説明

核医学イメージング装置及び制御方法

【課題】PET画像の品質の劣化を抑えること。
【解決手段】実施形態の核医学イメージング装置は、計数情報収集部520と、判定部522と、破棄部523とを有する。計数情報収集部520は、ガンマ線に由来する光を計数する検出器が出力した計数結果からガンマ線の検出時間を含む計数情報を収集してバッファ521に格納する。判定部522は、バッファ521に記憶されている計数情報の容量が閾値を超えたか否かを判定する。そして、破棄部523は、判定部522により閾値を超えたと判定された場合に、検出器から収集される計数情報のうち、検出時間が、対消滅ガンマ線を略同時に計数した2つの計数情報を同時計数情報として生成するために用いられる所定の時間幅より大きい時間幅内にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、核医学イメージング装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の生体組織における機能診断を行なうことができる核医学イメージング装置として、陽電子断層撮影装置(PET装置、PET:Positron Emission computed Tomography)が知られている。
【0003】
具体的には、PET検査では、陽電子放出核種で標識された化合物が被検体に投与される。そして、PET装置は、標識化合物から放出された陽電子が電子と結合して消滅する際に、略反対方向に放出する511keVの一対のガンマ線(対消滅ガンマ線)を、被検体の周囲に配置されたフォトンカウンティング(photon counting)方式の検出器を用いて同時計数する。そして、PET装置は、同時計数したガンマ線のデータ(同時計数情報)を演算処理することにより、PET画像の再構成を行なう。
【0004】
より詳細には、PET装置は、検出器が出力した計数結果からガンマ線の検出位置とガンマ線の検出時間(例えば、検出時刻)とガンマ線のエネルギー値とを含む計数情報を収集する。そして、核医学イメージング装置は、検出時間が一定の時間幅にある2つ計数情報の組み合わせを、対消滅ガンマ線を略同時に計数した同時計数情報として生成する。そして、PET装置は、同時計数情報を形成する各計数情報に含まれる検出位置を結ぶ直線上に陽電子を放出した標識化合物があるとして、標識化合物の分布を表すPET画像を再構成する。
【0005】
また、近年、PET装置と、形態情報を提供するX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置、CT: Computed Tomography)とが一体化されたPET―CT装置も実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−107995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、計数情報がPET装置の処理能力を超えて得られる結果、計数情報が破棄されることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の核医学イメージング装置は、格納部と判定部と破棄部とを備える。格納部は、ガンマ線に由来する光を計数する検出器が出力した計数結果からガンマ線の検出時間を含む計数情報を収集して所定の記憶部に格納する。判定部は、前記所定の記憶部に記憶されている計数情報の容量が閾値を超えたか否かを判定する。破棄部は、前記判定部により前記閾値を超えたと判定された場合に、前記検出器から収集される計数情報のうち、検出時間が、対消滅ガンマ線を略同時に計数した2つの計数情報を同時計数情報として生成するために用いられる所定の時間幅より大きい時間幅内にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態におけるPET−CT装置の構成の全体像について示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態におけるPETスキャナとX線CTスキャナとの関係の一例を示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態におけるPETスキャナの構成について示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態における検出器の構造の一例を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態におけるアンガー型の検出器により検出される情報を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施形態におけるコンソール装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、第1の実施形態におけるバッファに記憶された計数情報の一例を示す図である。
【図8】図8は、第1の実施形態における同時計数情報記憶部に記憶された同時計数情報の一例を示す図である。
【図9A】図9Aは、破棄部および判定部を説明するための図(1)である。
【図9B】図9Bは、破棄部および判定部を説明するための図(2)である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるPET画像撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、第1の実施形態に係るコンソール装置による高計数率時における計数情報破棄処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、第2の実施形態に係るコンソール装置が行なう補正処理を説明するための図(1)である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係るコンソール装置が行なう補正処理を説明するための図(2)である。
【図14】図14は、第2の実施形態に係るコンソール装置が行なう補正処理を説明するための図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、添付図面を参照して、核医学イメージング装置の実施形態を詳細に説明する。なお、 以下では、核医学イメージング装置の一例として、PET−CT装置を用いて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、PET−MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置でも良く、PET装置であっても良い。
【0011】
図1は、第1の実施形態におけるPET−CT装置の構成の全体像について示す図である。図1において、100はPET−CT装置を示し、200はPETスキャナを示し、300はX線CTスキャナを示し、400は寝台を示し、401は被検体が載せられる天板を示し、402は、被検体を示す。図1に示すように、PET−CT装置100は、PETスキャナ200と、X線CTスキャナ300と、寝台400と、コンソール装置500とを有する。図1におけるX方向は、図1の天板401に載せられた被検体402の体軸方向を示す。Y方向は、X方向と直行する水平面上の方向を示す。Z方向は、垂直方向を示す。
【0012】
寝台400は、被検体402が載せられる天板401を有する。また、図1には図示していないが、寝台400は、天板401を移動させる寝台制御部を有する。寝台制御部は、コンソール装置500により制御され、天板401に載せられた被検体402をPET−CT装置100の撮影口内に移動させる。
【0013】
PETスキャナ200は、PET画像を再構成するためのガンマ線を検出する検出器210を複数有する。複数ある検出器210は、被検体402の体軸を中心としてリング上に配置される。例えば、PETスキャナ200は、天板401に載せられた被検体402の体外から、被検体402の生体組織内に取り込まれた標識化合物から放出された一対のガンマ線(対消滅ガンマ線)を検出する。
【0014】
具体的には、PETスキャナ200は、検出器210がガンマ線を検出するごとに、ガンマ線を検出した検出器210の位置を示す検出位置と、ガンマ線が検出器210に入射した時点におけるエネルギー値と、検出器210がガンマ線を検出した検出時間とを収集する。PETスキャナ200により収集される情報を「計数情報」とも称する。なお、第1の実施形態では、ガンマ線の検出時間として検出時刻(絶対時間)が計数情報として収集される場合について説明する。しかし、第1の実施形態は、ガンマ線の検出時間として、例えば、PET画像撮影開始からの経過時間(相対時間)が計数情報として収集される場合であっても良い。
【0015】
ここで、検出器210により検出されるガンマ線と、被検体402の生体組織内に取り込まれた標識化合物から放出された一対のガンマ線との関係について説明する。例えば、検出器210は、標識化合物から一対のガンマ線が1つ放出された場合に、一対のガンマ線のうち片方のみを検出し、もう一方のガンマ線は、他の検出器210で検出される。なお、一対のガンマ線(対消滅ガンマ線)を同時計数した2つの検出位置を結ぶ線は、LOR(Line of Response)と呼ばれる。
【0016】
標識化合物は、例えば、陽電子放出核種である「18F(フッ素)」で標識された18F標識デオキシグルコースが該当する。標識化合物は、PET−CT装置100による測定前に被検体402に投与される。ただし、18F標識デオキシグルコースに限定されるものではなく、任意の標識化合物を用いて良い。
【0017】
X線CTスキャナ300は、X線CT画像を再構成するためのX線を照射するX線管301と、X線管301により照射されたX線を検出するX線検出器302とを有する。X線CTスキャナ300では、X線管301がX線を被検体402に照射し、被検体402を透過したX線をX線検出器302が検出する。具体的には、X線CTスキャナ300は、被検体402の体軸を中心として回転しながら、X線管301がX線を照射し、X線検出器302がX線を検出する。言い換えると、X線CTスキャナ300は、被検体402の体軸を中心として回転しながら多方向からX線を被検体402に照射し、被検体402を透過することで被検体402に吸収されて減弱したX線を検出する。X線検出器302により検出されたX線に対して増幅処理やAD変換処理などを行うことで生成されるデータを「X線投影データ」とも称する。X線CTスキャナ300は、X線投影データと、X線投影データを生成する際に用いられたX線を検出した検出位置とを収集する。
【0018】
図2は、第1の実施形態におけるPETスキャナとX線CTスキャナとの関係の一例を示す図である。図2では、Y軸方向に見た場合におけるPETスキャナ200とX線CTスキャナ300との断面図を示した。図2において、200は、PETスキャナを示し、210は、検出器を示し、300は、X線CTスキャナを示し、301は、X線管を示し、302はX線検出器を示し、303は、X線管301により照射されたX線を示す。図2では、説明の便宜上、PETスキャナ200とX線CTスキャナ300とに加えて、天板401を併せて示した。
【0019】
図2に示すように、PETスキャナ200では、X軸方向に複数の検出器210が配置される。また、複数の検出器210は、被検体402の体軸をリング状に取り囲むように配置される。図2に示すように、X線CTスキャナ300は、X線管301とX線検出器302とを有する。X線管301とX線検出器302とは、測定時に被検体402が載せられる天板401を挟んで対向する位置に配置される。
【0020】
図3は、第1の実施形態におけるPETスキャナの構成について示す図である。図3において、400は寝台を示し、401は天板を示し、402は被検体を示し、210は検出器を示す。図3は、X軸方向に見たPETスキャナの断面図である。図3では、説明の便宜上、PETスキャナ200に加えて、被検体402と、寝台400と、天板401とを併せて示した。
【0021】
図3に示すように、PETスキャナ200は、複数の検出器210が被検体402の周囲をリング状に取り囲むように配置される。検出器210は、例えば、フォトンカウンティング(Photon Counting)方式の検出器が該当する。
【0022】
図4は、第1の実施形態における検出器の構造の一例を示す図である。図4において、211はシンチレータを示し、212はライトガイドを示し、213は光電子増倍管(PMT:Photo Multiplier Tube)を示す。
【0023】
図4に示すように、ガンマ線に由来する光を計数する検出器210は、シンチレータ211と、ライトガイド212と、光電子増倍管213とを有する。シンチレータ211は、被検体402から放出されて検出器210に入射されたガンマ線を可視光に変換し、可視光を出力する。シンチレータ211は、例えば、ガンマ線を可視光に変換するNaIやBGOなどで形成される。また、シンチレータ211は、図4に示すように、2次元に配列される。シンチレータ211により出力された可視光を「シンチレーション光」とも称する。ライトガイド212は、シンチレータ211から出力された可視光を光電子増倍管213に伝達する。ライトガイド212は、例えば、光透過性に優れたプラスチック素材などで形成される。光電子増倍管213は、シンチレータ211によって出力された可視光をライトガイド212を介して受信し、受信した可視光を電気信号に変換する。光電子増倍管213は、複数個配置される。
【0024】
光電子増倍管213について更に説明する。光電子増倍管213は、シンチレーション光を受信して光電子を発生させる光電陰極と、光電陰極により発生された光電子を加速する電場を与える多段のダイノードと、電子の流れ出し口である陽極とを有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向かって加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子をたたき出す。ダイノードの表面にて複数の電子がたたき出される現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることで、電子数がなだれ的に増える。
【0025】
例えば、陽極は、シンチレーション光を1つ受信した場合に、約100万もの電子を出力する。シンチレーション光を1つ受信した場合に陽極から得られる電子の数を「光電子増倍管の利得率」とも称する。この場合、光電子増倍管213の利得率は「100万倍」となる。なお、電子数をなだれ的に増やす際には、ダイノードと陽極との間には、通常、1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0026】
このように、検出器210では、シンチレータ211がガンマ線を可視光に変換し、光電子増倍管213が可視光を電気信号に変換することで、被検体402から放出されたガンマ線を検出する。
【0027】
上述したように、PETスキャナ200は、検出器210がガンマ線を検出するごとに、検出器210の計数結果として、検出位置とエネルギー値と検出時刻とを収集する。ここで、図5を用いて、複数の隣接する検出器210が同時にガンマ線を検出した場合における検出位置とエネルギー値とを計算する処理の一例について簡単に説明する。図5は、第1の実施形態におけるアンガー型の検出器により検出される情報を示す図である。
【0028】
例えば、PETスキャナ200は、アンガー型位置計算処理を行うことで、検出位置を確定する。また、例えば、PETスキャナ200は、光電子増倍管213が位置検出型の光電子増倍管である場合には、位置検出型の光電子増倍管213を用いて検出位置を収集する。図5に示すように、3つの光電子増倍管213が、同じタイミングにてシンチレーション光を電気信号に変換して出力した場合を用いて説明する。この場合、PETスキャナ200は、同時に電気信号を出力した光電子増倍管213の位置を取得し、同時に電気信号を出力した光電子増倍管213から出力された電気信号のエネルギー値各々を取得する。そして、PETスキャナ200は、取得したエネルギー値から重心の位置を算出し、算出した重心の位置に対応するシンチレータ211を特定する。また、PETスキャナ200は、同じタイミングにてシンチレーション光を電気信号に変換して出力した各光電子増倍管213が出力した電気信号のエネルギー値を積分し、積分結果となるエネルギー値を検出器210に入射したガンマ線のエネルギー値とする。
【0029】
図5に示すように、検出器210がガンマ線を検出するごとに、PETスキャナ200は、シンチレータ211を一意に識別する「シンチレータ番号」と、「エネルギー値」と、「検出時刻」とを収集する。図5に示す例では、「シンチレータ番号」「エネルギー値」「検出時刻」に加えて、更に、複数ある検出器210を一意に特定する情報である「モジュールID」を出力する場合を示した。
【0030】
検出器210は、例えば、10−10秒〜10−12秒の精度にて検出時刻を収集する。
【0031】
ここで、第1の実施形態におけるPET−CT装置100がPET画像とX線CT画像とを再構成する場合における処理の流れについて簡単に説明する。PET−CT装置100は、PETスキャナ200とX線CTスキャナ300とが、図1や図2において左から右に移動したり、天板401や寝台400が右から左に移動したりすることで、X線CTスキャナ300がX線投影データを収集し、その後、PETスキャナ200が計数情報を収集する。その後、コンソール装置500が、収集した情報に基づいてPET画像とX線CT画像とを再構成する。ただし、これに限定されるものではなく、PETスキャナ200とX線CTスキャナ300とが図1や図2において右から左に移動しても良い。
【0032】
図6は、第1の実施形態におけるコンソール装置の構成の一例を示すブロック図である。コンソール装置500は、X線CTスキャナ300により収集された情報によりX線CT画像を再構成する。また、コンソール装置500は、PETスキャナ200により収集された計数情報を用いて同時計数情報を生成し、生成した同時計数情報に基づいてPET画像を再構成する。なお、以下では、コンソール装置500によるPET画像を再構成する処理やX線CT画像を再構成する処理については、任意の手法を用いて実行して良く、説明を簡潔に行う。
【0033】
図6に示す例では、説明の便宜上、コンソール装置500に加えて、PETスキャナ200とX線CTスキャナ300とを併せて示した。図6に示す例では、コンソール装置500は、入出力部510と、制御部540とを有する。また、図6に示す例では、コンソール装置500は、X線CT画像を再構成するために、X線投影データ記憶部530と、X線CT画像再構成部531とを有する。また、また、図6に示す例では、コンソール装置500は、PET画像を再構成するために、計数情報収集部520と、バッファ521と、判定部522と、破棄部523と、同時計数情報生成部524と、同時計数情報記憶部525と、PET画像再構成部526とを有する。なお、第1の実施形態では、1台のコンソール装置500においてX線CT画像とPET画像とが再構成される場合について説明する。しかし、第1の実施形態は、X線CT画像の再構成とPET画像の再構成とが別々のコンソール装置において行なわれる場合であっても適用可能である。
【0034】
入出力部510は、制御部540と接続される。入出力部510は、PET−CT装置100を利用する利用者から各種指示を受け付け、受け付けた各種指示を制御部540に送信する。また、入出力部510は、制御部540から情報を受信し、受信した情報を利用者に出力する。例えば、入出力部510は、キーボードやマウス、マイクなどが該当し、モニタやスピーカなどが該当する。なお、入出力部510によって受け付けられる情報や指示の詳細や、入出力部510によって出力される情報の詳細については、ここでは説明を省略し、関係する各部について説明する際に併せて説明する。
【0035】
制御部540は、各種の処理手順などを規定したプログラムを記憶する内部メモリを有し、種々の処理を制御する。制御部540は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの電子回路が該当する。制御部540は、PET−CT装置100全体の処理を制御する。具体的には、制御部540は、PETスキャナ200およびX線CTスキャナ300を制御することで、PET−CT装置100による撮影を制御する。また、制御部540は、コンソール装置500におけるPET画像再構成処理およびX線CT画像再構成処理を制御する。また、制御部540は、PET画像や、X線CT画像、PET画像およびX線CT画像の重畳画像などを、入出力部510のモニタにて表示させる。
【0036】
X線投影データ記憶部530は、X線CTスキャナ300から送信されたX線投影データを記憶する。X線CT画像再構成部531は、X線投影データ記憶部530が記憶するX線投影データを、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法により逆投影処理することで、X線CT画像を再構成する。
【0037】
計数情報収集部520は、複数の検出器210が出力した計数結果からガンマ線の検出時間(検出時刻)を含む計数情報を収集してバッファ521に格納する。すなわち、計数情報収集部520は、PETスキャナ200にて収集された計数情報を順次受信して、受信した計数情報をバッファ521に格納する。なお、計数情報収集部520は、PETスキャナ200内に設置される場合であっても良い。計数情報収集部520は、「格納部」とも称する。
【0038】
バッファ521は、計数情報収集部520により格納された計数情報を記憶する。バッファ521は、例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、又は、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置が該当する。図7は、第1の実施形態におけるバッファに記憶された計数情報の一例を示す図である。
【0039】
図7に示す例では、バッファ521は、「モジュールID」に対応付けて、「シンチレータ番号」と「エネルギー値」と「検出時刻」とを記憶する。なお、「モジュールID」は、複数ある検出器210それぞれを一意に特定するための情報である。
【0040】
図7に示す例では、バッファ521は、モジュールID「D1」に対応付けて、シンチレータ番号「P11」エネルギー値「E11」検出時刻「T11」を記憶し、シンチレータ番号「P12」エネルギー値「E12」検出時刻「T12」を記憶する。すなわち、バッファ521は、検出器「D1」にて検出時刻「T11」にシンチレータ「P11」がエネルギー値「E11」のガンマ線を検出したことを記憶し、検出器「D1」にて検出時刻「T12」にシンチレータ「P12」がエネルギー値「E12」のガンマ線を検出したことを記憶する。また、バッファ521は、他の検出器210から出力された計数結果に基づく計数情報についても同様に記憶する。
【0041】
図6に戻って、同時計数情報生成部524は、バッファ521に記憶されている計数情報のうち、検出時間(検出時刻)の差が所定の時間幅(タイムウィンドウ)にある2つ計数情報の組み合わせを、対消滅ガンマ線を略同時に計数した同時計数情報として生成する。
【0042】
具体的には、同時計数情報生成部524は、操作者により指定された同時計数情報生成条件に基づいて同時計数情報を生成する。例えば、同時計数情報生成条件には、タイムウィンドウが含まれる。タイムウィンドウは、一対のガンマ線の双方を計数した場合における2つの検出時刻の差の上限を示す。
【0043】
陽電子放出核種から同時に放出された一対のガンマ線であれば、一対のガンマ線に含まれるガンマ線各々の検出時刻は、同時であったり、同時でなくても2つの検出時刻の差が僅かになる。このことを踏まえ、同時計数情報生成部524は、タイムウィンドウを用いることで、誤った同時計数情報を生成するのを防止する。
【0044】
例えば、タイムウィンドウ「10ナノ秒」を用いて同時計数情報生成部524が同時計数情報を生成する場合を例に説明する。この場合、同時計数情報生成部524は、「モジュールID」ごとの「検出時刻(T)」を参照し、2つの検出時刻の差が「タイムウィンドウ:10ナノ秒」以内である計数情報の組み合わせを、モジュール間で検索する。
【0045】
ここで、検出時刻がタイムウィンドウ以内にある組み合わせを検索することを「Coincidence Finding」とも称する。また、同時計数情報生成部524により生成された同時計数情報のリストを「Coincidence List」とも称する。
【0046】
なお、同時計数情報生成部524は、タイムウィンドウとともにエネルギーウィンドウを用いることで、同時計数情報を生成する場合であってもよい。
【0047】
また、同時計数情報生成部524が同時計数情報を生成するために検索した計数情報は、同時計数情報の生成後、順次、バッファ521から破棄される。
【0048】
そして、同時計数情報生成部524は、生成した同時計数情報を同時計数情報記憶部525に格納する。例えば、同時計数情報記憶部525は、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、又は、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置が該当する。図8は、第1の実施形態における同時計数情報記憶部に記憶された同時計数情報の一例を示す図である。
【0049】
図8に示すように、同時計数情報記憶部525は、2つの計数情報の組み合わせを記憶する。図8では記載の便宜上、計数情報の組み合わせに含まれる2つの計数情報をそれぞれ「計数情報A」と「計数情報B」と記載した。図8に示す例では、同時計数情報記憶部525は、シンチレータ番号「P11」エネルギー値「E11」検出時刻「T11」を含む計数情報Aと、シンチレータ番号「P22」エネルギー値「E22」検出時刻「T22」を含む計数情報Bとの組み合わせを記憶する。すなわち、同時計数情報記憶部525は、陽電子放出核種から放出された一対のガンマ線のうち一方について、検出時刻「T11」にシンチレータ「P11」が検出したことを記憶し、陽電子放出核種から放出された一対のガンマ線のうち他方について、検出時刻「T22」にシンチレータ「P22」が検出したことを記憶する。
【0050】
図6に戻って、PET画像再構成部526は、同時計数情報生成部524により生成された同時計数情報を同時計数情報記憶部525から読み出して、読み出した同時計数情報を用いてPET画像を再構成する。具体的には、PET画像再構成部526は、同時計数情報をガンマ線の投影データ(サイノグラム)とし、ガンマ線の投影データから逐次近似法を用いることで、PET画像を再構成する。なお、逐次近似法としては、MLEM(Maximum Likelihood Expectation Maximization)法や、MLEM法のアルゴリズムを改良することで大幅に収束時間を短縮したOSEM(Ordered Subset MLEM)法がある。
【0051】
このように、第1の実施形態におけるPET−CT装置100は、従来、PETスキャナ200内でハードウェアで行なわれていた同時計数情報の生成処理を、コンソール装置500内で実行する。すなわち、従来では、ハードウェアで設定されていた時間幅を用いて、同時計数情報を生成したが、第1の実施形態におけるPET−CT装置100は、例えば、ソフトウェアで任意に設定可能な時間幅を用いて、同時計数情報を生成することができる。その結果、第1の実施形態におけるPET−CT装置100は、例えば、操作者が同時計数情報生成条件の変更を行ないたい場合に、柔軟に対応することができる。
【0052】
しかし、高計数率時には、同時計数情報を生成する前に、計数情報がバッファ521から溢れる場合がある。かかる場合、ある時間内に収集された計数情報がまとめて破棄されることとなり、同時計数情報の数が不足して、PET画像の画質が劣化してしまうこととなる。
【0053】
そこで、第1の実施形態におけるPET−CT装置100は、図6に示す判定部522および破棄部523の処理を行なう。
【0054】
すなわち、判定部522と破棄部523とは、協同することで、バッファ521に記憶されている計数情報の容量が閾値を超えたか否かを判定し、超えたと判定した場合、PET画像の画質の劣化が抑えられるように、計数情報をバッファ521から破棄する。
【0055】
まず、判定部522は、バッファ521に記憶されている計数情報の容量が閾値を超えたか否かを判定する。例えば、バッファ521の容量が10Mバイトであり、閾値が8Mバイトである場合を例に用いて説明する。この場合、判定部522は、任意の判定タイミングになると、バッファ521に格納された計数情報の容量を識別する。そして、判定部522は、識別した計数情報の容量が8Mバイトを超えていた場合には超えたと判定し、8Mバイトを超えていなかった場合には超えていないと判定する。なお、任意の判定タイミングとは、例えば、利用者により予め設定される。
【0056】
そして、破棄部523は、判定部522により閾値を超えたと判定された場合に、検出器210から収集される計数情報のうち(すなわち、計数情報収集部520が収集した計数情報のうち)、検出時間が上述した時間幅(タイムウィンドウ)より大きい時間幅内にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄する。例えば、同時計数情報生成条件として、10ナノ秒がタイムウィンドウとして設定されている場合、破棄部523の処理に用いられる時間幅は、10ナノ秒より大きい時間幅として設定される。なお、以下では、破棄部523の処理に用いられる時間幅を「設定時間幅」と記載する。
【0057】
また、設定時間幅は、さらに、PET画像の再構成に用いられる同時計数情報を生成するための計数情報の収集に要する時間幅より小さい時間幅として設定される。例えば、設定時間幅は、ミリ秒単位となる。
【0058】
図9Aおよび図9Bは、破棄部および判定部を説明するための図である。図9Aおよび図9Bに示す例では、バッファ521の記憶領域のうち、下部から上部へと順に計数情報が検出時刻順に格納され、バッファ521に格納された計数情報が下部から上部へと順に読み出されて同時計数情報が生成される。
【0059】
図9Aは、PETスキャナ200やコンソール装置500が処理可能な通常の計数率時におけるバッファ521を示す。600は、閾値を示し、601は、計数情報を記憶している記憶領域を示し、602や603は、計数情報を記憶していない記憶領域を示す。図9Bは、PETスキャナ200やコンソール装置500が処理可能な通常の計数率よりも高い高計数率時におけるバッファ521を示す。図9Bの左図において、611や612は、計数情報を記憶している記憶領域を示し、613は、計数情報を記憶していない記憶領域を示す。図9Bの右図は、バッファ521の閾値を超えた部分の記憶領域を示す。621や622は、それぞれ、設定時間幅に検出時刻が含まれる計数情報群が記憶された記憶領域を示す。
【0060】
図9Aに示すように、判定部522が、通常の計数率時にて、閾値600を超えないと判定した場合、破棄部523は、計数情報をバッファ521から破棄しない。
【0061】
一方、図9Bに示すように、判定部522が、高計数率時にて、閾値600を超えたと判定した場合には、破棄部523は、バッファ521に格納された計数情報のうち、検出時刻が設定時間幅にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄する。例えば、破棄部523は、数マイクロ秒単位の設定時間幅を用いて間欠的に計数情報群を破棄する。図9Bの右図に示す例では、破棄部523は、閾値を超えたバッファ521の記憶領域に格納された計数情報のうち、記憶領域621に記憶された計数情報群をバッファ521から削除し、記憶領域622に記憶された計数情報群を削除しない。例えば、破棄部523は、検出時刻が検出を開始してから「105マイクロ秒」から「110マイクロ秒」となる計数情報をすべて削除し、「111マイクロ秒」から「116マイクロ秒」までの計数情報を削除することなくバッファ521に留める。そして、破棄部523は、バッファ521に記憶されている計数情報の容量が閾値を下回るまで、時間軸に沿った間欠的な破棄処理を続行する。
【0062】
ここで、上述したように、バッファ521に記憶されている計数情報は、同時計数情報生成部524により順次読み出され、処理が終わるとともに順次破棄されていく。すなわち、バッファ521に新たに格納される計数情報の容量が、破棄部523により破棄される計数情報の容量と同時計数情報生成部524により読み出される計数情報の容量よりも小さければ、バッファ521に記憶されている計数情報の容量は、順次減少して閾値よりも小さくなる。
【0063】
なお、上記では、設定時簡幅が、破棄対象となる計数情報群の選択処理と破棄されない対象となる計数情報群の選択処理とで同じ場合について説明した。しかし、第1の実施形態は、設定時簡幅が、破棄対象となる計数情報群の選択処理と破棄されない対象となる計数情報群の選択処理とで異なる場合であってもよい。例えば、破棄部523は、破棄対象となる計数情報群の選択を「設定時簡幅:5マイクロ秒間」により行ない、破棄されない対象となる計数情報群の選択を「設定時簡幅:4マイクロ秒間」により行なってもよい。
【0064】
また、図9Bに示す例では、記憶領域612から計数情報を破棄する場合について説明したが、破棄部523は、記憶領域611から破棄しても良く、任意の記憶領域に記憶された計数情報を破棄して良い。
【0065】
ここで、破棄部523が設定時間幅を用いて破棄処理を行なうことの有用性について説明する。例えば、バッファ521から計数情報が溢れる場合、計数情報をランダムに破棄することも考えられる。上述したように、PET画像を再構成する際には、Coincidence Findingにより得られる同時計数情報が投影データ(サイノグラム)として用いられる。言い換えると、対消滅ガンマ線を計数した2つの計数情報の両方が得られて初めて、PET画像の再構成時に用いられることになる。
【0066】
ここで、収集した計数情報全体を「1」とし、「t(0<t<1)」を残し、「1−t」を破棄した場合について説明する。かかる場合、同時計数情報として検索される2の計数情報が残る確率は、それぞれ「t」であり、2つの計数情報の双方が残る確率は、「t2」となる。例えば、「t=0.5」の場合、破棄後に同時計数を見出せる確率は、破棄前に同時計数を見出せる確率の「0.25倍」となる。
【0067】
一方、設定時間幅に含まれる計数情報をまとめて破棄する場合について検討する。この場合、設定時間幅にある計数情報が破棄される一方、破棄される設定時間幅以外の時間幅に含まれる計数情報は破棄されない。ここで、同時計数情報として検索される2つの計数情報の双方は、検出時刻の差がタイムウィンドウ(第1の実施形態では、10ナノ秒)以内にある。設定時間幅がタイムウィンドウより大きい時間幅であれば、破棄部523により破棄される計数情報群に同時計数情報として検索される2つ計数情報のうち一方のみが含まれる可能性は、低い。言い換えれば、破棄部523により破棄されない計数情報群に、同時計数情報として検索される2つの計数情報の双方が残る確率は、略「1」となる。従って、破棄後に同時計数を見出せる確率は、破棄前に同時計数を見出せる確率と変わらない。
【0068】
かかる判定部522および破棄部523による処理が行なわれている状態で、第1の実施形態における同時計数情報生成部524は、バッファ521に記憶されている計数情報を用いて、同時計数情報を生成する。そして、第1の実施形態におけるPET画像再構成部526は、判定部522および破棄部523による処理が行なわれている状態でバッファ521に記憶されている計数情報から生成された同時計数情報を用いて、PET画像を再構成する。
【0069】
このように、第1の実施形態では、設定時間幅に含まれる計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄することで、計数情報を破棄するとしても、ランダムに破棄する場合と比較して同時計数情報の数の減少幅を抑えることができ、PET画像の画質の劣化を抑えることが可能となる。
【0070】
図10を用いて、第1の実施形態に係るPET−CT装置100によるPET画像撮影処理の流れの一例を示す。図10は、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるPET画像撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、PET−CT装置100は、以下に説明する一連の処理に先だって、X線CT画を撮影する。
【0071】
図10に示すように、PET−CT装置100では、撮影要求を利用者から受け付けると(ステップS101肯定)、制御部540がPETスキャナ200を動作させ、PETスキャナ200が計数情報を収集する(ステップS102)。すなわち、PETスキャナ200は、ガンマ線を検出するごとに、検出位置とエネルギー値と検出時刻とを収集する。
【0072】
そして、計数情報収集部520は、PETスキャナ200により収集された計数情報を受信してバッファ521に格納する(ステップS103)。そして、同時計数情報生成部524は、バッファ521に格納された計数情報における「検出時刻」を参照し、検出時刻の差がタイムウィンドウ以内である計数情報の組み合わせを検索することで、同時計数情報を生成する(ステップS104)。
【0073】
そして、PET画像再構成部526は、同時計数情報生成部524により生成された同時計数情報を用いてPET画像を再構成する(ステップS105)。
【0074】
図11を用いて、第1の実施形態に係るコンソール装置500による高計数率時における計数情報破棄処理の流れの一例を示す。図11は、第1の実施形態に係るコンソール装置による高計数率時における計数情報破棄処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
図11に示すように、判定部522は、任意の判定タイミングになると(ステップS201肯定)、バッファ521に格納された計数情報の容量を識別する(ステップS202)。
【0076】
そして、破棄部523は、判定部522により閾値を超えたと判定された場合には(ステップS203肯定)、バッファ521に格納された計数情報のうち、検出時刻が設定時間幅にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄し(ステップS204)、処理を終了する。なお、設定時間幅は、同時計数情報を生成するために用いられる所定の時間幅より大きい時間幅であり、さらに、PET画像の再構成に用いられる同時計数情報を生成するための計数情報の収集に要する時間幅より小さい時間幅として設定される。一方、判定部522により閾値を超えたと判定されなかった場合には(ステップS203否定)、計数情報を破棄することなく処理を終了する。
【0077】
上述したように、第1の実施形態では、計数情報収集部520は、ガンマ線に由来する光を計数する検出器210が出力した計数結果からガンマ線の検出時間を含む計数情報を収集してバッファ521に格納する。そして、判定部522は、バッファ521に記憶されている計数情報の容量が閾値を超えたか否かを判定する。そして、破棄部523は、判定部522により閾値を超えたと判定された場合に、検出器210から収集される計数情報のうち、検出時間が、対消滅ガンマ線を略同時に計数した2つの計数情報を同時計数情報として生成するために用いられる所定の時間幅より大きい時間幅内にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄する。すなわち、収集した計数情報全体を「1」とし、「t(0<t<1)」を残し、「1−t」をランダムに破棄する手法では、同時計数情報として検索される2つの計数情報の双方が残る確率が「t2」となる。これに対して、第1の実施形態によれば、破棄部523により破棄されない計数情報群に、同時計数情報として検索される2つの計数情報の双方が残る確率を略「1」とすることができ、PET画像の品質の劣化を抑えることが可能である。
【0078】
また、第1の実施形態では、破棄部523の破棄処理に用いられる時間幅は、さらに、PET画像の再構成に用いられる同時計数情報を生成するための計数情報の収集に要する時間幅より小さい時間幅として設定される。すなわち、第1の実施形態では、必要以上に計数情報を破棄することを回避することができ、PET画像が再構成されることを担保することが可能となる。
【0079】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、コンソール装置500が、破棄部523が行なった破棄処理に関する情報を用いた補正処理を行なう場合について、図12〜図14を用いて説明する。図12〜図14は、第2の実施形態に係るコンソール装置が行なう補正処理を説明するための図である。
【0080】
PET画像を参照することで、医師は、関心領域(ROI:Region Of Interest)における標識化合物で修飾された薬剤の集積量を判断して、例えば、腫瘍の有無などの画像診断を行なう。ROI内の薬剤の集積量は、当該ROI内に集積した薬剤により放出される対消滅ガンマ線を同時計数した結果に比例する。以下、対消滅ガンマ線を同時計数した結果のことを、「計数(Counts)」と記載する。図12は、横軸を薬剤の集積量を示す標識化合物の活性(Activity)とし、縦軸を計数(Counts)としたグラフを示す。
【0081】
活性と計数とは、比例関係にあることから、活性と計数とをプロットしたグラフは、理想的には、図12に示すように、線形性を有する直線10となる。しかし、高計数時には、検出器210の不感時間(Dead Time)が大きくなり、また、計数情報を生成するための処理対象となるデータが積み重なる(pile up)こととなる。また、従来では、高計数時には、バッファ521からランダムに計数情報が破棄されていた。このため、従来のPET装置において計測された計数は、例えば、活性が所定値より大きくなると、急激に低下し、また、計数の低下の度合いも一定とならない。このため、従来において計数と活性とをプロットしたグラフは、例えば、図12に示すギザギザな線11となっていた。
【0082】
一方、第1の実施形態では、検出時刻が設定時間幅にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄するように、破棄処理の制御を行なう。これにより、破棄後に同時計数を見出せる確率は、破棄前に同時計数を見出せる確率と略同じとなる。その結果、第1の実施形態に係るPET−CT装置100において計測された計数を活性に対してプロットしたグラフは、従来と比較して、計数の低下度が減少し、また、計数の低下の度合いも滑らかとなる。このため、第1の実施形態において、計数と活性とをプロットしたグラフは、例えば、図12に示す滑らかな曲線12となる。
【0083】
破棄処理の制御を行なうことで、第1の実施形態で再構成されるPET画像は、撮像時に起こった対消滅イベントを略網羅した画像となる。ただし、第1の実施形態で再構成されるPET画像のROI内における集積量を示す画素値は、破棄処理が行なわれた場合、実際の集積量に対応する画素値より低くなっている。すなわち、第1の実施形態で再構成されるPET画像は、ROI内の薬剤の集積量を定性的に反映した画像であるが、ROI内の薬剤の集積量の定量性を保証する画像ではない場合がある。
【0084】
ただし、破棄部523が時間軸に沿って間欠的に行なった破棄処理に関する情報から、「撮影時に収集された計数情報の総数」に対する「破棄された計数情報の数」の割合は、既知である。すなわち、破棄部523が行なった破棄処理における計数情報の破棄率は、既知の値となる。
【0085】
例えば、撮影時に起こった同一LORにおける対消滅イベントの総数を「N」とし、破棄率が「α(ただし、0≦α≦1)」であるとする。かかる場合、第1の実施形態において同時計数情報生成部524が生成した同時計数情報は、平均的には、撮影時に起こった同一LORにおける対消滅イベントの数を「N×(1−α)」と計数した結果となる。
【0086】
従って、計数結果を真の計数結果に補正するために、破棄率に基づく係数「1/(1−α)」を用いることで、図12に示す曲線12は、直線10と略同一の線形性を有する直線に補正することができる。
【0087】
そこで、第2の実施形態に係るコンソール装置500は、バッファ521が記憶する計数情報から生成された同時計数情報を、破棄部523が行なった破棄処理における計数情報の破棄率に基づいて補正する第1補正処理を行なう。または、第2の実施形態に係るコンソール装置500は、バッファ521が記憶する計数情報から生成された同時計数情報から再構成されたPET画像を、破棄部523が行なった破棄処理における計数情報の破棄率に基づいて補正する第2補正処理を行なう。
【0088】
第1補正処理が行なわれる場合、例えば、図13に示すように、同時計数情報記憶部525とPET画像再構成部526との間に補正部527が設置される。同時計数情報記憶部525は、同時計数情報生成部524がバッファ521から計数情報を用いて生成した同時計数情報を記憶している。補正部527は、破棄率に基づいて、同時計数情報を補正した補正同時計数情報を生成する。例えば、補正部527は、同時計数情報における各LORの数を破棄率に基づく係数「1/(1−α)」で乗算することで、補正同時計数情報を生成する。そして、PET画像再構成部526は、補正同時計数情報を用いてPET画像を再構成する。なお、補正部527は、同時計数情報生成部524と同時計数情報記憶部525との間に設置される場合であっても良い。かかる場合、補正部527は、同時計数情報生成部524が生成した同時計数情報から補正同時計数情報を生成し、補正同時計数情報を同時計数情報記憶部525に格納する。
【0089】
第2補正処理が行なわれる場合、例えば、図14に示すように、PET画像再構成部526の後段に補正部528が設置される。同時計数情報記憶部525は、同時計数情報生成部524がバッファ521から計数情報を用いて生成した同時計数情報を記憶している。PET画像再構成部526は、同時計数情報記憶部525が記憶する同時計数情報を用いてPET画像を再構成する。
【0090】
そして、補正部528は、破棄率に基づいて、PET画像再構成部526が再構成したPET画像を補正する。例えば、補正部528は、PET画像の各画素の画素値を「1/(1−α)」で乗算することで、PET画像から補正画像を生成する。
【0091】
第1補正処理や第2補正処理が行なわれることで、高計数時におけるPET画像の定量性を復活させることができる。すなわち、ROI内やROI周辺部位の定量性をPET画像において保証することができる。
【0092】
上記の補正処理は、特に、PET画像を用いた全身検査を行なう場合に有用となる。全身検査では、例えば、被検体402を一部重複させた複数の撮影部位に分け、天板401を移動させながら各撮影部位のPET画像が撮影される。しかし、薬剤の集積量は、撮影部位によって異なるため、第1の実施形態で説明した破棄処理の制御を行なった場合、撮影部位間で破棄率が異なることとなる。かかる場合、同じ集積量であるにも関わらず、PET画像ごとに画素値が異なる可能性がある。このため、例えば、第1の実施形態で再構成された複数の撮影部位それぞれのPET画像を合成した全身PET画像を参照して、異なる撮影部位それぞれのROI間で薬剤の集積量を比較することは、困難となってしまう場合がある。
【0093】
上述した破棄率に基づく補正処理を行なうことで、撮影部位それぞれのPET画像の定量性を復活させることができる。すなわち、第1補正処理や第2補正処理を行なうことで、同じ集積量となる画素の画素値を、PET画像間で略同じ値とすることができる。このため、例えば、第2実施形態では、全身PET画像を参照して、異なる撮影部位それぞれのROI間で薬剤の集積量を比較することを保証することができる。なお、第1補正処理や第2補正処理を実行するか否かは、操作者により任意に選択可能である。
【0094】
(第3の実施形態)
さて、上述した第1および第2の実施形態以外にも、その他の実施形態にて実施されても良い。そこで、以下では、その他の実施形態を示す。
【0095】
例えば、上述した第1および第2の実施形態では、判定部522は、バッファ521に記憶されている計数情報の容量を判定する場合について説明したが、第1の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、判定部522は、バッファ521の空き容量の閾値を保持し、バッファ521の空き容量を判定しても良い。
【0096】
また、例えば、上述した第1および第2の実施形態では、破棄部523は、バッファ521に記憶されている計数情報を破棄する場合について説明したが、第1の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、破棄部523は、計数情報を受信した段階において、計数情報に含まれる検出時刻を用いてフィルタリングすることで、計数情報を破棄しても良い。つまり、バッファ521に格納される前に、計数情報を破棄しても良い。
【0097】
また、例えば、上述した第1および第2の実施形態では、コンソール装置500がPETスキャナ200から計数情報を受信して用いる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、コンソール装置500は、PETスキャナ200から検出器210による計数結果そのものを受信しても良い。この場合、コンソール装置500は、光電子増倍管213から出力される波形データそのものを受信し、受信した波形データから計数情報を生成する。
【0098】
また、第1および第2の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上述文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については(図1〜図14)、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0099】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0100】
なお、第1および第2の実施形態で説明した核医学イメージング装置が実行する制御方法は、あらかじめ用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。また、制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0101】
上述したように、第1〜第3の実施形態によれば、PET画像の品質の劣化を抑えることが可能である。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0103】
100 PET−CT装置
200 PETスキャナ
210 検出器
211 シンチレータ
212 ライトガイド
213 光電子増倍管
300 X線CTスキャナ
301 X線管
302 X線検出器
500 コンソール装置
510 入出力部
520 計数情報収集部
521 バッファ
522 判定部
523 破棄部
524 同時計数情報生成部
525 同時計数情報記憶部
526 PET画像再構成部
530 X線投影データ記憶部
531 X線CT画像再構成部
540 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ線に由来する光を計数する検出器が出力した計数結果からガンマ線の検出時間を含む計数情報を収集して所定の記憶部に格納する格納部と、
前記所定の記憶部に記憶されている計数情報の容量が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記閾値を超えたと判定された場合に、前記検出器から収集される計数情報のうち、検出時間が、対消滅ガンマ線を略同時に計数した2つの計数情報を同時計数情報として生成するために用いられる所定の時間幅より大きい時間幅内にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄する破棄部と、
を備える、核医学イメージング装置。
【請求項2】
前記破棄部の破棄処理に用いられる時間幅は、さらに、核医学画像の再構成に用いられる同時計数情報を生成するための計数情報の収集に要する時間幅より小さい時間幅である、請求項1に記載の核医学イメージング装置。
【請求項3】
前記所定の記憶部が記憶する計数情報から生成された同時計数情報、または、当該同時計数情報から再構成された核医学画像を、前記破棄部が行なった破棄処理における計数情報の破棄率に基づいて補正する補正部、
をさらに備える、請求項1に記載の核医学イメージング装置。
【請求項4】
格納部が、ガンマ線に由来する光を計数する検出器が出力した計数結果からガンマ線の検出時間を含む計数情報を収集して所定の記憶部に格納し、
判定部が、前記所定の記憶部に記憶されている計数情報の容量が閾値を超えたか否かを判定し、
破棄部が、前記判定ステップにより前記閾値を超えたと判定された場合に、前記検出器から収集される計数情報のうち、検出時間が、対消滅ガンマ線を略同時に計数した2つの計数情報を同時計数情報として生成するために用いられる所定の時間幅より大きい時間幅内にある計数情報を時間軸に沿って間欠的に破棄する、
こと含む、制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−73243(P2012−73243A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188840(P2011−188840)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】