説明

柱梁接合部の補強構造

【課題】 本発明は、主として鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建築物において、単純な構造で、十分な補強効果が得られる柱梁接合部の補強構造を提供する。
【解決手段】 柱110と梁120,120,121,121の接合部100が、これを下から覆う底板11,11,…と、これを横から覆う側板12,12,…とにより取り囲まれており、底板11,11,…と側板12,12,…とは互いに結合され、底板11,11,…の縁部、側板12,12,…の縁部は、それぞれ柱110面、梁120,120,121,121面と密接し、底板11,11,…は、連結材14,14,…を介して前記接合部100上に位置するスラブ130に固定され、底板11,11,…と側板12,12,…とにより取り囲まれた接合部100周囲の空間には充填性固化材15が充填されて成る、柱梁接合部の補強構造10。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柱梁接合部の補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】既存建築物は、建設当時の設計水準や建築法規に則って設計されているために、現在の設計水準や建築法規の観点から必ずしも十分な耐力を満たしていないと思われる場合がある。このような既存建築物に対して、近年の建築物の耐震に対する意識の高まりから、耐震補強を施す事例が増加している。この既存建築物の補強の方法の一つとして、柱に鉄板や新素材シートを巻き付けて強度および靱性を高める方法がある。
【0003】この柱の強度および靱性を高めようとする方法において、補強された柱と比較して、柱梁接合部の耐力が不足することが考えられる場合には、この柱梁接合部の補強も行う必要が生じる。従来の柱梁接合部の補強方法としては、接合部周囲のかぶりコンクリートを、接合部周囲の梁を支持しながらはつりにより除去するとともに、接合部内に補強用帯筋を追加配筋し、この後かぶりコンクリートを打設し直す方法がある。また、柱梁接合部の周囲のかぶりコンクリート及び梁を目荒らしし、梁に後施工したアンカーを介して分割帯筋を巻き立て、この後かぶりコンクリートを打設して大きな接合部に変える方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の補強方法によると、現場でのはつり、配筋、型枠の取り付け、コンクリートの打設といった多くの作業を必要としていた。
【0005】上記事情に鑑み、本発明は、主として鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建築物において、単純な構造で、十分な補強効果が得られる柱梁接合部の補強構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、請求項1記載の柱梁接合部の補強構造10(図1参照)は、柱110と梁120,120,121,121の接合部100において、該接合部100が、これを下から覆うように、柱110断面周囲に配された底板11,11,…と、前記接合部100を横から覆うように、梁120,120,121,121断面周囲に配された側板12,12,…とにより取り囲まれており、前記底板11,11,…と前記側板12,12,…とは、互いに結合されており、前記底板11,11,…は、それが柱110面と接する縁部において、柱110面と密接し、前記側板12,12,…は、それが梁120,120,121,121面と接する縁部において、梁120,120,121,121面と密接し、前記底板11,11,…は、連結材14,14,…を介して前記接合部100上に位置するスラブ130に固定されており、前記底板11,11,…と前記側板12,12,…とにより取り囲まれた前記接合部100周囲の空間には充填性固化材15が充填されていることを特徴とする。
【0007】この請求項1記載の柱梁接合部の補強構造によれば、建築物に地震力が加わった際に、柱と梁との接合部にせん断力が加わるが、このせん断力のうち、圧縮方向の力が、前記充填性固化材によって受け持たれ、また、引張方向の力が、互いに連結された底板と側板と連結材とに内嵌されて核となる充填性固化材と、スラブに固定された連結材とにより、一体的に受け持たれる。したがって、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0008】なお、前記側板12,12,…は、厚板鋼板やアングルなど、せん断剛性・強度の大きい材料によって製作するとともに、該側板12,12,…の上辺部をスラブ130下面に固定し、下辺部を底板11,11,…を介すなどして柱110面に固定してもよい。この場合には、前記接合部に生じるせん断力の一部を、側板に受け持たせることによって、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0009】請求項2記載の柱梁接合部の補強構造10(図1参照)は、請求項1において、前記底板11,11,…または側板12,12,…のうち少なくとも一方には、その内面上に、前記充填性固化材15と係合する突起11c,11c,…,12c,12c,…が設けられていることを特徴とする。
【0010】この請求項2記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項1と同様の効果が得られるとともに、前記側板または底板のうち少なくとも一方の内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられているため、側板または底板のうち少なくとも一方と充填性固化材との一体性が高められ、側板または底板と充填性固化材の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0011】請求項3記載の柱梁接合部の補強構造20(図2参照)は、柱210と梁220,220,…の接合部200において、該接合部200および接合部200下近傍における柱210の側面全周と、前記接合部200横近傍の梁220,220,…の側面および下面とが補強被覆材26,26,…で覆われており、前記補強被覆材26,26,…には、前記柱210と梁220,220,…の接合部200近傍における柱210の側面と梁220,220,…の下面とを覆う隅角部分に、リブプレート26a,26a,…が設けられており、前記補強被覆材26,26,…は、前記梁220,220,…をその幅方向に貫通する締結材27,27,…を介して梁220,220,…に固定されていることを特徴とする。
【0012】この請求項3記載の柱梁接合部の補強構造によれば、前記補強被覆材により接合部が拘束されるので、この拘束効果によって接合部内のコンクリートの強度・剛性が高められ、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0013】また、前記リブプレートにより、接合部に生じるせん断力の一部が分担して受け持たれるので、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0014】さらに、接合部近傍の柱および梁の周囲が補強被覆材により拘束されているので、この部分が接合部と一体となってせん断変形することにより、接合部のせん断有効せいまたはせん断有効幅が大きくなる。したがって、接合部のせん断耐力が増大する。
【0015】請求項4記載の柱梁接合部の補強構造30(図3参照)は、柱310と梁320,320,…の接合部300において、該接合部300および接合部300下近傍における柱310の側面全周がせん断抵抗板38,38,…で覆われ、かつ、前記梁320,320,…を挟んで配置されているせん断抵抗板38,38,…の部分どうしが、前記梁320,320,…を貫通する締結材37,37,…によって締結されており、前記せん断抵抗板38,38,…の下辺部は、前記柱310の側面に結合され、前記せん断抵抗板38,38,…の上辺部は、前記接合部300上に位置するスラブ330に結合されていることを特徴とする。
【0016】この請求項4記載の柱梁接合部の補強構造によれば、接合部に生じるせん断力の一部が、前記せん断抵抗板により分担して受け持たれるので、接合部のせん断補強効果が得られる。
【0017】なお、前記梁320,320,…を貫通する締結材37,37,…は、それぞれ梁320,320,…に固着されていてもよい。この場合には、接合部に生じるせん断力が、前記せん断抵抗板へ円滑に伝達され、さらなる接合部のせん断補強効果が得られる。
【0018】請求項5記載の柱梁接合部の補強構造40(図4参照)は、請求項4において、前記梁420,420,…を貫通している締結材47,47,…の、該梁420,420,…から突出している部分が、前記せん断抵抗板48,48,…の内側に配置されていることを特徴とする。
【0019】この請求項5記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項4と同様の効果が得られるとともに、前記締結材がせん断抵抗板の内側に配置されているので、補強構造を外側から見た際の収まりがよい。
【0020】請求項6記載の柱梁接合部の補強構造30(40)(図3(図4)参照)は、請求項4または5において、前記せん断抵抗板38,38,…(48,48,…)と、前記接合部300(400)の外面との間には隙間が設けられており、この隙間には充填性固化材35(45)が充填されていることを特徴とする。
【0021】この請求項6記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項4または5と同様の効果が得られるとともに、前記せん断抵抗板の内側に充填性固化材が充填されているので、硬化した充填性固化材によりせん断抵抗板がその面外に座屈しようとするのを内側から拘束することによって、せん断抵抗板が十分な耐力を発揮する前に座屈して耐力が低下するのをある程度防ぐことができるため、接合部のせん断補強効果が高められる。
【0022】また、せん断抵抗板で接合部が取り囲まれ、せん断抵抗板と接合部の間の隙間に充填性固化材が充填されていることにより、接合部内の鉄筋コンクリートまたは鉄骨鉄筋コンクリートが拘束され、この拘束効果によって、接合部のせん断強度・せん断剛性が高められる。
【0023】なお、前記充填性固化材として、固化時に膨張性を有するものを用いてもよい。この場合には、接合部内の鉄筋コンクリートまたは鉄骨鉄筋コンクリートの拘束性がさらに上がり、接合部のせん断強度・せん断剛性を一層高めることができる。
【0024】請求項7記載に柱梁接合部の補強構造30(40)(図3(図4)参照)は、請求項6において、前記締結材37,37,…(47,47,…)を締め込むことによって、前記せん断抵抗板38,38,…(48,48,…)を介して、前記充填性固化材35(45)の拘束力が高められていることを特徴とする。
【0025】この請求項7記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項6と同様の効果が得られるとともに、前記締結材を締め込むことによって、前記充填性固化材および既存部分の接合部がより一層拘束されるため、この拘束効果によって、接合部および充填性固化材のせん断強度・せん断剛性が高められ、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0026】請求項8記載の柱梁接合部の補強構造40(図4参照)は、請求項6または7において、前記せん断抵抗板48,48,…には、その内面上に、前記充填性固化材45と係合する突起48c,48c,…が設けられていることを特徴とする。
【0027】この請求項8記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項6または7と同様の効果が得られるとともに、前記せん断抵抗板の内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられているため、せん断抵抗板と充填性固化材との一体性が高められ、せん断抵抗板と充填性固化材の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0028】請求項9記載の柱梁接合部の補強構造50(図5参照)は、柱510と梁520,520,…との接合部500において、該接合部500が、これを下から覆うように、柱510断面周囲に配された底板51,51,…と、前記接合部500を横から覆うように、梁520,520,…断面周囲に配された側板52,52,52a,52aとにより取り囲まれており、前記底板51,51,…と前記側板52,52,52a,52aとは、互いに結合されており、前記底板51,51,…は、それが柱510面と接する縁部において、柱510面と密接し、前記側板52,52,52a,52aは、それが梁520,520,…面と接する縁部において、梁520,520,…面と密接し、前記底板51,51,…と前記側板52,52,52a,52aとにより取り囲まれた前記接合部500周囲の空間には充填性固化材55が充填され、前記充填性固化材55中には、緊張材59v,59v,…,59h,59h,…が挿通され、この緊張材59v,59v,…,59h,59h,…は、底板51,51,…および側板52,52,52a,52aのうちの少なくとも一方に係合しており、前記緊張材59v,59v,…,59h,59h,…によって、充填性固化材55と、底板51,51,…および側板52,52,52a,52aのうちの少なくとも一方とが拘束されていることを特徴とする。
【0029】この請求項9記載の柱梁接合部の補強構造によれば、建築物に地震力が加わった際に、柱と梁との接合部に加わるせん断力の一部を、緊張材と、該緊張材によって拘束された底板および側板とによって拘束された充填性固化材によって受け持つことができるので、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0030】請求項10記載の柱梁接合部の補強構造50(図5参照)は、請求項9において、前記底板51,51,…または側板52,52,52a,52aのうち少なくとも一方には、その内面上に、前記充填性固化材55と係合する突起51c,51c,…,52c,52c,…が設けられていることを特徴とする。
【0031】この請求項10記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項9と同様の効果が得られるとともに、前記底板または側板のうち少なくとも一方の内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられているため、底板または側板のうち少なくとも一方と充填性固化材との一体性が高められ、底板または側板と充填性固化材の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の、柱梁接合部の補強構造の実施の形態例を図1から図5に基づいて説明する。
【0033】(実施形態例1)本例は、本発明の柱梁接合部の補強構造の第1の実施の形態を示すものであって、図1(a)は、既存建築物の柱110と梁120,120,121,121との接合部100の周囲に本例の柱梁接合部の補強構造10を取り付けた状況を示す平面図であり、図1(b)は同、側面図である。本例の柱梁接合部の補強構造10は、底板11,11,…と、側板12,12,…と、連結材14,14,…と、充填コンクリート(充填性固化材)15とにより、概略構成されている。
【0034】補強しようとする既存建築物の柱110と梁120,120,121,121との接合部100が、これを下から覆うように、柱110断面周囲に配された4枚の底板11,11,…と、前記接合部100を横から覆うように、各梁120,120,…周囲に配された4枚の側板12,12,…とにより取り囲まれている。底板11,11,…は、柱を四方から取り囲むように、柱110断面周囲の同一水平面上に配された上で、連結用の鋼材13,13,…を介して、ボルト13a,13a,…で互いに緊結されている。また、前記底板11,11,…は、それらが柱110面と接する縁部において、該柱110面と密接しており、この密接部分には、山形鋼から成る接合材11a,11a,…があてがわれて、この接合材11a,11a,…は、接着剤により前記底板11,11,…と柱110面とに密着されている。側板12,12,…は、それぞれが平面視において〔形の形状をしており、梁を貫通させるための凹部が形成されている。そして、接合部100を取り囲むように、前記凹部が、柱110に取り付く四本の梁120,120,121,121に嵌合されるように4枚の側板12,12,…が配された上で、前記4枚の側板11,11,…と、前記連結用の鋼材13,13,…を介してボルト13a,13a,…で締結することにより、互いに緊結されている。また、前記側板12,12,…は、それぞれが各梁120,120,121,121面と接する縁部において、該梁120,120,121,121面と密接しており、この密接部分には、山形鋼から成る接合材(図示せず)があてがわれて、この接合材は、接着剤により前記側板12,12,…と梁120,120,121,121面とに密着されている。ここで、前記底板11,11,…および側板12,12,…は、厚板鉄板により形成されている。これら底板11,11,…および側板12,12,…のそれぞれには、その内面上に、スタッドコネクタ(突起)11c,11c,…,12c,12c,…が設けられている。
【0035】連結材14,14,…は、山形鋼により形成されている。底板11,11,…は、この連結材14,14,…の下端にボルト14a,14a,…で締結され、該連結材14,14,…の上端が、接合部100の上に位置するスラブ130の下面に、後施工アンカーボルト14b,14b…によって固定されることで、底板11,11,…がスラブ130下面に固定されている。底板11,11,…と側板12,12,…とによって取り囲まれた接合部100周囲の空間には、充填コンクリート15が充填されている。この充填コンクリート15は、底板11,11,…および側板12,12,…のそれぞれの内面上に設けられた前記スタッドコネクタ11c,11c,…,12c,12c,…と係合するようになっている。
【0036】本例の柱梁接合部の補強構造10によれば、建築物に地震力が加わった際に、柱と梁との接合部100に加わるせん断力の一部のうち、圧縮方向の力が、前記充填コンクリート15によって受け持たれ、また、引張方向の力が、互いに連結された底板11,11,…と側板12,12,…と連結材13,13,…とに内嵌されて核となる充填コンクリート15と、スラブ130に固定された連結材13,13,…とにより、一体的に受け持たれる。したがって、接合部のせん断補強効果が得られる。また、前記側板12,12,…はせん断剛性・強度の大きい厚板鋼板によって製作されているので、該側板12,12,…によっても、接合部100に加わるせん断力の一部が受け持たれ、接合部100のせん断補強効果が得られる。また、本例の柱梁接合部の補強構造10は、既存の躯体を貫通する孔を空けることなく適用できる。したがって、既存の柱・梁に貫通孔を空け、この貫通孔に貫通ボルトなどを通して、柱梁接合部の補強手段を結合する場合に比べて、穿孔による既存躯体の強度の低下を防止できる。さらに、底板11,11,…および側板12,12,…の内面上に、充填コンクリート15と係合するスタッドコネクタ11c,11c,…が設けられているため、底板11,11,…および側板12,12,…と充填性固化材15との一体性が高められ、底板11,11,…および側板12,12,…と充填性固化材55の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0037】(実施形態例2)本例は、本発明の柱梁接合部の補強構造の第2の実施の形態を示すものであって、図2(a)は、既存建築物の柱210と梁220,220,220,220の接合部の周囲に本例の柱梁接合部の補強構造20を取り付けた状況を示す平面図であって、図2(b)は、同側面図である。本例の柱梁接合部の補強構造10は、補強被覆材26,26,…と、充填モルタル(充填性固化材)25と、貫通ボルト(締結材)27,27,…により、概略構成されている。
【0038】補強被覆材26,26,…は、厚板鋼板を組み合わせ、互いに溶接によって接合して形成されており、図2(a)および図2(b)に示すように、4つの補強被覆材26,26,…を、前記接合部200を水平四方から取り囲むようにして組み合わせて取り付け、これらの間を連結用の鋼材23,23,…を介してボルト23a,23a,…で緊結することにより、接合部200および接合部200下近傍における柱210の側面全周と、接合部横近傍の梁220,220,…の側面および下面、および、接合部横近傍のスラブ230の下面とを覆うようになっている。前記補強被覆材26,26,…は、後施工アンカーボルト26a,26a,…によって、接合部200の上に位置するスラブ230の下面に固定されている。また、補強被覆材26には、該補強被覆材26が、前記柱210と梁220,220,…の接合部近傍における柱210の側面と梁220の下面とを覆う隅角部分に、同じく厚板鋼板にから成るリブプレート26aが設けられ、前記隅角部分に、溶接によって接合されている。また、接合部200と、補強被覆材26との間には、モルタル(充填性固化材)26が充填されている。さらに、補強被覆材26が、前記接合部200近傍の4本の梁220,220,…の側面を覆う部分には、貫通孔が設けられており、これらの梁220,220,…をそれぞれ貫通するように、前記貫通孔に貫通ボルト27,27,…を通して、ナット(図示せず)で締め付けることにより、補強被覆材26,26,…により接合部200の周囲が拘束されている。
【0039】本例の柱梁接合部の補強構造20によれば、前記補強被覆材26,26,…により接合部200が拘束されるので、この拘束効果によって接合部200内のコンクリートの強度および剛性が高められ、接合部200のせん断耐力を増大させることができる。貫通ボルト27にPC鋼棒を用いて高張力を導入し、拘束力を高めると、一段と接合部の性能を増大させることができる。また、前記リブプレート26a,26a,…により、接合部200に生じるせん断力の一部が分担して受け持たれるので、接合部200のせん断耐力を増大させることができる。さらに、接合部200近傍の柱210および梁220,220,…の周囲が補強被覆材26により拘束されているので、この部分が接合部200と一体となってせん断変形することにより、接合部200のせん断有効せいがDcからDc’へと大きくなり、また、せん断有効幅がDhからDh’へと大きくなる。したがって、接合部のせん断耐力が増大する。
【0040】(実施形態例3)本例は、本発明の柱梁接合部の補強構造の第3の実施の形態を示すものであって、図3(a)は、既存建築物の柱310と梁320,320,320,320の接合部300の周囲に本例の柱梁接合部の補強構造30を取り付けた状況を示す平面図であって、図3(b)は、同側面図である。本例の柱梁接合部の補強構造30は、せん断抵抗板38,38,…と、充填モルタル(充填性固化材)35と、締結材37,37,…とにより、概略構成されている。
【0041】前記せん断抵抗板38,38,…は厚板鋼板から成り、互いに溶接によって接合して形成されており、図3(a)および図3(b)に示すように、4つのせん断抵抗板38,38,…を、前記接合部300を水平四方から取り囲むようにして組み合わせて取り付け、これらのせん断抵抗板38,38,…の間を連結用の鋼材33,33,…を介してボルト33a,33a,…で緊結することにより、接合部300および接合部300下近傍における柱310の側面全周を覆うようになっている。また、接合部300と、せん断抵抗板38,38,…との間には、充填モルタル35が充填されている。せん断抵抗板38,38,…の下辺部は、前記柱310の側面に、前記充填モルタル35を介して固定されている。また、梁を挟んで配置されているせん断抵抗板38,38,…の上辺部は、梁を貫通する貫通ボルト(締結材)37,37,…によって、互いに締結されるとともに、前記接合部300の上に位置するスラブ330の下面に、後施工アンカーボルト38a,38a,…によって連結されている。
【0042】本例の柱梁接合部の補強構造30によれば、貫通ボルト37,37,…を締め付けることによってせん断抵抗板38,38,…に取り囲まれた接合部300内のコンクリートが拘束され、この接合部300内のコンクリートの強度および剛性が上昇して、接合部のせん断耐力が大きくなる。また、接合部300に生じるせん断力の一部がせん断抵抗板38,38,…に受け持たれ、接合部300のせん断補強効果が得られる。さらに、前記せん断抵抗板38,38,…の内側に充填モルタル35が充填されているので、硬化した充填モルタル35によりせん断抵抗板38,38,…がその面外に座屈しようとするのを内側から拘束することによって、せん断抵抗板38,38,…が十分な耐力を発揮する前に座屈して耐力が低下するのをある程度防ぐことができるため、接合部300のせん断補強効果が高められる。
【0043】(実施形態例4)本例は、本発明の柱梁接合部の補強構造の第4の実施の形態を示すものであって、図4(a)は、既存建築物の柱410と梁420,420,420,420の接合部400の周囲に本例の柱梁接合部の補強構造40を取り付けた状況を示す平面図であって、図4(b)は、同側面図である。本例の柱梁接合部の補強構造40は、せん断抵抗板48,48,…と、充填コンクリート(充填性固化材)45と、締結材47,47,…とにより、概略構成されている。
【0044】前記せん断抵抗板48,48,…は厚板鋼板から成り、互いに溶接によって接合して形成されており、図4(a)および図4(b)に示すように、4つのせん断抵抗板48,48,…を、前記接合部400を水平四方から取り囲むようにして組み合わせて取り付け、これらのせん断抵抗板48,48,…の間を連結用の鋼材43,43,…を介してボルト43a,43a…で緊結することにより、接合部400および接合部400下近傍における柱410の側面全周を覆うようになっている。また、せん断抵抗板48,48,…のそれぞれには、その内面上に、スタッドコネクタ(突起)48c,48c,…が設けられている。また、接合部400と、せん断抵抗板48,48,…との間には、充填コンクリート45が充填されている。この充填コンクリート45は、せん断抵抗板48,48,…のそれぞれの内面上に設けられた前記スタッドコネクタ48c,48c,…と係合するようになっている。せん断抵抗板48,48,…の下辺部は、前記柱410の側面に、底板41,41,…と連結材41b,41b、…および前記充填モルタル45を介して固定されている。また、梁を挟んで配置されているせん断抵抗板48,48,…の上辺部は、梁を貫通する貫通ボルト(締結材)47.47,…によって、互いに締結されるとともに、前記接合部400の上に位置するスラブ430の下面に、後施工アンカーボルト48a,48a,…によって連結されている。ここで、貫通ボルト47,47,…は、前記せん断抵抗板48,48,…の内側に設けられている。
【0045】本例の柱梁接合部の補強構造40によれば、貫通ボルト47,47,…を締め付けることによってせん断抵抗板48,48,…に取り囲まれた接合部400内のコンクリートが拘束され、この接合部400内のコンクリートの強度および剛性が上昇して、接合部のせん断耐力が大きくなる。また、接合部400に生じるせん断力の一部がせん断抵抗板48,48,…に受け持たれ、接合部400のせん断補強効果が得られる。また、前記せん断抵抗板48,48,…の内側に充填コンクリート45が充填されているので、硬化した充填コンクリート45によりせん断抵抗板48,48,…がその面外に座屈しようとするのを内側から拘束することによって、せん断抵抗板48,48,…が十分な耐力を発揮する前に座屈して耐力が低下するのをある程度防ぐことができるため、接合部400のせん断補強効果が高められる。また、貫通ボルト47,47,…がせん断抵抗板の内側に設けられているので、柱梁接合部の補強構造40を外側から見た際に、収まりがよい外観となる。さらに、せん断抵抗板48,48,…の内面上に、充填コンクリート45と係合するスタッドコネクタ48c,48c,…が設けられているため、せん断抵抗板48,48,…と充填性固化材45との一体性が高められ、せん断抵抗板48,48,…と充填性固化材45の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0046】(実施形態例5)本例は、本発明の柱梁接合部の補強構造の第1の実施の形態を示すものであって、図5(a)は、既存建築物の柱510と梁520,520,520,520との接合部500の周囲に本例の柱梁接合部の補強構造50を取り付けた状況を示す平面図であり、図5(b)は同、側面図である。本例の柱梁接合部の補強構造50は、底板51,51,…と、側板52,52,52a,52aと、充填コンクリート(充填性固化材)55と、緊張材59,59,…とにより、概略構成されている。
【0047】補強しようとする既存建築物の柱510と梁520,520,…との接合部500が、これを下から覆うように、柱510断面周囲に配された4枚の底板51,51,…と、前記接合部500を横から覆うように、各梁520,520,…周囲に配された4枚の側板52,52,52a,52aとにより取り囲まれている。底板51,51,…は、柱を四方から取り囲むように、柱510断面周囲の同一水平面上に配された上で、連結用の鋼材(図示せず)を介して、ボルトで互いに緊結されている。また、前記底板51,51,…は、それらが柱510面と接する縁部において、該柱510面と密接しており、この密接部分には、山形鋼から成る接合材(図示せず)があてがわれて、この接合材は、接着剤により前記底板51,51,…と柱510面とに密着されている。側板52,52,52a,52aは、平面視において〔形の形状をしており、側板52,52には、梁を貫通させるための凹部がそれぞれ2箇所ずつ形成されている。そして、側板52,52,52a,52aは、前記接合部510を取り囲むように、かつ、側板52a,52aの凹部が、柱に取り付く四本の梁520,520,…に嵌合されるように配された上で、互いにボルト52bで緊結されている。また、前記側板52,52,52a,52aは、それぞれが各梁520,520,…面と接する縁部において、該梁520,520,…面と密接しており、この密接部分には、山形鋼から成る接合材(図示せず)があてがわれて、この接合材は、接着剤により前記側板52,52,52a,52aと梁520,520,…面とに密着されている。また、前記底板51,51,…と、前記側板52,52,52a,52aとの間は、連結用の鋼材(図示せず)を介してボルトで緊結されている。前記底板51,51,…および側板52,52,52a,52aは、厚板鉄板により形成されている。これら底板51,51,…および側板52,52,52a,52aのそれぞれには、その内面上に、スタッドコネクタ(突起)51c,51c,…,52c,52c,…が設けられている。
【0048】緊張材59v,59v,…,59h,59h,…は、鋼製ケーブルにより形成されている。緊張材59v,59v,…は、前記底板51,51,…および側板52,52,52a,52aによって覆われた接合部500周囲の空間内部の鉛直面内に配され、底板51,51,…各裏面に設けられた拘束用リング51r,51r,…,52r,52r,…に挿通されるとともに、該緊張材59v,59v,…の端部が、接合部500の上に隣接するスラブに設けられた貫通孔に挿通されて、該スラブ上面にてナット59va,59va、…で締め付けられることで、前記底板51,51,…を拘束するようになっている。また、緊張材59h,59h,…は、前記底板51,51,…および側板52,52,52a,52aによって覆われた接合部500周囲の空間内部の水平面内に配され、側板52,52,52a,52aの各裏面に設けられた拘束用リング52r,52r,…に挿通されるとともに、該緊張材59h,59h,…の端部が、側板52a,52aに設けられた貫通孔に挿通されて、該側板52a,52a表面上にてナット59ha,59ha,…で締め付けられることで、これら側板52,52,52a,52aを拘束するようになっている。底板51,51,…と側板52,52,52a,52aとによって取り囲まれた接合部500周囲の空間には、充填コンクリート55が充填されている。この充填コンクリート55は、底板51,51,…および側板52,52,52a,52aのそれぞれの内面上に設けられた前記スタッドコネクタ51c,51c,…,52c,52c,…と係合するようになっている。
【0049】本例の柱梁接合部の補強構造50によれば、建築物に地震力が加わった際に、柱510と梁520,520,…との接合部500に加わるせん断力の一部を、緊張材59,59,…と、該緊張材59,59,…によって拘束された底板51,51,…および側板52,52,52a,52aとによって拘束された充填コンクリート55によって受け持つことができるので、接合部500のせん断耐力を増大させることができる。また、充填コンクリート55が収縮しても、緊張材59v,59v,…,59h,59h,…を増し締めすれば、拘束力が回復する。さらに、底板51,51,…および側板52,52,52a,52aの内面上に、充填コンクリート55と係合するスタッドコネクタ51c,51c,…が設けられているため、底板51,51,…および側板52,52,52a,52aと充填性固化材55との一体性が高められ、底板51,51,…および側板52,52,52a,52aと充填性固化材55の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0050】なお、以上の実施の形態例においては、柱梁接合部の補強構造10,20,30,40,50の平面形状は四角形または八角形としたが、本発明はこれに限ることなく、柱梁接合部の補強構造の平面形状は、他の多角形や円形などでもあってもよい。また、柱梁接合部の補強構造の平断面の大きさおよび形状を、鉛直方向に変化させてもよい。これらの方法を組み合わせることによって、柱梁接合部の補強構造10,20,30,40,50から隅角部をなくすことにより、構造物の隅角部に発生しやすい応力集中を避けることができる。また、上記の実施の形態中には特に記載していないが、既存建築物の柱と梁との接合部周囲の躯体表面を、はつり等により目荒らしした上で、本発明の柱梁接合部の補強構造を設置してもよい。このようにすることにより、既存の躯体部分と、柱梁接合部の補強構造内に充填される充填性固化材(充填コンクリート、充填モルタル)との間の応力伝達が円滑になり、応力伝達箇所が分散されることにより特定箇所への応力集中を防止できるとともに、柱梁接合部に加わるせん断力を、柱梁接合部の補強構造に円滑に流すことによって、該柱梁接合部の補強構造に多くのせん断力を受け持たせることができる。また、上記の実施の形態中に挙げたスタッドコネクタに代えて、フックなどを突起として使用してもよい。また、充填性固化材の内部には、鉄筋を配筋してもよい。このようにすることにより、充填性固化材のせん断強度およびせん断剛性が高められ、接合部のせん断耐力を一層増大させることができる。その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0051】
【発明の効果】請求項1記載の柱梁接合部の補強構造によれば、建築物に地震力が加わった際に、柱と梁との接合部にせん断力が加わるが、このせん断力のうち、圧縮方向の力が、前記充填性固化材によって受け持たれ、また、引張方向の力が、互いに連結された底板と側板と連結材とに内嵌されて核となる充填性固化材と、スラブに固定された連結材とにより、一体的に受け持たれる。したがって、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0052】請求項2記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項1と同様の効果が得られるとともに、前記側板または底板のうち少なくとも一方の内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられているため、側板または底板のうち少なくとも一方と充填性固化材との一体性が高められ、側板または底板と充填性固化材の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0053】請求項3記載の柱梁接合部の補強構造によれば、前記補強被覆材により接合部が拘束されるので、この拘束効果によって接合部内のコンクリートの強度・剛性が高められ、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0054】また、前記リブプレートにより、接合部に生じるせん断力の一部が分担して受け持たれるので、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0055】さらに、接合部近傍の柱および梁の周囲が補強被覆材により拘束されているので、この部分が接合部と一体となってせん断変形することにより、接合部のせん断有効せいまたはせん断有効幅が大きくなる。したがって、接合部のせん断耐力が増大する。
【0056】請求項4記載の柱梁接合部の補強構造によれば、接合部に生じるせん断力の一部が、前記せん断抵抗板により分担して受け持たれるので、接合部のせん断補強効果が得られる。
【0057】請求項5記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項4と同様の効果が得られるとともに、前記締結材がせん断抵抗板の内側に配置されているので、補強構造を外側から見た際の収まりがよい。
【0058】請求項6記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項4または5と同様の効果が得られるとともに、前記せん断抵抗板の内側に充填性固化材が充填されているので、硬化した充填性固化材によりせん断抵抗板がその面外に座屈しようとするのを内側から拘束することによって、せん断抵抗板が十分な耐力を発揮する前に座屈して耐力が低下するのをある程度防ぐことができるため、接合部のせん断補強効果が高められる。
【0059】また、せん断抵抗板で接合部が取り囲まれ、せん断抵抗板と接合部の間の隙間に充填性固化材が充填されていることにより、接合部内の鉄筋コンクリートまたは鉄骨鉄筋コンクリートが拘束され、この拘束効果によって、接合部のせん断強度・せん断剛性が高められる。
【0060】請求項7記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項6と同様の効果が得られるとともに、前記締結材を締め込むことによって、前記充填性固化材および既存部分の接合部がより一層拘束されるため、この拘束効果によって、接合部および充填性固化材のせん断強度・せん断剛性が高められ、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0061】請求項8記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項6または7と同様の効果が得られるとともに、前記せん断抵抗板の内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられているため、せん断抵抗板と充填性固化材との一体性が高められ、せん断抵抗板と充填性固化材の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【0062】請求項9記載の柱梁接合部の補強構造によれば、建築物に地震力が加わった際に、柱と梁との接合部に加わるせん断力の一部を、緊張材と、該緊張材によって拘束された底板および側板とによって拘束された充填性固化材によって受け持つことができるので、接合部のせん断耐力を増大させることができる。
【0063】請求項10記載の柱梁接合部の補強構造によれば、請求項9と同様の効果が得られるとともに、前記底板または側板のうち少なくとも一方の内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられているため、底板または側板のうち少なくとも一方と充填性固化材との一体性が高められ、底板または側板と充填性固化材の剛性が大きくなるため、接合部のせん断補強効果が一層高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の柱梁接合部の補強構造の第1の例を示すもので、(a)は、該柱梁接合部の補強構造の設置状況を示す平面図であり、(b)は、同、側面図である。
【図2】同、第2の例を示すもので、(a)は、該柱梁接合部の補強構造の設置状況を示す平面図であり、(b)は、同、側面図である。
【図3】同、第3の例を示すもので、(a)は、該柱梁接合部の補強構造の設置状況を示す平面図であり、(b)は、同、側面図である。
【図4】同、第4の例を示すもので、(a)は、該柱梁接合部の補強構造の設置状況を示す平面図であり、(b)は、同、側面図である。
【図5】同、第5の例を示すもので、(a)は、該柱梁接合部の補強構造の設置状況を示す平面図であり、(b)は、同、側面図である。
【符号の説明】
10,20,30,40,50 柱梁接合部の補強構造
11,51 底板
12,52,52a 側板
14 連結材
15,45,55 充填性固化材(充填コンクリート)
25,35 充填性固化材(充填モルタル)
26 補強被覆材
26a リブプレート
27,37,47 締結材(貫通ボルト)
38,48 せん断抵抗板
11c,12c,48c,51c,52c 突起
59v,59h 緊張材
100,200,300,400,500 接合部
110,210,310,410,510 柱
120,121,220,320,420,520 梁
130,230,330,430,530 スラブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】柱と梁の接合部において、該接合部が、これを下から覆うように、柱断面周囲に配された底板と、前記接合部を横から覆うように、梁断面周囲に配された側板とにより取り囲まれており、前記底板と前記側板とは、互いに結合されており、前記底板は、それが柱面と接する縁部において、柱面と密接し、前記側板は、それが梁面と接する縁部において、梁面と密接し、前記底板は、連結材を介して前記接合部上に位置するスラブに固定されており、前記底板と前記側板とにより取り囲まれた前記接合部周囲の空間には充填性固化材が充填されていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項2】請求項1記載の柱梁接合部の補強構造において、前記底板または側板のうち少なくとも一方には、その内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項3】柱と梁の接合部において、該接合部および接合部下近傍における柱の側面全周と、前記接合部横近傍の梁の側面および下面とが補強被覆材で覆われており、前記補強被覆材には、前記柱と梁の接合部近傍における柱の側面と梁の下面とを覆う隅角部分に、リブプレートが設けられており、前記補強被覆材は、前記梁をその幅方向に貫通する締結材を介して梁に固定されていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項4】柱と梁の接合部において、該接合部および接合部下近傍における柱の側面全周がせん断抵抗板で覆われ、かつ、前記梁を挟んで配置されているせん断抵抗板の部分どうしが、前記梁を貫通する締結材によって締結されており、前記せん断抵抗板の下辺部は、前記柱の側面に結合され、前記せん断抵抗板の上辺部は、前記接合部上に位置するスラブに結合されていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項5】請求項4記載の柱梁接合部の補強構造において、前記梁を貫通している締結材の、該梁から突出している部分が、前記せん断抵抗板の内側に配置されていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項6】請求項4または5記載の柱梁接合部の補強構造において、前記せん断抵抗板と、前記接合部の外面との間には隙間が設けられており、この隙間には充填性固化材が充填されていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項7】請求項6記載の柱梁接合部の補強構造において、前記締結材を締め込むことによって、前記せん断抵抗板を介して、前記充填性固化材の拘束力が高められていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項8】請求項6または7記載の柱梁接合部の補強構造において、前記せん断抵抗板には、その内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項9】柱と梁の接合部において、該接合部が、これを下から覆うように、柱断面周囲に配された底板と、前記接合部を横から覆うように、梁断面周囲に配された側板とにより取り囲まれており、前記底板と前記側板とは、互いに結合されており、前記底板は、それが柱面と接する縁部において、柱面と密接し、前記側板は、それが梁面と接する縁部において、梁面と密接し、前記底板と前記側板とにより取り囲まれた前記接合部周囲の空間には充填性固化材が充填され、前記充填性固化材中には、緊張材が挿通され、この緊張材は、底板および側板のうちの少なくとも一方に係合しており、前記緊張材によって、充填性固化材と、底板および側板のうちの少なくとも一方とが拘束されていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項10】請求項9記載の柱梁接合部の補強構造において、前記底板または側板のうち少なくとも一方には、その内面上に、前記充填性固化材と係合する突起が設けられていることを特徴とする柱梁接合部の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−40881(P2001−40881A)
【公開日】平成13年2月13日(2001.2.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−219193
【出願日】平成11年8月2日(1999.8.2)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】