柱梁架構の耐震補強構造
【課題】現場での溶接を行うことなく補強部材を取り付けることによって耐震補強が可能であり、従来よりも簡便に補強できる柱梁架構の耐震補強構造を提供すること。
【解決手段】柱梁架構の耐震補強構造１０において、柱１２または梁１４とともに補強部材１６の端部あるいは補強部材１６の端部に取り付けられたガセットプレート１８に鋼製バンド２０が巻き付けられることにより、補強部材１６の端部が柱１２または梁１４に固定されるようにした。
【解決手段】柱梁架構の耐震補強構造１０において、柱１２または梁１４とともに補強部材１６の端部あるいは補強部材１６の端部に取り付けられたガセットプレート１８に鋼製バンド２０が巻き付けられることにより、補強部材１６の端部が柱１２または梁１４に固定されるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建物の柱梁架構に補強部材を設置して補強する柱梁架構の耐震補強構造に関し、さらに詳しくは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などの建物の柱梁架構に補強部材を設置して補強する柱梁架構の耐震補強構造に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、鉄骨造などの建物の柱梁架構を補強する方法としては、これらの建物の柱梁架構に方杖やブレースなどの補強部材を設置する方法がある。このような補強部材を建物の柱梁架構に設置することで、水平力に対して建物の耐力を増加させることができる。この際、柱梁架構に生じる応力を補強部材に十分伝達させるためには、補強部材の端部を柱梁架構に接合して一体化させることが必要である。したがって、その接合方法が重要となる。
【０００３】
鉄骨造における接合方法としては、溶接が良く知られている。具体的には、ブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定するガセットプレートを溶接によって柱梁架構の柱あるいは梁に取り付け、取り付けられたガセットプレートにブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定する方法などがある。
【０００４】
また、この種の接合方法においては、溶接を用いない接合方法も知られている。例えば特許文献１には、ブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定するガセットプレートが固定された板部材を建物の梁又は柱をなす鋼管に接着し、この板部材の各端部で鋼管に繊維シートを巻き付けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００８−１９６６２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ここで、溶接による場合には、現場において柱梁架構の柱あるいは梁にガセットプレートの溶接を行う必要がある。この場合には、火事等の発生を予防する目的から、大規模な溶接養生が必要となり、コストの増加に繋がる。また、現場の環境が悪い場合（例えば、上向きに溶接を行う必要がある場合など）などでは溶接欠陥などが生じることがあり、耐震性能の低下が心配される。そこで、現場での溶接を必要としない接合方法が望まれる。
【０００７】
これに対し、特許文献１に記載の方法は、現場での溶接を必要としない接合方法ではあるが、現場にて鋼管に繊維シートを何重にも巻き付けることから、繊維シートを何重にも巻き付ける煩雑な工程が必要となり、施工中に多大な労力と時間を要する。そこで、溶接を用いない方法であって、より簡便にガセットプレートを柱梁架構に接合できる接合方法が望まれる。
【０００８】
本発明が解決しようとする課題は、現場での溶接を行うことなく補強部材を取り付けることによって耐震補強が可能であり、従来よりも簡便に補強できる柱梁架構の耐震補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記課題を解決するために本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造は、建物の柱梁架構に補強部材が設置されて補強される柱梁架構の耐震補強構造において、前記柱または梁とともに前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドが巻き付けられることにより、前記補強部材の端部が前記柱または梁に固定されていることを要旨とするものである。
【００１０】
この際、前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートには、前記柱または梁の周面に面を合わせて設置される固定面部が備えられ、該固定面部は、前記柱または梁の幅方向の端部まで延設されており、前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに作用する圧縮力による応力が、該固定面部によって前記柱または梁の幅方向の端部まで分散されていても良い。
【発明の効果】
【００１１】
本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造によれば、柱または梁とともに補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドが巻き付けられることにより補強部材の端部が柱または梁に固定されることから、現場での溶接を行うことなく柱梁架構の柱または梁に補強部材を取り付けることができる。したがって、現場での溶接を行うことなく耐震補強を行うことができる。また、繊維シートよりも高強度・高剛性な鋼製バンドを用いているため、従来のように繊維シートを何重にも巻き付ける必要がなく、柱または梁とともに補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドを巻き付けることにより柱または梁に補強部材の端部を固定することができるため、従来よりも簡便に補強することができる。
【００１２】
この際、補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに、柱または梁の周面に面を合わせて設置される固定面部が備えられ、固定面部が柱または梁の幅方向の端部まで延設されており、補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに作用する圧縮力による応力が固定面部によって柱または梁の幅方向の端部まで分散されていれば、柱または梁に鋼管を用いたときに、端部のフランジ面まで応力を伝達することができる。これにより、柱または梁の外面が変形するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造の模式図である。
【図２】図１の柱梁架構の耐震補強構造において用いる鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。
【図３】図１の柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図４】本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な他の実施形態の鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。
【図５】他の実施形態のガセットプレートを適用した柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図６】本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図７】本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図８】本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な他の実施形態の鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。
【図９】本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な他の実施形態の鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図（ａ）と、これを柱１２に適用した図（ｂ）である。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
以下に、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。図１は、本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造の模式図である。図２は、図１の柱梁架構の耐震補強構造において用いる鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。図３は、図１の柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【００１５】
図１に示す本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造１０において、耐震補強を施す建物は鉄骨造よりなるものである。柱梁架構の柱１２は鋼管よりなる鋼管柱（いわゆるＢＯＸ柱）であり、鋼管は径方向の断面形状が略四角形状であるものからなる。また、柱梁架構の梁１４はＨ形鋼で構成されている。このような構成の柱梁架構に対して、補強部材としてのブレース１６を設置することにより柱梁架構の耐震補強が行われる。ブレース１６には、例えばＨ形鋼や溝形鋼などの鋼材などが用いられる。
【００１６】
ブレース１６は、地震等の振動によって建物に作用する水平力（層間変形による力）に対して抵抗するものであり、例えば柱梁架構の対角を繋ぐように設置される。鉄骨造の柱梁架構の梁１４には、通常、スラブがあることから、ブレース１６の端部は柱１２と梁１４の接合部に隣接する位置の柱１２に取り付けられる。例えば、梁１４にスラブがない場合などでは、ブレース１６の端部は、接合部に隣接する位置の梁１４に取り付けられても良いし、接合部に隣接する位置の柱１２と梁１４の両方に取り付けられても良い。ブレース１６の端部を柱梁架構の柱１２に取り付けるための取付金具として、ガセットプレート１８が用いられる。
【００１７】
ガセットプレート１８は、柱１２の周面に面を合わせて設置される固定面部１８ａと、固定面部１８ａから立設されてブレース１６の端部が取り付けられる取付部１８ｂとを備えた、いわゆるカットＴ（Ｔ字状の部材）で構成されている。固定面部１８ａおよび取付部１８ｂは一体的に形成されており、固定面部１８ａと取付部１８ｂとが接合された接合部には、取付部１８ｂの面に直交する方向に沿って、鋼板バンド２０を通すための挿通孔１８ｃが貫通形成されている。ガセットプレート１８の取付部１８ｂの面内には、ブレース１６の端部をボルト２２で固定するために設けられたブレース用の固定孔１８ｄが備えられている。ガセットプレート１８は、鋼板バンド２０を用いて柱梁架構の柱１２に取り付けられる。
【００１８】
鋼板バンド２０は、帯状もしくはテープ状に長く薄く延ばされた鋼製のバンドであり、いわゆる帯鉄である。鋼板バンド２０の長さとしては、特に限定されるものではなく、ガセットプレート１８を固定する柱１２の外周を２周以上巻く長さにしても良いが、その外周を１周巻く長さであれば十分である。鋼板バンド２０の両端部は、ガセットプレート１８を固定する柱１２の外周面上で所定の長さに重ね合わされている。この重ね合わせ部２０ａは、柱１２の外周面に沿って鋼板バンド２０が引き締められた状態で接合されている。
【００１９】
柱梁架構の柱１２にガセットプレート１８を固定するには、柱１２の周面に固定面部１８ａの面を合わせてガセットプレート１８を設置し、ガセットプレート１８の固定面部１８ａと取付部１８ｂとの接合部に形成された挿通孔１８ｃに鋼板バンド２０を通し、柱１２とともに固定面部１８ａに鋼板バンド２０を巻き付ける。この際、引き締め機などで、柱１２とともに固定面部１８ａに巻いた鋼板バンド２０を引き締める。このように引き締めた状態において、重ね合わせ部２０ａで鋼板バンド２０の両端部を接合する。これにより、柱１２にガセットプレート１８を強固に固定する。次いで、柱１２に固定したガセットプレート１８に、ボルト２２を用いてブレース１６の端部を固定する。これにより、柱梁架構にブレース１６が架設されて柱梁架構が補強される。
【００２０】
このような柱梁架構の耐震補強構造１０によれば、ガセットプレート１８の固定面部１８ａが柱１２の周面に面を合わせて設置された状態で柱１２とともに固定面部１８ａが鋼板バンド２０で巻き付けられることによりガセットプレート１８が柱１２に固定されるから、現場での溶接を行うことなく柱梁架構の柱１２にガセットプレート１８を取り付けることができる。そして、このガセットプレート１８にブレース１６の端部を取り付けることで、現場での溶接を行うことなく耐震補強を行うことができる。
【００２１】
このとき、繊維シートよりも高強度・高剛性な鋼板バンド２０を用いているため、従来のように繊維シートを何重にも巻き付ける必要がなく、柱１２とともにガセットプレート１８の固定面部１８ａに鋼板バンド２０を巻き付けることにより柱１２にガセットプレート１８を固定することができるため、従来よりも簡便に補強することができる。
【００２２】
次に、本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な、他の形態のガセットプレートについて説明する。図４に、他の形態のガセットプレートの一例を示す。
【００２３】
図４に示すガセットプレート３０は、図２に示すガセットプレート１８と同様、固定面部３０ａと固定面部３０ａから立設された取付部３０ｂとを備え、これらが一体的に形成された構成であるが、固定面部３０ａと取付部３０ｂとの接合部に鋼板バンド２０を通すための挿通孔が形成されていないものである。図４に示すガセットプレート３０は、取付部３０ｂの長手方向の長さが固定面部３０ａの長手方向の長さよりも短くなっており、柱１２とともにこの固定面部３０ａの長手方向の両端に鋼板バンド２０が巻き付けられる。これ以外の他の構成については、図２に示すガセットプレート１８と同様であるため、その説明を省略する。
【００２４】
また、本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な、他の形態のガセットプレートについて説明する。図５に、他の形態のガセットプレート４０の一例を示す。
【００２５】
図５に示すガセットプレート４０は、図２に示すガセットプレート１８と比べて、固定面部４０ａが柱１２の幅方向の端部まで延設されている点が相違している。これ以外の構成については、図２に示すガセットプレート１８と同様であるため、その説明を省略する。
【００２６】
柱１２は、径方向の断面形状が略四角形状の鋼管柱（いわゆるＢＯＸ柱）であり、柱１２の幅方向両端には隣接する外面がある。隣接する外面は、ガセットプレート４０を取り付ける面の幅方向両端部を支えるフランジ面となっている。固定面部４０ａは、このフランジ面の上まで（柱１２の幅方向両端部まで）延びており、柱１２の幅方向両端部まで応力を分散させることができる。すなわち、応力を幅方向両端部のフランジ面まで伝達させることができる。これにより、柱１２の外面はさらに凹みにくく（変形しにくく）されている。
【００２７】
なお、固定面部４０ａの板厚は、応力分散機能を確保するなどの観点から、柱１２の板厚よりも厚いことが好ましい。
【００２８】
ここで、上記の各実施形態においては、柱１２と梁１４とで囲まれた１つの壁面内にのみガセットプレートが取り付けられている構成が示されているが、例えば、隣り合う２つ以上の壁面に対し、同時に２つ以上のガセットプレートを取り付けることもできる。そこで、以下に、本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造について説明する。
【００２９】
図６および図７は、それぞれ、本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。図６は、例えば建物の角部に配置された柱１２に対して設置する例を示したものであり、角部において直交する２つの壁面に対し、鋼板バンド２０を用いて同時に２つのガセットプレートを取り付けるものである。図７は、建物の面内に配置された柱１２に対して設置する例を示したものであり、同一面内で隣り合う２つの壁面に対し、鋼板バンド２０を用いて同時に２つのガセットプレートを取り付けるものである。
【００３０】
図６に示す構造および図７に示す構造は、図２に示す構造と比べて、２つのガセットプレートを用いている点が相違している。これ以外の構成については図２に示すものと同様であるため、その説明を省略する。
【００３１】
図６において、鋼板バンド２０は、柱１２の一の外面１２ａに固定面部１８１ａの面を合わせて設置された第１のガセットプレート１８１の挿通孔１８１ｃと、第１のガセットプレート１８１が設置された外面１２ａの隣りの外面１２ｂに固定面部１８２ａの面を合わせて設置された第２のガセットプレート１８２の挿通孔１８２ｃの両方に通されており、柱１２とともに固定面部１８１ａ，１８２ａに鋼板バンド２０が巻き付けられている。この状態で鋼板バンド２０は引き締められ、このように引き締められた状態において、その重ね合わせ部２０ａで鋼板バンド２０の両端部が接合されている。次いで、各々のガセットプレート１８１，１８２に各ブレース１６，１６の端部をそれぞれ取り付ければ、角部において直交する２つの壁面を補強することができる。
【００３２】
図６に示す構造は、断面形状が略四角形状の鋼管柱よりなる柱１２の隣り合う（直交する）２つの面の外面１２ａ，１２ｂに２つのガセットプレート１８１，１８２が固定された構造であるのに対し、図７に示す構造は、断面形状が略四角形状の鋼管柱よりなる柱１２の向かい合う（平行な）２つの面の外面１２ａ，１２ｃに２つのガセットプレート１８１，１８２が固定された構造である点が相違している。これ以外の構成については図６に示すものと同様であるため、その説明を省略する。したがって、各々のガセットプレート１８１，１８２に各ブレース１６，１６の端部をそれぞれ取り付ければ、同一面内で隣り合う２つの壁面を補強することができる。
【００３３】
なお、図６に示す構造や図７示す構造においては、ガセットプレート１８１，１８２の固定面部１８１ａ，１８２ａの幅（短手方向の長さ）は、柱１２の幅方向両端部よりも短い長さとされているが、固定面部１８１ａ，１８２ａが柱１２の幅方向両端部まで延びるように構成し、柱１２の幅方向両端部まで応力を分散させることにより（応力を幅方向両端部のフランジ面まで伝達させることにより）、柱１２の外面が凹みにくく（変形しにくく）なるようにしても良い。
【００３４】
また、図６に示す構造や図７示す構造においては、隣り合う２つの壁面に対し、同時に２つのガセットプレート１８１，１８２を取り付ける例を示しているが、これらは一例として挙げたものであり、本発明においては、例えば、ガセットプレートの数をさらに増やすことで、隣り合う３つ以上の壁面に対し、同時に３つ以上のガセットプレートを取り付けることも可能である。
【００３５】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【００３６】
例えば上記実施形態においては、耐震補強を施す建物として鉄骨造のものを例に挙げて本発明を説明しているが、このような耐震補強構造を適用可能な建物としては、鉄骨造のものに限定されず、鉄筋コンクリート造のものや鉄骨鉄筋コンクリート造のものなどにも適用することができるのはいうまでもない。例えば耐震補強を施す建物が鉄筋コンクリート造などである場合には、鋼板バンド２０を取り付ける柱１２に滑らかではない角があるときなどには、必要に応じて角金物を設置して鋼板バンド２０を巻く角を滑らかにしても良い。
【００３７】
また、上記実施形態においては、柱梁架構の柱１２として径方向の断面形状が略四角形状の鋼管柱を例に挙げて本発明を説明しているが、略四角形状以外の断面形状（例えば円状や四角形状以外の多角形状など）の鋼管柱であっても良いし、Ｈ形鋼や溝形鋼などの形鋼よりなる柱であっても良い。このような構造の柱であっても本発明の耐震補強構造は適用可能である。この場合においても、必要に応じて角金物を設置して鋼板バンド２０を巻く角を滑らかにしても良い。
【００３８】
また、上記実施形態においては、補強部材としてブレースを例に挙げて本発明を説明しているが、方杖などの補強部材に対しても本発明の耐震補強構造は適用可能である。
【００３９】
また、上記実施形態においては、２本の鋼板バンド２０でガセットプレートを固定しているが、１本あるいは３本以上の鋼板バンド２０でガセットプレートを固定しても良い。
【００４０】
また、上記実施形態においては、ガセットプレートは、一体的に形成された固定面部と取付部とを有するものであり、柱１２の周面に面を合わせて設置される部分と、ブレース１６の端部が取り付けられる部分と、が一体的に形成されたものとして示されているが、これらの部分は互いに別体のものとして構成されていても良い。例えば図８に示すように、柱１２の周面に面を合わせて設置される部分としての固定部材５２を備えるとともに、固定部材５２とは別個に、ブレース１６の端部が取り付けられる取付部としての取付部材５４を備えたガセットプレート５０を用いることもできる。
【００４１】
取付部材５４には、ブレース１６の端部をボルトで固定するために設けられたブレース用の固定孔５４ａと、後述する固定部材５２の連結面部５２ｂにボルトで固定するために設けられた固定部材用の固定孔５４ｂとが備えられている。
【００４２】
ガセットプレート５０の固定部材５２は、柱１２の周面に面を合わせて設置される固定面部５２ａと、固定面部５２ａから立設されて取付部材５４が連結される連結面部５２ｂとを備えた、いわゆるカットＴ（Ｔ字状の部材）で構成されている。固定面部５２ａおよび連結面部５２ｂは一体的に形成されており、固定面部５２ａと連結面部５２ｂとが接合された接合部には、連結面部５２ｂの面に直交する方向に沿って、鋼板バンド２０を通すための挿通孔５２ｃが貫通形成されている。また、連結面部５２ｂの面内には、取付部材５４の固定部材用の固定孔５４ｂとともにボルトが挿通される挿通孔５２ｄが連結面部５２ｂの面に直交する方向に沿って形成されている。
【００４３】
また、上記実施形態においては、ガセットプレート１８は、固定面部１８ａからＴ字状に取付部１８ｂが立設されているが、固定面部１８ａから取付部１８ｂがＬ字状に立設されている構成であっても良い。さらに、図９に示すように、固定面部６０ａから取付部６０ｂが同一平面内に延設されたガセットプレート６０であっても良い。
【００４４】
また、上記実施形態においては、補強部材であるブレース１６とは別体のガセットプレート１８を用いてブレース１６の端部が鋼板バンド２０によって柱１２に固定されているが、例えば補強部材であるブレース１６とガセットプレート１８とが一体となっていても良い。すなわち、補強部材であるブレース１６の端部がガセットプレート１８様の形状をしており、柱１２とともにブレース１６の端部に直接鋼板バンド２０が巻き付けられることによりブレース１６の端部が柱１２に固定されていても良い。
【００４５】
また、上記実施形態においては、鋼板バンド２０の両端部は重ね合わせ部２０ａで接合されているが、この際、例えば鋼製のシール部材などを用いて重ね合わせ部２０ａの全周をシール部材で覆い、封緘機などを用いて、覆っているシール部材をその厚み方向に封緘することにより、鋼板バンド２０の両端部を接合しても良い。また、上記実施形態においては、鋼板バンド２０が示されているが、バンドとしては、鋼製であれば良く、板状（帯状）に代えて線状であっても良い。
【符号の説明】
【００４６】
１０ 柱梁架構の耐震補強構造
１２ 柱
１４ 梁
１６ 補強部材（ブレース）
１８ ガセットプレート
１８ａ 固定面部
１８ｂ 取付部
２０ 鋼板バンド
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建物の柱梁架構に補強部材を設置して補強する柱梁架構の耐震補強構造に関し、さらに詳しくは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などの建物の柱梁架構に補強部材を設置して補強する柱梁架構の耐震補強構造に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、鉄骨造などの建物の柱梁架構を補強する方法としては、これらの建物の柱梁架構に方杖やブレースなどの補強部材を設置する方法がある。このような補強部材を建物の柱梁架構に設置することで、水平力に対して建物の耐力を増加させることができる。この際、柱梁架構に生じる応力を補強部材に十分伝達させるためには、補強部材の端部を柱梁架構に接合して一体化させることが必要である。したがって、その接合方法が重要となる。
【０００３】
鉄骨造における接合方法としては、溶接が良く知られている。具体的には、ブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定するガセットプレートを溶接によって柱梁架構の柱あるいは梁に取り付け、取り付けられたガセットプレートにブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定する方法などがある。
【０００４】
また、この種の接合方法においては、溶接を用いない接合方法も知られている。例えば特許文献１には、ブレースなどの補強部材の端部をボルトなどで固定するガセットプレートが固定された板部材を建物の梁又は柱をなす鋼管に接着し、この板部材の各端部で鋼管に繊維シートを巻き付けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００８−１９６６２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ここで、溶接による場合には、現場において柱梁架構の柱あるいは梁にガセットプレートの溶接を行う必要がある。この場合には、火事等の発生を予防する目的から、大規模な溶接養生が必要となり、コストの増加に繋がる。また、現場の環境が悪い場合（例えば、上向きに溶接を行う必要がある場合など）などでは溶接欠陥などが生じることがあり、耐震性能の低下が心配される。そこで、現場での溶接を必要としない接合方法が望まれる。
【０００７】
これに対し、特許文献１に記載の方法は、現場での溶接を必要としない接合方法ではあるが、現場にて鋼管に繊維シートを何重にも巻き付けることから、繊維シートを何重にも巻き付ける煩雑な工程が必要となり、施工中に多大な労力と時間を要する。そこで、溶接を用いない方法であって、より簡便にガセットプレートを柱梁架構に接合できる接合方法が望まれる。
【０００８】
本発明が解決しようとする課題は、現場での溶接を行うことなく補強部材を取り付けることによって耐震補強が可能であり、従来よりも簡便に補強できる柱梁架構の耐震補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記課題を解決するために本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造は、建物の柱梁架構に補強部材が設置されて補強される柱梁架構の耐震補強構造において、前記柱または梁とともに前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドが巻き付けられることにより、前記補強部材の端部が前記柱または梁に固定されていることを要旨とするものである。
【００１０】
この際、前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートには、前記柱または梁の周面に面を合わせて設置される固定面部が備えられ、該固定面部は、前記柱または梁の幅方向の端部まで延設されており、前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに作用する圧縮力による応力が、該固定面部によって前記柱または梁の幅方向の端部まで分散されていても良い。
【発明の効果】
【００１１】
本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造によれば、柱または梁とともに補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドが巻き付けられることにより補強部材の端部が柱または梁に固定されることから、現場での溶接を行うことなく柱梁架構の柱または梁に補強部材を取り付けることができる。したがって、現場での溶接を行うことなく耐震補強を行うことができる。また、繊維シートよりも高強度・高剛性な鋼製バンドを用いているため、従来のように繊維シートを何重にも巻き付ける必要がなく、柱または梁とともに補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドを巻き付けることにより柱または梁に補強部材の端部を固定することができるため、従来よりも簡便に補強することができる。
【００１２】
この際、補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに、柱または梁の周面に面を合わせて設置される固定面部が備えられ、固定面部が柱または梁の幅方向の端部まで延設されており、補強部材の端部あるいは補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに作用する圧縮力による応力が固定面部によって柱または梁の幅方向の端部まで分散されていれば、柱または梁に鋼管を用いたときに、端部のフランジ面まで応力を伝達することができる。これにより、柱または梁の外面が変形するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造の模式図である。
【図２】図１の柱梁架構の耐震補強構造において用いる鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。
【図３】図１の柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図４】本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な他の実施形態の鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。
【図５】他の実施形態のガセットプレートを適用した柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図６】本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図７】本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【図８】本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な他の実施形態の鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。
【図９】本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な他の実施形態の鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図（ａ）と、これを柱１２に適用した図（ｂ）である。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
以下に、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。図１は、本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造の模式図である。図２は、図１の柱梁架構の耐震補強構造において用いる鋼板バンドとガセットプレートの組み合わせを示した図である。図３は、図１の柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。
【００１５】
図１に示す本発明の一実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造１０において、耐震補強を施す建物は鉄骨造よりなるものである。柱梁架構の柱１２は鋼管よりなる鋼管柱（いわゆるＢＯＸ柱）であり、鋼管は径方向の断面形状が略四角形状であるものからなる。また、柱梁架構の梁１４はＨ形鋼で構成されている。このような構成の柱梁架構に対して、補強部材としてのブレース１６を設置することにより柱梁架構の耐震補強が行われる。ブレース１６には、例えばＨ形鋼や溝形鋼などの鋼材などが用いられる。
【００１６】
ブレース１６は、地震等の振動によって建物に作用する水平力（層間変形による力）に対して抵抗するものであり、例えば柱梁架構の対角を繋ぐように設置される。鉄骨造の柱梁架構の梁１４には、通常、スラブがあることから、ブレース１６の端部は柱１２と梁１４の接合部に隣接する位置の柱１２に取り付けられる。例えば、梁１４にスラブがない場合などでは、ブレース１６の端部は、接合部に隣接する位置の梁１４に取り付けられても良いし、接合部に隣接する位置の柱１２と梁１４の両方に取り付けられても良い。ブレース１６の端部を柱梁架構の柱１２に取り付けるための取付金具として、ガセットプレート１８が用いられる。
【００１７】
ガセットプレート１８は、柱１２の周面に面を合わせて設置される固定面部１８ａと、固定面部１８ａから立設されてブレース１６の端部が取り付けられる取付部１８ｂとを備えた、いわゆるカットＴ（Ｔ字状の部材）で構成されている。固定面部１８ａおよび取付部１８ｂは一体的に形成されており、固定面部１８ａと取付部１８ｂとが接合された接合部には、取付部１８ｂの面に直交する方向に沿って、鋼板バンド２０を通すための挿通孔１８ｃが貫通形成されている。ガセットプレート１８の取付部１８ｂの面内には、ブレース１６の端部をボルト２２で固定するために設けられたブレース用の固定孔１８ｄが備えられている。ガセットプレート１８は、鋼板バンド２０を用いて柱梁架構の柱１２に取り付けられる。
【００１８】
鋼板バンド２０は、帯状もしくはテープ状に長く薄く延ばされた鋼製のバンドであり、いわゆる帯鉄である。鋼板バンド２０の長さとしては、特に限定されるものではなく、ガセットプレート１８を固定する柱１２の外周を２周以上巻く長さにしても良いが、その外周を１周巻く長さであれば十分である。鋼板バンド２０の両端部は、ガセットプレート１８を固定する柱１２の外周面上で所定の長さに重ね合わされている。この重ね合わせ部２０ａは、柱１２の外周面に沿って鋼板バンド２０が引き締められた状態で接合されている。
【００１９】
柱梁架構の柱１２にガセットプレート１８を固定するには、柱１２の周面に固定面部１８ａの面を合わせてガセットプレート１８を設置し、ガセットプレート１８の固定面部１８ａと取付部１８ｂとの接合部に形成された挿通孔１８ｃに鋼板バンド２０を通し、柱１２とともに固定面部１８ａに鋼板バンド２０を巻き付ける。この際、引き締め機などで、柱１２とともに固定面部１８ａに巻いた鋼板バンド２０を引き締める。このように引き締めた状態において、重ね合わせ部２０ａで鋼板バンド２０の両端部を接合する。これにより、柱１２にガセットプレート１８を強固に固定する。次いで、柱１２に固定したガセットプレート１８に、ボルト２２を用いてブレース１６の端部を固定する。これにより、柱梁架構にブレース１６が架設されて柱梁架構が補強される。
【００２０】
このような柱梁架構の耐震補強構造１０によれば、ガセットプレート１８の固定面部１８ａが柱１２の周面に面を合わせて設置された状態で柱１２とともに固定面部１８ａが鋼板バンド２０で巻き付けられることによりガセットプレート１８が柱１２に固定されるから、現場での溶接を行うことなく柱梁架構の柱１２にガセットプレート１８を取り付けることができる。そして、このガセットプレート１８にブレース１６の端部を取り付けることで、現場での溶接を行うことなく耐震補強を行うことができる。
【００２１】
このとき、繊維シートよりも高強度・高剛性な鋼板バンド２０を用いているため、従来のように繊維シートを何重にも巻き付ける必要がなく、柱１２とともにガセットプレート１８の固定面部１８ａに鋼板バンド２０を巻き付けることにより柱１２にガセットプレート１８を固定することができるため、従来よりも簡便に補強することができる。
【００２２】
次に、本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な、他の形態のガセットプレートについて説明する。図４に、他の形態のガセットプレートの一例を示す。
【００２３】
図４に示すガセットプレート３０は、図２に示すガセットプレート１８と同様、固定面部３０ａと固定面部３０ａから立設された取付部３０ｂとを備え、これらが一体的に形成された構成であるが、固定面部３０ａと取付部３０ｂとの接合部に鋼板バンド２０を通すための挿通孔が形成されていないものである。図４に示すガセットプレート３０は、取付部３０ｂの長手方向の長さが固定面部３０ａの長手方向の長さよりも短くなっており、柱１２とともにこの固定面部３０ａの長手方向の両端に鋼板バンド２０が巻き付けられる。これ以外の他の構成については、図２に示すガセットプレート１８と同様であるため、その説明を省略する。
【００２４】
また、本発明に係る柱梁架構の耐震補強構造に適用可能な、他の形態のガセットプレートについて説明する。図５に、他の形態のガセットプレート４０の一例を示す。
【００２５】
図５に示すガセットプレート４０は、図２に示すガセットプレート１８と比べて、固定面部４０ａが柱１２の幅方向の端部まで延設されている点が相違している。これ以外の構成については、図２に示すガセットプレート１８と同様であるため、その説明を省略する。
【００２６】
柱１２は、径方向の断面形状が略四角形状の鋼管柱（いわゆるＢＯＸ柱）であり、柱１２の幅方向両端には隣接する外面がある。隣接する外面は、ガセットプレート４０を取り付ける面の幅方向両端部を支えるフランジ面となっている。固定面部４０ａは、このフランジ面の上まで（柱１２の幅方向両端部まで）延びており、柱１２の幅方向両端部まで応力を分散させることができる。すなわち、応力を幅方向両端部のフランジ面まで伝達させることができる。これにより、柱１２の外面はさらに凹みにくく（変形しにくく）されている。
【００２７】
なお、固定面部４０ａの板厚は、応力分散機能を確保するなどの観点から、柱１２の板厚よりも厚いことが好ましい。
【００２８】
ここで、上記の各実施形態においては、柱１２と梁１４とで囲まれた１つの壁面内にのみガセットプレートが取り付けられている構成が示されているが、例えば、隣り合う２つ以上の壁面に対し、同時に２つ以上のガセットプレートを取り付けることもできる。そこで、以下に、本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造について説明する。
【００２９】
図６および図７は、それぞれ、本発明の他の実施形態に係る柱梁架構の耐震補強構造におけるガセットプレートの取付部分を拡大して示した図である。図６は、例えば建物の角部に配置された柱１２に対して設置する例を示したものであり、角部において直交する２つの壁面に対し、鋼板バンド２０を用いて同時に２つのガセットプレートを取り付けるものである。図７は、建物の面内に配置された柱１２に対して設置する例を示したものであり、同一面内で隣り合う２つの壁面に対し、鋼板バンド２０を用いて同時に２つのガセットプレートを取り付けるものである。
【００３０】
図６に示す構造および図７に示す構造は、図２に示す構造と比べて、２つのガセットプレートを用いている点が相違している。これ以外の構成については図２に示すものと同様であるため、その説明を省略する。
【００３１】
図６において、鋼板バンド２０は、柱１２の一の外面１２ａに固定面部１８１ａの面を合わせて設置された第１のガセットプレート１８１の挿通孔１８１ｃと、第１のガセットプレート１８１が設置された外面１２ａの隣りの外面１２ｂに固定面部１８２ａの面を合わせて設置された第２のガセットプレート１８２の挿通孔１８２ｃの両方に通されており、柱１２とともに固定面部１８１ａ，１８２ａに鋼板バンド２０が巻き付けられている。この状態で鋼板バンド２０は引き締められ、このように引き締められた状態において、その重ね合わせ部２０ａで鋼板バンド２０の両端部が接合されている。次いで、各々のガセットプレート１８１，１８２に各ブレース１６，１６の端部をそれぞれ取り付ければ、角部において直交する２つの壁面を補強することができる。
【００３２】
図６に示す構造は、断面形状が略四角形状の鋼管柱よりなる柱１２の隣り合う（直交する）２つの面の外面１２ａ，１２ｂに２つのガセットプレート１８１，１８２が固定された構造であるのに対し、図７に示す構造は、断面形状が略四角形状の鋼管柱よりなる柱１２の向かい合う（平行な）２つの面の外面１２ａ，１２ｃに２つのガセットプレート１８１，１８２が固定された構造である点が相違している。これ以外の構成については図６に示すものと同様であるため、その説明を省略する。したがって、各々のガセットプレート１８１，１８２に各ブレース１６，１６の端部をそれぞれ取り付ければ、同一面内で隣り合う２つの壁面を補強することができる。
【００３３】
なお、図６に示す構造や図７示す構造においては、ガセットプレート１８１，１８２の固定面部１８１ａ，１８２ａの幅（短手方向の長さ）は、柱１２の幅方向両端部よりも短い長さとされているが、固定面部１８１ａ，１８２ａが柱１２の幅方向両端部まで延びるように構成し、柱１２の幅方向両端部まで応力を分散させることにより（応力を幅方向両端部のフランジ面まで伝達させることにより）、柱１２の外面が凹みにくく（変形しにくく）なるようにしても良い。
【００３４】
また、図６に示す構造や図７示す構造においては、隣り合う２つの壁面に対し、同時に２つのガセットプレート１８１，１８２を取り付ける例を示しているが、これらは一例として挙げたものであり、本発明においては、例えば、ガセットプレートの数をさらに増やすことで、隣り合う３つ以上の壁面に対し、同時に３つ以上のガセットプレートを取り付けることも可能である。
【００３５】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【００３６】
例えば上記実施形態においては、耐震補強を施す建物として鉄骨造のものを例に挙げて本発明を説明しているが、このような耐震補強構造を適用可能な建物としては、鉄骨造のものに限定されず、鉄筋コンクリート造のものや鉄骨鉄筋コンクリート造のものなどにも適用することができるのはいうまでもない。例えば耐震補強を施す建物が鉄筋コンクリート造などである場合には、鋼板バンド２０を取り付ける柱１２に滑らかではない角があるときなどには、必要に応じて角金物を設置して鋼板バンド２０を巻く角を滑らかにしても良い。
【００３７】
また、上記実施形態においては、柱梁架構の柱１２として径方向の断面形状が略四角形状の鋼管柱を例に挙げて本発明を説明しているが、略四角形状以外の断面形状（例えば円状や四角形状以外の多角形状など）の鋼管柱であっても良いし、Ｈ形鋼や溝形鋼などの形鋼よりなる柱であっても良い。このような構造の柱であっても本発明の耐震補強構造は適用可能である。この場合においても、必要に応じて角金物を設置して鋼板バンド２０を巻く角を滑らかにしても良い。
【００３８】
また、上記実施形態においては、補強部材としてブレースを例に挙げて本発明を説明しているが、方杖などの補強部材に対しても本発明の耐震補強構造は適用可能である。
【００３９】
また、上記実施形態においては、２本の鋼板バンド２０でガセットプレートを固定しているが、１本あるいは３本以上の鋼板バンド２０でガセットプレートを固定しても良い。
【００４０】
また、上記実施形態においては、ガセットプレートは、一体的に形成された固定面部と取付部とを有するものであり、柱１２の周面に面を合わせて設置される部分と、ブレース１６の端部が取り付けられる部分と、が一体的に形成されたものとして示されているが、これらの部分は互いに別体のものとして構成されていても良い。例えば図８に示すように、柱１２の周面に面を合わせて設置される部分としての固定部材５２を備えるとともに、固定部材５２とは別個に、ブレース１６の端部が取り付けられる取付部としての取付部材５４を備えたガセットプレート５０を用いることもできる。
【００４１】
取付部材５４には、ブレース１６の端部をボルトで固定するために設けられたブレース用の固定孔５４ａと、後述する固定部材５２の連結面部５２ｂにボルトで固定するために設けられた固定部材用の固定孔５４ｂとが備えられている。
【００４２】
ガセットプレート５０の固定部材５２は、柱１２の周面に面を合わせて設置される固定面部５２ａと、固定面部５２ａから立設されて取付部材５４が連結される連結面部５２ｂとを備えた、いわゆるカットＴ（Ｔ字状の部材）で構成されている。固定面部５２ａおよび連結面部５２ｂは一体的に形成されており、固定面部５２ａと連結面部５２ｂとが接合された接合部には、連結面部５２ｂの面に直交する方向に沿って、鋼板バンド２０を通すための挿通孔５２ｃが貫通形成されている。また、連結面部５２ｂの面内には、取付部材５４の固定部材用の固定孔５４ｂとともにボルトが挿通される挿通孔５２ｄが連結面部５２ｂの面に直交する方向に沿って形成されている。
【００４３】
また、上記実施形態においては、ガセットプレート１８は、固定面部１８ａからＴ字状に取付部１８ｂが立設されているが、固定面部１８ａから取付部１８ｂがＬ字状に立設されている構成であっても良い。さらに、図９に示すように、固定面部６０ａから取付部６０ｂが同一平面内に延設されたガセットプレート６０であっても良い。
【００４４】
また、上記実施形態においては、補強部材であるブレース１６とは別体のガセットプレート１８を用いてブレース１６の端部が鋼板バンド２０によって柱１２に固定されているが、例えば補強部材であるブレース１６とガセットプレート１８とが一体となっていても良い。すなわち、補強部材であるブレース１６の端部がガセットプレート１８様の形状をしており、柱１２とともにブレース１６の端部に直接鋼板バンド２０が巻き付けられることによりブレース１６の端部が柱１２に固定されていても良い。
【００４５】
また、上記実施形態においては、鋼板バンド２０の両端部は重ね合わせ部２０ａで接合されているが、この際、例えば鋼製のシール部材などを用いて重ね合わせ部２０ａの全周をシール部材で覆い、封緘機などを用いて、覆っているシール部材をその厚み方向に封緘することにより、鋼板バンド２０の両端部を接合しても良い。また、上記実施形態においては、鋼板バンド２０が示されているが、バンドとしては、鋼製であれば良く、板状（帯状）に代えて線状であっても良い。
【符号の説明】
【００４６】
１０ 柱梁架構の耐震補強構造
１２ 柱
１４ 梁
１６ 補強部材（ブレース）
１８ ガセットプレート
１８ａ 固定面部
１８ｂ 取付部
２０ 鋼板バンド
【特許請求の範囲】
【請求項１】
建物の柱梁架構に補強部材が設置されて補強される柱梁架構の耐震補強構造において、
前記柱または梁とともに前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドが巻き付けられることにより、前記補強部材の端部が前記柱または梁に固定されていることを特徴とする柱梁架構の耐震補強構造。
【請求項２】
前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートには、前記柱または梁の周面に面を合わせて設置される固定面部が備えられ、該固定面部は、前記柱または梁の幅方向の端部まで延設されており、前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに作用する圧縮力による応力が、該固定面部によって前記柱または梁の幅方向の端部まで分散されていることを特徴とする請求項１に記載の柱梁架構の耐震補強構造。
【請求項１】
建物の柱梁架構に補強部材が設置されて補強される柱梁架構の耐震補強構造において、
前記柱または梁とともに前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに鋼製バンドが巻き付けられることにより、前記補強部材の端部が前記柱または梁に固定されていることを特徴とする柱梁架構の耐震補強構造。
【請求項２】
前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートには、前記柱または梁の周面に面を合わせて設置される固定面部が備えられ、該固定面部は、前記柱または梁の幅方向の端部まで延設されており、前記補強部材の端部あるいは前記補強部材の端部に取り付けられたガセットプレートに作用する圧縮力による応力が、該固定面部によって前記柱または梁の幅方向の端部まで分散されていることを特徴とする請求項１に記載の柱梁架構の耐震補強構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２０１３−８３０４０（Ｐ２０１３−８３０４０Ａ）
【公開日】平成２５年５月９日（２０１３．５．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−２２１４６６（Ｐ２０１１−２２１４６６）
【出願日】平成２３年１０月６日（２０１１．１０．６）
【出願人】（０００２４５８５２）矢作建設工業株式会社 (38)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年５月９日（２０１３．５．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年１０月６日（２０１１．１０．６）
【出願人】（０００２４５８５２）矢作建設工業株式会社 (38)
【Ｆターム（参考）】
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