説明

核酸の発現のための組成物及び方法

核酸の発現のための組成物及び方法がここに提供される。トランスポゾンベースの核酸コンストラクトを使用するトランスジェニック細胞及び動物中における核酸の誘導性発現のための組成物及び方法がまたここに提供される。内因性遺伝子発現の調節のための組成物及び方法がまたここに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、その開示の全体を出典明示によりここに援用する2006年12月31日出願の米国仮出願第60/871390号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、トランスポゾンベースの核酸コンストラクトを使用するトランスジェニック細胞及び動物中における核酸の誘導発現に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞及び動物中における遺伝子発現を調節する能力は遺伝子機能の研究に有用である。例えば、ある遺伝子の機能は、その遺伝子を実質的に発現しない細胞において該遺伝子を発現させることによって、又はその細胞において通常観察される発現レベルを越えるレベルまでその遺伝子を発現させることによって、解明することができる。また、ある遺伝子の機能は、その遺伝子を発現する細胞中においてその遺伝子の発現を阻害するか又は「ノックダウン」することによって解明できる。
【0004】
一般的なジーンターゲティング法はマウスのような哺乳動物において遺伝子機能を破壊するのに有用であることは分かっているが、かかる方法は遺伝子機能についてはしばしば限られた情報しかもたらさない。例えば、マウスにおける一般的なジーンターゲティング法による遺伝子の破壊は初期胚性致死を生じ、よってマウスの発育の後の段階及び成体マウスにおける遺伝子の機能についてのありうる情報は限られる。選択された発達段階での遺伝子機能を誘導的に又は条件的に破壊する能力は遺伝子機能についてかなり多くの情報を提供し、遺伝的欠陥を補償することを目的とした治療的介入の標的を更に同定しうる。
【0005】
RNA干渉(RNAi)は遺伝子発現を調節する方法である。しかしながら、RNAiの使用は、siRNAのようなRNA分子を細胞及び/又は動物へ効果的に送達し及び/又は誘導的に発現させるための信頼できる方法がないことによって妨害されている。細胞系へのRNA分子の効果的な送達及び/又は誘導的発現を達成する能力は、RNAiを一般的な遺伝子機能のノックダウンに対する強力な機能的ゲノミクスツールにするであろう。更に、ターゲット遺伝子の発現を選択的に阻害する能力は、例えば動物にとって有害なタンパク質の生産を防止する、重要な治療的意味を有している。
よって、細胞及び動物において核酸を発現させ、遺伝子発現を調節するための信頼できる効果的な方法に対する必要性がある。本発明は上述の必要性を満たし、他の恩恵をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
核酸の発現のための組成物と方法がここに提供される。ある実施態様では、かかる組成物と方法によって、トランスポゾンベースのコンストラクトからの核酸の誘導的発現が可能になる。
一態様では、(1)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドと(2)該ポリヌクレオチドに隣接するトランスポゾン誘導インバーテッドリピートを含む核酸コンストラクトが提供される。一実施態様では、トランスポゾン誘導インバーテッドリピートはpiggyBacインバーテッドリピートである。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは調節RNA、例えばshRNAをコードする。
【0007】
他の態様では、(a)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含むものと;(b)TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットと;(c)インバーテッドリピートの一方が(a)及び(b)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(a)及び(b)の3’である一対のインバーテッドリピートを含む核酸コンストラクトが提供される。一実施態様では、インバーテッドリピートの対はpiggyBacインバーテッドリピートである。一実施態様では、インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
ある実施態様では、ポリヌクレオチドは調節RNAをコードする。かかる一実施態様では、調節RNAはshRNAである。
【0008】
ある実施態様では、誘導プロモーターはH1又はU6プロモーターを更に含む。かかる一実施態様では、誘導プロモーターはH1プロモーターを更に含む。ある実施態様では、誘導プロモーターは少なくとも二のTetO配列を含む。かかる一実施態様では、誘導プロモーターは少なくとも二のTetO配列に作用可能に結合したH1プロモーターを含む。かかる一実施態様では、誘導プロモーターは配列番号16の核酸配列を含む。
ある実施態様では、ポリヌクレオチドは第一RNAをコードし、核酸コンストラクトが第三転写ユニットを更に含み、第三転写ユニットが誘導プロモーターと作用可能に結合した第二ポリヌクレオチドを含み、第二ポリヌクレオチドが第二RNAをコードし、第一RNA及び第二RNAが相補的である少なくとも10の近接ヌクレオチドの配列を含む。
ある実施態様では、核酸コンストラクトは選択マーカーを更に含む。ある実施態様では、第二転写ユニットが選択マーカーを更に含む。かかる一実施態様では、選択マーカーはピューロマイシンに耐性を付与する。他のかかる実施態様では、IRESが、TetRをコードするコード配列と選択マーカーの間に配されている。
ある実施態様では、TetRをコードするコード配列はコドン最適化されている。かかる一実施態様では、TetRをコードするコード配列は配列番号15のヌクレオチド1−507の核酸配列を含む。
【0009】
更に他の態様では、細胞においてポリヌクレオチドを発現させる方法において、(a)細胞中に、(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含むものと;(ii)TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットと;(iii)インバーテッドリピートの一方が(i)及び(ii)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)及び(ii)の3’である一対のインバーテッドリピートを含む核酸コンストラクトを導入し;(b)該細胞を、誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤に暴露することを含む方法が提供される。ある実施態様では、インバーテッドリピートの対はpiggyBacインバーテッドリピートである。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
ある実施態様では、ポリヌクレオチドは調節RNAをコードする。かかる一実施態様では、調節RNAはshRNAである。
【0010】
ある実施態様では、該方法は、インバーテッドリピートに作用するトランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドを細胞中に導入して核酸転位を媒介することを更に含む。かかる一実施態様では、トランスポサーゼはpiggyBacトランスポサーゼである。かかる一実施態様では、トランスポサーゼは、(a)配列番号14に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)(a)の断片を含む。
【0011】
更に他の態様では、細胞における内因性遺伝子の発現を阻害する方法において、(a)細胞中に、(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、ポリヌクレオチドが内因性遺伝子に特異的な調節RNAをコードするものと;(ii)インバーテッドリピートの一方が(i)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)の3’である一対のインバーテッドリピートを含む核酸コンストラクトを導入し;(b)該細胞を、誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤に暴露することを含む方法が提供される。ある実施態様では、細胞は胚細胞である。
ある実施態様では、調節RNAはshRNAである。かかる一実施態様では、shRNAは、(a)リピンをコードする遺伝子、(b)VEGFをコードする遺伝子、又は(c)癌遺伝子である遺伝子から選択される内因性遺伝子に対して特異的である。
【0012】
ある実施態様では、誘導プロモーターは一又は複数のTetO配列を含み、核酸コンストラクトが、TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットを更に含み、インバーテッドリピートの一方が第二転写ユニットの5’のものであり、インバーテッドリピートの他方が第二転写ユニットの3’のものである。
ある実施態様では、インバーテッドリピートはpiggyBacインバーテッドリピートである。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。ある一実施態様では、該方法は、piggyBacトランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドを細胞中に導入することを更に含む。かかる一実施態様では、piggyBacトランスポサーゼは、(a)配列番号14に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)(a)の断片を含む。
【0013】
ある実施態様では、第二転写ユニットは選択マーカーを更に含む。かかる一実施態様では、IRESは、TetRをコードするコード配列と選択マーカーの間に配されている。ある実施態様では、TetRをコードするコード配列がコドン最適化されている。かかる一実施態様では、TetRをコードするコード配列は配列番号15のヌクレオチド1−507の核酸配列を含む。
ある実施態様では、誘導プロモーターはH1又はU6プロモーターを含む。ある実施態様では、誘導プロモーターは少なくとも二のTetO配列を含む。かかる一実施態様では、誘導プロモーターは配列番号16の核酸配列を含む。
【0014】
更に他の態様では、トランスジェニック哺乳動物においてポリヌクレオチドを発現させる方法において、(a)哺乳類の非ヒト胚細胞中に、(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、ポリヌクレオチドが内因性遺伝子に特異的な調節RNAをコードするものと;(ii)インバーテッドリピートの一方が(i)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)の3’である一対のインバーテッドリピートを含む核酸コンストラクトを導入し;(b)該哺乳類の非ヒト胚細胞中に、インバーテッドリピートに作用するトランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドを導入して核酸転位を媒介させ;(c)核酸コンストラクトとトランスポサーゼをコードするコード配列が導入された哺乳類の非ヒト胚細胞からトランスジェニック哺乳動物を生産し;(d)誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤をトランスジェニック哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0015】
ある実施態様では、調節RNAはshRNAである。かかる一実施態様では、shRNAは、(a)リピンをコードする遺伝子、(b)VEGFをコードする遺伝子、又は(c)癌遺伝子である遺伝子から選択される内因性遺伝子に対して特異的である。
ある実施態様では、誘導プロモーターは一又は複数のTetO配列を含み、核酸コンストラクトが、TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットを更に含み、インバーテッドリピートの一方が第二転写ユニットの5’のものであり、インバーテッドリピートの他方が第二転写ユニットの3’のものである。
ある実施態様では、インバーテッドリピートの対はpiggyBacトランスポソンから誘導され、トランスポサーゼはpiggyBacトランスポサーゼである。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。他の実施態様では、トランスポサーゼは、(a)配列番号14に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)(a)の断片を含む。
ある実施態様では、哺乳類の非ヒト胚細胞はマウス細胞である。かかる一実施態様では、哺乳類の非ヒト胚細胞は受精卵である。
【0016】
更に他の態様では、(a)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、ポリヌクレオチドが内因性遺伝子に特異的な調節RNAをコードするものと;(b)インバーテッドリピートの一方が(a)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(b)の3’である一対のインバーテッドリピートを含む核酸コンストラクトが提供される。
ある実施態様では、調節RNAはshRNAである。かかる一実施態様では、shRNAは、(a)リピンをコードする遺伝子、(b)VEGFをコードする遺伝子、又は(c)癌遺伝子である遺伝子から選択される遺伝子に対して特異的である。
ある実施態様では、誘導プロモーターは一又は複数のTetO配列を含み、核酸コンストラクトが、TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットを更に含む。
【0017】
ある実施態様では、インバーテッドリピートはpiggyBacインバーテッドリピートである。ある実施態様では、インバーテッドリピートの一方又は他方は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
ある実施態様では、第二転写ユニットは選択マーカーを更に含む。かかる一実施態様では、IRESは、TetRをコードするコード配列と選択マーカーの間に配されている。ある実施態様では、TetRをコードするコード配列はコドン最適化されている。かかる一実施態様では、TetRをコードするコード配列は配列番号15のヌクレオチド1−507の核酸配列を含む。
【0018】
ある実施態様では、誘導プロモーターはH1又はU6プロモーターを含む。ある実施態様では、誘導プロモーターは少なくとも二のTetO配列を含む。かかる一実施態様では、誘導プロモーターは配列番号16の核酸配列を含む。
更に他の態様では、上記の核酸コンストラクトを含む細胞が提供される。かかる一実施態様では、細胞は哺乳動物細胞である。かかる一実施態様では、哺乳動物細胞は胚細胞である。かかる他の実施態様では、哺乳動物細胞はマウス細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例Aに記載されたような、ルシフェラーゼに特異的なshRNAの誘導性発現のためのpiggyBacベースのベクター「PB(luc−shRNA)」を示す。
【図2】実施例Aに記載されたような機能的エレメントの注釈を付した、図1のベクターのヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。コドン最適化TetRのアミノ酸配列(配列番号21)もまた示す。ピューロマイシン選択マーカーのアミノ酸配列(配列番号22)もまた示す。
【図3】実施例Bに記載されたような、PB(luc−shRNA)を形質移入した胚性幹(ES)細胞におけるルシフェラーゼに特異的なshRNAのドキシサイクリン(Dox)誘導性発現及びルシフェラーゼ活性のノックダウンを示す。
【図4】実施例Bに記載されたような、PB(luc−shRNA)を形質移入したES細胞から単離されたクローンにおけるルシフェラーゼに特異的なshRNAのDox誘導性発現及びルシフェラーゼ活性のノックダウンを示す。
【図5】図4のES細胞からのバイオルミネセンスの定量化を示す。
【図6】実施例Bに記載されたような、PB(luc−shRNA)を形質移入しDoxで処理したES細胞から誘導された胚様体からのバイオルミネセンスの定量化を示す。
【図7】実施例Cに記載されたような、PB(luc−shRNA)を注射した単細胞胚から誘導されたルシフェラーゼ発現トランスジェニックマウスに対する3日間のDox投与の効果を示す。
【図8】実施例Cに記載されたような、図7のトランスジェニックマウスのバイオルミネセンスの定量化を示す。
【図9】実施例Cに記載されたような、PB(luc−shRNA)を注射した単細胞胚から誘導されたルシフェラーゼ発現トランスジェニックマウスに対する7日間のDox投与の効果を示す。
【図10】実施例Dに記載されたような、リピンに特異的なshRNAの誘導的発現のためにpiggyBacベースのベクターを構築するための方策を示す。
【図11】実施例Cに記載されたような、pCAG−PBaseのヌクレオチド配列(配列番号18)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施態様の詳細な説明
核酸の発現のための組成物と方法が提供される。ある実施態様では、かかる組成物と方法により、トランスジェニック細胞及び動物においてトランスポゾンベースの核酸コンストラクトからの核酸の誘導性発現が可能になる。更なる実施態様では、かかる組成物と方法は、誘導的な形で、核酸配列、例えば内因性遺伝子の発現を阻害又は「ノックダウン」するために使用することができ、これにより、例えば一般的なジーンターゲティング技術による破壊が初期段階の致死を引き起こしうる遺伝子のような遺伝子の「条件付きノックダウン」を作り出すことが可能になる。
【0021】
1.定義
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」なる用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの構築の前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されうる。ポリヌクレオチドは重合後に、例えば標識成分との結合により、更に修飾されうる。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチドの未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへの更なる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体支持体に結合されてもよい。5'及び3'末端OHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャップ基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されうる。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態を含み得、これらには例えば2'-O-メチル-2'-O-アリル、2'-フルオロ-又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えうる。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR又はR'は独立してH、又はエーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0022】
細胞又は生物学的分子、例えば核酸、ポリペプチド、又は抗体に対する「単離された」なる用語は、その自然環境の少なくとも一の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。
ハイブリダイゼーションに関しての「ストリンジェントな条件」なる用語は、核酸のハイブリダイゼーションが65℃の5×SSC、5×デンハート液、1%SDS、及び100μg/mlの変性サケ精子DNA中で起こり、ハイブリダイゼーションの後に次の洗浄(第二回目の洗浄は高ストリンジェントな洗浄である)が続くことを意味する:室温で0.1%SDSを含む2×SSCで10分;及び65℃で0.1%SDSを含む0.1×DDCで30分。更なる詳細については、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology (1995), Wiley Interscience Publishersを参照のこと。
【0023】
「核酸コンストラクト」なる用語は、自然では通常互いに伴わないポリヌクレオチドセグメントを含む組換え核酸分子を意味する。核酸コンストラクトは染色体外であるか、宿主細胞の染色体中に組み込まれうる。
「対象のポリヌクレオチド」なる用語は非限定的で、任意のポリヌクレオチドを意味する。
「隣接」なる用語は、与えられた核酸配列が特定の参照配列の5’及び3’に現れることを意味する。介在配列が、与えられた核酸配列と参照配列の間に生じうる。
「転写ユニット」なる用語は、転写される少なくとも一のポリヌクレオチド配列を含み、配列が特定のプロモーターに作用可能に結合している核酸コンストラクト内の領域を意味する。
【0024】
「siRNA」又は「低分子干渉RNA」なる用語は、siRNAが標的ポリヌクレオチドと同じ細胞中で発現される場合に標的ポリヌクレオチドの発現を減少させ又は阻害する能力を有している二本鎖RNAを意味する。二本鎖RNAを形成するsiRNAの相補鎖は典型的には実質的な又は完全な同一性を有している。一実施態様では、siRNAは二本鎖RNAであって、その一方の鎖(「アンチセンス」鎖とも呼ぶ)が標的mRNAの少なくとも一部と実質的な又は完全な同一性を有している。ある実施態様では、siRNAは、約15−50ヌクレオチド長、約20−30ヌクレオチド長、約20−25ヌクレオチド長、又は24−29ヌクレオチド長であり、上述の範囲内の整数である任意の長さを含む。その全体が出典明示によりここに援用されるWO03076592として公開されたPCT/US03/07237もまた参照のこと。siRNA分子は、もしそれが、(a)標的ポリヌクレオチド(又は標的ポリヌクレオチドから転写されたmRNA)に選択的に結合し、及び/又は(b)標的ポリヌクレオチドを発現する細胞においてsiRNAが発現される場合、標的ポリヌクレオチドの発現を少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%だけ低減させるならば、標的ポリヌクレオチドに対して「特異的」である。
【0025】
「siRNA」なる用語は、例えばミクロRNA前躯体(プレ-miRNA)及び低分子ヘアピン型RNA(shRNA)のようなヘアピン構造を形成可能なRNAを包含する。例えば、Brummelkamp等 (2002) Science 550-553を参照のこと。プレ−miRNA又はshRNAは、センス領域、アンチセンス領域、及びループ領域を有し、ヘアピン構造を形成可能である自己相補的なRNA分子である。ある実施態様では、センス及びアンチセンス領域はそれぞれ約15−50ヌクレオチド長、約20−30ヌクレオチド長、約20−25ヌクレオチド長、又は24−29ヌクレオチド長であり、前記範囲内の整数である任意の長さを含む;またループ部分は約2−15ヌクレオチド長又は約6−9ヌクレオチド長であり、前記範囲内の整数である任意の長さを含む。
「RNAi」又は「RNA干渉」は、例えば二本鎖RNA媒介メカニズムによるRNA媒介メカニズムによる遺伝子発現の部分的な又は完全な阻害を意味する。
【0026】
「調節RNA」又は「調節RNA分子」なる用語は、例えば対応するmRNAの発現を調節することにより、遺伝子の発現を調節することができるRNAを意味する。かかる調節RNAには、限定するものではないが、RNAi可能なRNAが含まれる。調節RNAは、もしそれが、(a)標的ポリヌクレオチド(又は標的ポリヌクレオチドから転写されたmRNA)に選択的に結合し、及び/又は(b)標的ポリヌクレオチドを発現する細胞において調節RNAが発現される場合、標的ポリヌクレオチドの発現を少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%だけ低減させるならば、標的ポリヌクレオチドに対して「特異的」である。
「調節エレメント」なる用語は、ヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を調節する一又は複数のヌクレオチド配列を意味する。転写調節エレメントには、限定されるものではないが、作用可能に結合したポリヌクレオチドの発現を駆動可能なプロモーター;プロモーターの転写促進活性に影響を及ぼすプロモーター内のオペレーター配列;転写終結配列;及びポリアデニル化シグナル配列が含まれる。
【0027】
「作用可能に結合」なる用語は、成分がその意図された形で機能することを可能にする関係にある二以上の成分の近位を意味する。例えば、プロモーターは、それがシスでポリヌクレオチド配列の転写を制御するように作用するならば、ポリヌクレオチドに「作用可能に結合」している。「作用可能に結合」している核酸配列は近接していても近接していなくともよい。
ここで使用される「発現」なる用語は、細胞内で生じる与えられた核酸の転写又は翻訳を意味する。発現レベルは、核酸から転写されるRNAの量か、もしRNAが翻訳される場合は、コードされるタンパク質の量の何れかに基づいて決定することができる。例えば、与えられた核酸から転写されたmRNAはPCR又はノーザンハイブリダイゼーションにより定量できる(Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照)。与えられた核酸によりコードされるタンパク質は、様々な方法、例えばELISAにより、タンパク質の生物活性をアッセイすることにより、又はそのような活性とは独立したアッセイ、例えばウェスタンブロット法又はラジオイムノアッセイを用いて、タンパク質を認識しそれに結合する抗体を用いて、定量することができる。上掲のSambrook等, 1989。
【0028】
「阻害する」なる用語は、特定のプロセス又は結果を部分的に又は完全に減少させ又はブロックすることを意味する。
「プロモーター」なる用語は、それが作用可能に結合した核酸の転写を制御するポリヌクレオチド配列を意味する。プロモーターは、RNAポリメラーゼ結合及び転写開始のシグナルを含む。ある実施態様では、プロモーターは更なる調節エレメント、例えばオペレーター配列を含む。様々な異なった供給源からの構成的、誘導性及び抑制性プロモーターを含む多数のプロモーターが当該分野においてよく知られており(またGenBankのようなデータベースにおいて同定され)、クローン化ポリヌクレオチドとして(例えばATCCのような寄託期間並びに他の商業的又は個人の供給源から)入手できる。誘導プロモーターでは、プロモーターの活性は、例えば誘導剤のようなシグナルに応答して増加又は減少する。強力なプロモーターとして同定されているプロモーターは、SV40初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、マウスメタロチオネイン−Iプロモーター、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列、及びヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)である。
【0029】
「誘導プロモーター」なる用語は、その活性が一又は複数の特異的シグナルを加え又は取り除くことにより調節されうるプロモーターを意味する。例えば、誘導プロモーターは、特定の条件セットの下、例えばプロモーターを活性化し、及び/又はプロモーターの抑制を軽減する誘導剤の存在下で、作用可能に結合したポリヌクレオチドの転写を活性化しうる。
「誘導剤」なる用語は、誘導プロモーターの活性を調節することができる任意の薬剤を意味する。誘導剤には、限定されるものではないが、化学的化合物、生物学的巨大分子、又はそれらの任意の組合せが含まれる。
【0030】
「インバーテッドリピート」又は「IR」なる用語は、核酸配列の2つのコピーが、転位性核酸分子中に存在する場合に反対の配向にある、トランスポゾンから誘導され、トランスポサーゼによって作用させられた核酸配列を意味する。インバーテッドリピートは、不完全であり得、これは、インバーテッドリピートがインバーテッドリピート間に位置するポリヌクレオチドの転位を媒介可能である限り、核酸配列が互いの完全なコピーではないことを意味する。
「piggyBac」なる用語は、鱗翅目(Lepidopteran)のイラクサギンウワバ(Trichopulsia ni)において最初に同定されたトランスポゾンのファミリーを意味し、該トランスポゾンはクラスIIのDNA転位性エレメントに関連している。piggyBacトランスポゾンは過去に「IFP2」として記載されている。Cary等 (1989) Virology 172:156-169を参照のこと。
「クラスII IR」又は「クラスIIインバーテッドリピート」は、クラスII DNA転位性エレメントから誘導され、クラスIIトランスポサーゼによって作用させられたインバーテッドリピートを意味する。
【0031】
「piggyBacインバーテッドリピート」又は「piggyBac IR」は、piggyBacトランスポゾンから誘導され、piggyBacトランスポサーゼによって作用させられたインバーテッドリピートを意味する。
「配列内リボソーム進入部位 」又は「IRES」は、翻訳開始を促進し、動物細胞中において2つのシストロン(オープンリーディングフレーム)が単一転写物から翻訳されるようにするポリヌクレオチド配列を記述する。IRESは、IRESに作用可能に結合したオープンリーディングフレームの翻訳のためのリボソーム侵入部位を提供する。ポリシストロニックでありうる(つまり、単一のmRNAから幾つかの異なったポリペプチドをコードし得る)細菌mRNAとは異なり、動物細胞の殆どのmRNAは、モノシストロニックであり、タンパク質一つのみの合成をコードする。ポリシストロニックな転写物が真核細胞中に存在している場合、翻訳は一般に5’に最も近い転写開始部位から開始し、第一の停止コドンで終結する。ついで、転写物がリボソームから放出され、ポリシストロニックな転写物において最初のコードされたポリペプチドのみの翻訳が生じる。真核細胞では、転写物中の第二又は次のオープンリーディングフレームに作用可能に結合したIRESを有するポリシストロニックな転写物により、オープンリーディングフレームの翻訳が可能になり、同じ転写物によってコードされる二以上のポリペプチドが生産される。ベクター構築におけるIRESエレメントの使用は過去に記載されている。例えば、Pelletier等, Nature 334: 320-325 (1988);Jang等, J. Virol. 63: 1651-1660 (1989);Davies等, J. Virol. 66: 1924-1932 (1992);Adam等 J. Virol. 65: 4985-4990 (1991);Morgan等 Nucl. Acids Res. 20: 1293-1299 (1992);Sugimoto等 Biotechnology 12: 694-698 (1994);Ramesh等 Nucl. Acids Res. 24: 2697-2700 (1996)を参照のこと。
【0032】
「選択マーカー」なる用語は、ポリヌクレオチド担持する細胞を、対応する選択剤の存在下で、そのために又はそれに対して特異的に選択されるようにするポリヌクレオチドを意味する。例を挙げると、抗生物質耐性遺伝子は、遺伝子で形質転換された宿主細胞を、対応する抗生物質の存在下で陽性に選択されるようにする陽性選択マーカーとして使用することができる;非形質転換宿主細胞は選択条件下で増殖又は生存を維持できないであろう。選択マーカーは陽性、陰性又は二機能性でありうる。陽性選択マーカーによりマーカーを担持する細胞の選択が可能になる一方、陰性選択マーカーによりマーカーを担持する細胞を選択的に除去することが可能になる。ある実施態様では、選択マーカーは、薬剤に耐性を付与し、又は宿主細胞における代謝又は異化欠陥を補償する。選択マーカーには増幅可能な選択可能遺伝子が含まれ、コード化された産物が選択性を保持している限り、天然の選択マーカーの変異体、断片、機能的均等物、誘導体、ホモログ及び融合体が含まれる。有用な誘導体は、選択可能な性質に関連する選択マーカーの領域又はドメインにおいて実質的な配列類似性(アミノ酸レベルで)を一般に有している。様々な選択マーカーが開示されており、二機能性(つまり、陽性/陰性)マーカー(例えば1992年5月29日に公開されたWO92/08796、及び1994年12月8日に公開されたWO94/28143を参照)(ここに出典明示より援用される)が含まれる。例えば、一般に真核細胞で使用される選択マーカーには、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hgy)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(tk)、グルタミンシンテターゼ、アスパラギンシンテターゼ、及びネオマイシン(G418)、ピューロマイシン、ヒスチジノールD、ブレオマイシン及びフレオマイシン耐性のコード遺伝子が含まれる。
【0033】
核酸の移動に関して、「導入する」、「導入された」なる用語及びその文法的変形語は細胞中への核酸の導入を直接的又は間接的に生じるヒトの介入(処置)を意味する。例えば、核酸は細胞中に、例えば形質移入によって直接導入することができ、その核酸はまたそれを含む細胞の子孫の何れかに「導入された」と考えられる。
ここで交換可能に使用される「ポリペプチド」又は「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸の多量体を意味する。該用語はまたグリコシル化、アセチル化及びリン酸化を含む反応を通して翻訳後に修飾されるタンパク質を含む。「ペプチド」なる用語は一般に約30アミノ酸長未満である短いポリペプチドを意味する。
「コドン最適化」なる用語は、与えられた脊椎動物の細胞において、一又は複数のコドンを、その脊椎動物において核酸の翻訳により頻繁に使用される一又は複数のコドンで置き換えることにより発現に適応させた核酸コード配列を意味する。
【0034】
「TetO」又は「TetO配列」なる用語は、TetRに結合可能なTetオペレーター配列を意味する。
「TetR」なる用語は、一又は複数のTetO配列に結合可能な野生型Tetリプレッサー又はその変異体を意味する。
ここで使用される「実質的に同様」又は「実質的に同じ」なる用語は、二つの数値間(例えばTetRの発現レベル)において、該値によって測定される生物学的特性の内容において二つの数値間に少しの、又は生物学的な、及び/又は統計的な有意差がないと当業者が考える程、十分に高程度の類似性を示す。
「哺乳動物」なる用語は、哺乳動物として分類される任意の動物を意味し、家畜(例えばウシ)、スポーツ動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(ヒト、非ヒト霊長類)、及び齧歯類(例えばマウス及びラット)を含む、ある実施態様では、哺乳動物はヒトである。
【0035】
「トランスジェニック」なる用語は、ここでは導入遺伝子を内部に持つ性質を記述するために使用される。例えば、「トランスジェニック生物」は、動物の細胞の一又は複数が、例えばここに記載された方法による、ヒト介入によって導入された核酸を含む、哺乳動物、魚、鳥及び両生類を含む任意の動物である。例えば興味あるポリペプチドをコードする導入遺伝子を含むトランスジェニック動物では、導入遺伝子は典型的にはトランスジェニック動物の細胞にポリペプチドを発現又は過剰発現するように仕向ける。しかしながら、本発明のある実施態様によれば、調節RNAの発現を使用して、アンチセンス又はRNA干渉機構を通して特定の内因性遺伝子を下方制御することができる。
【0036】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」なる用語は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある様々な方法で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのために適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって著作され、ソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類と共に提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、あるいはソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対するある程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのプログラムアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なると認識されるであろう。特に断らない限りは、ここで使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて直ぐ上の段落に記載されるようにして得られる。
【0037】
参照ポリヌクレオチド配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、参照ポリヌクレオチド配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある様々な方法で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのために適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、ここでの目的のためには、%核酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって著作され、ソースコードは米国著作権庁,ワシントン D.C.,20559に使用者用書類と共に提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウスサンフランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、あるいはソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
核酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、与えられた核酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN-2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアのヌクレオチドの数であり、ZはDの全ヌクレオチド数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限りは、ここでの全ての%核酸配列同一性値は、直ぐ上のパラグラフに示したようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。
【0038】
II.発明の実施態様
核酸の発現のための組成物と方法がここに提供される。ある実施態様では、かかる組成物と方法により、トランスジェニック細胞及び動物における核酸の誘導性発現が可能になる。ある実施態様では、かかる組成物はトランスポゾンベースの核酸コンストラクトを含む。ある実施態様では、かかる組成物と方法は、内因性遺伝子発現を調節するために使用できる。更なる実施態様では、かかる組成物と方法は、誘導的な形で、核酸配列、例えば内因性遺伝子の発現を阻害又は「ノックダウン」するために使用することができ、これにより、例えば一般的なジーンターゲティング技術による破壊が初期段階の致死を引き起こしうる遺伝子のような遺伝子の「条件付きノックダウン」を作り出すことが可能になる。
【0039】
A.組成物
一態様では、核酸の発現のための核酸コンストラクトが提供される。ある実施態様では、核酸コンストラクトは、(1)誘導プロモーターに作用可能に結合した少なくとも一種の対象のポリヌクレオチドを含む転写ユニットと(2)対象のポリヌクレオチドに隣接するトランスポゾン誘導インバーテッドリピートを含む。かかる核酸コンストラクトの成分は以下の実施態様に更に記載される:
【0040】
1.成分
a)誘導プロモーター系
一態様では、誘導プロモーター系を用いて対象のポリヌクレオチドの発現を調節する。誘導プロモーター系の様々な実施態様では、対象のポリヌクレオチドが誘導プロモーターに作用可能に結合される。誘導プロモーターからの対象のポリヌクレオチドの転写は、例えば誘導剤によって、活性化されうる。かかる一実施態様では、誘導プロモーターは不活性であるか又は誘導剤の存在下で低い基礎活性を有しており、誘導剤の存在下で活性である。誘導剤の存在下での転写は、誘導剤のない場合の転写よりも5、10、50、100、又は500倍大きい。
【0041】
誘導剤は、例えばプロモーターに結合しプロモーターから転写を活性化することによってプロモーターに直接作用しうる。かかる誘導剤の例には、限定されるものではないが、以下の表1に記載されるように、重金属イオン、インターフェロン、及びグルココルチコイドが含まれる。あるいは、誘導剤は、例えば、プロモーター活性に影響を与えるポリペプチドを通して作用することによって、プロモーターに間接的に作用しうる。例えば、一実施態様では、誘導剤は(例えばそれに結合することによって)レセプターのようなポリペプチドを活性化し、活性化されたポリペプチドがついでプロモーターからの転写を活性化する。かかる誘導剤の例には、限定されるものではないが、以下の表1に記載されるように、エクジソン、RU486、及びエストロゲンが含まれる。他の誘導剤には、特定の増殖条件、例えば「熱ショック」が含まれる。他の実施態様では、誘導剤は、プロモーターを阻止するポリペプチドを不活性化し、抑制を軽減することによって転写を活性化させる。かかる誘導剤の例には、限定されるものではないが、IPTG(Lac発現系で使用)及びテトラサイクリン及びその類似体(Tet発現系で使用)含まれる。
【0042】
真核細胞において使用される誘導プロモーター系の例には、限定されるものではないが、ホルモン調節エレメント(例えば、Mader, S.及びWhite, J. H. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5603-5607を参照)、合成リガンド調節エレメント(例えば、Spencer, D. M.等 1993) Science 262:1019-1024を参照)及び電離放射線調節エレメント(例えばManome, Y.等 (1993) Biochemistry 32:10607-10613;Datta, R.等 (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1014-10153を参照)が含まれる。インビトロ又はインビボでの哺乳動物系において使用される更なる例示的な誘導プロモーターは、Gingrich等 (1998) Annual Rev. Neurosci. 21:377-405に概説され、以下の表1にまとめる。
【0043】

【0044】
本発明において使用される例示的な誘導プロモーター系はTet系である。かかる系は、Gossen等(1993)によって記載されたTet系に基づいている。例示的な実施態様では、対象のポリヌクレオチドは一又は複数のTetオペレーター(TetO)を含むプロモーターの制御下にある。不活性状態では、Tetリプレッサー(TetR)がTetO部位に結合し、プロモーターからの転写を抑制する。活性状態、例えばテトラサイクリン(Tc)、無水テトラサイクリン、ドキシサイクリン(Dox)、又はその活性な類似体のような誘導剤の存在下で、誘導剤はTetOからTetRの放出を引き起こし、それによって転写が起こるようにする。ドキシサイクリンは、1−ジメチルアミノ−2,4a,5,7,12−ペンタヒロロキシ−11−メチル−4,6−ジオキソ−1,4a,11,11a,12,12a−ヘキサヒドロテトラセン−3−カルボキサミドの化学名を有する抗生物質のテトラサイクリンファミリーのメンバーである。
【0045】
一実施態様では、TetRは、哺乳動物細胞、例えばマウス又はヒト細胞における発現に対してコドン最適化されている。殆どのアミノ酸は、遺伝コードの縮重のため一を越えるコドンによってコードされ、核酸によってコードされたアミノ酸配列の如何なる変更もなく与えられた核酸のヌクレオチド配列において実質的な変異を可能にする。しかしながら、多くの生物は、「コドンバイアス」(つまり、与えられたアミノ酸に対しての特定のコドンの使用へのバイアス)としても知られているコドン使用において差異を示す。コドンバイアスは、特定のコドンに対するtRNAの支配的な種の存在としばしば相関しており、これはひいてはmRNA翻訳の効率を増加させる。従って、特定の生物(例えば原核生物)から誘導されたコード化配列を、コドン最適化を通して異なった生物(例えば真核生物)中での発現の改善の目的に合わせることができる。
コドン使用表は直ぐに入手できる。Nakamura, Y.等 Nucl. Acids Res. (2000) 28:292を参照のこと。これらの表又は類似の表を使用して、当業者は、ポリペプチドをコードするコドン最適化核酸を設計するために、任意の与えられたポリペプチドにコドン使用頻度を適用できる。コドン最適化コード化領域は当該分野で知られている様々な異なった方法によって設計することができ、その幾つかがここに又米国特許出願公開第20040209241号に記載されている。
【0046】
一態様では、コドン最適化TetRの使用により、例えば(1)TetR発現を増加させ、(2)低レベルの誘導剤を使用する発現の誘導を可能にし、及び/又は(3)誘導剤の不存在下での対象ポリヌクレオチドの「リーキーな(leaky)」発現を最小にすることによる、誘導性ポリヌクレオチド発現のより緻密な制御が可能になる。コドン最適化TetRは、その全体が出典明示によりここに明示的に援用される2006年7月27日出願の同時係属米国出願第11/460606号に記載されている。野生型Tetリプレッサータンパク質の配列は従来から知られている(例えばGenBank寄託番号第J01830号参照)。TetO配列に結合するTetRタンパク質を試験するアッセイ法は、Lederer 等(1995) Anal. Biochemistry 232:190-196に記載されている。
Tet系の他の特定の変異体は次の「Tet−Off」及び「Tet−On」系を含む。Tet−Off系では、転写はTc又はDoxの存在下で不活性である。その系では、単純ヘルペスウイルス由来のVP16の強いトランス活性化ドメインに融合したTetRからなるテトラサイクリン制御トランス活性化因子(tTA)が、テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)の転写制御下にある標的核酸の発現を調節する。TREは、プロモーター(一般的にはヒトサイトメガロウイルス(hCMV)最初期プロモーターから誘導された最小プロモーター配列)に融合したTetO配列コンカテマーから構成される。Tc又はDoxの不在下で、tTAはTREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化させる。Tc又はDoxの存在下では、tTAはTREに結合できず、標的遺伝子からの発現は不活性のままである。
【0047】
逆に、Tet−On系では、転写はTc又はDoxの存在下で活性である。Tet−On系は逆テトラサイクリン制御トランス活性化因子rtTAに基づく。tTAと同様に、rtTAは、TetRリプレッサーとVP16トランス活性化ドメインからなる融合タンパク質である。しかしながら、TetR DNA結合部分における4個のアミノ酸変化により、rtTAの結合特性が、Doxの存在下で標的導入遺伝子のTRE中のtetO配列だけをそれが認識できるように改変される。よって、Tet−On系では、TRE調節標的遺伝子の転写は、Doxの存在下でのみrtTAによって刺激される。
他の誘導プロモーター系は大腸菌由来のlacリプレッサー系(Brown等, Cell 49:603-612 (1987)を参照)である。lacリプレッサー系は、lacオペレーター(lacO)を含むプロモーターに作用可能に結合した対象ポリヌクレオチドの転写を調節することにより機能する。lacリプレッサー(lacR)はLacOに結合し、よって対象ポリヌクレオチドの転写を防止する。対象ポリヌクレオチドの発現は、適切な誘導剤、例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導される。
【0048】
合成プロモーター及び原核生物又は真核生物由来の天然プロモーターを含む様々なプロモーターを本発明の核酸コンストラクトに使用することができる。ある実施態様では、ヒト又はマウスのような任意の哺乳動物から由来したpol IIIプロモーターのような、様々なRNAポリメラーゼIII(pol III)プロモーターを使用することができる。かかるpol IIIプロモーターには、限定するものではないが、H1 RNA又はU6 snRNA遺伝子から誘導された、それぞれ「H1プロモーター」又は「U6」プロモーターとここで称されるプロモーターが含まれる。他のpol IIIプロモーターは、例えばその全体が出典明示によりここに援用されるPaule及びWhite, Nuc. Acids Res. (2000) 28:1283-1298に見出すことができる。ある実施態様では、例えばCMVプロモーターを含む様々なRNAポリメラーゼII(pol II)プロモーターを使用することができる。pol IIプロモーターは多くの組織において発現を駆動可能な遍在性プロモーターであり得、例えばユビキチン−Cプロモーター、CMVプロモーター、β−アクチンプロモーター又はPGKプロモーターである。他の実施態様では、pol IIプロモーターは組織又は細胞型特異的プロモーター又は発生段階特異的プロモーターである。
【0049】
本発明の核酸コンストラクトにおいて有用な他のプロモーターは、ウイルスプロモーター(例えば、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列プロモーター(pRSV);ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日公開のUK2211504)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2又は5)、単純ヘルペスウイルス(チミジンキナーゼプロモーター)、ウシパピローマウイルス、トル肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス(例えばMoMLV、又はRSV LTR)、B型肝炎ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、VISNA、及びサルウイルス40(SV40)由来のプロモーター;及びSP6、T3及びT7プロモーター); 免疫グロブリンプロモーター;熱ショックプロモーター;又はメタロチオネインプロモーターを含む。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点をまた含む制限断片として簡便に得ることができる。Fiers等, Nature, 273:113 (1978);Mulligan及びBerg, Science, 209:1422-1427 (1980);Pavlakis等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:7398-7402 (1981)。ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得ることができる。Greenaway 等, Gene, 18:355-360 (1982)。
【0050】
誘導性発現系は、例えば、バクテリオファージPiのCre/lox系、酵母2uMプラスミドのFLP/FRT系、酵母プラスミドpSRlの1/RS系、又はバクテリオファージMuの改変Gin/gix系を導入することができると更に考えられる。特定の実施態様では、誘導性発現系はCre/loxP組換え系を取り込む。簡単に述べると、Creは、出典明示によりここに援用されるSauer (1993) Methods Enzymol. 225:890-900によって記載されているように、loxP部位間での分子内(切除又は逆転)及び分子間(組込み)部位特異的組換えを媒介するバクテリオファージPi由来の38kDaのリコンビナーゼタンパク質である。loxP部位(「交差座」部位)は8bpの非対称スペーサー領域によって分離した2つの13bpのインバーテッドリピートからなる。Creの一分子がインバーテッドリピート当たり結合し、又は2つのCre分子が与えられたloxP部位に並ぶ。組換えは8塩基対の非対称スペーサー領域で生じ、これがまた部位の方向性の原因となる。 互いに反対の配向の2つのloxP部位がDNAの介在片を逆にする;同じ配向の2つの部位が、一つのloxP部位を背後に残す部位間の介在DNAの切除を指示する。
【0051】
特定の時間に核酸配列を切除する能力は、切除が望まれるときに一対のloxP部位に核酸配列を隣接させ、リコンビナーゼを導入することによって利用されうる。望まれる場合、Cre発現導入遺伝子が誘導性及び/又は組織特異的プロモーターの制御下に配されて、選択された細胞において選択された時間での核酸配列の切除が可能になる。誘導性発現系の一実施態様では、「スタッファー(stuffer)断片」(以下に更に記載)を含むポリヌクレオチドが、プロモーター内又はプロモーターと誘導性発現が望まれる核酸配列(「誘導性配列」)間に位置させられる。スタッファー断片にはloxP部位が隣接し、Cre媒介組換え事象が、誘導性配列とプロモーターが作用可能に結合するように、スタッファー断片の切除と誘導性配列とプロモーターの並置を導く。
「スタッファー断片」は、プロモーター中に又はプロモーターと誘導性配列の間に挿入され、プロモーターに特異的な転写停止シグナルを含むポリヌクレオチドを意味する。よって、スタッファー断片の存在は、プロモーターからの誘導性配列の転写を防止し、プロモーター-誘導性配列転写ユニットを不活性な状態に維持する。(上述のように)リコンビナーゼ酵素を添加すると、プロモーター特異的転写停止シグナルを含むスタッファー断片の部位特異的切除がプロモーターと誘導性配列の並置を生じ、ついでこれにより誘導性配列の転写が生じる。
【0052】
スタッファー断片は任意のヌクレオチド配列であり得、好ましくは立体構造変化を起こしやすいものではない配列である。例えば、スタッファー断片は、lacZ遺伝子のセグメント又はそれが転写防止において機能性である転写停止シグナルを含む限り任意の他の所望の核酸セグメントでありうる。所望ならば、スタッファー断片は更なる特徴、例えば転写状態を誘導対非誘導として簡単に検出し決定することを可能にする選択マーカーを含みうる。
スタッファー断片のサイズは、それが(a)転写を阻害でき、及び/又は(b)酵素媒介組換え事象において切除されうる限り、500塩基対以上、600塩基対以上、700塩基対以上、800塩基対以上、1000塩基対以上、1200塩基対以上、又は1400塩基対以上でありうる。スタッファー断片の一例は、マウスU6プロモーター特異的転写停止シグナルに対応する5つの隣接チミンからなる配列を含むkacZの1kbセグメントである。
【0053】
b)トランスポゾンベース系
適切なトランスポゾンベース系を使用して、対象ポリヌクレオチドを発現するトランスジェニック細胞をつくり出す。一実施態様では、適切なトランスポゾンベース系は、(1)核酸の切除及び転位を許容するインバーテッドリピートが隣接する対象のポリヌクレオチドを含む核酸と、(2)インバーテッドリピートに作用して核酸の転位を媒介するトランスポサーゼを含む。一実施態様では、インバーテッドリピート及びそれらに作用するトランスポサーゼは、限定するものではないが、piggyBac、tagalong、hobo、hermes、Ac、及びTam3転位因子を含むクラスII転位因子から誘導される。
一実施態様では、対象ポリヌクレオチドを含む核酸にはトランスポゾンインバーテッドリピートが隣接する。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートは対象ポリヌクレオチドを含む核酸の5’及び3’末端にある。
一実施態様では、インバーテッドリピートは、例えば哺乳動物ゲノムのような脊椎動物ゲノムへの対象ポリヌクレオチドの転位を許容する。かかるインバーテッドリピートには、限定するものではないが、piggyBacインバーテッドリピート又はTc1/マリナー・トランスポゾンスーパーファミリーのトランスポゾンからのインバーテッドリピートが含まれる。そのスーパーファミリーには、限定するものではないが、「Sleeping Beauty」及び「Frog Prince」トランスポゾンが含まれる。
【0054】
piggyBacトランスポゾンは最初は鱗翅目(Lepidopteran)のイラクサギンウワバ(Trichopulsia ni)において最初に同定された。Cary等 (1989) Virology 172:156-169を参照。イラクサギンウワバにおいて、piggyBacは機能的トランスポサーゼをコードする2.1kbのオープンリーディングフレームを有する2475bpの低分子インバーテッドリピートエレメントである。piggyBacは切り貼り機構を介して転位し、挿入時に複製される5’TTAA3’標的部位を挿入し、正確に切除し、フットプリントを残さない。piggyBacのインバーテッドリピートと転位を駆動するその能力は特徴付けられている。例えば、出典明示によりここに明示的に援用される米国特許第6218185号及び同第6962810号を参照のこと。
【0055】
一実施態様では、インバーテッドリピートpiggyBacトランスポゾンから誘導される。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートは5’CCCTAGAAAGATA3’(配列番号1)の核酸配列を含む。かかる他の実施態様では、インバーテッドリピートは、5’CCCTAGAAAGATAGTCTGCGTAAAATTGACGCATG3’(配列番号2)の核酸配列、又はそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号2の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含み、かかるインバーテッドリピートは作用可能に結合した核酸の転位を媒介することができる。かかる実施態様の他のものでは、インバーテッドリピートは、5’CCCTAGAAAGATAATCATATTGTGACGTACGTTAAAGATAATCATGCGTAAAATTGACGCATG3’(配列番号3)の核酸配列、又はこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、あるいは配列番号3の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含み、かかるインバーテッドリピートは作用可能に結合した核酸の転位を媒介することができる。
【0056】
特定の実施態様では、転位可能な核酸は、(1)配列番号2又はそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号2の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含む第一インバーテッドリピート;及び(2)配列番号3の逆相補鎖(つまり配列番号4)、又は配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号4の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含む第二インバーテッドリピートが隣接する対象ポリヌクレオチドを含む。
特定の実施態様では、転位可能な核酸は、(1)配列番号3又はそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号3の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含む第一インバーテッドリピート;及び(2)配列番号2の逆相補鎖(つまり配列番号5)、又は配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号5の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含む第二インバーテッドリピートが隣接する対象ポリヌクレオチドを含む。
【0057】
第一及び第二インバーテッドリピートはそれぞれ対象ポリヌクレオチドの5’及び3’末端にあってもよい。あるいは、第一及び第二インバーテッドリピートはそれぞれ対象ポリヌクレオチドの3’及び5’末端にあってもよい。例示的な立体配置(それぞれ単一の核酸分子を示す)は次の通りである:
立体配置1
5’ CCCTAGAAAGATAGTCTGCGTAAAATTGACGCATG(配列番号2)--対象ポリヌクレオチド--CATGCGTCAATTTTACGCATGATTATCTTTAACGTACGTCACAATATG
ATTATCTTTCTAGGG(配列番号4) 3’、又は
立体配置2
5’ CCCTAGAAAGATAATCATATTGTGACGTACGTTAAAGATAATCATGCGTAAAATTGACGCATG(配列番号3)--対象ポリヌクレオチド--CATGCGTCAATTTTACGC
AGACTATCTTTCTAGGG(配列番号5) 3’
【0058】
ある実施態様では、インバーテッドリピートはSleeping Beautyトランスポゾンから誘導される。かかるインバーテッドリピートは、例えば米国特許第6613752号及び同第6489458号に記載されており、これらは出典明示によりここに明示的に援用される。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートは、次のものから選択される核酸配列を含む:
5’ GTTCAAGTCG GAAGTTTACA TACACTTAG 3’(配列番号6)
5’ CAGTGGGTCA GAAGTTTACA TACACTAAGG 3’(配列番号7)
5’ CAGTGGGTCA GAAGTTAACA TACACTCAAT T 3’(配列番号8)
5’ AGTTGAATCG GAAGTTTACA TACACCTTAG 3’(配列番号9)
【0059】
他のかかる実施態様では、インバーテッドリピートは、
5’ AGTTGAAGTC GGAAGTTTAC ATACACTTAA GTTGGAGTCA TTAAAACTCG TTTTTCAACT ACACCACAAA TTTCTTGTTA ACAAACAATA GTTTTGGCAA GTCAGTTAGG ACATCTACTT TGTGCATGAC ACAAGTCATT TTTCCAACAA TTGTTTACAG ACAGATTATT TCACTTATAA TTCACTGTAT CACAATTCCA GTGGGTCAGA AGTTTACATA CACTAA 3’(配列番号10)の核酸配列、
又はこれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号10の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含み、ここで、かかるインバーテッドリピートは作用可能に結合した核酸の転位を媒介可能である。他のかかる実施態様では、インバーテッドリピートは、
5’TTGAGTGTAT GTTAACTTCT GACCCACTGG GAATGTGATG AAAGAAATAA AAGCTGAAAT GAATCATTCT CTCTACTATT ATTCTGATAT TTCACATTCT TAAAATAAAG TGGTGATCCT AACTGACCTT AAGACAGGGA ATCTTTACTC GGATTAAATG TCAGGAATTG TGAAAAAGTG AGTTTAATG TATTTGGCTA AGGTGTATGT AAACTTCCGA CTTCAACTG 3’ (配列番号11)の核酸配列、
又はこれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号11の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含み、ここで、かかるインバーテッドリピートは作用可能に結合した核酸の転位を媒介可能である。
【0060】
ある実施態様では、インバーテッドリピートはFrog Princeトランスポゾンから誘導される。かかるインバーテッドリピートは、例えば、出典明示によりここに明示的に援用される米国特許出願公開第2005/0241007A1に記載されている。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートは、
5’ TGTG AAAAAGTGTT TGCCCCC 3’(配列番号12)の核酸配列を含む。
他のかかる実施態様では、インバーテッドリピートは、
5’CAGTGGTGTG AAAAAGTGTT TGCCCCCTTC CTCATTTCCT GTTCCTTTGC ATGTTTGTCA CACTTAAGTG TTTCGGAACA TCAAACCAAT TTAAACAATA GTCAAGGACA ACACAAGTAA ACACAAAATG CAATTTGTAA ATGAAGGTGT TTATTATTAA AGGTGAAAAA AAATCCAAAC CATCATGGCC CTGTGTGAAA AAGTGATTGC CCCCCTTGTT AAAACATACT ATAACTGTGG TTGTCCACAC 3’ (配列番号13) の核酸配列
又はこれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列、又は配列番号13の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を含み、ここで、かかるインバーテッドリピートは作用可能に結合した核酸の転位を媒介可能である。
【0061】
上述のインバーテッドリピートの何れかに作用するトランスポサーゼがここに提供される。一実施態様では、piggyBac、Sleeping Beauty、又はFrog Princeトランスポサーゼが提供される。かかるトランスポサーゼは、例えば上で引用した刊行物に記載されている。トランスポサーゼは天然に生じるトランスポサーゼ又はその活性な断片又は変異体、例えば天然に生じるトランスポサーゼに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のアミノ酸同一性を有する変異体でありうる。トランスポサーゼはまた遺伝子操作されたトランスポサーゼでありうる。トランスポサーゼは、それが活性である限り、つまりインバーテッドリピートに作用して核酸転位を媒介する限り、任意の供給源から誘導されうる。トランスポサーゼ又はトランスポサーゼをコードする核酸は、インバーテッドリピートに隣接して対象ポリヌクレオチドを含む核酸の導入の前、後、又はそれと同時に細胞中に導入されうる。トランスポサーゼをコードする核酸とインバーテッドリピートが隣接する対象ポリヌクレオチドは同じ又は別個の核酸コンストラクトに存在しうる。トランスポサーゼをコードする核酸の転写はここで検討したプロモーター(例えば構成的、誘導的、又は二機能的)の何れかによって駆動されうる。
【0062】
特定の実施態様では、piggyBacトランスポサーゼ(つまり、piggyBacトランスポゾンから誘導されたトランスポサーゼ)が提供される。かかる一実施態様では、piggyBacトランスポサーゼは、鱗翅目(Lepidopteran)のイラクサギンウワバ(Trichopulsia ni)のpiggyBacトランスポゾン由来の次のアミノ酸を含む:
1 mgsslddehi lsallqsdde lvgedsdsei sdhvseddvq sdteeafide vhevqptssg
61 seildeqnvi eqpgsslasn kiltlpqrti rgknkhcwst skstrrsrvs alnivrsqrg
121 ptrmcrniyd pllcfklfft deiiseivkw tnaeislkrr esmtgatfrd tnedeiyaff
181 gilvmtavrk dnhmstddlf drslsmvyvs vmsrdrfdfl irclrmddks irptlrendv
241 ftpvrkiwdl fihqciqnyt pgahltideq llgfrgrcpf rmyipnkpsk ygikilmmcd
301 sgtkymingm pylgrgtqtn gvplgeyyvk elskpvrgsc rnitcdnwft siplaknllq
361 epykltivgt vrsnkreipe vlknsrsrpv gtsmfcfdgp ltlvsykpkp akmvyllssc
421 dedasinest gkpqmvmyyn qtkggvdtld qmcsvmtcsr ktnrwpmall ygminiacin
481 sfiiyshnvs skgekvqsre kfmrnlymsl tssfmrkrle aptlkrylrd nisnilpnev
541 pgtsddstee pvtkkrtyct ycpskirrka nasckkckkv icrehnidmc qscf
(配列番号14)、
又はその活性な断片又は変異体。かかる断片及び変異体には、限定されるものではないが、出典明示によりここに援用されるZimowska等(2006) Insect Biochem. Mol. Biol. 36(5):421-428、及びNCBI受託番号ABC88680.1、ABC88678.1、ABC88677.1、ABC88675.1、ABC88671.1、及びAAE68098.1に記載されたものが含まれる。
【0063】
c)対象ポリヌクレオチド
本発明の核酸コンストラクトにおいて、発現が誘導プロモーターの制御下にある対象ポリヌクレオチドは限定されるものではない。例えば、対象ポリヌクレオチドはポリペプチドをコードしてもコードしなくともよい。
一実施態様では、対象ポリヌクレオチドは、例えばトランスジェニック発現の表現型の影響を観察するために、及び/又はポリペプチド又は機能的均等物の内因性発現がないか又は低減される「レスキュー」実験のために、そのトランスジェニック発現が望まれるポリペプチドをコードする。例えば、ポリヌクレオチドのトランスジェニック発現は、例えば癌性状態のような異常状態に至らしめ、ポリヌクレオチドを発現するトランスジェニック動物は疾患の有用なモデルでありうる。
【0064】
他の実施態様では、対象ポリヌクレオチドは調節RNA分子(例えばタンパク質に実質的に翻訳されないRNA分子)をコードする。かかる調節RNA分子には、限定するものではないが、アンチセンスRNA及びRNA干渉(RNAi)をなすRNA分子、例えばsiRNA(shRNAを含む)及びマイクロRNA(miRNA)が含まれる。RNAiは一般に一方の鎖が標的遺伝子のコード領域に実質的に又は完全に相補的である二本鎖RNA分子により遺伝子発現を部分的に又は完全に停止させることを含む。Fire等 (1998) Nature 391:806-811を参照。RNAiの更なる概説には、Novina及びSharp, Nature (2004) 430:161-164を参照のこと。
siRNAsは、例えば低分子や抗体のような伝統的なアンタゴニストが失敗であったり又は実用的ではない等の場合、遺伝子発現を調節するためのツールとして有用であることが証明されている。(Shi Y., Trends in Genetics 19(1):9-12 (2003))。インビトロで合成された21から23ヌクレオチド長の二本鎖RNAは干渉RNAs(iRNAs)として作用することが示されており、遺伝子発現を特異的に阻害しうる(Fire A., Trends in Genetics 391; 806-810 (1999))。これらのiRNAsは、典型的には、その標的mRNAsの分解を媒介することによって作用する。iRNAsは一般に(必ずしも常にではないが)30ヌクレオチド長以下であるので、それらは、例えばインターフェロン生産、及び/又はタンパク質合成の活動停止のような細胞の抗ウイルス防御機構を惹起させない。
【0065】
実際には、siRNAsを合成し、ついでここで記載したもののような核酸コンストラクト中にクローニングできる。かかるコンストラクトは、例えばマイクロインジェクション又は形質移入によって哺乳動物細胞に導入することができ、及び/又は例えばここに更に記載されるように、トランスジェニック動物をつくるために使用することができる。siRNAは構成的又は誘導的な形で発現されうる。siRNAは、例えばsiRNAを組織特異的プロモーターに作用可能に結合させることにより、組織特異的な形で発現されうる。siRNAの発現は、対応するmRNAによってコードされるタンパク質の量を「ノックダウン」又は有意に低減させるために使用されうる。従って、siRNAは対象遺伝子の機能のノックダウンの表現型の影響を評価し、及び/又は過剰発現が例えば癌又は炎症のような疾患に関連していると思われる遺伝子をノックアウトするために有用である。よって、本発明は、遺伝子発現を調節するsiRNAベースの方法を提供する。
siRNAは上述の誘導発現系の何れかを使用して発現させうる。siRNAの発現のための好適なプロモーターには、限定するものではないが、上述のものの任意のもの、特にpol IIIプロモーター、例えばH1又はU6が含まれる。特定の対象遺伝子の発現を停止させるために好適なsiRNAは当該分野で知られており、及び/又は当業者に知られた方法によって常套的に同定され、又は設計されうる。例えば、US2005/0071893;Vickers等 (2003) J. Biol. Chem. 278:7108-7118;Hill等 (1999) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 21:728-737;Sandy等 (2005) Biotechniques 39:215-224を参照のこと。
【0066】
d)他の成分
場合によっては、他の配列が本発明の核酸コンストラクト中に含められうる。かかる配列には、限定するものではないが、核酸コンストラクト中においてプロモーターに作用可能に結合している一又は複数のエンハンサー配列;核酸コンストラクトから転写されるポリヌクレオチドの3’に位置している一又は複数の転写終結配列;コンストラクトの増殖を容易にする配列;及び/又はクローニング部位が含まれる。
例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン遺伝子のような哺乳動物遺伝子からの多くのエンハンサー配列が知られている。好適なエンハンサーは真核生物細胞ウイルス由来のエンハンサーである。例として、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100−270)、サイトメガロウイルス最初期プロモーターのエンハンサー(Boshart等 Cell 41:521 (1985))、複製起点後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントの検討についてはまたYaniv, Nature, 297:17-18 (1982)を参照のこと。エンハンサー配列はプロモーターの5’又は3’でありうる。ある実施態様では、エンハンサーはプロモーターの5’部位又はプロモーターとそれが作用可能に結合しているポリヌクレオチドの間に位置される。
【0067】
核酸コンストラクトは場合によってはIRESを含んでいてもよい。IRESは可変長さであり、例えば 脳心筋炎ウイルス(EMCV)又はピコルナウイルスゲノムのような様々な供給源由来でありうる。様々なIRES配列とその構築は例えばPelletier等, Nature 334: 320-325 (1988);Jang等, J. Virol. 63:1651-1660 (1989);Davies等, J. Virol. 66: 1924-1932 (1992);Adam等 J. Virol. 65: 4985-4990 (1991);Morgan等 Nucl. Acids Res. 20: 1293-1299 (1992);Sugimoto等 Biotechnology 12: 694-698 (1994);及びRamesh等 Nucl. Acids Res. 24: 2697-2700 (1996)に記載されている。一実施態様では、ECMVのIRESが本発明の核酸コンストラクトにおいて使用される。IRESに作用可能に結合したコード配列は、例えばIRESの3’末端の約8塩基又はより下流か又はコード配列の翻訳が起こる任意の距離にある。IRESと下流のコード配列の開始の間の最適な又は許容可能な距離は、距離を変化させ、距離の関数として発現を測定することにより容易に決定することができる。
【0068】
核酸コンストラクトは場合によっては細菌中でのコンストラクトの増殖を容易にする原核生物配列を含んでいてもよい。従って、コンストラクトは、複製起点(つまり、一又は複数の選択された宿主細胞におけるコンストラクトの複製を可能にする核酸配列)及び細菌中での選択のための抗生物質耐性遺伝子のような成分を含みうる。複製起点は例えば細菌中のColE1複製起点を含む。様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)が、染色体外(エピソーム)複製が望まれる哺乳動物細胞において有用である。更なる真核生物選択マーカー遺伝子を導入することができる。
核酸コンストラクトは、例えば発現が誘導プロモーターから望まれるポリヌクレオチドのような与えられた配列の挿入又は除去のために少なくとも一のクローニング部位を含みうる。一実施態様では、クローニング部位は複数クローニング部位、つまり複数の制限部位を含む。ラムダ媒介組換えを使用して配列の挿入を許容するゲートウェイ部位もまた使用されうる。
【0069】
2.核酸コンストラクトの特定の実施態様
上述の実施態様に加えて、次の特定の実施態様が更に提供される:
一態様では、(1)一又は複数のTetO配列を含む誘導プロモーターに作用可能に結合した少なくとも一の対象ポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットと;(2)TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットと;(3)一対のインバーテッドリピートであって、インバーテッドリピートの一方が(1)及び(2)の5’であり、他方のインバーテッドリピートが(1)及び(2)の3’であるものを含む核酸コンストラクトが提供される。一実施態様では、TetRは第二転写ユニットから発現され、誘導剤の不存在下で第一転写ユニット中の誘導プロモーターを抑制する。しかしながら、誘導剤(例えばテトラサイクリン又はドキシサイクリンのようなテトラサイクリンアナログ)の存在下では、TetRによる抑制は軽減され、第一転写ユニット中の対象ポリヌクレオチドがよって発現される。かかる一実施態様では、対象ポリヌクレオチドは、RNAi(例えばshRNA)をなすことができる調節RNA分子を、調節RNA分子が標的とする核酸配列の発現が誘導剤の存在下で「ノックダウン」されるように、コードしている。よって、ここに記載された核酸コンストラクトは、調節された遺伝子発現、特に標的核酸配列の条件付きノックダウンに対するメカニズムを提供する。
一実施態様では、第一転写ユニットは第二転写ユニットの5’に配されている。他の実施態様では、第一転写ユニットは第二転写ユニットの3’に配されている。更に他の実施態様では、(第一及び第二転写ユニットに加えて)一又は複数の転写ユニットが、かかる更なる転写ユニットがインバーテッドリピート内に含まれていることを条件として、以下に更に検討するように、核酸コンストラクト中に存在していてもよい。
【0070】
a)インバーテッドリピート
一実施態様では、インバーテッドリピートは、上で更に詳細に記載したように、piggyBac、Sleeping Beauty、又はFrog Princeから選択される。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートは、piggyBacインバーテッドリピートから選択される。かかる一実施態様では、インバーテッドリピートの少なくとも一つは、配列番号1、2、3、4、又は5から選択される核酸配列を含む。
b)TetR
一実施態様では、TetRをコードするコード化配列は哺乳動物細胞における発現のために最適化されている。かかる一実施態様では、コード化配列は、マウス又はヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。かかる一実施態様では、コドン最適化コード化配列は、(a)以下のポリヌクレオチド(開始及び停止コドンに下線):
ATGTCCAGACTGGATAAGTCCAAGGTGATTAATTCCGCTCTGGAACTCCTGAACGAGGTCGGCATCGAGGGACTGACCACACGGAAGCTGGCTCAGAAACTCGGCGTCGAACAGCCTACCCTCTACTGGCATGTCAAAAATAAGAGAGCCCTCCTGGACGCCCTGGCTATCGAGATGCTGGACAGACACCACACCCACTTCTGCCCCCTGGAAGGCGAATCCTGGCAGGATTTCCTCCGGAACAACGCTAAAAGCTTTAGATGCGCCCTCCTCAGCCATAGAGACGGAGCTAAAGTGCACCTGGGAACCCGGCCTACAGAAAAACAGTACGAGACACTGGAAAACCAGCTCGCTTTCCTCTGCCAACAAGGCTTTAGCCTGGAAAACGCCCTCTACGCTCTCAGCGCTGTCGGCCATTTTACACTGGGCTGCGTGCTCGAGGACCAGGAGCACCAAGTGGCTAAAGAGAGCGGGAAACCCCTACCACCGATAGCATGCCCCCCCTGCTGAGACAAGCCATTGAGCTCTTTGATCATCAGGGAGCTGAACCCGCCTTCCTCTTTGGACTCGAACTCATTATTTGCGGACTCGAGAAGCAACTGAAATGCGAAAGCGGAAGCGCCTACTCCGGCTCCAGAGAATTTCGGTCCTACTAG (配列番号15);又は
(b)配列番号15と同じポリペプチドをコードし、配列番号15と実質的に同様のレベルで哺乳動物細胞中で発現され得る配列番号15の変異体を含む。他の実施態様では、配列番号15のヌクレオチド1−507によってコードされるTetRのアミノ酸配列が明示的に提供される。他の実施態様では、TetRのアミノ酸配列が配列番号21に示される。
【0071】
c)誘導プロモーター
一実施態様では、誘導プロモーターは一又は複数のTetO配列を含む。一実施態様では、誘導プロモーターは、一又は複数のTetO配列に作用可能に結合したpol III プロモーターを含む。かかる一実施態様では、誘導プロモーターは、一又は複数のTetO配列に作用可能に結合したH1プロモーター又はU6プロモーターを含む。一実施態様では、誘導プロモーターは、少なくとも2のTetO配列に作用可能に結合したH1 プロモーターを含む。かかるプロモーターは胚性幹細胞及び胚様体細胞において有用であることが示されており、TetR媒介抑制は、2つのTetO配列に作用可能に結合したH1プロモーターを含むプロモーターが使用された場合に特にストリンジェントであった。全体が出典明示によりここに援用される2006年7月27日出願の同時係属の米国出願代11/460606号を参照のこと。一実施態様では、2つのTetO配列を含む誘導プロモーターは、(a)「H1−tetO2−2Xプロモーターセグメント」(5’から3,TetO配列に下線)のポリヌクレオチド配列:
CGAACGCTGACGTCATCAACCCGCTCCAAGGAATCGCGGGCCCAGTGTCACTAGGCGGGAACACCCAGCGCGCGTGCGCCCTGGCAGGAAGATGGCTGTGAGGGACAGGGGAGTGGCGCCCTGCAATATTTGCATGTCGCTATGTGTTCTGGGAAATCACCATAAACGTGAAATCCCTATCAGTGATAGAGACTTATAAGTTCCCTATCAGTGATAGAGATCCCC(配列番号16);
(b)(a)のポリヌクレオチドの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド;又は(c)(a)のポリヌクレオチドと少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド を含み、ここで(a)、(b)又は(c)のポリヌクレオチドにはTetRが結合し得る。
【0072】
pol IIIプロモーターが使用される一実施態様では、pol III転写終結配列が対象ポリヌクレオチドの3’に配される。一実施態様では、pol III転写終結配列は4又はそれ以上の連続T残基を含む。かかる一実施態様では、pol III転写終結配列は、5の連続T残基を含む。かかる実施態様では、pol III転写が第二又は第三のTで終結し、従って2から3のU残基だけが、合成されるRNAの3’末端に付加される。
pol IIプロモーターが使用される一実施態様では、対象ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードするmRNAをコードする。pol IIIプロモーターが使用される一実施態様では、対象ポリヌクレオチドが調節RNAをコードする。
【0073】
d)転写ユニット
一実施態様では、転写ユニットは第一RNAをコードする第一コード領域と、第二RNAをコードする第二コード領域を含み、双方のコード領域が共通のプロモーター(例えばpol IIIプロモーター)の制御下にある。かかる一実施態様では、第一RNA及び第二RNAは実質的に又は完全に相補的である配列を含み、従って二本鎖領域を有するRNA分子を形成可能である。かかる二本鎖領域はついでsiRNAとして機能しうる。例えば、第一及び第二RNAsは、相補的である少なくとも10−30の近接ヌクレオチド(その範囲内の全ての整数を含む)の配列を含みうる。
一実施態様では、核酸コンストラクトは、調節RNAの一又は複数の成分をコードする複数の転写ユニットを含む。例えば、一実施態様では、核酸コンストラクトは、(1)第一プロモーター(例えばpol IIIプロモーター)に作用可能に結合した第一ポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、第一ポリヌクレオチドが第一RNAをコードするもの;及び(2)第二プロモーター(例えば第二pol IIIプロモーター)に作用可能に結合した第二ポリヌクレオチドを含む更なる転写ユニットであって、第二ポリヌクレオチドが第二RNAをコードするものを含む。かかる一実施態様では、第二RNAは、2つのRNAが発現されるときに二本鎖構造を形成できるように、第一RNAに実質的に又は完全に相補的である。例えば、かかる一実施態様では、第一及び第二RNAは、相補的である少なくとも10−30の近接ヌクレオチド(その範囲内の全ての整数を含む)の配列を含みうる。
【0074】
様々な実施態様では、核酸コンストラクトは、異なった標的核酸配列を標的とする複数の調節RNAをコードする複数の転写ユニットを含む。かかる実施態様では、複数の内因性遺伝子の調節が達成されうる。
他の実施態様では、核酸コンストラクトは、RNAをコードするポリヌクレオチドに作用可能に結合した第一プロモーター(例えば、pol IIIプロモーター)と、同じポリヌクレオチドに反対の配向で作用可能に結合した第二プロモーターを、第一プロモーターからのポリヌクレオチドの発現が第一RNAの合成を生じせしめ、第二プロモーターからのポリヌクレオチドの発現が、第一RNAに実質的に又は完全に相補的である第二RNAの合成を生じせしめるように、含んでいる。例えば、第一及び第二RNAは、相補的である少なくとも10−30の近接ヌクレオチド(その範囲内の全ての整数を含む)の配列を含みうる。
一実施態様では、核酸コンストラクトは選択マーカーを更に含む。かかる一実施態様では、第二転写ユニットが選択マーカーを更に含む。かかる一実施態様では、IRES(配列内リボソーム進入部位 )がTetRをコードするコード配列と選択マーカーの間に配されている。
【0075】
e)対象ポリヌクレオチド
一実施態様では、対象ポリヌクレオチドは、翻訳されるRNA(つまり、mRNA)をコードする。他の実施態様では、対象ポリヌクレオチドは調節RNA分子、例えば二本鎖RNA分子の一又は双方の鎖をコードする。かかる一実施態様では、調節RNA分子は、例えばsiRNA又はプレ-miRNAのように、二本鎖領域を有するヘアピン構造を形成する。
他の実施態様では、調節RNA分子は二本鎖領域を含み、該二本鎖領域の一方の鎖は標的核酸配列(例えばダウンレギュレートされる対象遺伝子から誘導されたmRNAの領域)と配列が実質的に同一(典型的には少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である)ものである。二本鎖領域の他方の鎖は標的核酸に完全に又は部分的に相補的である(典型的には標的核酸の領域の相補鎖に少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である)。二本鎖領域は二つの別個のRNA鎖か、又はヘアピン構造を有する単一RNAの自己相補的部分により、形成されうると理解される。調節RNA分子の二本鎖領域は、一般に約10ヌクレオチド長、少なくとも約15ヌクレオチド長、及びある実施態様では、約15から約30ヌクレオチド長である。しかしながら、有意に長い二本鎖領域は有効に使用することができる。一実施態様では、二本鎖領域は、約19から22ヌクレオチド長(その範囲内の任意の整数を含む)である。一実施態様では、二本鎖領域の一方の鎖はこの領域にわたる標的核酸配列と同一である。
【0076】
他の実施態様では、対象ポリヌクレオチドは、RNA分子が「センス」領域、ループ領域及び「アンチセンス」領域を含むヘアピン構造を形成することができるように、自己相補的である調節RNA分子をコードしている。かかる一実施態様では、センス及びアンチセンス領域はそれぞれ約15から約30ヌクレオチド長である。他のかかる実施態様では、ループ領域は約2から約15ヌクレオチド長か又は約4から約9ヌクレオチド長である。かかる調節RNA分子の発現後にセンス及びアンチセンス領域は二本鎖構造を形成する。
標的核酸配列が、高度に保存された遺伝子ファミリーである遺伝子から誘導されている場合、調節RNA分子の二本鎖構造の配列は、所望される遺伝子のみがダウンレギュレートされるように配列比較ツールを用いて選択することができる。あるいは、調節RNA分子の二本鎖領域の配列は、それが複数の関連した遺伝子を同時にダウンレギュレートするように設計されうる。
上記実施態様の何れかを単独で又は互いに組み合わせたものがここに明示的に提供される。
【0077】
3.核酸コンストラクトを含む細胞及び動物
一実施態様では、上述の核酸コンストラクトの何れかを含む細胞が提供される。一実施態様では、細胞は一次細胞又はHEK、CHO、COS、MEF、及び293細胞のような細胞株からの培養細胞である。他の実施態様では、細胞は細菌宿主細胞である。他の実施態様では、細胞は哺乳動物細胞、例えばマウス又はヒト細胞である。かかる細胞は、例えば単離細胞(正常な又は罹患した(例えば癌の)細胞又は細胞株からの細胞を含む);又は胚性細胞、例えば単離された胚性細胞、胚性幹(ES)細胞、単細胞胚(つまり、受精卵)、又は単離胚内の細胞でありうる。
【0078】
B.方法
上記の核酸コンストラクトの何れかを細胞、例えば哺乳動物細胞に導入するための方法が提供される。核酸コンストラクトは、常套的な形質移入法又はマイクロインジェクションによって細胞に導入して、トランスジェニック細胞をつくることができる。一実施態様では、核酸コンストラクトは、胚性細胞、例えば単細胞胚(つまり、受精卵)、単離胚内の細胞、又は胚性幹(ES)細胞に導入(例えば形質移入又はマイクロインジェクション)される。トランスジェニック胚性肝細胞を胚(例えば、胚盤胞期胚)と組み合わせることができる。前記トランスジェニック細胞の何れかを含む胚を偽妊娠雌動物(例えばマウス)に移してトランスジェニック動物を生産することができる。あるいは、トランスジェニック胚性肝細胞を培養して分化細胞の集合体を含む胚様体を生成することができる。
ある実施態様では、別個のベクターに含まれるトランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドはここに記載の核酸コンストラクトと同時形質移入又は同時注入される。ある実施態様では、トランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドはここで提供される核酸コンストラクトに含まれる。
【0079】
上記核酸コンストラクトの何れかを使用する方法がここに提供される。例えば、一態様では、対象のポリヌクレオチドを発現する方法が提供され、該方法は、(a)上記核酸コンストラクトの何れかを哺乳動物細胞中に導入し、(b)適切な誘導剤に細胞を曝露することを含む。他の実施態様では、内因性遺伝子の発現を阻害する方法が提供され、該方法は、(a)内因性遺伝子に特異的な調節RNA分子(例えばshRNA)を誘導的に発現する上記核酸コンストラクトの何れかを細胞に導入し、(b)該細胞を適切な誘導剤に曝露することを含む。上記方法の何れかでは、細胞はトランスジェニック動物中に存在しうる。上記方法の何れかにおいて、適切なトランスポサーゼ又はかかるトランスポサーゼをコードする核酸が細胞中に更に導入される。
【0080】
他の態様では、トランスジェニック哺乳動物において対象のポリヌクレオチドを発現させる方法が提供され、該方法は、上記核酸コンストラクトの何れかを哺乳動物胚性細胞中に導入し、(b)適切なトランスポサーゼ又はかかるトランスポサーゼをコードする核酸を哺乳動物胚性細胞中に導入し;(c)(a)及び(b)から得られる哺乳動物胚性細胞からトランスジェニック動物を生産し;(d)トランスジェニック哺乳動物に適切な誘導剤を投与することを含む。該方法がトランスジェニック哺乳動物における内因性遺伝子の発現を阻害するために使用される一実施態様では、対象のポリヌクレオチドは内因性遺伝子に特異的な調節RNA分子(例えばshRNA)をコードする。
【0081】
他の態様では、細胞中にポリヌクレオチドを発現する方法が提供され、該方法は、(a)細胞中に、(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含むものと;(ii)TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットと;(iii)インバーテッドリピートの一方が(i)及び(ii)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)及び(ii)の3’である一対のインバーテッドリピートを含む核酸コンストラクトを導入し;(b)該細胞を、誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤に暴露することを含む。
【0082】
他の態様では、細胞における内因性遺伝子の発現を阻害する方法が提供され、該方法は、(a)細胞中に、(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含み、ポリヌクレオチドが内因性遺伝子に特異的なshRNAをコードするものと;(ii)TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットと;(iii)一対のpiggyBacインバーテッドリピートであって、インバーテッドリピートの一方が(i)及び(ii)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)及び(ii)の3’であるものを含む核酸コンストラクトを導入し;(b)該細胞を、誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤に暴露することを含む。
【0083】
治療方法がまたここに提供される。一態様では、ここに提供される核酸コンストラクトは、例えば治療用核酸を標的細胞に送達する、インビボ治療用途に使用される。かかるインビボ遺伝子療法用途は、Sleeping Beautyトランスポゾンベース系を使用して証明されている。米国特許第6613752号を参照のこと。治療用核酸は標的細胞中における欠陥のある内因性遺伝子の機能を置換するか、又は癌又は免疫疾患のような疾患の治療において有用性を有しているコード配列でありうる。
遺伝的欠陥に基づく疾患症状の治療に使用される治療用核酸には、限定されるものではないが、次のものをコードするコード配列が含まれる:第VIII因子、第IX因子、β-グロビン、低密度タンパク質レセプター、アデノシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、 嚢胞性線維症膜制御因子、α-アンチトリプシン、CD-18、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノコハク酸シンテターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、分岐鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ、グルコース6-ホスファターゼ、α-L-フコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、α-L-イズロニダーゼ、ガラクトース1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ等々が含まれる。
【0084】
癌の治療のための治療用核酸には、限定するものではないが、次のものが含まれる:腫瘍抑制因子、毒素、自殺タンパク質等をコードするコート配列;及び例えば癌促進遺伝子に特異的な調節RNAのような内因性遺伝子の発現を阻害するための調節RNAをコードするポリヌクレオチド。かかる癌促進遺伝子には、限定するものではないが、癌遺伝子、例えばABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、ERBB2、ETSI、ETS1、ETV6、FOR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIM1、PML、RET、SRC、TALI、TCL3、及びYES;血管新生を促進する遺伝子、例えばVEGF、VEGFレセプター、及びエリスロポエチン;及び他の癌促進遺伝子、例えばPTI−1、PTI−2、及びPTI−3が含まれる。免疫疾患の治療のための治療用核酸には、限定するものではないが、炎症に関与する遺伝子に特異的な調節RNAのような内因性遺伝子の発現を阻害するための調節RNAをコードするポリヌクレオチド、例えば限定しないがサイトカイン及びケモカインを含む。
【0085】
細胞に核酸を導入するために様々な方法を使用することができる。その技術は、核酸がインビトロ、エキソビボ又はインビボで培養細胞中に移されるかどうかに依存して変わる。例えば、患者の細胞への核酸の導入方法はインビボ及びエキソビボ方法を含む。エキソビボ方法では、患者の細胞が除かれ、核酸がこれら単離細胞に導入され、改変された細胞が直接にあるいは例えば患者に移植されている多孔膜内に封入されて投与される(例えば米国特許第4892538号及び同第5283187号を参照)。インビボ核酸移送技術は脂質ベース系(核酸の脂質媒介移送に有用な脂質は例えばDOTMA、DOPE及びDC−Cholである)を含む。トランスポゾン系ベクター内に含められた核酸は患者に直接(例えば静脈内)投与されうる。米国特許第6613752号を参照のこと。現在知られている遺伝子マーキング及び遺伝子療法プロトコルの概説については、Anderson等, 256:808-813(1992)を参照のこと。またWO93/25673とそこに引用された文献を参照のこと。インビトロでの哺乳動物細胞中への核酸の移送に適した技術は、リポソームの使用、電気穿孔、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈降法等々を含む。
【0086】
核酸分子を含むここで検討された治療剤はそのバイオアベイラビリティ、薬物動態及び薬力学的性質を改善するために改変され又は合成されうる。例えば、一又は複数のホスホロチオエート結合を持つ治療用核酸分子を、当該分野で知られている技術を使用して合成することができる。
【実施例】
【0087】
shRNAの誘導性発現のためのpiggyBac系ベクターの構築
piggyBac系ベクターを、ルシフェラーゼに特異的なshRNAの誘導性発現のために作製した。「PB(luc−shRNA)」と称されるベクターを図1に示す。PB(luc−shRNA)cはpBluescript(Stratagene, La Jolla, CA)骨格中に2つの内部転写ユニットに隣接するpiggyBac IRsを含む。第一の転写ユニットは、ルシフェラーゼ遺伝子 (図1において「luc−shRNA」と称される)に特異的なshRNAをコードするポリヌクレオチドに作用可能に結合した、図1において「p(H1)−TetO」と称されるH1−TetO2−2xプロモーター(配列番号16)(5’から3’)を含む。shRNAをコードするポリヌクレオチドにポリアデニル化シグナルが続く。第二転写ユニットは、TetR−IRES−ピューロマイシンカセットに作用可能に結合したヒト -アクチンプロモーター及びHTLVエンハンサー (図1において「P(アクチン)」と称される)を含む。TetRコード化配列(配列番号15)はコドン最適化されている。第一及び第二転写ユニットには、piggyBac IRs (図1において「PB」と称される)を含む配列が隣接している。当業者であれば、上述のベクターを、任意の標的核酸に特異的なshRNAの発現に適応化できることが分かるであろう。
【0088】
PB(luc−shRNA)は次のようにして作製した。第二転写ユニットを含むプラスミドを常套的な組換え法を使用して構築した。PCRを使用して、第一転写ユニットを含む単位複製配列を生成し、単位複製配列をプラスミド中で第二転写ユニットの上流にサブクローニングした。ついで、PCRを用いて、第一及び第二転写ユニットを含む単位複製配列を生成した。ついで、その単位複製配列をpiggyBac IRsを含む配列間にサブクローニングしたが、piggyBac IRsはpBluescript 骨格(Stratagene, La Jolla, CA)内に含まれていた。PB(luc−shRNA)コンストラクトの全体の配列を図2及び配列番号17に示す。コンストラクトの機能的エレメントについてまた図2に注釈を付ける。
PB(luc−shRNA)は次のように、また以下に更に詳細に実証するように機能する。「オフ」状態では、Tetリプレッサータンパク質(TetR)が構成的に発現され、H1−TetO2−2xプロモーター中のTetO配列に結合し、それによってshRNAの発現を阻害する。しかしながら、テトラサイクリンアナログのドキシサイクリン(Dox)の存在下では、TetRタンパク質がプロモーターから放出され、shRNAの転写を許容する。よって、Doxの存在下では、ルシフェラーゼの発現がノックダウンされ、従ってバイオルミネッセンスが減少する。
【0089】
B.ドキシサイクリンはPB(luc−shRNA)を形質移入したES細胞中におけるルシフェラーゼ遺伝子の発現のノックダウンを誘導する
PB(luc−shRNA)がルシフェラーゼに特異的なshRNAを誘導的に発現するかどうかを試験するために、ルシフェラーゼを発現するトランスジェニック動物及びES細胞を作製した。Rosa26プロモーターからのルシフェラーゼの高レベルの発現のために、「Rosa26−ルシフェラーゼ」と称される核酸コンストラクトを作製した。Rosa26プロモーターはトランスジェニック動物において全ての組織にわたってルシフェラーゼを発現せしめ、それによって身体の画像化を可能にする。2006年10月10日出願のPCT/US2006/039035を参照のこと。Rosa26−ルシフェラーゼコンストラクトは、簡便な制限部位を使用して1.7Kbルシフェラーゼ遺伝子を含むベクター中にpBROAD3 (InvivoGen, San Diego, CA)から誘導した1.9KbのHind III−Xba I断片としてマウスRosa26プロモーターをクローニングすることにより作製した。ルシフェラーゼのより良好な発現のために、ポリアデニル化部位をルシフェラーゼ遺伝子の3’末端に付加した。
【0090】
Rosa26−ルシフェラーゼコンストラクトを、Neo耐性プラスミド(10:1)と共にES細胞中に同時形質移入し、G418で選択した。ルシフェラーゼ陽性細胞(「Rosa−luc ES細胞」と称す)を更なる研究のために選択した。その細胞をPB(luc−shRNA)での電気穿孔によって形質移入し、ピューロマイシンで選択した。選択した細胞を、0.8mg/mlのルシフェリン(ルシフェラーゼ基質)の存在下で7日間、0.5μg/ml又は1μg/ml何れかのドキシサイクリン(Dox)で処理した。図3に示されるように、Doxの濃度を増加させると、コントロール(「Doxなし」)に対してバイオルミネッセンスが減少した(つまり、ルシフェラーゼ活性が減少)が、これはDoxがルシフェラーゼに特異的なshRNAの発現を誘導したことを示している。各列は画像化細胞の徐々に長い曝露を示している。
PB(luc−shRNA)を形質移入したRosa−luc ES細胞を個々にクローニングした。クローンをルシフェリンの存在下で3日間、1μg/mlのDoxで処理した。図4に示されるように、Dox処理細胞は、Doxで処理しなかった細胞と比較して有意に低減したバイオルミネッセンスを示した。(図4において「コントロール」と標示された試料は、PB(luc−shRNA)を形質移入しなかったクローンを意味する。)バイオルミネッセンスの減少は、図5に示されるように、各個々のRosa−luc ESクローン細胞株に対して定量した。図5のy軸は図4の記録されたシグナルのカウントを表す。
【0091】
PB(luc−shRNA)を形質移入したRosa−luc ES細胞を誘導して11日間、胚様体(EBs)に分化させた。EBsは、初期胚発達をインビトロで繰り返すので遺伝子機能を研究するための強力なツールである。分化は、分化培地(10%の熱不活化仔ウシ血清、50U/mlのペニシリン、及び50μg/mlのストレプトマイシンを補填した、1.0μg/mlのドキシサイクリンを伴うか伴わないDMEN)の降り注ぐ液滴(〜600細胞/30μl/液滴)中で細胞を培養することにより誘導した。ついで、細菌学的ペトリ皿で7日間、EBsとして分化懸濁培地中で細胞を培養した。ついで、EBsを、全体で11日の間、分化培地中での連続培養のために0.1%ゼラチンをコートした組織培養プレートに移した。図6に示されるように、ドキシサイクリンを含む培地で培養されたEBsは、ドキシサイクリンを含まなかった培地で培養したEBsと比較すると、バイオルミネッセンスの有意な減少を示した。(図5中の「コントロール」と標識したバーは、PB(luc−shRNA)を形質移入していないクローンを意味する。)
【0092】
C.ドキシサイクリンはPB(luc−shRNA)トランスジェニック動物におけるルシフェラーゼ遺伝子発現のノックダウンを誘導する
Rosa26−ルシフェラーゼコンストラクトを、2006年10月10日出願のPCT/US2006/039035に記載された常套的方法を使用して、FVBマウスからの卵母細胞中に注入し、トランスジェニック「Rosa−luc」マウスを作製した。トランスジェニックファウンダーを分析し、遍在性の強いルシフェラーゼ発現の一つの系統を次の実験に使用した。
トランスポサーゼをコードする核酸を、ヒトβ−アクチンプロモーター及びCMVエンハンサーを含むプロモーター(InvivoGen, San Diego, CA)の制御下に配したベクターを構築した。得られたベクター(「pCAG−PBase」)の核酸配列を図11及び配列番号18に示す。1ng/μlの濃度のpCAG−PBaseと約1−3.2ng/μlの濃度のPB(luc−shRNA)を、単細胞Rosa−lucマウス胚(つまり受精卵)の前核中に同時注入した。注入した胚を代理雌マウスに移した。子孫の遺伝子型を、PB(luc−shRNA)の安定な生殖系列伝達を同定するためにPCRによって同定した。そのマウスを飼育して、「PB(luc−shRNA)/Rosa−luc」マウス系統と称されるマウス系統を産生した。
【0093】
ドキシサイクリンを、一週間まで0.2mg/mlのドキシサイクリンと0.5%のスクロースを含む飲料水をマウスに与えることによってPB(luc−shRNA)/Rosa−lucマウスに投与した。ついで、そのマウスに250μlのルシフェリンを20mg/mlで腹腔内注射した。ついで、マウスを麻酔し、CCDカメラを使用して全身の画像化を行った。結果を図7に示す。PB(luc−shRNA)導入遺伝子を含んでいないRosa−lucコントロールマウス(マウス#213)は、ドキシサイクリンでの処理後にバイオルミネッセンスの減少を示さなかった。PB(luc−shRNA)/Rosa−lucマウス(マウス#217)の一つは、3日の誘導後にバイオルミネッセンスの劇的な減少を示し、ドキシサイクリンがルシフェラーゼ特異的shRNAの発現を誘導したことを示しており、これが続いてルシフェラーゼの発現をノックダウンした。他の2匹のPB(luc−shRNA)/Rosa−lucマウス(マウス#s192及び223)はバイオルミネッセンスの約33%の減少を示した。図7に示された結果を図8において定量化した。PB(luc−shRNA)/Rosa−lucマウスに対するドキシサイクリンの効果を更に探求するために、我々は全体で7日間、Doxでマウス#192を処理し続けた。図9に示されるように、マウス#192からのルシフェラーゼの発現レベルは7日目に劇的に低減した。これらの結果は、ルシフェラーゼに対して特異的なshRNAの誘導はドキシサイクリン送達の効率及び/又は期間に依存しうることを示唆している。
【0094】
D.リピン又は他の遺伝子に特異的なshRNAの誘導性発現のためのpiggyBac系ベクターの構築
リピンに特異的なshRNAの誘導性発現のためのpiggyBac系ベクターを以下に記載のようにして構築した。
shRNAシャトルベクターを、pSuperior H1プロモーター(OligoEngine, Seattle, WA)をPCRによって増幅させ、ついで増幅産物をpENTR/D (Invitrogen, Carlsbad, CA)中にTOPO-クローニングすることによって、構築した。ついで、次のオリゴをベクターのMslI及びHindIII部位に連結してpShuttle−H1を得た:
センスオリゴ
5’ACGTGAAATCCCTATCAGTGATAGAGACTTATAAGTTCCCTATCAGTGATAGAGATCTAAAGGGAAAA 3’(配列番号19)
アンチセンスオリゴ
5’AGCTTTTTCCCTTTAGATCTCTATCACTGATAGGGAACTTATAAGTCTCTATCACTGATAGGGATTTCACGT 3" (配列番号20)(下線部tetO)
【0095】
pShuttle−H1中の得られたプロモーター(「H1−TetO2−2x」)は、H1プロモーターと二つのTetO配列を含んでおり、その一つはTATAボックスと転写開始部位の間に位置し、その他方はTATAボックスの上流に位置していた。pShuttle−H1中のH1−TetO2−2xプロモーターのポリヌクレオチド配列は次の配列を含んでいる:
CGAACGCTGACGTCATCAACCCGCTCCAAGGAATCGCGGGCCCAGTGTCACTAGGCGGGAACACCCAGCGCGCGTGCGCCCTGGCAGGAAGATGGCTGTGAGGGACAGGGGAGTGGCGCCCTGCAATATTTGCATGTCGCTATGTGTTCTGGGAAATCACCATAAACGTGAAATCCCTATCAGTGATAGAGACTTATAAGTTCCCTATCAGTGATAGAGATCCCC(配列番号16)。
【0096】
pShuttle−H1において、H1−TetO2−2x プロモーターにはGateway組換え部位attL1及びattL2が隣接しているので、プロモーター(及びプロモーターの下流であるがattL2の上流にサブクローニングされた任意のポリヌクレオチド)がGateway組換えによって容易に移動されうる。
【0097】
リピン遺伝子に特異的なshRNAsをコードする3つの異なったBglII−HindIII断片をそれぞれTetO配列の下流のpShuttle−H1中に連結させた。3つの断片は、次の3セットのオリゴヌクレオチドを使用して作製した(下線は自己相補性の領域を示している):
セット1
リピン-shRNA OL3A
GATCCCCCGACAACCCTGCTATCATCTTCAAGAGAGATGATAGCAGGGTTGTCGTTTTTTGGAAA (配列番号23)
リピン-shRNA OL3B
AGCTTTTCCAAAAAACGACAACCCTGCTATCATCTCTCTTGAAGATGATAGCAGGGTTGTCGGGG (配列番号24)
セット2
リピン-shRNA OL5A
GATCCCCGGTTGACGCCAAAGAATAATTCAAGAGATTATTCTTTGGCGTCAACCTTTTTTGGAAA (配列番号25)
リピン-shRNA OL5B
AGCTTTTCCAAAAAAGGTTGACGCCAAAGAATAATCTCTTGAATTATTCTTTGGCGTCAACCGGG (配列番号26)
セット3
リピン-shRNA OL8A GATCCCCCCGGAAGACTCCTGATAAATTCAAGAGATTTATCAGGAGTCTTCCGGTTTTTTGGAAA (配列番号27)
リピン-shRNA OL8B AGCTTTTCCAAAAAACCGGAAGACTCCTGATAAATCTCTTGAATTTATCAGGAGTCTTCCGGGGG (配列番号28)
【0098】
3つの得られたコンストラクトは、図10Aに示されるように、上位概念的にpShuttle−H1−shRNA(リピン)と称される。(H1−TetO2−2xプロモーターは図10Aにおいて「H1プロモーター」と称される。)pShuttle−H1−shRNA(リピン)からのH1プロモーター−shRNAカセットを、ついでGateway組換えを使用してpHUSH−GWプラスミド(2006年7月27日出願の米国出願第11/460606号)中にサブクローニングした。図10Aに示されるように、pHUSH−GWプラスミドは、TetR−IRES−Puromycin−polyAカセットの上流にattR1−cmR−ccdB−attR2カセットを含んでいる。()TetR−IRES−ピューロマイシン−polyAカセットは図10A及び10Bにおいて「TetR−IRES−Puro」と称される。)得られたコンストラクトは、TetR−IRES−Puroカセットの上流にH1プロモーター−shRNAカセットを含むが、図10Aに示されるように、「pHUSH−shRNA(リピン)」と称される。ついで、図10Bに示されるように、H1プロモーター−shRNA−TetR−IRES−Puro断片を、HpaI及びBamHI制限部位を有するプライマーを使用してpHUSH−shRNA(リピン)からPCRによって増幅させた。ついで、単位複製配列を、pBluescriptSKII骨格(図10Bにおいて「PB−pSK II」と称する)中のpiggyBacトランスポゾンのHpaI及びBglII部位中にサブクローニングして、PB(リピン−shRNA)を作製した。配列番号3及び5(セクションII.A.1.bの「配置2」を参照)に相当するpiggyBac IRsは標示された領域内にある。PB(luc−shRNA)に対して上述したものと同じ方法でPB(lipin−shRNA)を使用して、トランスジェニックマウスを作製した。
当業者であれば、上述のベクターを、任意の標的核酸に特異的なshRNAを発現できるように適応化させることができることが分かるであろう。
【0099】
前記発明は理解の明確さのために例証と実施例によってある程度詳細に記載したが、記載と実施例が発明の範囲を限定すると考えてはならない。ここで引用された全ての特許及び科学的文献の開示は出典明示によってその全体がここに援用される。ここで使用される項目名は構成上の簡便性のためのもので、限定するものと解してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含むものと;
(b)TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットと;
(c)インバーテッドリピートの一方が(a)及び(b)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(a)及び(b)の3’である一対のインバーテッドリピート
を含む核酸コンストラクト。
【請求項2】
インバーテッドリピートの対がpiggyBacインバーテッドリピートである請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項3】
インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む請求項2に記載の核酸コンストラクト。
【請求項4】
ポリヌクレオチドが調節RNAをコードする請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項5】
調節RNAがshRNAである請求項4に記載の核酸コンストラクト。
【請求項6】
誘導プロモーターがH1又はU6プロモーターを更に含む請求項1から4の何れか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項7】
誘導プロモーターが少なくとも二のTetO配列を含む請求項6に記載の核酸コンストラクト。
【請求項8】
誘導プロモーターが配列番号16の核酸配列を含む請求項7に記載の核酸コンストラクト。
【請求項9】
ポリヌクレオチドが第一RNAをコードし、核酸コンストラクトが第三転写ユニットを更に含み、第三転写ユニットが誘導プロモーターと作用可能に結合した第二ポリヌクレオチドを含み、第二ポリヌクレオチドが第二RNAをコードし、第一RNA及び第二RNAが相補的である少なくとも10の近接ヌクレオチドの配列を含む請求項1又は2に記載の核酸コンストラクト。
【請求項10】
選択マーカーを更に含む請求項1から4の何れか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項11】
選択マーカーが第二転写ユニットに配されている請求項10に記載の核酸コンストラクト。
【請求項12】
IRESが、TetRをコードするコード配列と選択マーカーの間に配されている請求項11に記載の核酸コンストラクト。
【請求項13】
TetRをコードするコード配列がコドン最適化されている請求項1から4の何れか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項14】
TetRをコードするコード配列が配列番号15のヌクレオチド1−507の核酸配列を含む請求項13に記載の核酸コンストラクト。
【請求項15】
細胞においてポリヌクレオチドを発現させる方法において、
(a)細胞中に、
(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含むものと;
(ii)TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットと;
(iii)インバーテッドリピートの一方が(i)及び(ii)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)及び(ii)の3’である一対のインバーテッドリピート
を含む核酸コンストラクトを導入し、
(b)該細胞を、誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤に暴露する
ことを含む方法。
【請求項16】
インバーテッドリピートの対がpiggyBacインバーテッドリピートである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリヌクレオチドが調節RNAをコードする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
調節RNAがshRNAである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
インバーテッドリピートに作用するトランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドを細胞中に導入して核酸転位を媒介することを更に含む請求項15に記載の方法。
【請求項21】
トランスポサーゼがpiggyBacトランスポサーゼである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
トランスポサーゼが、(a)配列番号14に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)(a)の断片を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞における内因性遺伝子の発現を阻害する方法において、
(a)細胞中に、
(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、ポリヌクレオチドが内因性遺伝子に特異的な調節RNAをコードするものと;
(ii)インバーテッドリピートの一方が(i)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)の3’である一対のインバーテッドリピート
を含む核酸コンストラクトを導入し、
(b)該細胞を、誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤に暴露する
ことを含む方法。
【請求項24】
調節RNAがshRNAである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含み、核酸コンストラクトが、TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットを更に含み、インバーテッドリピートの一方が第二転写ユニットの5’のものであり、インバーテッドリピートの他方が第二転写ユニットの3’のものである請求項23に記載の方法。
【請求項26】
インバーテッドリピートがpiggyBacインバーテッドリピートである請求項23に記載の方法。
【請求項27】
インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
piggyBacトランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドを細胞中に導入することを更に含む請求項26に記載の方法。
【請求項29】
piggyBacトランスポサーゼが、(a)配列番号14に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)(a)の断片を含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
shRNAが、(a)リピンをコードする遺伝子、(b)VEGFをコードする遺伝子、又は(c)癌遺伝子である遺伝子から選択される内因性遺伝子に対して特異的である請求項24に記載の方法。
【請求項31】
細胞が胚細胞である請求項23に記載の方法。
【請求項32】
第二転写ユニットが選択マーカーを更に含む請求項25に記載の方法。
【請求項33】
IRESが、TetRをコードするコード配列と選択マーカーの間に配されている請求項32に記載の方法。
【請求項34】
TetRをコードするコード配列がコドン最適化されている請求項25に記載の方法。
【請求項35】
TetRをコードするコード配列が配列番号15のヌクレオチド1−507の核酸配列を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
誘導プロモーターがH1又はU6プロモーターを含む請求項23から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
誘導プロモーターが少なくとも二のTetO配列を含む請求項25に記載の方法。
【請求項38】
誘導プロモーターが配列番号16の核酸配列を含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
トランスジェニック哺乳動物においてポリヌクレオチドを発現させる方法において、
(a)哺乳類の非ヒト胚細胞中に、
(i)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、ポリヌクレオチドが内因性遺伝子に特異的な調節RNAをコードするものと;
(ii)インバーテッドリピートの一方が(i)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(i)の3’である一対のインバーテッドリピート
を含む核酸コンストラクトを導入し;
(b)該哺乳類の非ヒト胚細胞中に、インバーテッドリピートに作用するトランスポサーゼをコードするポリヌクレオチドを導入して核酸転位を媒介させ;
(c)核酸コンストラクトとトランスポサーゼをコードするコード配列が導入された哺乳類の非ヒト胚細胞からトランスジェニック哺乳動物を生産し;
(d)誘導プロモーターからポリヌクレオチドの発現を誘導する誘導剤をトランスジェニック哺乳動物に投与する
ことを更に含む方法。
【請求項40】
調節RNAがshRNAである請求項39に記載の方法。
【請求項41】
誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含み、核酸コンストラクトが、TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットを更に含み、インバーテッドリピートの一方が第二転写ユニットの5’のものであり、インバーテッドリピートの他方が第二転写ユニットの3’のものである請求項39に記載の方法。
【請求項42】
インバーテッドリピートの対がpiggyBacトランスポソンから誘導され、トランスポサーゼがpiggyBacトランスポサーゼである請求項39に記載の方法。
【請求項43】
インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
トランスポサーゼが、(a)配列番号14に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、又は(b)(a)の断片を含む請求項42に記載の方法。
【請求項45】
shRNAが、(a)リピンをコードする遺伝子、(b)VEGFをコードする遺伝子、又は(c)癌遺伝子である遺伝子から選択される内因性遺伝子に対して特異的である請求項40に記載の方法。
【請求項46】
哺乳類の非ヒト胚細胞がマウス細胞である請求項39から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
哺乳類の非ヒト胚細胞が受精卵である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(a)誘導プロモーターに作用可能に結合したポリヌクレオチドを含む第一転写ユニットであって、ポリヌクレオチドが内因性遺伝子に特異的な調節RNAをコードするものと;
(b)インバーテッドリピートの一方が(a)の5’であり、インバーテッドリピートの他方が(b)の3’である一対のインバーテッドリピート
を含む核酸コンストラクト。
【請求項49】
調節RNAがshRNAである請求項39に記載の方法。
【請求項50】
誘導プロモーターが一又は複数のTetO配列を含み、核酸コンストラクトが、TetRをコードするコード配列を含む第二転写ユニットを更に含む請求項48に記載の核酸コンストラクト。
【請求項51】
インバーテッドリピートがpiggyBacインバーテッドリピートである請求項48に記載の核酸コンストラクト。
【請求項52】
インバーテッドリピートの一方又は他方が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるポリヌクレオチド配列を含む請求項51に記載の核酸コンストラクト。
【請求項53】
shRNAが、(a)リピンをコードする遺伝子、(b)VEGFをコードする遺伝子、又は(c)癌遺伝子である遺伝子から選択される内因性遺伝子に対して特異的である請求項49に記載の方法。
【請求項54】
第二転写ユニットが選択マーカーを更に含む請求項50に記載の核酸コンストラクト。
【請求項55】
IRESが、TetRをコードするコード配列と選択マーカーの間に配されている請求項54に記載の核酸コンストラクト。
【請求項56】
TetRをコードするコード配列がコドン最適化されている請求項50に記載の核酸コンストラクト。
【請求項57】
TetRをコードするコード配列が配列番号15のヌクレオチド1−507の核酸配列を含む請求項56に記載の核酸コンストラクト。
【請求項58】
誘導プロモーターがH1又はU6プロモーターを含む請求項48から51の何れか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項59】
誘導プロモーターが少なくとも二のTetO配列を含む請求項50に記載の方法。
【請求項60】
誘導プロモーターが配列番号16の核酸配列を含む請求項59に記載の方法。
【請求項61】
請求項1から4又は請求項48から51の何れか一項に記載の核酸コンストラクトを含む細胞。
【請求項62】
細胞が哺乳動物細胞である請求項61に記載の細胞。
【請求項63】
哺乳動物細胞が胚細胞である請求項62に記載の細胞。
【請求項64】
哺乳動物細胞がマウス細胞である請求項62に記載の細胞。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図2j】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【公表番号】特表2010−512794(P2010−512794A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543031(P2009−543031)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/086417
【国際公開番号】WO2008/079608
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】