説明

栄養状態の管理方法及び管理用キット

【課題】疾患治療のための、迅速、簡便かつ特異性の高い栄養状態の管理方法及びキットを提供する。
【解決手段】血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比測定するに当たり、総分岐鎖アミノ酸をロイシンデヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼを用いて測定し、チロシンをチロシンデヒドロゲナーゼまたはβ−チロシナーゼを用いて測定することを特徴とする栄養状態の管理方法および管理用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養管理、治療におけるアミノ酸測定を、迅速、簡便、効率よく実施可能な栄養状態の管理方法及びキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
栄養管理は、すべての疾患治療のうえで共通する基本的医療の一つである。近年、NST(Nutritional Support Team)という患者の栄養状態をチームで評価していくという考え方が普及し始めている。背景として診断群分類(Diagnosis Procedure Combination:DPC)の導入が挙げられ、在院日数を短縮する目的で患者の栄養アセスメント(栄養状態の客観的評価)の重要性が認識されてきていると考えられる。
【0003】
栄養状態を評価する指標として、栄養摂取量、窒素平衡、身体計測、血漿蛋白、免疫能などが挙げられる。臨床検査分野で測定される血液生化学検査は種々あるが、このうち、総蛋白、血清アルブミン(ALB)が日常の検査で測定されている。
【0004】
しかし、ALBの半減期は20日前後と長い他、膠質浸透圧維持が必要な疾患ではアルブミン製剤が投与される場合もあり、その測定値は人為的に変化することがある。一方、血漿中アミノ酸は栄養状態を反映する指標の一つであるが、アミノ酸は半減期が短くアルブミンに比べ代謝が早いことから、栄養状態を把握する良好な指標とされる。
【0005】
血漿中アミノ酸の測定方法としては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法があるが、本法は除蛋白などの前処理が必要であり、測定に時間を要すなど、臨床検査室における多検体処理には不向きである。また、複数のアミノ酸を測定する場合は個々のアミノ酸を分画定量することとなり煩雑かつ高価となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は迅速、簡便かつ特異性の高い栄養状態の管理方法及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することにより、肝機能のみならず栄養状態を管理することが出来ることを見出し、本発明を完成した。
血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比は、肝機能の評価指標として用いられるが、肝硬変患者において高蛋白食療法か、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)製剤の投与かの治療選択を行ない、BCAA製剤が投与される場合であっても、アミノ酸は半減期が短くアルブミンに比べ代謝が早いことから、血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比が栄養状態を把握する良好な指標となりうることを見出した。
上記課題に鑑み、本発明は、血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することを特徴とする栄養状態の管理方法に関する。
本発明でいう栄養状態の管理方法とは、例えば入退院時期の判定などが例示される。
【0008】
すなわち本発明は、以下のような構成よりなる。
項1.血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することを特徴とする栄養状態の管理方法。
項2.総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼを用いた方法である項1に記載の栄養状態の管理方法。
項3.総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびジアホラーゼを用いた方法である項1に記載の栄養状態の管理方法。
項4.チロシンの測定が、チロシンデカルボキシラーゼまたはβ−チロシナーゼを用いた方法である項1に記載の栄養状態の管理方法。
項5.採取した血清または血漿が、アミノ酸製剤を静脈内投与するかまたは経口投与した後に採取されたものである項1に記載の栄養状態の管理方法。
項6.チロシンを酵素を用いて測定する方法が、フェニルアラニン1000μmol/Lの測定感度がチロシン100μmol/Lの測定感度の25%以下である項1または5に記載の栄養状態の管理方法。
項7.血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することを特徴とする栄養状態の管理用キット。
項8.総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼを含有したものである項7に記載の栄養状態の管理用キット。
項9.総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびジアホラーゼを含有したものである項7に記載の栄養状態の管理用キット。
項10.チロシンの測定が、チロシンデカルボキシラーゼまたはβ−チロシナーゼを含有したものである項7に記載の栄養状態の管理用キット。
項11.チロシンの測定が、フェニルアラニン1000μmol/Lの測定感度がチロシン100μmol/Lの測定感度の25%以下である項7に記載の栄養状態の管理用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することにより、患者の栄養状態を迅速、簡便かつ特異性よく評価することができ、さらには治療方針の早期判断に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の栄養状態の管理方法における、総分岐鎖アミノ酸(BCAA)の測定方法は、酵素を用いた方法であれば特に限定されないが、たとえば以下の方法が挙げられる。
(1)BCAAに酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADと略す)存在下、ロイシンデヒドロゲナーゼを作用させ、電子伝達体存在下、生成した還元型NADにより還元系発色試薬を還元し発色に導く方法。たとえば図1のような方法が例示される。
(2)BCAAにNAD存在下、ロイシンデヒドロゲナーゼを作用させ、生成した還元型NADによりジアホラーゼ存在下、還元系発色試薬を還元し発色に導く方法。
(3)BCAAにNAD存在下、ロイシンデヒドロゲナーゼを作用させ、生成した還元型NADをピルビン酸存在下、乳酸デヒドロゲナーゼを作用させ乳酸を生成せしめ、生成した乳酸を乳酸オキシダーゼにより過酸化水素とし、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下、酸化系発色試薬を酸化し発色に導く方法。
(4)BCAAにNAD存在下、ロイシンデヒドロゲナーゼを作用させ、電子伝達体存在下、生成した還元型NADをスーパーオキシドジスムターゼの作用により過酸化水素とし、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下、酸化系発色試薬を酸化し発色に導く方法。
(5)BCAAにNAD存在下、ロイシンデヒドロゲナーゼを作用させ、生成した還元型NADを還元型NADオキシダーゼの作用により過酸化水素とし、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下、酸化系発色試薬を酸化し発色に導く方法。
(6)BCAAにバリンデカルボキシラーゼを作用させモノアミンとし、生成したモノアミンをモノアミンオキシダーゼにより過酸化水素とし、過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下、酸化系発色試薬を酸化し発色に導く方法。
(7)BCAAに酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(チオNADと略す)存在下、ロイシンデヒドロゲナーゼを作用させ、還元型チオNADに導く方法。
【0011】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができるBCAA分解酵素としては、特に限定されないが、ロイシンデヒドロゲナーゼ、バリンデカルボキシラーゼが挙げられる。ロイシンデヒドロゲナーゼはバチルス・スフアエリカスなどから得られるが起源は特に限定されない。また、バリンデカルボキシラーゼはプロテウス・ブルガリスより得られるが起源は特に限定されない。反応液中、0.01〜200U/L、好ましくは0.05〜100U/Lの濃度で用いられる。
【0012】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる色源体としては、特に限定されないが、例えば水素供与体として、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−スルホプロピルアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−2,5−ジメチルアニリン等が挙げられる。また、これらのカップラーとして4−アミノアンチピリン、MBTH、NCP等が挙げられる。水素供与体、カップラーは反応液中、0.01〜50mmol/L、好ましくは0.05〜10mmol/Lの濃度で用いられる。
【0013】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができるロイコ色素として、4,4’−ベンジリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−ビス[N−エチル−N−(3−スルホプロピルアミノ)−2,6−ジメチルフェニル]メタン、1−(エチルアミノチオカルボニル)−2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)イミダゾール、ビス[3−ビス(4−クロロフェニル)−メチル−4−ジメチルアミノフェニル]アミン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、N−カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン塩、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩、10−N−カルボキシメチルカバモイル−3,7−ジメチルアミノ−10H−フェノチアジン塩等が挙げられる。これらは反応液中、0.01〜50mmol/L、好ましくは0.05〜10mmol/Lの濃度で用いられる。
【0014】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができるテトラゾリウム塩として、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウムクロライド、3,3’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジル)−ビス(2,5−ジフェニル)−2H−テトラゾリウムクロライド、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジル]−ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム クロライド]、2,3−ジフェニル−5−(4−クロロフェニル)テトラゾリウム クロライド、2,5−ジフェニル−3−(p−ジフェニル)テトラゾリウム クロライド、2,3−ジフェニル−5−(p−ジフェニル)テトラゾリウム クロライド、2,5−ジフェニル−3−(4−スチリルフェニル)テトラゾリウム クロライド、2,5−ジフェニル−3−(m−トリル)テトラゾリウム クロライド、2,5−ジフェニル−3−(p−トリル)テトラゾリウム クロライド、2,3−ジフェニル−5−(2−チエニル)テトラゾリウム クロライド、2−ベンゾチアゾイル−3−(4−カルボキシ−2−メトキシフェニル)−5−[4−(2−スルホエチル カルバモイル)フェニル]−2H−テトラゾリウム、2,2’−ジベンゾチアゾイル−5,5’−ビス[4−ジ(2−スルホエチル)カルバモイルフェニル] −3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ジテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−シアノテトラゾリウム クロライド、2,3−ジフェニル−5−カルボキシテトラゾリウム クロライド、2,3−ジフェニル−5−メチルテトラゾリウム クロライド、2,3−ジフェニル−5−エチルテトラゾリウム クロライド、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−3−[4−(4−スルホフェニルアゾ)−2−スルホフェニル]−2H−テトラゾリウム塩、2,5−ジ(4−ニトロフェニル)−3−[4−(4−スルホフェニルアゾ)−2−スルホフェニル]−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ニトロフェニル)−5−(2−スルホフェニル)−3−[4−(4−スルホフェニルアゾ)−2−スルホフェニル]−2H−テトラゾリウム塩、などが挙げられる。これらは反応液中、0.01〜50mmol/L、好ましくは0.05〜10mmol/Lの濃度で用いられる。
【0015】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる可視部測定可能な補酵素としてチオNAD、チオNADPなどが挙げられる。これらは反応液中、0.01〜50mmol/L、好ましくは0.05〜10mmol/Lの濃度で用いられる。
【0016】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる電子伝達体としては、フェナジンメトサルフェート、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート、メルドラブルーが挙げられる。電子伝達体の反応液中の初期濃度としては、0.001〜50μmol/L、好ましくは0.01〜10μmol/Lである。
【0017】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができるジアホラーゼは起源として、例えばバチルス・メガテリウム、クロストリジウム・SPが挙げられる。反応液中、0.01〜100U/L、好ましくは0.05〜50U/Lの濃度で用いられる。
【0018】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる還元型NADオキシダーゼは反応液中に、0.5〜100U/mL、好ましくは1〜50U/mLの濃度で用いられる。
【0019】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる緩衝剤としては、特に限定はなく、トリス緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、グッド緩衝剤などが挙げられる。好ましくは、グッド緩衝剤が挙げられ、グッド緩衝剤としてはN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕エタンスルホン酸(HEPES)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノメタンスルホン酸(TES)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、3−〔N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕プロパンスルホン酸(EPPS)、2−ヒドロキシ−3−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕プロパンスルホン酸(HEPPSO)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−(2−アセトアミド)イミノニ酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕グリシン(Tricine)、などが例示される。該緩衝剤のpHは5〜9の範囲で調整されるが、好ましくは酸化型NADまたは酸化型チオNADを含有する試薬のpHを5〜7.5とし、酸化型チオNADを除く色源体を含有する試薬はpH7.5〜9とするのが好ましい。
【0020】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる界面活性剤としては特に限定されないが、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤が好適である。
【0021】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類として例えばエマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン130K、ノニオンK−204、ノニオンK−215、ノニオンK−220、ノニオンK−230、NIKKOL BL−2、NIKKOL BL−4.2、NIKKOL BL−9EX、NIKKOL BL−21、NIKKOL BL−25、ポリオキシエチレンセチルエーテル類として、エマルゲン210、エマルゲン220、NIKKOL BC−2、NIKKOL BC−5.5、NIKKOL BC−7、NIKKOL BC−10TX、NIKKOL BC−15TX、NIKKOL BC−20TX、NIKKOL BC−23、NIKKOL BC−25TX、NIKKOL BC−30TX、NIKKOL BC−40TX、ノニオンP−208、ノニオンP−210、ノニオンP−213、ポリオキシエチレンステアリルエーテル類として、エマルゲン306P、エマルゲン320P、NIKKOL BS−2、NIKKOL BS−4、NIKKOL BS−20、ノニオンS−206、ノニオンS−207、ノニオンS−215、ノニオンS−220、ポリオキシエチレンオレイルエーテル類としては、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409P、エマルゲン420、エマルゲン430、NIKKOL BO−2、NIKKOL BO−7、NIKKOL BO−10TX、NIKKOL BO−20、NIKKOL BO−50、ノニオンE−206、ノニオンE−215、ノニオンE−230、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル類としては、NIKKOL BB−5、NIKKOL BB−10、NIKKOL BB−20、NIKKOL BB−30等が挙げられる。
【0022】
また、ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル類としては、エマルゲン707、NIKKOL BT−5、NIKKOL BT−7、NIKKOL BT−9、アデカトールSO−80、アデカトールSO−105、アデカトールSO−120、アデカトールSO−135、アデカトールSO−145、アデカトールSO−160、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類としては、エマルゲン810、エマルゲン840S、エマルゲン909、エマルゲン910、エマルゲン930、エマルゲン950、トリトンX−100、トリトンX−114、NIKKOL NP−5、NIKKOL NP−7.5、NIKKOL NP−10、NIKKOL NP−15、NIKKOL NP−20、NIKKOL OP−10、NIKKOL OP−30、等が挙げられる。ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル類としてはエマルゲンA60、エマルゲンA90、エマルゲンB66等が挙げられる。オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー類としては、エマルゲンPP−150、エマルゲンPP−230、エマルゲンPP−250、エマルゲンPP−290、NIKKOL PBC−34、NIKKOL PBC−44、等が挙げられる。ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル類としては、エマレックスDAPE0207、エマレックスDAPE0210、エマレックスDAPE0212、エマレックスDAPE0215、エマレックスDAPE0220、エマレックスDAPE0220等が挙げられる。脂肪酸エステル類としては、レオドールTW−L120、レオドールTW−L106、レオドールTW−P120、レオドールTW−S120、レオドールTW−O120、レオドール460、エマノーン1112、エマノーン3115、エマノーン3170、エマノーン3299、エマノーン3130
【0023】
ポリオキシエチレンステロール類としては、NIKKOL BPS−10、NIKKOL BPS−20、NIKKOL BPS−30、NIKKOL BPSH−25、NIKKOL DHC−30等が挙げられる。その他には、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、N,N−ビス(3−D−グルコノアミドプロピル)コラミド、N,N−ビス(3−D−グルコノアミドプロピル)デオキシコラミド、n−オクタノイル−N−メチルグルコアミド、n−ノナノイル−N−メチルグルコアミド、n−デカノイル−N−メチルグルコアミド、シュークロースモノカプレート、シュークロースモノラウレート、シュークロースモノコレート、ジギトニン等が挙げられる。
【0024】
両性イオン界面活性剤としては、例えばアルキルイミダゾリウムベタイン、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアラニン、アルキルアミンオキサイド、これらの誘導体等が挙げられる。これらのアンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、アンヒトール20Z、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、等が挙げられる。
【0025】
界面活性剤の濃度は特に限定されないが、反応液中で0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0026】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる防腐剤として、アジ化物、キレート剤、抗生物質、抗菌剤などが挙げられる。中でもアジ化ナトリウムは好適であり、反応液中で0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0027】
本発明の方法において、BCAA測定に用いることができる安定化剤としては、1−アリールセミカルバジド、シクロデキストリンおよびその修飾体、クラスターデキストリン、カリックスアレン誘導体、エチレンジアミン四酢酸塩、アミノスルホン酸化合物、スメクタイトなどの膨潤性層状粘土鉱物、ホウ酸又はホウ酸塩、カタラーゼなどがある。中でもエチレンジアミン四酢酸塩が好適であり、反応液中で0.01〜10mmol/L、好ましくは0.05〜2mmol/Lである。
【0028】
本発明の方法において、BCAA測定では検体中のアスコルビン酸の影響を回避する目的で、アスコルビン酸オキシダーゼを含有してよく、反応液中で0.1〜20U/mL、好ましくは0.5〜10U/mLである。
【0029】
本発明の栄養状態の管理方法における、チロシン(Tyr)の測定方法は、酵素を用いた方法であれば特に限定されないが、たとえば以下の方法が挙げられる。
(1)TYRにチロシンデカルボキシラーゼを作用させ、生成したチラミンをチラミンオキシダーゼにより過酸化水素とし、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下、酸化系発色試薬を酸化し発色に導く方法。たとえば図2のような方法が例示される。
(2)TYRにβ−チロシナーゼを作用させピルビン酸を生成せしめ、ピルビン酸をチアミンピロホスフェート、フラビンアデニンジヌクレオチド存在下、ピルビン酸オキシダーゼの作用により過酸化水素を生成せしめ、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下、酸化系発色試薬を酸化し発色に導く方法。
(3)TYRにβ−チロシナーゼを作用させピルビン酸を生成させ、還元型NAD存在下、乳酸デヒドロゲナーゼを作用させ乳酸を生成させ、生成した乳酸を乳酸オキシダーゼにより過酸化水素とし、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼの存在下、酸化系発色試薬を酸化し発色に導く方法。
この中で好ましい態様としては、(1)が挙げられ、TYR分解酵素として、チロシンデカルボキシラーゼが挙げられる。
【0030】
本発明の方法において、TYR測定では、チロシンと同じ芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンの影響を低減することで特異性、再現性を改善することがわかった。具体的にはフェニルアラニン1000μmol/Lの測定感度がチロシン100μmol/Lの測定感度の26%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明の方法において、TYR測定に用いることができるTYR分解酵素としては、特に限定されないが、チロシンデカルボキシラーゼ、β−チロシナーゼが挙げられ、各々フェニルアラニンに対する作用性が低いものが好ましい。また、フェニルアラニン分解酵素のコンタミネーションを公知の精製法で低減したものが好ましい。チロシンデカルボキシラーゼはストレプトコッカス・フアエカリスなどから得られるが起源は特に限定されない。また、β−チロシナーゼはエシェリシア・インターメディアより得られるが起源は特に限定されない。反応液中、0.01〜200U/L、好ましくは0.05〜100U/Lの濃度で用いられる。
【0032】
本発明の方法において、TYR測定に用いることができる緩衝剤としては、トリス緩衝剤、グッド緩衝剤などが挙げられる。グッド緩衝剤としては、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕エタンスルホン酸(HEPES)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノメタンスルホン酸(TES)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、3−〔N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕プロパンスルホン酸(EPPS)、2−ヒドロキシ−3−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕プロパンスルホン酸(HEPPSO)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−(2−アセトアミド)イミノニ酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕グリシン(Tricine)、などが例示される。好ましくは、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕エタンスルホン酸(HEPES)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノメタンスルホン酸(TES)、3−〔N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−(2−アセトアミド)イミノニ酢酸(ADA)、である。
【0033】
本発明の方法において、TYR測定に用いることができる緩衝剤の濃度としては、好ましくは0.01〜0.5mol/L、より好ましくは0.05〜0.3mol/Lの濃度で用いられる。緩衝剤のpHは5〜9の範囲で調整される。さらには5.5〜8が好ましい。中でも6〜7が好ましい。また、その他、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤などのアミンを含まない緩衝剤と組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明の方法において、TYR測定に用いることができる色源体としては、例えば水素供与体として、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−スルホプロピルアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−2,5−ジメチルアニリン等が挙げられる。また、これらのカップラーとして4−アミノアンチピリン、MBTH、NCP等が挙げられる。水素供与体、カップラーは反応液中、0.01〜50mmol/L、好ましくは0.05〜10mmol/Lの濃度で用いられる。
【0035】
本発明の方法において、TYR測定に用いることができるロイコ色素として、4,4’−ベンジリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−ビス[N−エチル−N−(3−スルホプロピルアミノ)−2,6−ジメチルフェニル]メタン、1−(エチルアミノチオカルボニル)−2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)イミダゾール、ビス[3−ビス(4−クロロフェニル)−メチル−4−ジメチルアミノフェニル]アミン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、N−カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン塩、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩、10−N−カルボキシメチルカバモイル−3,7−ジメチルアミノ−10H−フェノチアジン塩等が挙げられる。これらは反応液中、0.01〜50mmol/L、好ましくは0.05〜10mmol/Lの濃度で用いられる。
【0036】
本発明の方法において、TYR測定に用いることができる界面活性剤としては特に限定されないが、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤が好適である。
【0037】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類として例えばエマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン130K、ノニオンK−204、ノニオンK−215、ノニオンK−220、ノニオンK−230、NIKKOL BL−2、NIKKOL BL−4.2、NIKKOL BL−9EX、NIKKOL BL−21、NIKKOL BL−25、ポリオキシエチレンセチルエーテル類として、エマルゲン210、エマルゲン220、NIKKOL BC−2、NIKKOL BC−5.5、NIKKOL BC−7、NIKKOL BC−10TX、NIKKOL BC−15TX、NIKKOL BC−20TX、NIKKOL BC−23、NIKKOL BC−25TX、NIKKOL BC−30TX、NIKKOL BC−40TX、ノニオンP−208、ノニオンP−210、ノニオンP−213、ポリオキシエチレンステアリルエーテル類として、エマルゲン306P、エマルゲン320P、NIKKOL BS−2、NIKKOL BS−4、NIKKOL BS−20、ノニオンS−206、ノニオンS−207、ノニオンS−215、ノニオンS−220、ポリオキシエチレンオレイルエーテル類としては、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409P、エマルゲン420、エマルゲン430、NIKKOL BO−2、NIKKOL BO−7、NIKKOL BO−10TX、NIKKOL BO−20、NIKKOL BO−50、ノニオンE−206、ノニオンE−215、ノニオンE−230、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル類としては、NIKKOL BB−5、NIKKOL BB−10、NIKKOL BB−20、NIKKOL BB−30等が挙げられる。
【0038】
また、ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル類としては、エマルゲン707、NIKKOL BT−5、NIKKOL BT−7、NIKKOL BT−9、アデカトールSO−80、アデカトールSO−105、アデカトールSO−120、アデカトールSO−135、アデカトールSO−145、アデカトールSO−160、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類としては、エマルゲン810、エマルゲン840S、エマルゲン909、エマルゲン910、エマルゲン930、エマルゲン950、トリトンX−100、トリトンX−114、NIKKOL NP−5、NIKKOL NP−7.5、NIKKOL NP−10、NIKKOL NP−15、NIKKOL NP−20、NIKKOL OP−10、NIKKOL OP−30、等が挙げられる。ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル類としてはエマルゲンA60、エマルゲンA90、エマルゲンB66等が挙げられる。オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー類としては、エマルゲンPP−150、エマルゲンPP−230、エマルゲンPP−250、エマルゲンPP−290、NIKKOL PBC−34、NIKKOL PBC−44、等が挙げられる。ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル類としては、エマレックスDAPE0207、エマレックスDAPE0210、エマレックスDAPE0212、エマレックスDAPE0215、エマレックスDAPE0220、エマレックスDAPE0220等が挙げられる。脂肪酸エステル類としては、レオドールTW−L120、レオドールTW−L106、レオドールTW−P120、レオドールTW−S120、レオドールTW−O120、レオドール460、エマノーン1112、エマノーン3115、エマノーン3170、エマノーン3299、エマノーン3130
【0039】
ポリオキシエチレンステロール類としては、NIKKOL BPS−10、NIKKOL BPS−20、NIKKOL BPS−30、NIKKOL BPSH−25、NIKKOL DHC−30等が挙げられる。その他には、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、N,N−ビス(3−D−グルコノアミドプロピル)コラミド、N,N−ビス(3−D−グルコノアミドプロピル)デオキシコラミド、n−オクタノイル−N−メチルグルコアミド、n−ノナノイル−N−メチルグルコアミド、n−デカノイル−N−メチルグルコアミド、シュークロースモノカプレート、シュークロースモノラウレート、シュークロースモノコレート、ジギトニン等が挙げられる。
【0040】
両性イオン界面活性剤としては、例えばアルキルイミダゾリウムベタイン、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアラニン、アルキルアミンオキサイド、これらの誘導体等が挙げられる。これらのアンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、アンヒトール20Z、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、等が挙げられる。
【0041】
界面活性剤の濃度は特に限定されないが、反応液中で0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0042】
本発明の方法において、TYR測定に用いることができる防腐剤として、アジ化物、キレート剤、抗生物質、抗菌剤などが挙げられる。中でもアジ化ナトリウムは好適であり、反応液中で0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0043】
本発明の方法において、TYR測定ではその他に、安定化剤、アスコルビン酸オキシダーゼ、カタラーゼなどを含有してよい。安定化剤としては、ピリドキサール5’−リン酸、アルブミンなどが挙げられる。
【0044】
本発明の栄養状態の管理方法における、総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比は、上記測定方法によりそれぞれ求めたBCAA値およびチロシン値から計算で求めることができる。
【0045】
本発明の別の実施形態は、血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することを特徴とする栄養状態の管理用キットである。本発明のキットは上記の組成を適宜選択して製造することができる。
【0046】
チロシンとフェニルアラニンは血中における代謝の動きが異なる。
分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比は、従来、分岐アミノ酸/芳香族アミノ酸モル比(フィッシャー比)で見ていたのを分岐アミノ酸/チロシンモル比で見ている。
肝機能を見る分においては多少Pheの影響があっても良かったが、栄養状態の管理方法においては、高蛋白食療法またはBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)製剤の投与などの治療が同時に行なわれ、血中のアルブミンまたは測定対象と異なるアミノ酸の濃度が変動することがあり、これらの影響なく精密な測定が必要となる。
よって、本発明の栄養状態の管理方法は、チロシンを酵素を用いて測定する方法において、フェニルアラニン1000μmol/Lの測定感度がチロシン100μmol/Lの測定感度の25%以下であることが好ましい。さらに好ましくは20%以下、さらに好ましくは、15%以下、最も 好ましくは10%以下である。
【0047】
本発明のキットには、試薬あるいはセンサーなどの形態も含まれる。
【0048】
本発明のキットの構成は、保存安定性や分析機器への適用性などを考慮して適宜設定してよい。
【0049】
本発明のキットの物性は、溶液、凍結乾燥、粉末などいずれでもよい。
【0050】
本発明のキットは、使用時に合わせて使用することを前提に、2以上に分割されていてもよい。
【0051】
本発明のキットは、そのまま分析に用いることができる形態でもよいし、一部の組成を欠いた状態のもので使用時にそれらを補充して用いる形態のものでもよい。このようなものとして、たとえば、乾燥状態のキットであって使用時に精製水や緩衝液などを加えるよう構成されているものが例示される。
【0052】
本発明の栄養状態の管理方法では、個人の血清または血漿のBCAA値、TYR値、またはBTR値(BCAA測定値÷TYR測定値)について、食事療法または各種アミノ酸などの栄養輸液治療前後に測定を行なうか、または日常管理では定期的に測定を実施し、モニタリングすることで治療効果または個人の栄養状態の変化を妨害物質の影響なく正確に把握することができる。具体的には血中のBCAA濃度の上昇、TYR濃度の低下、またはBTR値(BCAA測定値÷TYR測定値)の上昇は栄養状態が改善されていることを示唆するが、これらの測定値または変動幅により栄養状態を判定することができる。
【0053】
また、従来、肝機能検査であるFischer比といわれるBCAA値/芳香族アミノ酸モル比が慢性肝炎における栄養状態の把握に有用とされているが、本法は液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることから測定が煩雑である。本発明の栄養状態の管理方法は、Fischer比と異なり、栄養指標として挙動の異なるチロシン、フェニルアラニンを総芳香族アミノ酸として測定せずチロシンだけを測定し、各アミノ酸の測定においては、BCAA値はロイシンデヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼなどの酵素を用い、チロシン測定はフェニルアラニンに対する作用を低減させたチロシンデカルボキシラーゼなどの酵素を用い高感度発色系に導くことで生化学自動分析機で簡便に測定することから、簡便、迅速、かつ正確に栄養状態を判定することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により特に限定されるものではない。
【0055】
(試薬の調製)
下記組成からなるBCAA測定試薬を調製した。
(実施例1)
第一試薬
PIPES緩衝液 50mmol/L pH7.0
トリトンX−100 1g/L
ジアホラーゼ(東洋紡社製DAD−301) 10U/mL
アスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡社製ASO−311) 1U/mL
酸化型NAD 10mmol/L
第ニ試薬
PIPES緩衝液 200mmol/L pH7.5
トリトンX−100 1g/L
ロイシンデヒドロゲナーゼ 100U/mL
2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩(λmax=438nm) 0.5mmol/L
【0056】
実施例1のBCAA測定試薬を用いて、下記の測定条件にて同時再現性を検討した。同時再現性は市販管理血清QAPトロールIX、IIX(シスメックス社)9容に対しL−チロシン水溶液(500μmol/L)を1容添加混合したものを試料とし各々n=5で測定し平均値、標準偏差、変動係数CV(%)を算出した。また、既知濃度に対する相対%を算出した。
【0057】
(測定法)
日立7180形自動分析機を用いた。試料1.7μLに第一試薬 120μL添加し37℃にて5分間インキュベーションし第一反応とした。その後第二試薬を30μL添加し5分間インキュベーションし第二反応とした。第一反応および第二反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる2ポイントエンド法で測定波長は450nmにおける吸光度を測定した。
結果は、精製水および500μmol/Lイソロイシン水溶液の測定吸光度より算出しBCAA濃度として求めた。
【0058】
【表1】

【0059】
結果 表1に示す。既知濃度に対し、100±5%以内であり良好な正確性であった。また、同時再現性はCV<1%以下であり、良好な再現性であった。
【0060】
(試薬の調製)
下記組成からなるTYR測定試薬を調製した。
(実施例2)
第一試薬
PIPES緩衝液 50mM pH6.0
トリトンX−100 1g/L
N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン 1g/L
フラビンアデニンジヌクレオチド2Na塩 8μmol/L
ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO−301) 3U/mL
アスコルビン酸オキシダーゼ(東洋紡社製ASO−311) 1U/mL
チラミンオキシダーゼ(東洋紡社製TYO−301) 0.3U/mL
ピリドキサール5−リン酸エステル 10μmol/L
第ニ試薬
PIPES緩衝液 50mM pH6.0
トリトンX−100 1g/L
4−アミノアンチピリン 0.3g/L
チロシンデカルボキシラーゼ 1.2U/mL
【0061】
上記、実施例2のTYR測定試薬を用いて、同時再現性を検討した。同時再現性は市販管理血清QAPトロールIX、IIX(シスメックス社)9容に対しL−チロシン水溶液(500μmol/L)を1容添加混合したものを試料とし各々n=5で測定し平均値、標準偏差、変動係数CV(%)を算出した。また、既知濃度に対する相対%を算出した。
【0062】
(測定法)
日立7170形自動分析機を用いた。試料3.5μLに第一試薬 120μL添加し37℃にて5分間インキュベーションし第一反応とした。その後第二試薬を30μL添加し5分間インキュベーションし第二反応とした。第一反応および第二反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる2ポイントエンド法で570nmにおける吸光度を測定した。
結果は、精製水および200μmol/LL−チロシン水溶液の測定吸光度より算出しチロシン濃度として求めた。
【0063】
結果 表1に示す。既知濃度に対し、100±5%以内であり良好な正確性であった。また、同時再現性はCV<1%以下であり、良好な再現性であった。
【0064】
次に実施例1のBCAA測定試薬および実施例2のTYR測定試薬の測定値よりBTR値(BCAA測定値÷TYR測定値)を算出し、既知濃度に対する相対%を算出した。
【0065】
結果 表1に示す。既知濃度に対し、100±5%以内であり良好な正確性であった。
【0066】
次に実施例2のTYR測定試薬を用いて、1000μmol/Lフェニルアラニン水溶液、100μmol/LL−チロシン水溶液を試料として測定した。測定した結果は、チロシン測定値100μmol/Lの測定値を100%として1000μmol/Lフェニルアラニン水溶液の測定値(L−チロシン換算値)の相対%を算出した。
【0067】
【表2】

【0068】
結果 表2に示す。チロシン測定値100μmol/Lの測定値を100%とした場合の1000μmol/Lフェニルアラニン水溶液の測定値(L−チロシン換算値)の相対%は7.1%であり、25%以下と良好な特異性であった。
【0069】
(実施例3)
実施例1、2のBCAAおよびTYR測定試薬を用いて、10g/dLヒト血清アルブミン水溶液と市販管理血清QAPトロールIIX(シスメックス社)を1:1で添加混合した試料およびヒト血清アルブミン溶液に変えて精製水とした試料を測定し、ヒト血清アルブミンの影響を検討した。測定値はBCAA値、TYR値およびBTR値(BCAA測定値÷TYR測定値)について検討した。測定した結果は、各々ヒト血清アルブミン添加血清の測定値をヒト血清アルブミンに変えて精製水添加血清の測定値を100%として相対%を算出した。
【0070】
【表3】

【0071】
結果 表3に示す。BCAA、TYR、BTRいずれにおいてもヒト血清アルブミンを添加した血清測定値はほぼ100%と測定され、ヒト血清アルブミンの影響なく測定されていることが確認された。このことから、栄養管理としてアルブミンを指標とすると測定時にアルブミン製剤投与の影響を受けるが、本発明では測定時にアルブミン製剤投与の影響を受けないことを示唆する結果である。
【0072】
(実施例4)
実施例1のBCAA測定試薬および、実施例2のTYR測定試薬の第一試薬、第二試薬のpHを6.0、6.5、7.0、7.5と変えて、5000または10000μmol/Lフェニルアラニン水溶液と市販管理血清QAPトロールIIX(シスメックス社)を1:9で添加混合した試料およびフェニルアラニン水溶液に変えて精製水とした試料を測定し、フェニルアラニンの影響を検討した。測定値はBCAA値、TYR値およびBTR値(BCAA測定値÷TYR測定値)について検討した。測定した結果は、各々フェニルアラニン添加血清の測定値をフェニルアラニンに変えて精製水添加血清の測定値を100%として相対%を算出した。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
結果 表4、5に示す。BCAA、TYR、BTRいずれにおいてもフェニルアラニンを添加した血清測定値はほぼ100±25%以内で測定されることがわかる。TYR試薬pHによりフェニルアラニンの影響度は異なり改善することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の栄養状態の管理方法及び管理用キットは、臨床検査などの用途分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】BCAA測定法の例示。
【図2】チロシン測定法の例示。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することを特徴とする栄養状態の管理方法。
【請求項2】
総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼを用いた方法である請求項1に記載の栄養状態の管理方法。
【請求項3】
総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびジアホラーゼを用いた方法である請求項1に記載の栄養状態の管理方法。
【請求項4】
チロシンの測定が、チロシンデカルボキシラーゼまたはβ−チロシナーゼを用いた方法である請求項1に記載の栄養状態の管理方法。
【請求項5】
採取した血清または血漿が、アミノ酸製剤を静脈内投与するかまたは経口投与した後に採取されたものである請求項1に記載の栄養状態の管理方法。
【請求項6】
チロシンを酵素を用いて測定する方法が、フェニルアラニン1000μmol/Lの測定感度がチロシン100μmol/Lの測定感度の25%以下である請求項1または5に記載の栄養状態の管理方法。
【請求項7】
血清または血漿中の総分岐鎖アミノ酸またはチロシンまたは総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比を酵素を用いて測定することを特徴とする栄養状態の管理用キット。
【請求項8】
総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼを含有したものである請求項7に記載の栄養状態の管理用キット。
【請求項9】
総分岐鎖アミノ酸の測定が、ロイシンデヒドロゲナーゼおよびジアホラーゼを含有したものである請求項7に記載の栄養状態の管理用キット。
【請求項10】
チロシンの測定が、チロシンデカルボキシラーゼまたはβ−チロシナーゼを含有したものである請求項7に記載の栄養状態の管理用キット。
【請求項11】
チロシンの測定が、フェニルアラニン1000μmol/Lの測定感度がチロシン100μmol/Lの測定感度の25%以下である請求項7に記載の栄養状態の管理用キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−267684(P2007−267684A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98233(P2006−98233)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】