核医学診断装置
【課題】ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置の提供。
【解決手段】レーザーパルス発生器40は、光パルスを繰り返し発生する。検出器ブロック31は、光パルスを繰り返し検出し、光パルスの強度に応じた第1の出力信号を生成し、被検体内から放出されたガンマ線を繰り返し検出し、ガンマ線の強度に応じた第2の出力信号を繰り返し生成する。検出時刻計測部355は、光パルスの検出時刻を計測し、ガンマ線の検出時刻を繰り返し計測する。相対時間計算部55は、繰り返し計測されたガンマ線の検出時刻の各々について、計算対象のガンマ線の検出時刻と、計算対象のガンマ線の検出時刻前に計測された光パルスの検出時刻との差分を計算する。相対時間リスト記憶部57は、計算された差分の各々と第2の出力信号の各々とを関連付けて記憶する。
【解決手段】レーザーパルス発生器40は、光パルスを繰り返し発生する。検出器ブロック31は、光パルスを繰り返し検出し、光パルスの強度に応じた第1の出力信号を生成し、被検体内から放出されたガンマ線を繰り返し検出し、ガンマ線の強度に応じた第2の出力信号を繰り返し生成する。検出時刻計測部355は、光パルスの検出時刻を計測し、ガンマ線の検出時刻を繰り返し計測する。相対時間計算部55は、繰り返し計測されたガンマ線の検出時刻の各々について、計算対象のガンマ線の検出時刻と、計算対象のガンマ線の検出時刻前に計測された光パルスの検出時刻との差分を計算する。相対時間リスト記憶部57は、計算された差分の各々と第2の出力信号の各々とを関連付けて記憶する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET(positron emission tomography)収集を行なう核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学診断装置は、例えば、以下のようにPET収集を行なっている(例えば、特許文献1参照)。まず、陽電子(positron)を放出する放射性同位元素で標識された薬剤が被検体に投与される。核医学診断装置は、被検体の周囲にリング状に配置された複数の光検出器を利用して、被検体内から放出されるガンマ線を繰り返し検出する。そしてガンマ線の検出時刻をタイムスタンプとして利用し、所定の時間枠内で検出された2本のガンマ線を同定する。同定された2本のガンマ線は、同一の対消滅点から発生されたものと推定される。核医学診断装置は、同時計測された一対の検出器を結ぶ線(LOR:line of response)上に対消滅点があると推定する。このように、同一の対消滅点から発生された2本のガンマ線を同定することは、同時計測(コインシデンス)と呼ばれている。核医学診断装置は、LORに関する光検出器からの出力信号に基づいてPET画像のデータを発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003―279652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光速(略30万km/s)で伝播するガンマ線の発生位置を特定するためには、ガンマ線イベントに10psecオーダーの正確なタイムスタンプを与える必要がある。従って核医学診断装置には非常に高い時間分解能が要求されている。そのため、全光検出器に対する高精度なクロック同期が必要となっている。このための機構は、非常に複雑且つ高価である。また、10psecオーダーのクロック同期は、技術的に非常に困難である。
【0005】
また、個々の光検出器は、固有の反応時間(立ち上がり時間)を有している。そのため予め個々の光検出器の反応時間を測定し、この測定結果(キャリブレーションデータ)に応じて全光検出器の反応時間が同一となるように個々の光検出器の反応時間を補正している(タイミングキャリブレーション)。このように全光検出器の反応時間が同一となるように補正することで、核医学診断装置の時間分解能を改善している。しかし全光検出器についてのキャリブレーションデータを得るには、非常に長い時間を要する。また、光検出器の反応時間は経時的に変化してしまう。そのため、得られたキャリブレーションデータは、短時間しか有効ではない。従って、長時間且つ頻繁にタイミングキャリブレーションをしなければならない。このためのユーザの負担は、非常に大きい。
【0006】
本発明の目的は、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る核医学診断装置は、光パルスを繰り返し発生する光パルス発生部と、前記発生された光パルスを繰り返し検出し、前記検出された光パルスの強度に応じた第1出力信号を繰り返し生成し、被検体内から放出されたガンマ線を繰り返し検出し、前記検出されたガンマ線の強度に応じた第2出力信号を繰り返し生成する複数の光検出部と、前記複数の光検出部の各々における光パルスの検出時刻を繰り返し計測し、前記複数の光検出部の各々におけるガンマ線の検出時刻を繰り返し計測する計測部と、前記繰り返し計測されたガンマ線の検出時刻の各々について、計算対象のガンマ線の検出時刻と前記繰り返し計測された光パルスの検出時刻のうちの前記計算対象のガンマ線の検出時刻前に計測された光パルスの検出時刻との差分を計算する計算部と、前記計算された差分の各々と前記第2出力信号の各々とを関連付けて記憶する記憶部と、を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る核医学診断装置の構成を示す図。
【図2】図1のガントリ部の概略構成を示す図。
【図3】図1の検出器ブロックとレーザーパルス発生器との詳細な構造を示す図。
【図4】ガンマ線イベントにおける図1の検出器ブロックの入力と出力とを示す図。
【図5】擬似イベント(レーザーパルスイベント)における図1の検出器ブロックの入力と出力とを示す図。
【図6】図3の異なる2つの光電子増倍管から繰り返し出力される電気パルスを示す図。
【図7】図1の制御部の制御のもとに実行されるPET収集からPET画像表示までの処理の典型的な流れを示す図。
【図8】図1の検出時刻リスト記憶部に記憶される検出時刻リストの一例を示す図。
【図9】図1の相対時間リスト記憶部に記憶される相対時間リストの一例を示す図。
【図10】図1の再構成部により行なわれる通常のPET画像再構成法とTOF―PET画像再構成法との違いを示す図。
【図11】本実施形態の変形例に係る検出器ブロックとレーザーパルス発生器との詳細な構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる核医学診断装置を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る核医学診断装置の構成を示す図である。図1に示すように核医学診断装置は、ガントリ部10と画像処理装置50とを有している。図2は、ガントリ部10の概略構成を示す図である。図2に示すように、ガントリ部10は、筐体20内部に検出器リング30とレーザーパルス発生器40とを有している。
【0012】
検出器リング30の開口部には、被検体Pを載置可能な天板が挿入される。検出器リング30は、天板の長軸周りに円周状に配列された複数の検出器ブロック31を有している。典型的には、検出器リング30は、天板の長軸に沿って複数配列される。
【0013】
レーザーパルス発生器40は、筐体20内部に搭載される検出器ブロック31の数と同数の光伝導路(図示せず)を有している。光伝導路は、典型的には、光ファイバーである。レーザーパルス発生器40は、検出器ブロック31により検出可能な光パルス、典型的には、レーザーパルスを一定の時間間隔で繰り返し発生する。発生されたレーザーパルスは、光伝導路を介して検出器ブロック31に入射される。
【0014】
図3は、検出器ブロック31とレーザーパルス発生器40との詳細な構造を示す図である。なお図3(図1も同様)には、簡単のため2つの検出器ブロック31しか図示されていないが、実際の筐体20内部にはより多くの検出器ブロック31を搭載可能である。
【0015】
図3に示すように、各検出器ブロック31は、光検出器33とフロントエンド回路35とを装備している。
【0016】
光検出器33は、光を検出し、検出された光の強度に応じた電気信号を生成する。具体的には、光検出器33は、被検体内から放出されたガンマ線を検出し、検出されたガンマ線の強度に応じたアナログの電気信号(以下、ガンマ線信号と呼ぶことにする)を生成する。また、光検出器33は、レーザーパルス発生器40から入射されたレーザーパルスを検出し、検出されたレーザーパルスの強度に応じたアナログの電気信号(以下、レーザーパルス信号と呼ぶことにする)を生成する。なお、「光が検出される」ことを「イベント(events)が発生する」と呼ぶことにする。さらには、「ガンマ線が検出される」ことを「ガンマ線イベント(gamma events)が発生する」、また「レーザーパルスが検出される」ことを「擬似イベント(pseudo events)が発生する」と呼ぶことにする。
【0017】
具体的には、各光検出器33は、複数のシンチレータ(クリスタル)331、ライトガイド333、及び光電子増倍管335が接合されてなる。
【0018】
各シンチレータ331は、直方体状に成形されたシンチレータ結晶からなる。シンチレータ結晶は、ガンマ線が入射されると蛍光を発生する物質である。シンチレータ331は、ガンマ線入射面が検出器リング30の内側を向くように配列される。シンチレータ結晶は、例えば、NaI(ヨウ化ナトリウム)やBGO(ビスマス酸ジャーマネイト)、LSO(ケイ酸ルテチウムにセリウムを一定量添加したもの)等が用いられる。1つの検出器ブロック31には、2次元状に配列された複数のシンチレータ331が搭載される。複数のシンチレータ331のガンマ線入射面の反対側の面には、ライトガイド333が光学的に接合されている。各シンチレータ331の側面には反射材が塗布されている。蛍光は、ライトガイド333に導かれる。
【0019】
ライトガイド333は、アクリル等の光導電性を有する物質により形成される。ライトガイド333のシンチレータ接合面の反対側の面には、光電子増倍管335が接合されている。また、ライトガイド333の側面には、レーザーパルス発生器40の光ファイバー41が光学的に接合されている。ライトガイド333は、シンチレータ331からの蛍光や光ファイバーからのレーザーパルスを光電子増倍管335の光電面に導く。
【0020】
レーザーパルス発生器40は、検出器ブロック31と同数の光ファイバー41を有している。筐体20内の全ての検出器ブロック31とレーザーパルス発生器40とが光ファイバー41を介して接合されている。レーザーパルス発生器40は、各光ファイバー41を介して各検出器ブロック31のライトガイド333に一定時間間隔おきに繰り返しレーザーパルスを入射する。レーザーパルスは、一定の強度を有する。また、レーザーパルスの持続時間は、標準的な蛍光の持続時間(すなわちガンマ線に由来する電気パルスの持続時間)に比して、十分短いものとする。全ての光ファイバー41の長さは、同一である。典型的には、光ファイバー長は、筐体20内部の全光ファイバー41のうちの、レーザーパルス発生器40から物理的に最も遠いライトガイド333に接合される光ファイバー41の長さに統一される。このように筐体20内部の全光ファイバー41の長さを同一にすることにより、筐体20内部の全ライトガイド333に対して同時にレーザーパルスを入射させることができる。
【0021】
光電子増倍管335は、光電面がライトガイド333側に向くようにライトガイド333に光学的に接合されている。光電子増倍管335の光電面の反対側の面には、フロントエンド回路35が接合されている。光電子増倍管335は、ライトガイド333を介してシンチレータ331から蛍光を受光し、受光された蛍光を増幅し、増幅された蛍光の光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。また、光電子増倍管335は、ライトガイド335に入射されたレーザーパルスを受光し、受光されたレーザーパルスを増幅し、増幅されたレーザーパルスの光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。このように光電子増倍管335は、電気信号発生部として機能する。発生された電気パルスは、フロントエンド回路35に供給される。なお、光電子増倍管335の代わりに、電気信号発生部として機能するフォトダイオードを設けても良い。
【0022】
フロントエンド回路35は、図1に示すエネルギー計算部351、位置計算部353、及び検出時刻計測部355の機能を有する。
【0023】
エネルギー計算部351は、光電子増倍管335からの電気信号に基づいて、光検出器33に入射された光のエネルギー値に応じた強度を有する電気信号(エネルギー信号)を生成する。生成されたエネルギー信号のエネルギー値は、画像処理装置50の検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0024】
位置計算部353は、光電子増倍管335からの電気信号に基づいて、光が入射した位置座標に応じた強度を有する電気信号(位置信号)を生成する。典型的には、位置座標は、光が発生したシンチレータ331の位置座標である。ガンマ線は実際にシンチレータ331に入射する。従って、位置計算部353により計算されるガンマ線の位置座標は、実測の位置座標であるといえる。しかし、レーザーパルスは実際にはシンチレータ331に入射しない。従って、位置計算部353により計算されるレーザーパルスの位置座標は、架空の位置座標であるといえる。生成された位置信号は、画像処理装置50の検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0025】
なお画像処理装置50内部において位置信号は、エネルギー値に関連付けて処理される。以下、位置信号が関連付けられたエネルギー値をイベントデータと呼ぶことにする。
【0026】
検出時刻計測部355は、光電子増倍管335から供給される電気信号の強度をモニタリングし、光検出器によるレーザーパルスやガンマ線等が光を検出した時刻を計測する。そして検出時刻計測部355は、検出時刻を示す検出時刻データを生成する。検出時刻データは、画像処理装置50の検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0027】
画像処理装置50は、検出時刻リスト記憶部51、イベント識別部53、相対時間計算部55、相対時間リスト記憶部57、同時計測部59、再構成部61、表示部63、入力部65、及び制御部67を有する。
【0028】
検出時刻リスト記憶部51は、検出時刻リストのデータを記憶する。検出時刻リストは、少なくともイベントデータと検出時刻データとがイベント毎に関連付けられたリストである。検出時刻リスト上においては、ガンマ線イベントの検出時刻がタイムスタンプとして利用されている。検出時刻リストの詳細については後述する。
【0029】
イベント識別部53は、検出時刻リスト記憶部51に記憶されている検出時刻リストを参照し、各イベントがガンマ線イベントなのか、それとも擬似イベントなのかを各イベントのエネルギー値に基づいて識別する。
【0030】
相対時間計算部55は、ガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との差分を計算する。例えば、相対時間計算部55は、ガンマ線イベントの検出時刻から、対応する擬似イベントの検出時刻を減算することにより差分、すなわち擬似イベントの検出時刻に対するガンマ線イベントの検出時刻の相対時間を計算する。計算対象のガンマ線イベントと擬似イベントとは、同一の光検出器33で検出されたイベントに限定される。例えば、計算対象のガンマ線イベントの検出時刻は、この検出時刻の直前に同一の光検出器33で検出された擬似イベントの検出時刻により減算される。計算された相対時間に関するデータは、相対時間リスト記憶部57に供給される。
【0031】
相対時間リスト記憶部57は、相対時間リストのデータを記憶する。相対時間リストは、少なくともガンマ線イベントに関するイベントデータ(投影データ)と相対時間データとがガンマ線イベント毎に関連付けられたリストである。相対時間リスト上では、相対時間がガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用される。
【0032】
同時計測部59は、相対時間を利用してガンマ線イベントの同時計測を行なう。具体的には、同時計測部59は、相対時間リストの中から予め定められた時間枠内に収まる2つのガンマ線イベントを繰り返し同定し、この2つのガンマ線イベントに関するイベントデータを繰り返し同定する。特定された2つのガンマ線イベントは、同一の対消滅点から発生された一対のガンマ線に由来すると推定される。一対のガンマ線を検出した一対の光検出器33間を結ぶ線は、LOR(line of interest)と呼ばれている。同時計測を繰り返し行なうことにより、LORに関するイベントデータが同定される。
【0033】
再構成部61は、同時計測されたガンマ線イベントに関するイベントデータを相対時間リスト記憶部57から読み出し、読み出されたイベントデータに基づいて被検体内の放射性同位元素の濃度分布を表すPET画像のデータを再構成する。
【0034】
表示部63は、再構成部61により再構成されたPET画像を表示デバイスに表示する。表示デバイスとしては、CRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0035】
入力部65は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。具体的には、入力部65は、入力デバイスを介してPET収集や再構成処理の開始指示や終了指示を入力したり、PET収集条件や再構成条件を入力したりする。入力デバイスとしては、キーボード、マウス、各種ボタン、タッチキーパネル等が適宜利用可能である。
【0036】
制御部67は、核医学診断装置の中枢として機能する。例えば、制御部67は、自身が有するメモリに専用プログラムを展開し、この専用プログラムに従って各部を制御することによりPET収集やPET画像の再構成処理を行なう。
【0037】
以下、本実施形態に係る核医学診断装置の詳細について説明する。
【0038】
まず、ガンマ線イベントと擬似イベントとのそれぞれにおける検出器ブロック31の動作について詳細に説明する。
【0039】
図4は、ガンマ線イベントにおける検出器ブロック31の入力と出力とを示す図である。図4に示すように、ガンマ線がシンチレータ331に入射されると蛍光が発生される。発生された蛍光は、ライトガイド333を介して光電子増倍管335の光電面に到達し、光電子増倍管335により電気パルスに変換され、フロントエンド回路35に供給される。フロントエンド回路35は、供給された電気パルスを一定期間積分し、検出されたガンマ線に由来するエネルギー値EGを有するエネルギー信号を生成する。また、フロントエンド回路35は、光電子増倍管335を介して供給された電気パルスをモニタリングし、検出時刻tGを計測する。エネルギー信号EGのエネルギー値と、検出時刻tGに関する検出時刻データとは、検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0040】
図5は、擬似イベント(レーザーパルスイベント)における検出器ブロック31の入力と出力とを示す図である。図5に示すように、レーザーパルス発生器40により発生されたレーザーパルスは、光ファイバー41を介してライトガイド333に入射される。入射されたレーザーパルスは、ライトガイド333を介して光電子増倍管335の光電面に到達し、光電子増倍管335により電気パルスに変換され、フロントエンド回路35に供給される。フロントエンド回路35は、供給された電気パルスを一定期間積分し、検出されたレーザーパルスに由来するエネルギー値ELを有するエネルギー信号を生成する。また、フロントエンド回路35は、光電子増倍管335からの電気パルスをモニタリングし、検出時刻tLを計測する。エネルギー信号ELのエネルギー値と、検出時刻tLに関する検出時刻データとは、検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0041】
図6は、異なる2つの光電子増倍管から繰り返し出力される電気パルスを示す図である。図6の上段は、第1光電子増倍管から出力された電気パルスのエネルギーEと時間tとの関係を示すグラフであり、下段は、第2光電子増倍管から出力された電気パルスのエネルギーEと時間tとの関係を示すグラフである。
【0042】
図6に示すように、第1光電子増倍管と第2光電子増倍管とには、順番に第1レーザーパルス、第1ガンマ線、第2ガンマ線、第2レーザーパルス、第3ガンマ線が入射されたとする。これにより第1光電子増倍管は、順番に第1レーザーパルスに関する電気パルスP11、第1ガンマ線に関する電気パルスP12、第2ガンマ線に関する電気パルスP13、第2レーザーパルスに関する電気パルスP14、第3ガンマ線に関する電気パルスP15を生成する。同様に第2光電子増倍管は、順番に第1レーザーパルスに関する電気パルスP21、第1ガンマ線に関する電気パルスP22、第2ガンマ線に関する電気パルスP23、第2レーザーパルスに関する電気パルスP24、第3ガンマ線に関する電気パルスP25を生成する。
【0043】
レーザーパルス発生器40は、一定時間間隔、例えば、1nsに一回の割合で繰り返しレーザーパルスをライトガイドに入射する。この場合、第1レーザーパルスの検出時刻tL11と第2レーザーパルスの検出時刻tL21との間の時間間隔は、1nsである。なお、第1レーザーパルスと第2レーザーパルスとは、上記構成により、実時間上において厳密に同時刻に第1光電子増倍管と第2光電子増倍管とにそれぞれ入射される。
【0044】
各電気パルスのエネルギー値は、上述のようにフロントエンド回路に実装されたエネルギー計算部351により計算される。より詳細には、エネルギー計算部351は、電気パルスのエネルギー値をモニタリングし、エネルギー値がトリガ値ETを超えることを待機している。エネルギー値がトリガ値ETを超えると、エネルギー値を積分し始める。そしてエネルギー値がトリガ値ETを下回った時点で積分を終了する。この積分値がその電気パルスのエネルギー値に設定される。
【0045】
各電気パルスの検出時刻は、上述のようにフロントエンド回路に実装された検出時刻計測部355により計測される。より詳細には、検出時刻計測部355は、電気パルスのエネルギー値をモニタリングし、エネルギー値が所定のトリガ値ETを超えることを待機している。そしてエネルギー値が所定のトリガ値ETを超えた時点を、イベントの検出時刻として計測する。なお筐体20内部の全検出時刻計測部355は、クロック同期されている必要はない。例えば、第1光電子増倍管における第1ガンマ線に関する電気パルスの場合、エネルギー値がトリガ値ETを超えた時点が検出時刻tG11として計測される。従って各検出時刻計測部355は、自身が有するクロック回路からのクロックパルスに従って個別に検出時刻を計測する。
【0046】
図6に示すように、異なる光電子増倍管には、同一の製品規格であっても製造上あるいは経年劣化等により光に対する反応時間に僅かな差が生じてしまう。これに伴い、蛍光が光電子増倍管の光電面に入射してからの電気パルスの立ち上がり時間にも、光電子増倍管間で差が生じてしまう。例えば、第1光電子増倍管では第1レーザーパルスに由来する電気パルスP11は、時刻tL11に検出される。しかし、第2光電子増倍管では第1レーザーパルスに由来する電気パルスP21は、時刻tL11よりも遅い時刻tL21に検出される。すなわち、第1光電子増倍管と第2光電子増倍管との間には、第1レーザーパルスに関して反応時間差tL21−tL11が生じていることがわかる。他のレーザーパルスやガンマ線に由来する電気パルスに関しても同様に反応時間差が生ずる。
【0047】
また、同一の光電子増倍管であっても、各電気パルスに対する反応時間が僅かに異なる場合もある。しかし、レーザーパルスの入射間隔程度の極短い時間内においては、同一の光電子増倍管により検出される複数イベントの各々の反応時間は、同一であるとみなせる。換言すれば、極短い時間内においては、擬似イベントに対する反応時間とガンマ線イベントに対する反応時間とは、同一であるとみなせる。すなわち、たとえ2つの光電子増倍管に反応時間差が生じていたとしても、ガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との時間差は実時間上において同一となる。
【0048】
具体的には、図6に示すように、第1光電子増倍管における第1ガンマ線の検出時刻tG11と第1レーザーパルスの検出時刻tL11との時間差は、tG11−tL11である。第2光電子増倍管における第1ガンマ線の検出時刻tG21と第1レーザーパルスの検出時刻tL21との時間差は、tG21−tL21である。この時間差tG11−tL11と時間差tG21−tL21とは、実時間上において同一である。すなわちガンマ線イベントのタイムスタンプをレーザーパルスとの間の時間差(相対時間)とすれば、同時計測等において第1光電子増倍管と第2光電子増倍管との間の反応時間差tL21−tL11を相殺することができる。
【0049】
本実施形態に係る核医学診断装置は、上記の理由により、レーザーパルスに由来する擬似イベントの検出時刻に対するガンマ線イベントの検出時刻の相対時間を、ガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用する。
【0050】
次に図7を参照しながら、本実施形態に係る核医学診断装置の典型的な動作例について説明する。図7は、制御部67の制御のもとに実行される、PET収集からPET画像表示までの処理の典型的な流れを示す図である。
【0051】
まず、陽電子を放出する放射性同位元素で標識された薬剤が被検体に投与される。放射性同位元素としては、例えば、F18やO15、C11、N13等が知られている。例えば、F18で標識されたブドウ糖(FDG:fluorodeoxyglucose)を用いた場合、癌がPET画像により可視化される。これは、癌は正常細胞より糖代謝が激しいためである。これにより癌を見つけることができる。また、βアミロイドに対して親和性を有する薬剤をC11で標識した場合、脳内のβアミロイドがPET画像により可視化される。これにより脳内のβアミロイド分布を調べることができる。
【0052】
被検体に薬剤が投与されPET収集の準備が整うと、ユーザは、入力部65を介してPET収集の開始指示を入力する。開始指示が入力されると制御部67は、各部を制御してPET収集を開始する。PET収集の間、制御部67は、レーザーパルス発生器40を制御して、所定時間おきにレーザーパルスを全検出器ブロック31のライトガイド333に同時に入射させる。
【0053】
このような状態で制御部67は、PET収集の間、検出時刻リスト記憶部51に検出時刻リストのデータをリアルタイムに記録させる(ステップS1)。
【0054】
ステップS1において検出時刻リスト記憶部51は、レーザーパルスに由来する擬似イベントに関するイベントデータを通常のガンマ線イベントに関するイベントデータと共に検出時刻リストに順次記録する。
【0055】
図8は、検出時刻リスト記憶部51に記憶される検出時刻リストの一例を示す図である。図8に示すように、検出時刻リストは、イベント番号、光電子増倍管番号、シンチレータ番号、検出時刻、エネルギー等の項目を有する。イベント番号は、イベントを識別するための番号である。光電子増倍管番号は、イベントに関する光が検出された光電子増倍管335を識別するための番号である。シンチレータ番号は、位置計算部353により計算された位置座標に対応するシンチレータ331を識別するための番号である。検出時刻は、検出時刻計測部355により計測されたイベントの検出時刻である。エネルギーは、エネルギー計算部351により計算されたエネルギー値(ガンマ線やレーザーパルスのエネルギー値)である。例えば、番号1のイベント(擬似イベント)の光は、番号PMT1の光電子増倍管335により検出時刻tL11に検出され、番号SC3のシンチレータ331で発生されたと計算され、エネルギー値EL1を有する。同様に番号4のイベント(ガンマ線イベント)の光は、番号PMT2の光電子増倍管335により検出時刻tG21に検出され、番号SC5のシンチレータ331で発生されたと計算され、エネルギー値EG21を有する。このように検出時刻リスト上では、検出時刻が各イベントのタイムスタンプとして利用されている。
【0056】
なお検出時刻リストは、全ての光電子増倍管335について1つ作成されるとしても、検出器ブロック335毎に作成されるとしてもよい。
【0057】
ステップS1が行なわれると制御部67は、イベント識別部53にイベントの識別処理を行なわせる(ステップS2)。
【0058】
ステップS2においてイベント識別部53は、検出時刻リスト記憶部51に記憶された各イベントが擬似イベントなのか、あるいはガンマ線イベントなのかを識別する。具体的には、イベント識別部53は、識別対象のイベントに関連付けられたエネルギー値がレーザーパルスに相当するエネルギー値ELを有しているか否かを判定する。エネルギー値ELを有しているか否かは、識別対象のイベントのエネルギー値がエネルギーELを含む所定のエネルギー範囲内にあるか否かにより判定される。識別対象のイベントのエネルギー値が所定のエネルギー範囲内にあると判定した場合、イベント識別部53は、そのエネルギー値がエネルギー値ELを有していると判定し、識別対象のイベントが擬似イベントであると識別する。擬似イベントの旨のコードは、例えば、そのイベントのイベント番号に関連付けて検出時刻リスト記憶部51に記憶される。一方、識別対象のイベントのエネルギー値が所定のエネルギー範囲内にないと判定した場合、イベント識別部53は、そのエネルギー値がエネルギー値ELを有していないと判定し、識別対象のイベントがガンマ線イベントであると識別する。ガンマ線イベントの旨のコードは、例えば、そのイベントのイベント番号に関連付けて検出時刻リスト記憶部51に記憶される。
【0059】
ステップS2が行なわれると制御部67は、相対時間計算部55に相対時間の計算処理を行なわせる(ステップS3)。
【0060】
ステップS3において相対時間計算部55は、検出時刻リスト記憶部51に記憶された各ガンマ線イベントについて、ガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との時間差を計算する。より詳細には、ガンマ線イベントの検出時刻から擬似イベントの検出時刻を減算し、擬似イベントの検出時刻に対するガンマ線イベントの検出時刻の相対時間を計算する。相対時間は、同一の光電子増倍管335により検出されたガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻とに基づいて計算される。計算対象の擬似イベントは、計算対象のガンマ線イベントの検出時刻の直前の検出時刻を有するものに限定される。これにより、同一の光電子増倍管335における個々のイベントに対する反応時間差によるタイムスタンプ精度の悪化を軽減できる。
【0061】
具体的に図8に示す検出時刻リストを参照しながら相対時間の計算処理を説明する。イベント番号3のガンマ線イベントについて相対時間を計算する場合を具体例に挙げる。イベント番号3のガンマ線イベントは、番号PMT1の光電子増倍管335により、検出時刻tG11に検出されている。相対時間計算部55は、検出時刻リストを参照し、番号PMT1の光電子増倍管335により検出時刻tG11の直前に検出された擬似イベントを特定する。この条件を満たす擬似イベントがイベント番号1の擬似イベントであるとする。この場合、相対時間計算部55は、イベント番号1の擬似イベントの検出時刻tL11でイベント番号3のガンマ線イベントの検出時刻tG11を減算し、相対時間tG11−tL11を算出する。
【0062】
ステップS3が行なわれると制御部67は、相対時間リスト記憶部57に相対時間リストのデータを記録させる(ステップS4)。
【0063】
ステップS4において相対時間リスト記憶部57は、相対時間計算部55により計算された相対時間のデータをガンマ線イベントに関するイベントデータと共に相対時刻リストに記録する。
【0064】
図9は、相対時間リスト記憶部57に記憶される相対時間リストの一例を示す図である。図9に示すように、相対時間リストは、イベント番号、光電子増倍管番号、シンチレータ番号、相対時間、エネルギー等の項目を有する。例えば、イベント番号3のガンマ線イベントの相対時間は、tG11−tL11である。このように相対時間リスト上においては、擬似イベントとの相対時間がガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用される。相対時間によるタイムスタンプは、同時計測等により利用される。
【0065】
ステップS4が行なわれると制御部67は、同時計測部59に同時計測処理を行なわせる(ステップS5)。
【0066】
ステップS5において同時計測部59は、相対時間をガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用して、相対時間リスト記憶部57に記憶されている相対時間リスト上のガンマ線イベントを同時計測処理する。具体的には、同時計測部59は、相対時間リストに記憶されている複数の相対時間の中から、予め設定された所定の時間枠に含まれる一対の相対時間を繰り返し同定する。そして同定された一対の相対時間に関連付けられた一対のイベントデータを相対時間リストの中から同定する。一対の相対時間に対応する一対のガンマ線イベントは、同一の対消滅点から発生された一対のガンマ線イベントであると推定される。対のガンマ線イベントを検出した対の検出器ブロック31を結ぶ線がLORである。同定された対のガンマ線イベントのイベント番号には、それぞれLORを識別するためのコードが関連付けられる。この対のガンマ線イベントの同定は、相対時間リスト内の全ガンマ線イベントについて行なわれる。なお時間枠は、例えば6ns〜18ns程度に設定される。同時計測部59は、従来のように検出時刻をタイムスタンプとして利用せず、検出時刻に比して高時間分解能な相対時間をタイムスタンプとして利用している。従って同時計測部59は、従来に比してより正確、より高時間分解能に同時計測を行なうことができる。
【0067】
ステップS5が行なわれると制御部67は、再構成部61に再構成処理を行なわせる(ステップS6)。
【0068】
ステップS6において再構成部61は、同時計測部59により同定されたイベントデータを相対時間リスト記憶部57から読み出し、読み出されたイベントデータに基づいてPET画像のデータを再構成する。利用可能な再構成法には、対のガンマ線イベントのタイムスタンプの時間差を利用しない通常のPET画像再構成法と、対のガンマ線イベントのタイムスタンプの時間差を利用するTOF(time of flight)―PET画像再構成法とがある。
【0069】
図10は、再構成部61により行なわれる通常のPET画像再構成法とTOF―PET画像再構成法との違いを示す図である。図10に示すように、通常のPET画像再構成法は、「LOR上の各点における対消滅点の存在確率は等しい」という前提に基づく再構成法である。従って、LOR上の各点における重みは光検出器からの距離によらず一様である。再構成部61は、このように設定された重みを利用してイベントデータを再構成処理し、PET画像のデータを生成する。通常のPET画像再構成法を用いた場合でも、相対時間をタイムスタンプとしたことにより従来に比して高時間分解能に同時計測がなされているので、従来に比してPET画像の画質が向上する。
【0070】
一方図10に示すように、TOF―PET画像再構成法は、「LOR上の各点における対消滅点の存在確率はガンマ線イベントの相対時間差に応じて異なる」という前提に基づく再構成法である。従って、LOR上の各点における重みは、光検出器からの距離に応じて変化する。以下、TOF―PET画像再構成法における重みづけについて説明する。第1検出器ブロック311においてガンマ線イベントが相対時間t1で検出され、第1検出器ブロック312においてガンマ線イベントが相対時間t2で検出されたとする。この場合、LORの中心点CPから対消滅点までの距離dは、以下の(1)で表される。なおcは、光速であるとする。
d=c(t1−t2)/2 ・・・(1)
この(1)式によりLOR上の対消滅点の位置を計算できる。対消滅点の位置が計算されると再構成部61は、重みを設定する。重みは、対消滅点から距離が離れるにつれて値が小さくなるように設定される。再構成部61は、このように設定された重みに基づいてイベントデータからPET画像のデータを再構成する。このTOF―PET画像再構成法によれば、通常のPET画像再構成法に比してS/N比を向上させることができる。また、本実施形態に係るTOF―PET画像再構成法は、従来のTOF―PET画像再構成法のように検出時刻をタイムスタンプとして利用せず、検出時刻に比して時間分解能が向上する相対時間をタイムスタンプとして利用している。従って従来のTOF―PET画像再構成法に比してより正確に、すなわちより高時間分解能に対消滅点を計算することができる。これにともない、TOF―PET画像再構成法によるPET画像の画質も従来に比して向上する。
【0071】
ステップS6が行なわれると制御部67は、表示部63に表示処理を行なわせる(ステップS7)。
【0072】
ステップS7において表示部63は、生成されたPET画像を表示デバイスに表示する。PET画像が表示されると、PET収集からPET画像表示までの処理が終了する。
【0073】
なお、図7における処理は、PET収集と同時に行なわれるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、検出時刻リストのデータに基づいて事後的にステップS1〜ステップS7の処理を行なうことも可能である。
【0074】
上記構成により本実施形態に係る核医学診断装置は、PET収集中において、レーザーパルス発生器により各検出器ブロックに実時間上同時に擬似イベントを発生させている。そしてガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との時間差をタイムスタンプとして利用する。この新しいタイムスタンプにより、検出器ブロック毎に異なる反応時間差を相殺することができる。従って本実施形態に係る核医学診断装置は、検出器ブロックによるガンマ線イベントの検出時刻をタイムスタンプとして利用していた従来装置に比して、より高精度且つ高時間分解能なタイムスタンプを得ることができる。また、従来装置では必要であった、各検出器ブロックのクロック同期が必要なくなる。従って本実施形態に係る核医学診断装置は、クロック同期のための機構を設ける必要がないので、従来装置に比して安価に製造することが可能となる。また、従来装置では個々の検出器ブロックの反応時間を計測し、同様の反応時間を有する検出器ブロックを集めて装置に実装していた。本実施形態に係る核医学診断装置は、相対時間をタイムスタンプとすることにより反応時間を相殺できるので、検出器ブロックの反応時間を計測して、同様の反応時間を有する検出器ブロックを集めてガントリ部10に実装するという作業も必要ない。また、本実施形態に係る核医学診断装置は、検出器ブロックのタイミングキャリブレーションをPET収集と同時に自動的に行なっている、ということもできる。従って本実施形態に係る核医学診断装置は、従来必要であったPET収集前の手動によりタイミングキャリブレーションを行なう必要がない。従ってタイミングキャリブレーションにおけるユーザの手間を失くすことができる。
【0075】
かくして本実施形態によれば、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置の提供が実現する。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0077】
(変形例)
上記の実施形態において光ファイバーは検出器ブロックのライトガイドに接合されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。変形例に係る核医学診断装置においては、光ファイバーはシンチレータに光学的に接合される。
【0078】
図11は、変形例に係る検出器ブロック81とレーザーパルス発生器40との詳細な構造を示す図である。図11に示すように、変形例に係る検出器ブロック81は、光検出器83とフロントエンド回路35とを装備している。このように検出器ブロック81は、複数のシンチレータ831と光電子増倍管835との間にライトガイドを設けない構造を有している。複数のシンチレータ831のうちの端にあるシンチレータの側面には、光ファイバー83が光学的に接合されている。この光ファイバー83を介してレーザーパルス発生器40からシンチレータ831にレーザーパルスが入射される。シンチレータ831内に入射されたレーザーパルスは、光電子増倍管835の光電面に導かれる。
【0079】
光電子増倍管835は、光電面が複数のシンチレータ831側に向くように光学的に接合されている。光電子増倍管835の光電面の反対側の面には、フロントエンド回路35が接合されている。光電子増倍管835は、シンチレータ831から蛍光を受光し、受光された蛍光を増幅し、増幅された蛍光の光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。また、光電子増倍管835は、シンチレータ831に入射されたレーザーパルスを受光し、受光されたレーザーパルスを増幅し、増幅されたレーザーパルスの光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。発生された電気パルスは、フロントエンド回路35に供給される。その後の処理は、本実施形態と同様であるので記載を省略する。
【0080】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上本発明によれば、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置の提供が実現することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…ガントリ部、20…筐体、30…検出器リング、31…検出器ブロック、33…光検出器、331…シンチレータ、333…ライトガイド、335…光電子増倍管、35…フロントエンド回路、351…エネルギー計算部、353…位置計算部、355…検出時刻計測部、40…レーザーパルス発生器、41…光伝導路(光ファイバー)、50…画像処理装置、51…検出時刻リスト記憶部、53…イベント識別部、55…相対時間計算部、57…相対時間リスト記憶部、59…同時計測部、61…再構成部、63…表示部、65…入力部、67…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET(positron emission tomography)収集を行なう核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学診断装置は、例えば、以下のようにPET収集を行なっている(例えば、特許文献1参照)。まず、陽電子(positron)を放出する放射性同位元素で標識された薬剤が被検体に投与される。核医学診断装置は、被検体の周囲にリング状に配置された複数の光検出器を利用して、被検体内から放出されるガンマ線を繰り返し検出する。そしてガンマ線の検出時刻をタイムスタンプとして利用し、所定の時間枠内で検出された2本のガンマ線を同定する。同定された2本のガンマ線は、同一の対消滅点から発生されたものと推定される。核医学診断装置は、同時計測された一対の検出器を結ぶ線(LOR:line of response)上に対消滅点があると推定する。このように、同一の対消滅点から発生された2本のガンマ線を同定することは、同時計測(コインシデンス)と呼ばれている。核医学診断装置は、LORに関する光検出器からの出力信号に基づいてPET画像のデータを発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003―279652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光速(略30万km/s)で伝播するガンマ線の発生位置を特定するためには、ガンマ線イベントに10psecオーダーの正確なタイムスタンプを与える必要がある。従って核医学診断装置には非常に高い時間分解能が要求されている。そのため、全光検出器に対する高精度なクロック同期が必要となっている。このための機構は、非常に複雑且つ高価である。また、10psecオーダーのクロック同期は、技術的に非常に困難である。
【0005】
また、個々の光検出器は、固有の反応時間(立ち上がり時間)を有している。そのため予め個々の光検出器の反応時間を測定し、この測定結果(キャリブレーションデータ)に応じて全光検出器の反応時間が同一となるように個々の光検出器の反応時間を補正している(タイミングキャリブレーション)。このように全光検出器の反応時間が同一となるように補正することで、核医学診断装置の時間分解能を改善している。しかし全光検出器についてのキャリブレーションデータを得るには、非常に長い時間を要する。また、光検出器の反応時間は経時的に変化してしまう。そのため、得られたキャリブレーションデータは、短時間しか有効ではない。従って、長時間且つ頻繁にタイミングキャリブレーションをしなければならない。このためのユーザの負担は、非常に大きい。
【0006】
本発明の目的は、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る核医学診断装置は、光パルスを繰り返し発生する光パルス発生部と、前記発生された光パルスを繰り返し検出し、前記検出された光パルスの強度に応じた第1出力信号を繰り返し生成し、被検体内から放出されたガンマ線を繰り返し検出し、前記検出されたガンマ線の強度に応じた第2出力信号を繰り返し生成する複数の光検出部と、前記複数の光検出部の各々における光パルスの検出時刻を繰り返し計測し、前記複数の光検出部の各々におけるガンマ線の検出時刻を繰り返し計測する計測部と、前記繰り返し計測されたガンマ線の検出時刻の各々について、計算対象のガンマ線の検出時刻と前記繰り返し計測された光パルスの検出時刻のうちの前記計算対象のガンマ線の検出時刻前に計測された光パルスの検出時刻との差分を計算する計算部と、前記計算された差分の各々と前記第2出力信号の各々とを関連付けて記憶する記憶部と、を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る核医学診断装置の構成を示す図。
【図2】図1のガントリ部の概略構成を示す図。
【図3】図1の検出器ブロックとレーザーパルス発生器との詳細な構造を示す図。
【図4】ガンマ線イベントにおける図1の検出器ブロックの入力と出力とを示す図。
【図5】擬似イベント(レーザーパルスイベント)における図1の検出器ブロックの入力と出力とを示す図。
【図6】図3の異なる2つの光電子増倍管から繰り返し出力される電気パルスを示す図。
【図7】図1の制御部の制御のもとに実行されるPET収集からPET画像表示までの処理の典型的な流れを示す図。
【図8】図1の検出時刻リスト記憶部に記憶される検出時刻リストの一例を示す図。
【図9】図1の相対時間リスト記憶部に記憶される相対時間リストの一例を示す図。
【図10】図1の再構成部により行なわれる通常のPET画像再構成法とTOF―PET画像再構成法との違いを示す図。
【図11】本実施形態の変形例に係る検出器ブロックとレーザーパルス発生器との詳細な構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる核医学診断装置を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る核医学診断装置の構成を示す図である。図1に示すように核医学診断装置は、ガントリ部10と画像処理装置50とを有している。図2は、ガントリ部10の概略構成を示す図である。図2に示すように、ガントリ部10は、筐体20内部に検出器リング30とレーザーパルス発生器40とを有している。
【0012】
検出器リング30の開口部には、被検体Pを載置可能な天板が挿入される。検出器リング30は、天板の長軸周りに円周状に配列された複数の検出器ブロック31を有している。典型的には、検出器リング30は、天板の長軸に沿って複数配列される。
【0013】
レーザーパルス発生器40は、筐体20内部に搭載される検出器ブロック31の数と同数の光伝導路(図示せず)を有している。光伝導路は、典型的には、光ファイバーである。レーザーパルス発生器40は、検出器ブロック31により検出可能な光パルス、典型的には、レーザーパルスを一定の時間間隔で繰り返し発生する。発生されたレーザーパルスは、光伝導路を介して検出器ブロック31に入射される。
【0014】
図3は、検出器ブロック31とレーザーパルス発生器40との詳細な構造を示す図である。なお図3(図1も同様)には、簡単のため2つの検出器ブロック31しか図示されていないが、実際の筐体20内部にはより多くの検出器ブロック31を搭載可能である。
【0015】
図3に示すように、各検出器ブロック31は、光検出器33とフロントエンド回路35とを装備している。
【0016】
光検出器33は、光を検出し、検出された光の強度に応じた電気信号を生成する。具体的には、光検出器33は、被検体内から放出されたガンマ線を検出し、検出されたガンマ線の強度に応じたアナログの電気信号(以下、ガンマ線信号と呼ぶことにする)を生成する。また、光検出器33は、レーザーパルス発生器40から入射されたレーザーパルスを検出し、検出されたレーザーパルスの強度に応じたアナログの電気信号(以下、レーザーパルス信号と呼ぶことにする)を生成する。なお、「光が検出される」ことを「イベント(events)が発生する」と呼ぶことにする。さらには、「ガンマ線が検出される」ことを「ガンマ線イベント(gamma events)が発生する」、また「レーザーパルスが検出される」ことを「擬似イベント(pseudo events)が発生する」と呼ぶことにする。
【0017】
具体的には、各光検出器33は、複数のシンチレータ(クリスタル)331、ライトガイド333、及び光電子増倍管335が接合されてなる。
【0018】
各シンチレータ331は、直方体状に成形されたシンチレータ結晶からなる。シンチレータ結晶は、ガンマ線が入射されると蛍光を発生する物質である。シンチレータ331は、ガンマ線入射面が検出器リング30の内側を向くように配列される。シンチレータ結晶は、例えば、NaI(ヨウ化ナトリウム)やBGO(ビスマス酸ジャーマネイト)、LSO(ケイ酸ルテチウムにセリウムを一定量添加したもの)等が用いられる。1つの検出器ブロック31には、2次元状に配列された複数のシンチレータ331が搭載される。複数のシンチレータ331のガンマ線入射面の反対側の面には、ライトガイド333が光学的に接合されている。各シンチレータ331の側面には反射材が塗布されている。蛍光は、ライトガイド333に導かれる。
【0019】
ライトガイド333は、アクリル等の光導電性を有する物質により形成される。ライトガイド333のシンチレータ接合面の反対側の面には、光電子増倍管335が接合されている。また、ライトガイド333の側面には、レーザーパルス発生器40の光ファイバー41が光学的に接合されている。ライトガイド333は、シンチレータ331からの蛍光や光ファイバーからのレーザーパルスを光電子増倍管335の光電面に導く。
【0020】
レーザーパルス発生器40は、検出器ブロック31と同数の光ファイバー41を有している。筐体20内の全ての検出器ブロック31とレーザーパルス発生器40とが光ファイバー41を介して接合されている。レーザーパルス発生器40は、各光ファイバー41を介して各検出器ブロック31のライトガイド333に一定時間間隔おきに繰り返しレーザーパルスを入射する。レーザーパルスは、一定の強度を有する。また、レーザーパルスの持続時間は、標準的な蛍光の持続時間(すなわちガンマ線に由来する電気パルスの持続時間)に比して、十分短いものとする。全ての光ファイバー41の長さは、同一である。典型的には、光ファイバー長は、筐体20内部の全光ファイバー41のうちの、レーザーパルス発生器40から物理的に最も遠いライトガイド333に接合される光ファイバー41の長さに統一される。このように筐体20内部の全光ファイバー41の長さを同一にすることにより、筐体20内部の全ライトガイド333に対して同時にレーザーパルスを入射させることができる。
【0021】
光電子増倍管335は、光電面がライトガイド333側に向くようにライトガイド333に光学的に接合されている。光電子増倍管335の光電面の反対側の面には、フロントエンド回路35が接合されている。光電子増倍管335は、ライトガイド333を介してシンチレータ331から蛍光を受光し、受光された蛍光を増幅し、増幅された蛍光の光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。また、光電子増倍管335は、ライトガイド335に入射されたレーザーパルスを受光し、受光されたレーザーパルスを増幅し、増幅されたレーザーパルスの光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。このように光電子増倍管335は、電気信号発生部として機能する。発生された電気パルスは、フロントエンド回路35に供給される。なお、光電子増倍管335の代わりに、電気信号発生部として機能するフォトダイオードを設けても良い。
【0022】
フロントエンド回路35は、図1に示すエネルギー計算部351、位置計算部353、及び検出時刻計測部355の機能を有する。
【0023】
エネルギー計算部351は、光電子増倍管335からの電気信号に基づいて、光検出器33に入射された光のエネルギー値に応じた強度を有する電気信号(エネルギー信号)を生成する。生成されたエネルギー信号のエネルギー値は、画像処理装置50の検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0024】
位置計算部353は、光電子増倍管335からの電気信号に基づいて、光が入射した位置座標に応じた強度を有する電気信号(位置信号)を生成する。典型的には、位置座標は、光が発生したシンチレータ331の位置座標である。ガンマ線は実際にシンチレータ331に入射する。従って、位置計算部353により計算されるガンマ線の位置座標は、実測の位置座標であるといえる。しかし、レーザーパルスは実際にはシンチレータ331に入射しない。従って、位置計算部353により計算されるレーザーパルスの位置座標は、架空の位置座標であるといえる。生成された位置信号は、画像処理装置50の検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0025】
なお画像処理装置50内部において位置信号は、エネルギー値に関連付けて処理される。以下、位置信号が関連付けられたエネルギー値をイベントデータと呼ぶことにする。
【0026】
検出時刻計測部355は、光電子増倍管335から供給される電気信号の強度をモニタリングし、光検出器によるレーザーパルスやガンマ線等が光を検出した時刻を計測する。そして検出時刻計測部355は、検出時刻を示す検出時刻データを生成する。検出時刻データは、画像処理装置50の検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0027】
画像処理装置50は、検出時刻リスト記憶部51、イベント識別部53、相対時間計算部55、相対時間リスト記憶部57、同時計測部59、再構成部61、表示部63、入力部65、及び制御部67を有する。
【0028】
検出時刻リスト記憶部51は、検出時刻リストのデータを記憶する。検出時刻リストは、少なくともイベントデータと検出時刻データとがイベント毎に関連付けられたリストである。検出時刻リスト上においては、ガンマ線イベントの検出時刻がタイムスタンプとして利用されている。検出時刻リストの詳細については後述する。
【0029】
イベント識別部53は、検出時刻リスト記憶部51に記憶されている検出時刻リストを参照し、各イベントがガンマ線イベントなのか、それとも擬似イベントなのかを各イベントのエネルギー値に基づいて識別する。
【0030】
相対時間計算部55は、ガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との差分を計算する。例えば、相対時間計算部55は、ガンマ線イベントの検出時刻から、対応する擬似イベントの検出時刻を減算することにより差分、すなわち擬似イベントの検出時刻に対するガンマ線イベントの検出時刻の相対時間を計算する。計算対象のガンマ線イベントと擬似イベントとは、同一の光検出器33で検出されたイベントに限定される。例えば、計算対象のガンマ線イベントの検出時刻は、この検出時刻の直前に同一の光検出器33で検出された擬似イベントの検出時刻により減算される。計算された相対時間に関するデータは、相対時間リスト記憶部57に供給される。
【0031】
相対時間リスト記憶部57は、相対時間リストのデータを記憶する。相対時間リストは、少なくともガンマ線イベントに関するイベントデータ(投影データ)と相対時間データとがガンマ線イベント毎に関連付けられたリストである。相対時間リスト上では、相対時間がガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用される。
【0032】
同時計測部59は、相対時間を利用してガンマ線イベントの同時計測を行なう。具体的には、同時計測部59は、相対時間リストの中から予め定められた時間枠内に収まる2つのガンマ線イベントを繰り返し同定し、この2つのガンマ線イベントに関するイベントデータを繰り返し同定する。特定された2つのガンマ線イベントは、同一の対消滅点から発生された一対のガンマ線に由来すると推定される。一対のガンマ線を検出した一対の光検出器33間を結ぶ線は、LOR(line of interest)と呼ばれている。同時計測を繰り返し行なうことにより、LORに関するイベントデータが同定される。
【0033】
再構成部61は、同時計測されたガンマ線イベントに関するイベントデータを相対時間リスト記憶部57から読み出し、読み出されたイベントデータに基づいて被検体内の放射性同位元素の濃度分布を表すPET画像のデータを再構成する。
【0034】
表示部63は、再構成部61により再構成されたPET画像を表示デバイスに表示する。表示デバイスとしては、CRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0035】
入力部65は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。具体的には、入力部65は、入力デバイスを介してPET収集や再構成処理の開始指示や終了指示を入力したり、PET収集条件や再構成条件を入力したりする。入力デバイスとしては、キーボード、マウス、各種ボタン、タッチキーパネル等が適宜利用可能である。
【0036】
制御部67は、核医学診断装置の中枢として機能する。例えば、制御部67は、自身が有するメモリに専用プログラムを展開し、この専用プログラムに従って各部を制御することによりPET収集やPET画像の再構成処理を行なう。
【0037】
以下、本実施形態に係る核医学診断装置の詳細について説明する。
【0038】
まず、ガンマ線イベントと擬似イベントとのそれぞれにおける検出器ブロック31の動作について詳細に説明する。
【0039】
図4は、ガンマ線イベントにおける検出器ブロック31の入力と出力とを示す図である。図4に示すように、ガンマ線がシンチレータ331に入射されると蛍光が発生される。発生された蛍光は、ライトガイド333を介して光電子増倍管335の光電面に到達し、光電子増倍管335により電気パルスに変換され、フロントエンド回路35に供給される。フロントエンド回路35は、供給された電気パルスを一定期間積分し、検出されたガンマ線に由来するエネルギー値EGを有するエネルギー信号を生成する。また、フロントエンド回路35は、光電子増倍管335を介して供給された電気パルスをモニタリングし、検出時刻tGを計測する。エネルギー信号EGのエネルギー値と、検出時刻tGに関する検出時刻データとは、検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0040】
図5は、擬似イベント(レーザーパルスイベント)における検出器ブロック31の入力と出力とを示す図である。図5に示すように、レーザーパルス発生器40により発生されたレーザーパルスは、光ファイバー41を介してライトガイド333に入射される。入射されたレーザーパルスは、ライトガイド333を介して光電子増倍管335の光電面に到達し、光電子増倍管335により電気パルスに変換され、フロントエンド回路35に供給される。フロントエンド回路35は、供給された電気パルスを一定期間積分し、検出されたレーザーパルスに由来するエネルギー値ELを有するエネルギー信号を生成する。また、フロントエンド回路35は、光電子増倍管335からの電気パルスをモニタリングし、検出時刻tLを計測する。エネルギー信号ELのエネルギー値と、検出時刻tLに関する検出時刻データとは、検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0041】
図6は、異なる2つの光電子増倍管から繰り返し出力される電気パルスを示す図である。図6の上段は、第1光電子増倍管から出力された電気パルスのエネルギーEと時間tとの関係を示すグラフであり、下段は、第2光電子増倍管から出力された電気パルスのエネルギーEと時間tとの関係を示すグラフである。
【0042】
図6に示すように、第1光電子増倍管と第2光電子増倍管とには、順番に第1レーザーパルス、第1ガンマ線、第2ガンマ線、第2レーザーパルス、第3ガンマ線が入射されたとする。これにより第1光電子増倍管は、順番に第1レーザーパルスに関する電気パルスP11、第1ガンマ線に関する電気パルスP12、第2ガンマ線に関する電気パルスP13、第2レーザーパルスに関する電気パルスP14、第3ガンマ線に関する電気パルスP15を生成する。同様に第2光電子増倍管は、順番に第1レーザーパルスに関する電気パルスP21、第1ガンマ線に関する電気パルスP22、第2ガンマ線に関する電気パルスP23、第2レーザーパルスに関する電気パルスP24、第3ガンマ線に関する電気パルスP25を生成する。
【0043】
レーザーパルス発生器40は、一定時間間隔、例えば、1nsに一回の割合で繰り返しレーザーパルスをライトガイドに入射する。この場合、第1レーザーパルスの検出時刻tL11と第2レーザーパルスの検出時刻tL21との間の時間間隔は、1nsである。なお、第1レーザーパルスと第2レーザーパルスとは、上記構成により、実時間上において厳密に同時刻に第1光電子増倍管と第2光電子増倍管とにそれぞれ入射される。
【0044】
各電気パルスのエネルギー値は、上述のようにフロントエンド回路に実装されたエネルギー計算部351により計算される。より詳細には、エネルギー計算部351は、電気パルスのエネルギー値をモニタリングし、エネルギー値がトリガ値ETを超えることを待機している。エネルギー値がトリガ値ETを超えると、エネルギー値を積分し始める。そしてエネルギー値がトリガ値ETを下回った時点で積分を終了する。この積分値がその電気パルスのエネルギー値に設定される。
【0045】
各電気パルスの検出時刻は、上述のようにフロントエンド回路に実装された検出時刻計測部355により計測される。より詳細には、検出時刻計測部355は、電気パルスのエネルギー値をモニタリングし、エネルギー値が所定のトリガ値ETを超えることを待機している。そしてエネルギー値が所定のトリガ値ETを超えた時点を、イベントの検出時刻として計測する。なお筐体20内部の全検出時刻計測部355は、クロック同期されている必要はない。例えば、第1光電子増倍管における第1ガンマ線に関する電気パルスの場合、エネルギー値がトリガ値ETを超えた時点が検出時刻tG11として計測される。従って各検出時刻計測部355は、自身が有するクロック回路からのクロックパルスに従って個別に検出時刻を計測する。
【0046】
図6に示すように、異なる光電子増倍管には、同一の製品規格であっても製造上あるいは経年劣化等により光に対する反応時間に僅かな差が生じてしまう。これに伴い、蛍光が光電子増倍管の光電面に入射してからの電気パルスの立ち上がり時間にも、光電子増倍管間で差が生じてしまう。例えば、第1光電子増倍管では第1レーザーパルスに由来する電気パルスP11は、時刻tL11に検出される。しかし、第2光電子増倍管では第1レーザーパルスに由来する電気パルスP21は、時刻tL11よりも遅い時刻tL21に検出される。すなわち、第1光電子増倍管と第2光電子増倍管との間には、第1レーザーパルスに関して反応時間差tL21−tL11が生じていることがわかる。他のレーザーパルスやガンマ線に由来する電気パルスに関しても同様に反応時間差が生ずる。
【0047】
また、同一の光電子増倍管であっても、各電気パルスに対する反応時間が僅かに異なる場合もある。しかし、レーザーパルスの入射間隔程度の極短い時間内においては、同一の光電子増倍管により検出される複数イベントの各々の反応時間は、同一であるとみなせる。換言すれば、極短い時間内においては、擬似イベントに対する反応時間とガンマ線イベントに対する反応時間とは、同一であるとみなせる。すなわち、たとえ2つの光電子増倍管に反応時間差が生じていたとしても、ガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との時間差は実時間上において同一となる。
【0048】
具体的には、図6に示すように、第1光電子増倍管における第1ガンマ線の検出時刻tG11と第1レーザーパルスの検出時刻tL11との時間差は、tG11−tL11である。第2光電子増倍管における第1ガンマ線の検出時刻tG21と第1レーザーパルスの検出時刻tL21との時間差は、tG21−tL21である。この時間差tG11−tL11と時間差tG21−tL21とは、実時間上において同一である。すなわちガンマ線イベントのタイムスタンプをレーザーパルスとの間の時間差(相対時間)とすれば、同時計測等において第1光電子増倍管と第2光電子増倍管との間の反応時間差tL21−tL11を相殺することができる。
【0049】
本実施形態に係る核医学診断装置は、上記の理由により、レーザーパルスに由来する擬似イベントの検出時刻に対するガンマ線イベントの検出時刻の相対時間を、ガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用する。
【0050】
次に図7を参照しながら、本実施形態に係る核医学診断装置の典型的な動作例について説明する。図7は、制御部67の制御のもとに実行される、PET収集からPET画像表示までの処理の典型的な流れを示す図である。
【0051】
まず、陽電子を放出する放射性同位元素で標識された薬剤が被検体に投与される。放射性同位元素としては、例えば、F18やO15、C11、N13等が知られている。例えば、F18で標識されたブドウ糖(FDG:fluorodeoxyglucose)を用いた場合、癌がPET画像により可視化される。これは、癌は正常細胞より糖代謝が激しいためである。これにより癌を見つけることができる。また、βアミロイドに対して親和性を有する薬剤をC11で標識した場合、脳内のβアミロイドがPET画像により可視化される。これにより脳内のβアミロイド分布を調べることができる。
【0052】
被検体に薬剤が投与されPET収集の準備が整うと、ユーザは、入力部65を介してPET収集の開始指示を入力する。開始指示が入力されると制御部67は、各部を制御してPET収集を開始する。PET収集の間、制御部67は、レーザーパルス発生器40を制御して、所定時間おきにレーザーパルスを全検出器ブロック31のライトガイド333に同時に入射させる。
【0053】
このような状態で制御部67は、PET収集の間、検出時刻リスト記憶部51に検出時刻リストのデータをリアルタイムに記録させる(ステップS1)。
【0054】
ステップS1において検出時刻リスト記憶部51は、レーザーパルスに由来する擬似イベントに関するイベントデータを通常のガンマ線イベントに関するイベントデータと共に検出時刻リストに順次記録する。
【0055】
図8は、検出時刻リスト記憶部51に記憶される検出時刻リストの一例を示す図である。図8に示すように、検出時刻リストは、イベント番号、光電子増倍管番号、シンチレータ番号、検出時刻、エネルギー等の項目を有する。イベント番号は、イベントを識別するための番号である。光電子増倍管番号は、イベントに関する光が検出された光電子増倍管335を識別するための番号である。シンチレータ番号は、位置計算部353により計算された位置座標に対応するシンチレータ331を識別するための番号である。検出時刻は、検出時刻計測部355により計測されたイベントの検出時刻である。エネルギーは、エネルギー計算部351により計算されたエネルギー値(ガンマ線やレーザーパルスのエネルギー値)である。例えば、番号1のイベント(擬似イベント)の光は、番号PMT1の光電子増倍管335により検出時刻tL11に検出され、番号SC3のシンチレータ331で発生されたと計算され、エネルギー値EL1を有する。同様に番号4のイベント(ガンマ線イベント)の光は、番号PMT2の光電子増倍管335により検出時刻tG21に検出され、番号SC5のシンチレータ331で発生されたと計算され、エネルギー値EG21を有する。このように検出時刻リスト上では、検出時刻が各イベントのタイムスタンプとして利用されている。
【0056】
なお検出時刻リストは、全ての光電子増倍管335について1つ作成されるとしても、検出器ブロック335毎に作成されるとしてもよい。
【0057】
ステップS1が行なわれると制御部67は、イベント識別部53にイベントの識別処理を行なわせる(ステップS2)。
【0058】
ステップS2においてイベント識別部53は、検出時刻リスト記憶部51に記憶された各イベントが擬似イベントなのか、あるいはガンマ線イベントなのかを識別する。具体的には、イベント識別部53は、識別対象のイベントに関連付けられたエネルギー値がレーザーパルスに相当するエネルギー値ELを有しているか否かを判定する。エネルギー値ELを有しているか否かは、識別対象のイベントのエネルギー値がエネルギーELを含む所定のエネルギー範囲内にあるか否かにより判定される。識別対象のイベントのエネルギー値が所定のエネルギー範囲内にあると判定した場合、イベント識別部53は、そのエネルギー値がエネルギー値ELを有していると判定し、識別対象のイベントが擬似イベントであると識別する。擬似イベントの旨のコードは、例えば、そのイベントのイベント番号に関連付けて検出時刻リスト記憶部51に記憶される。一方、識別対象のイベントのエネルギー値が所定のエネルギー範囲内にないと判定した場合、イベント識別部53は、そのエネルギー値がエネルギー値ELを有していないと判定し、識別対象のイベントがガンマ線イベントであると識別する。ガンマ線イベントの旨のコードは、例えば、そのイベントのイベント番号に関連付けて検出時刻リスト記憶部51に記憶される。
【0059】
ステップS2が行なわれると制御部67は、相対時間計算部55に相対時間の計算処理を行なわせる(ステップS3)。
【0060】
ステップS3において相対時間計算部55は、検出時刻リスト記憶部51に記憶された各ガンマ線イベントについて、ガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との時間差を計算する。より詳細には、ガンマ線イベントの検出時刻から擬似イベントの検出時刻を減算し、擬似イベントの検出時刻に対するガンマ線イベントの検出時刻の相対時間を計算する。相対時間は、同一の光電子増倍管335により検出されたガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻とに基づいて計算される。計算対象の擬似イベントは、計算対象のガンマ線イベントの検出時刻の直前の検出時刻を有するものに限定される。これにより、同一の光電子増倍管335における個々のイベントに対する反応時間差によるタイムスタンプ精度の悪化を軽減できる。
【0061】
具体的に図8に示す検出時刻リストを参照しながら相対時間の計算処理を説明する。イベント番号3のガンマ線イベントについて相対時間を計算する場合を具体例に挙げる。イベント番号3のガンマ線イベントは、番号PMT1の光電子増倍管335により、検出時刻tG11に検出されている。相対時間計算部55は、検出時刻リストを参照し、番号PMT1の光電子増倍管335により検出時刻tG11の直前に検出された擬似イベントを特定する。この条件を満たす擬似イベントがイベント番号1の擬似イベントであるとする。この場合、相対時間計算部55は、イベント番号1の擬似イベントの検出時刻tL11でイベント番号3のガンマ線イベントの検出時刻tG11を減算し、相対時間tG11−tL11を算出する。
【0062】
ステップS3が行なわれると制御部67は、相対時間リスト記憶部57に相対時間リストのデータを記録させる(ステップS4)。
【0063】
ステップS4において相対時間リスト記憶部57は、相対時間計算部55により計算された相対時間のデータをガンマ線イベントに関するイベントデータと共に相対時刻リストに記録する。
【0064】
図9は、相対時間リスト記憶部57に記憶される相対時間リストの一例を示す図である。図9に示すように、相対時間リストは、イベント番号、光電子増倍管番号、シンチレータ番号、相対時間、エネルギー等の項目を有する。例えば、イベント番号3のガンマ線イベントの相対時間は、tG11−tL11である。このように相対時間リスト上においては、擬似イベントとの相対時間がガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用される。相対時間によるタイムスタンプは、同時計測等により利用される。
【0065】
ステップS4が行なわれると制御部67は、同時計測部59に同時計測処理を行なわせる(ステップS5)。
【0066】
ステップS5において同時計測部59は、相対時間をガンマ線イベントのタイムスタンプとして利用して、相対時間リスト記憶部57に記憶されている相対時間リスト上のガンマ線イベントを同時計測処理する。具体的には、同時計測部59は、相対時間リストに記憶されている複数の相対時間の中から、予め設定された所定の時間枠に含まれる一対の相対時間を繰り返し同定する。そして同定された一対の相対時間に関連付けられた一対のイベントデータを相対時間リストの中から同定する。一対の相対時間に対応する一対のガンマ線イベントは、同一の対消滅点から発生された一対のガンマ線イベントであると推定される。対のガンマ線イベントを検出した対の検出器ブロック31を結ぶ線がLORである。同定された対のガンマ線イベントのイベント番号には、それぞれLORを識別するためのコードが関連付けられる。この対のガンマ線イベントの同定は、相対時間リスト内の全ガンマ線イベントについて行なわれる。なお時間枠は、例えば6ns〜18ns程度に設定される。同時計測部59は、従来のように検出時刻をタイムスタンプとして利用せず、検出時刻に比して高時間分解能な相対時間をタイムスタンプとして利用している。従って同時計測部59は、従来に比してより正確、より高時間分解能に同時計測を行なうことができる。
【0067】
ステップS5が行なわれると制御部67は、再構成部61に再構成処理を行なわせる(ステップS6)。
【0068】
ステップS6において再構成部61は、同時計測部59により同定されたイベントデータを相対時間リスト記憶部57から読み出し、読み出されたイベントデータに基づいてPET画像のデータを再構成する。利用可能な再構成法には、対のガンマ線イベントのタイムスタンプの時間差を利用しない通常のPET画像再構成法と、対のガンマ線イベントのタイムスタンプの時間差を利用するTOF(time of flight)―PET画像再構成法とがある。
【0069】
図10は、再構成部61により行なわれる通常のPET画像再構成法とTOF―PET画像再構成法との違いを示す図である。図10に示すように、通常のPET画像再構成法は、「LOR上の各点における対消滅点の存在確率は等しい」という前提に基づく再構成法である。従って、LOR上の各点における重みは光検出器からの距離によらず一様である。再構成部61は、このように設定された重みを利用してイベントデータを再構成処理し、PET画像のデータを生成する。通常のPET画像再構成法を用いた場合でも、相対時間をタイムスタンプとしたことにより従来に比して高時間分解能に同時計測がなされているので、従来に比してPET画像の画質が向上する。
【0070】
一方図10に示すように、TOF―PET画像再構成法は、「LOR上の各点における対消滅点の存在確率はガンマ線イベントの相対時間差に応じて異なる」という前提に基づく再構成法である。従って、LOR上の各点における重みは、光検出器からの距離に応じて変化する。以下、TOF―PET画像再構成法における重みづけについて説明する。第1検出器ブロック311においてガンマ線イベントが相対時間t1で検出され、第1検出器ブロック312においてガンマ線イベントが相対時間t2で検出されたとする。この場合、LORの中心点CPから対消滅点までの距離dは、以下の(1)で表される。なおcは、光速であるとする。
d=c(t1−t2)/2 ・・・(1)
この(1)式によりLOR上の対消滅点の位置を計算できる。対消滅点の位置が計算されると再構成部61は、重みを設定する。重みは、対消滅点から距離が離れるにつれて値が小さくなるように設定される。再構成部61は、このように設定された重みに基づいてイベントデータからPET画像のデータを再構成する。このTOF―PET画像再構成法によれば、通常のPET画像再構成法に比してS/N比を向上させることができる。また、本実施形態に係るTOF―PET画像再構成法は、従来のTOF―PET画像再構成法のように検出時刻をタイムスタンプとして利用せず、検出時刻に比して時間分解能が向上する相対時間をタイムスタンプとして利用している。従って従来のTOF―PET画像再構成法に比してより正確に、すなわちより高時間分解能に対消滅点を計算することができる。これにともない、TOF―PET画像再構成法によるPET画像の画質も従来に比して向上する。
【0071】
ステップS6が行なわれると制御部67は、表示部63に表示処理を行なわせる(ステップS7)。
【0072】
ステップS7において表示部63は、生成されたPET画像を表示デバイスに表示する。PET画像が表示されると、PET収集からPET画像表示までの処理が終了する。
【0073】
なお、図7における処理は、PET収集と同時に行なわれるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、検出時刻リストのデータに基づいて事後的にステップS1〜ステップS7の処理を行なうことも可能である。
【0074】
上記構成により本実施形態に係る核医学診断装置は、PET収集中において、レーザーパルス発生器により各検出器ブロックに実時間上同時に擬似イベントを発生させている。そしてガンマ線イベントの検出時刻と擬似イベントの検出時刻との時間差をタイムスタンプとして利用する。この新しいタイムスタンプにより、検出器ブロック毎に異なる反応時間差を相殺することができる。従って本実施形態に係る核医学診断装置は、検出器ブロックによるガンマ線イベントの検出時刻をタイムスタンプとして利用していた従来装置に比して、より高精度且つ高時間分解能なタイムスタンプを得ることができる。また、従来装置では必要であった、各検出器ブロックのクロック同期が必要なくなる。従って本実施形態に係る核医学診断装置は、クロック同期のための機構を設ける必要がないので、従来装置に比して安価に製造することが可能となる。また、従来装置では個々の検出器ブロックの反応時間を計測し、同様の反応時間を有する検出器ブロックを集めて装置に実装していた。本実施形態に係る核医学診断装置は、相対時間をタイムスタンプとすることにより反応時間を相殺できるので、検出器ブロックの反応時間を計測して、同様の反応時間を有する検出器ブロックを集めてガントリ部10に実装するという作業も必要ない。また、本実施形態に係る核医学診断装置は、検出器ブロックのタイミングキャリブレーションをPET収集と同時に自動的に行なっている、ということもできる。従って本実施形態に係る核医学診断装置は、従来必要であったPET収集前の手動によりタイミングキャリブレーションを行なう必要がない。従ってタイミングキャリブレーションにおけるユーザの手間を失くすことができる。
【0075】
かくして本実施形態によれば、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置の提供が実現する。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0077】
(変形例)
上記の実施形態において光ファイバーは検出器ブロックのライトガイドに接合されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。変形例に係る核医学診断装置においては、光ファイバーはシンチレータに光学的に接合される。
【0078】
図11は、変形例に係る検出器ブロック81とレーザーパルス発生器40との詳細な構造を示す図である。図11に示すように、変形例に係る検出器ブロック81は、光検出器83とフロントエンド回路35とを装備している。このように検出器ブロック81は、複数のシンチレータ831と光電子増倍管835との間にライトガイドを設けない構造を有している。複数のシンチレータ831のうちの端にあるシンチレータの側面には、光ファイバー83が光学的に接合されている。この光ファイバー83を介してレーザーパルス発生器40からシンチレータ831にレーザーパルスが入射される。シンチレータ831内に入射されたレーザーパルスは、光電子増倍管835の光電面に導かれる。
【0079】
光電子増倍管835は、光電面が複数のシンチレータ831側に向くように光学的に接合されている。光電子増倍管835の光電面の反対側の面には、フロントエンド回路35が接合されている。光電子増倍管835は、シンチレータ831から蛍光を受光し、受光された蛍光を増幅し、増幅された蛍光の光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。また、光電子増倍管835は、シンチレータ831に入射されたレーザーパルスを受光し、受光されたレーザーパルスを増幅し、増幅されたレーザーパルスの光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。発生された電気パルスは、フロントエンド回路35に供給される。その後の処理は、本実施形態と同様であるので記載を省略する。
【0080】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上本発明によれば、ユーザの負担を軽減した上で、時間分解能の向上を可能にする核医学診断装置の提供が実現することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…ガントリ部、20…筐体、30…検出器リング、31…検出器ブロック、33…光検出器、331…シンチレータ、333…ライトガイド、335…光電子増倍管、35…フロントエンド回路、351…エネルギー計算部、353…位置計算部、355…検出時刻計測部、40…レーザーパルス発生器、41…光伝導路(光ファイバー)、50…画像処理装置、51…検出時刻リスト記憶部、53…イベント識別部、55…相対時間計算部、57…相対時間リスト記憶部、59…同時計測部、61…再構成部、63…表示部、65…入力部、67…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルスを繰り返し発生する光パルス発生部と、
前記発生された光パルスを繰り返し検出し、前記検出された光パルスの強度に応じた第1出力信号を繰り返し生成し、被検体内から放出されたガンマ線を繰り返し検出し、前記検出されたガンマ線の強度に応じた第2出力信号を繰り返し生成する複数の光検出部と、
前記複数の光検出部の各々における光パルスの検出時刻を繰り返し計測し、前記複数の光検出部の各々におけるガンマ線の検出時刻を繰り返し計測する計測部と、
前記繰り返し計測されたガンマ線の検出時刻の各々について、計算対象のガンマ線の検出時刻と前記繰り返し計測された光パルスの検出時刻のうちの前記計算対象のガンマ線の検出時刻前に計測された光パルスの検出時刻との差分を計算する計算部と、
前記計算された差分の各々と前記第2出力信号の各々とを関連付けて記憶する記憶部と、
を具備する核医学診断装置。
【請求項2】
前記複数の光検出部は、前記被検体が載置された天板の長軸周りに設けられ、
前記光パルス発生部と前記複数の光検出部とは、複数の光伝導路によりそれぞれ接合され、
前記複数の光伝導路は、略同一長である、
請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記複数の光検出部の各々は、光を受けて蛍光を発生するシンチレータと、前記シンチレータにより発生された蛍光を受けて電気信号を発生する電気信号発生部と、前記シンチレータと前記電気信号発生部との間に配置されたライトガイドとを有し、
前記光パルス発生部は、前記シンチレータの各々又は前記ライトガイドの各々に前記光パルスを同時に入射する、
請求項2記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記光発生部は、前記複数の光伝導路を介して複数の光パルスを前記複数の光検出部に同時に入射する、請求項2記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記差分と予め定められた所定の時間枠とに基づいて、前記第2出力信号の中から対の消滅ガンマ線に由来する対の第2出力信号を同定する同定部、をさらに備える請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記同定された第2出力信号に基づいて前記被検体に関する核医学画像データを再構成する再構成部、をさらに備える請求項5記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記計算対象のガンマ線と前記検出時刻前に計測された光パルスとは、前記複数の光検出部のうちの同一の特定の光検出部により計算されたものである、請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項8】
前記計算部は、前記検出時刻前の計測された光パルスは、前記計算対象のガンマ線の検出時刻の直前に計測された光パルスである、請求項7記載の核医学診断装置。
【請求項1】
光パルスを繰り返し発生する光パルス発生部と、
前記発生された光パルスを繰り返し検出し、前記検出された光パルスの強度に応じた第1出力信号を繰り返し生成し、被検体内から放出されたガンマ線を繰り返し検出し、前記検出されたガンマ線の強度に応じた第2出力信号を繰り返し生成する複数の光検出部と、
前記複数の光検出部の各々における光パルスの検出時刻を繰り返し計測し、前記複数の光検出部の各々におけるガンマ線の検出時刻を繰り返し計測する計測部と、
前記繰り返し計測されたガンマ線の検出時刻の各々について、計算対象のガンマ線の検出時刻と前記繰り返し計測された光パルスの検出時刻のうちの前記計算対象のガンマ線の検出時刻前に計測された光パルスの検出時刻との差分を計算する計算部と、
前記計算された差分の各々と前記第2出力信号の各々とを関連付けて記憶する記憶部と、
を具備する核医学診断装置。
【請求項2】
前記複数の光検出部は、前記被検体が載置された天板の長軸周りに設けられ、
前記光パルス発生部と前記複数の光検出部とは、複数の光伝導路によりそれぞれ接合され、
前記複数の光伝導路は、略同一長である、
請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記複数の光検出部の各々は、光を受けて蛍光を発生するシンチレータと、前記シンチレータにより発生された蛍光を受けて電気信号を発生する電気信号発生部と、前記シンチレータと前記電気信号発生部との間に配置されたライトガイドとを有し、
前記光パルス発生部は、前記シンチレータの各々又は前記ライトガイドの各々に前記光パルスを同時に入射する、
請求項2記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記光発生部は、前記複数の光伝導路を介して複数の光パルスを前記複数の光検出部に同時に入射する、請求項2記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記差分と予め定められた所定の時間枠とに基づいて、前記第2出力信号の中から対の消滅ガンマ線に由来する対の第2出力信号を同定する同定部、をさらに備える請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記同定された第2出力信号に基づいて前記被検体に関する核医学画像データを再構成する再構成部、をさらに備える請求項5記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記計算対象のガンマ線と前記検出時刻前に計測された光パルスとは、前記複数の光検出部のうちの同一の特定の光検出部により計算されたものである、請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項8】
前記計算部は、前記検出時刻前の計測された光パルスは、前記計算対象のガンマ線の検出時刻の直前に計測された光パルスである、請求項7記載の核医学診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−141139(P2011−141139A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−737(P2010−737)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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