇降作業装置12の原理を応用した樹幹11Aの枝打ち装置12Aに具体化した一実施形態を図3〜図10に基づいて説明する。
この枝打ち装置12Aの概略構成を図3及び図4に基づいて説明する。図4に示すように、平面視正四角環状の環状機枠13の四隅部に対し、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dが装着されている。前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bには、図3に示すように第1及び第2上部固定アーム22A,22Bが装着され、両アーム22A,22Bの先端部に第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが装着されている。前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2下部固定アーム23A,23Bが装着され、両アーム23A,23Bの先端部に第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが装着されている。
【0023】
前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bには、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bが上下方向の揺動可能に装着され、両アーム25A,25Bの先端部に第1及び第2下部従動輪20A,20Bが装着されている。前記第3及び第4車輪位置調整機構21C,21Dには、第1及び第2上部揺動アーム24A,24Bが上下方向の揺動可能に装着され、両アーム24A,24Bの先端部に第1及び第2上部従動輪19A,19Bが装着されている。
【0024】
前記第1及び第2上部揺動アーム24A,24B、第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bは、コイルバネ26によりそれぞれ樹幹11Aに接近する方向に付勢されている。前記環状機枠13には、前記第1及び第2下部駆動輪17A,17Bと対応するようにウエイト部13bが設けられている。従って、前記ウエイト部13bによって前記第1及び第2上部駆動輪15A,15Bが樹幹11Aの表面に押し付けられるとともに、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが樹幹11Aの表面に押し付けられ、枝打ち装置12Aが樹幹11Aから滑り落ちないようにしている。
【0025】
次に、枝打ち装置12Aの具体的構成を図5〜図10に基づいて説明する。
最初に、前記環状機枠13の構成について説明する。この環状機枠13は図9及び図10に示すように、ヒンジ機構27によって水平方向の開閉可能に連結された平面視コ字状の第1及び第2フレーム28,29によって、前記樹幹11Aの周囲に脱着可能に構成されている。前記第1及び第2フレーム28,29の前記ヒンジ機構27と反対側の両端部には、該両端部を互いに連結するための連結機構30が設けられている。この連結機構30は、第1フレーム28の端部に形成されたネジ孔28aに、第2フレーム29の端部に設けられた蝶ボルト30Aを螺合することにより第1フレーム28と、第2フレーム29を連結するように構成されている。
【0026】
次に、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dについて説明する。各調整機構21A〜21Dは同様に構成されているので、図6〜図8に基づいて、第1車輪位置調整機構21Aについて説明する。
【0027】
図6に示すように、前記環状機枠13の隅部には、取付台座31を介して案内ロッド32が水平に支持固定され、この案内ロッド32と平行にボールねじ33が前記取付台座31に回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の先端部は、前記案内ロッド32の先端に固定した連結板34によって回転可能に支持されている。前記案内ロッド32及びボールねじ33には、該ボールねじ33に螺合されたボールねじナットを有する可動支持体35が水平方向の往復移動可能に支持されている。前記可動支持体35には支持軸36が貫通固定され、この支持軸36に前記第1上部駆動輪15Aを装着した第1上部固定アーム22Aが連結されている。前記支持軸36には、前記第1下部従動輪20Aを装着した第1下部揺動アーム25Aが上下方向の往復揺動可能に装着され、図7示すコイルバネ26によって前記樹幹11Aに接近するように付勢されている。
【0028】
前記環状機枠13の隅部には、ウォーム37が回転軸38によって回転可能に支持されている。前記ボールねじ33の基端部には前記ウォーム37に噛み合わされたウォームホィール39が連結され、前記回転軸38には上下二段にプーリ40が嵌合されている。そして、前記プーリ40が回転されると、ウォーム37、ウォームホィール39及びボールねじ33が回転され、前記可動支持体35が水平方向に往復移動され、前記第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの水平方向の位置が調整されるようにしている。
【0029】
図8に示すように、前記ヒンジ機構27には前記プーリ40を回転するための手動操作機構41が設けられている。該機構41とヒンジ機構27に共通の回転軸42には第1及び第2タイミングプーリ43,44が嵌合され、操作ハンドル45によって回動可能になっている。前記第1タイミングプーリ43と前記第1車輪位置調整機構21Aの上部のプーリ40との間には、第1タイミングベルト46が掛装され、第1車輪位置調整機構21Aのプーリ40を回転するようになっている。又、前記第1車輪位置調整機構21Aの下部のプーリ40と、第2車輪位置調整機構21Bのプーリ40との間には、第2タイミングベルト47が掛装され、該プーリ40を回転するようになっている。同様に、前記第2タイミングプーリ44と第3車輪位置調整機構21Cの下部のプーリ40とに掛装された第3タイミングベルト48によって、該プーリ40が回転されるようになっている。さらに、第3車輪位置調整機構21Cの上部のプーリ40と、第4車輪位置調整機構21Dのプーリ40とに掛装されたタイミングベルト49によって該プーリ40が回転されるようになっている。
【0030】
従って、前記操作ハンドル45が手動により回転されると、第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dのそれぞれの可動支持体35が同期して移動され、図5に示す駆動輪15A,15B、17A,17B及び従動輪19A,19B,20A,20Bの位置が調整される。
【0031】
図6に示すように、第1上部固定アーム22Aに装着された第1上部駆動輪15Aは、第1上部固定アーム22Aの先端部に固定された取付台座51に回転可能に支持された回転軸52、該回転軸52の外周面に嵌合したウォーム53、前記回転軸52を回転するサーボモータ54及び前記回転軸14に嵌合され、かつ前記ウォーム53に噛み合わされたウォームホィール55によって回転されるようになっている。
【0032】
次に、図5に基づいて、前記環状機枠13に装着された枝払い機構60について説明する。
この枝払い機構60は、前記環状機枠13を構成する第1及び第2フレーム28,29の上面に対し、複数の支持ロッド61により支持された上下二段の環状リング62を備えている。この環状リング62は半円弧状に分割され、ヒンジ機構63により前記第1及び第2フレーム28,29の開閉動作に同期して開閉されるようになっている。前記両環状リング62には、旋回支持体64が環状リング62に沿って円周方向に往復旋回可能に装着されている。この旋回支持体64には旋回駆動源としてのサーボモータ65が装着され、このサーボモータ65にはチェーンソー67を備えた枝払い機構66が装着され、モータ65によりチェーンソー67を周回駆動するようにしている。
図5に鎖線で示すように、前記環状機枠13の第1フレーム28には、前記サーボモータ54、65を駆動する蓄電池や制御機器を収容した制御ボックス68が設けられている。この制御ボックス68の重量は、図4に示すウエイト部13bの機能を有するものである。そして、前記旋回支持体64が図5に示すように制御ボックス68から最も離隔された状態においても図3において、両駆動輪15A,15B及び駆動輪17A,17Bが樹幹11Aに適度に押し付けられるようにしている。
【0033】
前述したサーボモータ54,65の起動又は停止動作は、地上から延長コードを用いて遠隔操作されるようになっているが、無線交信により遠隔操作するように構成してもよい。
次に、前記のように構成された枝打ち装置12Aの動作について説明する。
【0034】
図9及び図10においては、前記枝払い機構60が省略されている。前記環状機枠13を樹幹11Aに装着する場合には、図9に示すように前記連結機構30の蝶ボルト30Aをネジ孔28aから取り外して、ヒンジ機構27を中心に第1及び第2フレーム28,29を開放し、樹幹11Aの外周に、第1及び第2フレーム28,29を図10に示すように装着して、連結機構30の蝶ボルト30Aを第1フレーム28のネジ孔28aに螺合する。又、前記手動操作機構41の操作ハンドル45を回動することにより、前記第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dのボールねじ33を回動し、前記第1及び第2上部固定アーム22A,22B、第1及び第2下部固定アーム23A,23B、第1及び第2上部揺動アーム24A,24B及び第1及び第2下部揺動アーム25A,25Bを樹幹11Aに向かって移動する。そして、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bを樹幹11Aの外周面に接触させる。
【0035】
この状態で前記サーボモータ54を起動して、回転軸52及びウォーム53を回転すると、前記ウォームホィール55及び回転軸14を介して、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bがそれぞれ回転され、枝打ち装置12Aが樹幹11Aに沿って上方に移動される。この枝打ち装置12Aの上昇動作と同期して、前記枝払い機構60のサーボモータ65が作動され、チェーンソー67が作動されるとともに、旋回支持体64が環状リング62に沿って円周方向に旋回される。従って、枝打ち装置12Aの上昇の動作が行われると共に、チェーンソー67によって、樹幹11Aから張り出した枝が切り落とされる。
【0036】
樹幹11Aの枝の切り落とし動作が終了すると、前記サーボモータ65が停止されるとともに、サーボモータ54が逆方向に回転され、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bが逆方向に回転され、枝打ち装置12Aは、樹幹11Aに沿って下方に移動される。
【0037】
上記実施形態の柱体昇降作業装置12及び枝打ち装置12Aによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、図1に示すように環状機枠13に対し回転軸14により上部駆動輪15を装着し、アーム部13cに回転軸16により下部駆動輪17を装着し、環状機枠13にウエイト部13bを設け、ウエイト部13bの重量中心Oを、前記下部駆動輪17の外側方に設定した。このため、柱体11の外周面に対し上部及び下部駆動輪15,17が所定の押圧力によって押し付けられることになり、柱体11の外周面に対し柱体昇降作業装置12の上部及び下部駆動輪15,17が所定の摩擦力によって滑り落ちるのが防止される。従って、従来必要であった上部及び下部駆動輪15,17を柱体11の外周面に強い力で押し付けるための付勢機構が不要となり、柱体昇降作業装置12の部品点数を低減して、軽量化を図ることができるとともに、装置12を一人の作業者によって容易に使用することもできる。
【0038】
(2)上記実施形態では、図6及び図7に示すように、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bの位置を調節する第1〜第4車輪位置調整機構21A〜21Dを設けたので、樹幹11Aの直径寸法が変化した場合に、前記操作ハンドル45を回動することにより、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bの位置を適正位置に容易に調節することができる。
【0039】
(3)上記実施形態では、第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bをサーボモータ54、ウォーム53及びウォームホィール55等よりなる動力伝達機構によって回転するようにした。このため、サーボモータ54が停止された状態で、両上部駆動輪15A,15B、両下部駆動輪17A,17Bの回転が停止される。従って、専用のブレーキ機構を設ける必要がなく、構造を簡素化して、この点からも軽量化を図ることができる。
【0040】
次に、この発明の別の実施形態を図11〜図13に基づいて説明する。
この実施形態においては、前記第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17B、第1及び第2上部従動輪19A,19B、第1及び第2下部従動輪20A,20Bの進行方向を変更する操舵機構71を設けたものである。この操舵機構71について説明する。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記取付台座51に連結された回動軸72が図13(a)に示すように回転可能に支持され、この回動軸72にはホィール73が嵌合されている。前記第1上部固定アーム22Aの先端部には、前記ホィール73に噛み合わされるウォーム74を支持する回転軸75が支持されている。図12に示すように前記可動支持体35にはサーボモータ76が取り付けられ、その回転軸77と前記回転軸75との間には、タイミングベルト78を備えたベルト伝動機構79が設けられている。
【0041】
前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記第1下部従動輪20Aを装着した回動支持体81が回転支持軸82によって往復回動可能に装着されている。前記回転支持軸82には図13(b)に示すようにウォームホィール83が取り付けられ、前記第1下部揺動アーム25Aの先端部には、前記ウォームホィール83に噛み合わされるウォーム84が回転軸85によって回転可能に支持されている。前記回転軸85と前記サーボモータ76の回転軸77との間には、タイミングベルト86を備えたベルト伝動機構87が設けられている。図11に示すように前記チェーンソー67は、環状機枠13の第1フレーム28側の所定位置に装着されている。前記操作ハンドル45に代えて、サーボモータ91が設けられ、前記回転軸42を回転するようになっている。
【0042】
従って、前記サーボモータ76が駆動されると、前記ベルト伝動機構79,87及びウォーム伝動機構によって、第1上部駆動輪15A及び第1下部従動輪20Aの傾き角度が互い平行状態で変更され、枝打ち装置12Aが旋回しながら樹幹11Aに沿って昇降される。
【0043】
上記の実施形態においては、前記支持ロッド61、環状リング62、ヒンジ機構63及び旋回支持体64を省略することができるので、枝払い機構60の構成を簡素化することができ、装置全体の軽量化を図ることができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図5に示す前記操作ハンドル45に代えて、図14に示すようサーボモータ91を用いても良い。この実施形態においては、樹幹11Aの直径が枝打ち装置12Aの上昇とともに、小さくなると、前記サーボモータ91の制御により第1及び第2上部駆動輪15A,15B、第1及び第2下部駆動輪17A,17Bの位置が調整され、枝打ち装置12Aは、殆ど傾くことなく、樹幹11Aに対する姿勢が適正状態に保持される。このため許容される樹幹11Aの直径の範囲が広くなる。
【0045】
・図11及び図14に示す実施形態においては、前記サーボモータ91の制御は次のようにして行われる。
前記樹幹11Aの直径と、樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度は、第1上部固定アーム22Aと第1下部揺動アーム25Aの関節部に組み込まれ、かつ両アームのなす角度を検出するための角度センサからの検出信号と、サーボモータ91に組み込まれた例えばロータリーエンコーダ等の回転数を検出する回転数センサの検出信号(例えば駆動輪の位置信号)とに基づいて幾何学関係を考慮して後述する方法により演算される。演算された樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度が所定の範囲にあればそのままとし、所定範囲を超えた場合には、サーボモータ91を駆動して、第1上部固定アーム22Aを適正な位置に変位させる。このようにして、枝打ち装置12Aの環状機枠13は、樹幹11Aに対して殆ど傾かないようにその姿勢が制御される。
ここで、図15に基づいて、樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度α及び樹幹11Aの直径xを演算する方法について説明する。
初期状態では、各駆動輪及び従動輪が直径Dの樹幹11Aを接触点が長方形となるように挟んでいるとする。この初期状態から、樹幹11Aの直径Dが変化しxとなったときの状態を幾何学的に考察する。ここで、次の各記号を以下のように定義する。
d1 :第1上部駆動輪15Aの直径、d2 :第1下部従動輪20Aの直径、L1:第1上部固定アーム22Aの長さ、L2:第1下部揺動アーム25Aの長さ、D :初期設定の樹幹11Aの直径、x :樹幹11Aの直径、LAB: 二点A,Bの長さ、:∠AOB(既知)、:∠AOB’(計測値)、:∠LAO (既知)、:∠DAC (既知)、:∠EAC、:∠OAB’、:∠EAB’、:∠DAG(傾き角度)。
【0046】
図15において、△AOB’は二辺OAとOB’の長さが既知で、そのなす角度θが角度センサによって計測できるので、余弦定理より、以下の二つの式が成立する。
【0047】
【数1】
【0048】
【数2】
△
AB ’Kは直角三角形であるから、以下の三つの式が成立する。
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】
【数5】
従って、∠EACは、次の式で求められる。
【0052】
【数6】
△AECは直角三角形であるから、未知の樹幹11Aの直径xは、次の式により演算される。
【0053】
【数7】
また、樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度αは、次の式により演算される。
【0054】
【数8】
従って、上記の方法により演算された未知の樹幹11Aの直径x及び樹幹11Aに対する環状機枠13の傾き角度αのいずれか一つのデータに基づいて、前記サーボモータ91を制御することにより、枝打ち装置12Aの環状機枠13が樹幹11Aに対して殆ど傾かないように制御される。
【0055】
・前記第1及び第2上部従動輪19A,19Bを省略してもよい。又、第1及び第2下部従動輪20A,20Bを省略してもよい。さらに、前述した全ての従動輪を省略してもよい。
【0056】
・図4において前記第1及び第2下部駆動輪17A,17Bを一つの下部駆動輪とし、該駆動輪の位置を両輪17A,17Bの間の中央に設定してもよい。又、図4において前記第1及び第2上部駆動輪15A,15Bを一つの上部駆動輪とし、該駆動輪の位置を両輪15A,15Bの間の中央に設定してもよい。
【0057】
・前記第1及び第2車輪位置調整機構21A,21Bを省略してもよい。又、第3及び第4車輪位置調整期21C,21Dを省略してもよい。さらに、全ての車輪位置調整機構を省略してもよい。
【0058】
・前記上部駆動輪15又は下部駆動輪17のいずれか一方のみを駆動輪としてもよい。
・前記従動輪の操舵機構を省略してもよい。この場合には従動輪に方向性を持たない例えば球体を回転させる構成のものを使用するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の柱体昇降作業装置の原理を示す正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】この発明を枝打ち装置に具体化した一実施形態を示す略体正面図。
【図4】図3の略体平面図。
【図5】枝打ち装置全体を示す斜視図。
【図6】第1車輪位置調整機構、第1上部固定アーム、第1下部揺動アーム及び第1上部駆動輪を示す正面図。
【図7】図6の右側面図。
【図8】第1〜第4車輪位置調整機構の斜視図。
【図9】樹幹に枝打ち装置を装着する動作を説明する斜視図。
【図10】樹幹に枝払い機構を省略した枝打ち装置を装着した状態を示す斜視図。
【図11】この発明の枝打ち装置の別の実施形態を示す斜視図。
【図12】図11の枝打ち装置の操舵機構を示す斜視図。
【図13】(a)及び(b)は、それぞれ図12の操舵機構の部分略体説明図。
【図14】この発明の枝打ち装置の別の実施形態を示す斜視図。
【図15】樹幹の直径が変化した場合の環状機枠の傾斜角度を求める方法を説明する線図。
【符号の説明】
【0060】
O…重量中心、11…柱体、11A…樹幹、13…環状機枠、14,16,38,42,52,75,77,85…回転軸、35…可動支持体、37,53,74,84…ウォーム、39,55,83…ウォームホィール、41…手動操作機構、54,76,91…サーボモータ、71…操舵機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体に対しその外周面を取り巻くように脱着される環状機枠の上部に対し、前記外周面を転動する上部主車輪を取り付けるとともに、環状機枠の下部に対し前記外周面を転動する下部主車輪を前記上部主車輪と前記柱体を挟んで反対側に位置するように取り付け、前記環状機枠に対し前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を駆動する駆動機構を設け、同じく前記環状機枠に所定の作業を行う作業機を設け、前記環状機枠の重量中心の位置を、前記下部主車輪側において該下部主車輪よりも外側に設定したことを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項2】
請求項1において、前記環状機枠には前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を前記柱体の直径方向に位置調整するための主車輪位置調整機構が設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記環状機枠には上部主車輪の下方に位置して柱体の外周面を転動する下部補助車輪及び前記下部主車輪の上方に位置して柱体の外周面を転動する上部補助車輪の少なくともいずれか一方が装着され、それらの補助車輪は、付勢機構により前記柱体の外周面にそれぞれ押圧されるように構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記上部主車輪は一箇所又は二箇所に設けられ、前記下部主車輪は二箇所又は一箇所に設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項5】
請求項3において、前記環状機枠には、前記上部主車輪が第1上部主車輪及び第2上部主車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部主車輪が第1下部主車輪及び第2下部主車輪として二箇所に設けられ、前記上部補助車輪が第1上部補助車輪及び第2上部補助車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部補助車輪が第1下部補助車輪及び第2下部補助車輪として二箇所に設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構により柱体の直径方向に位置調整される複数の可動支持体には、固定アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各固定アームの先端部には前記主車輪がそれぞれ装着され、前記各可動支持体には、揺動アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各揺動アームの先端部には前記補助車輪がそれぞれ取り付けられ、前記各揺動アームは、前記付勢機構により柱体に接近するように付勢されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項7】
請求項6において、前記各固定アームの先端部には前記主車輪の進行方向をそれぞれ変更する操舵機構が設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項8】
請求項7において、前記各揺動アームの先端部には、前記補助車輪の進行方向を前記主車輪の操舵角度の変更に応じて前記主車輪とほぼ平行状態に変更する操舵機構がそれぞれ設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構は、前記柱体の直径寸法又は柱体に対する環状機枠の傾斜角度を演算し、これらの演算値に基づいてサーボモータにより前記主車輪の位置を制御するように構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、前記主車輪の駆動機構は、サーボモータにより回転されるウォームと、前記主車輪の回転軸に連結され、かつ前記ウォームに噛み合われたウォームホィールとにより構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか一項において、前記各主車輪位置調整機構は、共通の手動操作ハンドル又は共通のサーボモータによって同期して調整されるように構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項12】
請求項1〜6、10,11のいずれか一項において、前記環状機枠には、作業機としての枝打ち機構が柱体としての樹幹の周方向に旋回可能に装着されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項13】
請求項7〜9のいずれか一項において、前記環状機枠には作業機としての枝打ち機構が装着されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項1】
柱体に対しその外周面を取り巻くように脱着される環状機枠の上部に対し、前記外周面を転動する上部主車輪を取り付けるとともに、環状機枠の下部に対し前記外周面を転動する下部主車輪を前記上部主車輪と前記柱体を挟んで反対側に位置するように取り付け、前記環状機枠に対し前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を駆動する駆動機構を設け、同じく前記環状機枠に所定の作業を行う作業機を設け、前記環状機枠の重量中心の位置を、前記下部主車輪側において該下部主車輪よりも外側に設定したことを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項2】
請求項1において、前記環状機枠には前記上部主車輪及び下部主車輪の少なくともいずれか一方を前記柱体の直径方向に位置調整するための主車輪位置調整機構が設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記環状機枠には上部主車輪の下方に位置して柱体の外周面を転動する下部補助車輪及び前記下部主車輪の上方に位置して柱体の外周面を転動する上部補助車輪の少なくともいずれか一方が装着され、それらの補助車輪は、付勢機構により前記柱体の外周面にそれぞれ押圧されるように構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記上部主車輪は一箇所又は二箇所に設けられ、前記下部主車輪は二箇所又は一箇所に設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項5】
請求項3において、前記環状機枠には、前記上部主車輪が第1上部主車輪及び第2上部主車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部主車輪が第1下部主車輪及び第2下部主車輪として二箇所に設けられ、前記上部補助車輪が第1上部補助車輪及び第2上部補助車輪として二箇所に設けられるとともに、前記下部補助車輪が第1下部補助車輪及び第2下部補助車輪として二箇所に設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構により柱体の直径方向に位置調整される複数の可動支持体には、固定アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各固定アームの先端部には前記主車輪がそれぞれ装着され、前記各可動支持体には、揺動アームが傾斜状態でそれぞれ取り付けられ、各揺動アームの先端部には前記補助車輪がそれぞれ取り付けられ、前記各揺動アームは、前記付勢機構により柱体に接近するように付勢されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項7】
請求項6において、前記各固定アームの先端部には前記主車輪の進行方向をそれぞれ変更する操舵機構が設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項8】
請求項7において、前記各揺動アームの先端部には、前記補助車輪の進行方向を前記主車輪の操舵角度の変更に応じて前記主車輪とほぼ平行状態に変更する操舵機構がそれぞれ設けられていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項において、前記主車輪位置調整機構は、前記柱体の直径寸法又は柱体に対する環状機枠の傾斜角度を演算し、これらの演算値に基づいてサーボモータにより前記主車輪の位置を制御するように構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、前記主車輪の駆動機構は、サーボモータにより回転されるウォームと、前記主車輪の回転軸に連結され、かつ前記ウォームに噛み合われたウォームホィールとにより構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか一項において、前記各主車輪位置調整機構は、共通の手動操作ハンドル又は共通のサーボモータによって同期して調整されるように構成されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項12】
請求項1〜6、10,11のいずれか一項において、前記環状機枠には、作業機としての枝打ち機構が柱体としての樹幹の周方向に旋回可能に装着されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【請求項13】
請求項7〜9のいずれか一項において、前記環状機枠には作業機としての枝打ち機構が装着されていることを特徴とする柱体昇降作業装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−253116(P2008−253116A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95052(P2007−95052)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(396024901)
【出願人】(507106272)株式会社 生物資源研究所 (4)
【出願人】(504331392)株式会社丸富精工 (11)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(396024901)
【出願人】(507106272)株式会社 生物資源研究所 (4)
【出願人】(504331392)株式会社丸富精工 (11)
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