説明

核酸、核酸によりコードされるタンパク質、核酸が導入された組換え生物、及び組換え生物により作られるタンパク質

【課題】天然繊維において、優れた物性を有する新素材を提供すること。
【解決手段】以下の(a)〜(d)のいずれかの核酸。(a)特定の塩基配列を有する核酸。(b)特定のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸。(c)前記(a)の核酸と90%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸。(d)前記(a)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、牽引糸タンパク質をコードする核酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸、核酸によりコードされるタンパク質、核酸が導入された組換え生物、及び組換え生物により作られるタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
クモの糸は、強度と弾性の組み合わせにより優れた強靭性を有する天然の高性能ポリマーとして知られている。クモには最大7つの特化した腺が存在し、これらは性質の異なる多種類のクモ糸を産生するが、中でも、大瓶状腺により産生される牽引糸は、最も強靭なクモ糸として、医療、航空、衣料等の様々な産業分野における新素材の開発において注目されている。
【0003】
牽引糸を構成する主要タンパク質として、大瓶状腺スピドロイン(Major Ampullate Spidroin:MaSp)と称されるタンパク質が知られており、これまでに、クロゴケグモ(Latrodectus hesperus)、ハイイロゴケグモ(Latrodectus geometricus)、北米ジョロウグモ(Nephila clavipes)等、種々のクモのMaSpタンパク質をコードする遺伝子配列が明らかにされている(非特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nadia A. Ayoub et al.,Blueprint for a High−Performance Biomaterial:Full−Length Spider Dragline Silk Genes,2007,Issue6,e514
【非特許文献2】William A. Gaines IV et al.,Identification and Characterization of Multiple Spidroin 1 Genes Encoding Major Ampullate Silk Proteins in Nephila clavipes,Insect Mol Biol,2008,17(5),465−474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、各産業分野において、優れた物性を有する天然繊維に対する需要は高まる一方であり、更なる新素材の開発が期待されている。
【0006】
そこで本発明は、天然繊維において、優れた物性を有する新素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、オオジョロウグモ(Nephila pillipes)の牽引糸を構成するMaSpタンパク質をコードする遺伝子が、従来知られているMaSp遺伝子とは異なる独特の構造を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(a)〜(d)のいずれかの核酸に関する。
(a)配列番号1又は19の塩基配列を有する核酸
(b)配列番号2又は20のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(c)上記(a)の核酸と90%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸
(d)上記(a)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、牽引糸タンパク質をコードする核酸
【0009】
また、本発明は、以下の(e)〜(h)のいずれかの核酸を含み、配列番号1の塩基配列を有する核酸と70%以上、好ましくは80%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸に関する。
(e)配列番号3、5、7、9、11、13、15又は17の塩基配列を有する核酸
(f)配列番号4、6、8、10、12、14、16又は18のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(g)上記(e)の核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸
(h)上記(e)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
【0010】
また、本発明は、以下の(i)〜(l)のいずれかの核酸を含み、配列番号19の塩基配列を有する核酸と70%以上、好ましくは80%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸に関する。
(i)配列番号21、23、25、27、29、31、33又は35の塩基配列を有する核酸
(j)配列番号22、24、26、28、30、32、34又は36のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(k)上記(i)の核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸
(l)上記(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
【0011】
また、本発明は、上記核酸によりコードされるタンパク質に関する。
【0012】
上記本発明に係る特定の核酸によれば、従来のMaSpタンパク質とは異なる優れた物性を有するMaSpタンパク質(牽引糸タンパク質)がコードされ、天然繊維における新素材を提供することが可能となる。特に、本発明の核酸によりコードされる牽引糸タンパク質(本発明に係るタンパク質)は、従来のものよりも優れた弾性(又は弾力性、伸縮性、伸度、柔軟性)を有し、医療用品、衣料品等をはじめ、様々な産業分野において、弾性が必要とされる用途に好適に用いられる。
【0013】
さらに、本発明は、上記核酸が導入された組換え生物、及びその組換え生物により作られるタンパク質に関する。本発明の組換え生物によれば、上記核酸によりコードされる物性の優れた牽引糸タンパク質の大量生産が可能となる。上記組換え生物により作られるタンパク質は、物性の優れた牽引糸タンパク質を含むことにより、様々な産業分野で好適に用いられる。
【0014】
特に、本発明は、上記核酸が導入された組換えカイコ、及びその組換えカイコにより作られる絹糸に関する。本発明の組換えカイコによれば、上記核酸によりコードされる物性の優れた牽引糸タンパク質を含む絹糸の大量生産が可能となる。上記組換えカイコにより作られる絹糸は、物性の優れた牽引糸タンパク質を含むことにより、従来の絹糸よりも優れた物性、特に、優れた弾性を有するものとなる。
【0015】
また、本発明は、以下の(m)又は(n)のアミノ酸配列を有する、牽引糸タンパク質に関する。
(m)配列番号2又は20のアミノ酸配列
(n)上記(m)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
【0016】
また、本発明は、以下の(o)又は(p)のアミノ酸配列を有する、牽引糸タンパク質に関する。
(o)以下の(o−1)又は(o−2)のアミノ酸配列を有し、配列番号2のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(o−1)配列番号4、6、8、10、12、14、16又は18のアミノ酸配列
(o−2)上記(o−1)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(p)以下の(p−1)又は(p−2)のアミノ酸配列を有し、配列番号20のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(p−1)配列番号22、24、26、28、30、32、34又は36のアミノ酸配列
(p−2)上記(p−1)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
【0017】
さらに、本発明は、以下の一般式(1)で表されるアミノ酸配列、又は上記アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。
[X1−X2−X3−(X4)m−(X5)m−(X6)m−X7−X8]n (1)
【0018】
上記一般式(1)中、mはそれぞれ独立に0又は1の整数を示し、nは1〜10の整数を示し、X1は配列番号37〜45のいずれかのアミノ酸配列を示し、X2は配列番号46〜52のいずれかのアミノ酸配列を示し、X3は配列番号53〜59のいずれかのアミノ酸配列を示し、X4は配列番号49のアミノ酸配列を示し、X5は配列番号60又は61のアミノ酸配列を示し、X6は配列番号62〜64のいずれかのアミノ酸配列を示し、X7は配列番号65〜70のいずれかのアミノ酸配列を示し、X8は配列番号71〜81のいずれかのアミノ酸配列を示す。
【0019】
上記本発明に係るタンパク質は、その独特の構造により、従来の牽引糸タンパク質よりも優れた物性を有するため、様々な産業分野において好適に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の核酸によれば、優れた物性を有するタンパク質が提供される。また、本発明の組換え生物によれば、優れた物性を有するタンパク質が大量生産できる。特に、本発明の組換えカイコによれば、優れた物性を有する絹糸が大量生産できる。本発明により提供される牽引糸タンパク質又は絹糸は、特に、優れた弾性を有するものとなる。このように、本発明によれば、天然繊維において、弾性等の物性に優れた新素材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】NP−牽引糸タンパク質AのcDNA配列を示す図である。
【図2】NP−牽引糸タンパク質Aのアミノ酸配列を示す図である。
【図3】ノーザンハイブリダイゼーションの結果を示す写真図である。
【図4】NP−牽引糸タンパク質BのcDNA配列を示す図である。
【図5】NP−牽引糸タンパク質Bのアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明は、以下の(a)〜(d)のいずれかの核酸に関する。
(a)配列番号1又は19の塩基配列を有する核酸
(b)配列番号2又は20のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(c)上記(a)の核酸と90%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸
(d)上記(a)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、牽引糸タンパク質をコードする核酸
【0024】
まず、本発明は、配列番号1又は19の塩基配列を有する核酸(a)に関する。配列番号1又は19の塩基配列は、いずれも、ジョロウグモ属オオジョロウグモ(Nephila pilipes)の牽引糸を構成するタンパク質の主要成分である大瓶状腺スピドロイン(Major Ampullate Spidroin:MaSp)と称されるタンパク質(ポリペプチド)をコードする遺伝子である。本明細書では、配列番号1の塩基配列を有する核酸によりコードされるタンパク質を、「Np−牽引糸タンパク質A」と称し、配列番号19の塩基配列を有する核酸によりコードされるタンパク質を、「Np−牽引糸タンパク質B」と称する。これらの核酸(a)は、オオジョロウグモから取得したものであることを要さず、配列番号1又は19の塩基配列を有するものであれば、人工合成やゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーから取得したものでもよく、これらをPCRで増幅したものや制限酵素で切り出したものであってもよい。
【0025】
本発明の核酸は、配列番号2又は20のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸(b)であってもよい。配列番号2又は20のアミノ酸配列は、いずれも、オオジョロウグモのMaSpタンパク質が有するアミノ酸配列である。具体的には、配列番号2のアミノ酸配列は、上記Np−牽引糸タンパク質Aが有するアミノ酸配列であり、配列番号20のアミノ酸配列は、上記Np−牽引糸タンパク質Bが有するアミノ酸配列である。
【0026】
また、本発明の核酸は、牽引糸タンパク質(MaSp)をコードするものであれば、配列番号1又は19の塩基配列を有する核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸(c)であってもよい。上記配列同一性は90%以上であればよいが、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0027】
さらに、本発明の核酸は、牽引糸タンパク質をコードするものであれば、配列番号1又は19の塩基配列を有する核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(d)であってもよい。本明細書において、核酸の「相補鎖」とは、核酸の塩基間の水素結合に基づいて対合する核酸配列(例えば、Aに対するT、Gに対するC)をいう。また、「ハイブリダイズ」とは、上記相補鎖間で起こる相補的結合、又は一本鎖核酸分子間の塩基対相互作用の形成を意味する。
【0028】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、標的配列に対して相同性を有するヌクレオチド鎖の相補鎖が標的配列に優先的にハイブリダイズし、そして相同性を有さないヌクレオチド鎖の相補鎖が実質的にハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、そして種々の状況で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特定の配列についての熱融解温度(T)より約5℃低く選択される。Tは、規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で、標的配列に相補的なヌクレオチドの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。「ストリンジェントな条件」は配列依存的であり、そして種々の環境パラメーターによって異なる。核酸のハイブリダイゼーションの一般的な指針は、Tijssen(Tijssen(1993)、Laboratory Technniques In Biochemistry And Molecular Biology−Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I、第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay」、Elsevier,New York)に見出される。
【0029】
代表的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M Na未満であり、代表的には、pH7.0〜8.3で約0.01〜1.0MのNa濃度(または他の塩)であり、そして温度は、短いヌクレオチド(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いヌクレオチド(例えば、50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。本明細書におけるストリンジェントな条件として、50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(37℃)の緩衝溶液中でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSCで60℃での洗浄が挙げられる。
【0030】
また、本発明の核酸は、以下の(e)〜(h)のいずれかの核酸を含み、牽引糸タンパク質をコードするものであれば、配列番号1の塩基配列を有する核酸と70%以上の配列同一性を有する核酸であってもよい。上記配列同一性は70%以上であればよいが、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、88%以上であることが特に好ましい。
(e)配列番号3、5、7、9、11、13、15又は17の塩基配列を有する核酸
(f)配列番号4、6、8、10、12、14、16又は18のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(g)上記(e)の核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸
(h)上記(e)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
【0031】
上記配列番号3、5、7、9、11、13、15又は17の塩基配列は、配列番号1の塩基配列のうち、本発明の優れた物性を有する牽引糸タンパク質をコードする上で重要な特徴を有する配列である。このような特徴的配列を有する核酸を含むことによって、配列番号1の塩基配列を有する核酸と70%以上の配列同一性しか有しない核酸であっても、配列番号1の塩基配列を有する核酸と同様に、本発明の優れた物性を有する牽引糸タンパク質をコードすることが可能となる。
【0032】
配列番号4、6、8、10、12、14、16又は18のアミノ酸配列を有するタンパク質は、それぞれ、上記配列番号3、5、7、9、11、13、15又は17の塩基配列によりコードされるタンパク質である。
【0033】
上記核酸(g)において、核酸(e)との配列同一性は90%以上であればよいが、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0034】
また、本発明の核酸は、以下の(i)〜(l)のいずれかの核酸を含み、牽引糸タンパク質をコードするものであれば、配列番号19の塩基配列を有する核酸と70%以上の配列同一性を有する核酸であってもよい。上記配列同一性は70%以上であればよいが、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、88%以上であることが特に好ましい。
(i)配列番号21、23、25、27、29、31、33又は35の塩基配列を有する核酸
(j)配列番号22、24、26、28、30、32、34又は36のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(k)上記(i)の核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸
(l)上記(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
【0035】
上記配列番号21、23、25、27、29、31、33又は35の塩基配列は、配列番号19の塩基配列のうち、本発明の優れた物性を有する牽引糸タンパク質をコードする上で重要な特徴を有する配列である。このような特徴的配列を有する核酸を含むことによって、配列番号19の塩基配列を有する核酸と70%以上の配列同一性しか有しない核酸であっても、配列番号19の塩基配列を有する核酸と同様に、本発明の優れた物性を有する牽引糸タンパク質をコードすることが可能となる。
【0036】
配列番号22、24、26、28、30、32、34又は36のアミノ酸配列を有するタンパク質は、それぞれ、上記配列番号21、23、25、27、29、31、33又は35の塩基配列によりコードされるタンパク質である。
【0037】
上記核酸(k)において、核酸(i)との配列同一性は90%以上であればよいが、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0038】
また、本発明は、上記本発明の核酸が導入された組換え生物及びその組換え生物により作られるタンパク質に関する。特に、本発明は、上記本発明の核酸が導入された組換えカイコ及びその組換えカイコにより作られる絹糸に関する。
【0039】
本明細書において、「組換え生物」とは、遺伝子組換えにより外来遺伝子が染色体に導入され、形質転換された生物を示す。形質転換される対象となる被組換え生物としては、特に制限はなく、昆虫、動物、植物、微生物等を用いることができるが、昆虫を用いることが好ましい。好適な昆虫としては、カイコ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(てんさん)(Antheraea yamamai)、柞蚕(さくさん)(Antheraea pernyi)等が挙げられる。なかでも、カイコガ科に属するカイコ、クワコ等が好適に用いられ、特に、カイコを用いることが好ましい。
【0040】
本明細書において、「カイコ」とは、カイコガ属カイコ(Bombyx mori)をいう。カイコは、実験用の品種であっても、実用商品化された実用品種であってもよい。また、「組換えカイコ」とは、遺伝子組換えにより外来遺伝子がカイコ染色体に導入され、形質転換されたカイコを示す。遺伝子組み換えは、例えば、トランスポゾンを用いる方法により行うが、外来遺伝子をカイコに導入できる方法であれば制限はなく、エレクトロポレーション等の他の方法によって遺伝子組み換えを行ってもよい。
【0041】
本明細書において、「絹糸」とは、カイコ(Bombyx mori)により吐糸される繊維であり、繭を構成し、フィブロインタンパク質を主成分とするものである。フィブロインタンパク質は、大小2つのサブユニット(H鎖及びL鎖)からなる。
【0042】
本明細書において、「オオジョロウグモ」とは、ジョロウグモ属オオジョロウグモ(Nephila pilipes)をいい、オオジョロウグモの産地は特に限定されない。
【0043】
また、本発明は、以下の(m)又は(n)のアミノ酸配列を有する、牽引糸タンパク質に関する。
(m)配列番号2又は20のアミノ酸配列
(n)上記(m)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
【0044】
上記アミノ酸配列(n)において、上記(m)のアミノ酸配列との配列同一性は90%以上であればよいが、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0045】
また、本発明は、以下の(o)又は(p)のアミノ酸配列を有する、牽引糸タンパク質に関する。
(o)以下の(o−1)又は(o−2)のアミノ酸配列を有し、配列番号2のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(o−1)配列番号4、6、8、10、12、14、16又は18のアミノ酸配列
(o−2)上記(o−1)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(p)以下の(p−1)又は(p−2)のアミノ酸配列を有し、配列番号20のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(p−1)配列番号22、24、26、28、30、32、34又は36のアミノ酸配列
(p−2)上記(p−1)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
【0046】
上記アミノ酸配列(o)において、配列番号2のアミノ酸配列との配列同一性は70%以上であればよいが、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、88%以上であることが特に好ましい。
【0047】
同様に上記アミノ酸配列(p)において、配列番号20のアミノ酸配列との配列同一性は70%以上であればよいが、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、88%以上であることが特に好ましい。
【0048】
また、上記アミノ酸配列(o−2)において、上記(o−1)のアミノ酸配列との配列同一性は90%以上であればよいが、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0049】
同様に、上記アミノ酸配列(p−2)において、上記(p−1)のアミノ酸配列との配列同一性は90%以上であればよいが、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0050】
さらに、本発明は、以下の一般式(1)で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。
[X1−X2−X3−(X4)m−(X5)m−(X6)m−X7−X8]n (1)
【0051】
上記一般式(1)で表されるアミノ酸配列は、[X1−X2−X3−(X4)m−(X5)m−(X6)m−X7−X8]で表される繰り返し単位をn個有する。繰り返し単位の数(n)は特に制限されないが、1〜10であることが好ましく、2〜9であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましく、特にn=8であることが好ましい。
【0052】
式(1)中、mはそれぞれ独立に0又は1の整数を示す。すなわち、繰り返し単位ごとに、X4、X5又はX6で表されるアミノ酸配列を有する場合と、有しない場合とがある。
【0053】
式(1)中、X1は配列番号37〜45のいずれかのアミノ酸配列を示し、X2は配列番号46〜52のいずれかのアミノ酸配列を示し、X3は配列番号53〜59のいずれかのアミノ酸配列を示し、X4は配列番号49のアミノ酸配列を示し、X5は配列番号60又は61のアミノ酸配列を示し、X6は配列番号62〜64のいずれかのアミノ酸配列を示し、X7は配列番号65〜70のいずれかのアミノ酸配列を示し、X8は配列番号71〜81のいずれかのアミノ酸配列を示す。
【0054】
また、本発明に係るタンパク質は、上記一般式(1)で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。上記配列同一性は、90%以上であればよいが、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0055】
図1は、オオジョロウグモのMaSpタンパク質の1種であるNP−牽引糸タンパク質AのcDNA配列を示す図である。図1に示す遺伝子配列は、配列番号1の塩基配列と同じである。
【0056】
図2は、図1に示す遺伝子配列(配列番号1の塩基配列)を有する核酸によりコードされるNP−牽引糸タンパク質Aのアミノ酸配列を示す図である。図2に示すアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列と同じである。
【0057】
また、図4は、オオジョロウグモのMaSpタンパク質のほかの1種であるNP−牽引糸タンパク質BのcDNA配列を示す図である。図4に示す遺伝子配列は、配列番号19の塩基配列と同じである。
【0058】
図5は、図4に示す遺伝子配列(配列番号19の塩基配列)を有する核酸によりコードされるNP−牽引糸タンパク質Bのアミノ酸配列を示す図である。図5に示すアミノ酸配列は、配列番号20のアミノ酸配列と同じである。
【0059】
図2又は図5に示すように、配列番号1又は19の塩基配列を有する核酸によりコードされる牽引糸タンパク質は、下記一般式(2)によって表されるアミノ酸配列からなる。
[(α)(V)(β)]q (2)
【0060】
上記一般式(2)で表されるアミノ酸配列は、[(α)(V)(β)]で表される繰り返し単位をq個有する。繰り返し単位の数(q)は特に制限されず、1〜100であればよいが、1〜10であることが好ましく、2〜9であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましく、特にq=8であることが好ましい。
【0061】
上記式(2)において、(α)は、2〜4個のGGXを連続的に有するグリシンリッチな配列からなり、非結晶性α−ヘリックス構造を形成する無定型領域を示す。(V)は、GX含有率の高い準結晶領域を示し、(β)は、アラニン又はトレオニンを豊富に含み、βプリーツシートを形成する結晶領域を示す。
【0062】
上記(α)及び(V)に含まれるXは、グルタミン、アラニン、セリン、ロイシン、プロリン、チロシン等である場合が多いが、これらに限定されず、ほかのアミノ酸であってもよい。また、Xは同一のアミノ酸である必要はない。
【0063】
以下、図2又は図5に示す牽引糸タンパク質が有する独特な分子構造と、それによって得られる牽引糸タンパク質の物性について説明する。
【0064】
まず、図2又は図5に示す牽引糸タンパク質の(α)領域(非結晶性無定型領域)においては、4個のGGXが連続して配列している。このような配列により、牽引糸はα−ヘリックス構造を形成する。α−ヘリックス構造は、通常、繊維中で曲がった状態で存在するが、引っ張られることによって繊維軸に沿って直鎖状構造に変わる。このように、外部からの応力に対してα−ヘリックス構造が大幅に伸展することにより、繊維に弾性が付与される。一方、従来公知のクモ牽引糸タンパク質(MaSp)には、4個のGGXが連続して配列する構造は見られない(非特許文献1、2等参照)。以上のことから、(α)領域において4個のGGXが連続して配列する独自構造を形成することによって、本発明によって得られる牽引糸タンパク質は、弾性(又は弾力性、伸縮性、伸度、柔軟性)が優れたものになると考えられる。
【0065】
なお、GGX繰り返しモチーフが糸に弾性を付与することは、以下の文献にも記載されている。
・Cheryl Y.Hayashi et al.,Evidence from Flagelliform Silk cDNA for the Structural Basis of Elasticity and Modular Nature of Spider Silks,1998,p.779
・Thomas Scheibel,Spider silks:recombinant synthesis,assembly,spinning,and engineering of synthetic proteins,2004,p.2
【0066】
また、図2又は図5に示す牽引糸タンパク質の(V)領域(準結晶領域)には、親水性アミノ酸が豊富に含まれている。表1に示すように、図2又は図5に示す牽引糸タンパク質は、従来公知の北米ジョロウグモ(Nephila clavipes)や日本産ジョロウグモ(Nephila clavata)と比べて親水性アミノ酸を多く含む。これにより、本発明によって得られる牽引糸タンパク質は、吸湿性が高いものになると考えられる。また、牽引糸タンパク質の結晶化度が低いことも、吸湿性を増加させる要因になっていると考えられる。
【0067】
さらに、図2又は図5に示す牽引糸タンパク質の(β)領域(結晶領域)には、ポリアラニンの合間に、トレオニン、アスパラギンなどの極性アミノ酸が含まれている。本発明によって得られる牽引糸タンパク質は、このように極性アミノ酸が豊富なポリアラニン(Poly(A))モチーフを有することによって、優れた強靭性を有するものになると考えられる。
【0068】
なお、極性アミノ酸が豊富なポリアラニン(Poly(A))モチーフが糸に強靭性を付与することは、以下の文献にも記載されている。
・Glareh Askarieh et al.,Self−assembly of spider silk proteins is controlled by a pH−sensitive relay,2010,vol.465,p.1
・J.M.GOSLINE,et al.,THE MECHANICAL DESIGN OF SPIDER SILKS:FROM FIBROIN SEQUENCE TO MECHANICAL FUNCTION,1999,p.3299
【0069】
また、表1に示すように、図2又は図5に示す牽引糸タンパク質は、従来公知の北米ジョロウグモ(Nephila clavipes)や日本産ジョロウグモ(Nephila clavata)に対して、約2倍の極性アミノ酸を含む。このように分子内に大量に存在する極性アミノ酸残基は、外部からの応力に対して、分子を応力の方向に沿って規則的に配列し、分子間の作用力を大きくすることによって、牽引糸を優れた強度を有するものとする。特に、分子間の水素結合が、糸繊維の強度増加に役立っていると考えられる。
【0070】
表1に、オオジョロウグモ(Nephila pilipes)、北米ジョロウグモ(Nephila clavipes)、日本産ジョロウグモ(Nephila clavata)のMaSpタンパク質における極性アミノ酸及び親水性アミノ酸の含有率(%)を示す。なお、極性アミノ酸の含有率は、N(Asn)、C(Cys)、Q(Gln)、S(Ser)、T(Thr)及びY(Tyr)の含有率を示し、親水性アミノ酸の含有率は、R(Arg)、N(Asn)、D(Asp)、Q(Gln)、E(Glu)、H(His)、K(Lys)、S(Ser)及びT(Thr)の含有率を示す。
【0071】
【表1】

【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
供試動物としては、7月に採集したオオジョロウグモ(Nephila pilipes)の雌成虫を用いた。
【0074】
(RNA抽出)
Total RNAは、オオジョロウグモ(Nephila pilipes)の大瓶状腺から準備した。生理食塩水(NaCl 0.75%)中でクモの大瓶状腺を解剖し、1mlのTRIZOLを添加し、よく砕いた。懸濁液は200μlのクロロホルムで分離し除去した。水層を別のチューブに移し、同量のイソプロパノールを加えRNAを沈殿させた。沈殿物を75%エタノールでリンスし、−80℃で保存した。その後、7500rpm、4℃にて5分間遠心分離し、8分間真空乾燥したのち、RNase−free waterに溶解した。55℃で10分間RNAを溶解した後、サンプルとして使用した。サンプルをアガロース電気泳動することにより、RNAが抽出できたことを確認した。
【0075】
(cDNAライブラリーの構築)
G−キャッピング法による大瓶状腺のcDNAライブラリーの合成と構築は、タカラバイオ株式会社に委託した。ライブラリーベクター(pDNR−LIB)は約50μlのTEに溶解した。
【0076】
(クローニングとシークエンス)
高い確率で形質転換を行うため、エレクトロポレーション法を用いた。DNA溶液としては、準備されたcDNAライブラリー溶液を用い、コンピテントセルとしては、Invitrogen社製「Electro MAXTM DH12STM Cells」(Cat.No.18312−017)を用い、キュベットとしては0.1cmサイズのものを用いた。
【0077】
まず、キュベットを予め氷上で冷やしておき、コンピテントセル(>1010cfu/μg)50μlを氷上で融かした後、1μlのcDNAライブラリー溶液をチューブに添加した。この混合液をキュベットの底に一様になるように移した。エレクロポレーションの条件は、電圧2.5kV、パルスコントローラー(R2−7)200Ω、キャパシタンス25μFとした。パルスを一回かけ、可能な限り素早く1mlのSOC培地(2% Bacto tryptone,0.5% Bacto yeast extract,10mM NaCl,2.5mM KCl,10mM MgCl,10mM MgS0,20mM グルコース)をキュベット内に加え、溶液を懸濁した。懸濁液を培養チューブに移し1時間から1時間半培養後、抗生物質(アンピシリン)、IPTG及びX−Galを含むLBプレート(1% Bacto tryptone,0.5% Bacto yeast extraxt,0.5% NaCl)にまいた。プレートにできた白色コロニーをLB(+アンピシリン)培地に植菌させ、588個の組換えプラスミドをランダムに選択し、FlexiPrepTMKit(アマシャム社製)を用いて精製した。
【0078】
(シークエンスと配列の比較解析)
インサートの配列は、「ABI Prism genetic analyzer 3100」(ライフテクノロジーズジャパン(株)製)とT7primerを使用しシークエンスした。DNAとアミノ酸配列のコンピューター分析は、「Genetyx package」((株)ゼネティック製)と「Sequencher 4.14」(Demo version)(Gene Codes社製)を用いて行った。配列の比較はタンパク質のデータベースに対してExPASy Proteomics server(http;/ www.expasy.org)のSIB BLAST Network Serviceにより相同性分析を行った。
【0079】
(糸腺特異的発現を証明する実験)
MaSp(major ampullate spidroin)は名前の通り、大瓶状腺で発現するとされている。本発明の遺伝子が大瓶状腺で働いていることを証明するため、cDNA配列の3’末端(アミノ酸配列のC末端)配列を用いてプローブを作成し、クモの四種類糸腺(鞭状腺、管状腺、大瓶状腺、小瓶状腺)から抽出したRNAとノーザンハイブリダイゼーション実験を行った。図3は、ノーザンハイブリダイゼーションの結果を示す図である。図3のレーン1〜4には、順に、鞭状腺、管状腺、大瓶状腺、小瓶状腺から抽出したRNAを流した。この結果より、本発明の遺伝子(核酸)は、オオジョロウグモの大瓶状腺で特異的に発現していることが分かった。また、転写物質の分子量は約3〜4kbであると推測される。
【0080】
(牽引糸の物性評価)
オオジョロウグモの牽引糸と、従来公知のクモの牽引糸の物性を比較するため、それぞれの伸度(弾性率)を測定した。伸度の測定は、測定前日から、20℃、RH65%で24時間放置し、吸湿量をバランス状態にした20mmの各牽引糸をサンプルとして、20℃、RH65%で引張り速度20mm/minの条件のもと、引張試験機「Tensilon UTM−III−100」(Toyo Baldwin社製)を用いた伸度試験により行った。従来公知のクモとしては、日本産ジョロウグモ(Nephila clavata)及びナガコガネグモ(Argiope bruennichi)を用いた。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示されるように、オオジョロウグモの牽引糸は、従来公知のクモの牽引糸と比べて、優れた弾性を有することが明らかとなった。すなわち、本発明の核酸が、優れた弾性を有する牽引糸タンパク質をコードするものであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明により提供される牽引糸タンパク質は、弾性等の物性に優れる天然繊維であるため、医療、航空、衣料等の様々な産業分野における新素材として、好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(d)のいずれかの核酸。
(a)配列番号1又は19の塩基配列を有する核酸
(b)配列番号2又は20のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(c)前記(a)の核酸と90%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸
(d)前記(a)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、牽引糸タンパク質をコードする核酸
【請求項2】
以下の(e)〜(h)のいずれかの核酸を含み、配列番号1の塩基配列を有する核酸と70%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸。
(e)配列番号3、5、7、9、11、13、15又は17の塩基配列を有する核酸
(f)配列番号4、6、8、10、12、14、16又は18のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(g)前記(e)の核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸
(h)前記(e)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
【請求項3】
配列番号1の塩基配列を有する核酸と80%以上の配列同一性を有する、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
以下の(i)〜(l)のいずれかの核酸を含み、配列番号19の塩基配列を有する核酸と70%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸。
(i)配列番号21、23、25、27、29、31、33又は35の塩基配列を有する核酸
(j)配列番号22、24、26、28、30、32、34又は36のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(k)前記(i)の核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸
(l)前記(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
【請求項5】
配列番号19の塩基配列を有する核酸と80%以上の配列同一性を有する、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸によりコードされるタンパク質。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸が導入された組換え生物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸が導入された組換えカイコ。
【請求項9】
請求項7に記載の組換え生物により作られるタンパク質。
【請求項10】
請求項8に記載の組換えカイコにより作られる絹糸。
【請求項11】
以下の(m)又は(n)のアミノ酸配列を有する、牽引糸タンパク質。
(m)配列番号2又は20のアミノ酸配列
(n)前記(m)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
【請求項12】
以下の(o)又は(p)のアミノ酸配列を有する、牽引糸タンパク質。
(o)以下の(o−1)又は(o−2)のアミノ酸配列を有し、配列番号2のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(o−1)配列番号4、6、8、10、12、14、16又は18のアミノ酸配列
(o−2)前記(o−1)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(p)以下の(p−1)又は(p−2)のアミノ酸配列を有し、配列番号20のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
(p−1)配列番号22、24、26、28、30、32、34又は36のアミノ酸配列
(p−2)前記(p−1)のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
【請求項13】
前記(o)のアミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、前記(p)のアミノ酸配列が、配列番号20のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有する、請求項12に記載の牽引糸タンパク質。
【請求項14】
以下の一般式(1)で表されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質。
[X1−X2−X3−(X4)m−(X5)m−(X6)m−X7−X8]n (1)
(式中、mはそれぞれ独立に0又は1の整数を示し、nは1〜10の整数を示し、X1は配列番号37〜45のいずれかのアミノ酸配列を示し、X2は配列番号46〜52のいずれかのアミノ酸配列を示し、X3は配列番号53〜59のいずれかのアミノ酸配列を示し、X4は配列番号49のアミノ酸配列を示し、X5は配列番号60又は61のアミノ酸配列を示し、X6は配列番号62〜64のいずれかのアミノ酸配列を示し、X7は配列番号65〜70のいずれかのアミノ酸配列を示し、X8は配列番号71〜81のいずれかのアミノ酸配列を示す。)

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55269(P2012−55269A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203556(P2010−203556)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(592154411)岡本株式会社 (29)
【Fターム(参考)】