核酸を定量するための定量化スキーム
試験試料中の標的核酸(標的)を定量するためのコンピュータープログラム製品である機械技術を含む、方法および装置。この技術には、標的と、標的とは異なる定義済みの初期量の内部対照核酸(対照)を提供すること;標的および対照を、一般的な増幅プロセスにおいて増幅すること;増幅の進行を示すパラメーターに関して、標的についての増幅産物および対照についての増幅産物の量を示す数量を測定すること;標的の増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、標的についての進行パラメーターの特性値を決定すること;場合によっては、対照の増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、対照についての進行パラメーターの特性値を決定すること;ならびに標的についての特性値を少なくとも使用して、予め決定されたかまたは選択された定量化スキームに従っての標的の最初の量を定量することが含まれる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、核酸の定量化(定量)に関する。
【0002】
背景
核酸の定量化(定量)方法は、多くの分子生物学の領域において重要であり、特に分子診断にとって重要である。DNAレベルでは、このような方法は、例えば、ゲノム中で増幅された遺伝子配列のコピー数を決定するために使用される。さらに、核酸の定量化方法は、mRNA量の決定が、通常、それぞれのコード遺伝子の発現についての尺度となっているため、このmRNA量の決定と組み合わせて使用される
【0003】
核酸または核酸配列を検出し、定量する多数の種々の分析方法の中でも、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、最も有力で一般に普及した技術となっており、その原理は、US 4,683,195、およびUS 4,683,202(Mullisら)に開示されている。しかし、典型的なPCR反応それ自体単独および、これに対応した典型的な逆転写酵素PCR(RT-PCR)反応それ自体では、量的なデータしか生じない。なぜなら、指数的または累進的な増殖期の後では、増幅された核酸の量はプラトーに達しており、生じた反応産物の量は、標的核酸または標的核酸配列、具体的には、鋳型DNAの初期濃度に比例していないからである。しかし、終点分析により、それぞれの出発核酸の有無が明らかとなる。こうした情報は、特定の用途にとって、具体的には、臨床的な適用において、高価値なものである。臨床的適用といった他の適用について、例えば、特定の疾患に関する適切な診断を行うために定量的測定が必要とされる。例えば、特定の感染性疾患、癌および自己免疫疾患を診断するために、正確な定量的測定が必要とされる。処置に対する疾患の応答を評価し、回復の予後を行うことは、治療上有用であり得る。また、試料中に何らかの混入物質が存在している場合に起こり得る偽陽性を検出するのに正確な定量的測定も役立ち得る。
【0004】
概要
本発明により、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化方法が提供される。一般的には、一側面において、本方法には、一般的な試験試料中に、標的核酸とは異なる定義済みの初期量の対照核酸が含まれている少なくとも1つの内部対照とともに、少なくとも1つの標的核酸を提供する工程、一般的な核酸増幅プロセスにおいて該試験試料中の標的核酸および対照核酸を増幅する工程、増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、増幅の間に標的核酸および対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を直接または間接的に測定する工程、標的核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、標的核酸についての進行パラメーターの特性値を決定する工程、少なくとも特定の場合について、対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、対照核酸についても進行パラメーターの特性値を決定する工程、および少なくとも標的核酸について測定された特性値に基づいて、予め決定した、または選択した定量化スキームに従って、試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程が含まれる。
【0005】
特定の実施においては、この方法にはさらに、異なるタイプの複数の定量化スキームの間で選択を行う工程が含まれる。ここでは、少なくとも1つの定量化スキームにより、対照核酸についての特性値を参照することなく、試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供され、また、少なくとも1つの定量化スキームにより、対照核酸についての特性値を参照して、試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される。
【0006】
本発明の1つ以上の態様の詳細を、添付の図面と以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、また特許請求の範囲から明らかであろう。
【0007】
詳細な説明
信頼性があり再現性のある量的データを得るために、種々のPCRに基づくプロトコルが数多く開発されている。一般的には、2種類の基本原理、すなわち、i)内部標準を使用する競合PCR(またはRT-PCR)、およびii)較正曲線を最初に作成することによる標的DNAの定量化が、従来より区別され得る。これに関しては、Siebert, Molecular Diagnosis of Infectious Disease(Udo Reischl, 編 Humana Press, Totowa, New Jersey, p.55-79, 1998)が参照される。
【0008】
競合PCR、またはRT-PCRでは、増幅反応のプラトー期での形成されたPCR産物の量の終点測定が可能である。例えば、特異的標的配列は、コピー数が既知である内部標準の希釈系列とともに、同時に増幅される。標的配列の初期コピー数は、同量のPCR産物を含む標準および標的配列の混合物から推定される(ZimmermannおよびMannhalter, BioTechniques 21: 280-279, 1996)。この方法の欠点は、測定が増幅反応の飽和領域において行われることである。
【0009】
オンライン検出によりPCR反応の速度を測定できることから、定量化データの生成が大幅に向上する。蛍光のモニタリングによりアンプリコンを検出することによって、こうした測定が可能になった。このような技術の例が、WO 97/46707、WO 97/46712、およびWO 97/46714(Wittwerら)に詳細に開示されている。
【0010】
Higuchiら(BioTechnology 11,1026-2030, 1993)には、それぞれのサイクルで蛍光のモニタリングを使用する初期鋳型の定量化のためのアプローチが開示されている。蛍光閾値を用いて、初期鋳型濃度に関連した分差サイクル数(fractional cycle number)を定義したものである。詳細には、初期鋳型濃度の対数は、蛍光対サイクル数曲線と蛍光閾値との交点として定義される分差サイクル数(CT)に対して反比例することが見出された。
【0011】
PCRの指数期の速度論的リアルタイム定量化は、内部標準の他、外部標準にも基づいて行われ得る。一般的には、PCR産物の形成は、PCRの各サイクルにおいてモニタリングされる。増幅は通常、増幅反応中に蛍光シグナルを測定するためのさらなる装置を有するサーモサイクラーで測定される。この典型的な例としては、Roche Diagnostics Light Cycler(カタログ番号2 0110468)がある。
【0012】
増幅産物は、例えば、標的核酸に結合した場合にのみ蛍光シグナルを放出する蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブによって、または、特定の場合には、二本鎖DNAに結合する蛍光色素によって検出される。分析される全ての反応について、定義済みのシグナル閾値が決定され、標的核酸について、また、−内部標準または内部対照(場合によっては、ハウスキーピング遺伝子)を使用する場合は−、参照核酸について、この閾値に達するために必要なサイクル数cpが決定される。標的分子の絶対的または相対的なコピー数は、この標的核酸および参照核酸について得られたcp値に基づいて、または、−外部標準を使用する場合は−、標的分子について得られたそれぞれのcp値、および参照核酸(例えば、参照核酸の希釈系列)についての別々の増幅結果に基づいて構築された標準曲線に基づいて、決定され得る(Gibsonら、Genome Research 6: 995-1001, 1996; Biecheら、Cancer Research 59: 2759-2765, 1999; WO 97/46707; WO 97/46712; WO 97/46714)。
【0013】
外部標準の使用には、標準および標的核酸を別々の反応容器において増幅させるという利点がある。この場合、標的核酸と同じ配列を有している標準を使用することができる。しかし、このタイプの定量化では、例えば、その後のPCR反応の効率を低下させる阻害性成分が原因で、系統誤差が生じることがある。内部標準を使用することによって、すなわち、標準と標的核酸を1つの反応容器の中で増幅させることによって、これらの誤差をなくすことができる。しかし、この方法の欠点は、標準の増幅と標的核酸の増幅とを区別できるように、分析される標的核酸と比較して異なる配列を有している標準を使用しなければならないことである。配列が異なる場合には、PCR適用での異なる効率をなくすことができないため、定量化においても同様に系統誤差が生じ得る。
【0014】
この内部対照もしくは外部対照または標準の使用に関する問題について、本発明者らは以下のアプローチを区別する:
【0015】
a)異なる量の既知のDNAにPCRを行うことによって外部対照(外部標準という語も該当)を増幅し、標準曲線を得る。別々に(場合によっては、同時に)増幅した試料DNAの量は、標準曲線の補間によって直接導かれ得る。この定量化方法の前提条件は、いずれのPCR(標準DNAのPCRおよび試料DNAのPCR)の効率も十分に一致し、増幅反応が指数期にあることである。
【0016】
b)複合PCRまたは競合PCRとして、内部対照(IC)または内部標準(IQS、内部定量化標準(Internal Quantification Standards))を使用したPCRを行うことができる。複合PCRにおいては、試料DNAについてのプライマー対とは異なるDNA分子からICについてのプライマー対を誘導し、一方、競合PCRにおいては、IC DNAと試料DNAのいずれにも同じプライマー対を使用する。複合PCRによる定量化のための前提条件は、外部対照を使用したPCRと同じである。しかし、外部標準を使用したPCRと比較すると、IC DNAおよび試料DNAのいずれも同じチューブ内で増幅されることから、複合PCRには、チューブの一貫性またはサーマルサイクラー内での位置におけるバリエーションによる問題が排除されるという利点がある。競合PCRにおいては、同じプライマー対によってIC DNAおよび試料DNAから生じるアンプリコンを区別する必要がある。増幅の間は、IC DNAおよび試料DNAのいずれも同じプライマー対について競合する。初期鋳型DNA(IC DNAおよび試料DNA)の量が等しくない場合は、PCR産物の量は、過剰であるDNAの累積(credit)へとシフトする。初期鋳型DNAの量が等モルである場合にのみ、同じ増幅効率が適用されるという限りにおいて、IC DNAと試料DNAについての生成物量は同じになる。
【0017】
すでに示したように、増幅反応の速度論の測定の可能性は、増幅産物の作成を分光光度的検出の原理により、具体的には、蛍光によって継続的に測定することができる機器および方法が利用可能であるので、非常に容易になる。適切な機器の一例は、Wittwerら、BioTechniques 22, No.1, 176-181(1997)に詳細に記載されている。
【0018】
標的依存的蛍光シグナルに基づき、増幅産物の作成を継続的にモニタリングすることができるいくつかの検出形式が開示されている(Wittwerら、BioTechniques 22, No.1, 130-138,1997に概説されている)。これらの検出形式としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
1.蛍光二本鎖DNAを認識する化合物の使用
二本鎖の増幅産物の量は、通常、分析される試料中にもともと存在する核酸の量を上回るので、適切な波長で励起させると、それらが二本鎖DNAに結合している場合にのみ強い蛍光を示す二本鎖DNA特異的色素が、使用され得る。PCR反応の効率には影響を与えない色素、例えば、SYBR Green Iが有利に使用される。
【0020】
2.ハイブリダイゼーションの際の高い蛍光共鳴エネルギー転移
この検出形式については、それぞれが蛍光部分で標識された2つのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブが使用される。これらのプローブは、増幅産物の一方の鎖の、隣接しているが、重複はしてはいない領域に対してハイブリダイズすることができる。標的DNAにハイブリダイズすると、2つの蛍光標識は密接して接触し、その結果、2つの蛍光部分の間で蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が起こり得る。結果として、ドナー部分の励起およびこれに続く第2のアクセプター部分の蛍光放出の測定によってハイブリダイゼーションをモニタリングすることができる。
【0021】
同様の態様においては、一方だけが蛍光標識されたプローブが使用され、1つの適切に標識されたプライマーとともに、特異的FRET対としての役割を果たす場合もある(Bernardら、Analytical Biochemistry 255,p.101-107,1998)。
【0022】
3.TaqManTM機器において使用される検出原理
増幅産物を検出するために、蛍光物質で標識された一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを使用し、Forster型エネルギー転移効果に基づいて消光化合物として作用し得る同一プローブ上の第2の標識によって、その蛍光の放出が消光される。PCR反応のアニーリング工程の間に、該プローブはその標的配列に対してハイブリダイズし、続いて、プライマーの伸張の間に、5'-3'-エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼがハイブリダイゼーションプローブを小さい断片にして消化する。その結果、該蛍光物質は消光化合物から離れる。適切な励起後、蓄積している増幅産物の指標として蛍光放出をモニタリングすることができる。
【0023】
4.分子ビーコン
TaqManTM機器において使用されるプローブ/形式と同様に、分子ビーコンオリゴヌクレオチドは、分子の二次構造が原因で互いに密接して接近する蛍光化合物と消光化合物で標識される。標的DNAに結合すると、分子内水素結合が壊れ、プローブの一方の末端に存在している蛍光化合物は、プローブの反対側の末端に存在している消光化合物から離れる(Lizardiら、US 5,118,801)。
【0024】
試験試料中の標的核酸配列の不明な最初の量を決定する方法は、US 2002/0031768 A1(McMillanら)により明らかである。試験試料中の標的核酸配列の不明な最初の量、およびそれぞれの較正試料中の較正核酸配列の既知の最初の量が増幅される。それぞれの核酸配列について、それぞれの閾値が、配列について導かれる増殖曲線の導関数を用いて決定される。標的配列について決定された閾値と、較正核酸配列について決定された閾値から導かれた較正曲線を使用して、標的核酸の最初の量が決定される。McMillanらには、この方法を実施するために使用することができる機器および装置もまた開示されている。さらに、定量用内部対照を使用して、または内部標準を使用して、核酸配列の最初の量を決定する方法は、例えば、US 2002/0034745 A1、US 2002/0034746 A1、およびUS 2002/0058282 A1に開示されている。
【0025】
増殖曲線から計算された導関数に基づく分析物の定量化もまた、EP 1 041 158 A2から明らかである(US 6,303,305 B1、US 6,503,720 B2、およびUS 2002/0028452 A1, Wittwerらも比較)。
【0026】
EP 1 138 783 A2およびEP 1 138 784 A2(また、US 2002/0058262 A1, Sagnerらも比較)には、増幅効率の決定を含む標的核酸の絶対的および相対的定量化方法が開示されている。これは、内部標準、さらには外部標準をいう。
【0027】
US 5,389,512(Sninskyら)には、ポリメラーゼ連鎖反応によって試料中の核酸配列の相対的な量を決定する方法が開示されている。この方法では、試料中に存在する核酸セグメントと、第2の核酸セグメントを同時に増幅する。それぞれのセグメントから増幅されたDNAの量を決定し、標準曲線に対して比較して、第2のセグメントに対する第1のセグメントの比として表される、増幅前の試料中に存在する核酸セグメントの量を決定する。第1のセグメントの増幅に関する曲線と、第2のセグメントの増幅に関する曲線との2つの標準曲線が使用される。
【0028】
US 5,476,774(Wangら)により、ポリメラーゼ連鎖反応によって試料中の標的核酸セグメントの量を決定するためのさらなる方法が提供されている。この方法では、標的核酸セグメントと内部標準である核酸セグメントを同時に増幅する。それぞれのセグメントから増幅されたDNAの量を決定し、標準曲線に対して比較して、増幅前の試料中に存在している標的核酸セグメントの量を決定する。
【0029】
種々の刊行物には、PCR定量化の状況において有利に使用することができる機器および装置が開示されている。例えば、EP 0 953 379 A1には、複数の反応容器内で行われる反応を同時にモニタリングするための装置が開示されており、EP 0 953 837 A1には、そのような装置において使用することができる蛍光測定装置が開示されており、また、EP 0 955 097 A1には、核酸の増幅を行うためのサーマルサイクラーが開示されている。
【0030】
上記の刊行物は、引用によって完全に本出願の開示の中に援用される。さらに、これに関しては、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版, Vol.28,「Polymerase Chain Reaction」の項(125〜159ページ)、特に、10章「Quantitative PCR」(140〜144ページ, WILEY-VCH-Verlag, Weinheim, Germany 2003)(これもまた、引用によりその全体が本明細書中に援用される)が参照される。
【0031】
本発明は、
− 一般的な試験試料中に少なくとも1つの内部対照とともに少なくとも1つの標的核酸を提供する工程であって、上記内部対照には、上記標的核酸とは異なる定義済みの初期量の対照核酸が含まれている、工程;
− 上記試験試料中の上記標的核酸および上記対照核酸を、一般的な核酸増幅プロセスにおいて増幅する工程;
− 上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標的核酸および上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を測定する工程;
− 上記標的核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標的核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 上記対照核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記対照核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 予め決定された定量化スキームにしたがって、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程であって、上記定量化スキームにより、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される、工程;
を含む、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法をいい、第1のさらに一般的な側面によって、これを提供する。
【0032】
増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量の測定は、例えば、増幅産物の特徴を決定することによって直接、あるいは、例えば、増幅産物の量に関連または相関する数量を測定することによって間接的に行われ得る。
【0033】
この定量化のための方法により、内部対照または標準と組み合わせて外部標準を使用することができる。その結果、一方においては、標準核酸は標的核酸と同じ配列を有し得、他方においては、異なる反応容器の中でのそれぞれのPCR反応の効率の違いを、内部対照または標準に基づいて、ある程度考慮することができる。上記で定義される方法の有利な態様は、以下の説明から示唆される。
【0034】
一般的な核酸増幅プロセスにおける一般的な試料中の異なる核酸の増幅により、種々の核酸についての個々の増幅反応の間での競合によって生じる効果および問題が導かれ得ることが観察された。PCRおよびRT-PCRに関しては、PCR反応混合物中に含まれるヌクレオチド、酵素、および他の成分について、また競合PCRにおいては、それぞれの核酸が同じプライマー結合部位(primer binding side)を有する場合には、プライマーについて、競合が存在する。具体的には、定量化のための方法における内部定量化標準または内部対照と標的の競合的増幅により、この方法の感度の低下が導かれ得るか、または、さらには、増幅反応、特にPCR反応の開始時点で標的の量と内部対照の量との間に強い不均衡が生じている場合には、使用される定量化スキームにしたがって標的の初期量の定量化ができない場合もある。標的の内部対照は低い感度で検出されるか、または定量化できる程度には検出されないかのいずれかとなる。例えば、内部対照の濃度が高すぎる場合には、標的増殖曲線の脱落があり得、または、標的濃度が高すぎる場合には、内部対照増殖曲線の脱落があり得る。したがって、この方法、および対応するシステムのダイナミックレンジが限られる。線形の範囲についての目標とされる詳細は、特定の試薬ロットに基づいて下限または上限のいずれかを満たすことだけである。もちろん、下限と上限に照準を定める異なる試薬ロットを提供することも可能である。しかし、この解決方法は、実際的な観点からは面倒であり、定量化/検出限界での不安定な状況が原因で、少なくとも一方(下または上)の端点において失敗する相当なリスクが残る。
【0035】
第1のより一般的な側面にしたがうと、本発明の1つの目的は、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法を提供することである。これは従来の技術の方法よりも、系統誤差が生じにくい。この目的は、上記で定義された方法によって達成される。
【0036】
第2のより特異的な側面にしたがうと、本発明の1つの目的は、さらに広いダイナミックレンジを有している、1つの試験試料、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法を提供することである。
【0037】
両方の目的を達成するために、1つの実施において、
a)一般的な試験試料中に少なくとも1つの内部対照とともに少なくとも1つの標的核酸を提供する工程であって、上記内部対照には、上記標的核酸とは異なる定義済みの初期量の対照核酸が含まれている、工程;
b)上記試験試料中の上記標的核酸および上記対照核酸を、一般的な核酸増幅プロセスにおいて増幅する工程;
c)上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標的核酸および上記対照核酸についての増幅産物の量または量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
d)上記標的核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標的核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
e)上記対照核酸についての増幅産物の測定量に関する特定の予め定義された条件が適用される場合に、上記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記対照核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
f)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、上記選択は、上記標的核酸についての増幅産物の量に関する上記測定結果、上記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果、ならびに、上記の特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、少なくとも1つの第1のタイプの定量化スキームによっては、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量が提供され、
ここで、少なくとも1つの第2のタイプの定量化スキームによっては、上記標的核酸についての特性値と、関連する参照データに基づき、上記対照核酸についての特性値を全く基準とすることなく、上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量が提供される、工程;
g)上記標的核酸について決定された特性値に少なくとも基づいて選択された定量化スキームにしたがって、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程;
を含む、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法が提供される。
【0038】
この実施においては、ダイナミックレンジは、異なる範囲について異なる定量化スキームを使用することによって、例えば、低い範囲と中程度の範囲については第1のタイプの定量化スキームを、そして必要に応じてもしくは適切である場合には、上部の範囲については第2のタイプの定量化スキームを使用することによって、拡大され得る。特に、標的濃度が高すぎる状況における内部対照の増殖曲線の脱落によっては、第2のタイプの定量化スキームには影響はない。
【0039】
第2のタイプの定量化スキームおよび使用される関連する参照データの詳細によっては、外部標準を使用し、内部対照を使用しない定量化に基づいて通常得られる定量化の質に事実上相当する質の定量化を得ることは、原理上は可能である。第2のタイプの定量化スキーム(単数または複数)が定量化方法の目標とされる線形領域の上部領域に言及する場合は、かかる状況が全体としてさらに良好である。なぜなら、PCR増幅の状況では、高い標的濃度は、一定の標的量に達するPCRサイクル数がより少ないことを意味し、その結果、1回のPCRサイクルあたりの増幅係数の差はあまり関係がないことを意味するからである。言い換えると:力価測定尺度の正確さはPCRサイクルの数に反比例して低下するので、高い初期標的濃度に基づいて得られる高い標的量の誤差は比較的小さい。なぜなら、定量化プロセスには少ないサイクル数しか含まれていないからである。もちろん、内部対照の増幅結果を考慮することによるさらなる確認等の内部対照の使用の利点は、第2のタイプの定量化スキームに基づいては得られない。しかし、これは、どんな場合でも、定量化が得られないか、完全に誤った定量化が得られるよりはよい。
【0040】
別の実施においては、第2のタイプの定量化スキームは、以下の条件:
i)上記対照核酸についての特性値が決定されていない場合、
ii)上記対照核酸についての特性値が、予め定義された閾値を上回る場合、
iii)上記標的核酸についての特性値が、予め定義された閾値に届かない場合、
iv)上記対照核酸についての特性値が、上記標的核酸についての特性値を少なくとも予め定義された量上回る場合、
v)増幅プロセスの最終段階または最終段階に近い段階について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された最小プラトー値に届かない場合、
vi)標的核酸についての特性値に関連する増幅プロセスの瞬間的な状態について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された閾値、増幅プロセスの上記瞬間的な状態について測定もしくは推定される上記標的核酸についての増幅産物の量もしくは増幅産物の量を示す数量に届かない場合
の少なくとも1つが適用される場合に、選択される。
【0041】
1つのアプローチにしたがうと、第1のタイプの定量化スキームは、上記対照核酸についての特性値が決定されている場合に、選択される。あるいは、第1のタイプの定量化スキームは、上記対照核酸についての特性値が決定されており、以下の条件:
ii)上記対照核酸についての特性値が予め定義された閾値に届かない場合、
iii)上記標的核酸についての特性値が予め定義された閾値を上回る場合、
iv)上記対照核酸についての特性値が、上記標的核酸についての特性値に関して定義された閾値にとどかず、それよりも大きい場合、
v)増幅プロセスの最終段階または最終段階に近い段階について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された最小プラトー値を上回る場合、
vi)標的核酸についての特性値に関連する増幅プロセスの瞬間的な状態について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された閾値、増幅プロセスの上記瞬間的な状態について測定または推定される上記標的核酸についての増幅産物の量、または増幅産物の量を示す数量を上回る場合
の少なくとも1つが適用される場合に、選択され得る。
【0042】
第1のタイプの上記またはそれぞれの定量化スキームに関連する参照データは、
A)一般的な試料中に少なくとも1つの内部対照と共に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、上記標準には定義済みの初期量の標準核酸が含まれ、上記内部対照には定義済みの初期量の対照核酸が含まれ、上記標準核酸と上記対照核酸は異なるものである工程;
B)一般的な核酸増幅プロセスにおいて、上記試料中で上記標準および上記内部対照を増幅する工程;
C)上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標準核酸および上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
D)上記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標準核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
E)上記対照核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記対照核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
H)一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記特性値とを、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程;
によって決定または提供される較正データであり得る。
【0043】
上記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する参照データに関して、2つのアプローチが想定される。第1のアプローチにしたがうと、参照データは、
AA)試料中に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、上記標準には定義済みの初期量の標準核酸が含まれる工程;
BB)核酸増幅プロセスにおいて上記標準を増幅する工程;
CC)上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標準核酸についての増幅産物の量、または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
DD)上記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標準核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
HH)一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記特性値とを、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データ提供する工程;
に基づいて決定されるかまたは提供される較正データである。
【0044】
第2のアプローチにしたがうと、上記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する上記参照データは、工程A)〜D)に基づいて、および以下に基づいて決定または提供される、較正データである:
HH)上記標準核酸と共に増幅される上記対照核酸の上記定義済みの初期量に関連する上記較正データを提供するための、一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記標準核酸に関連する特性値の、第2のタイプの上記定量化スキームに関する関連付けは、上記標的核酸とともに増幅される上記対照核酸の上記定義済みの初期量に相当し得、上記対照核酸(これは、上記標準核酸とともに増幅される)は上記標的核酸とともに増幅される上記対照核酸に相当し得、上記標準は外部標準であり得、上記試料は上記試験試料とは異なる。上記標準核酸は上記標的核酸に相当し得る。
【0045】
上記工程A)〜H)の少なくとも1つ、および場合によってはそれらの全て、ならびに場合によってはHH)、または/ならびに、上記工程AA)〜HH)の少なくとも1つ、または場合によってはそれらの全ては、それぞれの工程a)〜g)と同時に行われ得る。
【0046】
工程A)〜E)、または/および工程AA)〜DD)は、工程a)〜e)が行われる前、または後に行われ得る。工程A)〜H)、および場合によってはHH)、あるいは/ならびにAA〜HH)は、工程a)〜g)が行われる前に行われ得る。例えば、上記工程は、定量化キットの製造業者によって行われ得る。具体的には、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データ、または/および第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データは、定量化キットの構成要素とともに提供され得る。
【0047】
工程A)においては、上記標準核酸の希釈系列が提供され得る。それぞれの試料中の各希釈物は、上記内部対照とともに提供される。工程B)〜E)は、上記希釈系列の全ての試料に関して行われ、工程H)には、
− 一方の上記試料の標準核酸の初期量と、他方の上記試料について決定された特性値を、第1のタイプの上記定量化スキームと関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関係する上記較正データを提供する工程
が含まれる。
【0048】
さらに、工程HH)には、
− 一方の選択された、または予め定義された標準核酸の初期量と、他方の選択された上記試料について決定された上記標準核酸に関連する特性値を、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程
が含まれ得る。
【0049】
あるいは、工程HH)には、
− 一方の上記試料の標準核酸の初期量と、他方の上記試料について決定された上記標準核酸に関連する特性値を、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程
が含まれ得る。
【0050】
工程AA)においては、選択された定義済みの初期量の上記標準核酸を含む1つの試料だけが提供される。しかし、これは、工程AA)において、上記標準核酸の希釈系列が提供され、それぞれの試料中に各希釈物が提供され、ここで工程BB)〜DD)が、上記希釈系列の全ての試料に関して行われ、かつここで工程HH)に、
− 一方の上記試料の標準核酸の初期量と、他方の上記試料について決定された特性値を、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程
含まれる場合には、有利であり得る。
【0051】
第2のタイプの上記定量化スキームに関連する較正データが提供される方法にかかわらず、上記較正データには、一定の増幅効率が含まれ得る。あるいは、工程g)においては、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する較正データが、第2のタイプの定量化スキームにしたがう上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化のために、一定の増幅効率とともに使用され得る。
【0052】
一般的には、上記増幅プロセスの理論上の増幅効率は、上記一定の増幅効率として使用され得る。上記の一定の増幅効率は、工程A)〜H)に基づいて、または工程AA)〜HH)に基づいて決定され得、上記一定の増幅効率は、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データに含まれるか、またはそれらから誘導されるか、または、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データに含まれる。
【0053】
増幅結果に基づく一定の増幅効率の決定により、第2のタイプの定量化スキームに基づくより正確な定量化が導かれ得る。
【0054】
一般的には、上記増幅プロセス(またはそれぞれの増幅プロセス)は、複数回のサイクルにおいて行われ得る。これは、特に、すでに述べた従来のPCRおよびRT-PCRプロセスについてそうである。上記(それぞれの)増幅プロセスが複数回のサイクルで行われる場合は、経過したサイクルの数を表すサイクル数が、進行パラメーターとして使用され得る。しかし、上記増幅プロセスが複数回のサイクルにおいて行われるかどうかにはかかわらず、経過した増幅時間を進行パラメーターとして使用することができる。工程c)に関して、および第1のより一般的な側面にしたがう解決方法の対応する工程に関しても、この工程には、
− 増幅の間の複数の種々の時点で、その強度が増幅されるそれぞれの核酸の量に関係している少なくとも1つのシグナルを測定すること
が含まれ得る。
【0055】
これは、工程C)に関して、および工程CC)に関してもまた示唆される。測定されるシグナルは、光学的シグナル、例えば、蛍光物質から放出される蛍光放射、具体的には、それぞれの核酸に結合させられた色素、それぞれの核酸に結合させられた蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブなどであり得る。
【0056】
さらに、工程d)および工程e)、ならびに第1のより一般的な側面にしたがう解決方法の対応する工程の少なくとも1つには、
− それぞれの測定結果、場合によっては、それぞれのシグナルの測定から増殖曲線を導くこと
が含まれ得るか、またはこれに基づき得る。
【0057】
これはまた、工程D)およびE)の少なくとも1つに関して、ならびに、工程DD)に関しても示唆される。
【0058】
さらに、工程d)および工程e)の少なくとも1つ、ならびに第1のより一般的な側面にしたがう解決方法の対応する工程の少なくとも1つには、
− それぞれの増殖曲線の特徴、またはそれぞれの増殖曲線の計算された導関数の特徴を同定すること、
− それぞれの特徴に関係する特性値を決定すること
が含まれ得る。
【0059】
これはまた、工程D)および工程E)の少なくとも1つに関して、ならびに工程DD)に関しても示唆される。
【0060】
それぞれの増殖曲線の特徴は、増殖曲線による閾値の交差に対応し得る。上記閾値は、正規化されていない増殖値を表すように予め定義されるか、または正規化された増殖値を表すようにそれぞれの測定結果に基づいて決定される。増殖曲線のこのような特徴(例えば、正規化された増殖曲線)が使用される場合は、一般的には、増殖曲線の導関数を計算することは必ずしも必要ではない。
【0061】
それぞれの増殖曲線の計算された導関数を使用できる可能性については、それぞれの導関数の特徴が、導関数のポジティブピークもしくはネガティブピーク、またはゼロ交差に対応することが示唆される。導関数は、それぞれの増殖曲線の一次導関数または二次導関数であり得る。
【0062】
それぞれの特性値の決定には、それについての測定が行われる進行パラメーターの値には必ずしも対応しない特性値を得るための、それぞれの測定値を示す増殖曲線上の点の間の増殖曲線の内挿、またはそれぞれの点の間の計算された導関数曲線の内挿が含まれ得る。具体的には、分差サイクル数が、特性値として決定され得る。
【0063】
一般的には、上記特性値(単数または複数)は、それぞれの核酸の増幅、ならびに最初の量または定義済みの初期量の少なくとも1つの直接的または間接的測定を示す。
【0064】
ある実施においては、第1のタイプの上記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、二次特性値が、上記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての上記特性値、ならびに上記対照核酸の上記特性値から決定される。二次特性値は、増幅、および上記標的核酸の最初の量、または上記標準核酸の初期量の少なくとも1つの直接的または間接的な測定を、それぞれ、増幅、および定義済みの初期量の上記対照核酸の少なくとも1つに関して表す。この場合、標的核酸の最初の量は、上記二次特性値およびそれに関連する上記参照データに基づいて定量され得る。
【0065】
工程H)に以下が含まれることがさらに示唆される:
− 一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記二次特性値を、第1のタイプの上記定量化スキームと関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること。
【0066】
第1のタイプの上記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、上記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての特性値の比を示し比値(ratio value)、上記対照核酸の特性値が決定され得る。この場合は、標的核酸の最初の量は、上記の比値、およびそれに関連する上記参照データに基づいて定量され得る。
【0067】
この状況では、工程H)には以下が含まれ得る:
− 一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記比値を、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること。
【0068】
第1のタイプの上記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがうと、上記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての特性値と上記対照核酸の特性値との差を表す、差分値が決定され得る。この場合、標的核酸の最初の量は、上記差分値と、それに関連する上記参照データに基づいて定量され得る。
【0069】
この状況では、上記工程H)には、
− 一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記差分値を、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること
が含まれることがさらに示唆される。
【0070】
複数の二次特性値(例えば、比値または差分値)が使用され得、これらは、希釈系列の複数の試料の二次特性値に相当する。この場合は、工程H)には以下が含まれ得る:
− 一方の上記試料の標準核酸の上記初期量と、他方の上記試料について決定された上記二次特性値を、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること。
【0071】
上記較正データを提供するためには、一般的には、較正方程式または較正式が使用され得る。これらの式は、上記標準核酸の初期量と、上記内部対照の初期量と、上記特性値(すなわち、上記標準核酸についての上記進行パラメーターの特性値、および上記対照核酸についての上記進行パラメーターの特性値)、あるいは二次特性値の間の関係を示す。
【0072】
PCR増幅に関して、核酸分子の初期数と増幅産物の間の関係は、指数関数によって記載される:
y=y0(1+ε)n
但し、
y=生成物量(増幅後のDNAの量)
y0=PCR前の鋳型DNAの量
ε=増幅プロセスの効率
n=サイクル数
【0073】
標的または標準核酸についての生成物量をTとし、PCR前の標的または標準核酸の初期量をT0とし、標的または標準核酸についてのPCR増幅の効率をεTとし、標的または標準の増幅についての特性値として決定されたPCRプロセスのサイクル数をnTとし、内部標準または内部対照核酸の生成物量をQとし、PCR前の内部標準または内部対照核酸の初期量をQ0とし、内部標準または内部対照の増幅に関するPCR増幅の効率をεQとし、内部標準または内部対照の増幅についての特性値として決定されたPCRプロセスのサイクル数をnQとすると、差Δn=nQ−nTが、二次特性値として使用され得る。それぞれのサイクル数nTおよびnQに関連するそれぞれの量TおよびQが互いに等しいかまたは比例する仮定に基づくと、以下の方程式が導かれ得る:
log(T0/Q0)=log f+Δn log(1+ε)
式中、ε=εT=εQがさらに仮定されている。この方程式は、較正方程式として使用され得る。しかし、
log(T0/Q0)=aΔn2+bΔn+c
の形の方程式が、実際に得られるデータを記述するためにより適切である場合もあることが観察されている。したがって、この方程式または方程式
T0=Q0 10P
但し、
P=aΔn2+bΔn+c
が、定量化方程式として使用されることが有利であり得る。いわゆる体積係数□と、いわゆる回復係数rをさらに考慮することが適切である場合もあり、その結果
T0=(ν/r)Q0 10P
が得られる。
【0074】
これらの較正方程式を参照すれば、較正データの決定には、基本的に、それぞれの方程式、具体的には二次多項定数a、一次多項定数b、ゼロ次多項定数cと、場合によっては、体積係数νと回復係数r(デフォルト値、例えば、1.00)が含まれる。測定結果に基づいて、具体的には、決定された特性値、例えば、決定された二次特性値Δnに基づいて、多項定数が、工程A)〜E)の実行に基づいて実際に得られるそれぞれのデータに対してそれぞれの方程式をフィットさせることによって決定され得る。このフィッティングは、例えば、RMSフィッティング法によって行われ得る。それぞれのパラメーターa、b、c、ならびに、場合によっては、νおよびrに基づいて、工程g)および第1のより一般的な側面にしたがう本発明の解決方法のそれぞれの対応する工程においては、試験試料中の標的核酸の最初の量が、選択された第1のタイプの定量化スキームを使用して、入力値として、対照核酸についての特性値、および標的核酸についての特性値、またはそれらから得られた二次特性値(例えば、値nTおよびnQ、または値Δnが本明細書中で考慮される)が使用されて、決定され得る。
【0075】
それぞれの核酸についての特性値として、いわゆるエルボー値(elbow value)が使用され得ることは、注目されるべきである。図2に示されるように、エルボー値は、増殖曲線が予め決定された閾値とほぼ等しく、指数増殖がなお行われている(分別)サイクル数である。
【0076】
上記により、増幅プロセスには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスが含まれ得ることは十分に明らかになる。さらに、増幅プロセスには、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)プロセスが含まれるか、その一部であり得ることもすでに示されている。
【0077】
上記標的核酸または標準核酸、および上記対照核酸は、標的核酸または標準核酸について、および上記対照核酸について、同じプライマーに基づく上記増幅プロセスにおいて、競合して増幅され得る。
【0078】
原則として、増幅された核酸が検出され得る可能性のある方法が多く存在する。増幅された核酸は、核酸に依存する蛍光シグナルに基づく検出形式によって検出され得る。具体的には、増幅された核酸が増幅産物の生成を持続的にモニタリングすることができる検出形式によって検出されることが有利であり得る。例えば、増幅された核酸は、少なくとも1つの蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブ、または/および少なくとも1つの蛍光標識されたプライマーに基づいて検出され得る。ある態様においては、蛍光物質で、および消光物質で標識された、蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブが使用され、その標的配列に対するハイブリダイゼーションプローブのハイブリダイゼーションの際に、蛍光物質および消光物質が互いに分離して、分離された蛍光物質が、蛍光を放出するように光学的に励起される。
【0079】
別の可能性は、第1の蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブと、第2の蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブの使用である。第1のハイブリダイゼーションプローブは、蛍光アクセプター物質で標識されており、第2のハイブリダイゼーションプローブは、蛍光ドナー物質で標識されている。ここで、第1のハイブリダイゼーションプローブと第2のハイブリダイゼーションプローブが互いに近い位置にある標的配列に対してハイブリダイズするように適合させられており、近い標的配列へのハイブリダイゼーションの際に、蛍光アクセプター物質は、蛍光ドナー物質の光学的励起によって蛍光を放出するように励起され、蛍光共鳴エネルギーが蛍光ドナー物質から蛍光アクセプター物質へと転移させられる。
【0080】
さらに、当業者は、蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブおよび蛍光標識されたプライマーを使用することができる。それらの一方は、蛍光アクセプター物質で標識され、他方は蛍光ドナー物質で標識されている。ハイブリダイゼーションプローブは、プライマーに近い標的配列にハイブリダイズするように適合させられており、ハイブリダイゼーションプローブがその標的配列にハイブリダイゼーションすると、蛍光アクセプター物質が、蛍光ドナー物質の光学的励起により蛍光を放出するように励起可能になり、蛍光ドナー物質から蛍光アクセプター物質へと蛍光共鳴エネルギーが移動する。
【0081】
具体的には、増幅された核酸は、FRETハイブリダイゼーションプローブ、いわゆる、分子ビーコン、またはTaqManTM機器において使用されるプローブに基づいて検出され得る。
【0082】
増幅された核酸を、蛍光を放出するように光学的に励起させることができ、二本鎖DNAに結合すると強い蛍光を示すDNA結合色素に基づいて検出することもまた可能である。
【0083】
本発明の方法は、Roche Diagnosticsによって提供されるCOBAS TaqManTMシステムを使用して行われることが有利であり得る。
【0084】
上記で論述した態様から、本発明の方法は、それぞれの標的核酸の絶対的な定量化のための方法であり得ることが明らかになる。しかし、これは、この方法が、それぞれの標的核酸の相対的な定量化の方法であることを除外するというわけではない。
【0085】
別の実施においては、本発明の方法には、以下の工程がさらに含まれ得る:
− 上記試験試料中の上記標的核酸の定量化の間、および、上記試験試料中の上記標的核酸の存在またはそれが存在しないことの決定の間で選択する工程、
− 選択された場合に、工程c)において、場合によっては工程d)〜g)を省略して、得られた測定結果に基づいて上記試験試料中の上記標的核酸の存在またはそれが存在しないことを決定する工程。
【0086】
本発明により、さらに、本発明の方法を実行するための薬剤および参照または較正データを含む定量化キットが提供される。
【0087】
さらに、図24に示されるように、本発明は、本発明の方法にしたがって、1つの試験試料、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置100をいい、第1のより一般的な側面にしたがって、これを提供する。本発明の装置には、以下が含まれる:
− 少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット102;
− 上記増幅ユニットによって行われる上記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関係する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出ユニット104であって、検出機構が、第1の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第1のシグナルと、第2の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関係する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関係する第2のデータが計算され得る;
− 上記増幅ユニットおよび上記検出機構と連絡しているコントローラー106であって、
上記コントローラーは以下の工程を行うように適合させられるかまたはプログラムされる:
− 少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うための増幅ユニット102を制御する工程;
− 少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニット104を制御する工程;
− 上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 予め決定された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程であって、上記定量化スキームにより、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される工程;
− 第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供し、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程。
【0088】
本発明の上記の第2の側面にしたがうと、本発明の上記コントローラーは、
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニット102を制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニット104を制御する工程;
dd)上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ee)上記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関して特定の予め定義された条件が適用された場合に、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、上記選択は、上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する上記測定結果、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および上記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値、上記第2の核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値と、関連する参照データに基づいて、上記第2の核酸についての特性値を参照することなく、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供される、
工程;
gg)上記第1の核酸について決定された特性値に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の第1の核酸の最初の量を定量する工程、
jj)第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供して、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程
を行うように適合させられるか、またはプログラムされる。
【0089】
上記コントローラーは、さらに、本発明の方法にしたがって工程b)〜j)を行うように、または/および本発明の方法にしたがってさらなる工程を行うように適合させられ得るか、またはプログラムされ得る。
【0090】
本発明は、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置100によって実行することができる指令のプログラムであって、該装置が、
− 少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット102;
− 上記増幅ユニットによって行われる上記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関係する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出機構104であって、該検出機構が、第1の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第1のシグナルと、第2の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関係する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関係する第2のデータが計算され得る、検出機構;
− 上記増幅ユニットおよび上記検出機構と連絡しているコントローラー106であって、
ここで上記コントローラーは上記指示に応答して以下の工程:
− 少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニットを制御する工程;
− 少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニットを制御する工程;
− 上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 予め決定された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量化する工程であって、上記定量化スキームにより、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される工程;
− 第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供し、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程
を行う、コントローラー;
を含むプログラムをいい、第1のより一般的な側面にしたがって、これを提供する。
【0091】
本発明の上記の第2の側面に関して、本発明の方法にしたがって上記指示に応答して、上記コントローラーは以下の工程を行う:
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニット102を制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニット106を制御する工程;
dd)上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ee)上記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関して特定の予め定義された条件が適用された場合に、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、上記選択が、上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する上記測定結果、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および上記の特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値、上記第2の核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値および関連する参照データに基づいて、上記第2の核酸についての特性値を参照することなく、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供される、
工程;
gg)上記第1の核酸について決定された特性値に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の第1の核酸の最初の量を定量する工程、
jj)第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供して、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程。
【0092】
上記コントローラー106は、上記指示に応答して、本発明の方法の1つにしたがって工程bb)〜jj)を実行することができる。
【0093】
さらに、本発明により、プログラムを具体化するコンピュータープログラム製品が提供される。コンピュータープログラム製品は、上記訓練プログラムを担持しているコンピューター可読媒体の形態であり得る。
【0094】
さらに、本発明により、通信回線を通じて、おそらくは、インターネットを通じて、ダウンロードするためのプログラムが格納されているサーバーコンピューターシステムが提供される。
【0095】
以下に、本発明の例示的な態様を示す。
【0096】
本明細書中に含まれる例示的な実施例の中には、具体的には、米国のRoche Molecular Systems, Inc.製のCOBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testに関するものもある。しかし、この特定の試験は、一例を示すにすぎず、本発明は、任意の他の定量化試験にも適用され得る。したがって、HBV Testに関する以下の背景情報は、例えば、特定のDNAに関する特定の定量化試験が本発明の状況において実行される方法を示す。もちろん、他の機器、他の増幅混合物、他の検出方法を使用することもできる。したがって、COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、説明の目的のだめだけに本明細書中で使用される、限定的ではない例としてしかみなされない。
【0097】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、ヒトの血清または血漿中のB型肝炎ウイルス(HBV)DNAの定量化のためのインビトロ核酸増幅試験であり、検体の処理にはCOBAS AmpliPrepTM機器を、増幅および検出にはCOBAS TaqManTM Analyzerを使用する。この試験により、幅広い濃度にわたってHBV DNAを定量することができる。検体の調製は、COBAS AmpliPrepTM機器を使用して自動的に行われ、増幅および検出は、COBAS TaqManTMまたはCOBAS TaqMan 48TM Analyzerを使用して自動的に行われる。
【0098】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、標的DNAの同時PCR増幅と、標的に特異的である切断された二重標識オリゴヌクレオチド検出プローブの検出に基づく。
【0099】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、既知の濃度(既知のコピー数)でそれぞれの試験試料に添加される第2の標的配列(HBV定量化標準(HBV Quantitation Standard)、内部対照(Internal Control)、内部標準(Internal Standard)、IQS、QS)を利用することによって、HBVウイルスDNAを定量する。HBV定量化標準は非感染性DNA構築物であり、これには、HBV標的配列のプライマー結合領域と同じプライマー結合領域を有しているHBV配列の断片が含まれている。HBV定量化標準には、HBVプライマー結合領域が含まれており、これによってHBV標的DNAと同じ長さで同じ塩基組成の増幅産物が生じる。HBV定量化標準の検出プローブ結合領域は、HBV定量化標準の検出プローブ結合領域に関して修飾されている。これらの特有のプローブ結合領域によって、HBV定量化標準のアンプリコンをHBVと区別することができる。HBV定量化標準は、阻害作用を補い、調製および増幅プロセスを制御し、それぞれの試料中のHBV DNAの正確な定量を可能にする。
【0100】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testにより、自動的に試料を調製し、その後、自動的にPCR増幅し、そしてHBV標的DNAおよびHBV定量化標準(内部対照)を検出する。Master Mix試薬には、HBV DNAとHBV定量化標準のDNAの両方に特異的なプライマー対とプローブが含まれている。増幅されたDNAの検出は、標的特異的であり、定量化標準特異的でもある二重標識オリゴヌクレオチドプローブ(これにより、HBVアンプリコンとHBV定量化標準のアンプリコンを別々に同定することができる)を使用して行われる。COBAS TaqManTM Analyzerは、それぞれの試料と対照について、HBVシグナルをHBV定量化標準のシグナルに対して比較することによって、試験試料中のHBV DNA濃度を計算する。
【0101】
PCR増幅が生じる増幅チューブ(K−チューブ)内の増幅混合物に、処理された試料を添加する。COBAS TaqManTM/TaqMan 48TM Analyzer内のサーマルサイクラーによって反応混合物を加熱し二本鎖DNAを変性し、HBV環状DNAゲノムおよびHBV定量化標準DNA上の特異的プライマー標的配列を露出する。混合物を冷却しながら、プライマーをHBV標的DNAのそれぞれの標的DNA配列に対して、およびHBV定量化標準DNAの標的DNAに対してアニールする。適切な条件下で、DNAポリメラーゼによってアニールしたプライマーを標的鋳型に沿って伸張して、アンプリコンと呼ばれる二本鎖のDNA分子を生成する。
【0102】
COBAS TaqManTM/TaqMan 48TMAnalyzerは、このプロセスを指定されたサイクル数自動的に繰り返し、それぞれのサイクルは、アンプリコンDNAの量を2倍にするようになっている。必要なサイクル数は、COBAS TaqManTM/TaqMan 48TM Analyzerに予めプログラムされる。増幅は、プライマー間のHBV ゲノムの領域内だけで生じ、HBVゲノム全体が増幅されるわけではない。
【0103】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testでは、例えば、TaqManTM機器で使用されるプローブおよび検出形式などの最新のPCR技術を利用する。これには。二重標識蛍光プローブの使用により、増幅プロセスの間に放出される蛍光レポーター色素の放出強度をモニタリングすることによるPCR産物の蓄積のリアルタイム検出が可能である。プローブは、レポーター色素および消光色素を有している、HBV特異的オリゴヌクレオチドプローブとHBV定量化標準特異的オリゴヌクレオチドプローブから構成される。COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testにおいては、HBVプローブとHBV定量化標準プローブは、異なる蛍光レポーター色素で標識される。プローブが完全な状態にある場合は、レポーターの蛍光は、Forster型のエネルギー移動効果が原因で、消光色素の近接によって抑制される。PCRの間に、プローブは標的配列にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性によって切断される。一旦、レポーターと消光色素が放出され、分離されると、消光はもはや起こらず、レポーター色素の蛍光活性が高まる。HBV DNAおよびHBV定量化標準DNAの増幅は、種々の波長で別々に測定される。COBAS TaqManTM Analyzer上でのPCRのアニーリング期の間に、試料は発光し、フィルター処理された光によって励起され、フィルター処理された蛍光発光データが、それぞれの試料について回収される。このプロセスを、指定されたサイクル数分繰り返し、それぞれのサイクルは個々のレポーター色素の発光強度を効率よく増大させ、これによって、HBV DNAとHBV定量化標準DNAを別々に同定する。増殖曲線が指数増殖を開始するPCRサイクルは、PCRの開始時点での出発材料の量に関係する。
【0104】
アンプリコンのモニタリングを指数増殖期の間に行うので、使用されるPCRは、幅広いダイナミックレンジにわたって定量的である。試料のHBV濃度が高ければ高いほど、HBVプローブのレポーター色素の蛍光はベースラインの蛍光レベルを早く上回る。HBV定量化標準(QS)DNAの量はすべての試料の間で一定であるので、HBV QSプローブのレポーター色素の蛍光は、全ての試料について同じサイクルで、またはほぼ同じサイクルで現れるはずである。QS蛍光が影響を受ける場合は、それにしたがって濃度が調節される。特異的蛍光シグナルの出現は、標的(本実施例においては、HBV標的DNA)に関しては臨界閾値(ct)として報告され、以下では、「エルボー値」、nTまたはctTとも記載され、内部対照(本実施例では、HBV定量化標準DNA)に関しては、「エルボー値」、nQまたはctQSとも記載される。ctは、レポーター色素の蛍光が予め決定された閾値を上回り、このシグナルの指数増殖期が開始する分差サイクル数として定義される。より高いct値は、最初の標的物質の濃度がより低いことを示す。
【0105】
所望される範囲にわたる希釈系列についての標的の増殖曲線が得られ得る。図13A、13C、15A、および15Cに示すように、試料の濃度が増大すると、増殖曲線はより早いサイクルへとシフトする。したがって、最も左側の増殖曲線は、最も高い標的濃度レベルに相当し、一方、最も右側の増殖曲線は最も低い標的濃度レベルに相当する。それぞれの増殖曲線について、それぞれのサイクルでの蛍光値が正規化される。蛍光シグナルが予め定義された蛍光レベルと交差する分差ct値(fractional ct value)が計算される。
【0106】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testと共に提供されるロット特異的較正定数は、HBV DNAおよびHBV定量化標準DNAのct値に基づいて、初期試料についての濃度値を計算するために使用される。
【0107】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testにおいて説明されるように、HBV DNAとHBV定量化標準DNAのct値の差が計算され得、初期試料についての濃度値が、これらの差分値と、ロット特異的較正定数に基づいて計算され得る。
【0108】
一態様によると、ロット特異的較正定数の決定は、本発明によって提供される方法の一部と考えられる。較正定数は、標的DNA(例えば、HBV DNA)の希釈系列を定量することによって決定することができる。ここでは、希釈系列のそれぞれの試料には、同じ既知の濃度の内部対照(例えば、HBV定量化標準)が含まれ、これはまた、それぞれの試験(例えば、COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Test)にも含まれる。この分野で使用される専門用語によると、この較正は、「外部標準」に基づいて行われる。
【0109】
一方の内部対照(内部定量化標準)と標的(HBVウイルスDNAの上記の例を参照のこと)は、同じプライマー領域を有する類似したものであり、同じ長さで同じ塩基組成の増幅産物であることが有利ではあるが、一般的には必ずしもそうである必要はない。異なるプライマーを使用することもなお可能である。しかし、類似した標的配列および内部対照配列、ならびに同一のプライマーを使用することには、同時に起こるいずれの増幅反応の増幅効率も同一であるかまたはほぼ同一であるはずであるという利点がある。
【0110】
以下に、それぞれの定量化試験の較正、および本発明によって提供される対応する方法の較正部分に関する例を示す。
【0111】
内部対照を使用する所定の定量化試験の較正は、本発明の一態様にしたがって、例えば、図1aおよび1bに説明されるように行われ得る。第1の工程(工程A-1)では、試料の希釈系列が提供され、そのそれぞれには、それぞれコピー数T0iの標的核酸(上記の例に関しては、例えば、HBV DNA)と、同数の内部対照または定量化標準核酸(上記の例に関しては、例えば、HBV定量化標準DNA構築物)が含まれる。希釈系列には、S個の個々の試料が含まれる。
【0112】
適切な機器、例えば、COBAS TaqMan(登録商標)Analyzerを使用して、Pサイクル中のPCR増幅によって試料を増幅する(工程A-2)。増幅の間、PCR産物の蓄積を示す蛍光強度を測定する。これは、TaqManTM機器において使用されるようなプローブと検出形式に基づいて、あるいは、当該分野で公知の他の手段に基づいて行われ得る。蛍光シグナル間にクロストーク(crosstalk)が存在し得る。これは、蛍光の発光スペクトルと、別のPCR産物に関連する蛍光検出器の受容バンド幅の重複が原因である。このクロストークは、多成分分析を行うことによって補正され得る。例えば、いわゆる、色度標準に基づくクロストークの較正が、測定値から得られるフィルター読み取りベクターを、クロストークを含まない蛍光強度ベクターへと変換するために使用され得るエッセイ特異的クロストークマトリックスを提供するために行われ得る。
【0113】
それぞれの試料について測定された蛍光強度に基づいて、標的増殖曲線Tと対照増殖曲線Qが得られる(工程A-3)。
【0114】
所望により、例えば、人為的な結果を排除するため、機器によるばらつきを補正するためなど、増殖曲線に関して事前チェックと補正を行うことができる。増殖曲線は、例えば、それぞれの増殖曲線の生の蛍光値を、増殖曲線のベースラインの縦座標との切片値で割り算することによって、正規化することができる。図2に、対応する例を示す。
【0115】
増殖曲線に基づいて、例えば、正規化された増殖曲線に基づいて、増幅の特定の瞬間的状態を示すそれぞれの特性値が決定される(工程A-4)。本実施例においては、標的増殖曲線についてのいわゆる「エルボー値」nTと、対照増殖曲線についてのnQが決定され、これらは、それぞれの増殖曲線が恣意的なシグナル値ASVと交差する分差サイクル数に相当する(図2)。分差サイクル数を得るために、測定によって得られた増殖曲線点の間の増殖曲線の適切な補間を行うことができる。
【0116】
一般的には、それぞれの試料iについて、標的エルボー値nTiと対照エルボー値nQiが得られる(工程A-5)。しかし、高い初期標的濃度T0については、内部対照に関するPCR増幅によっては、1サイクル〜Pサイクルのうちでは特徴的な増殖曲線が得られず、その結果、対照エルボー値が得られない場合がある。このような対照増殖曲線の脱落は、標的と内部対照との間での競合作用によって生じる。この方法は、対照増殖曲線の脱落の可能性を考慮するように適切に実行され得る。その後の工程では、これらの試料についてのみ、適切な標的エルボー値nCiと適切な対照エルボー値nQiが得られるように配慮しなければならない。決定されたエルボー値の対応するチェックは、理論的な考慮、具体的には、PCR増幅のダイナミクスに基づいて実行され得る。
【0117】
全ての適切な対nTi、nQiについて、それぞれのエルボー差Δni=nQi−nTiが計算される(工程A-6)。したがって、希釈系列のそれぞれの試料について、または対照増殖曲線が脱落の場合には、希釈系列のサブセットのそれぞれの試料について、値の対(T0i、Δni)が得られる(工程A-7)。これは、それぞれの試料iについて決定されるエルボー差Δniとそれぞれの初期標的濃度T0iを関連付ける。
【0118】
これらの値の対により、それぞれの定量化試験の較正が可能である(工程A-8)。例えば、指数増殖関数から導かれる理論的な較正式が使用され得る。本明細書中で考察される実施例にしたがうと、二次の定量化式(定量化方程式)が使用され、これは、標的増殖曲線と対照増殖曲線との間の関係を正確に示すために示される。この二次多項方程式は、同時増幅における競合作用(例えば、プライマーの競合)を十分考慮することができる。データ対(T0i、Δni)に較正式をフィットさせることによって、例えば、RMS法またはKRC法によって、図1bに示される較正式の適切なパラメーターa、b、およびcが得られ得る。これらは、較正定数となる。さらに、増幅効率εと、標的の増幅と内部対照の増幅との間の比例定数fが得られ得る。
【0119】
較正はさらに、図3〜8に示される多数の実施例に基づいて説明され得る。図3は、24個の試料についての入力データと増幅結果のデータのシートである。PCR増幅の前には、それぞれの試料には、同じコピー数の内部対照核酸(1000コピー)が含まれていた。第2列目においては、それぞれの試料についての標的核酸の初期量(コピー数)が示される。4列目および5列目には、内部対照の増幅のエルボー値nQSと、標的のPCR増幅のエルボー値nTが示される。これらのエルボー値の差は6列目に示される。
【0120】
図4は、(IQSのエルボー−標的のエルボー)に対する(標的入力コピー数/IQS入力コピー数)の対数のプロットである。さらに、2つの較正曲線(一方は一次であり、他方は二次である)は、増幅によって得られたデータ点にフィットするようにプロットされる。フィットさせるために、KRC法が使用された。KRC法に従った直線的なフィットの傾きと切片により、同時増幅効率εと、比例定数fが得られる。
【0121】
フィットの程度を評価するために、回帰データを使用して力価を逆算することができる。図5には、それぞれの実際の標的入力コピー数との比較において、線形の多項式回帰データに基づく、さらには、フィットによって得られたfとεの値を使用する指数増殖式に基づく、そのような逆算が示される。
【0122】
さらに、一方の標的エルボー値(レポーターエルボー値)と、他方の内部対照(IQS)エルボー値を、それぞれの較正式に対して互いに別々にフィットさせることも可能である。対応する実施例が図6および7に示される。この方法の1つの態様にしたがうと、このような較正データが、対照増殖曲線の脱落、または下降する対照増殖曲線を示す試料の定量化のために使用され、その結果、適切ではない対照エルボー値が決定され得たり、または対照エルボー値が全く決定され得なかったりする。
【0123】
図8には、実際のデータに関係付けられた回帰フィットに基づく逆算の結果が示される。
【0124】
高い初期標的濃度を有している試料の定量化のために、さらなる較正が行われ得ることは、すでに言及されている。これは、図9に記載される。B1と記載される第1の変形にしたがうと、初期標的コピー数(または濃度)T0i、ならびに、図1aおよび1bにしたがう較正に使用された試料のそれぞれの標的エルボー値nTiが評価され(工程B2-2)、適切な較正式、例えば、二次多項方程式に基づいて較正定数A、B、Cを決定するために使用される(工程B1-2)。対照エルボー値は不要であるので、たとえ、対照増殖曲線が脱落していても、全ての試料についての増幅結果が使用され得る。較正定数に加えて、増幅効率が、データ点に対する較正式の対応するフィッティングに基づいて提供され得る(工程B1-3)。
【0125】
さらに簡単なアプローチにしたがうと、選択された試料jについての増幅結果だけが評価され(工程B2)、使用される。これは、予め定義された参照値nTrefにほぼ対応するエルボー値nTjを有している。予め定義された参照値nTrefは、比較的高い初期標的濃度(コピー数)に対応し、これにより、比較的低いエルボー値が導かれ、その結果、この標的濃度について、またはいくらか高い標的濃度については、対照増殖曲線の脱落の可能性がより高い。値の対(T0j、nTj)自体は、指数増殖関数に基づく較正定数として、おそらく、上記に言及された理論上の増幅効率または較正によって得られる増幅効率とともに、使用され得る。
【0126】
上記で論述した実施例と一致して、エルボー値または閾値が、増殖曲線に基づいて決定されることが加えられるべきである。しかし、このようなエルボー値または閾値の代わりに、他の特性値が使用される場合もあり、例えば、それぞれの増殖曲線の一次、二次、またはn次導関数に基づいて決定される特性値が使用される。
【0127】
図10aおよび図10bを参照して、未知の標的力価T0を含む試料の定量化は、以下のように行われ得る。未知の標的力価T0i及び等量の較正で使用される既知の対照力価Q0を含む1つの試料または試料のセットが提供された(工程C-1)あと、蛍光強度の測定を含むPCR増幅が、較正に関する方法の一部において行われる(工程C-2)。必要であれば、クロストーク補正が行われる。増幅により、それぞれの標的増殖曲線Tiが得られ、通常、対照増殖曲線Qiもまた得られる(工程C-3)。予備チェックと補正(必要であれば)が行われた後、データが正規化され、増殖曲線についてのエルボー値が決定される(工程C-4)。通常、それぞれの試料について標的エルボー値nTiと対照エルボー値nQiが得られる(工程C-5)。しかし、初期標的力価T0が比較的高い場合には、対照増殖曲線が脱落する場合もある。このような試料については、標的エルボー値nTiだけしか得られない。しかし、適切ではない対照エルボー値nQiが生じ、これが破棄される可能性もまた存在する。
【0128】
エルボー差Δniの計算(工程C-6)の後、較正式についての入力値Δniが得られる(工程C-7)。較正式と、較正によって得られた定数a、b、cに基づいて、初期力価値T0iが計算され得る(工程C-8、C-9)。
【0129】
対照増殖曲線において脱落を示したので対照エルボー値を決定することができなかった試料については、または不適切な対照エルボー値が得られた試料については、適切な較正式と関連する較正データ、例えば、図9の態様B1)およびB2)に従う式とデータを使用して、それぞれの標的エルボー値nTiに基づいて、初期力価T0iを得ることができる。これに関して、図11aおよび図11bに記載されるような、工程D1-1、D1-2、およびD1-3にしたがうプロセス、ならびに工程D2-1、D2-2、およびD2-3にしたがうプロセスが記載される。
【0130】
以下では、本発明が、特定の例、すなわち、上記に記載されるCOBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testに基づいてさらに説明される。図12には、使用されるCOBAS CAP/CTM HBV Testキットの包装上の印刷が示される。この試験キットは、Roche Molecular Systems, Inc., Branchburg, NJ USAから、またはRoche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germanyから入手することができる。
【0131】
図13には、HBVプラスミド標的の希釈系列、および図12にしたがうHBV試験に基づいて得られた内部対照の希釈系列についての増殖曲線が示される。HBVプラスミドの希釈系列は、1e1〜1e9 CTMU/ml標的配列、および5.0 e3 CTMU/mlの内部対照配列の系列である。単位CTMUは、いわゆる、COBAS TaqManTM単位をいう。較正係数は、通常、一定のコピー数/mlに対する1 CTMU/mlに関して、1〜3である。本明細書中の単なる例示目的の観点においては、簡単に1 CTMUが1コピーとされる場合もある。
【0132】
この溶液の系列に対して、1e4 CTMU/mlの標的を含むWHO-EUROHEP-Standardの2つの試料が、基準の目的のために添加された。
【0133】
図13aには、正規化されていない標的増殖曲線が示され、図13bには、正規化されていない対照増殖曲線が示される。ベースラインオフセットを除去する正規化により、図13cの標的増殖曲線と、図13dの対照増殖曲線が導かれる。
【0134】
対照増殖曲線においては、目に見える内部対照の不調な値(対照増殖曲線の脱落)は存在しない。最も高濃度のHBVプラスミド(1e8および1e9)についてもなお、内部対照の増殖曲線は異なる増殖を示し、ベースラインとは区別される。したがって、例えば、約50の、所望される力価測定の範囲に達する。原則的には、エルボー差に基づく標準的な定量化を使用することが十分である。図14には、標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値が示される。対照増殖曲線についてのエルボー値は示されていない。
【0135】
この状況は、5.0 e3 CTMU/mlの内部対照を含む、5e2 CTMU/ml〜1e9 CTMU/mlの範囲の標的HBVプラスミドの別の標的希釈系列については異なる。それについての正規化されていない増殖曲線と正規化された増殖曲線は図15に示される。この希釈系列に、1e4 CTMU/mlのWHO-EUROHEP-Standardが添加された(2つの試料)。標的曲線は、なおも、良好なスムーズな依存性と予想されたとおりの濃度の反映を示すが、内部対照は明らかに高濃度の標的による影響を受ける。1e8及びそれより高い濃度では、非常に低い内部対照シグナルが得られた。その結果、エルボー差に基づく標準的な定量化の完全な不調の可能性は劇的に増大する。いくつかの試料については、明確には対照エルボー値は得られず、その結果、標準的な定量化はできなかった。図16には、標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値が示される。対照増殖曲線についてのエルボー値は示されていない。
【0136】
以下では、図1〜11に基づいて考えられる較正および定量化の態様および変更が示される。図17aの式F0には、エルボー値の差を使用する、COBAS TaqManTM機器増殖曲線についての標準的な力価計算式が示される。式F0は、一定の内部対照コピー数Q、一定の回復r、および一定の体積係数νについての定数a、b、cを用いて、簡単な形式で記載され得る。なぜなら、パラメーターとしてQ、r、およびνを取り扱う必要はないからである。したがって、上記ですでに考えられた標準的な較正式が得られる。
【0137】
不適切な対照エルボー値の使用を避けるために、標的のエルボー値が、例えば、20の閾値よりも低い場合には、標的増殖曲線のエルボー値ctT(上記でnTと記載される)から直接標的力価が計算される場合もある。HBV試験については、20の標的エルボー値は、約5×106コピーに相当する。このような比較的小さい標的エルボー値については、式F1が、工程D2-1、D2-2、およびD2-3に従う「例外的な」定量化にしたがって使用され得る。高力価演算関数F1は、指数増殖を、1サイクルあたりの増幅係数AF=1+ε=2と仮定している。これは、やや理想主義的な仮定である。このアプローチは一般的には実際の増殖を過大評価しており、2よりも小さい増幅係数の補正によって高い力価の定量化の質が改善されることが、期待されるはずである。
【0138】
Trefおよびctref(上記においてはnQと記載される)の値は、参照値であり、これらは、例えば、いくつかの機器、例えば、高力価較正B2についての較正手順において決定される。これらの値は、特定の試験のそれぞれの試薬キットのロットに関して決定され得る。較正においては、基本的に2つの工程が行われ得る:i)Trefに対する合理的な位置決めと精度と割当での対照試薬の定量化、ii)対照試薬が異なる機器にアプライされ、ctrefに対して割り当てられる場合に見られる平均ctの決定。Trefおよびctrefの値は、それぞれの試薬キットと共に提供され得る。例えば、これらの値は、試薬カセット上のバーコードにコードされ得る。試薬カセットが増幅機器(例えば、COBAS AmpliPrepTM Instrument)に装備されている場合は、Trefおよびctrefデータは、バーコード検出器によって読み取ることができ、機器の制御ソフトウェアに入力データとして導入される。必要とされる精度と、試薬キットのロットの均質性によっては、ロットの特異性は必要なく、その結果、Trefとctref試験を特異的に決定することで十分である。
【0139】
1つの特定の問題は、Trefが特定の「ct範囲」(例えば、19.3<ctref<20.7)に見られなければならないことである。これは、±0.21の対数誤差に相当する。さらに、Trefは、全ての機器についてその「ct範囲」に見られなければならない。このアプローチの代わりが、二次較正式を使用する、工程B1-1、B1-2、およびB1-3(較正)ならびに工程D1-1、D1-2、およびD1-3(定量化)にしたがうアプローチである。
【0140】
一定の理論上の増幅係数を使用する代わりに、1回のPCRサイクルあたりの増幅係数AF=1+εが代わりに使用される場合もある。これは、較正曲線または標準較正のデータから導かれる。対応する式はF2として示される。
【0141】
標準較正式を参照して、増幅係数AFは、Δct=ctQs−ctT=0(AF=eb*ln10b;bは較正係数の第2のパラメーターである)について得られる。したがって、式F2においてAF=2の代わりにAF=eb*ln10を使用することにより、較正されたデータのセットから増幅係数を抽出し、高い標的濃度領域においてもまたこの係数を使用することが可能である。
【0142】
図18には、参照エルボー値ctrefに対する標的エルボー値ctTの値に応じて、標準定量化式または「例外的な」定量化式F1(あるいは、「例外的な」定量化式F2)のいずれかが使用される、完全力価計算アルゴリズムのフローチャート部分が示される。
【0143】
このフローチャート部分の変更が図19に示される。ここには2つの条件が存在し、これらは、適用される例外的な定量化式F1またはF2を実行できなければならない。さらなる条件は、最後のPCR増幅サイクルの後の正規化された内部対照強度値afi(n)が、一定の閾値afi(n)refを超えないものであることである。閾値afi(n)refは、行われる正規化に関して適切に選択されなければならない。図13〜16に示される正規化については、閾値afi(n)ref<2は、内部対照QSについての極めて低いプラトーを意味する。これらの2つの条件が保たれている場合には、標的力価は、例えば、式F1または式F2を使用することによって、標的増殖曲線のctから直接計算される。
【0144】
図19の変更は、例外的な定量化式を、内部対照曲線が完全に不調である場合、またはこの曲線が、非常に弱くなり、閾値よりも小さいプラトー値を有する場合にのみ適応することを意味する。したがって、図13に示されるような増殖曲線については、なおも、標準定量化式が、全ての試料について使用される。
【0145】
標準定量化式、例外的な定量化式F1、および例外的な定量化式F2に基づく図13〜16にしたがう増殖曲線の評価により、図20および22の逆算結果と、図21および23のシグナル回復結果が導かれる。4つの定量化アプローチが適用された。アプローチ「標準」は、標準定量化式だけに基づく。アプローチ「F1」は、図18の関連するフローチャート部分を伴った、標準較正式と、例外的な定量化式F1に基づく。アプローチ「F2」は、図18の関連するフローチャート部分と再び組み合わせて、標準定量化式と、例外的な定量化式F2に基づく。さらに、アプローチ「F3」は、図18に示される関連するフローチャート部分とは組み合わせずに、再び、標準定量化式と例外的な定量化式F1に基づく。代わりに、図19に示される関連するフローチャート部分が使用された。
【0146】
図20および21は、図13の増殖曲線について得られた。異なるアプローチについて得られた定量結果の間にはごく小さな偏差が存在する。標準力価計算は示されるデータについてうまく作業できる。なぜなら、内部対照増殖曲線には、最も高い標的濃度まで失敗がないからである。さらに、図18の条件と組み合わせて例外的な式F1を使用するアプローチ「F1」は、極めて良好な結果を生じる。およそ4e6より上の量のすべての標的の計算により、標準関数から目に見えるほどの偏差を示さないことがわかる。実際、高い量の値は、標準関数ほどの散乱はないことが明らかである。これは、内部対照シグナルが高い標的量で大きな散乱を示すと予想できるので、合理的である。この散乱は、定量化式F1に寄与し得ない。
【0147】
また、図18の条件と組み合わせて使用される例外的な定量化式F2(アプローチ「F2」)には、式F1と見事に同様の力価が記載されている。較正曲線から誘導されるAF係数(示されるデータについて:1.95)は、高力価の範囲について妥当である。
【0148】
アプローチ「F3」(図19の条件と組み合わせた式F1)により、標準定量化式と同じ結果が生じる。なぜなら、試料について内部対照(QS)増殖曲線のafi(n)値は、あらかじめ設定された閾値afi(n)ref=2を超えるからである。したがって、例外的な定量化式は決して適用されなかった。
【0149】
図21に示されるシグナルの回復は、バーで示される対数誤差±0.3の規格限界が、全てのダイナミックレンジにわたって、そして全ての式については到達していないことを示している。しかし、全体的には、合理的な性能が得られており、特に、標準定量化式と式F1については合理的な性能が得られている。
【0150】
図22および23は、図15の増幅結果に基づく。再び、図20および21に関して定義されるアプローチ「標準」、「F1」、「F2」、および「F3」が使用された。
【0151】
アプローチ「標準」の標準定量化式は、内部対照増殖曲線が不調である場合には、標的力価を導くことができない。これが理由で、最大入力コピー数(1e9)ではデータ点がなく、わずか2つの決定しかないが、濃度1e8については実際の値から極めて離れている。
【0152】
より低い標的濃度(評価において4e6より下を示す)では、標準定量化方程式は、アプローチF1にしたがって使用される。例外的な定量化式F1と標準定量化式との間の差は、標的量>4e6で見ることができる。1e8と1e9の濃度での内部対照の不調が原因で、アプローチF1とF3にしたがう例外的な定量化によっては、これらの量で重なりあう結果が生じる。定量化式F1は非常に単純な関数であり、仮定AF=2が極めて理想主義的であるけれども、この式により、このデータのセットについて優れた結果が導かれる。
【0153】
増幅係数AF=eb*ln10を用いるアプローチ「F2」の定量化式F2は、力価をかなり過大評価する。標準較正曲線から導かれる増幅係数AFは、高力価範囲については不適切である(高すぎる)ようである。したがって、PCR増幅反応の理論的ダイナミクスの観点において高すぎる較正曲線から導かれる増幅係数に基づく過大評価をさけるためには、さらなる予備チェックを実行することが適切である場合がある。例えば、2つの増幅係数の内いつも低い方を選択することによって、適切に予め決定された理論上の増幅係数を用いて較正曲線から導かれる増幅係数を組み合わせることが適切である場合もある。
【0154】
例外的な定量化式F1と図19の条件に基づくアプローチ「F3」により、測定範囲全体にわたって優れた結果が得られる。
【0155】
図23には、図21と同様に、対数目盛りで、見出されたコピー数に対する予想される偏差が示される。バーは、仮定される最大偏差限界(±0.3対数)を示す。低い標的力価では、異なる関数のデータ点は等しい。1e7で互いの関数の分離が開始する。1e8では、標準定量化アプローチによる2つの値だけが予想される値から実質的にそれているようである。対数値「-3.0」での長方形の存在は、標準定量化アプローチに基づく内部対照増殖曲線の不調が原因で、決定することができなかった全ての力価の値から生じる。
【0156】
図24には、本発明の実行のために使用することができるシステムの構造についての模式的な例が示されている。このシステムまたは定量化装置100には、PCR増幅を行うように構成された増幅ユニット102が含まれている。具体的には、EP 0 955 097 A1から公知であるようなサーマルサイクラーが含まれ得る。さらに、増幅ユニット102の中で増幅される試料−試薬混合物により放出される蛍光を測定するための検出ユニット104が存在する。EP 0 953 379 A1およびEP 0 953 837 A1より公知であるような装置が、提供され得る。
【0157】
ユニット102と104の両方は、制御ユニット106、例えば、工業規格オペレーティングシステムおよび工業規格マイクロプロセッサに基づくワークステーションによって制御される。具体的には、制御ユニットが、増幅ユニット102によって行われる増幅サイクルを制御し、検出ユニット104からの蛍光強度データを受け取る。制御ユニット106によって行われる制御処理およびデータ処理を定義する制御プログラムは、記憶ユニット108、例えば、磁気ディスクユニットに保存され得る。もちろん、十分なRAMメモリもまた存在する。入力ユニット110は、外部較正データを含む(所望される場合)入力データをシステムに入力するために提供される。入力ユニットには、キーボード、フロッピーディスクドライブ、またはCD-ROMドライブと、バーコードリーダーが含まれ得、これによっていくつかの例が生じる。さらには、出力ユニット112も存在し、これには、例えば、具体的に定量化結果を出力するための役割を果たすディスプレイおよびプリンターが含まれる。
【0158】
具体的には、本発明の方法を実行するためには、Rocheによって提供される従来のRoche COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqManTMシステムが使用され得る。しかし、これは、本発明の方法が行われる方法でシステムを制御し、システムの構成要素と通信する制御ソフトウェアを提供することによって、本発明を実行するように構成されたものである。具体的には、図18および19に示されるフローチャート部分、ならびに、図17aおよび17bに示される別の較正式が、従来のプログラミング技術を使用するこのようなシステムの制御ソフトウェアにおいて何ら問題を生じることなく、当業者によって実行され得る。図1a、1b、図9、10a、10b、および図11a、11bに関して、これらの図を、このようなシステムにおいて行われるデータの流れ、ならびに、このようなシステムにおいて行われる制御工程およびデータ処理を示す図としてみることができることは理解されるべきである。本明細書中に含まれる情報に基づくと、当業者は、本発明を実行するように、従来の定量化装置またはそのソフトウェアを適合させることができる。さらに、当業者は、本発明を実行するためのソフトウェアを提供することができ、これは、従来のシステムに搭載される場合には、従来のシステムを、本発明を具体化するシステムへと変換する。
【0159】
上記の本発明のいくつかの具体的な態様は、以下に記載され得る:
i)試料の定量化:
− 試料は、一般にPCRによって内部対照と一緒に増幅される。
− リアルタイムPCRが使用される(終点法ではない)。
− 増幅産物は、標的と内部対照について2つの異なる蛍光標識を使用する検出技術によって、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、検出される。
− 閾値またはエルボー値が、一定の閾値を定義することによって増殖曲線に基づいて決定される。増殖曲線の一次導関数、二次導関数、n次導関数は使用されない(しかし、これは、原則として可能である)。
− 標的の増殖曲線と内部対照の増殖曲線が閾値に達する部分サイクル数が概算される。
− これらの部分サイクル数の差から、標的の初期力価が、予め定義された較正式または較正曲線に基づいて導かれ得る。
ii)較正式または較正曲線の提供:
− いくつかの希釈工程を有している較正パネル(希釈系列)(これは、例えば、WHO-EUROHEP-Standardに基づいて調節される)が、通常の(art)PCRの状態によるいくつかのレプリカ核酸に基づいて、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、増幅される。限界サイクルが決定される。それぞれの希釈段階(標準)について、内部対照が、一定の予め決定された濃度で同時に処理される。
− 標的と内部対照との間でのサイクルの差(これは、それぞれの標準について決定される)が較正関数または式に基づいて決定され、評価される。例えば、標準の上記サイクル差とそれぞれの初期力価が図表にプロットされ得る(サイクル数の差対初期標的力価)。
− 測定される任意のサイクル差についての初期力価を計算または決定することができるよう、関連する較正曲線または/および較正関数が作成され得る。
iii)2モードまたは多モードの定量化スキームに基づく試料の定量化:
− 試料は、一般にPCRによって内部対照と一緒に増幅される。
− リアルタイムPCRが使用される(終点法ではない)。
− 増幅産物は、標的と内部対照について2つの異なる蛍光標識を使用する検出技術によって、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、検出される。
− 閾値またはエルボー値が、一定の閾値を定義することによって増殖曲線に基づいて決定される。増殖曲線の一次導関数、二次導関数、n次導関数は使用されない(しかし、これは、原則として可能である)。
− 標的の増殖曲線と内部対照の増殖曲線が閾値に達する部分サイクル数が概算される。
− 状況に応じて、標準定量化または別の(例外的な)定量化が選択される。第1のアプローチにしたがうと、標的の増殖曲線が極めて初期のサイクルで閾値に達する場合には、内部対照に関連するサイクルを基準とすることなく力価を評価するために力価の別の定量化が選択される。第2のアプローチにしたがうと、増幅の最終段階で内部対照の濃度が最小プラトー値を超えない場合には、別の定量化式だけが選択されるさらなる条件が存在する。一般的には、標的力価の別の定量化は、高い標的濃度について予想され得るように、内部対照が脱落するか、または競合が原因で不調である場合に、選択される場合がある。
【0160】
これらのアプローチに従うと、内部対照シグナルの別の定量化は試料によって選択的であり、高い標的濃度について標的力価の計算には含まれない。
− 他の場合においては、初期標的力価が、予め定義された較正曲線または較正式を使用して決定されたサイクル差に基づいて評価される(標準定量化)。
【0161】
iv)2モードまたは多モード定量化スキーム用の較正データの提供:
− いくつかの希釈工程を有している較正パネル(希釈系列)(これは、例えば、WHO-EUROHEP-Standardに基づいて調節される)が、通常の(art)PCRの状態によるいくつかのレプリカ核酸に基づいて、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、増幅される。限界サイクルが決定される。それぞれの希釈段階(標準)について、内部対照が、一定の予め決定された濃度で同時に処理される。
− 標的と内部対照との間でのサイクルの差(これは、それぞれの標準について決定される)が較正関数または式に基づいて決定され、評価される。例えば、上記サイクル差と、標準のそれぞれの初期力価が図表にプロットされ得る(サイクル数の差対初期標的力価)。
− 測定される任意のサイクル差についての初期力価を計算または決定することができるよう、関連する較正曲線または/および較正関数(一般的には、較正データ)が作成され得る。
− 高力価範囲については、第2の較正曲線または/および較正関数(一般的には較正データ)が、内部標準力価(単数または複数)(標的)と、検出された限界サイクル(単数または複数)に基づいて作成される。
− 測定された任意のサイクル差について、または、−高い初期標的濃度の場合には−、任意の標的限界サイクルについて、それぞれの初期力価が、較正データ(例えば、2つの較正曲線または式)に基づいて計算または決定され得る。
【0162】
上記実施例と実験結果は、異なるタイプの少なくとも2つの定量化スキームを提供することによって、標的の高い力価濃度での内部対照の不調の問題を回避することができることを示している。2つの定量化スキームのうちの1つは、定量化のために、標的核酸についての特性値と対照核酸についての特性値を使用して、別のスキームは、定量化のために、標的核酸についての特性値だけを使用する。具体的には、本発明により2モードまたは多モードの力価計算アルゴリズムが提供される。そのために、別の定量化アプローチ(例えば、定量化較正式)が使用される場合もある。
【0163】
2モードまたは多モードの定量化の利点は、具体的には以下である:
− 特定の正確さで、非常に高い量(>1010cp)まで力価を決定することができる。これは、従来の核酸試験のダイナミックレンジを大幅に拡大する。
− 高い標的濃度は一般的には、極めて一定の(solid)頑健な(robust)増殖曲線を有する。これらの検体の精度および回復には、あまり一定ではなくあまり頑健ではない内部対照増殖曲線の分散による相当な欠点がある。したがって、このような高い標的濃度についての力価の計算が内部対照を伴わずに行われる場合には、定量化結果の質が改善され得る(より低い変動係数(CV))。
− 標的の増殖と内部対照の増殖との間での競合によって引き起こされる内部対照シグナルの脱落は、適切に取り扱うことができる。実際の適用については、脱落、すなわち一般的には、「例外的な較正式」の使用は、ユーザーに対して適切に情報が伝えられ、その結果、ユーザーは、内部対照(IQS)の内部対照機能が評価されなかったこと(すなわち、内部対照シグナルが非常に低くなったかまたは完全に脱落した場合の高い標的濃度について)を知ることができる。
− 適用された内部対照コピー数を、初期標的力価のより高い値にまでダイナミックレンジが拡大できるように高い値に調節することは不要である。その代わりに、競合反応がアッセイの感度に影響を与えないように、内部対照コピー数を低く保つことが可能である。
− 実際の適用については、高力価の定量化関数(「例外的な」較正式)と、標準評価(標準較正式)の間の切り替え点は、所望されるダイナミックレンジと適用される内部対照のコピー数に応じて適切に調節することができる。
− 理論上の増幅係数が使用される限りは、試験特異的、またはキットロット特異的に増幅係数を定義することが適切である場合がある。上記で使用される理論値AF=2と比較すると、この係数をわずかにより小さい値に調節することが適切である場合もある。
− 高い初期力価値について内部対照を基準とすることなく力価較正式を使用することは、なおさらに適切であることが明らかである。なぜなら、力価測定の精度は、PCRサイクル数とは逆に低下する。したがって、高い標的量では誤差はより小さい。なぜなら、定量化プロセスに含まれるサイクル数がより少ないからである。したがって、内部対照の内部対照機能はあまり重要ではない。
【0164】
本発明は、デジタル電子回路で、またはコンピューターハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアで、あるいは、それらの組み合わせで実行され得る。本発明の装置は、プログラム可能な処理装置による実行のための機械可読記憶媒体において明確に具体化されたコンピュータープログラム製品において実行され得;そして、本発明の方法の工程は、入力データを操作して出力を生じることによって本発明の関数を実行するように機器のプログラムを実行する、プログラム可能な処理装置によって行われ得る。
【0165】
本発明は、データとそれからの指示を受け取り、そしてデータとそれに対する指示を送信するように接続された少なくとも1つのプログラム可能な処理装置、データ記憶システム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置を含む、プログラム可能なシステム上で実行される1つ以上のコンピュータープログラムにおいて実行することができることが有利であり得る。それぞれのコンピュータープログラムは、高いレベルの手続きまたはオブジェクト指向のプログラム言語で、あるいは、所望される場合には、アセンブリまたは機械言語で実行され得;どのような場合であっても、言語はコンパイル型言語またはインタープリタ型言語であり得る。適切な処理装置としては、一例として、一般目的用、および特殊目的用マイクロプロセッサの両方が挙げられる。一般的には、処理装置は、読出し専用記憶装置および/または等速読出し記憶装置から指示とデータを受け取る。コンピューターの不可欠な構成要素は、指示を実行する為の処理装置とメモリである。
【0166】
一般的には、コンピューターには、データファイルを保存するための1つ以上の大容量記憶装置が含まれる;このような装置としては、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク;磁気光学ディスク;および光学ディスクが挙げられる、コンピュータープログラムの指示とデータを明確に具体化するための適切な記憶装置としては、全ての形態の不揮発性メモリが挙げられ、一例として、半導体記憶装置、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ装置;磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク;磁気光学ディスク;ならびにCR-ROMディスクが挙げられる。ユーザーとのやりとりを提供するためには、本発明は、ユーザーに対して情報を表示するためのモニターまたはLCDスクリーンのような表示装置、ならびに、ユーザーがコンピューターシステムに入力を提供することができるキーボードとマウスまたはトラックボールのような位置決め装置を有しているコンピューターシステムで実行され得る。
【0167】
本発明は、多数の例示的な態様と例示的な実施例、および測定結果に基づいて上記に説明された。他の態様が可能である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の内容と範囲によってのみ限定されるべきである。
【0168】
種々の図面の中の同様の参照記号は、同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1a】図1AおよびBは、標準に基づく較正式を使用する、PCR増幅に基づく核酸の定量化を較正する方法を示す。
【図1b】図1AおよびBは、標準に基づく較正式を使用する、PCR増幅に基づく核酸の定量化を較正する方法を示す。
【図2】図2は、蛍光測定結果の正規化前(図2a)および正規化後(図2b)の例示的なPCR増幅増殖曲線を示す。
【図3】図3は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図4】図4は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図5】図5は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図6】図6は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図7】図7は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図8】図8は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図9】図9は、高い標的濃度についての、標準に基づく較正についての2つの可能性を示す。
【図10a】図10aおよび10bは、標的および内部対照に関する増幅結果に基づく標準的な定量化の例を示す。
【図10b】図10aおよび10bは、標的および内部対照に関する増幅結果に基づく標準的な定量化の例を示す。
【図11a】図11aおよび11bは、標的のみに関する増幅結果に基づく例外的な定量化についての2つの可能性を示す。
【図11b】図11aおよび11bは、標的のみに関する増幅結果に基づく例外的な定量化についての2つの可能性を示す。
【図12】図12は、本発明を評価するため、また本明細書中に示される例示的な実験結果を提供するために使用されたHBV試験キットの包み上の印刷を示す。
【図13】図13は、図12によるHBV試験に基づいて得られた、HBVプラスミド標的および内部対照の希釈系列についての増殖曲線を示す。
【図14】図14は、図13の例の標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値を示す。
【図15】図15は、図12によるHBV試験に基づいて得られた、HBVプラスミド標的および内部対照の第2の希釈系列(第2の研究ロット)についての増殖曲線を示す。
【図16】図16は、図15の例の標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値を示す。
【図17a】図17aおよび17bは、内部標的力価の定量化のために別な方法で使用され得る較正式の例を示す。
【図17b】図17aおよび17bは、内部標的力価の定量化のために別な方法で使用され得る較正式の例を示す。
【図18】図18は、別の複数の定量化式間での選択がどのように実行され得るかの1つの可能性を示すフローチャートである。
【図19】図19は、別の複数の定量化式間での選択がどのように実行され得るかの別の可能性を示すフローチャートである。
【図20】図20は、図13の増殖曲線についての力価計算結果を示す。
【図21】図21は、図13の増殖曲線についてのシグナル回復結果を示す。
【図22】図22は、図15の増殖曲線についての力価計算結果を示す。
【図23】図23は、図15の増殖曲線についてのシグナル回復結果を示す。
【図24】図24は、本発明の方法を実行するために使用され得る定量化装置の基本構造を模式的に示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、核酸の定量化(定量)に関する。
【0002】
背景
核酸の定量化(定量)方法は、多くの分子生物学の領域において重要であり、特に分子診断にとって重要である。DNAレベルでは、このような方法は、例えば、ゲノム中で増幅された遺伝子配列のコピー数を決定するために使用される。さらに、核酸の定量化方法は、mRNA量の決定が、通常、それぞれのコード遺伝子の発現についての尺度となっているため、このmRNA量の決定と組み合わせて使用される
【0003】
核酸または核酸配列を検出し、定量する多数の種々の分析方法の中でも、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、最も有力で一般に普及した技術となっており、その原理は、US 4,683,195、およびUS 4,683,202(Mullisら)に開示されている。しかし、典型的なPCR反応それ自体単独および、これに対応した典型的な逆転写酵素PCR(RT-PCR)反応それ自体では、量的なデータしか生じない。なぜなら、指数的または累進的な増殖期の後では、増幅された核酸の量はプラトーに達しており、生じた反応産物の量は、標的核酸または標的核酸配列、具体的には、鋳型DNAの初期濃度に比例していないからである。しかし、終点分析により、それぞれの出発核酸の有無が明らかとなる。こうした情報は、特定の用途にとって、具体的には、臨床的な適用において、高価値なものである。臨床的適用といった他の適用について、例えば、特定の疾患に関する適切な診断を行うために定量的測定が必要とされる。例えば、特定の感染性疾患、癌および自己免疫疾患を診断するために、正確な定量的測定が必要とされる。処置に対する疾患の応答を評価し、回復の予後を行うことは、治療上有用であり得る。また、試料中に何らかの混入物質が存在している場合に起こり得る偽陽性を検出するのに正確な定量的測定も役立ち得る。
【0004】
概要
本発明により、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化方法が提供される。一般的には、一側面において、本方法には、一般的な試験試料中に、標的核酸とは異なる定義済みの初期量の対照核酸が含まれている少なくとも1つの内部対照とともに、少なくとも1つの標的核酸を提供する工程、一般的な核酸増幅プロセスにおいて該試験試料中の標的核酸および対照核酸を増幅する工程、増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、増幅の間に標的核酸および対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を直接または間接的に測定する工程、標的核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、標的核酸についての進行パラメーターの特性値を決定する工程、少なくとも特定の場合について、対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、対照核酸についても進行パラメーターの特性値を決定する工程、および少なくとも標的核酸について測定された特性値に基づいて、予め決定した、または選択した定量化スキームに従って、試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程が含まれる。
【0005】
特定の実施においては、この方法にはさらに、異なるタイプの複数の定量化スキームの間で選択を行う工程が含まれる。ここでは、少なくとも1つの定量化スキームにより、対照核酸についての特性値を参照することなく、試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供され、また、少なくとも1つの定量化スキームにより、対照核酸についての特性値を参照して、試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される。
【0006】
本発明の1つ以上の態様の詳細を、添付の図面と以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、また特許請求の範囲から明らかであろう。
【0007】
詳細な説明
信頼性があり再現性のある量的データを得るために、種々のPCRに基づくプロトコルが数多く開発されている。一般的には、2種類の基本原理、すなわち、i)内部標準を使用する競合PCR(またはRT-PCR)、およびii)較正曲線を最初に作成することによる標的DNAの定量化が、従来より区別され得る。これに関しては、Siebert, Molecular Diagnosis of Infectious Disease(Udo Reischl, 編 Humana Press, Totowa, New Jersey, p.55-79, 1998)が参照される。
【0008】
競合PCR、またはRT-PCRでは、増幅反応のプラトー期での形成されたPCR産物の量の終点測定が可能である。例えば、特異的標的配列は、コピー数が既知である内部標準の希釈系列とともに、同時に増幅される。標的配列の初期コピー数は、同量のPCR産物を含む標準および標的配列の混合物から推定される(ZimmermannおよびMannhalter, BioTechniques 21: 280-279, 1996)。この方法の欠点は、測定が増幅反応の飽和領域において行われることである。
【0009】
オンライン検出によりPCR反応の速度を測定できることから、定量化データの生成が大幅に向上する。蛍光のモニタリングによりアンプリコンを検出することによって、こうした測定が可能になった。このような技術の例が、WO 97/46707、WO 97/46712、およびWO 97/46714(Wittwerら)に詳細に開示されている。
【0010】
Higuchiら(BioTechnology 11,1026-2030, 1993)には、それぞれのサイクルで蛍光のモニタリングを使用する初期鋳型の定量化のためのアプローチが開示されている。蛍光閾値を用いて、初期鋳型濃度に関連した分差サイクル数(fractional cycle number)を定義したものである。詳細には、初期鋳型濃度の対数は、蛍光対サイクル数曲線と蛍光閾値との交点として定義される分差サイクル数(CT)に対して反比例することが見出された。
【0011】
PCRの指数期の速度論的リアルタイム定量化は、内部標準の他、外部標準にも基づいて行われ得る。一般的には、PCR産物の形成は、PCRの各サイクルにおいてモニタリングされる。増幅は通常、増幅反応中に蛍光シグナルを測定するためのさらなる装置を有するサーモサイクラーで測定される。この典型的な例としては、Roche Diagnostics Light Cycler(カタログ番号2 0110468)がある。
【0012】
増幅産物は、例えば、標的核酸に結合した場合にのみ蛍光シグナルを放出する蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブによって、または、特定の場合には、二本鎖DNAに結合する蛍光色素によって検出される。分析される全ての反応について、定義済みのシグナル閾値が決定され、標的核酸について、また、−内部標準または内部対照(場合によっては、ハウスキーピング遺伝子)を使用する場合は−、参照核酸について、この閾値に達するために必要なサイクル数cpが決定される。標的分子の絶対的または相対的なコピー数は、この標的核酸および参照核酸について得られたcp値に基づいて、または、−外部標準を使用する場合は−、標的分子について得られたそれぞれのcp値、および参照核酸(例えば、参照核酸の希釈系列)についての別々の増幅結果に基づいて構築された標準曲線に基づいて、決定され得る(Gibsonら、Genome Research 6: 995-1001, 1996; Biecheら、Cancer Research 59: 2759-2765, 1999; WO 97/46707; WO 97/46712; WO 97/46714)。
【0013】
外部標準の使用には、標準および標的核酸を別々の反応容器において増幅させるという利点がある。この場合、標的核酸と同じ配列を有している標準を使用することができる。しかし、このタイプの定量化では、例えば、その後のPCR反応の効率を低下させる阻害性成分が原因で、系統誤差が生じることがある。内部標準を使用することによって、すなわち、標準と標的核酸を1つの反応容器の中で増幅させることによって、これらの誤差をなくすことができる。しかし、この方法の欠点は、標準の増幅と標的核酸の増幅とを区別できるように、分析される標的核酸と比較して異なる配列を有している標準を使用しなければならないことである。配列が異なる場合には、PCR適用での異なる効率をなくすことができないため、定量化においても同様に系統誤差が生じ得る。
【0014】
この内部対照もしくは外部対照または標準の使用に関する問題について、本発明者らは以下のアプローチを区別する:
【0015】
a)異なる量の既知のDNAにPCRを行うことによって外部対照(外部標準という語も該当)を増幅し、標準曲線を得る。別々に(場合によっては、同時に)増幅した試料DNAの量は、標準曲線の補間によって直接導かれ得る。この定量化方法の前提条件は、いずれのPCR(標準DNAのPCRおよび試料DNAのPCR)の効率も十分に一致し、増幅反応が指数期にあることである。
【0016】
b)複合PCRまたは競合PCRとして、内部対照(IC)または内部標準(IQS、内部定量化標準(Internal Quantification Standards))を使用したPCRを行うことができる。複合PCRにおいては、試料DNAについてのプライマー対とは異なるDNA分子からICについてのプライマー対を誘導し、一方、競合PCRにおいては、IC DNAと試料DNAのいずれにも同じプライマー対を使用する。複合PCRによる定量化のための前提条件は、外部対照を使用したPCRと同じである。しかし、外部標準を使用したPCRと比較すると、IC DNAおよび試料DNAのいずれも同じチューブ内で増幅されることから、複合PCRには、チューブの一貫性またはサーマルサイクラー内での位置におけるバリエーションによる問題が排除されるという利点がある。競合PCRにおいては、同じプライマー対によってIC DNAおよび試料DNAから生じるアンプリコンを区別する必要がある。増幅の間は、IC DNAおよび試料DNAのいずれも同じプライマー対について競合する。初期鋳型DNA(IC DNAおよび試料DNA)の量が等しくない場合は、PCR産物の量は、過剰であるDNAの累積(credit)へとシフトする。初期鋳型DNAの量が等モルである場合にのみ、同じ増幅効率が適用されるという限りにおいて、IC DNAと試料DNAについての生成物量は同じになる。
【0017】
すでに示したように、増幅反応の速度論の測定の可能性は、増幅産物の作成を分光光度的検出の原理により、具体的には、蛍光によって継続的に測定することができる機器および方法が利用可能であるので、非常に容易になる。適切な機器の一例は、Wittwerら、BioTechniques 22, No.1, 176-181(1997)に詳細に記載されている。
【0018】
標的依存的蛍光シグナルに基づき、増幅産物の作成を継続的にモニタリングすることができるいくつかの検出形式が開示されている(Wittwerら、BioTechniques 22, No.1, 130-138,1997に概説されている)。これらの検出形式としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
1.蛍光二本鎖DNAを認識する化合物の使用
二本鎖の増幅産物の量は、通常、分析される試料中にもともと存在する核酸の量を上回るので、適切な波長で励起させると、それらが二本鎖DNAに結合している場合にのみ強い蛍光を示す二本鎖DNA特異的色素が、使用され得る。PCR反応の効率には影響を与えない色素、例えば、SYBR Green Iが有利に使用される。
【0020】
2.ハイブリダイゼーションの際の高い蛍光共鳴エネルギー転移
この検出形式については、それぞれが蛍光部分で標識された2つのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブが使用される。これらのプローブは、増幅産物の一方の鎖の、隣接しているが、重複はしてはいない領域に対してハイブリダイズすることができる。標的DNAにハイブリダイズすると、2つの蛍光標識は密接して接触し、その結果、2つの蛍光部分の間で蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が起こり得る。結果として、ドナー部分の励起およびこれに続く第2のアクセプター部分の蛍光放出の測定によってハイブリダイゼーションをモニタリングすることができる。
【0021】
同様の態様においては、一方だけが蛍光標識されたプローブが使用され、1つの適切に標識されたプライマーとともに、特異的FRET対としての役割を果たす場合もある(Bernardら、Analytical Biochemistry 255,p.101-107,1998)。
【0022】
3.TaqManTM機器において使用される検出原理
増幅産物を検出するために、蛍光物質で標識された一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを使用し、Forster型エネルギー転移効果に基づいて消光化合物として作用し得る同一プローブ上の第2の標識によって、その蛍光の放出が消光される。PCR反応のアニーリング工程の間に、該プローブはその標的配列に対してハイブリダイズし、続いて、プライマーの伸張の間に、5'-3'-エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼがハイブリダイゼーションプローブを小さい断片にして消化する。その結果、該蛍光物質は消光化合物から離れる。適切な励起後、蓄積している増幅産物の指標として蛍光放出をモニタリングすることができる。
【0023】
4.分子ビーコン
TaqManTM機器において使用されるプローブ/形式と同様に、分子ビーコンオリゴヌクレオチドは、分子の二次構造が原因で互いに密接して接近する蛍光化合物と消光化合物で標識される。標的DNAに結合すると、分子内水素結合が壊れ、プローブの一方の末端に存在している蛍光化合物は、プローブの反対側の末端に存在している消光化合物から離れる(Lizardiら、US 5,118,801)。
【0024】
試験試料中の標的核酸配列の不明な最初の量を決定する方法は、US 2002/0031768 A1(McMillanら)により明らかである。試験試料中の標的核酸配列の不明な最初の量、およびそれぞれの較正試料中の較正核酸配列の既知の最初の量が増幅される。それぞれの核酸配列について、それぞれの閾値が、配列について導かれる増殖曲線の導関数を用いて決定される。標的配列について決定された閾値と、較正核酸配列について決定された閾値から導かれた較正曲線を使用して、標的核酸の最初の量が決定される。McMillanらには、この方法を実施するために使用することができる機器および装置もまた開示されている。さらに、定量用内部対照を使用して、または内部標準を使用して、核酸配列の最初の量を決定する方法は、例えば、US 2002/0034745 A1、US 2002/0034746 A1、およびUS 2002/0058282 A1に開示されている。
【0025】
増殖曲線から計算された導関数に基づく分析物の定量化もまた、EP 1 041 158 A2から明らかである(US 6,303,305 B1、US 6,503,720 B2、およびUS 2002/0028452 A1, Wittwerらも比較)。
【0026】
EP 1 138 783 A2およびEP 1 138 784 A2(また、US 2002/0058262 A1, Sagnerらも比較)には、増幅効率の決定を含む標的核酸の絶対的および相対的定量化方法が開示されている。これは、内部標準、さらには外部標準をいう。
【0027】
US 5,389,512(Sninskyら)には、ポリメラーゼ連鎖反応によって試料中の核酸配列の相対的な量を決定する方法が開示されている。この方法では、試料中に存在する核酸セグメントと、第2の核酸セグメントを同時に増幅する。それぞれのセグメントから増幅されたDNAの量を決定し、標準曲線に対して比較して、第2のセグメントに対する第1のセグメントの比として表される、増幅前の試料中に存在する核酸セグメントの量を決定する。第1のセグメントの増幅に関する曲線と、第2のセグメントの増幅に関する曲線との2つの標準曲線が使用される。
【0028】
US 5,476,774(Wangら)により、ポリメラーゼ連鎖反応によって試料中の標的核酸セグメントの量を決定するためのさらなる方法が提供されている。この方法では、標的核酸セグメントと内部標準である核酸セグメントを同時に増幅する。それぞれのセグメントから増幅されたDNAの量を決定し、標準曲線に対して比較して、増幅前の試料中に存在している標的核酸セグメントの量を決定する。
【0029】
種々の刊行物には、PCR定量化の状況において有利に使用することができる機器および装置が開示されている。例えば、EP 0 953 379 A1には、複数の反応容器内で行われる反応を同時にモニタリングするための装置が開示されており、EP 0 953 837 A1には、そのような装置において使用することができる蛍光測定装置が開示されており、また、EP 0 955 097 A1には、核酸の増幅を行うためのサーマルサイクラーが開示されている。
【0030】
上記の刊行物は、引用によって完全に本出願の開示の中に援用される。さらに、これに関しては、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版, Vol.28,「Polymerase Chain Reaction」の項(125〜159ページ)、特に、10章「Quantitative PCR」(140〜144ページ, WILEY-VCH-Verlag, Weinheim, Germany 2003)(これもまた、引用によりその全体が本明細書中に援用される)が参照される。
【0031】
本発明は、
− 一般的な試験試料中に少なくとも1つの内部対照とともに少なくとも1つの標的核酸を提供する工程であって、上記内部対照には、上記標的核酸とは異なる定義済みの初期量の対照核酸が含まれている、工程;
− 上記試験試料中の上記標的核酸および上記対照核酸を、一般的な核酸増幅プロセスにおいて増幅する工程;
− 上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標的核酸および上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を測定する工程;
− 上記標的核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標的核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 上記対照核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記対照核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 予め決定された定量化スキームにしたがって、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程であって、上記定量化スキームにより、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される、工程;
を含む、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法をいい、第1のさらに一般的な側面によって、これを提供する。
【0032】
増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量の測定は、例えば、増幅産物の特徴を決定することによって直接、あるいは、例えば、増幅産物の量に関連または相関する数量を測定することによって間接的に行われ得る。
【0033】
この定量化のための方法により、内部対照または標準と組み合わせて外部標準を使用することができる。その結果、一方においては、標準核酸は標的核酸と同じ配列を有し得、他方においては、異なる反応容器の中でのそれぞれのPCR反応の効率の違いを、内部対照または標準に基づいて、ある程度考慮することができる。上記で定義される方法の有利な態様は、以下の説明から示唆される。
【0034】
一般的な核酸増幅プロセスにおける一般的な試料中の異なる核酸の増幅により、種々の核酸についての個々の増幅反応の間での競合によって生じる効果および問題が導かれ得ることが観察された。PCRおよびRT-PCRに関しては、PCR反応混合物中に含まれるヌクレオチド、酵素、および他の成分について、また競合PCRにおいては、それぞれの核酸が同じプライマー結合部位(primer binding side)を有する場合には、プライマーについて、競合が存在する。具体的には、定量化のための方法における内部定量化標準または内部対照と標的の競合的増幅により、この方法の感度の低下が導かれ得るか、または、さらには、増幅反応、特にPCR反応の開始時点で標的の量と内部対照の量との間に強い不均衡が生じている場合には、使用される定量化スキームにしたがって標的の初期量の定量化ができない場合もある。標的の内部対照は低い感度で検出されるか、または定量化できる程度には検出されないかのいずれかとなる。例えば、内部対照の濃度が高すぎる場合には、標的増殖曲線の脱落があり得、または、標的濃度が高すぎる場合には、内部対照増殖曲線の脱落があり得る。したがって、この方法、および対応するシステムのダイナミックレンジが限られる。線形の範囲についての目標とされる詳細は、特定の試薬ロットに基づいて下限または上限のいずれかを満たすことだけである。もちろん、下限と上限に照準を定める異なる試薬ロットを提供することも可能である。しかし、この解決方法は、実際的な観点からは面倒であり、定量化/検出限界での不安定な状況が原因で、少なくとも一方(下または上)の端点において失敗する相当なリスクが残る。
【0035】
第1のより一般的な側面にしたがうと、本発明の1つの目的は、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法を提供することである。これは従来の技術の方法よりも、系統誤差が生じにくい。この目的は、上記で定義された方法によって達成される。
【0036】
第2のより特異的な側面にしたがうと、本発明の1つの目的は、さらに広いダイナミックレンジを有している、1つの試験試料、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法を提供することである。
【0037】
両方の目的を達成するために、1つの実施において、
a)一般的な試験試料中に少なくとも1つの内部対照とともに少なくとも1つの標的核酸を提供する工程であって、上記内部対照には、上記標的核酸とは異なる定義済みの初期量の対照核酸が含まれている、工程;
b)上記試験試料中の上記標的核酸および上記対照核酸を、一般的な核酸増幅プロセスにおいて増幅する工程;
c)上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標的核酸および上記対照核酸についての増幅産物の量または量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
d)上記標的核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標的核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
e)上記対照核酸についての増幅産物の測定量に関する特定の予め定義された条件が適用される場合に、上記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記対照核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
f)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、上記選択は、上記標的核酸についての増幅産物の量に関する上記測定結果、上記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果、ならびに、上記の特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、少なくとも1つの第1のタイプの定量化スキームによっては、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量が提供され、
ここで、少なくとも1つの第2のタイプの定量化スキームによっては、上記標的核酸についての特性値と、関連する参照データに基づき、上記対照核酸についての特性値を全く基準とすることなく、上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量が提供される、工程;
g)上記標的核酸について決定された特性値に少なくとも基づいて選択された定量化スキームにしたがって、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程;
を含む、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法が提供される。
【0038】
この実施においては、ダイナミックレンジは、異なる範囲について異なる定量化スキームを使用することによって、例えば、低い範囲と中程度の範囲については第1のタイプの定量化スキームを、そして必要に応じてもしくは適切である場合には、上部の範囲については第2のタイプの定量化スキームを使用することによって、拡大され得る。特に、標的濃度が高すぎる状況における内部対照の増殖曲線の脱落によっては、第2のタイプの定量化スキームには影響はない。
【0039】
第2のタイプの定量化スキームおよび使用される関連する参照データの詳細によっては、外部標準を使用し、内部対照を使用しない定量化に基づいて通常得られる定量化の質に事実上相当する質の定量化を得ることは、原理上は可能である。第2のタイプの定量化スキーム(単数または複数)が定量化方法の目標とされる線形領域の上部領域に言及する場合は、かかる状況が全体としてさらに良好である。なぜなら、PCR増幅の状況では、高い標的濃度は、一定の標的量に達するPCRサイクル数がより少ないことを意味し、その結果、1回のPCRサイクルあたりの増幅係数の差はあまり関係がないことを意味するからである。言い換えると:力価測定尺度の正確さはPCRサイクルの数に反比例して低下するので、高い初期標的濃度に基づいて得られる高い標的量の誤差は比較的小さい。なぜなら、定量化プロセスには少ないサイクル数しか含まれていないからである。もちろん、内部対照の増幅結果を考慮することによるさらなる確認等の内部対照の使用の利点は、第2のタイプの定量化スキームに基づいては得られない。しかし、これは、どんな場合でも、定量化が得られないか、完全に誤った定量化が得られるよりはよい。
【0040】
別の実施においては、第2のタイプの定量化スキームは、以下の条件:
i)上記対照核酸についての特性値が決定されていない場合、
ii)上記対照核酸についての特性値が、予め定義された閾値を上回る場合、
iii)上記標的核酸についての特性値が、予め定義された閾値に届かない場合、
iv)上記対照核酸についての特性値が、上記標的核酸についての特性値を少なくとも予め定義された量上回る場合、
v)増幅プロセスの最終段階または最終段階に近い段階について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された最小プラトー値に届かない場合、
vi)標的核酸についての特性値に関連する増幅プロセスの瞬間的な状態について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された閾値、増幅プロセスの上記瞬間的な状態について測定もしくは推定される上記標的核酸についての増幅産物の量もしくは増幅産物の量を示す数量に届かない場合
の少なくとも1つが適用される場合に、選択される。
【0041】
1つのアプローチにしたがうと、第1のタイプの定量化スキームは、上記対照核酸についての特性値が決定されている場合に、選択される。あるいは、第1のタイプの定量化スキームは、上記対照核酸についての特性値が決定されており、以下の条件:
ii)上記対照核酸についての特性値が予め定義された閾値に届かない場合、
iii)上記標的核酸についての特性値が予め定義された閾値を上回る場合、
iv)上記対照核酸についての特性値が、上記標的核酸についての特性値に関して定義された閾値にとどかず、それよりも大きい場合、
v)増幅プロセスの最終段階または最終段階に近い段階について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された最小プラトー値を上回る場合、
vi)標的核酸についての特性値に関連する増幅プロセスの瞬間的な状態について測定または推定される、上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された閾値、増幅プロセスの上記瞬間的な状態について測定または推定される上記標的核酸についての増幅産物の量、または増幅産物の量を示す数量を上回る場合
の少なくとも1つが適用される場合に、選択され得る。
【0042】
第1のタイプの上記またはそれぞれの定量化スキームに関連する参照データは、
A)一般的な試料中に少なくとも1つの内部対照と共に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、上記標準には定義済みの初期量の標準核酸が含まれ、上記内部対照には定義済みの初期量の対照核酸が含まれ、上記標準核酸と上記対照核酸は異なるものである工程;
B)一般的な核酸増幅プロセスにおいて、上記試料中で上記標準および上記内部対照を増幅する工程;
C)上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標準核酸および上記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
D)上記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標準核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
E)上記対照核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記対照核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
H)一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記特性値とを、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程;
によって決定または提供される較正データであり得る。
【0043】
上記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する参照データに関して、2つのアプローチが想定される。第1のアプローチにしたがうと、参照データは、
AA)試料中に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、上記標準には定義済みの初期量の標準核酸が含まれる工程;
BB)核酸増幅プロセスにおいて上記標準を増幅する工程;
CC)上記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、上記増幅の間の上記標準核酸についての増幅産物の量、または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
DD)上記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、上記標準核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
HH)一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記特性値とを、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データ提供する工程;
に基づいて決定されるかまたは提供される較正データである。
【0044】
第2のアプローチにしたがうと、上記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する上記参照データは、工程A)〜D)に基づいて、および以下に基づいて決定または提供される、較正データである:
HH)上記標準核酸と共に増幅される上記対照核酸の上記定義済みの初期量に関連する上記較正データを提供するための、一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記標準核酸に関連する特性値の、第2のタイプの上記定量化スキームに関する関連付けは、上記標的核酸とともに増幅される上記対照核酸の上記定義済みの初期量に相当し得、上記対照核酸(これは、上記標準核酸とともに増幅される)は上記標的核酸とともに増幅される上記対照核酸に相当し得、上記標準は外部標準であり得、上記試料は上記試験試料とは異なる。上記標準核酸は上記標的核酸に相当し得る。
【0045】
上記工程A)〜H)の少なくとも1つ、および場合によってはそれらの全て、ならびに場合によってはHH)、または/ならびに、上記工程AA)〜HH)の少なくとも1つ、または場合によってはそれらの全ては、それぞれの工程a)〜g)と同時に行われ得る。
【0046】
工程A)〜E)、または/および工程AA)〜DD)は、工程a)〜e)が行われる前、または後に行われ得る。工程A)〜H)、および場合によってはHH)、あるいは/ならびにAA〜HH)は、工程a)〜g)が行われる前に行われ得る。例えば、上記工程は、定量化キットの製造業者によって行われ得る。具体的には、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データ、または/および第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データは、定量化キットの構成要素とともに提供され得る。
【0047】
工程A)においては、上記標準核酸の希釈系列が提供され得る。それぞれの試料中の各希釈物は、上記内部対照とともに提供される。工程B)〜E)は、上記希釈系列の全ての試料に関して行われ、工程H)には、
− 一方の上記試料の標準核酸の初期量と、他方の上記試料について決定された特性値を、第1のタイプの上記定量化スキームと関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関係する上記較正データを提供する工程
が含まれる。
【0048】
さらに、工程HH)には、
− 一方の選択された、または予め定義された標準核酸の初期量と、他方の選択された上記試料について決定された上記標準核酸に関連する特性値を、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程
が含まれ得る。
【0049】
あるいは、工程HH)には、
− 一方の上記試料の標準核酸の初期量と、他方の上記試料について決定された上記標準核酸に関連する特性値を、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程
が含まれ得る。
【0050】
工程AA)においては、選択された定義済みの初期量の上記標準核酸を含む1つの試料だけが提供される。しかし、これは、工程AA)において、上記標準核酸の希釈系列が提供され、それぞれの試料中に各希釈物が提供され、ここで工程BB)〜DD)が、上記希釈系列の全ての試料に関して行われ、かつここで工程HH)に、
− 一方の上記試料の標準核酸の初期量と、他方の上記試料について決定された特性値を、第2のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供する工程
含まれる場合には、有利であり得る。
【0051】
第2のタイプの上記定量化スキームに関連する較正データが提供される方法にかかわらず、上記較正データには、一定の増幅効率が含まれ得る。あるいは、工程g)においては、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する較正データが、第2のタイプの定量化スキームにしたがう上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化のために、一定の増幅効率とともに使用され得る。
【0052】
一般的には、上記増幅プロセスの理論上の増幅効率は、上記一定の増幅効率として使用され得る。上記の一定の増幅効率は、工程A)〜H)に基づいて、または工程AA)〜HH)に基づいて決定され得、上記一定の増幅効率は、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データに含まれるか、またはそれらから誘導されるか、または、第2のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データに含まれる。
【0053】
増幅結果に基づく一定の増幅効率の決定により、第2のタイプの定量化スキームに基づくより正確な定量化が導かれ得る。
【0054】
一般的には、上記増幅プロセス(またはそれぞれの増幅プロセス)は、複数回のサイクルにおいて行われ得る。これは、特に、すでに述べた従来のPCRおよびRT-PCRプロセスについてそうである。上記(それぞれの)増幅プロセスが複数回のサイクルで行われる場合は、経過したサイクルの数を表すサイクル数が、進行パラメーターとして使用され得る。しかし、上記増幅プロセスが複数回のサイクルにおいて行われるかどうかにはかかわらず、経過した増幅時間を進行パラメーターとして使用することができる。工程c)に関して、および第1のより一般的な側面にしたがう解決方法の対応する工程に関しても、この工程には、
− 増幅の間の複数の種々の時点で、その強度が増幅されるそれぞれの核酸の量に関係している少なくとも1つのシグナルを測定すること
が含まれ得る。
【0055】
これは、工程C)に関して、および工程CC)に関してもまた示唆される。測定されるシグナルは、光学的シグナル、例えば、蛍光物質から放出される蛍光放射、具体的には、それぞれの核酸に結合させられた色素、それぞれの核酸に結合させられた蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブなどであり得る。
【0056】
さらに、工程d)および工程e)、ならびに第1のより一般的な側面にしたがう解決方法の対応する工程の少なくとも1つには、
− それぞれの測定結果、場合によっては、それぞれのシグナルの測定から増殖曲線を導くこと
が含まれ得るか、またはこれに基づき得る。
【0057】
これはまた、工程D)およびE)の少なくとも1つに関して、ならびに、工程DD)に関しても示唆される。
【0058】
さらに、工程d)および工程e)の少なくとも1つ、ならびに第1のより一般的な側面にしたがう解決方法の対応する工程の少なくとも1つには、
− それぞれの増殖曲線の特徴、またはそれぞれの増殖曲線の計算された導関数の特徴を同定すること、
− それぞれの特徴に関係する特性値を決定すること
が含まれ得る。
【0059】
これはまた、工程D)および工程E)の少なくとも1つに関して、ならびに工程DD)に関しても示唆される。
【0060】
それぞれの増殖曲線の特徴は、増殖曲線による閾値の交差に対応し得る。上記閾値は、正規化されていない増殖値を表すように予め定義されるか、または正規化された増殖値を表すようにそれぞれの測定結果に基づいて決定される。増殖曲線のこのような特徴(例えば、正規化された増殖曲線)が使用される場合は、一般的には、増殖曲線の導関数を計算することは必ずしも必要ではない。
【0061】
それぞれの増殖曲線の計算された導関数を使用できる可能性については、それぞれの導関数の特徴が、導関数のポジティブピークもしくはネガティブピーク、またはゼロ交差に対応することが示唆される。導関数は、それぞれの増殖曲線の一次導関数または二次導関数であり得る。
【0062】
それぞれの特性値の決定には、それについての測定が行われる進行パラメーターの値には必ずしも対応しない特性値を得るための、それぞれの測定値を示す増殖曲線上の点の間の増殖曲線の内挿、またはそれぞれの点の間の計算された導関数曲線の内挿が含まれ得る。具体的には、分差サイクル数が、特性値として決定され得る。
【0063】
一般的には、上記特性値(単数または複数)は、それぞれの核酸の増幅、ならびに最初の量または定義済みの初期量の少なくとも1つの直接的または間接的測定を示す。
【0064】
ある実施においては、第1のタイプの上記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、二次特性値が、上記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての上記特性値、ならびに上記対照核酸の上記特性値から決定される。二次特性値は、増幅、および上記標的核酸の最初の量、または上記標準核酸の初期量の少なくとも1つの直接的または間接的な測定を、それぞれ、増幅、および定義済みの初期量の上記対照核酸の少なくとも1つに関して表す。この場合、標的核酸の最初の量は、上記二次特性値およびそれに関連する上記参照データに基づいて定量され得る。
【0065】
工程H)に以下が含まれることがさらに示唆される:
− 一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記二次特性値を、第1のタイプの上記定量化スキームと関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること。
【0066】
第1のタイプの上記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、上記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての特性値の比を示し比値(ratio value)、上記対照核酸の特性値が決定され得る。この場合は、標的核酸の最初の量は、上記の比値、およびそれに関連する上記参照データに基づいて定量され得る。
【0067】
この状況では、工程H)には以下が含まれ得る:
− 一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記比値を、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること。
【0068】
第1のタイプの上記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがうと、上記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての特性値と上記対照核酸の特性値との差を表す、差分値が決定され得る。この場合、標的核酸の最初の量は、上記差分値と、それに関連する上記参照データに基づいて定量され得る。
【0069】
この状況では、上記工程H)には、
− 一方の標準核酸の上記初期量と、他方の上記差分値を、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること
が含まれることがさらに示唆される。
【0070】
複数の二次特性値(例えば、比値または差分値)が使用され得、これらは、希釈系列の複数の試料の二次特性値に相当する。この場合は、工程H)には以下が含まれ得る:
− 一方の上記試料の標準核酸の上記初期量と、他方の上記試料について決定された上記二次特性値を、第1のタイプの上記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの上記定量化スキームに関連する上記較正データを提供すること。
【0071】
上記較正データを提供するためには、一般的には、較正方程式または較正式が使用され得る。これらの式は、上記標準核酸の初期量と、上記内部対照の初期量と、上記特性値(すなわち、上記標準核酸についての上記進行パラメーターの特性値、および上記対照核酸についての上記進行パラメーターの特性値)、あるいは二次特性値の間の関係を示す。
【0072】
PCR増幅に関して、核酸分子の初期数と増幅産物の間の関係は、指数関数によって記載される:
y=y0(1+ε)n
但し、
y=生成物量(増幅後のDNAの量)
y0=PCR前の鋳型DNAの量
ε=増幅プロセスの効率
n=サイクル数
【0073】
標的または標準核酸についての生成物量をTとし、PCR前の標的または標準核酸の初期量をT0とし、標的または標準核酸についてのPCR増幅の効率をεTとし、標的または標準の増幅についての特性値として決定されたPCRプロセスのサイクル数をnTとし、内部標準または内部対照核酸の生成物量をQとし、PCR前の内部標準または内部対照核酸の初期量をQ0とし、内部標準または内部対照の増幅に関するPCR増幅の効率をεQとし、内部標準または内部対照の増幅についての特性値として決定されたPCRプロセスのサイクル数をnQとすると、差Δn=nQ−nTが、二次特性値として使用され得る。それぞれのサイクル数nTおよびnQに関連するそれぞれの量TおよびQが互いに等しいかまたは比例する仮定に基づくと、以下の方程式が導かれ得る:
log(T0/Q0)=log f+Δn log(1+ε)
式中、ε=εT=εQがさらに仮定されている。この方程式は、較正方程式として使用され得る。しかし、
log(T0/Q0)=aΔn2+bΔn+c
の形の方程式が、実際に得られるデータを記述するためにより適切である場合もあることが観察されている。したがって、この方程式または方程式
T0=Q0 10P
但し、
P=aΔn2+bΔn+c
が、定量化方程式として使用されることが有利であり得る。いわゆる体積係数□と、いわゆる回復係数rをさらに考慮することが適切である場合もあり、その結果
T0=(ν/r)Q0 10P
が得られる。
【0074】
これらの較正方程式を参照すれば、較正データの決定には、基本的に、それぞれの方程式、具体的には二次多項定数a、一次多項定数b、ゼロ次多項定数cと、場合によっては、体積係数νと回復係数r(デフォルト値、例えば、1.00)が含まれる。測定結果に基づいて、具体的には、決定された特性値、例えば、決定された二次特性値Δnに基づいて、多項定数が、工程A)〜E)の実行に基づいて実際に得られるそれぞれのデータに対してそれぞれの方程式をフィットさせることによって決定され得る。このフィッティングは、例えば、RMSフィッティング法によって行われ得る。それぞれのパラメーターa、b、c、ならびに、場合によっては、νおよびrに基づいて、工程g)および第1のより一般的な側面にしたがう本発明の解決方法のそれぞれの対応する工程においては、試験試料中の標的核酸の最初の量が、選択された第1のタイプの定量化スキームを使用して、入力値として、対照核酸についての特性値、および標的核酸についての特性値、またはそれらから得られた二次特性値(例えば、値nTおよびnQ、または値Δnが本明細書中で考慮される)が使用されて、決定され得る。
【0075】
それぞれの核酸についての特性値として、いわゆるエルボー値(elbow value)が使用され得ることは、注目されるべきである。図2に示されるように、エルボー値は、増殖曲線が予め決定された閾値とほぼ等しく、指数増殖がなお行われている(分別)サイクル数である。
【0076】
上記により、増幅プロセスには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスが含まれ得ることは十分に明らかになる。さらに、増幅プロセスには、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)プロセスが含まれるか、その一部であり得ることもすでに示されている。
【0077】
上記標的核酸または標準核酸、および上記対照核酸は、標的核酸または標準核酸について、および上記対照核酸について、同じプライマーに基づく上記増幅プロセスにおいて、競合して増幅され得る。
【0078】
原則として、増幅された核酸が検出され得る可能性のある方法が多く存在する。増幅された核酸は、核酸に依存する蛍光シグナルに基づく検出形式によって検出され得る。具体的には、増幅された核酸が増幅産物の生成を持続的にモニタリングすることができる検出形式によって検出されることが有利であり得る。例えば、増幅された核酸は、少なくとも1つの蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブ、または/および少なくとも1つの蛍光標識されたプライマーに基づいて検出され得る。ある態様においては、蛍光物質で、および消光物質で標識された、蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブが使用され、その標的配列に対するハイブリダイゼーションプローブのハイブリダイゼーションの際に、蛍光物質および消光物質が互いに分離して、分離された蛍光物質が、蛍光を放出するように光学的に励起される。
【0079】
別の可能性は、第1の蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブと、第2の蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブの使用である。第1のハイブリダイゼーションプローブは、蛍光アクセプター物質で標識されており、第2のハイブリダイゼーションプローブは、蛍光ドナー物質で標識されている。ここで、第1のハイブリダイゼーションプローブと第2のハイブリダイゼーションプローブが互いに近い位置にある標的配列に対してハイブリダイズするように適合させられており、近い標的配列へのハイブリダイゼーションの際に、蛍光アクセプター物質は、蛍光ドナー物質の光学的励起によって蛍光を放出するように励起され、蛍光共鳴エネルギーが蛍光ドナー物質から蛍光アクセプター物質へと転移させられる。
【0080】
さらに、当業者は、蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブおよび蛍光標識されたプライマーを使用することができる。それらの一方は、蛍光アクセプター物質で標識され、他方は蛍光ドナー物質で標識されている。ハイブリダイゼーションプローブは、プライマーに近い標的配列にハイブリダイズするように適合させられており、ハイブリダイゼーションプローブがその標的配列にハイブリダイゼーションすると、蛍光アクセプター物質が、蛍光ドナー物質の光学的励起により蛍光を放出するように励起可能になり、蛍光ドナー物質から蛍光アクセプター物質へと蛍光共鳴エネルギーが移動する。
【0081】
具体的には、増幅された核酸は、FRETハイブリダイゼーションプローブ、いわゆる、分子ビーコン、またはTaqManTM機器において使用されるプローブに基づいて検出され得る。
【0082】
増幅された核酸を、蛍光を放出するように光学的に励起させることができ、二本鎖DNAに結合すると強い蛍光を示すDNA結合色素に基づいて検出することもまた可能である。
【0083】
本発明の方法は、Roche Diagnosticsによって提供されるCOBAS TaqManTMシステムを使用して行われることが有利であり得る。
【0084】
上記で論述した態様から、本発明の方法は、それぞれの標的核酸の絶対的な定量化のための方法であり得ることが明らかになる。しかし、これは、この方法が、それぞれの標的核酸の相対的な定量化の方法であることを除外するというわけではない。
【0085】
別の実施においては、本発明の方法には、以下の工程がさらに含まれ得る:
− 上記試験試料中の上記標的核酸の定量化の間、および、上記試験試料中の上記標的核酸の存在またはそれが存在しないことの決定の間で選択する工程、
− 選択された場合に、工程c)において、場合によっては工程d)〜g)を省略して、得られた測定結果に基づいて上記試験試料中の上記標的核酸の存在またはそれが存在しないことを決定する工程。
【0086】
本発明により、さらに、本発明の方法を実行するための薬剤および参照または較正データを含む定量化キットが提供される。
【0087】
さらに、図24に示されるように、本発明は、本発明の方法にしたがって、1つの試験試料、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置100をいい、第1のより一般的な側面にしたがって、これを提供する。本発明の装置には、以下が含まれる:
− 少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット102;
− 上記増幅ユニットによって行われる上記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関係する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出ユニット104であって、検出機構が、第1の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第1のシグナルと、第2の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関係する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関係する第2のデータが計算され得る;
− 上記増幅ユニットおよび上記検出機構と連絡しているコントローラー106であって、
上記コントローラーは以下の工程を行うように適合させられるかまたはプログラムされる:
− 少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うための増幅ユニット102を制御する工程;
− 少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニット104を制御する工程;
− 上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 予め決定された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量する工程であって、上記定量化スキームにより、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される工程;
− 第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供し、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程。
【0088】
本発明の上記の第2の側面にしたがうと、本発明の上記コントローラーは、
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニット102を制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニット104を制御する工程;
dd)上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ee)上記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関して特定の予め定義された条件が適用された場合に、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、上記選択は、上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する上記測定結果、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および上記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値、上記第2の核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値と、関連する参照データに基づいて、上記第2の核酸についての特性値を参照することなく、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供される、
工程;
gg)上記第1の核酸について決定された特性値に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の第1の核酸の最初の量を定量する工程、
jj)第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供して、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程
を行うように適合させられるか、またはプログラムされる。
【0089】
上記コントローラーは、さらに、本発明の方法にしたがって工程b)〜j)を行うように、または/および本発明の方法にしたがってさらなる工程を行うように適合させられ得るか、またはプログラムされ得る。
【0090】
本発明は、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置100によって実行することができる指令のプログラムであって、該装置が、
− 少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット102;
− 上記増幅ユニットによって行われる上記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関係する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出機構104であって、該検出機構が、第1の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第1のシグナルと、第2の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関係する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関係する第2のデータが計算され得る、検出機構;
− 上記増幅ユニットおよび上記検出機構と連絡しているコントローラー106であって、
ここで上記コントローラーは上記指示に応答して以下の工程:
− 少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニットを制御する工程;
− 少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニットを制御する工程;
− 上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた、上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
− 予め決定された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の標的核酸の最初の量を定量化する工程であって、上記定量化スキームにより、上記標的核酸についての特性値、上記対照核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて上記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化が提供される工程;
− 第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供し、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程
を行う、コントローラー;
を含むプログラムをいい、第1のより一般的な側面にしたがって、これを提供する。
【0091】
本発明の上記の第2の側面に関して、本発明の方法にしたがって上記指示に応答して、上記コントローラーは以下の工程を行う:
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニット102を制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニット106を制御する工程;
dd)上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第1の核酸についての上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ee)上記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関して特定の予め定義された条件が適用された場合に、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、上記第2の核酸についてもまた上記進行パラメーターの特性値を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、上記選択が、上記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する上記測定結果、上記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および上記の特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値、上記第2の核酸についての特性値、および関連する参照データに基づいて、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、上記第1の核酸についての特性値および関連する参照データに基づいて、上記第2の核酸についての特性値を参照することなく、上記試験試料中の第1の核酸の最初の量の定量化が提供される、
工程;
gg)上記第1の核酸について決定された特性値に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって上記試験試料中の第1の核酸の最初の量を定量する工程、
jj)第1の核酸の上記最初の量を含む定量化データを提供して、上記試験試料中の標的核酸の最初の量を表す工程。
【0092】
上記コントローラー106は、上記指示に応答して、本発明の方法の1つにしたがって工程bb)〜jj)を実行することができる。
【0093】
さらに、本発明により、プログラムを具体化するコンピュータープログラム製品が提供される。コンピュータープログラム製品は、上記訓練プログラムを担持しているコンピューター可読媒体の形態であり得る。
【0094】
さらに、本発明により、通信回線を通じて、おそらくは、インターネットを通じて、ダウンロードするためのプログラムが格納されているサーバーコンピューターシステムが提供される。
【0095】
以下に、本発明の例示的な態様を示す。
【0096】
本明細書中に含まれる例示的な実施例の中には、具体的には、米国のRoche Molecular Systems, Inc.製のCOBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testに関するものもある。しかし、この特定の試験は、一例を示すにすぎず、本発明は、任意の他の定量化試験にも適用され得る。したがって、HBV Testに関する以下の背景情報は、例えば、特定のDNAに関する特定の定量化試験が本発明の状況において実行される方法を示す。もちろん、他の機器、他の増幅混合物、他の検出方法を使用することもできる。したがって、COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、説明の目的のだめだけに本明細書中で使用される、限定的ではない例としてしかみなされない。
【0097】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、ヒトの血清または血漿中のB型肝炎ウイルス(HBV)DNAの定量化のためのインビトロ核酸増幅試験であり、検体の処理にはCOBAS AmpliPrepTM機器を、増幅および検出にはCOBAS TaqManTM Analyzerを使用する。この試験により、幅広い濃度にわたってHBV DNAを定量することができる。検体の調製は、COBAS AmpliPrepTM機器を使用して自動的に行われ、増幅および検出は、COBAS TaqManTMまたはCOBAS TaqMan 48TM Analyzerを使用して自動的に行われる。
【0098】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、標的DNAの同時PCR増幅と、標的に特異的である切断された二重標識オリゴヌクレオチド検出プローブの検出に基づく。
【0099】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testは、既知の濃度(既知のコピー数)でそれぞれの試験試料に添加される第2の標的配列(HBV定量化標準(HBV Quantitation Standard)、内部対照(Internal Control)、内部標準(Internal Standard)、IQS、QS)を利用することによって、HBVウイルスDNAを定量する。HBV定量化標準は非感染性DNA構築物であり、これには、HBV標的配列のプライマー結合領域と同じプライマー結合領域を有しているHBV配列の断片が含まれている。HBV定量化標準には、HBVプライマー結合領域が含まれており、これによってHBV標的DNAと同じ長さで同じ塩基組成の増幅産物が生じる。HBV定量化標準の検出プローブ結合領域は、HBV定量化標準の検出プローブ結合領域に関して修飾されている。これらの特有のプローブ結合領域によって、HBV定量化標準のアンプリコンをHBVと区別することができる。HBV定量化標準は、阻害作用を補い、調製および増幅プロセスを制御し、それぞれの試料中のHBV DNAの正確な定量を可能にする。
【0100】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testにより、自動的に試料を調製し、その後、自動的にPCR増幅し、そしてHBV標的DNAおよびHBV定量化標準(内部対照)を検出する。Master Mix試薬には、HBV DNAとHBV定量化標準のDNAの両方に特異的なプライマー対とプローブが含まれている。増幅されたDNAの検出は、標的特異的であり、定量化標準特異的でもある二重標識オリゴヌクレオチドプローブ(これにより、HBVアンプリコンとHBV定量化標準のアンプリコンを別々に同定することができる)を使用して行われる。COBAS TaqManTM Analyzerは、それぞれの試料と対照について、HBVシグナルをHBV定量化標準のシグナルに対して比較することによって、試験試料中のHBV DNA濃度を計算する。
【0101】
PCR増幅が生じる増幅チューブ(K−チューブ)内の増幅混合物に、処理された試料を添加する。COBAS TaqManTM/TaqMan 48TM Analyzer内のサーマルサイクラーによって反応混合物を加熱し二本鎖DNAを変性し、HBV環状DNAゲノムおよびHBV定量化標準DNA上の特異的プライマー標的配列を露出する。混合物を冷却しながら、プライマーをHBV標的DNAのそれぞれの標的DNA配列に対して、およびHBV定量化標準DNAの標的DNAに対してアニールする。適切な条件下で、DNAポリメラーゼによってアニールしたプライマーを標的鋳型に沿って伸張して、アンプリコンと呼ばれる二本鎖のDNA分子を生成する。
【0102】
COBAS TaqManTM/TaqMan 48TMAnalyzerは、このプロセスを指定されたサイクル数自動的に繰り返し、それぞれのサイクルは、アンプリコンDNAの量を2倍にするようになっている。必要なサイクル数は、COBAS TaqManTM/TaqMan 48TM Analyzerに予めプログラムされる。増幅は、プライマー間のHBV ゲノムの領域内だけで生じ、HBVゲノム全体が増幅されるわけではない。
【0103】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testでは、例えば、TaqManTM機器で使用されるプローブおよび検出形式などの最新のPCR技術を利用する。これには。二重標識蛍光プローブの使用により、増幅プロセスの間に放出される蛍光レポーター色素の放出強度をモニタリングすることによるPCR産物の蓄積のリアルタイム検出が可能である。プローブは、レポーター色素および消光色素を有している、HBV特異的オリゴヌクレオチドプローブとHBV定量化標準特異的オリゴヌクレオチドプローブから構成される。COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testにおいては、HBVプローブとHBV定量化標準プローブは、異なる蛍光レポーター色素で標識される。プローブが完全な状態にある場合は、レポーターの蛍光は、Forster型のエネルギー移動効果が原因で、消光色素の近接によって抑制される。PCRの間に、プローブは標的配列にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性によって切断される。一旦、レポーターと消光色素が放出され、分離されると、消光はもはや起こらず、レポーター色素の蛍光活性が高まる。HBV DNAおよびHBV定量化標準DNAの増幅は、種々の波長で別々に測定される。COBAS TaqManTM Analyzer上でのPCRのアニーリング期の間に、試料は発光し、フィルター処理された光によって励起され、フィルター処理された蛍光発光データが、それぞれの試料について回収される。このプロセスを、指定されたサイクル数分繰り返し、それぞれのサイクルは個々のレポーター色素の発光強度を効率よく増大させ、これによって、HBV DNAとHBV定量化標準DNAを別々に同定する。増殖曲線が指数増殖を開始するPCRサイクルは、PCRの開始時点での出発材料の量に関係する。
【0104】
アンプリコンのモニタリングを指数増殖期の間に行うので、使用されるPCRは、幅広いダイナミックレンジにわたって定量的である。試料のHBV濃度が高ければ高いほど、HBVプローブのレポーター色素の蛍光はベースラインの蛍光レベルを早く上回る。HBV定量化標準(QS)DNAの量はすべての試料の間で一定であるので、HBV QSプローブのレポーター色素の蛍光は、全ての試料について同じサイクルで、またはほぼ同じサイクルで現れるはずである。QS蛍光が影響を受ける場合は、それにしたがって濃度が調節される。特異的蛍光シグナルの出現は、標的(本実施例においては、HBV標的DNA)に関しては臨界閾値(ct)として報告され、以下では、「エルボー値」、nTまたはctTとも記載され、内部対照(本実施例では、HBV定量化標準DNA)に関しては、「エルボー値」、nQまたはctQSとも記載される。ctは、レポーター色素の蛍光が予め決定された閾値を上回り、このシグナルの指数増殖期が開始する分差サイクル数として定義される。より高いct値は、最初の標的物質の濃度がより低いことを示す。
【0105】
所望される範囲にわたる希釈系列についての標的の増殖曲線が得られ得る。図13A、13C、15A、および15Cに示すように、試料の濃度が増大すると、増殖曲線はより早いサイクルへとシフトする。したがって、最も左側の増殖曲線は、最も高い標的濃度レベルに相当し、一方、最も右側の増殖曲線は最も低い標的濃度レベルに相当する。それぞれの増殖曲線について、それぞれのサイクルでの蛍光値が正規化される。蛍光シグナルが予め定義された蛍光レベルと交差する分差ct値(fractional ct value)が計算される。
【0106】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testと共に提供されるロット特異的較正定数は、HBV DNAおよびHBV定量化標準DNAのct値に基づいて、初期試料についての濃度値を計算するために使用される。
【0107】
COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testにおいて説明されるように、HBV DNAとHBV定量化標準DNAのct値の差が計算され得、初期試料についての濃度値が、これらの差分値と、ロット特異的較正定数に基づいて計算され得る。
【0108】
一態様によると、ロット特異的較正定数の決定は、本発明によって提供される方法の一部と考えられる。較正定数は、標的DNA(例えば、HBV DNA)の希釈系列を定量することによって決定することができる。ここでは、希釈系列のそれぞれの試料には、同じ既知の濃度の内部対照(例えば、HBV定量化標準)が含まれ、これはまた、それぞれの試験(例えば、COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Test)にも含まれる。この分野で使用される専門用語によると、この較正は、「外部標準」に基づいて行われる。
【0109】
一方の内部対照(内部定量化標準)と標的(HBVウイルスDNAの上記の例を参照のこと)は、同じプライマー領域を有する類似したものであり、同じ長さで同じ塩基組成の増幅産物であることが有利ではあるが、一般的には必ずしもそうである必要はない。異なるプライマーを使用することもなお可能である。しかし、類似した標的配列および内部対照配列、ならびに同一のプライマーを使用することには、同時に起こるいずれの増幅反応の増幅効率も同一であるかまたはほぼ同一であるはずであるという利点がある。
【0110】
以下に、それぞれの定量化試験の較正、および本発明によって提供される対応する方法の較正部分に関する例を示す。
【0111】
内部対照を使用する所定の定量化試験の較正は、本発明の一態様にしたがって、例えば、図1aおよび1bに説明されるように行われ得る。第1の工程(工程A-1)では、試料の希釈系列が提供され、そのそれぞれには、それぞれコピー数T0iの標的核酸(上記の例に関しては、例えば、HBV DNA)と、同数の内部対照または定量化標準核酸(上記の例に関しては、例えば、HBV定量化標準DNA構築物)が含まれる。希釈系列には、S個の個々の試料が含まれる。
【0112】
適切な機器、例えば、COBAS TaqMan(登録商標)Analyzerを使用して、Pサイクル中のPCR増幅によって試料を増幅する(工程A-2)。増幅の間、PCR産物の蓄積を示す蛍光強度を測定する。これは、TaqManTM機器において使用されるようなプローブと検出形式に基づいて、あるいは、当該分野で公知の他の手段に基づいて行われ得る。蛍光シグナル間にクロストーク(crosstalk)が存在し得る。これは、蛍光の発光スペクトルと、別のPCR産物に関連する蛍光検出器の受容バンド幅の重複が原因である。このクロストークは、多成分分析を行うことによって補正され得る。例えば、いわゆる、色度標準に基づくクロストークの較正が、測定値から得られるフィルター読み取りベクターを、クロストークを含まない蛍光強度ベクターへと変換するために使用され得るエッセイ特異的クロストークマトリックスを提供するために行われ得る。
【0113】
それぞれの試料について測定された蛍光強度に基づいて、標的増殖曲線Tと対照増殖曲線Qが得られる(工程A-3)。
【0114】
所望により、例えば、人為的な結果を排除するため、機器によるばらつきを補正するためなど、増殖曲線に関して事前チェックと補正を行うことができる。増殖曲線は、例えば、それぞれの増殖曲線の生の蛍光値を、増殖曲線のベースラインの縦座標との切片値で割り算することによって、正規化することができる。図2に、対応する例を示す。
【0115】
増殖曲線に基づいて、例えば、正規化された増殖曲線に基づいて、増幅の特定の瞬間的状態を示すそれぞれの特性値が決定される(工程A-4)。本実施例においては、標的増殖曲線についてのいわゆる「エルボー値」nTと、対照増殖曲線についてのnQが決定され、これらは、それぞれの増殖曲線が恣意的なシグナル値ASVと交差する分差サイクル数に相当する(図2)。分差サイクル数を得るために、測定によって得られた増殖曲線点の間の増殖曲線の適切な補間を行うことができる。
【0116】
一般的には、それぞれの試料iについて、標的エルボー値nTiと対照エルボー値nQiが得られる(工程A-5)。しかし、高い初期標的濃度T0については、内部対照に関するPCR増幅によっては、1サイクル〜Pサイクルのうちでは特徴的な増殖曲線が得られず、その結果、対照エルボー値が得られない場合がある。このような対照増殖曲線の脱落は、標的と内部対照との間での競合作用によって生じる。この方法は、対照増殖曲線の脱落の可能性を考慮するように適切に実行され得る。その後の工程では、これらの試料についてのみ、適切な標的エルボー値nCiと適切な対照エルボー値nQiが得られるように配慮しなければならない。決定されたエルボー値の対応するチェックは、理論的な考慮、具体的には、PCR増幅のダイナミクスに基づいて実行され得る。
【0117】
全ての適切な対nTi、nQiについて、それぞれのエルボー差Δni=nQi−nTiが計算される(工程A-6)。したがって、希釈系列のそれぞれの試料について、または対照増殖曲線が脱落の場合には、希釈系列のサブセットのそれぞれの試料について、値の対(T0i、Δni)が得られる(工程A-7)。これは、それぞれの試料iについて決定されるエルボー差Δniとそれぞれの初期標的濃度T0iを関連付ける。
【0118】
これらの値の対により、それぞれの定量化試験の較正が可能である(工程A-8)。例えば、指数増殖関数から導かれる理論的な較正式が使用され得る。本明細書中で考察される実施例にしたがうと、二次の定量化式(定量化方程式)が使用され、これは、標的増殖曲線と対照増殖曲線との間の関係を正確に示すために示される。この二次多項方程式は、同時増幅における競合作用(例えば、プライマーの競合)を十分考慮することができる。データ対(T0i、Δni)に較正式をフィットさせることによって、例えば、RMS法またはKRC法によって、図1bに示される較正式の適切なパラメーターa、b、およびcが得られ得る。これらは、較正定数となる。さらに、増幅効率εと、標的の増幅と内部対照の増幅との間の比例定数fが得られ得る。
【0119】
較正はさらに、図3〜8に示される多数の実施例に基づいて説明され得る。図3は、24個の試料についての入力データと増幅結果のデータのシートである。PCR増幅の前には、それぞれの試料には、同じコピー数の内部対照核酸(1000コピー)が含まれていた。第2列目においては、それぞれの試料についての標的核酸の初期量(コピー数)が示される。4列目および5列目には、内部対照の増幅のエルボー値nQSと、標的のPCR増幅のエルボー値nTが示される。これらのエルボー値の差は6列目に示される。
【0120】
図4は、(IQSのエルボー−標的のエルボー)に対する(標的入力コピー数/IQS入力コピー数)の対数のプロットである。さらに、2つの較正曲線(一方は一次であり、他方は二次である)は、増幅によって得られたデータ点にフィットするようにプロットされる。フィットさせるために、KRC法が使用された。KRC法に従った直線的なフィットの傾きと切片により、同時増幅効率εと、比例定数fが得られる。
【0121】
フィットの程度を評価するために、回帰データを使用して力価を逆算することができる。図5には、それぞれの実際の標的入力コピー数との比較において、線形の多項式回帰データに基づく、さらには、フィットによって得られたfとεの値を使用する指数増殖式に基づく、そのような逆算が示される。
【0122】
さらに、一方の標的エルボー値(レポーターエルボー値)と、他方の内部対照(IQS)エルボー値を、それぞれの較正式に対して互いに別々にフィットさせることも可能である。対応する実施例が図6および7に示される。この方法の1つの態様にしたがうと、このような較正データが、対照増殖曲線の脱落、または下降する対照増殖曲線を示す試料の定量化のために使用され、その結果、適切ではない対照エルボー値が決定され得たり、または対照エルボー値が全く決定され得なかったりする。
【0123】
図8には、実際のデータに関係付けられた回帰フィットに基づく逆算の結果が示される。
【0124】
高い初期標的濃度を有している試料の定量化のために、さらなる較正が行われ得ることは、すでに言及されている。これは、図9に記載される。B1と記載される第1の変形にしたがうと、初期標的コピー数(または濃度)T0i、ならびに、図1aおよび1bにしたがう較正に使用された試料のそれぞれの標的エルボー値nTiが評価され(工程B2-2)、適切な較正式、例えば、二次多項方程式に基づいて較正定数A、B、Cを決定するために使用される(工程B1-2)。対照エルボー値は不要であるので、たとえ、対照増殖曲線が脱落していても、全ての試料についての増幅結果が使用され得る。較正定数に加えて、増幅効率が、データ点に対する較正式の対応するフィッティングに基づいて提供され得る(工程B1-3)。
【0125】
さらに簡単なアプローチにしたがうと、選択された試料jについての増幅結果だけが評価され(工程B2)、使用される。これは、予め定義された参照値nTrefにほぼ対応するエルボー値nTjを有している。予め定義された参照値nTrefは、比較的高い初期標的濃度(コピー数)に対応し、これにより、比較的低いエルボー値が導かれ、その結果、この標的濃度について、またはいくらか高い標的濃度については、対照増殖曲線の脱落の可能性がより高い。値の対(T0j、nTj)自体は、指数増殖関数に基づく較正定数として、おそらく、上記に言及された理論上の増幅効率または較正によって得られる増幅効率とともに、使用され得る。
【0126】
上記で論述した実施例と一致して、エルボー値または閾値が、増殖曲線に基づいて決定されることが加えられるべきである。しかし、このようなエルボー値または閾値の代わりに、他の特性値が使用される場合もあり、例えば、それぞれの増殖曲線の一次、二次、またはn次導関数に基づいて決定される特性値が使用される。
【0127】
図10aおよび図10bを参照して、未知の標的力価T0を含む試料の定量化は、以下のように行われ得る。未知の標的力価T0i及び等量の較正で使用される既知の対照力価Q0を含む1つの試料または試料のセットが提供された(工程C-1)あと、蛍光強度の測定を含むPCR増幅が、較正に関する方法の一部において行われる(工程C-2)。必要であれば、クロストーク補正が行われる。増幅により、それぞれの標的増殖曲線Tiが得られ、通常、対照増殖曲線Qiもまた得られる(工程C-3)。予備チェックと補正(必要であれば)が行われた後、データが正規化され、増殖曲線についてのエルボー値が決定される(工程C-4)。通常、それぞれの試料について標的エルボー値nTiと対照エルボー値nQiが得られる(工程C-5)。しかし、初期標的力価T0が比較的高い場合には、対照増殖曲線が脱落する場合もある。このような試料については、標的エルボー値nTiだけしか得られない。しかし、適切ではない対照エルボー値nQiが生じ、これが破棄される可能性もまた存在する。
【0128】
エルボー差Δniの計算(工程C-6)の後、較正式についての入力値Δniが得られる(工程C-7)。較正式と、較正によって得られた定数a、b、cに基づいて、初期力価値T0iが計算され得る(工程C-8、C-9)。
【0129】
対照増殖曲線において脱落を示したので対照エルボー値を決定することができなかった試料については、または不適切な対照エルボー値が得られた試料については、適切な較正式と関連する較正データ、例えば、図9の態様B1)およびB2)に従う式とデータを使用して、それぞれの標的エルボー値nTiに基づいて、初期力価T0iを得ることができる。これに関して、図11aおよび図11bに記載されるような、工程D1-1、D1-2、およびD1-3にしたがうプロセス、ならびに工程D2-1、D2-2、およびD2-3にしたがうプロセスが記載される。
【0130】
以下では、本発明が、特定の例、すなわち、上記に記載されるCOBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqMan(登録商標)HBV Testに基づいてさらに説明される。図12には、使用されるCOBAS CAP/CTM HBV Testキットの包装上の印刷が示される。この試験キットは、Roche Molecular Systems, Inc., Branchburg, NJ USAから、またはRoche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germanyから入手することができる。
【0131】
図13には、HBVプラスミド標的の希釈系列、および図12にしたがうHBV試験に基づいて得られた内部対照の希釈系列についての増殖曲線が示される。HBVプラスミドの希釈系列は、1e1〜1e9 CTMU/ml標的配列、および5.0 e3 CTMU/mlの内部対照配列の系列である。単位CTMUは、いわゆる、COBAS TaqManTM単位をいう。較正係数は、通常、一定のコピー数/mlに対する1 CTMU/mlに関して、1〜3である。本明細書中の単なる例示目的の観点においては、簡単に1 CTMUが1コピーとされる場合もある。
【0132】
この溶液の系列に対して、1e4 CTMU/mlの標的を含むWHO-EUROHEP-Standardの2つの試料が、基準の目的のために添加された。
【0133】
図13aには、正規化されていない標的増殖曲線が示され、図13bには、正規化されていない対照増殖曲線が示される。ベースラインオフセットを除去する正規化により、図13cの標的増殖曲線と、図13dの対照増殖曲線が導かれる。
【0134】
対照増殖曲線においては、目に見える内部対照の不調な値(対照増殖曲線の脱落)は存在しない。最も高濃度のHBVプラスミド(1e8および1e9)についてもなお、内部対照の増殖曲線は異なる増殖を示し、ベースラインとは区別される。したがって、例えば、約50の、所望される力価測定の範囲に達する。原則的には、エルボー差に基づく標準的な定量化を使用することが十分である。図14には、標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値が示される。対照増殖曲線についてのエルボー値は示されていない。
【0135】
この状況は、5.0 e3 CTMU/mlの内部対照を含む、5e2 CTMU/ml〜1e9 CTMU/mlの範囲の標的HBVプラスミドの別の標的希釈系列については異なる。それについての正規化されていない増殖曲線と正規化された増殖曲線は図15に示される。この希釈系列に、1e4 CTMU/mlのWHO-EUROHEP-Standardが添加された(2つの試料)。標的曲線は、なおも、良好なスムーズな依存性と予想されたとおりの濃度の反映を示すが、内部対照は明らかに高濃度の標的による影響を受ける。1e8及びそれより高い濃度では、非常に低い内部対照シグナルが得られた。その結果、エルボー差に基づく標準的な定量化の完全な不調の可能性は劇的に増大する。いくつかの試料については、明確には対照エルボー値は得られず、その結果、標準的な定量化はできなかった。図16には、標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値が示される。対照増殖曲線についてのエルボー値は示されていない。
【0136】
以下では、図1〜11に基づいて考えられる較正および定量化の態様および変更が示される。図17aの式F0には、エルボー値の差を使用する、COBAS TaqManTM機器増殖曲線についての標準的な力価計算式が示される。式F0は、一定の内部対照コピー数Q、一定の回復r、および一定の体積係数νについての定数a、b、cを用いて、簡単な形式で記載され得る。なぜなら、パラメーターとしてQ、r、およびνを取り扱う必要はないからである。したがって、上記ですでに考えられた標準的な較正式が得られる。
【0137】
不適切な対照エルボー値の使用を避けるために、標的のエルボー値が、例えば、20の閾値よりも低い場合には、標的増殖曲線のエルボー値ctT(上記でnTと記載される)から直接標的力価が計算される場合もある。HBV試験については、20の標的エルボー値は、約5×106コピーに相当する。このような比較的小さい標的エルボー値については、式F1が、工程D2-1、D2-2、およびD2-3に従う「例外的な」定量化にしたがって使用され得る。高力価演算関数F1は、指数増殖を、1サイクルあたりの増幅係数AF=1+ε=2と仮定している。これは、やや理想主義的な仮定である。このアプローチは一般的には実際の増殖を過大評価しており、2よりも小さい増幅係数の補正によって高い力価の定量化の質が改善されることが、期待されるはずである。
【0138】
Trefおよびctref(上記においてはnQと記載される)の値は、参照値であり、これらは、例えば、いくつかの機器、例えば、高力価較正B2についての較正手順において決定される。これらの値は、特定の試験のそれぞれの試薬キットのロットに関して決定され得る。較正においては、基本的に2つの工程が行われ得る:i)Trefに対する合理的な位置決めと精度と割当での対照試薬の定量化、ii)対照試薬が異なる機器にアプライされ、ctrefに対して割り当てられる場合に見られる平均ctの決定。Trefおよびctrefの値は、それぞれの試薬キットと共に提供され得る。例えば、これらの値は、試薬カセット上のバーコードにコードされ得る。試薬カセットが増幅機器(例えば、COBAS AmpliPrepTM Instrument)に装備されている場合は、Trefおよびctrefデータは、バーコード検出器によって読み取ることができ、機器の制御ソフトウェアに入力データとして導入される。必要とされる精度と、試薬キットのロットの均質性によっては、ロットの特異性は必要なく、その結果、Trefとctref試験を特異的に決定することで十分である。
【0139】
1つの特定の問題は、Trefが特定の「ct範囲」(例えば、19.3<ctref<20.7)に見られなければならないことである。これは、±0.21の対数誤差に相当する。さらに、Trefは、全ての機器についてその「ct範囲」に見られなければならない。このアプローチの代わりが、二次較正式を使用する、工程B1-1、B1-2、およびB1-3(較正)ならびに工程D1-1、D1-2、およびD1-3(定量化)にしたがうアプローチである。
【0140】
一定の理論上の増幅係数を使用する代わりに、1回のPCRサイクルあたりの増幅係数AF=1+εが代わりに使用される場合もある。これは、較正曲線または標準較正のデータから導かれる。対応する式はF2として示される。
【0141】
標準較正式を参照して、増幅係数AFは、Δct=ctQs−ctT=0(AF=eb*ln10b;bは較正係数の第2のパラメーターである)について得られる。したがって、式F2においてAF=2の代わりにAF=eb*ln10を使用することにより、較正されたデータのセットから増幅係数を抽出し、高い標的濃度領域においてもまたこの係数を使用することが可能である。
【0142】
図18には、参照エルボー値ctrefに対する標的エルボー値ctTの値に応じて、標準定量化式または「例外的な」定量化式F1(あるいは、「例外的な」定量化式F2)のいずれかが使用される、完全力価計算アルゴリズムのフローチャート部分が示される。
【0143】
このフローチャート部分の変更が図19に示される。ここには2つの条件が存在し、これらは、適用される例外的な定量化式F1またはF2を実行できなければならない。さらなる条件は、最後のPCR増幅サイクルの後の正規化された内部対照強度値afi(n)が、一定の閾値afi(n)refを超えないものであることである。閾値afi(n)refは、行われる正規化に関して適切に選択されなければならない。図13〜16に示される正規化については、閾値afi(n)ref<2は、内部対照QSについての極めて低いプラトーを意味する。これらの2つの条件が保たれている場合には、標的力価は、例えば、式F1または式F2を使用することによって、標的増殖曲線のctから直接計算される。
【0144】
図19の変更は、例外的な定量化式を、内部対照曲線が完全に不調である場合、またはこの曲線が、非常に弱くなり、閾値よりも小さいプラトー値を有する場合にのみ適応することを意味する。したがって、図13に示されるような増殖曲線については、なおも、標準定量化式が、全ての試料について使用される。
【0145】
標準定量化式、例外的な定量化式F1、および例外的な定量化式F2に基づく図13〜16にしたがう増殖曲線の評価により、図20および22の逆算結果と、図21および23のシグナル回復結果が導かれる。4つの定量化アプローチが適用された。アプローチ「標準」は、標準定量化式だけに基づく。アプローチ「F1」は、図18の関連するフローチャート部分を伴った、標準較正式と、例外的な定量化式F1に基づく。アプローチ「F2」は、図18の関連するフローチャート部分と再び組み合わせて、標準定量化式と、例外的な定量化式F2に基づく。さらに、アプローチ「F3」は、図18に示される関連するフローチャート部分とは組み合わせずに、再び、標準定量化式と例外的な定量化式F1に基づく。代わりに、図19に示される関連するフローチャート部分が使用された。
【0146】
図20および21は、図13の増殖曲線について得られた。異なるアプローチについて得られた定量結果の間にはごく小さな偏差が存在する。標準力価計算は示されるデータについてうまく作業できる。なぜなら、内部対照増殖曲線には、最も高い標的濃度まで失敗がないからである。さらに、図18の条件と組み合わせて例外的な式F1を使用するアプローチ「F1」は、極めて良好な結果を生じる。およそ4e6より上の量のすべての標的の計算により、標準関数から目に見えるほどの偏差を示さないことがわかる。実際、高い量の値は、標準関数ほどの散乱はないことが明らかである。これは、内部対照シグナルが高い標的量で大きな散乱を示すと予想できるので、合理的である。この散乱は、定量化式F1に寄与し得ない。
【0147】
また、図18の条件と組み合わせて使用される例外的な定量化式F2(アプローチ「F2」)には、式F1と見事に同様の力価が記載されている。較正曲線から誘導されるAF係数(示されるデータについて:1.95)は、高力価の範囲について妥当である。
【0148】
アプローチ「F3」(図19の条件と組み合わせた式F1)により、標準定量化式と同じ結果が生じる。なぜなら、試料について内部対照(QS)増殖曲線のafi(n)値は、あらかじめ設定された閾値afi(n)ref=2を超えるからである。したがって、例外的な定量化式は決して適用されなかった。
【0149】
図21に示されるシグナルの回復は、バーで示される対数誤差±0.3の規格限界が、全てのダイナミックレンジにわたって、そして全ての式については到達していないことを示している。しかし、全体的には、合理的な性能が得られており、特に、標準定量化式と式F1については合理的な性能が得られている。
【0150】
図22および23は、図15の増幅結果に基づく。再び、図20および21に関して定義されるアプローチ「標準」、「F1」、「F2」、および「F3」が使用された。
【0151】
アプローチ「標準」の標準定量化式は、内部対照増殖曲線が不調である場合には、標的力価を導くことができない。これが理由で、最大入力コピー数(1e9)ではデータ点がなく、わずか2つの決定しかないが、濃度1e8については実際の値から極めて離れている。
【0152】
より低い標的濃度(評価において4e6より下を示す)では、標準定量化方程式は、アプローチF1にしたがって使用される。例外的な定量化式F1と標準定量化式との間の差は、標的量>4e6で見ることができる。1e8と1e9の濃度での内部対照の不調が原因で、アプローチF1とF3にしたがう例外的な定量化によっては、これらの量で重なりあう結果が生じる。定量化式F1は非常に単純な関数であり、仮定AF=2が極めて理想主義的であるけれども、この式により、このデータのセットについて優れた結果が導かれる。
【0153】
増幅係数AF=eb*ln10を用いるアプローチ「F2」の定量化式F2は、力価をかなり過大評価する。標準較正曲線から導かれる増幅係数AFは、高力価範囲については不適切である(高すぎる)ようである。したがって、PCR増幅反応の理論的ダイナミクスの観点において高すぎる較正曲線から導かれる増幅係数に基づく過大評価をさけるためには、さらなる予備チェックを実行することが適切である場合がある。例えば、2つの増幅係数の内いつも低い方を選択することによって、適切に予め決定された理論上の増幅係数を用いて較正曲線から導かれる増幅係数を組み合わせることが適切である場合もある。
【0154】
例外的な定量化式F1と図19の条件に基づくアプローチ「F3」により、測定範囲全体にわたって優れた結果が得られる。
【0155】
図23には、図21と同様に、対数目盛りで、見出されたコピー数に対する予想される偏差が示される。バーは、仮定される最大偏差限界(±0.3対数)を示す。低い標的力価では、異なる関数のデータ点は等しい。1e7で互いの関数の分離が開始する。1e8では、標準定量化アプローチによる2つの値だけが予想される値から実質的にそれているようである。対数値「-3.0」での長方形の存在は、標準定量化アプローチに基づく内部対照増殖曲線の不調が原因で、決定することができなかった全ての力価の値から生じる。
【0156】
図24には、本発明の実行のために使用することができるシステムの構造についての模式的な例が示されている。このシステムまたは定量化装置100には、PCR増幅を行うように構成された増幅ユニット102が含まれている。具体的には、EP 0 955 097 A1から公知であるようなサーマルサイクラーが含まれ得る。さらに、増幅ユニット102の中で増幅される試料−試薬混合物により放出される蛍光を測定するための検出ユニット104が存在する。EP 0 953 379 A1およびEP 0 953 837 A1より公知であるような装置が、提供され得る。
【0157】
ユニット102と104の両方は、制御ユニット106、例えば、工業規格オペレーティングシステムおよび工業規格マイクロプロセッサに基づくワークステーションによって制御される。具体的には、制御ユニットが、増幅ユニット102によって行われる増幅サイクルを制御し、検出ユニット104からの蛍光強度データを受け取る。制御ユニット106によって行われる制御処理およびデータ処理を定義する制御プログラムは、記憶ユニット108、例えば、磁気ディスクユニットに保存され得る。もちろん、十分なRAMメモリもまた存在する。入力ユニット110は、外部較正データを含む(所望される場合)入力データをシステムに入力するために提供される。入力ユニットには、キーボード、フロッピーディスクドライブ、またはCD-ROMドライブと、バーコードリーダーが含まれ得、これによっていくつかの例が生じる。さらには、出力ユニット112も存在し、これには、例えば、具体的に定量化結果を出力するための役割を果たすディスプレイおよびプリンターが含まれる。
【0158】
具体的には、本発明の方法を実行するためには、Rocheによって提供される従来のRoche COBAS AmpliPrepTM/COBAS TaqManTMシステムが使用され得る。しかし、これは、本発明の方法が行われる方法でシステムを制御し、システムの構成要素と通信する制御ソフトウェアを提供することによって、本発明を実行するように構成されたものである。具体的には、図18および19に示されるフローチャート部分、ならびに、図17aおよび17bに示される別の較正式が、従来のプログラミング技術を使用するこのようなシステムの制御ソフトウェアにおいて何ら問題を生じることなく、当業者によって実行され得る。図1a、1b、図9、10a、10b、および図11a、11bに関して、これらの図を、このようなシステムにおいて行われるデータの流れ、ならびに、このようなシステムにおいて行われる制御工程およびデータ処理を示す図としてみることができることは理解されるべきである。本明細書中に含まれる情報に基づくと、当業者は、本発明を実行するように、従来の定量化装置またはそのソフトウェアを適合させることができる。さらに、当業者は、本発明を実行するためのソフトウェアを提供することができ、これは、従来のシステムに搭載される場合には、従来のシステムを、本発明を具体化するシステムへと変換する。
【0159】
上記の本発明のいくつかの具体的な態様は、以下に記載され得る:
i)試料の定量化:
− 試料は、一般にPCRによって内部対照と一緒に増幅される。
− リアルタイムPCRが使用される(終点法ではない)。
− 増幅産物は、標的と内部対照について2つの異なる蛍光標識を使用する検出技術によって、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、検出される。
− 閾値またはエルボー値が、一定の閾値を定義することによって増殖曲線に基づいて決定される。増殖曲線の一次導関数、二次導関数、n次導関数は使用されない(しかし、これは、原則として可能である)。
− 標的の増殖曲線と内部対照の増殖曲線が閾値に達する部分サイクル数が概算される。
− これらの部分サイクル数の差から、標的の初期力価が、予め定義された較正式または較正曲線に基づいて導かれ得る。
ii)較正式または較正曲線の提供:
− いくつかの希釈工程を有している較正パネル(希釈系列)(これは、例えば、WHO-EUROHEP-Standardに基づいて調節される)が、通常の(art)PCRの状態によるいくつかのレプリカ核酸に基づいて、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、増幅される。限界サイクルが決定される。それぞれの希釈段階(標準)について、内部対照が、一定の予め決定された濃度で同時に処理される。
− 標的と内部対照との間でのサイクルの差(これは、それぞれの標準について決定される)が較正関数または式に基づいて決定され、評価される。例えば、標準の上記サイクル差とそれぞれの初期力価が図表にプロットされ得る(サイクル数の差対初期標的力価)。
− 測定される任意のサイクル差についての初期力価を計算または決定することができるよう、関連する較正曲線または/および較正関数が作成され得る。
iii)2モードまたは多モードの定量化スキームに基づく試料の定量化:
− 試料は、一般にPCRによって内部対照と一緒に増幅される。
− リアルタイムPCRが使用される(終点法ではない)。
− 増幅産物は、標的と内部対照について2つの異なる蛍光標識を使用する検出技術によって、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、検出される。
− 閾値またはエルボー値が、一定の閾値を定義することによって増殖曲線に基づいて決定される。増殖曲線の一次導関数、二次導関数、n次導関数は使用されない(しかし、これは、原則として可能である)。
− 標的の増殖曲線と内部対照の増殖曲線が閾値に達する部分サイクル数が概算される。
− 状況に応じて、標準定量化または別の(例外的な)定量化が選択される。第1のアプローチにしたがうと、標的の増殖曲線が極めて初期のサイクルで閾値に達する場合には、内部対照に関連するサイクルを基準とすることなく力価を評価するために力価の別の定量化が選択される。第2のアプローチにしたがうと、増幅の最終段階で内部対照の濃度が最小プラトー値を超えない場合には、別の定量化式だけが選択されるさらなる条件が存在する。一般的には、標的力価の別の定量化は、高い標的濃度について予想され得るように、内部対照が脱落するか、または競合が原因で不調である場合に、選択される場合がある。
【0160】
これらのアプローチに従うと、内部対照シグナルの別の定量化は試料によって選択的であり、高い標的濃度について標的力価の計算には含まれない。
− 他の場合においては、初期標的力価が、予め定義された較正曲線または較正式を使用して決定されたサイクル差に基づいて評価される(標準定量化)。
【0161】
iv)2モードまたは多モード定量化スキーム用の較正データの提供:
− いくつかの希釈工程を有している較正パネル(希釈系列)(これは、例えば、WHO-EUROHEP-Standardに基づいて調節される)が、通常の(art)PCRの状態によるいくつかのレプリカ核酸に基づいて、例えば、TaqManTM機器の検出形式とプローブにしたがって、増幅される。限界サイクルが決定される。それぞれの希釈段階(標準)について、内部対照が、一定の予め決定された濃度で同時に処理される。
− 標的と内部対照との間でのサイクルの差(これは、それぞれの標準について決定される)が較正関数または式に基づいて決定され、評価される。例えば、上記サイクル差と、標準のそれぞれの初期力価が図表にプロットされ得る(サイクル数の差対初期標的力価)。
− 測定される任意のサイクル差についての初期力価を計算または決定することができるよう、関連する較正曲線または/および較正関数(一般的には、較正データ)が作成され得る。
− 高力価範囲については、第2の較正曲線または/および較正関数(一般的には較正データ)が、内部標準力価(単数または複数)(標的)と、検出された限界サイクル(単数または複数)に基づいて作成される。
− 測定された任意のサイクル差について、または、−高い初期標的濃度の場合には−、任意の標的限界サイクルについて、それぞれの初期力価が、較正データ(例えば、2つの較正曲線または式)に基づいて計算または決定され得る。
【0162】
上記実施例と実験結果は、異なるタイプの少なくとも2つの定量化スキームを提供することによって、標的の高い力価濃度での内部対照の不調の問題を回避することができることを示している。2つの定量化スキームのうちの1つは、定量化のために、標的核酸についての特性値と対照核酸についての特性値を使用して、別のスキームは、定量化のために、標的核酸についての特性値だけを使用する。具体的には、本発明により2モードまたは多モードの力価計算アルゴリズムが提供される。そのために、別の定量化アプローチ(例えば、定量化較正式)が使用される場合もある。
【0163】
2モードまたは多モードの定量化の利点は、具体的には以下である:
− 特定の正確さで、非常に高い量(>1010cp)まで力価を決定することができる。これは、従来の核酸試験のダイナミックレンジを大幅に拡大する。
− 高い標的濃度は一般的には、極めて一定の(solid)頑健な(robust)増殖曲線を有する。これらの検体の精度および回復には、あまり一定ではなくあまり頑健ではない内部対照増殖曲線の分散による相当な欠点がある。したがって、このような高い標的濃度についての力価の計算が内部対照を伴わずに行われる場合には、定量化結果の質が改善され得る(より低い変動係数(CV))。
− 標的の増殖と内部対照の増殖との間での競合によって引き起こされる内部対照シグナルの脱落は、適切に取り扱うことができる。実際の適用については、脱落、すなわち一般的には、「例外的な較正式」の使用は、ユーザーに対して適切に情報が伝えられ、その結果、ユーザーは、内部対照(IQS)の内部対照機能が評価されなかったこと(すなわち、内部対照シグナルが非常に低くなったかまたは完全に脱落した場合の高い標的濃度について)を知ることができる。
− 適用された内部対照コピー数を、初期標的力価のより高い値にまでダイナミックレンジが拡大できるように高い値に調節することは不要である。その代わりに、競合反応がアッセイの感度に影響を与えないように、内部対照コピー数を低く保つことが可能である。
− 実際の適用については、高力価の定量化関数(「例外的な」較正式)と、標準評価(標準較正式)の間の切り替え点は、所望されるダイナミックレンジと適用される内部対照のコピー数に応じて適切に調節することができる。
− 理論上の増幅係数が使用される限りは、試験特異的、またはキットロット特異的に増幅係数を定義することが適切である場合がある。上記で使用される理論値AF=2と比較すると、この係数をわずかにより小さい値に調節することが適切である場合もある。
− 高い初期力価値について内部対照を基準とすることなく力価較正式を使用することは、なおさらに適切であることが明らかである。なぜなら、力価測定の精度は、PCRサイクル数とは逆に低下する。したがって、高い標的量では誤差はより小さい。なぜなら、定量化プロセスに含まれるサイクル数がより少ないからである。したがって、内部対照の内部対照機能はあまり重要ではない。
【0164】
本発明は、デジタル電子回路で、またはコンピューターハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアで、あるいは、それらの組み合わせで実行され得る。本発明の装置は、プログラム可能な処理装置による実行のための機械可読記憶媒体において明確に具体化されたコンピュータープログラム製品において実行され得;そして、本発明の方法の工程は、入力データを操作して出力を生じることによって本発明の関数を実行するように機器のプログラムを実行する、プログラム可能な処理装置によって行われ得る。
【0165】
本発明は、データとそれからの指示を受け取り、そしてデータとそれに対する指示を送信するように接続された少なくとも1つのプログラム可能な処理装置、データ記憶システム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置を含む、プログラム可能なシステム上で実行される1つ以上のコンピュータープログラムにおいて実行することができることが有利であり得る。それぞれのコンピュータープログラムは、高いレベルの手続きまたはオブジェクト指向のプログラム言語で、あるいは、所望される場合には、アセンブリまたは機械言語で実行され得;どのような場合であっても、言語はコンパイル型言語またはインタープリタ型言語であり得る。適切な処理装置としては、一例として、一般目的用、および特殊目的用マイクロプロセッサの両方が挙げられる。一般的には、処理装置は、読出し専用記憶装置および/または等速読出し記憶装置から指示とデータを受け取る。コンピューターの不可欠な構成要素は、指示を実行する為の処理装置とメモリである。
【0166】
一般的には、コンピューターには、データファイルを保存するための1つ以上の大容量記憶装置が含まれる;このような装置としては、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク;磁気光学ディスク;および光学ディスクが挙げられる、コンピュータープログラムの指示とデータを明確に具体化するための適切な記憶装置としては、全ての形態の不揮発性メモリが挙げられ、一例として、半導体記憶装置、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ装置;磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク;磁気光学ディスク;ならびにCR-ROMディスクが挙げられる。ユーザーとのやりとりを提供するためには、本発明は、ユーザーに対して情報を表示するためのモニターまたはLCDスクリーンのような表示装置、ならびに、ユーザーがコンピューターシステムに入力を提供することができるキーボードとマウスまたはトラックボールのような位置決め装置を有しているコンピューターシステムで実行され得る。
【0167】
本発明は、多数の例示的な態様と例示的な実施例、および測定結果に基づいて上記に説明された。他の態様が可能である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の内容と範囲によってのみ限定されるべきである。
【0168】
種々の図面の中の同様の参照記号は、同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1a】図1AおよびBは、標準に基づく較正式を使用する、PCR増幅に基づく核酸の定量化を較正する方法を示す。
【図1b】図1AおよびBは、標準に基づく較正式を使用する、PCR増幅に基づく核酸の定量化を較正する方法を示す。
【図2】図2は、蛍光測定結果の正規化前(図2a)および正規化後(図2b)の例示的なPCR増幅増殖曲線を示す。
【図3】図3は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図4】図4は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図5】図5は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図6】図6は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図7】図7は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図8】図8は、図1a、1bにしたがって行われた較正についての数値例を含む図表およびプロットを示す。
【図9】図9は、高い標的濃度についての、標準に基づく較正についての2つの可能性を示す。
【図10a】図10aおよび10bは、標的および内部対照に関する増幅結果に基づく標準的な定量化の例を示す。
【図10b】図10aおよび10bは、標的および内部対照に関する増幅結果に基づく標準的な定量化の例を示す。
【図11a】図11aおよび11bは、標的のみに関する増幅結果に基づく例外的な定量化についての2つの可能性を示す。
【図11b】図11aおよび11bは、標的のみに関する増幅結果に基づく例外的な定量化についての2つの可能性を示す。
【図12】図12は、本発明を評価するため、また本明細書中に示される例示的な実験結果を提供するために使用されたHBV試験キットの包み上の印刷を示す。
【図13】図13は、図12によるHBV試験に基づいて得られた、HBVプラスミド標的および内部対照の希釈系列についての増殖曲線を示す。
【図14】図14は、図13の例の標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値を示す。
【図15】図15は、図12によるHBV試験に基づいて得られた、HBVプラスミド標的および内部対照の第2の希釈系列(第2の研究ロット)についての増殖曲線を示す。
【図16】図16は、図15の例の標的増殖曲線についてのそれぞれのエルボー値を示す。
【図17a】図17aおよび17bは、内部標的力価の定量化のために別な方法で使用され得る較正式の例を示す。
【図17b】図17aおよび17bは、内部標的力価の定量化のために別な方法で使用され得る較正式の例を示す。
【図18】図18は、別の複数の定量化式間での選択がどのように実行され得るかの1つの可能性を示すフローチャートである。
【図19】図19は、別の複数の定量化式間での選択がどのように実行され得るかの別の可能性を示すフローチャートである。
【図20】図20は、図13の増殖曲線についての力価計算結果を示す。
【図21】図21は、図13の増殖曲線についてのシグナル回復結果を示す。
【図22】図22は、図15の増殖曲線についての力価計算結果を示す。
【図23】図23は、図15の増殖曲線についてのシグナル回復結果を示す。
【図24】図24は、本発明の方法を実行するために使用され得る定量化装置の基本構造を模式的に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般的な試験試料中に少なくとも1つの内部対照とともに少なくとも1つの標的核酸を提供する工程であって、前記内部対照には、前記標的核酸とは異なる定義済みの初期量(Q0)の対照核酸が含まれている、工程;
b)前記試験試料中の前記標的核酸および前記対照核酸を、一般的な核酸増幅プロセスにおいて増幅する工程;
c)前記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーター(サイクルk)に関して、前記増幅の間の前記標的核酸および前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を測定する工程;
d)前記標的核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記標的核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
e)前記対照核酸についての増幅産物の測定量に関する特定の予め定義された条件が適用される場合に、前記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記対照核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;
f)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、前記選択は、前記標的核酸についての増幅産物の量に関する前記測定結果、前記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果、ならびに前記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて行われる工程であって、
ここで、少なくとも1つの第1のタイプの定量化スキームによって、前記標的核酸についての特性値(nTi)、前記対照核酸についての特性値(nQi)および関連する参照データ(a、b、c)に基づいて、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供され、
ここで、少なくとも1つの第2のタイプの定量化スキームによって、前記標的核酸についての特性値(nTi)と、関連する参照データ(A、B、C;Tref、nTref)に基づき、前記対照核酸についての特性値(nQi)を参照することなく、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供される、
工程;ならびに
g)前記標的核酸について決定された特性値(nTi)に少なくとも基づいて選択された定量化スキームにしたがって、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)を定量する工程;
を含む、試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法。
【請求項2】
少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程が、以下の条件:
i)前記対照核酸についての特性値(nQi)が決定されていない場合、
ii)前記対照核酸についての特性値が、予め定義された閾値を上回る場合、
iii)前記標的核酸についての特性値(nTi)が、予め定義された閾値に届かない場合、
iv)前記対照核酸についての特性値が、前記標的核酸についての特性値を少なくとも予め定義された量上回る場合、
v)増幅プロセスの最終段階または最終段階に近い段階について測定または推定される、前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量(afi(n))が、予め定義された最小プラトー値(afinref)に届かない場合、
vi)標的核酸についての特性値に関連する増幅プロセスの瞬間的な状態について測定または推定される、前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された閾値、または増幅プロセスの前記瞬間的な状態について測定もしくは推定される前記標的核酸についての増幅産物の量もしくは増幅産物の量を示す数量に届かない場合
の少なくとも1つが適用される場合に第2のタイプの定量化スキームを選択することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1のタイプの前記またはそれぞれの定量化スキームに関連する前記参照データが、
A)一般的な試料中に少なくとも1つの内部対照と共に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、前記標準には定義済みの初期量(T0i)の標準核酸が含まれ、前記内部対照には定義済みの初期量(Q0)の対照核酸が含まれ、前記標準核酸と前記対照核酸は異なるものである、工程;
B)一般的な核酸増幅プロセスにおいて、前記試料中で前記標準および前記内部対照を増幅する工程;
C)前記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーター(サイクルk)に関して、前記増幅の間の前記標準核酸および前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
D)前記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記標準核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
E)前記対照核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記対照核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;ならびに
H)一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記特性値(nTi、nQi)とを、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)を提供する工程;
によって決定または提供される較正データである、請求項1〜2いずれか記載の方法。
【請求項4】
第2のタイプの前記またはそれぞれの定量化スキームに関連する前記参照データが、
AA)試料中に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、前記標準には定義済みの初期量の標準核酸が含まれる、工程;
BB)核酸増幅プロセスにおいて前記標準を増幅する工程;
CC)前記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、前記増幅の間の前記標準核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
DD)前記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記標準核酸についての前記進行パラメーターの特性値を決定する工程;ならびに
HH)一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記特性値(nTi)とを、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C;Tref、nTref)を提供する工程;
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
前記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する前記参照データが、工程A)〜D)に基づいて、および
HH)一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記標準核酸に関連する前記特性値(nTi)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C;Tref、nTref)を提供する工程
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記標準が外部標準であり、前記試料が前記試験試料とは異なる、請求項3〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
前記標的核酸とともに増幅される前記対照核酸の前記定義済みの初期量(Qi)が前記標的核酸とともに増幅される前記対照核酸の前記定義済みの初期量(Q0)に相当する、請求項3または6いずれか記載の方法。
【請求項8】
前記標準核酸が前記標的核酸に相当する、請求項3〜7いずれか記載の方法。
【請求項9】
工程A)〜H)または工程AA)〜HH)が、工程a)〜g)が行われる前に行われる、請求項3〜8いずれか記載の方法。
【請求項10】
第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)または第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C;Tref、nTref)が、定量化キットの構成要素とともに提供される、請求項3〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
工程A)において、前記標準核酸の希釈系列(T0i(i=1, ..., S))が提供され、それぞれの試料中の各希釈物が前記内部対照とともに提供され、ここで工程B)〜E)が前記希釈系列の全ての試料に関して行われ、かつここで工程H)には、
一方の前記試料の標準核酸の初期量(T0i)と、他方の前記試料について決定された特性値(nTi、nQi)を、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)を提供すること
が含まれる、請求項3〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
前記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する前記参照データが、工程A)〜D)に基づいて、および
HH)一方の選択された、または予め定義された標準核酸の初期量(T0j)と、他方の選択された前記試料について決定された前記標準核酸に関連する特性値(nTj)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(Tref、nTref)を提供する工程
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する前記参照データが、工程A)〜D)に基づいて、および
HH)一方の前記試料の標準核酸の初期量(T0i)と、他方の前記試料について決定された前記標準核酸に関連する特性値(nTi)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C)を提供する工程
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程AA)において、選択された定義済みの初期量(T0j)の前記標準核酸を含むただ1つの試料が提供される、請求項4記載の方法。
【請求項15】
工程AA)において、前記標準核酸の希釈系列(T0i(i=1, ... , S))が提供され、それぞれの試料中に各希釈物が提供され、ここで工程BB)〜DD)が前記希釈系列の全ての試料に関して行われ、かつここで工程HH)には、
一方の前記試料の標準核酸の初期量(T0i)と、他方の前記試料について決定された特性値(nTi)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C)を提供する工程
が含まれる、請求項4記載の方法。
【請求項16】
第2のタイプの前記定量化スキームに関連する較正データに一定の増幅効率(ε)が含まれるか、または工程g)において、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する較正データが、第2のタイプの定量化スキームにしたがう前記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化のために、一定の増幅効率(ε)とともに使用される、請求項10〜12いずれか記載の方法。
【請求項17】
前記増幅プロセスの理論上の増幅効率(□)が、前記一定の増幅効率として使用される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記増幅プロセスの理論上の増幅効率(ε)が、前記一定の増幅効率として使用され、前記一定の増幅効率(ε)が、工程A)〜H)に基づいて、または工程AA)〜HH)に基づいて決定され、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データに含まれるか、またはそれらから誘導されるか、または、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データに含まれる、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記増幅プロセスが複数回のサイクルで行われ、経過したサイクルの数を示すサイクル数が進行パラメーターとして使用される、請求項1〜18いずれか記載の方法。
【請求項20】
工程d)および工程e)の少なくとも1つが、
それぞれの測定結果、場合によっては、それぞれのシグナルの測定値から増殖曲線を導くこと
それぞれの増殖曲線の特徴、またはそれぞれの増殖曲線の計算された導関数の特徴を同定すること、
それぞれの特徴に関連する特性値(nTi;nQi)を決定すること
を含むか、またはこれらに基づく、請求項1〜19いずれか記載の方法。
【請求項21】
それぞれの増殖曲線の特徴が、増殖曲線による閾値の交差に対応し、前記閾値は、正規化されていない増殖値を表すように予め定義されるか、または正規化された増殖値を表すようにそれぞれの測定結果に基づいて決定される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
工程D)および工程E)または工程DD)の少なくとも1つが、
それぞれの測定結果、場合によっては、それぞれのシグナルの測定値から増殖曲線を導くこと、
それぞれの増殖曲線の特徴、またはそれぞれの増殖曲線の計算された導関数の特徴を同定することであって、それぞれの増殖曲線の特徴が増殖曲線による閾値の交差に対応し、前記閾値は正規化されていない増殖値を表すように予め定義されるか、または正規化された増殖値を表すようにそれぞれの測定結果に基づいて決定されること;
それぞれの特徴に関連する特性値(nTi;nQi)を決定すること;
を含むか、またはこれらに基づく、請求項3〜21いずれか記載の方法。
【請求項23】
第1のタイプの前記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、二次特性値(Δni)が、前記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての前記特性値(nTi)、ならびに前記対照核酸の前記特性値(nQi)から決定され、前記二次特性値が、増幅、および前記標的核酸の最初の量(T0i)、または前記標準核酸の初期量(T0i)の少なくとも1つの直接または間接的な測定を、それぞれ、増幅、および定義済みの初期量(Q0)の前記対照核酸の少なくとも1つに関して表し、かつここで標的核酸の最初の量(T0i)が、前記二次特性値(Δni)およびそれに関連する前記参照データ(a、b、c)に基づいて定量される、請求項1〜22いずれか記載の方法。
【請求項24】
工程H)が、
一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記二次特性値(Δni)を、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)を提供すること
を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第1のタイプの前記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、前記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての特性値(nTi)と前記対照核酸の特性値(nQi)との差を表す差分値(Δni)が決定され、かつここで標的核酸の最初の量(T0i)が、前記差分値(Δni)、およびそれに関連する前記参照データ(a、b、c)に基づいて定量される、請求項1〜24いずれか記載の方法。
【請求項26】
工程H)が、
一方の標準核酸の前記初期量と、他方の前記差分値を、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データを提供すること(A-8)
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記増幅プロセスがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスを含むか、または前記増幅プロセスが逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)プロセスを含むか、もしくはその一部である、請求項1〜26記載の方法。
【請求項28】
前記増幅プロセスにおいて、前記標的核酸または標準核酸ならびに前記対照核酸が、標的核酸または標準核酸に対しておよび前記対照核酸に対して同じプライマーに基づいて競合的に増幅される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
複数の定量化スキームの中から選択する工程が、前記試験試料中の前記標的核酸の定量化の中からの選択、および前記試験試料中の前記標的核酸の存在または非存在の決定、ならびに選択された場合、工程c)で得られた測定結果に基づいて前記試験試料中の前記標的核酸の存在または非存在の決定を含む、請求項1〜28いずれか記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜29いずれか記載の方法を行うための薬剤および参照または較正データ(a、b、c;A、B、C;Tref、nTref)を含む定量化キット。
【請求項31】
1つの試験試料、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置であって、
少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット;
前記増幅ユニットによって行われる前記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出ユニットであって、検出機構が、第1の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第1のシグナルと、第2の核酸にのみ関する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関する第2のデータが計算される、検出ユニット;
前記増幅ユニットおよび前記検出機構と連絡しているコントローラーであって、
ここで前記コントローラーは以下の
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニットを制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物および少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニットを制御する工程;
dd)前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第1の核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
ee)前記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関する特定の予め定義された条件が適用された場合に、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第2の核酸についてもまた前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、前記選択が、前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する前記測定結果、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および前記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)、前記第2の核酸についての特性値(nQi)、および関連する参照データ(a、b、c)に基づいて、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)と、関連する参照データ(A、B、C;Tref、nTref)に基づいて、前記第2の核酸についての特性値(nQi)を参照することなく、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供される、
工程、
gg)前記第1の核酸について決定された特性値(nTi)に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)を定量する工程、
jj)第1の核酸の前記最初の量(T0i)を含む定量化データを提供して、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)を表す工程
を含む操作を行うように設定される、コントローラー;
を含む、装置。
【請求項32】
情報担体に具体的に包含されるコンピュータプログラム製品であって、該製品が、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置によって実行することができる指令を含み、該装置が、
少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット;
前記増幅ユニットによって行われる前記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出機構であって、該検出機構が、第1の核酸にのみ関する少なくとも1つの第1のシグナルと第2の核酸にのみ関する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関係する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関係する第2のデータが計算され得る、検出機構;
前記増幅ユニットおよび前記検出機構と連絡しているコントローラーであって、
ここで前記コントローラーが前記指令に応答して以下の
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニットを制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニットを制御する工程;
dd)前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第1の核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
ee)前記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関する特定の予め定義された条件が適用された場合に、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第2の核酸についてもまた前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、前記選択が、前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する前記測定結果、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および前記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)、前記第2の核酸についての特性値(nQi)、および関連する参照データ(a、b、c)に基づいて、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)および関連する参照データ(A、B、C;Tref、nTref)に基づいて、前記第2の核酸についての特性値(nQi)を参照することなく、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供される、
工程、
gg)前記第1の核酸について決定された特性値(nTi)に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)を定量化する工程、
jj)第1の核酸の前記最初の量(T0i)を含む定量化データを提供して、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)を表す工程。
を含む操作を行う、コントローラー;
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項33】
通信回線を通じてダウンロードするための、請求項32記載のコンピュータプログラム製品が格納されているサーバーコンピューターシステム。
【請求項1】
a)一般的な試験試料中に少なくとも1つの内部対照とともに少なくとも1つの標的核酸を提供する工程であって、前記内部対照には、前記標的核酸とは異なる定義済みの初期量(Q0)の対照核酸が含まれている、工程;
b)前記試験試料中の前記標的核酸および前記対照核酸を、一般的な核酸増幅プロセスにおいて増幅する工程;
c)前記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーター(サイクルk)に関して、前記増幅の間の前記標的核酸および前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を測定する工程;
d)前記標的核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記標的核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
e)前記対照核酸についての増幅産物の測定量に関する特定の予め定義された条件が適用される場合に、前記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記対照核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;
f)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、前記選択は、前記標的核酸についての増幅産物の量に関する前記測定結果、前記対照核酸についての増幅産物の量に関する測定結果、ならびに前記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて行われる工程であって、
ここで、少なくとも1つの第1のタイプの定量化スキームによって、前記標的核酸についての特性値(nTi)、前記対照核酸についての特性値(nQi)および関連する参照データ(a、b、c)に基づいて、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供され、
ここで、少なくとも1つの第2のタイプの定量化スキームによって、前記標的核酸についての特性値(nTi)と、関連する参照データ(A、B、C;Tref、nTref)に基づき、前記対照核酸についての特性値(nQi)を参照することなく、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供される、
工程;ならびに
g)前記標的核酸について決定された特性値(nTi)に少なくとも基づいて選択された定量化スキームにしたがって、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)を定量する工程;
を含む、試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための方法。
【請求項2】
少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程が、以下の条件:
i)前記対照核酸についての特性値(nQi)が決定されていない場合、
ii)前記対照核酸についての特性値が、予め定義された閾値を上回る場合、
iii)前記標的核酸についての特性値(nTi)が、予め定義された閾値に届かない場合、
iv)前記対照核酸についての特性値が、前記標的核酸についての特性値を少なくとも予め定義された量上回る場合、
v)増幅プロセスの最終段階または最終段階に近い段階について測定または推定される、前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量(afi(n))が、予め定義された最小プラトー値(afinref)に届かない場合、
vi)標的核酸についての特性値に関連する増幅プロセスの瞬間的な状態について測定または推定される、前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量が、予め定義された閾値、または増幅プロセスの前記瞬間的な状態について測定もしくは推定される前記標的核酸についての増幅産物の量もしくは増幅産物の量を示す数量に届かない場合
の少なくとも1つが適用される場合に第2のタイプの定量化スキームを選択することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1のタイプの前記またはそれぞれの定量化スキームに関連する前記参照データが、
A)一般的な試料中に少なくとも1つの内部対照と共に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、前記標準には定義済みの初期量(T0i)の標準核酸が含まれ、前記内部対照には定義済みの初期量(Q0)の対照核酸が含まれ、前記標準核酸と前記対照核酸は異なるものである、工程;
B)一般的な核酸増幅プロセスにおいて、前記試料中で前記標準および前記内部対照を増幅する工程;
C)前記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーター(サイクルk)に関して、前記増幅の間の前記標準核酸および前記対照核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
D)前記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記標準核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
E)前記対照核酸ついての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記対照核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;ならびに
H)一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記特性値(nTi、nQi)とを、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)を提供する工程;
によって決定または提供される較正データである、請求項1〜2いずれか記載の方法。
【請求項4】
第2のタイプの前記またはそれぞれの定量化スキームに関連する前記参照データが、
AA)試料中に少なくとも1つの標準を提供する工程であって、前記標準には定義済みの初期量の標準核酸が含まれる、工程;
BB)核酸増幅プロセスにおいて前記標準を増幅する工程;
CC)前記増幅プロセスの進行を表す増大する進行パラメーターに関して、前記増幅の間の前記標準核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定する工程;
DD)前記標準核酸についての増幅産物の量に関する測定結果に基づいて、前記標準核酸についての前記進行パラメーターの特性値を決定する工程;ならびに
HH)一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記特性値(nTi)とを、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C;Tref、nTref)を提供する工程;
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
前記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する前記参照データが、工程A)〜D)に基づいて、および
HH)一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記標準核酸に関連する前記特性値(nTi)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C;Tref、nTref)を提供する工程
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記標準が外部標準であり、前記試料が前記試験試料とは異なる、請求項3〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
前記標的核酸とともに増幅される前記対照核酸の前記定義済みの初期量(Qi)が前記標的核酸とともに増幅される前記対照核酸の前記定義済みの初期量(Q0)に相当する、請求項3または6いずれか記載の方法。
【請求項8】
前記標準核酸が前記標的核酸に相当する、請求項3〜7いずれか記載の方法。
【請求項9】
工程A)〜H)または工程AA)〜HH)が、工程a)〜g)が行われる前に行われる、請求項3〜8いずれか記載の方法。
【請求項10】
第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)または第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C;Tref、nTref)が、定量化キットの構成要素とともに提供される、請求項3〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
工程A)において、前記標準核酸の希釈系列(T0i(i=1, ..., S))が提供され、それぞれの試料中の各希釈物が前記内部対照とともに提供され、ここで工程B)〜E)が前記希釈系列の全ての試料に関して行われ、かつここで工程H)には、
一方の前記試料の標準核酸の初期量(T0i)と、他方の前記試料について決定された特性値(nTi、nQi)を、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)を提供すること
が含まれる、請求項3〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
前記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する前記参照データが、工程A)〜D)に基づいて、および
HH)一方の選択された、または予め定義された標準核酸の初期量(T0j)と、他方の選択された前記試料について決定された前記標準核酸に関連する特性値(nTj)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(Tref、nTref)を提供する工程
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記またはそれぞれの第2のタイプの定量化スキームに関連する前記参照データが、工程A)〜D)に基づいて、および
HH)一方の前記試料の標準核酸の初期量(T0i)と、他方の前記試料について決定された前記標準核酸に関連する特性値(nTi)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C)を提供する工程
に基づいて決定または提供される較正データである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程AA)において、選択された定義済みの初期量(T0j)の前記標準核酸を含むただ1つの試料が提供される、請求項4記載の方法。
【請求項15】
工程AA)において、前記標準核酸の希釈系列(T0i(i=1, ... , S))が提供され、それぞれの試料中に各希釈物が提供され、ここで工程BB)〜DD)が前記希釈系列の全ての試料に関して行われ、かつここで工程HH)には、
一方の前記試料の標準核酸の初期量(T0i)と、他方の前記試料について決定された特性値(nTi)を、第2のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(A、B、C)を提供する工程
が含まれる、請求項4記載の方法。
【請求項16】
第2のタイプの前記定量化スキームに関連する較正データに一定の増幅効率(ε)が含まれるか、または工程g)において、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する較正データが、第2のタイプの定量化スキームにしたがう前記試験試料中の標的核酸の最初の量の定量化のために、一定の増幅効率(ε)とともに使用される、請求項10〜12いずれか記載の方法。
【請求項17】
前記増幅プロセスの理論上の増幅効率(□)が、前記一定の増幅効率として使用される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記増幅プロセスの理論上の増幅効率(ε)が、前記一定の増幅効率として使用され、前記一定の増幅効率(ε)が、工程A)〜H)に基づいて、または工程AA)〜HH)に基づいて決定され、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データに含まれるか、またはそれらから誘導されるか、または、第2のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データに含まれる、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記増幅プロセスが複数回のサイクルで行われ、経過したサイクルの数を示すサイクル数が進行パラメーターとして使用される、請求項1〜18いずれか記載の方法。
【請求項20】
工程d)および工程e)の少なくとも1つが、
それぞれの測定結果、場合によっては、それぞれのシグナルの測定値から増殖曲線を導くこと
それぞれの増殖曲線の特徴、またはそれぞれの増殖曲線の計算された導関数の特徴を同定すること、
それぞれの特徴に関連する特性値(nTi;nQi)を決定すること
を含むか、またはこれらに基づく、請求項1〜19いずれか記載の方法。
【請求項21】
それぞれの増殖曲線の特徴が、増殖曲線による閾値の交差に対応し、前記閾値は、正規化されていない増殖値を表すように予め定義されるか、または正規化された増殖値を表すようにそれぞれの測定結果に基づいて決定される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
工程D)および工程E)または工程DD)の少なくとも1つが、
それぞれの測定結果、場合によっては、それぞれのシグナルの測定値から増殖曲線を導くこと、
それぞれの増殖曲線の特徴、またはそれぞれの増殖曲線の計算された導関数の特徴を同定することであって、それぞれの増殖曲線の特徴が増殖曲線による閾値の交差に対応し、前記閾値は正規化されていない増殖値を表すように予め定義されるか、または正規化された増殖値を表すようにそれぞれの測定結果に基づいて決定されること;
それぞれの特徴に関連する特性値(nTi;nQi)を決定すること;
を含むか、またはこれらに基づく、請求項3〜21いずれか記載の方法。
【請求項23】
第1のタイプの前記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、二次特性値(Δni)が、前記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての前記特性値(nTi)、ならびに前記対照核酸の前記特性値(nQi)から決定され、前記二次特性値が、増幅、および前記標的核酸の最初の量(T0i)、または前記標準核酸の初期量(T0i)の少なくとも1つの直接または間接的な測定を、それぞれ、増幅、および定義済みの初期量(Q0)の前記対照核酸の少なくとも1つに関して表し、かつここで標的核酸の最初の量(T0i)が、前記二次特性値(Δni)およびそれに関連する前記参照データ(a、b、c)に基づいて定量される、請求項1〜22いずれか記載の方法。
【請求項24】
工程H)が、
一方の標準核酸の前記初期量(T0i)と、他方の前記二次特性値(Δni)を、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データ(a、b、c)を提供すること
を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第1のタイプの前記または少なくとも1つの定量化スキームにしたがって、前記標的核酸または標準核酸のそれぞれについての特性値(nTi)と前記対照核酸の特性値(nQi)との差を表す差分値(Δni)が決定され、かつここで標的核酸の最初の量(T0i)が、前記差分値(Δni)、およびそれに関連する前記参照データ(a、b、c)に基づいて定量される、請求項1〜24いずれか記載の方法。
【請求項26】
工程H)が、
一方の標準核酸の前記初期量と、他方の前記差分値を、第1のタイプの前記定量化スキームに関して関連付けて、第1のタイプの前記定量化スキームに関連する前記較正データを提供すること(A-8)
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記増幅プロセスがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスを含むか、または前記増幅プロセスが逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)プロセスを含むか、もしくはその一部である、請求項1〜26記載の方法。
【請求項28】
前記増幅プロセスにおいて、前記標的核酸または標準核酸ならびに前記対照核酸が、標的核酸または標準核酸に対しておよび前記対照核酸に対して同じプライマーに基づいて競合的に増幅される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
複数の定量化スキームの中から選択する工程が、前記試験試料中の前記標的核酸の定量化の中からの選択、および前記試験試料中の前記標的核酸の存在または非存在の決定、ならびに選択された場合、工程c)で得られた測定結果に基づいて前記試験試料中の前記標的核酸の存在または非存在の決定を含む、請求項1〜28いずれか記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜29いずれか記載の方法を行うための薬剤および参照または較正データ(a、b、c;A、B、C;Tref、nTref)を含む定量化キット。
【請求項31】
1つの試験試料、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置であって、
少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット;
前記増幅ユニットによって行われる前記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出ユニットであって、検出機構が、第1の核酸にのみ関係する少なくとも1つの第1のシグナルと、第2の核酸にのみ関する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関する第2のデータが計算される、検出ユニット;
前記増幅ユニットおよび前記検出機構と連絡しているコントローラーであって、
ここで前記コントローラーは以下の
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニットを制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物および少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニットを制御する工程;
dd)前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第1の核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
ee)前記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関する特定の予め定義された条件が適用された場合に、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第2の核酸についてもまた前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、前記選択が、前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する前記測定結果、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および前記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)、前記第2の核酸についての特性値(nQi)、および関連する参照データ(a、b、c)に基づいて、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)と、関連する参照データ(A、B、C;Tref、nTref)に基づいて、前記第2の核酸についての特性値(nQi)を参照することなく、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供される、
工程、
gg)前記第1の核酸について決定された特性値(nTi)に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)を定量する工程、
jj)第1の核酸の前記最初の量(T0i)を含む定量化データを提供して、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)を表す工程
を含む操作を行うように設定される、コントローラー;
を含む、装置。
【請求項32】
情報担体に具体的に包含されるコンピュータプログラム製品であって、該製品が、1つの試験試料中、または複数の試験試料中の少なくとも1つの標的核酸の定量化のための装置によって実行することができる指令を含み、該装置が、
少なくとも1つの試験試料に関して核酸増幅プロセスを行うための増幅ユニット;
前記増幅ユニットによって行われる前記核酸増幅プロセスの間の複数の異なる時点で、増幅プロセスにおいて増幅されるそれぞれの核酸に関する少なくとも2つのシグナルを測定するための検出機構であって、該検出機構が、第1の核酸にのみ関する少なくとも1つの第1のシグナルと第2の核酸にのみ関する少なくとも1つの第2のシグナルを別々に測定するように、あるいは、少なくとも1つの第1のシグナルおよび少なくとも1つの第2のシグナルを測定するように適合させられており、それから、第1の核酸にのみ関係する第1のデータおよび第2の核酸にのみ関係する第2のデータが計算され得る、検出機構;
前記増幅ユニットおよび前記検出機構と連絡しているコントローラーであって、
ここで前記コントローラーが前記指令に応答して以下の
bb)少なくとも1つのそれぞれの試験試料に関して増幅を行うように増幅ユニットを制御する工程;
cc)少なくとも2つの異なる核酸についての増幅産物、すなわち、少なくとも1つの第1の核酸についての増幅産物と、少なくとも1つの第2の核酸についての増幅産物の量または増幅産物の量を示す数量を、直接または間接的に測定するように検出ユニットを制御する工程;
dd)前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第1の核酸についての前記進行パラメーターの特性値(nTi)を決定する工程;
ee)前記第2の核酸についての増幅産物の測定された量に関する特定の予め定義された条件が適用された場合に、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果に基づいて、前記第2の核酸についてもまた前記進行パラメーターの特性値(nQi)を決定する工程;
ff)少なくとも1つの予め定義された選択基準にしたがって、複数の定量化スキームの中から選択する工程であって、前記選択が、前記第1の核酸についての増幅産物の量に関係する前記測定結果、前記第2の核酸についての増幅産物の量に関係する測定結果、および前記特性値(単数または複数)の少なくとも1つに基づいて、直接または間接的に行われる工程であって、
ここで、第1のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)、前記第2の核酸についての特性値(nQi)、および関連する参照データ(a、b、c)に基づいて、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供され、
ここで第2のタイプの少なくとも1つの定量化スキームにより、前記第1の核酸についての特性値(nTi)および関連する参照データ(A、B、C;Tref、nTref)に基づいて、前記第2の核酸についての特性値(nQi)を参照することなく、前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)の定量化が提供される、
工程、
gg)前記第1の核酸について決定された特性値(nTi)に少なくとも基づいて、選択された定量化スキームにしたがって前記試験試料中の第1の核酸の最初の量(T0i)を定量化する工程、
jj)第1の核酸の前記最初の量(T0i)を含む定量化データを提供して、前記試験試料中の標的核酸の最初の量(T0i)を表す工程。
を含む操作を行う、コントローラー;
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項33】
通信回線を通じてダウンロードするための、請求項32記載のコンピュータプログラム製品が格納されているサーバーコンピューターシステム。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2007−506418(P2007−506418A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527357(P2006−527357)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010712
【国際公開番号】WO2005/030990
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010712
【国際公開番号】WO2005/030990
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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