説明

核酸の捕獲及び増幅用充填層

核酸が付着する充填層に核酸を含んでいる可能性のある試料を導入する工程、充填層に増幅用混合物を導入する工程、及びPCR増幅を行うため、充填層と核酸とを、変性温度とアニーリング温度との間で熱循環させる工程を有する、核酸の捕獲及び増幅用システム。一の実施例は、DNA捕獲及び増幅用装置を供する。当該装置は、空洞を有する管類又は筐体、空洞内に存在する充填層、及び管類又は筐体と動作可能な状態で接続するヒーターを有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の捕獲及び増幅に関し、より具体的には核酸を捕獲及び増幅するための充填層に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献2は、以下の技術情報を提供する。“プライマー、ヌクレオチド3リン酸塩、及びDNAポリメラーゼのような重合剤を用いて、1以上の特定核酸配列又はその混合物を増幅する方法が考え出された。この方法は、Science誌、第230巻、1530-1534頁(1985年)で説明されている。一のプライマーが他のプライマーと混合するときの伸張生成物(extension product)は、所望の特定核酸配列を生成するためのテンプレートとなり、逆についても同様である。そのプロセスは、所望量の配列を生成するのに必要な回数だけ繰り返される。その方法は、前記のScience誌において、ポリメラーゼ連鎖反応すなわち’PCR’と呼ばれている。”
【0003】
特許文献3は、以下の技術情報を提供する。“従来、科学者はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて画定された配列のDNAを合成してきた。これは一般的に、増幅されるDNA(テンプレートDNA)を分離する工程、短い相補的DNA配列をテンプレートDNAへアニーリングする工程、及び最後にテンプレートDNAをコピーするため、デオキシドヌクレオチドをプライマー鎖に加える工程、の3の工程を有する。これは大抵の場合、3の異なる温度からなる周期が約25-35回繰り返される熱サイクル装置内で実行される。テンプレートDNAの分離及び合成工程は、明確な温度で行われる。”
【0004】
特許文献4は、以下の技術情報を提供する。“PCR技術の利用は現在、基礎研究から、多数の同様な増幅が通常に行われるような用途へ移っている。これらの領域には、診断に関する研究、生物医薬品開発、遺伝子解析、及び環境試験が含まれる。これらの分野での利用者は、高処理能力、迅速な転換時間、及び再現可能な結果を利用者に供する高性能PCRシステムからの利益を享受する。これらの分野での利用者は、試料間での再現性、処理間での再現性、実験室間での再現性、及び装置間での再現性を保証しなければならない。”
【0005】
特許文献5は、以下の技術情報を提供する。“PCRは、特定DNA配列の酵素による合成を生体外で行う方法で、反対同士の鎖を混成し、かつターゲットDNA中の関心領域の側面に位置する2のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる方法は、特許文献6及び特許文献7で説明されている。……PCRを用いることの一の不利益は、たとえば色素化合物、タンパク質、糖及び未確認の化合物のような不純物が反応を抑制することである。従って、このような反応の抑制を解決するには、PCRによる増幅が行われる前に、材料から細胞を分離した後にその細胞からDNAを抽出することが必要である。細胞溶解は、酵素、浄化剤、又はカオトロピック剤によって実現可能である。また従来、溶解に続いて、細胞溶解物から核酸を抽出する工程は、フェノール又はフェノール-クロロホルム混合物を用いる工程を有する。DNAを精製する最近の方法は、イオン交換樹脂、ガラスフィルタ若しくはビーズ、又はタンパク質の凝集剤を用いて不純物を除去する工程を有する。”
【0006】
特許文献8では、“核酸を含む開始材料から核酸を分離する方法であって、開始材料、カオトロピック物質、及び核酸が結合する固相を混合する工程、液体から核酸が結合する固相を分離する工程、並びに、固相の核酸複合体を洗浄する工程、を有する方法”が供された。
【特許文献1】米国特許出願第60/673233号明細書
【特許文献2】米国特許第5656493号明細書
【特許文献3】米国特許第6372486号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0072112号明細書
【特許文献5】米国特許第5935825号明細書
【特許文献6】米国特許第4683195号明細書
【特許文献7】米国特許第4683202号明細書
【特許文献8】米国特許第5234809号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0072334号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
増幅されるDNAは大抵の場合PCR増幅に必要な酵素を抑制する不純物を含むので、多くのPCR反応は、洗浄工程を必要とするものと推測される。これは典型的には、2ステッププロセスを用いて実行される。その2ステッププロセスでは、核酸を含む試料は、核酸をシリコンに付着させる化学物質が存在する中で、シリコン又はアルミニウムの酸化物を含む充填層を通り抜け、それに続いてDNAが付着したまま、シリコンが洗浄されて不純物が除去される(たとえば特許文献8参照のこと)。最後に、核酸は異なる化学物質を用いることによって溶離され、かつ増幅される。従来技術のシステムには少なくとも3の問題が存在する。それは、(1)固相に付着した核酸の洗浄プロセスでの損失、(2)プロセスのコスト、及び(3)プロセスが生じる速度、である。洗浄プロセスでの核酸の損失は50%にも到達する恐れがある。本発明は、従来技術に係るシステムの問題のうちの1以上を解決又は緩和する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴及び利点は、以下の説明から明らかになる。出願人は、本発明が広く表されるように、図及び特定実施例を含む本明細書を供する。本明細書及び本発明の実施により、本発明の技術的思想及び技術的範囲内で様々な変化型及び修正型は当業者には明らかとなる。本発明の技術的範囲は開示された特定実施形態に限定されると解されてはならない。本発明は、「特許請求の範囲」に記載された請求項によって定義される本発明の技術的思想及び技術的範囲内にある全ての修正型、均等型、及び変化型を網羅する。
【0009】
本発明は、核酸を捕獲及び増幅するシステムを供する。当該システムは、核酸が付着する充填層に核酸を含んでいる可能性のある試料を導入する工程、充填層に増幅用混合物を導入する工程、及びPCR増幅を行うため、充填層と核酸とを、変性温度とアニーリング温度との間で熱循環させる工程を有する。一の実施例では、本発明は、DNA捕獲及び増幅用装置を供する。当該装置は、空洞を有する管類又は筐体、空洞内に存在する層媒体、及び管類又は筐体と動作可能な状態で接続するヒーターを有する。
【0010】
増幅されるDNAは大抵の場合PCR増幅に必要な酵素を抑制する不純物を含むので、多くのPCR反応は、洗浄工程を必要とするものと推測される。これは典型的には、2ステッププロセスを用いて実行される。その2ステッププロセスでは、核酸を含む試料は、核酸をシリコンに付着させる化学物質が存在する中で、シリコン又はアルミニウムの酸化物を含む層を通り抜け、それに続いてDNAが付着したまま、シリコンが洗浄されて不純物が除去される(たとえば特許文献8参照のこと)。最後に、核酸は異なる化学物質を用いることによって溶離され、かつ増幅される。従来技術のシステムには少なくとも3の問題が存在する。それは、(1)固相に付着した核酸の洗浄プロセスでの損失、(2)プロセスのコスト、及び(3)プロセスが生じる速度、である。洗浄プロセスでの核酸の損失は50%にも到達する恐れがある。本発明は、従来技術に係るシステムの問題のうちの1以上を解決又は緩和する。
【0011】
ビーズに付着した状態で核酸を増幅させることにより、桁でアッセイの検出限界を改善させることが可能であることが発見された。複製される試料数が少ない場合では、充填層を介して処理され、かつビーズ上で増幅されるときに、反応が成功する確率は劇的に増大する。水溶液中の核酸について、濃縮後に核酸を溶離するキットと充填層との比較が行われた。全PCR反応が陽性となる検出限界は、市販のキットでは100pgである。これは、充填層を用いることによって桁で改善される。これらの検出限界を下回ると、PCR反応が成功する確率は減少する。たとえば充填層は、10fgの入力核酸の複製8個のうち5個を検出した。その一方で、固相からのDNA溶離に基づくキットは、この程度の核酸量では陽性の反応を検出しなかった。
【0012】
核酸を捕獲及び増幅するシステムを供する本発明の利用には、病理学、科学捜査、細菌戦争に用いられる物質の検出、バイオテロに用いられる物質の検出、感染症の診断、遺伝子試験、環境試験、環境モニタリング、ポイントオブケア診断、迅速なシーケンシング、領域内での細菌戦争/バイオテロに用いられる物質の検出、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAハイブリダイゼーション試験、等温反応、核酸配列に基づく増幅、ローリングサークル増幅、イムノアッセイの培養、及び他の用途が含まれる。核酸を捕獲及び増幅する本発明のシステムは自動バイオモニタリング装置で用いられるように設計され、かつバイオブリーフケース(Biobriefcase)のバイオモニタリング装置用に特別に開発された。
【0013】
本発明の実施は、修正型及び代替実施形態によっても可能である。特定実施例は例示である。本発明は開示されている特定実施例に限定されるものと解されてはならないことに留意して欲しい。本発明は、「特許請求の範囲」に記載された請求項によって定義される本発明の技術的思想及び技術的範囲内にある全ての修正型、均等型、及び変化型を網羅する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
組み込まれることで本明細書の一部を構成する図は、上述した本発明の一般的な説明と共に本発明の特定実施例を図示している。特定実施例の詳細な説明は本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0015】
図、以降の詳細な説明、及びこれらに含まれる構成要素を参照することで、特定実施例の説明を含む本発明に関する詳細な情報が供される。
【0016】
ここで図1Aを参照すると、本発明の実施例に従って構築された、DNAを捕獲及び増幅する充填層に係るプロセスの一の実施例が図示されている。DNAの増幅は、自動貫流システム中のビーズ上で直接完了する。そのプロセスが、図1Aで簡単に説明され、かつまとめられている。図1Aに図示されている一般的工程は、順次説明されている様々な明示的工程を介して行われる。DNAを捕獲及び増幅する充填層に係るプロセスの一の実施例は以下の工程1、工程2、工程3、工程4、及び工程5を有する。
【0017】
工程1では、カオトロピック塩/結合剤が存在する充填層に汚染された試料が導入される。DNAは充填層マトリックスに結合する。
【0018】
工程2では、汚染物が除去される。
【0019】
工程3では、増幅用混合物がビーズに導入され、かつ熱的に循環される。
【0020】
工程4では、増幅マーカーが検出用に放流される。
【0021】
工程5では、増幅されたDNAは充填層マトリックスから溶離される。
【0022】
ここで図2を参照すると、本発明に従って構築されたDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の実施例が図示されている。当該装置は、概して参照番号10で指定される。DNAを捕獲及び増幅する装置10の充填層は、生体親和性を有する管類又は外部筐体11を利用する。管類又は外部筐体11は、ビーズの形態を有する層媒体13で充填される。
【0023】
フリット又はスクリーン12及び14は、ビーズ13を所定位置に保持するのに用いられる。フリット又はスクリーン12及び14は、以下の材料に限定されるわけではないが、ステンレス鋼、プラスチック、他のフリットのような材料で構築される。フリット又はスクリーン12及び14は、充填層内で維持されなければならないビーズ13の大きさ、及び最初に導入される汚染物の大きさに依存する。より大きなフリットを用いる結果、装置の詰まりは小さくなる。フリット12及びフリット14は、管類11に挿入され、かつ所定位置に固着される。フリット又はスクリーン12及び14は、管類又は外部筐体11内にビーズ13を含む。
【0024】
ここで図1Bを参照すると、図1Aの充填層媒体上でDNA捕獲及び増幅を実行するプロセスフローが図示されている。そのプロセスを図示した図には、図2に図示されている装置10の構造上の構成要素が含まれている。図1Bは、以下の工程1、工程2、工程3、工程4、及び工程5、並びに構造を有する。
【0025】
工程1では、カオトロピック塩/結合剤が存在する充填層13に汚染された試料9が導入される。充填層13は管類11内に保持されている。
【0026】
さらに工程1が続き、DNAが充填層マトリックスに結合する。
【0027】
工程2では、洗浄溶液15を用いることによって汚染物が除去される。
【0028】
工程3では、増幅用混合物16がビーズに導入され、かつ熱的に循環される。
【0029】
工程4では、増幅マーカー17が検出用に放流される。
【0030】
工程5では、増幅されたDNAは充填層マトリックスから溶離される。
【0031】
本発明に従って構築されたDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の構造が、図1A、図1B、及び図2で説明及び図示されている。DNA捕獲及び増幅システム11用の充填層の製法について説明する。適切な管類11が選ばれる。管類又は外部筐体11は、以下の材料に限定されるわけではないがポリプロピレン、PFA、FEP等のような材料で構築される。充填媒体と組み合わせられる管類11の内径は、増幅及び分析される容積を決定する。
【0032】
適切な層媒体13が選ばれる。層媒体13は、以下の材料に限定されるわけではないがシリカビーズ、又は均一及び不均一な形状のグラスウールのような材料を有する。層媒体13の大きさは、管類の大きさに依存して変化することで、最適化された再現可能な充填層をつくる。
【0033】
管類11及び層媒体13の選択後、第1フリット12が、両側から押しつけられるようにして所定位置に設けられている。層媒体13は管類11の内部に設けられる。充填層媒体を管類に入れる一の方法は、エタノール(又は他の溶媒)中のビーズ13のスラリーを管類11に流し込む方法である。続いて溶媒が蒸発して、第2フリット14が挿入されて、固着される。所定位置に固着された層媒体13を有する管類11は、熱循環器内で実際に核酸を捕獲及び増幅するための充填層となるものを供する。熱循環器は、たとえば特許文献4のような従来技術により既知である。
【0034】
DNA捕獲及び増幅システム10用の充填層は、層媒体13で充填される管類又は外部筐体11を利用する。DNA捕獲及び増幅システム10用の充填層の動作方法は、図1A及び図1Bで特定される一連の工程である、工程1、工程2、工程3、工程4、及び工程5を有する。
【0035】
工程1では、カオトロピック塩/結合剤が存在する充填層に汚染された試料が導入される。核酸は充填層マトリックスに結合する。
【0036】
工程2では、汚染物が除去される。
【0037】
工程3では、増幅用混合物が充填層/熱チャンバに導入される。その場で生成物を増幅することによって、DNAの初期量が増大する。その一方で、増幅前に溶離される場合には、一部η’Χ(Χはシステムに導入されたDNA量で、は溶離効率で、過去の実験に基づいて1未満である)が存在する。その場増幅は、DNAの量がΧ(η’Χよりも大きい)で開始される。充填層は、熱循環器中で密閉されている。PCR増幅にとっては、変性温度とアニーリング温度との間での熱循環が必要である。2ステップPCR反応にとっては、これらの温度は、94℃及び55℃である。所定位置に固着された層媒体13を有する管類11は、実際にDNAの捕獲及び増幅を行う熱循環器用の充填層となるものを供する。DNAの捕獲及び増幅を行う熱循環器10用の充填層は、たとえば特許文献9で説明及び図示されているような方法を用いることによって熱循環される。
【0038】
工程4では、増幅マーカーが検出用に放流される。たとえばe-tag又はtaqman(登録商標)プローブが、増幅中に放流される。
【0039】
工程5では、増幅されたDNAが溶離される。流れの方向を変化させることによって、充填層の詰まりが最小限に抑えられる。
【実施例1】
【0040】
ここで図4を参照すると、本発明に従って構築された、DNAの捕獲及び増幅システムに係る充填層の他の実施例が図示されている。
【0041】
核酸を捕獲及び増幅するシステム10の利用は、病理学、科学捜査、細菌戦争に用いられる物質の検出、バイオテロに用いられる物質の検出、感染症の診断、遺伝子試験、環境試験、環境モニタリング、ポイントオブケア診断、迅速なシーケンシング、領域内での細菌戦争/バイオテロに用いられる物質の検出、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAハイブリダイゼーション試験、等温反応、核酸配列に基づく増幅、ローリングサークル増幅、イムノアッセイの培養、及び他の用途を含む。核酸を捕獲及び増幅する本発明のシステムは自動バイオモニタリング装置で用いられるように設計され、かつバイオブリーフケース(Biobriefcase)のバイオモニタリング装置用に特別に開発された。
【0042】
DNA捕獲及び増幅システム10には他に多くの用途がある。その一は、警察の犯罪研究室での試料調製である。性的暴力の試料を分析することは困難でかつ時間のかかる処理である。科学捜査試料は一般的に、犯人からの精子細胞及び被害者からの上皮細胞を含む。正確な分析を行うには、DNA分析の前に2種類の細胞を分離することが必要である。精子細胞についてのDNA分析が行われることで、犯人の身元が特定される。これを行う現在の技術は十分機能しているが、熟練した実験技術とかなりの時間が必要となる。この目的を実現する自動化された装置は、時間と費用を大きく節約する。他の用途は、動物救護施設で行われるPCRバクテリア試験のような、汚染試料を貫流させて行う分析である。有害バクテリアの存在又は不存在を調べるため、糞便が分析される。現在では、係る試験には1試料につき100ドル近くかかるだろう。DNA捕獲及び増幅システム10は、洗浄及び増幅処理を自動化することによって、コストを桁で減少させることが期待される。
【0043】
試料が自動化された方法で精製及び濃縮される必要のある、核酸の複製数が少ない用途は、この方法を用いて充填層内部で核酸を捕獲及び増幅することによる利点を享受する。
【0044】
ここで図3を参照すると、本発明に従って構築されたDNA捕獲用充填層の他の実施例の構造が説明されている。それに加えて、DNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の製法並びにDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の動作方法についても説明されている。この実施例は、概して参照番号30で指定される。DNA捕獲及び増幅システム30の充填層は、生体親和性を有する管類又は外部筐体31を利用する。管類又は外部筐体31は、層媒体34で充填される。層媒体34は、以下に限定されるわけではないが、シリカビーズのような材料を有し、その形状は規則的な形状であって良いし、不規則な形状を有しても良い。フリット又はスクリーン32A及び32Bは、層媒体34を所定位置に保持するのに用いられる。
【0045】
加熱部33は管類31の周囲に設けられている。加熱部33は精密レジスタを有する。加熱部33はDNA捕獲及び増幅システム30用の充填層への加熱を供する。温度制御はセンサ及び制御素子によって供される。センサ及び制御素子は、温度制御及び物理特性の変化を感知することによるセンシングを供する。様々な種類のセンサ及び制御素子が入手可能である。たとえば熱電対、抵抗温度素子(RTD及びサーミスタ)、赤外放射体、バイメタル素子、液体膨張素子、及び状態変化素子が入手可能である。センサ及び制御素子は、オメガエンジニアリング(Omega Engineering Inc.)社から市販されている。
【0046】
所定位置に固着されている層媒体34を有する管類31及び加熱部33は、実際にDNAを捕獲及び増幅する熱循環器に係る充填層となるものを供する。熱循環器は、たとえば特許文献4のような従来技術から既知である。
【0047】
DNA捕獲及び増幅システム30に係る充填層の構造が説明され、かつ図示された。ここでDNA捕獲及び増幅システム30に係る充填層の動作について説明する。DNA捕獲及び増幅システム30に係る充填層は、加熱ユニット33によって囲まれ、かつ層媒体34で充填される管類又は外部筐体31を利用する。図4A及び図4Bに図示されているように、DNA捕獲及び増幅システム30に係る充填層の動作方法は、図4A及び図4Bで特定される一連の工程である、工程1、工程2、工程3、工程4、及び工程5を有する。
【0048】
工程1では、カオトロピック塩/結合剤が存在する充填層に汚染された試料が導入される。DNAは充填層マトリックスに結合する。
【0049】
工程2では、汚染物が除去される。
【0050】
工程3では、PCR混合物が充填層/熱チャンバに導入される。その場で生成物を増幅することによって、DNAの初期量が増大する。その一方で、増幅前に溶離される場合には、一部η’Χ(Χはシステムに導入されたDNA量で、は溶離効率で、過去の実験に基づいて1未満である)が存在する。その場増幅は、DNAの量がΧ(η’Χよりも大きい)で開始される。充填層は、熱循環器中で密閉されている。PCR増幅にとっては、変性温度とアニーリング温度との間での熱循環が必要である。これらの温度は、94℃及び55℃である。所定位置に固着された層媒体34及び加熱ユニット33を有する管類31は、実際にDNAの捕獲及び増幅を行う熱循環器用の充填層となるものを供する。DNAの捕獲及び増幅を行う熱循環器10用の充填層は、たとえば特許文献9で説明及び図示されているような方法を用いることによって熱循環される。
【0051】
工程4では、増幅マーカーが検出用に放流される。たとえばe-tagが、増幅中に放流される。
【0052】
工程5では、増幅されたDNAが溶離される。流れの方向を変化させることによって、充填層の詰まりが最小限に抑えられる。
【0053】
図2に図示されたシステム10はバイオブリーフケースプロジェクトのために特別に設計された。そのシステム10は、特許文献9で報告されているものと同様の貫流熱循環器を利用する。しかしこれが利用不可能である場合でも、ベンチのような長い構造の熱循環器内においてビーズ上でDNAを増幅することは、DNA複製数が少ないような用途の多くでは、依然としてかなり有利である。図5、図6及び図7はこのシステムを図示している。
【実施例2】
【0054】
図5、図6及び図7を参照すると、DNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の構造及びDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の製法が、説明及び図示されている。当該システムは、概して参照番号50で指定される。また標準的な長い構造の装置と一緒になったDNA捕獲及び増幅システム50に係る充填層の動作方法についても説明する。
【0055】
DNA捕獲及び増幅システム50に係る充填層は、ビーズ52の形態である層媒体で充填された管類又は外部筐体51を利用する。フリット又はスクリーン53は、ビーズ52を所定位置に保持するのに用いられる。DNA捕獲及び増幅システム50に係る充填層の動作方法は、図5、図6及び図7で特定された一連の工程である、工程1、工程2、工程3、工程4、工程5、及び工程6を有する。
【0056】
工程1では、カオトロピック塩/結合剤が存在する充填層に汚染された試料が導入される。DNAは充填層マトリックスに結合する。
【0057】
工程2では、汚染物が除去される。
【0058】
工程3では、DNAが付着するビーズは、エタノール又は他の液体が存在する充填層の外へ流れ出る。粒子状物質が多く含まれる汚染試料については、システムをバックフラッシュさせるのに2のフリットが依然として必要となる。それによりフリットの詰まりは除去される。清浄試料については、下流側のフリットのみが用いられる必要がある。2のフリットが用いられる場合には、ビーズを取得する前に、1のフリットが除去される必要がある。この一例は、ビーズが充填層の外へ流れ出る前に、単純に覆い/管類11を切断する方法である。
【0059】
工程4では、ビーズ52は標準的なPCR管54に回収される。充填層からビーズを除去するのに用いられる溶媒55は蒸発する。これは図6に図示されている。
【0060】
工程5では、増幅用混合物56がビーズ52に加えられる。これは図7に図示されている。
【0061】
工程6では、ビーズ、DNA及び増幅用混合物を含む管が、増幅及び検出用の標準的な長い構造である熱循環器内に設けられる。
【0062】
核酸の捕獲及び増幅システムは、DNA及びRNA含有試料に適用されて良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1A】充填層媒体上でのDNA捕獲及び増幅のプロセスフローを図示している。
【図1B】構造上の構成要素が加えられた、図1Aに図示された充填層媒体上でのDNA捕獲及び増幅のプロセスフローを図示している。
【図2】本発明に従って構築されたDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の一の実施例を図示している。
【図3】本発明に従って構築されたDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の他の実施例を図示している。
【図4A】充填層媒体上でのDNA捕獲及び増幅のプロセスフローの他の実施例を図示している。
【図4B】構造上の構成要素が加えられた、図1Aに図示された充填層媒体上でのDNA捕獲及び増幅のプロセスフローの他の実施例を図示している。
【図5】本発明に従って構築されたDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の別な実施例を図示している。
【図6】本発明に従って構築されたDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の別な実施例を図示している。
【図7】本発明に従って構築されたDNA捕獲及び増幅システムに係る充填層の別な実施例を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の捕獲及び増幅方法であって:
前記核酸が付着する充填層に前記核酸を含んでいる可能性のある試料を導入する工程;
前記充填層に増幅用混合物を導入する工程;及び
ポリメラーゼ連鎖反応の増幅を行うため、前記充填層と前記核酸とを、変性温度とアニーリング温度との間で熱循環させる工程;
を有する方法。
【請求項2】
前記の試料を導入する工程が、カオトロピック塩結合剤が存在する前記充填層へ前記試料を導入する工程を有する、請求項1に記載の核酸の捕獲及び増幅方法。
【請求項3】
ポリメラーゼ連鎖反応の増幅を行うため、前記充填層と前記核酸とを、変性温度、アニーリング温度、及び伸張温度の間で熱循環させる前記工程が、前記充填層と前記核酸とを、94℃、55℃及び72℃の間で循環させる工程を有する、請求項1に記載の核酸の捕獲及び増幅方法。
【請求項4】
前記試料及び前記充填層の洗浄工程を有する、請求項1に記載の核酸の捕獲及び増幅方法。
【請求項5】
増幅用マーカーを前記充填層へ放流する工程を有する、請求項1に記載の核酸の捕獲及び増幅方法。
【請求項6】
e-tagを前記充填層へ放流する工程を有する、請求項1に記載の核酸の捕獲及び増幅方法。
【請求項7】
DNAの捕獲及び増幅方法であって:
層媒体を管類又は筐体に充填して充填層を形成する工程;
DNAが付着する前記充填層に前記DNAを含んでいる可能性のある試料を導入する工程;
前記充填層にPCR用混合物を導入する工程;及び
PCR増幅を行うため、前記充填層と前記DNAとを、変性温度とアニーリング温度との間で熱循環させる工程;
を有する方法。
【請求項8】
前記の試料を導入する工程が、カオトロピック塩結合剤が存在する前記充填層へ前記試料を導入する工程を有する、請求項7に記載のDNAの捕獲及び増幅方法。
【請求項9】
PCR増幅を行うため、前記充填層と前記DNAとを、変性温度とアニーリング温度との間で熱循環させる前記工程が、前記充填層と前記DNAとを、94℃と55℃との間で循環させる工程を有する、請求項7に記載のDNAの捕獲及び増幅方法。
【請求項10】
増幅用マーカーを前記充填層へ放流する工程を有する、請求項7に記載のDNAの捕獲及び増幅方法。
【請求項11】
空洞を有する管類又は筐体;
前記空洞内に存在する層媒体;及び
前記管類又は筐体と動作可能な状態で接続するヒーター;
を有する、DNAの捕獲及び増幅システムに係る充填層。
【請求項12】
前記層媒体がビーズを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項13】
前記層媒体が規則的な形状を有するシリカビーズを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項14】
前記層媒体が不規則な形状を有するシリカビーズを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項15】
前記層媒体が、規則的な形状を有するシリカビーズ及び不規則な形状を有するシリカビーズを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項16】
前記管類又は筐体内で前記層媒体を保持するためのフリットを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項17】
前記管類又は筐体内で前記層媒体を保持するためのスクリーンを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項18】
前記ヒーターがレジスタを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項19】
前記ヒーターが精密レジスタを有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。
【請求項20】
前記ヒーターが精密レジスタ及び制御素子を有する、請求項11に記載のDNAの捕獲及び増幅装置に係る充填層。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−536514(P2008−536514A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507727(P2008−507727)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/013889
【国際公開番号】WO2006/113359
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507336318)ザ リージェンツ オブ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (1)
【Fターム(参考)】