説明

核型分析学習プログラムおよび核型分析学習装置、染色体画像切り出しプログラムおよび染色体画像切り出し装置

【課題】指導者が不在であっても学習者自らが適切にヒト核型分析を繰り返し行い、習得することができる学習装置等を提供すること。
【解決手段】
コンピュータ装置によって表示駆動されるディスプレイ上で学習者によって操作可能な学習画面を表示する学習装置であって、学習対象となる生物の細胞に含まれる複数の染色体を表した個々に選択可能な複数の染色体画像と、前記複数の染色体を特定する番号若しくは記号等により表された染色体符号を前記学習画面に表示するとともに、前記学習画面上に、学習者の操作によって前記染色体画像を前記染色体符号に対応して配置することができるように設定された配置領域を設け、前記配置領域に配置された染色体画像が当該配置領域に設定された染色体符号と一致しているか否かを判定するとともに当該判定結果を表示するように構成したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核型分析学習プログラムおよび核型分析学習装置、染色体画像切り出しプログラムおよび染色体画像切り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染色体検査は、先天性の染色体異常症候群の確定診断や、白血病などの血液疾患の診断やその治療効果の判断のためには欠くことの出来ない臨床検査として位置付けられている。この染色体検査の一手法として、装置を利用して染色体の画像を解析する特許文献1または特許文献2記載の技術が知られている。特許文献1又は特許文献2記載に記載された技術のように装置を利用して行う染色体検査もあるが、一方において人間の目による染色体検査も不可欠である。そして、その検査に携わる人材の育成も重要であり、染色体検査におけるヒト核型分析能習得のためには専門知識と技能をもつ指導者がその指導にあたる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−180833号公報
【特許文献2】特許第3451307号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
染色体検査に必要なヒト核型分析能習得には、上記のように適切な指導者と時間が必要である。しかし、指導者の確保や学習時間には時間的な制約がある場合が多く十分なトレーニング時間を確保できないことが多い。また大学などにおける遺伝教育の中で、多数の学生に対してヒト核型分析能習得に関する実習を効果的に行いたい場合であっても、必要な指導者数を確保するのは容易なことではない。本発明は、これらの問題を解決することを目的とするものであり、指導者が不在であっても学習者自らが適切にヒト核型分析を繰り返し行い、習得することができる学習装置、学習システム、学習用プログラム等の各手段を提供することを目的とするものである。
また、上記学習に使用される染色体画像を取り込むための装置、システム、プログラム等の手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を有する。すなわち、
コンピュータ装置によって表示駆動されるディスプレイ上で学習者によって操作可能な学習画面を表示する学習プログラムであって、
学習対象となる生物の細胞に含まれる複数の染色体を表した個々に選択可能な複数の染色体画像と、前記複数の染色体を特定する番号若しくは記号等により表された染色体符号を前記学習画面上に表示するとともに、
前記学習画面上に、学習者の操作によって前記染色体画像を前記染色体符号に対応して配置することができるように設定された配置領域を設け、
前記配置領域に配置された染色体画像が当該配置領域に設定された染色体符号と一致しているか否かを判定するとともに当該判定結果を表示するように構成したことを特徴とする染色体の核型分析学習プログラム。
【0006】
また、本発明は上記染色体の核型分析学習プログラムにおいて以下の構成を有する。すなわち、
個々に選択可能な前記染色体画像は、ヒト染色体の分裂中期の染色体画像であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は上記いずれかの染色体の核型分析学習プログラムにおいて以下の構成を有する。すなわち、
個々に選択可能な前記染色体画像は、染色体の形状に沿った縦長の画像として形成されており、前記染色体画像の長手方向を前記学習画面上における上下方向と一致した状態で前記配置領域に配置されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は上記いずれかの染色体の核型分析学習プログラムにおいて以下の構成を有する。すなわち、
前記学習画面上に配置されている前記染色体画像を不規則に配置し直す再配置手段を有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は上記いずれかの染色体の核型分析学習プログラムにおいて以下の構成を有する。すなわち、
性染色体の種類を入力するための入力欄が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記いずれかの染色体の核型分析学習プログラムにおいて以下の構成を有する。すなわち、
核型を入力するための入力欄が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記いずれかの染色体の核型分析学習プログラムにおいて以下の構成を有する。すなわち、
染色体を視覚的に識別するために必要な情報を掲載した説明画面と、当該説明画面の表示を指示する指示手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は上記いずれかの染色体の核型分析学習プログラムにおいて以下の構成を有する。すなわち、
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は以下の構成を有する。すなわち、
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したことを特徴とする染色体画像切り出しプログラム。
【0014】
また、本発明に係る核型分析学習装置は以下の構成を有する。すなわち、
ディスプレイ上で学習者によって操作可能な学習画面を表示する学習プログラムを有した学習装置であって、
学習対象となる生物の細胞に含まれる複数の染色体を表した個々に選択可能な複数の染色体画像と、前記複数の染色体を特定する番号若しくは記号等により表された染色体符号を前記学習画面上に表示するとともに、
前記学習画面上に、学習者の操作によって前記染色体画像を前記染色体符号に対応して配置することができるように設定された配置領域を設け、
前記配置領域に配置された染色体画像が当該配置領域に設定された染色体符号と一致しているか否かを判定するとともに当該判定結果を表示するように構成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は上記核型分析学習装置において以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
個々に選択可能な前記染色体画像は、ヒト染色体の分裂中期の染色体画像であること。
【0016】
また、本発明は上記核型分析学習装置において以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
個々に選択可能な前記染色体画像は、染色体の形状に沿った縦長の画像として形成されており、前記染色体画像の長手方向を前記学習画面上における上下方向と一致した状態で前記配置領域に配置されるように構成されていること。
【0017】
また、本発明は上記核型分析学習装置において以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
前記学習画面上に配置されている前記染色体画像を不規則に配置し直す再配置手段を有していること。
【0018】
また、本発明は上記核型分析学習装置において以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
性染色体の種類を入力するための入力欄が設けられていること。
【0019】
また、本発明は上記核型分析学習装置において以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
核型を入力するための入力欄が設けられていること。
【0020】
また、本発明は上記核型分析学習装置において以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
染色体を視覚的に識別するために必要な情報を掲載した説明画面と、当該説明画面の表示を指示する指示手段が設けられていること。
【0021】
また、本発明は上記核型分析学習装置において以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したこと。
【0022】
また、本発明に係る核型分析学習装置は以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したこと。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る核型分析学習プログラムおよび同プログラムを使用した学習装置は、染色体の検査その他の業務に携わる初心者が核型分析能を習得する上で最適なツールとなるものである。
すなわち、指導者を常に要するということなく、学習者一人で染色体の外観的特徴から染色体を見分ける能力(核型分析能)を身に付けることができるという効果を有している。また、採点(評価)後に染色体画像を再配置させて学習を繰り返したり、説明画面を逐次表示させる等の繰り返し学習と独学に適した各手段を備えているという特徴も有している。
また、染色体画像切り出しプログラムおよび染色体画像切り出し装置は、学習対象となる画像の取り込み処理を容易に行うことができるという効果を有している。また、上記学習に用いる染色体画像を学習者自身が取り込み、その画像を教材として使用することができるので、当該染色体画像の取り込みと教材化を通じて染色体の特徴を学習者に強く印象づけ、学習効果を高めることができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明に係る学習プログラムをネットワーク上で構成した場合の学習システム概要図であり、(b)は本発明に係る学習プログラムをコンピュータ手段に適用することにより構成した学習装置の概略ブロック図であり、(c)は本発明に係る学習プログラムの構成を表した概略図である。
【図2】本発明に係る学習プログラムの一つである染色体並べ換えソフト(染色体並べ換えプログラム)の主な動作を表したフローチャートである。
【図3】本発明に係る学習プログラムの一つである染色体並べ換えソフトにおいて用いる変数等の一例を表した説明図である。
【図4】本発明に係る学習プログラムの実行例である学習画面を表した説明図である。
【図5】本発明に係る学習プログラム起動後に表示される染色体の全体画像の一例を表した説明図である。
【図6】本発明に係る学習プログラムによる学習開始時の表示画面の一例を表した説明図である。
【図7】本発明に係る学習プログラムにおける染色体画像操作時のプログラム処理の一例を表したフローチャートである。
【図8】本発明に係る学習プログラムにおける採点処理時のプログラム処理の一例を表したフローチャートである。
【図9】本発明に係る学習プログラムにおける、採点処理結果の画像表示例を表した説明図である。
【図10】本発明に係る学習プログラムにおける、入力された核型の正否結果の画像表示例を表した説明図である。
【図11】本発明に係る学習プログラムにおける、説明画像の表示例を表した説明図である。
【図12】本発明に係る学習プログラムに使用される、他の染色体画像の一例を表した説明図である。
【図13】本発明に係る学習プログラムに使用される、さらに他の染色体画像の一例を表した説明図である。
【図14】本発明に係る染色体画像切り出しプログラムの実行例を表したフローチャートである。
【図15】本発明に係る染色体画像切り出しプログラム実行時の画像例を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図を用いて説明する。本実施の形態に係る染色体学習装置(以下「学習装置」という)は、インターネットやイントラネット若しくはCD−ROM等の記録媒体によって提供される染色体学習プログラム(以下「学習プログラム」という)をパーソナルコンピュータ等のハードウエア上で実行することにより提供されるものである。
図1(a)は、複数の学習装置1(1a、1b、1c・・)と、学習プログラムを提供するサーバー2とをインターネット3を介して接続することによって構成した学習システム4の構成を表した説明図である。また、図1(b)は、ハードウエア手段としての学習装置1の主な構成を表したものであり、CPU等を備えた制御手段5、RAM、ROM等の記憶手段6、マウス・キーボード等の操作手段7、ディスプレイ8、ネットワークに接続するための通信インターフェイス9を有したものである。
【0026】
学習プログラムには、「染色体並べ換えソフト」、「染色体画像切り出しソフト」、「動原体位置指定ソフト」、「動原体位置入力ソフト」の図1(c)に示す4種類の個別ソフトが含まれている。なお、本学習プログラムは、目的に応じて1つ若しくは2以上個別ソフトを組み合わせて1つの学習プログラムとして構成してもよく、4種類の個別ソフト全てを含むことを必須の構成とするものではないものである。以下、各個別ソフトのうち「染色体並べ換えソフト」および「染色体画像切り出しソフト」を中心に学習プログラムの内容を説明する。
【0027】
<染色体並べ換えソフト>
当該ソフトの内容をフローチャートおよびプログラムの実行に伴って表示される画面の表示例を参照しつつ説明する。図2は、染色体並べ換えソフトの概要を表したフローチャートであり、当該ソフトを開始(ステップS1)するとプログラム上で使用される変数等の定義、解答をメモリー上に設定、初期化が行われる(ステップS2)。図3は、ステップS2で実行される変数定義等の一部を一例として表している。図4はディスプレイ8上に表示される学習画面の画像例を表している。前記ステップS2では、図4に示した学習画面に表示する各種の画像や、数字、符号、画像配置領域、文字、記号の入力欄、プログラム操作のための各種実行ボタン(画像)等を定義するようになっている。
【0028】
本発明に係る主要な学習機能として並べ換えの対象となる染色体画像は、Picture1(0)〜Picture1(91)で定義される92枚の染色体画像によってプログラム内に取り込まれる。ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と一対(2本(XX、XY))の性染色体で表される合計23対(46本)の染色体によって構成されている。
本実施例では分析に適した分裂中期の染色体の顕微鏡画像の全体画像をデジタル写真として取り込んだ後、上下方向に沿って正立させた画像となるように各染色体の画像を切り出し、これら46枚の画像を前記Picture1に対応づけて定義(記録)している。同時に、これら46枚の画像を上下に180°回転させた倒立画像を作成しPicture1に対応づけて定義した。すなわち、正立姿勢の染色体画像46枚と、倒立姿勢の染色体画像46枚の合計92枚の染色体画像が、プログラム内のPicture1(0)〜Picture1(91)によって定義されている。
なお、上記Picture1によって定義される一の染色体に関する正立姿勢および倒立姿勢の画像は同時に表示されることはなく、正立または倒立の何れかのみが表示されるようになっている。すなわち、画面上において一度に表示される染色体画像は23対46枚の画像のみとなっている。
【0029】
画面上に表示される前記46本の染色体画像は、当初はランダムに配置されているが、操作手段7であるマウスを使用して位置を移動(ドラッグ)させ、マウスが備えるスイッチの操作によって姿勢の回転(正立・倒立)を行うことができるようになっている。
図4に示すように、学習画面上には1〜22までの数字およびXの表示と、XまたはYを入力する入力欄が設けられている。これら1〜22の数字およびX、Yの記号は、ヒト染色体において学術的に定義されている染色体符号である。本プログラムは、この染色体符号に対応する染色体画像を見いだし、上下方向を適切な向きとした上で所定の位置に配置することを主目的とするものである。
前記染色体符号は、Label(0)〜Label(21)、Label(22)によって定義される画面上の所定位置(配置領域)に対応して表示されている。学習者は、画面上に表示されている46本の染色体画像の移動および回転を行い、当該染色体符号ごと対応した配置領域に正しい姿勢で染色体画像を配置する操作を行うようになっている。
【0030】
また、画面上には、当該プログラムの実行中に操作されるスイッチ(画像)が設けられている。当該スイッチの操作はマウスによって行われるものであり、各スイッチはプログラム上において定義されているcommandに対応しており、各スイッチの操作によって各commandにおいて定義されたサブプログラムが実行されるようになっている。具体的には、「採点」はcommand1、「終了」はcommand2、「シャッフル(再配置)」はcommand3、「核型判定」はcommand4、「画面印刷」はcommand5、「説明表示」はcommand6、「消す」はcommand7に対応している。
また、画面上には、記号を含むテキスト情報の表示若しくはテキスト情報の入力を行う窓のような領域が設けられている。本プログラムでは4つの窓領域を設けており、各窓領域にそれぞれ変数Text1〜Text4を割り当てている。具体的にはText1はシャッフル(再配置)の実行数(nc)表示欄、Text2は核型表示欄、Text3は核型判定表示欄、Text4は性染色体XあるいはYの表示欄に対応している。
【0031】
ステップS2において変数や関数の定義、初期化等が行われると、初期画面として図5に示す染色体全体の画像2が表示される(ステップS3)。図5は、46本の染色体の全体画像であり、Picture1としての各染色体の画像を切り出す以前のオリジナルの顕微鏡画像を表示するようになっている。
上記図5に示す全体画像(画像2)を表示している状態において、画面上の何れかの部分を選択してマウスのスイッチをクリックすると、前記Picture1(0)〜Picture1(91)で定義された92枚のうち46枚の染色体画像が、図6に示す画像3のようにランダムに表示される(ステップS4)。また、ステップS4では46枚の染色体画像とともに前述した前記染色体符号も同時表示され、当該染色体符号に対応した前記配置領域が設定される。
【0032】
前記画像3が表示されると、各染色体画像の移動および上下反転が可能な状態となる(ステップS5)。マウスを使用した各染色体画像(写真)の移動および反転等が学習者によって行われ、核型表示欄(Text2)に解答を入力できる性染色体の種類が、XまたはYの記号によって性染色体表示欄(Text4)に入力できるようになっている。
【0033】
採点は、command1に対応付けた採点ボタンの画像をクリックすることによりいつでも可能であり、前記メモリに読み込んだ解答と配置した染色体画像(写真)の比較等、図8のフローチャートに示す内容で行われる。採点結果は、図9に示す画像4のように、各染色体画像の上方に現在の位置・上下方向が正しいか否かを表す○×を表示することで行われる(ステップS6)。また、図10に示す画像5のように核型判定表示欄(Text3)に示す○あるいは×によって正誤が表示される。
【0034】
また、画面上の「説明」ボタンを押すとcommand5として定義されている処理によって図11に示す画像6が表示される。当該画像6には、各染色体の画像と染色体を識別する上で必要な外観的な特徴などの情報が記載されている。
また、図12に示す画像7と図13に示す画像8は、前述の画像1〜6において例示したサンプルとは異なる別の染色体画像を、前述と同じように教材用の画像データとして設けた例を表したものである。このように、異なる染色体の画像データを複数種類用いることによって、教材慣れを起こさず教習効果を高めることができるようになっている。
一通り学習を終えた後は、終了ボタンを押すことによって本プログラムを終了する(ステップS7)。但し、終了ボタンを押すことによって、いつでも本プログラムを終了することができる。
【0035】
本プログラムには、上記において説明した機能以外に「シャッフル」、「画面印刷」、「消す」等のボタン(コマンド)が設けられている。「シャッフル」は、表示されている46枚の染色体画像をランダムに再配置するものであり、「画面印刷」は画面に表されている画像を印刷するものであり、「消す」は採点ボタンによって表示されている○×その他の採点結果を消去するものである。実行数(Text1)は、シャッフル(再配置)の回数を表している。但し、「シャッフル」、「画面印刷」、「消す」等のボタン(コマンド)はいつでも実行できる。
【0036】
以上説明した「染色体並べ換えソフト」は、画面上に表示された染色体画像の並べ換えを繰り返すことによって、常染色体の番号と性染色体を表す記号(染色体符号)に対応する各染色体の特徴を身につけることができるものであり、初心者が学習する上で最適な学習プログラムとなっている。
また、「シャッフル」を使用して自分の不得意な染色体について繰り返し重点的に学習したり、説明を表示させながら染色体の特徴点を効率的に学習することができるようになっている。
【0037】
<染色体画像切り出しソフト>
次に、前記「染色体並べ換えソフト」においてPicture1(0)〜Picture1(91)で定義される92枚の染色体画像を作成するプログラム(染色体画像切り出しプログラム)について説明する。図14は、本プログラムの概要を表したフローチャートである。
本プログラムは、分裂中期の染色体に関する顕微鏡写真を撮影し、図5に示すような染色体全体の画像(画像2)を画像データとして取得して取り込む(ステップS21)ことからスタートする。画像データの取り込みには前記学習装置と同様のコンピュータを画像データの取り込み手段として使用する。画像データを、編集画面であるFORM1上に表示させると、個々の染色体を囲んで画像の切り出し範囲を決定する操作ができるようになる。
【0038】
ヒトの場合、染色体数は一般に46本であるので個々の染色体画像の切り出し作業は46回行われるようになっている。図14のフローチャートに沿って説明すると、切り出し回数をカウントする変数iに1が設定され(ステップS22)、次いで画像の切り出し範囲を決定する(ステップS23)。変数iは画像の切り出し毎に1ずつ増加するようになっており(ステップS27)、切り取り終了ボタンを押すまで切り取りが行われる。iに
切り取られた染色体の数が収納される。切り出し範囲の決定と確定は、染色体の垂直方向(長手方向)を決める2点と、染色体を囲む長方形の対角位置にある2点の、計4点を指定して行う。図15は、編集画面である前記FORM1上に表示させた染色体の一部を表したものであるが、当該画面上に表示されている染色体G1の画像を切り取るには、染色体の垂直方向(長手方向)となる2点(A1、B1)と対角位置を成す2点(C1、D1)を指定することにより、染色体G1に近接した周囲を取り囲むような長方形状の切り出し領域を設定して行う(ステップS23)。
【0039】
上記長方形の大きさは、2点(C1、D1)の位置を調節することによって変更することができる。上記で確定した長方形状に切り出された染色体画像を回転させ(ステップS25)、染色体の上下方向を画面の上下方向とを一致させて、当該画像を別の編集画面であるFORM2(図示せず)上に送りPicture1に対応づけた画像データとして記憶する(ステップS25)。
一個の染色体画像の切り出しが完了すると、他の染色体画像の切り出しが可能となり、他の染色体画像G2についても上記と同様に4点を定めて染色体画像を確定し、上記操作を繰り返して画像データとしてPicture1に格納する。
【0040】
FORM2で染色体写真を正しく並べることで、並べ換えソフトで必要な写真データを作り出せる。
【0041】
以上の説明は、ヒトの染色体を学習する装置として説明したが、ヒトに限らず他の生物の染色体を学習する場合にも適用することが可能である。ただし、染色体数等が異なる生物の場合には、変数や染色体の配置箇所等を適宜変更した上で適用するものである。
【符号の説明】
【0042】
1 学習装置
2 サーバー
3 インターネット
4 学習システム
5 制御手段
6 記憶手段
7 操作手段
8 ディスプレイ
9 通信インターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置によって表示駆動されるディスプレイ上で学習者によって操作可能な学習画面を表示する学習プログラムであって、
学習対象となる生物の細胞に含まれる複数の染色体を表した個々に選択可能な複数の染色体画像と、前記複数の染色体を特定する番号若しくは記号等により表された染色体符号を前記学習画面上に表示するとともに、
前記学習画面上に、学習者の操作によって前記染色体画像を前記染色体符号に対応して配置することができるように設定された配置領域を設け、
前記配置領域に配置された染色体画像が当該配置領域に設定された染色体符号と一致しているか否かを判定するとともに当該判定結果を表示するように構成したことを特徴とする染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項2】
個々に選択可能な前記染色体画像は、ヒト染色体の分裂中期の染色体画像であることを特徴とする請求項1記載の染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項3】
個々に選択可能な前記染色体画像は、染色体の形状に沿った縦長の画像として形成されており、前記染色体画像の長手方向を前記学習画面上における上下方向と一致した状態で前記配置領域に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項4】
前記学習画面上に配置されている前記染色体画像を不規則に配置し直す再配置手段を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項5】
性染色体の種類を入力するための入力欄が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項6】
核型を入力するための入力欄が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項7】
染色体を視覚的に識別するために必要な情報を掲載した説明画面と、当該説明画面の表示を指示する指示手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項8】
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習プログラム。
【請求項9】
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したことを特徴とする染色体画像切り出しプログラム。
【請求項10】
ディスプレイ上で学習者によって操作可能な学習画面を表示する学習プログラムを有した学習装置であって、
学習対象となる生物の細胞に含まれる複数の染色体を表した個々に選択可能な複数の染色体画像と、前記複数の染色体を特定する番号若しくは記号等により表された染色体符号を前記学習画面上に表示するとともに、
前記学習画面上に、学習者の操作によって前記染色体画像を前記染色体符号に対応して配置することができるように設定された配置領域を設け、
前記配置領域に配置された染色体画像が当該配置領域に設定された染色体符号と一致しているか否かを判定するとともに当該判定結果を表示するように構成したことを特徴とする染色体の核型分析学習装置。
【請求項11】
個々に選択可能な前記染色体画像は、ヒト染色体の分裂中期の染色体画像であることを特徴とする請求項10記載の染色体の核型分析学習装置。
【請求項12】
個々に選択可能な前記染色体画像は、染色体の形状に沿った縦長の画像として形成されており、前記染色体画像の長手方向を前記学習画面上における上下方向と一致した状態で前記配置領域に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項10または請求項11記載の染色体の核型分析学習装置。
【請求項13】
前記学習画面上に配置されている前記染色体画像を不規則に配置し直す再配置手段を有していることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習装置。
【請求項14】
性染色体の種類を入力するための入力欄が設けられていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習装置。
【請求項15】
核型を入力するための入力欄が設けられていることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習装置。
【請求項16】
染色体を視覚的に識別するために必要な情報を掲載した説明画面と、当該説明画面の表示を指示する指示手段が設けられていることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項記載の染色体の核型分析学習装置。
【請求項17】
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか一項記載の染色体の染色体画像切り出し装置。
【請求項18】
撮影した染色体全体の顕微鏡画像若しくは写真データを取り込む画像データ取り込み手段と、
当該取り込んだ画像データを画像として表示するとともに、一個の染色体を含む四角形状の領域を新たな染色体画像として取得する画像編集画面を有し、
前記取得した四角形状の新たな染色体画像を前記染色体符号に対応づけて記録するように構成した染色体画像の切り出し手段を有したことを特徴とする染色体画像切り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−99988(P2011−99988A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254618(P2009−254618)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(304024865)学校法人杏林学園 (2)
【Fターム(参考)】