説明

核燃料集合体のウォータロッドにおいて同位体を製造する方法及び装置

【解決手段】本方法は、照射ターゲットの特性に基づいて所望の照射ターゲット(110)を選択し(S300)、照射ターゲット(110)及び核燃料集合体(10)の特性に基づいて照射ターゲットをターゲット棒(100)に挿入し(S310)、ターゲット棒(100)を中性子束に暴露し(S330)及び/又は照射ターゲット(110)から生成された同位体をターゲット棒(100)から回収する。一例の固着装置は、ターゲット棒(100)をウォータロッド(22)の中で支持し且つウォータロッド(22)を通して減速材/冷却材を流す支持つば部(500)及び/又はブシュ(501)を含む。他の例では、ウォータロッド(22)を通して冷却材/減速材を流しながら、ターゲット棒(100)をウォータロッド(22)の中に保持するために1つ以上の開口が形成された1つ以上の座金を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に原子力発電装置で使用される燃料構造及び燃料構造を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電装置は、核分裂により電力を発生するために核分裂性燃料が内部に配置された炉心を含む。米国の原子力発電装置の一般的な構造において、燃料は、燃料集合体として一体に結合された複数の被覆燃料棒の形で炉心内部に配置される。それらの燃料集合体は、燃料集合体を通して液体冷却材及び/又は液体減速材を流し且つ著しい沸騰を伴わずに内部熱伝達/中性子減速を実現させる1つ以上の内部流路、すなわち、ウォータロッドを含んでもよい。
【0003】
図1に示されるように、BWRなどの原子炉の従来の燃料集合体10は、上部タイプレート14及び下部タイプレート16を取り囲む外側流路12を含んでもよい。複数の全長燃料棒18及び/又は部分長燃料棒19は、燃料集合体10の中にマトリクスとして配列され且つ複数のスペーサ(スペーサグリッドとしても知られる)20を貫通してもよい。スペーサ20は、軸方向に互いに離間して配置され、燃料棒18、19を所定のマトリクスの中に維持する。一般に、燃料棒18及び19は底部から先端まで連続しており、全長燃料棒18の場合、下部タイプレート16から上部タイプレート14までの長さとなる。
【0004】
燃料集合体10の内側又は中心位置に、1つ以上のウォータロッド22が設けられてもよい。燃料集合体10の全体に液体冷却材/液体減速材を行き渡らせるために、ウォータロッド22は燃料集合体10の全長に沿って延出してもよいし、あるいは所望の高さで終端してもよい。ウォータロッド22は、ウォータロッド22の外側への流体の流出を防止するために連続していてもよいが、液体冷却材/液体減速材をウォータロッド22の間及び燃料集合体10の他の部分に流すために、ウォータロッドに穴があけられてもよく、あるいはウォータロッドが分割されるか又は他の方法で破断されてもよい。
【0005】
図2A〜図2Dは、図1に示されるような従来の10×10燃料集合体を示した軸方向横断面図であり、従来の燃料集合体における種々のウォータロッド構成を示す。図2A〜図2Dに示されるように、ウォータロッド22は種々の長さ(全長又は部分長)、大きさ(例えば、棒サイズの横断面面積又はそれより大きい面積)及び形状(円形、矩形、ピーナッツ形など)を有してもよい。同様に、ウォータロッド22を有する燃料集合体の所望の中性子特性に応じて、従来の燃料集合体10の中に任意の数の個別のウォータロッド22が存在してよい。ウォータロッド22は、図2A及び図2Dに示されるように集合体の中心に関して対称であってもよいし、図2B及び図2Cに示されるように位置が偏っていてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,539,073号公報
【特許文献2】米国特許第4,708,846号公報
【特許文献3】米国特許第5,149,495号公報
【特許文献4】米国特許第5,553,108号公報
【特許文献5】米国特許第6,574,295号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、核燃料集合体のウォータロッドの中で所望の同位体を生成する方法及び装置に関する。実施例の方法は、照射ターゲットの特性に基づいて所望の照射ターゲットを選択すること、照射ターゲットの特性及び燃料集合体の特性に基づいて照射ターゲットをターゲット棒に挿入すること、ターゲット棒を中性子束に暴露すること及び/又は照射ターゲットから生成された同位体をターゲット棒から回収することを含んでもよい。
【0008】
実施形態のターゲット棒は、種々の種類及び段階の1つ以上の照射ターゲットを収納してもよい。実施形態のターゲット棒は、核燃料集合体のウォータロッドの中に照射ターゲットを更に固着し且つ格納してもよい。燃料集合体を格納する原子炉の動作中、ターゲット棒の位置を維持するために、実施形態のターゲット棒は、実施形態の固着装置によってウォータロッドに固定又は固着されてもよい。
【0009】
実施形態の固着装置は、ターゲット棒をウォータロッドの中で支持し且つウォータロッドを通して減速材/冷却材を流す支持つば部及び/又はブシュを含む。他の実施形態の固着装置は、ウォータロッドを通して冷却材/減速材を流しつつ、1つ以上の実施形態のターゲット棒をウォータロッドの中で保持するために1つ以上の開口があけられている1つ以上の座金を含む。実施形態の座金の位置を固定するために、座金はウォータロッドに接合されてもよい。所望の同位体を製造するために、実施形態のターゲット棒及び実施例の方法は組み合わせて又は他の方法と共に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
単なる例示として示され、従って、実施形態を制限しない添付の図面を詳細に説明することにより、実施形態は更に明らかになるだろう。図面中、同じ要素は同一の図中符号により示される。
【図1】図1は2つの連続する全長ウォータロッドを有する従来の燃料集合体を示した図である。
【図2AB】図2Aは矩形のウォータロッドを示した従来の燃料集合体の横断面図であり、図2Bは位置が偏っている1つの楕円形ウォータロッドを示した従来の燃料集合体の横断面図である。
【図2CD】図2Cは位置が偏っている1つの矩形ウォータロッドを示した従来の燃料集合体の横断面図であり、図2Dは複数の円形ウォータロッドを示した従来の燃料集合体の横断面図である。
【図3】図3は核燃料集合体のウォータロッドの中で所望の同位体を生成する方法の一実施例を示したフローチャートである。
【図4】図4は照射ターゲットを収納するターゲット棒の一実施形態を示した図である。
【図5】図5は照射ターゲットをウォータロッドの中に固着するためのつば部及びブシュの一実施形態を示した図である。
【図6】図6A及び図6Bは照射ターゲットをウォータロッドの中に固着するためのモジュール座金の一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態のうち例示的な実施形態を詳細に説明する。しかし、以下に開示される特定の構造及び機能の詳細は、実施形態を説明するために示される代表的な構造及び機能であるにすぎない。しかし、実施形態は多くの代替形態で実施されてもよく、以下に説明される実施形態にのみ限定されると解釈されてはならない。
【0012】
本明細書において、種々の要素を説明するために「第1の」、「第2の」などの用語が使用されてもよいが、それらの要素はそれらの用語により限定されてはならないことが理解されるだろう。それらの用語は、単に1つの要素を別の要素と区別するために使用されるだけである。例えば、実施形態の範囲から逸脱せずに第1の要素を第2の要素と呼び、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことは可能だろう。本明細書において使用される場合の用語「及び/又は」は、関連して挙げられている項目のうち1つ以上の項目のあらゆる組み合わせを含む。
【0013】
1つの要素が別の要素「に接続される」、「に結合される」、「と嵌合する」、「に装着される」又は「に固定される」と説明される場合、その要素は他方の要素に直接接続又は結合されてもよいが、それら2つのの要素の間に介在する要素が存在してもよいことが理解されるだろう。これに対し、1つの要素が別の要素「に直接接続される」又は「に直接結合される」と説明される場合、介在する要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉も同様に解釈されるべきである(例えば、「の間に」と「の間に直接」、「に隣接する」と「に直接隣接する」など)。
【0014】
本明細書において使用される用語は特定の実施例を説明するために便宜上使用され、実施形態を限定することを意図しない。本明細書における単数形は、特に明示して指示のない限り複数形も含むことを意図する。更に、本明細書において使用される場合の用語「具備する」及び/又は「含む」は、そこに挙げられている特徴、数字、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの集合の存在又は追加を除外しないことが理解されるだろう。
【0015】
尚、いくつかの代替実現形態において、そこに挙げられている機能/動作は、図中に示される順序以外の順序で実行されてもよい。例えば、続けて示される2つの図は、関連する機能/動作に応じて、実際には実質的に同時に実行されてもよいし、場合によっては逆の順序で実行されてもよい。
【0016】
実施形態は特性の設定において又は特定の技術分野に関連して説明されてもよいが、不当な実験作業を実施することなく又は本明細書に開示される実施例の範囲を制限することなく、本発明の方法及び実施形態が開示内容を越えて採用され且つ適合されてもよいことが理解される。例えば、実施形態は特定の種類の核燃料集合体及びウォータロッド構成に関連して示されてもよいが、実施形態は他の燃料集合体及び/又はウォータロッド構成に適合され且つ/又は適用可能であってもよい。同様に、実施形態及び実施例の方法は従来の核燃料集合体に関して説明されるが、実施形態及び実施例の方法は、将来設計される燃料集合体構造に適用されてもよい。
【0017】
核燃料集合体におけるウォータロッドは、核燃料集合体に液体減速材を送り出す優れた供給源であり、それにより核燃料集合体内部の優れた熱中性子供給源を構成すると発明者は認識した。ウォータロッドの優れた熱中性子供給源は、従来の燃料集合体のように核連鎖反応を継続させるために使用されるだけではなく、所望の同位体及び放射性同位体を生成するように特定の材料を照射するためにも使用されてよいと発明者は認識した。それらの特定の材料は、核燃料中のウォータロッドの中に配置され、その後、核燃料を格納する原子炉の動作中に照射されてもよい。材料は、所望の集合体中性子特性を実現するような位置及び構成に配置されてもよい。照射により生成された同位体及び放射性同位体は、その後回収され、工業、医療及び任意の所望の用途で使用されてもよい。これらの新たに認識された利点を独自の形で利用できるようにするために、発明者は以下に示す実施例の方法及び装置を考案した。
実施例の方法
図3は、放射性同位体を生成するためにウォータロッドを使用する実施例の方法を示したフローチャートである。図3に示されるように、ステップS300において、ユーザ/技術者は、照射ターゲットとして使用する所望の材料を選択する。技術者は、中性子束に暴露された場合にその材料から生成される同位体の種類及び半減期に基づいてターゲット材料及び/又はターゲット材料の量を選択してもよい。更に、技術者は、ターゲットが暴露され且つ/又は動作中の原子炉内の最終的な位置でターゲットが吸収する中性子束の長さ、量及び種類の知識に基づいて、ターゲット材料及び/又はターゲット材料の量を選択してもよい。実施例の方法において、例えば、中性子が存在する場所でコバルト‐60、ニッケル‐63及びイリジウム‐192にそれぞれ容易に変換するという理由により、コバルト‐59、ニッケル‐62及び/又はイリジウム‐191が選択されてもよい。これらの娘同位体は、コバルト‐60及びニッケル‐63の場合は半減期が長い放射性同位体として使用可能であり、イリジウム‐192の場合はX線放射源として使用可能であるなどの所望の特性を有する。回収時に製品が利用可能となる時点で有用な量の製品が崩壊せずに残るように、照射ターゲットの初期量は選択され且つ/又は実施例の照射ターゲット製品は十分に長い半減期を有してもよい。
【0018】
ステップS310において、選択されたターゲットはターゲット棒の中に配置され且つ/又はターゲット棒に形成されてもよい。実施形態のターゲット棒については以下に説明する。ステップS310において、ターゲット棒にいくつかの異なる種類及び段階の照射ターゲット材料が配置されてもよく且つ実施形態のターゲット棒が照射ターゲットから形成されてもよいことが理解される。あるいは、生成される同位体を分離するために、1つの種類及び/又は段階のターゲット材料がターゲット棒に挿入されてもよい。ステップS320において、選択された照射ターゲットを格納したターゲット棒は、核燃料集合体のウォータロッドに挿入される。ターゲット棒をウォータロッドに挿入する実施形態の機構についても、以下に実施形態に関連して説明する。
【0019】
更に、ステップS320において、技術者は、原子炉内の動作状態及びターゲット棒が挿入される燃料集合体の知識に基づいて、ターゲット棒を位置決めし且つ構成してもよい。例えば、ウォータロッドの中で軸方向位置が高くなるほど水の体積を大きくすることが望まれる場合があり、それに従って、ウォータロッドの軸方向位置が高くなるほどターゲット棒の数を減らし且つ/又は軸方向位置が高くなるほどターゲット棒の直径を小さくしてもよい。あるいは、例えば、燃料集合体の中の特定の軸方向高さに対応する所望の中性子束レベルを計算してもよく、余分な中性子束を吸収して炉心からの所望の中性子束吸収レベルを実現するために、その軸方向高さにターゲット棒を配置してもよい。ステップS320において、熱水圧特性及び/又は中性子集合体特性を含むいくつかの所望の集合体特性を実現するために、技術者がターゲット棒の形状、大きさ、材料などを調整し且つターゲット棒を位置決めしてもよいことが理解される。同様に、ステップS320におけるそのようなターゲット棒の配置及び構成は、同位体製造量を最大限にし、ウォータロッドの水体積を最小限にするなどの他の設計目標に適合してもよい。S320の所望の構成及び配置があらかじめ判定されるように、燃料集合体パラメータ及び所望の特性に基づくターゲット棒の構成又は配置及び照射ターゲットの選択の判定は、いずれも実施例の方法を完全に実行し終わる前に実行されてもよいことが理解される。
【0020】
ステップS330において、核燃料集合体のウォータロッドの中のターゲット棒は中性子束に暴露される。中性子束は照射ターゲットを所望の娘生成物に変換する。例えば、ターゲット棒を格納する燃料集合体は、100MW‐thの定格を有する商業炉に装填され且つ発電動作を開始することにより、燃料集合体及びウォータロッドにおいて中性子束が発生されてもよい。大量の液体減速材を含むウォータロッドは、大量の熱中性子をターゲット棒へ送り出すことにより、ウォータロッド内部の照射ターゲットからの所望の同位体の製造を促進する。燃料集合体のウォータロッドの中の照射ターゲットを照射するために、非商業炉及び試験装置が使用されてもよい。
【0021】
ステップS340において、生成された同位体はターゲット棒から回収されてもよい。例えば、ターゲット棒を格納する燃料集合体は動作停止中に原子炉から取り出され、ターゲット棒は現場で燃料集合体から取り出されてもよいし、あるいは離れた場所にある燃料処理施設で取り出されてもよい。ターゲット棒の中の同位体はターゲット棒から取り出され且つ処理されるか、又は使用のための準備が実行されてもよい。例えば、照射ターゲット及び生成同位体は1つのターゲット棒から取り出され、生成同位体を浄化するためにホットセル施設で化学的に分離されてもよい。
【0022】
実施例の方法を説明したので、実施形態のターゲット棒並びにS310及びS320においてターゲット棒を配置するために使用される他の機構を以下に説明する。核燃料集合体のウォータロッドの中で所望の同位体を製造するために、先に説明した実施例の方法と共に他の実施形態が使用されてもよいことが理解される。同様に、以下に説明される実施形態は、異なるステップ及び/又はステップ実行順序を使用する他の実施例の方法と共に使用されてもよい。
ターゲット棒の実施形態
図4は、所望の同位体を製造するために核燃料集合体のウォータロッドの中で使用可能なターゲット棒100の一実施形態を示す。図4に示されるように、本実施形態のターゲット棒100は、一般に核燃料集合体のウォータロッド22(図1及び図2)の中に嵌合するような細長い円筒形又は他の形状を有してもよい。実施形態のターゲット棒100は、ウォータロッド22の中に嵌合するようにウォータロッド22の横断面又は直径より小さい横断面又は直径101を有してもよい。直径101は変更されてもよく且つ/又はターゲット棒100がウォータロッド22に挿入されている間に相当な量の液体冷却材/減速材がウォータロッドを通過できるようにウォータロッドの直径又は横断面よりかなり小さくてもよい。
【0023】
実施形態のターゲット棒100は、照射ターゲット110が収納される少なくとも1つの内部空胴105を規定する外面104を有する。空胴105は、照射ターゲット110を所望の軸方向高さ又は他の所望の位置に維持するような形状に形成され且つウォータロッド100の中における位置を規定される。先に実施例の方法に関して説明したように、特に照射ターゲット110及び照射ターゲット110から生成される同位体が固体物質である場合、照射ターゲット110はターゲット棒100の空胴105に直接挿入されてもよい。同様に、液体照射ターゲット110及び/又は気体状照射ターゲット110が空胴105に充填されてもよい。あるいは、別の格納構造111に所望の照射ターゲット110が充填され、その格納構造111が密封されて内部空胴105の中に配置されてもよい。格納構造111は、照射ターゲット110と動作中の原子炉との間の追加格納層を形成し且つ/又は異なる種類/段階の照射ターゲット及び生成される同位体を分離し且つ空胴105の中に格納するために使用されてもよい。例えば、すべて空胴105の中に配置された異なる格納構造111に1つ以上の異なる種類の照射ターゲット110が挿入されてもよい。種々の照射ターゲット110が中性子束に暴露される場合、異なる格納構造111は、照射ターゲット110及びそれらの照射ターゲットから生成された同位体を分離してもよい。同様に、生成される同位体が液体又は気体である場合、同位体の処理及び空胴105からの取り出しを容易にするために、格納構造111は生成された液体又は気体を更に小さく規定された領域に格納してもよい。
【0024】
格納構造111及び/又は照射ターゲット110は、ターゲットの種類及び/又は他の特性を識別する標識113を付されていてもよい。同様に、実施形態のターゲット棒100は、ターゲット棒100に格納されているターゲット110を識別する外側標識130又はターゲット棒100に関する他の所望の情報を含んでもよい。
【0025】
実施形態の照射ターゲット棒100は、内部空胴105並びに空胴105の中の照射ターゲット110及び照射ターゲット110から生成された同位体へのアクセスを可能にする導入場所120を更に含んでもよい。動作中の原子炉内部でターゲット棒100が中性子束に暴露されている間に照射ターゲット110及び/又は格納構造111を格納するように、導入場所120は密封されてもよい。例えば、導入場所120は、照射ターゲット110及び/又は格納構造111が内部空胴105に挿入された後に空胴105を密封する機械式シール又は材料接合部であってもよい。導入場所120は、生成された同位体を回収するために制御下で破断可能であり且つ空胴105へのアクセスを可能にする一連のヘックス、フラット又は他の薄肉機構を含んでもよい。あるいは、空胴105の密封及びアクセスを繰り返し実行できるようにするために、導入場所120は、ターゲット棒100の部品との着脱を可能にするねじ端部及びそれと相補形のねじ山が形成された内面を含んでもよい。内部空胴105へのアクセス及び空胴105の密封を可能にする他の周知の脱着機構が導入場所120に設けられてもよい。
【0026】
実施形態のターゲット棒100は、動作中の原子炉内部で実施形態のターゲット棒100をウォータロッドの中に接合させるか又は他の方法により固着する1つ以上の固着装置160を含んでもよい。例えば固着装置160は、ウォータロッド22(図1)の外面に係合するファスナであってもよいし、あるいはウォータロッド22(図1)に対する溶接接続部であってもよい。あるいは、固着装置160は、以下に説明される実施形態の固着機構と相互に作用してもよい。
【0027】
実施形態のターゲット棒100は、所望の燃料集合体パラメータ及び/又は中性子束暴露条件に適合する任意の所望の形状又は構成を有してよい。例えば、実施形態のターゲット棒100は、ターゲット棒100の挿入が望まれるウォータロッド内部の軸方向位置までターゲット棒100及び/又はその内部の照射ターゲット110を延出させるか又はターゲット棒100の挿入が望まれないウォータロッド内部の軸方向位置までターゲット棒100及び/又はその内部の照射ターゲット110が延出するのを阻止するような長さであってもよい。例えば、技術者は、ある照射ターゲット110においてある量の材料から同位体を生成するのに理想的な中性子束レベルを有する核燃料集合体中の特定の軸方向位置を識別し、ウォータロッドに挿入した場合に照射ターゲット110がその軸方向位置に位置決めされるようにターゲット棒100及び内部空胴105を構成してもよい。あるいは、ターゲット棒100は、例えばより多くの量の減速材を流入させ且つ/又は水への熱伝達を増加するようにターゲット棒100の横断面を縮小し、それにより、ターゲット棒100が挿入された場合のウォータロッドの中の水の体積を増加させる先細形状の端部150をターゲット棒100に更に形成してもよい。
【0028】
実施形態のターゲット棒100は、ターゲット棒100に収納された照射ターゲット110を適切に格納すると共に、動作中の原子炉の環境の中で機械的特性及び中性子特性をほぼ維持する任意の材料から製造されてもよい。ターゲット棒100の材料需要及び/又はウォータロッド22(図1)を製造するために使用された材料に基づいて、ターゲット棒100は、例えば、ジルコニウム及びその合金、耐食性ステンレス鋼、アルミニウムなどから製造されてもよい。
【0029】
別の実施形態において、照射ターゲット及び生成される同位体が適切な物理的特性を有するのであれば、ターゲット棒は照射ターゲット材料自体から製造されてもよい。例えば、実施形態のターゲット棒100はイリジウム‐191から製造され、実施例の方法に従ってウォータロッドに挿入されてもよい。これは、イリジウム‐191及び生成される同位体であるイリジウム‐192が固体であり、動作中の原子炉の条件に適合するからである。そのような実施形態において、ターゲット棒は更に多くの照射ターゲットを収納する内部空胴を有してもよいが、内部空胴は形成されなくてもよい。
【0030】
実施形態のターゲット棒は先に説明された構造とは異なるいくつかの変形構造を有してもよく、核燃料集合体のウォータロッドの中に照射ターゲットを格納するという機能をターゲット棒が果たすことが理解される。更に、実施形態のターゲット棒は単独でウォータロッドに固定されるか又は他の方法により保持されてもよいが、以下に説明される実施形態の挿入機構及び固着機構と組み合わせて使用されてもよい。
固着機構の実施形態
1つ以上の実施形態のターゲット棒を核燃料集合体のウォータロッドの中で保持するために、いくつかの異なる実施例の固着機構が使用されてもよい。図5は、一実施形態のウォータロッド支持つば部500を示した図である。実施形態のつば部500は、燃料集合体の中において下端部502で従来のウォータロッド22に固定されてもよい。つば部500は半径方向にウォータロッド22の流路の中へ延出し、ウォータロッド22の中で実施形態のターゲット棒200が載置される支持体を形成してもよい。実施形態のターゲット棒200は先に説明した実施例のターゲット棒に類似していてもよく、つば部500に嵌合し且つ/又はウォータロッド22の中に適切な間隙を形成するように最小限の大きさに形成されるか又は大きさを変更されてもよい。同様に、1つ以上の照射ターゲット210がターゲット棒200の中に挿入され且つ/又は一列に並べられてもよい。つば部500は、流入した液体冷却材/減速材がウォータロッド22の中を流れるときに通過する流路503を保持する。
【0031】
ウォータロッド22の中でターゲット棒を一定の位置に保持するために、ターゲット棒200はつば部500に載置されるか又は固着され、ねじ留めされ且つ/又はその他の方法により固定されてもよい。更に、ブシュ501がつば部500に接合され且つ軸方向上向きにウォータロッド22の中まで延出してもよい。ブシュ501は、実施形態のターゲット棒200をウォータロッド22の中の周囲方向位置に更に固着してもよい。ブシュ501はつば部に固着又は溶接されるか、あるいはつば部500と連続していてもよく、ウォータロッド22の内部に向かう流路503を保持してもよい。つば部500及びブシュ501の双方は、ステンレス鋼及び/又はジルコニウム合金を含めて、原子炉内部で動作条件に暴露された場合に機械的特性及び中性子特製を維持する材料から製造されてもよい。
【0032】
つば部500及びブシュ501は、ウォータロッド22の形状に応じて種々の形状を有してもよい。例えば、ウォータロッド22がピーナッツ形である場合、つば部500及び/又はブシュ501もピーナッツ形であってよい。同様に、つば部500及びブシュ501は必ずしもウォータロッド22の内周全体に沿って延出しなくてもよい。すなわち、つば部500及び/又はブシュ501は、ウォータロッド22の内周のごく一部に設けられてもよい。つば部500及びブシュ501はウォータロッド22の下端部502にあるように示されているが、つば部500及び/ブシュ501により支持される実施形態のターゲット棒200を所望の位置に位置決めするために、つば部500及び/又はブシュ501がウォータロッド22内部の他の軸方向位置へ移動されてもよいことが理解される。ブシュ501を伴って使用されるか又はブシュ501を伴わないかに関わらず、つば部500が実施例のターゲット棒を保持する他の保持装置と関連して使用されてもよいことが理解される。例えばターゲット棒200は、つば部500及びブシュ501により支持されるのに加えて、固着装置160(図4)を介してウォータロッド22に更に固着されてもよい。
【0033】
図6A及び図6Bは、実施例のターゲット棒200をウォータロッド22の中に固着し且つ保持するために使用されてもよい一実施形態のモジュール座金600を示した図である。図6Aに示されるように、ウォータロッド22の中の1つ以上の軸方向位置に1つ以上の実施形態の座金600が配置されてもよい。実施例の座金600は、摩擦のみによって及び/又は溶接及び/又は座金600を固定保持するウォータロッド22のくぼみなどの固着機構又は接合機構を介して特定の軸方向位置に保持されてもよい。あるいは、図6Bに示されるように、中心支柱又は中心管610が開口605を貫通し、いくつかの座金600に固定されてもよい。従って、中心管610及びウォータロッド22を通って液体減速材/液体冷却材が流れることができる状態で、座金は中心管610により一定の相対距離及び相対的回転関係で保持されてもよい。
【0034】
実施形態のモジュール座金600は、座金600の所望の場所に1つ以上の開口605を含む。開口605は、少なくとも1つのターゲット棒200を開口605に通し且つ/又は座金600に接合することができるような形状を有する。ターゲット棒200は摩擦によって開口605の中に保持されてもよく且つ/又は摩擦以外の作用により開口605の中に保持されるか又は開口605に遊嵌されてもよい。このように、開口605はターゲット棒200を座金600の一定の角度位置及び/又は軸方向位置に保持し、それにより、ターゲット棒200をウォータロッド22の一定の位置に保持する。ターゲット棒200を保持する開口605は、原子炉の動作中のターゲット棒200の運動を阻止又は減少してもよい。ウォータロッド22を通して冷却材/減速材を流すために、ターゲット棒200が挿入されないいくつかの開口605が座金600に更に残されてもよい。実施形態の座金600によりウォータロッド22の中に複数のターゲット棒200が互いに対して一定の位置に保持されるように、いくつかの開口605がターゲット棒200を保持してもよい。
【0035】
1つのウォータロッド22において複数の座金600が使用されてもよい。図6Aに示されるように、他の座金は同一の及び/又は異なるターゲット棒200をウォータロッド22の中で保持してもよい。追加される実施形態の座金は、複数の座金600を通るターゲット棒200に更に安定性を与え且つそれらのターゲット棒200を整列させる働きをしてもよい。
【0036】
実施形態の座金600は、ステンレス鋼及び/又はジルコニウム合金などの材料例を含めて、原子炉内部の動作条件に暴露された場合に機械的特性及び中性子特性を維持する材料から製造されてもよい。ウォータロッド22の形状に応じて、座金600は種々の形状であってよい。例えばウォータロッド22が三角形である場合、座金600も同様に三角形であってよい。実施形態の座金600は必ずしもウォータロッド22の内周全体に沿っていなくてもよい。座金600はウォータロッド22の内周のごく一部に設けられてもよい。座金600により支持される実施形態のターゲット棒200の所望の位置決めを実現するために、座金600がウォータロッド22の他の軸方向位置へ移動されてもよいことが理解される。
実施形態の座金600は単独で使用されてもよいが、実施例のターゲット棒を保持する他の保持装置と関連して使用されてもよいことが理解される。例えば、ターゲット棒200は、座金600により固着されるのに加えて、固着装置160(図4)を介してウォータロッド22に更に固着されてもよいし、あるいはつば部500及びブシュ501(図5)により支持されてもよい。実施形態の燃料集合体は、実施例の方法に従って使用可能な上述の実施形態のターゲット棒及び保持構造のすべて又はそのうちいくつかを含んでもよい。実施形態の座金600及び/又は支持つば部500を含む実施形態の保持構造は、それらを収納する燃料集合体の製造中に挿入されてもよい。実施形態の保持構造は、燃料集合体が完成した後に挿入されてもよいし、既存の燃料集合体に挿入されてもよい。実施例の方法に関して先に説明したように、実施形態の保持構造は、特定の集合体基準に適合するように所望の位置に/所望の構成で挿入されてもよい。先にステップS320で説明したように、実施形態のターゲット棒は保持構造と共に挿入されるか又は保持構造の設置後に挿入されてもよい。
【0037】
実施形態のターゲット棒及び実施例の方法は、照射ターゲットを原子炉ウォータロッド内部に存在する豊富な熱中性子束に暴露することが可能であるので、実施形態のターゲット棒及び実施例の方法において製造される同位体製品は、従来と比較して高い放射能及び/又は純度を有し且つ短時間で生成されてもよい。実施形態のターゲット棒及び実施例の方法は、所望の同位体を生成しながら燃料集合体の中性子特性及び/又は熱力学的特性に影響を与えることができるという利点を有するウォータロッドの中に照射ターゲットを挿入することにより、燃料集合体のそれらの特性を構成する付加的なツールを放射線技師に更に与えてもよい。
【0038】
本発明の実施形態を説明したが、日常的な実験作業を通して、更なる発明的活動の必要なく実施形態が変形されてもよいことが当業者には理解されるだろう。例えば、実施形態及び実施例の方法は、既存の燃料集合体構造及びウォータロッド構成に関して説明されたが、実施形態及び実施例の方法の上述の特徴を維持しつつ、将来の設計変更に適合するように実施形態及び実施例の方法を変更することは明らかに放射線技師の技術の範囲内に含まれる。変形は実施形態の精神及び範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、当業者には自明であると考えられるそのようなすべての変形は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。
【符号の説明】
【0039】
10 燃料集合体
12 外側流路
14 上部タイプレート
16 下部タイプレート
20 スペーサ
18 全長燃料棒
19 部分長燃料棒
22 ウォータロッド
100 ターゲット棒
101 直径
104 外面
105 空胴
110 照射ターゲット
111 格納構造
113 標識
130 外側標識
120 導入場所
160 固着装置
150 先細形状の端部
500 つば部
502 下端部
503 流路
501 ブシュ
600 座金
610 管
605 開口
200 ターゲット棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同位体製品を生成する方法において、
照射ターゲット(110)を選択すること(S300)と;
前記照射ターゲット(110)を核燃料集合体(10)のウォータロッド(22)の中に配置すること(S310)と;
前記照射ターゲット(110)を同位体製品にほぼ変換するように、前記照射ターゲット(110)を中性子束に暴露すること(S330)とから成る方法。
【請求項2】
前記照射ターゲット(110)をターゲット棒(100)の中に配置すること(S310)を更に含み、前記照射ターゲット(110)を前記ウォータロッド(22)の中に配置することは、前記ターゲット棒(100)を前記ウォータロッド(22)に挿入することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記照射ターゲット(110)をターゲット棒(100)に形成することを更に含み、前記照射ターゲット(110)をウォータロッド(22)の中に配置することは、前記ターゲット棒(100)を前記ウォータロッド(22)に挿入することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ウォータロッド(22)から前記同位体製品を回収すること(S340)を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記照射ターゲット(110)を前記ウォータロッド(22)の中に配置することは、前記核燃料集合体(10)の所望の中性子特性又は熱力学的特性を実現するために前記ウォータロッド(22)の中のある位置に前記照射ターゲット(110)を位置決めすることを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記照射ターゲット(110)を選択することは、前記照射ターゲット(110)の特性並びに前記照射ターゲット(110)が暴露される中性子束の量及び持続時間に基づいて同位体製品の所望の放射能を実現するために照射ターゲット(110)の種類及び量を選択することを含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記照射ターゲット(110)を中性子束に暴露することは、前記核燃料集合体(10)を格納する100+MWth原子炉において出力動作を開始することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
燃料集合体(10)のウォータロッド(22)の中で同位体を製造するシステムにおいて、
照射ターゲット(110)を収納し、前記ウォータロッド(22)の中に配置可能な大きさを有する少なくとも1つのターゲット棒(100)と;
前記燃料集合体(10)を格納する原子炉の動作中、前記少なくとも1つのターゲット棒(100)を前記ウォータロッド(22)の中に保持するように構成された少なくとも1つの固着装置とを具備し、前記ターゲット棒(100)は、前記ターゲット棒(100)の内側に空胴(105)を規定する外壁を有し、且つ1つ以上の照射ターゲット(110)は前記空胴(105)の中に位置決めされるシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの固着装置は、前記ウォータロッド(22)に軸方向位置で接合され且つ半径方向に前記ウォータロッド(22)の中まで延出するつば部(500)を含み、前記つば部(500)は、前記少なくとも1つのターゲット棒(100)を前記軸方向位置で支持する請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの固着装置は、前記つば部(500)から軸方向上向きに延出し且つ前記つば部(500)に接合されたブシュ(501)を更に含み、前記ブシュ(501)は、前記ウォータロッド(22)の内部における前記少なくとも1つのターゲット棒(100)の半径方向の運動を制限する請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2AB】
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【図2CD】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−22143(P2011−22143A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−155314(P2010−155314)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC