説明

核医学診断装置およびそれに用いられる診断システム

【課題】核医学用データの分解能を向上させることができる核医学診断装置およびそれに用いられる診断システムを提供することを目的とする。
【解決手段】回転機構30は、γ線検出器3を回転駆動させて、各検出素子3A間の配列ピッチの半分のピッチでγ線検出器3と被検体Mとの相対位置を変更する。そして、回転するγ線検出器3の各検出素子3Aごとの位置で投影データを収集するので、配列ピッチの半分のピッチに狭めた分だけより多くの投影データを、γ線検出器3は検出して収集することができる。その結果、検出素子3Aの数を増やすことなく投影データや断層画像などPET画像の分解能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置およびそれに用いられる診断システムに係り、特に、核医学用データを収集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本のγ線を検出して複数個の検出器でγ線を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている。
【0003】
このPET装置では、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能である。したがって、PET装置によって得られる断層画像は機能情報を有する。
【0004】
具体的には、被検体として人体を例に採って説明すると、人体の生体機能によって特定の部位や細胞に集中しやすい対消滅γ線放射物質である放射性薬剤を投与する。そして、PET装置を用いて薬剤から放出された情報である投影データ(『エミッションデータ』とも呼ばれる)を収集することにより、生体の機能画像を撮像することができる。
【0005】
PET装置において、γ線を検出するγ線検出器は複数の検出素子で構成されており、各検出素子は被検体の体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置されている。各々の検出素子はシンチレータブロックおよびフォトマルチプライヤでそれぞれ構成されている。投影データや断層画像といった核医学用データ(PET画像)の分解能を向上させて、より細かい位置を判別するためには、体軸周りの回転方向(すなわち周方向)に検出素子の数を増やして、より多くの検出素子で構成されたγ線検出器を用いる必要がある(例えば、特許文献1参照)。このようなγ線検出器を用いることで、γ線検出器によって、より多くの周方向のデータを検出して収集することが可能になり、分解能を向上させることが可能になる。
【特許文献1】特開2004−361302号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかるγ線検出器は、検出素子の数だけ高価になってしまう。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、核医学用データの分解能を向上させることができる核医学診断装置およびそれに用いられる診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線をそれぞれ検出する複数の検出素子で構成された検出手段と、検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させて、各検出素子間の配列ピッチの範囲内で検出手段と被検体との相対位置を変更する駆動手段と、各相対位置で核医学用データを収集する収集手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、放射線をそれぞれ検出する複数の検出素子で構成された検出手段、および被検体の少なくとも一方を駆動手段は以下のように駆動させる。すなわち、検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させて、各検出素子間の配列ピッチの範囲内で検出手段と被検体との相対位置を変更する。そして、収集手段は、各相対位置で核医学用データを収集する。従来では配列ピッチごとの核医学用データを収集していたのに対して、配列ピッチの範囲内で核医学用データを収集するので、配列ピッチの範囲内に狭めた分だけより多くの核医学データを、検出手段は検出して収集手段は収集することができる。その結果、検出素子の数を増やすことなく核医学用データの分解能を向上させることができる。
【0010】
上述した発明において、駆動手段は上述した配列ピッチの整数分の一のピッチで相対位置へ変更するように検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させるのが好ましい(請求項2に記載の発明)。整数分の一のピッチで検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させることで、従来の配列ピッチごとの核医学用データをそのまま使用することができて、収集手段による核医学用データの収集を容易に行うことができる。
【0011】
駆動手段による検出手段および被検体の少なくとも一方の駆動方向の一例は、被検体の体軸周りの回転方向(すなわち周方向)である。つまり、駆動手段は被検体の体軸周りに検出手段および被検体の少なくとも一方を回転させる(請求項3に記載の発明)。被検体の体軸周りに検出手段および被検体の少なくとも一方を回転させることで、より多くの回転方向(周方向)の核医学データを検出して収集することが可能になる。
【0012】
なお、駆動手段は所定時間ごとに配列ピッチの範囲内での所定ピッチで相対位置が変更するように検出手段および被検体の少なくとも一方を断続的に駆動させてもよいし(請求項4に記載の発明)、駆動手段は検出手段および被検体の少なくとも一方を連続的に駆動させ、検出手段および被検体の少なくとも一方が配列ピッチの範囲内での所定ピッチで駆動するまでに、収集手段は被検体に対する各検出素子ごとの相対位置で核医学用データを収集してもよいし(請求項5に記載の発明)、駆動手段は任意のタイミングで配列ピッチの範囲内での任意のピッチで検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させてもよい(請求項6に記載の発明)。
【0013】
また、上述した発明に係る核医学診断装置に用いられる診断システムに適用してもよい。すなわち、この診断システムは、核医学診断装置とX線CT装置とを備えて構成されており、核医学診断装置は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求め、X線CT装置は、被検体の外部から照射されて被検体を透過したX線に基づいてX線CT用データを求め、核医学診断装置は、放射線をそれぞれ検出する複数の検出素子で構成された検出手段と、検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させて、各検出素子間の配列ピッチの範囲内で検出手段と被検体との相対位置を変更する駆動手段と、各相対位置で核医学用データを収集する収集手段とを備える(請求項7に記載の発明)。
【0014】
このシステムの場合、X線CT装置において、被検体の外部から照射されて被検体を透過したX線に基づいてX線CT用データを求め、核医学診断装置は、核医学用データを求める。なお、X線CT用データでの断層画像と、核医学診断データとを重ね合わせて重畳出力してもよいし、X線CT用データを吸収補正データとして用いて核医学用データの吸収補正を行ってもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る核医学診断装置およびそれに用いられる診断システムによれば、検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させて、各検出素子間の配列ピッチの範囲内で検出手段と被検体との相対位置を変更し、各相対位置で核医学用データを収集手段は収集するので、配列ピッチの範囲内に狭めた分だけより多くの核医学データを、検出手段は検出して収集手段は収集することができる。その結果、核医学用データの分解能を向上させることができる。
【実施例1】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。なお、後述する実施例2も含めて、本実施例1では、核医学診断装置として、PET装置を例に採って説明する。
【0017】
本実施例1に係るPET装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1を備えている。この天板1は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸Zに沿って平行移動するように構成されている。このように構成することで、天板1に載置された被検体Mは、後述するガントリ2の開口部2aを通って、頭部から順に腹部、足部へと走査されて、被検体Mの投影データや断層画像といった診断データを得る。この診断データを本明細書では『PET画像』と定義づける。この診断データ(PET画像)は、この発明における核医学用データに相当する。
【0018】
天板1の他に、本実施例1に係るPET装置は、開口部2aを有したガントリ2と、互いに近接配置された複数個のシンチレータブロック3aと複数個のフォトマルチプライヤ3bとを備えている。図1(b)に示すように、シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bは、被検体Mの体軸Z周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ2内に埋設されている。フォトマルチプライヤ3bは、シンチレータブロック3aよりも外側に配設されている。シンチレータブロック3aの具体的な配置としては、例えば、被検体Mの体軸Zと平行な方向にはシンチレータブロック3aが2個並び、被検体Mの体軸Z周りにはシンチレータブロック3aが多数個並ぶ形態が挙げられる。シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bで後述する投影データ(『エミッションデータ』とも呼ばれる)用のγ線検出器3を構成する。γ線検出器3は、この発明における検出手段に相当する。
【0019】
次に、γ線検出器3の概略構成について、図2、図3を参照して説明する。図2は、γ線検出器3を被検体Mの体軸Z周りに回転させる回転機構30およびγ線検出器3の概略正面図であり、図3は、γ線検出器3の概略正面図である。上述したシンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3b(図1を参照)で、図2、図3に示すように検出素子3Aを構成し、それぞれがリング状に配置された複数の検出素子3Aでγ線検出器3を構成していることになる。各検出素子3Aは、所定ピッチでリング状にそれぞれ配列されている。
【0020】
回転機構30は、図2に示すように、γ線検出器3を被検体Mの体軸Z周りに回転させるための機構でガントリ2内に埋設されている。回転機構30は、回転用モータ31および回転用ベルト32を備えている。回転用モータ31を図2中の矢印の方向に駆動させることで、それに巻回された回転用ベルト32も同方向に回転し、回転用ベルト32の回転によってγ線検出器3全体も被検体Mの体軸Z周りに回転する。回転機構30による具体的な駆動については図4(b)で後述する。検出素子3Aは、この発明における検出素子に相当し、回転機構30は、この発明における駆動手段に相当する。
【0021】
なお、回転機構30については、図2に示すような構造に限定されない。例えばガントリ2に駆動機構を設けてガントリ2自体を回転させることで、γ線検出器3全体も回転させる機構であってもよい。
【0022】
図1の説明に戻って、本実施例1では、点線源4と後述する吸収補正データ(『トランスミッションデータ』とも呼ばれる)用のγ線検出器5を備えている。吸収補正データ用のγ線検出器5は、投影データ用のγ線検出器3と同様にシンチレータブロックとフォトマルチプライヤとで構成されている。点線源4は、被検体Mに投与する放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)と同種の放射線(本実施例1ではγ線)を照射させる線源であって、被検体Mの外部に配設されている。本実施例1では、ガントリ2内に埋設されている。点線源4は被検体Mの体軸Z周りに回転する。
【0023】
その他にも、本実施例1に係るPET装置は、天板駆動部6とコントローラ7と入力部8と出力部9と投影データ導出部10と吸収補正データ導出部11と吸収補正部12と再構成部13とメモリ部14と上述した回転機構30とを備えている。天板駆動部6は、天板1の上述した移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0024】
コントローラ7は、本実施例1に係るPET装置を構成する各部分を統括制御する。コントローラ7は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。
【0025】
入力部8は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ7に送り込む。入力部8は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部9はモニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0026】
メモリ部14は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例1では、投影データ導出部10や再構成部13で処理された診断データ(PET画像)や、吸収補正データ導出部11で求められた吸収補正データについてはRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。ROMには、各種の核医学診断を行うためのプログラム等を予め記憶しており、そのプログラムをコントローラ7が実行することでそのプログラムに応じた核医学診断をそれぞれ行う。
【0027】
本実施例1では、図4(b)に示すように、検出素子3A間の配列ピッチをpとしたときに、回転機構30が所定時間ごとに配列ピッチpの半分のピッチp/2、すなわち配列ピッチpの2分の一であるピッチp/2でγ線検出器3を断続的に回転させるプログラムをROMに予め記憶している。なお、被検体Mの周りを1周(回転角度は360°)分断続的に回転させてもよいし、2周以上分断続的に回転させてもよいし、1周未満(回転角度は0°〜360°)分断続的に回転させてもよい。
【0028】
投影データ導出部10と吸収補正データ導出部11と吸収補正部12と再構成部13とは、例えば上述したメモリ部14などに代表される記憶媒体のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部8などに代表されるポインティングデバイスで入力された命令をコントローラ7が実行することで実現される。また、図4(b)に示すような回転駆動を行う場合には、上述したプログラムあるいは入力部8などに代表されるポインティングデバイスで入力された命令を、コントローラ7を介して回転機構30に送り込めばよい。
【0029】
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線をシンチレータブロック3aが光に変換して、変換されたその光をフォトマルチプライヤ3bが光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素)として投影データ導出部10に送り込む。
【0030】
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本のγ線が発生する。投影データ導出部10は、シンチレータブロック3aの位置とγ線の入射タイミングとをチェックし、被検体Mを挟んで互いに対向位置にある2つのシンチレータブロック3aでγ線が同時に入射したときのみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一方のシンチレータブロック3aのみにγ線が入射したときには、投影データ導出部10は、ポジトロンの消滅により生じたγ線ではなくノイズとして扱い、そのときに送り込まれた画像情報もノイズと判定してそれを棄却する。
【0031】
なお、投影データ導出部10は、図4(b)に示すように回転機構30が所定時間ごとに配列ピッチpの半分のピッチp/2でγ線検出器3を回転させるたびに、その所定時間ごとにγ線の入射タイミングをチェックして、適正なデータと判定された画像情報を収集する。したがって、画像情報は、回転するγ線検出器3の各検出素子3Aごとの位置のデータとなる。投影データ導出部10は、この発明における収集手段に相当する。
【0032】
投影データ導出部10に送り込まれた画像情報を投影データとして、吸収補正部12に送り込む。吸収補正部12に送り込まれた投影データに、吸収補正データ導出部11から吸収補正部12に送り込まれた吸収補正データ(トランスミッションデータ)を作用させて、被検体Mの体内でのγ線の吸収を考慮した投影データに補正する。
【0033】
なお、点線源4が被検体Mの体軸Zの周りを回転しながら被検体Mに向けてγ線を照射し、照射されたγ線を吸収補正データ用のγ線検出器5のシンチレータブロック(図示省略)が光に変換して、変換されたその光をγ線検出器5のフォトマルチプライヤ(図示省略)が光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素)として吸収補正データ導出部11に送り込む。
【0034】
吸収補正データ導出部11に送り込まれた画像情報に基づいて吸収補正データを求める。吸収補正データ導出部11は、γ線またはX線の吸収係数とエネルギーとの関係を表す演算を利用することで、CT用の投影データ、すなわちX線吸収係数の分布データをγ線吸収係数の分布データに変換して、γ線吸収係数の分布データを吸収補正データとして求める。導出された吸収補正データは上述した吸収補正部12に送られる。
【0035】
補正後の投影データを再構成部13に送り込む。再構成部13がその投影データを再構成して、被検体Mの体内でのγ線の吸収を考慮した断層画像を求める。このように、吸収補正部12、再構成部13を備えることで、吸収補正データに基づいて投影データを補正するとともに、断層画像を補正する。補正された断層画像を、コントローラ7を介して出力部9に送り込む。
【0036】
次に、回転機構30による具体的な駆動について、図4を参照して説明する。図4(a)は、従来の検出素子3A間の配列ピッチpおよび検出器位置の関係を模式的に示した説明図であり、図4(b)は、後述する実施例2も含めた本実施例1に係る検出素子3A間の配列ピッチp、配列ピッチpの半分のピッチp/2および検出器位置の関係を模式的に示した説明図である。なお、各検出素子3Aは回転方向(周方向)に配列ピッチpで並設されているが、図4では、説明の簡略化のために各検出素子3Aを線状に展開して図示している。図4では、検出器位置を一点鎖線で示している。
【0037】
図4(a)に示すように、従来では所定時間ごとに検出素子3A間の配列ピッチpで位置を変更するようにγ線検出器3を断続的に回転させる。これに対して、図4(b)に示すように、後述する実施例2も含めて、本実施例1では所定時間ごとに検出素子3A間の配列ピッチpの半分のピッチp/2でγ線検出器3を断続的に回転させる。例えば、検出器位置Aからピッチp/2分回転させて検出器位置Bに移動したとする。このとき、各検出器位置も図中の一点鎖線に示すようにピッチp/2分回転する。その結果、回転するγ線検出器3の各検出素子3Aごとの位置のデータとして画像情報を投影データ導出部10が収集する(図4(b)の「データ合成」を参照)。この収集されたデータは2倍の検出素子密度となる。このデータを投影データとして、上述したように吸収補正部12に送り込んで吸収補正を行い、さらに吸収補正された投影データを再構成部13に送り込む。
【0038】
上述の構成を備えた本実施例1に係るPET装置によれば、γ線をそれぞれ検出する複数の検出素子3Aで構成されたγ線検出器3を回転機構30は以下のように回転駆動させる。すなわち、γ線検出器3を回転駆動させて、各検出素子3A間の配列ピッチpの範囲内(本実施例1では配列ピッチpの半分のピッチp/2)でγ線検出器3と被検体Mとの相対位置を変更する。そして、投影データ導出部10は、回転するγ線検出器3の各検出素子3Aごとの位置で核医学用データ(本実施例1では投影データ)を収集する。従来では配列ピッチpごとの核医学用データを収集していたのに対して、配列ピッチpの範囲内で核医学用データを収集するので、配列ピッチpの範囲内に狭めた分だけより多くの核医学データを、γ線検出器3は検出して投影データ導出部10は収集することができる。その結果、検出素子3Aの数を増やすことなく核医学用データの分解能を向上させることができる。
【0039】
本実施例1では、配列ピッチpの半分のピッチp/2、すなわち配列ピッチpの2分の一であるピッチp/2でγ線検出器3を回転駆動させている。このように、回転機構30は配列ピッチpの整数分の一のピッチでγ線検出器3を回転駆動させるのが好ましい。整数分の一のピッチでγ線検出器3を回転駆動させることで、従来の配列ピッチpごとの核医学用データをそのまま使用することができて、投影データ導出部10による核医学用データの収集を容易に行うことができる。また、配列ピッチpの3分の一であるピッチp/3や、配列ピッチpの4分の一であるピッチp/4でγ線検出器3での回転駆動に例示されるように、配列ピッチpの整数分の一のピッチでγ線検出器3を回転駆動させるのであれば、分母の整数については特に限定されない。
【0040】
本実施例1では、γ線検出器3の駆動方向は、被検体Mの体軸Z周りの回転方向(すなわち周方向)である。つまり、回転機構30は被検体Mの体軸Z周りにγ線検出器3を回転させることで、より多くの回転方向(周方向)の核医学データを検出して収集することが可能になる。
【0041】
また、本実施例1では、回転機構30が所定時間ごとに配列ピッチpの範囲内(本実施例1では配列ピッチpの半分のピッチp/2)でγ線検出器3を断続的に回転させたが、回転機構30はγ線検出器3を連続的に回転させ、γ線検出器3が配列ピッチpの範囲内での所定ピッチ(例えば本実施例1のように配列ピッチpの半分のピッチp/2)で回転するまでに、投影データ導出部10は各検出素子3Aごとの位置で核医学用データを収集してもよいし、回転機構30は任意のタイミングで配列ピッチpの範囲内での任意のピッチでγ線検出器3を回転させてもよい。
【0042】
前者のように、γ線検出器3を連続的に回転させる場合には、所定時間ごとにγ線検出器3を断続的に回転させる場合と同様に、メモリ部14などに代表される記憶媒体のROMに予め記憶されたプログラムを、コントローラ7を介して回転機構30に送り込む。後者のように、任意のタイミングで配列ピッチpの範囲内での任意のピッチでγ線検出器3を回転させる場合には、回転させたいタイミングでオペレータが指定したい任意のピッチの命令を入力部8に入力して、その入力された命令を、コントローラ7を介して回転機構30に送り込む。
【実施例2】
【0043】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図5は、実施例2に係るPET装置とX線CT装置とを備えたPET−CTの診断システムの側面図およびブロック図である。なお、図5では回転機構30の図示を省略している。
【0044】
上述した実施例1では、PET装置が点線源4を備え、点線源4が放射性薬剤と同じγ線を照射して被検体Mを透過することで、その放射線に基づいて形態情報として吸収補正データを求めたが、本実施例2では、CT用の投影データを吸収補正データとして用いている。
【0045】
X線CT装置は、開口部21aを有したガントリ21とX線管22とX線検出器23とを備えている。X線管22およびX線検出器23は、被検体Mを挟んで互いに対向配置されており、ガントリ21内に埋設されている。X線検出器3を構成する多数個の検出素子は被検体Mの体軸Z周りに扇状に並ぶ。
【0046】
その他にもX線CT装置は、ガントリ駆動部24と高電圧発生部25とコリメータ駆動部26とCT再構成部27とを備えて構成されている。CT再構成部27は、例えば上述したメモリ部14などに代表される記憶媒体のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部8で入力された命令をコントローラ7が実行することで実現される。なお、後述するCT用の投影データやCT再構成部27で処理されたCT用の断層画像も、上述した実施例1と同様にメモリ部14のRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。これらのCT用の投影データやCT用の断層画像は、この発明におけるX線CT用データに相当する。
【0047】
ガントリ駆動部24は、互いに対向関係を維持させたままX線管22とX線管検出器23とをガントリ21内で被検体Mの体軸Z周りに回転させるように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0048】
高電圧発生部25は、X線管22の管電圧や管電流を発生させる。コリメータ駆動部26は、X線の照視野を設定し、X線管22に近接されたコリメータ(図示省略)について水平方向の移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0049】
間接変換型のX線検出器23の場合には、X線管22から照射されて被検体Mを透過したX線を、X線検出器23内のシンチレータ(図示省略)が光に変換するとともに、変換された光を光感応膜(図示省略)が光電変換して電気信号に出力する。直接変換型のX線検出器23の場合には、X線を放射線感応膜(図示省略)が電気信号に直接的に変換して出力する。その電気信号を画像情報(画素)として、CT再構成部27に送り込む。CT再構成部27に送り込まれる画像情報はCT用の投影データとして伝送される。
【0050】
CT用の投影データは、実施例1で述べた吸収補正データと同じように形態情報を有しており、本実施例2では、CT用の投影データを吸収補正データとして用いるために吸収補正データ導出部11に送りこむとともに、CT再構成部27にも送り込む。CT再構成部27に送り込まれた画像情報(CT用の投影データ)を再構成して、CT用の断層画像を求める。このCT用の断層画像を、コントローラ7を介して出力部9に送り込む。吸収補正データ導出部11を含むPET装置の後段の処理部(吸収補正部12や再構成部13)の各機能については、実施例1と同様なので、その説明を省略する。なお、再構成部13で再構成されたPET用の断層画像と、CT再構成部27で再構成されたCT用の断層画像とを出力部9で重ね合わせて重畳出力してもよい。
【0051】
本実施例2では、回転機構30(図6では図示省略)は、上述した実施例1と同様に、所定時間ごとに検出素子3A間の配列ピッチpの半分のピッチp/2でγ線検出器3を断続的に回転させる。もちろん、実施例1でも述べたように、回転機構30はγ線検出器3を連続的に回転させ、γ線検出器3が配列ピッチpの範囲内での所定ピッチ(例えば実施例1のように配列ピッチpの半分のピッチp/2)で回転するまでに、投影データ導出部10は各検出素子3Aごとの位置で核医学用データを収集してもよいし、回転機構30は任意のタイミングで配列ピッチpの範囲内での任意のピッチでγ線検出器3を回転させてもよい。
【0052】
本実施例2に係るシステムの場合、投影データ導出部10は、回転するγ線検出器3の各検出素子3Aごとの位置で核医学用データ(本実施例2では投影データ)を収集して、その収集された投影データを吸収補正したり、吸収補正された投影データからPET用の断層画像を求めて、CT用の断層画像とを重ね合わせて重畳出力する。
【0053】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0054】
(1)上述した各実施例では、PET装置を例に採って説明したが、この発明は、単一のγ線を検出して被検体の断層画像を再構成するSPECT(Single Photon Emission CT)装置などにも適用することができる。
【0055】
(2)上述した各実施例では、PET装置が点線源4を備え、点線源4が放射性薬剤と同じγ線を照射して被検体Mを透過することで、その放射線に基づいて形態情報として吸収補正データを求め、上述した実施例2では、CT用の投影データを吸収補正データとして用いて、各実施例でそれぞれ吸収補正を行ったが、必ずしも吸収補正を行う必要はない。
【0056】
(3)上述した各実施例では、回転機構30に代表される駆動手段は配列ピッチpの整数分の一のピッチで位置が変更するようにγ線検出器3に代表される検出手段を回転駆動させたが、整数分の一に必ずしも限定されない。各検出素子3A間の配列ピッチpの範囲内になるのであれば、p×αのピッチ(ただし0<α<1)で位置が変更するように検出手段を回転駆動させてもよい。
【0057】
(4)上述した各実施例では、γ線検出器3に代表される検出手段の駆動方向は、被検体Mの体軸Z周りの回転方向(すなわち周方向)であったが、駆動方向は回転方向に限定されない。例えば体軸Z方向に沿って天板1を各検出素子3A間の配列ピッチp(ここでの配列ピッチpは体軸方向に並設された各検出素子3A間のピッチ)の範囲内で位置が変更するように天板駆動部6は駆動させる。天板1を体軸Z方向に移動させることで、天板1に載置された被検体Mも体軸Z方向に移動し、検出手段と被検体Mとの相対位置を配列ピッチpの範囲内で天板駆動部6は変更することになる。この変形例では天板駆動部6が、この発明における駆動手段に相当する。この他にも、天板1を断層面内の方向に昇降や水平あるいは斜め移動させてもよい。
【0058】
(5)上述した各実施例では、回転機構30に代表される駆動手段は配列ピッチpの範囲内で位置が変更するようにγ線検出器3に代表される検出手段を駆動させたが、駆動手段を固定して被検体Mを載置した天板1のみを駆動させることで、検出手段と被検体Mとの相対位置を配列ピッチpの範囲内で変更してもよい。例えば、γ線検出器3を固定して、天板1を被検体Mの体軸Z周りに配列ピッチpの範囲内で位置が変更するように回転させることで、検出手段と被検体Mとの相対位置を配列ピッチpの範囲内で変更してもよい。また、駆動手段および天板1の双方を配列ピッチpの範囲内で駆動(例えば互いに逆方向に移動)させて、検出手段と被検体Mとの相対位置を配列ピッチpの範囲内で変更してもよい。したがって、駆動手段が検出手段および被検体Mの少なくとも一方を駆動させて、検出手段と被検体Mとの相対位置を配列ピッチpの範囲内で変更するのであれば、駆動の対象については特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)は実施例1に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図、(b)はγ線検出器の具体的構成を示した拡大図である。
【図2】γ線検出器を被検体の体軸Z周りに回転させる回転機構およびγ線検出器の概略正面図である。
【図3】γ線検出器の概略正面図である。
【図4】(a)は、従来の検出素子間の配列ピッチおよび検出器位置の関係を模式的に示した説明図、(b)は、各実施例に係る検出素子間の配列ピッチ、配列ピッチの半分のピッチおよび検出器位置の関係を模式的に示した説明図である。
【図5】実施例2に係るPET装置とX線CT装置とを備えたPET−CTの診断システムの側面図およびブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
3 … γ線検出器
3A … 検出素子
10 … 投影データ導出部
30 … 回転機構
p … 配列ピッチ
M … 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線をそれぞれ検出する複数の検出素子で構成された検出手段と、検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させて、各検出素子間の配列ピッチの範囲内で検出手段と被検体との相対位置を変更する駆動手段と、各相対位置で核医学用データを収集する収集手段とを備えることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の核医学診断装置において、前記駆動手段は前記配列ピッチの整数分の一のピッチで前記相対位置が変更するように前記検出手段および前記被検体の少なくとも一方を駆動させることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置において、前記駆動手段は被検体の体軸周りに前記検出手段および前記被検体の少なくとも一方を回転させることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記駆動手段は所定時間ごとに前記配列ピッチの範囲内での所定ピッチで前記相対位置が変更するように前記検出手段および前記被検体の少なくとも一方を断続的に駆動させることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記駆動手段は前記検出手段および前記被検体の少なくとも一方を連続的に駆動させ、検出手段および被検体の少なくとも一方が前記配列ピッチの範囲内での所定ピッチで駆動するまでに、前記収集手段は被検体に対する各検出素子ごとの相対位置で核医学用データを収集することを特徴とする核医学診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記駆動手段は任意のタイミングで前記配列ピッチの範囲内での任意のピッチで前記検出手段および前記被検体の少なくとも一方を駆動させることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の核医学診断装置に用いられる診断システムであって、前記システムは、核医学診断装置とX線CT装置とを備えて構成されており、前記核医学診断装置は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求め、前記X線CT装置は、被検体の外部から照射されて被検体を透過したX線に基づいてX線CT用データを求め、核医学診断装置は、前記放射線をそれぞれ検出する複数の検出素子で構成された検出手段と、検出手段および被検体の少なくとも一方を駆動させて、各検出素子間の配列ピッチの範囲内で検出手段と被検体との相対位置を変更する駆動手段と、各相対位置で核医学用データを収集する収集手段とを備えることを特徴とする診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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